シナリオ詳細
セフィロトクエスト ~カルト教団発見シミュレーション~
オープニング
●それは社会実験でもあって
R.O.Oこと『ラピッド・オリジン・オンライン』の中に、その男の姿はあった。
「このような場所に呼び立てして済まないね。しかし、此処ならば間諜の目を気にすることなく安心して話ができるだろう?」
彼の名は『告死鳥』ロレンツォ・フォルトゥナート。世界の滅亡を目論む宗教団体『セフィロト』の元幹部(セフィラ)であって今はローレットに帰順した男。
「話というのは何ということはない、今の私はセフィロトを潰そうと思ってはいるのだが、私は幾分“摘発に対して堅牢な組織”を作りすぎてしまったのだよ」
彼は困ったように笑う。彼が出身世界の宿敵であった魔術師どもの組織を参考に作り上げたというシステムは、ある種のネズミ講を思わせる形式だった。セフィラ自身が組織するグループとは別に、グループのメンバーもそれぞれ子グループを作る。子グループのメンバーはさらに孫グループを、孫グループがひ孫を……。
重要なのは、原則として、各人が直接の誘い誘われの関係にある者以外との連絡手段を知らない、ということだった。それ以外は特別に紹介されないかぎりは何も判らない。自分たちのグループは、どのようなグループの子グループなのか。自分の子グループのメンバーが、どんな孫グループを作っているのか。それどころか自分の所属するグループに他にどのようなメンバーがいるのかさえ知らないことだってある。
「これは、たとえ拷問を受けたところで割る口がないのだから、他の者にまで累が及ぶことはない、という仕組みだと考えると理解して貰えるだろう。私の支部を訪れる者でさえ、十分に中間グループ全ての信用を得て、支部を紹介するに足ると認められた者たちばかりだった。それで十分だったのだ……多くの人手が必要な時には各人に『子孫グループの伝手を使い、指定日時に臨時の集合場所に集まれる者の人数を報告せよ』と命じさえすればよかったのだから」
ところがその組織構造は、ロレンツォ自身が教団を潰したい場合にも障害になった。そもそも、拠点がどこにあるのかすら判らない。しかし、ロレンツォは知ってしまったわけだ……こういう時に役に立つ、絶好のシミュレーション装置の存在を。
「R.O.O内世界である『ネクスト』は無辜なる混沌そのものではないが、似た部分も多くある。実際、セフィロトの存在も、その組織構造が現実と同様であることも確認できている。連絡役が『偽信闇記』ナグリという虚言を好む“男”であるということもね――見た目は女子高生以外の何者でもないのだが」
では、とロレンツォは問いかける。
「それを利用できるとは思わないかね? ローレットはかつて、同様の方法を用いて覇竜領域への到達路を発見したと聞いている。地理のような大きな枠組みではなく個人の思想ともなると再現性は格段に下がるだろうが……現実のセフィロト信者を警戒させる心配なしに行なえる予行演習としては有用だ。是非とも貴殿らにデータを集めてもらいたい」
- セフィロトクエスト ~カルト教団発見シミュレーション~完了
- GM名るう
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2023年06月08日 22時21分
- 参加人数21/32人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 21 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(21人)
リプレイ
●潜む気配
結局のところ、何が未摘発のカルト信者という存在を生み出したのか。
そこに「所属が即座に罪になるのではない」という理由を求めることはできるが、そもそも分散して存在する信者らを残らず監視できる暇人などそういないという現実もそこには横たわる。
では……もしそこに、適任の人物を宛てがえたなら?
「簡単だなぁ? これがセフィロトとかいう奴らの溜まり場か?」
物陰にわだかまる黒靄の中から、『尾を喰らう蛇』ダリウス(p3x007978)の声がした。ただし、今日のその声には特徴がない……あたかも彼がどこにでもいる平凡な人物であるかのように。
だからとある信者の家を誰かに紹介されたフリをして訪れて、いろいろな質問を投げかけるのは簡単だった。そして「今度、勉強会があるのでいかがですか?」なんて答えを引き出せたなら、最大の目的は達成だ。
「突撃! 隣のアジト見学にゃ!」
聞き出した勉強会会場の家へと『ニャンラトテップ』ネコモ(p3x008783)が直行し……マスターキー(物理)でダイレクトにシューッ!
「あ、あなたは何ですか!?」
「エキサイティングなことが大好きな猫にゃー!」
現実世界でやったら監視措置不可避の民家襲撃も、R.O.Oでならセーフ! 片っ端からセフィロトの経典やら何やらの証拠を強奪し、そのままとんずら走り去ってゆく!
強引すぎる手法ではあったが、当たりさえ引けばこの上ない効果的な捜査ではあった。
「ふむふむ、全体方針もシミュレーションならではの試みですが、個別手法もたいへんおもしろいですね」
どことなく疲れて思考停止した感を漂わせる黒い金魚――『叩いて直せ!』蕭条(p3x001262)が尻尾を震わせて、ご近所さんから「付き合いが悪いばかりか夜な夜な余所者を集めている」とのタレコミのあった家へと進行方向を向ける。
どかーん!
「!?」
「こんにちは。トラブルこと強盗です」
「びっくりした……なんだ、聖騎士ではないのか」
「ならば我らアモン教徒の敵ではないわ!」
あれっ、もしかしてこれ別口の悪い人たちでした?(ばこーん)
教訓:事前調査はしっかりと!
具体的には無駄にプライドの高い研究馬鹿の知人をあの手この手で懐柔してアジト在籍信者の声紋情報を集めさせた『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)のように。
幹部の声を真似て信者らに席を外させた後、遺された物品から信者たちの崇拝の感情を読み取ってゆく。あとは脱出して情報共有するだけになったところで……おや? 誰かと目が合った?
「お邪魔しておりますよお嬢さん――いや」
あどけない笑みを浮かべた“ローティーンの少女”へと降り注ぐ光剣。当然のようにそこにいた人物が必ず仕留めねばならない相手であることをツルギは知っている!
第二のセフィラ、コクマーこと『偽信闇記』ナグリ。その神出鬼没さと変身じみた変装能力は、ここR.O.Oでは現実以上の怪物と化していた。
もっともR.O.Oで怪物と化しているのは、特異運命座標とて同じこと。『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)とH・P・トロイの“父子”は、まるで開発者モードにでもなっているかのようにアジト内を壁も無視して自由自在に動き回っていた。その状態でシーン内オブジェクトのメタ情報に接続すれば……ほうら、そこにいる幼女の名前が『ナグリ』であることだってひと目で判る。
父の役に立てて得意げな顔を浮かべるトロイだったが、当の父は渋い表情をしていた……何故ならナグリから流れてきた情報の中には、『センスオブワンダー』ファントム・クォーツ(p3x008825)が幾つも流した互いに異なる情報が、残らず含まれていたためだ。
たとえば、裏切り者を炙り出したいとしよう。よく取られる方法として、関係者全員に別々の情報を与えて、どれが漏れたかを確かめるというものがあるわけだが。
(今回のはその応用のようなものだわ……でも、ナグリはその情報を残らず集めていたということ? ワタシが“ここでのワタシ”の家族に会いに行ってしまったことが、あの幸せな家庭を壊すきっかけにならなければいいけれど……)
つまり……こちらのセフィロトも残らず滅ぼしておかねば、彼女の不安は拭えない……!
●広がる網
邪教が拠点を築きそうな国をひとつ挙げるなら、きっと砂嵐に違いなかった。あらゆる悪が肯定される首都ネフェルスト。であれば蛇の道は蛇ゆえに、『大鴉を追うもの』クシィ(p3x000244)はこちらの世界の自分を訪れる。
「な、じいさん。ちょいとひとつ教えとくれよ……いや違ェよ今日はコルボの話じゃねんだって。セフィロトって邪教の拠点を訊きたいだけさ」
「そこそこコルボの話じゃねえか! 昔、どこぞのオアシスの近くに、大鴉傭兵団がそんな名前の教団が町を作ってたのを見たって噂がな……あのコルボが不気味がって敬遠したって言うから、今も町は残ってるんじゃねえか?」
そうなるとより詳しい情報は、現役の傭兵に訊くのが一番だろう。
「ケニー殿、何か噂話を聞いてるかい? ちょっと調べてるんだが……対価なら支払うぜ!」
「ならキミは腕が立ちそうだし、うちの傭兵団の仕事を手伝ってくれないかい? けれどキミ、本当に僕の親友だった男にそっくりだ……」
「ガハハ、きっと他人の空似だ! 俺はオルソンだ!」
そんな嘘を吐いてでも会いに行った親友の戦いかたは、『若き日の』オウェード(p3x009184)が忘れもせぬ形そのものだった。もしかして、現実の彼は今もどこかで――いいや、馬鹿げた期待はやめておこう。彼は、確かにあの時に死んだはずなのだから。
そう。この世に期待できることなんてない。何故ならこの世界には、この国の盗賊団ですら生温く見える巨悪が蔓延っているわけだから――そんな若者にありがちな社会への反抗心をカフェで女の子たちが話しているさまは、確かに微笑ましい光景には見える。
しかし。
「詳しくお聞かせ願えませんか? もちろん、ここの代金は持ちますとも」
『夜桜華舞』桜陽炎(p3x007979)が詳しい話を尋ねてみれば、出てくる出てくる、“世界の裏の真実”の噂。
(いくら噂好きだとしても、このような少女がこうもまことしやかに語れるものでしょうか?)
そう、彼女こそがナグリであったというのでなければ。
砂嵐の悪党どもや傭兵たちは、自分たちの利益もろとも世界を滅ぼさんとするセフィロトやナグリの討伐をこぞって企てた。
一方で正義の聖騎士たちにとっても、彼らが許されるべき存在であるはずがない。
「そこまでだ、セフィロト幹部ナグリ!」
「どーしてボクがナグリだってわかったの!?」
勢揃いする小鳥遊 リンドウをはじめとした異端審問官たちに囲まれて音を上げたナグリに対し、『切れぬ絆と拭えぬ声音』スキャット・セプテット(p3x002941)は自信満々に言い切ってみせた。
「女性が自然に身に着けた仕草と、男が女のフリを意識した時の仕草は色の澄み具合が違う……実際にネカマとしての研究を重ねてきた私を欺けるはずがなかろう!」
対して……中にはセフィロト対策が鈍い国家もあった。たとえば鋼鉄。なにせ不届き者が何かしでかせば、普通ならほっといても返り討ちに遭って死ぬ。
……はずだったのだが。
「ほっほう。道場で弟子に教義を刷り込むとは考えたものじゃ!」
何気なく『うどんの神』天狐(p3x009798)がラド=バウ闘士を尾行してみたら、そいつがセフィロトの伝道師を兼ねていた。未来を切り拓きたければ武を鍛錬せよという闘士の心構えから、救済を求めるなら世界を破壊せよというセフィロトの訓えを導いている。
よし、後で道場破りをしとくのじゃ! 彼らはあくまでもそういう精神で鍛錬しているだけで実際に世界を滅ぼそうとまでは思ってはおらぬじゃろうが、万が一のことがあったらこいつらを返り討ちにするのは骨じゃろうからな!
そして閉鎖的な翡翠の村落もまた、セフィロトに興味を抱かぬ場所のひとつ。
「邪教徒の調査の許可じゃと? 余所者に動き回られるのは好かぬ……が、どうしてもと言うなら昨今村を襲う巨猪を討伐してみせよ」
幻想種の長老が『アンジェリカ・フォン・ヴァレンタインのアバター』アンジェ(p3x010347)へと課したのは、彼女に諦めさせるための無理難題……だったはずだが。
「何ゆえ目を輝かせておる?」
「はい、こういうピコピコではクエストを課せられるものと聞いておりましたので!」
「今、何と?」
アンジェがリアルの鉄帝で学んだ『筋肉と正道は全てに勝る』の実践が果たされるのは、それからすぐの出来事である。
さて……では、開放的な国ならば、セフィロト信者の発見は容易だろうか?
答えは否だ。
「ヤバい宗教だってのは解ってるんだけどなぁ……表向きは普通に商会を作ってるだけだからほっとくしかないワケさ」
「さすが軍人のとりさん、カッコいい!」
航海の軍人として現れた自分をおだててやれば、『竜は誓約を違えず』リュート(p3x000684)はすぐに目的の情報にありつくことができた。これで『不可視の狩人』シャドウウォーカー(p3x000366)の侵入先は決定だ。
(証拠もなしに軍が動いたら、他の商会も国を警戒するようになるだろうから仕方ないよね)
商会は大きな建物で、民家と比べればよほど侵入が容易い。問題はその分証拠品の在り処を突き止めるのに骨が折れることだが……。
「見つけたぜ、luxuryなcelemony。つまり、bubblyでgorgeousでOREの出番って奴だ!」
大きな仕事が成功すれば、どんな商会だって祝勝会くらいは開く。それは関係者たちが集うだけではなくて、『(二代目)正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)や鵜来巣 朝時のような新たな投資家を迎えるビジネスの場でもある。
「こちらのcompanyではどのようなproductを?」
「武器が多いですかなぁ? 各国の自警団に輸出しております」
もっとも他の出席者たちからも広く話を聞けば、その“自警団”とはおそらくセフィロトの活動家たち。その証拠に、シャドウウォーカーが多くの関係者が祝勝会に出払った会社をよく調べれば、この商会が貿易活動だけでなく、航海の信者たちからの布施を使って他国の信者に供与する武器を用立てていた証拠となる記録が発見された。
だが――もしもその事実が露呈したならば、ナグリはナイトたちが侵入に関わったことを突き止めて、報復として彼らの会社の悪評をばら撒くだろう。……が。
「ぎゃうー!」
「何これかわいー♡」
ナグリとて少女を装っている以上、リュートに愛らしさアピールをされたらメロメロにならないわけにはゆかない。今だけはナイトたちから意識を外すことを強要されるのだ……本心では辟易して面倒がっているのだとしても。
●一斉捜査
かくして、ネクストにおけるセフィロト一斉摘発作戦が始まった。ただし、その矢面に立つのは、多くの場合で『無名騎士』ウーティス(p3x009093)だ。
「悪が栄えたためしなし。世界滅亡を望む者どもよ……覚悟!」
国でさえ神出鬼没に各地のセフィロト拠点を潰して回る男の後手に回って、多くは騒ぎの通報を受けて騎士たちが駆けつけた結果、ようやくそこが邪教の拠点であったと知る始末。
人は、いつしか彼をこう呼んだ。
闇から闇へ暗躍し、世を乱す悪を討伐する黒騎士――と。
ログインとログアウトを繰り返し、分裂したナグリにすら尻尾を掴ませぬ彼の存在に、セフィロトはどれほど混乱を強いられていたことか? これこそが好機であったがゆえに、『うわキツ』ミミサキ(p3x009818)は次の手に思いを巡らせていた。
(そういや猊下は、「信者間の連絡方法さえ暴ければ入信者ごとき決して敵ではないのだ」とか言ってたスねぇ)
ロレンツォが語っていた言葉を思い出す。そういえば彼は彼女に、こんなことも教えてくれたっけ。
(幸いなのは、今の組織構造になっている本当の理由を理解している信者は、決して多くないらしいことス。多くの信者の理解は「そういう伝統だから」にすぎない、といったとこでスね)
であれば、「今は緊急事態だから連帯しよう」という偽の呼び掛けで、彼らのセキュリティを無効化してやることができるのではなかろうか?
そこで重要な意味を持つのが、『青き調和』アズハ(p3x009471)のようなスパイの行動だ。
「新拠点を作りましょう!」
混乱している今ならば、時には入信して日の浅いアズハの説得にまで耳を傾けて、実際に拠点を移してしまうコミュニティまでが現れていた。もちろん、ただ拠点を移しただけで安心できる者などそう多くない。どうしてもついでに「折角なのでもっと防衛力を強化しましょう」という話が出てきてしまう……防衛力の維持コストを考えたなら、結論は複数コミュニティによる共同拠点の新設だ。
かくしてセフィロト拠点を探るのに障害となっていた「他グループとの連絡方法を軽々しく教えない」は、局所的ながらも崩壊する地域が現れるようになった。アズハが様々な地域で“新規入信”を続ければ、そういった地域は僅かずつでも増えてゆく――にゃーっはっはっは! かの教団をこうも手玉に取る者がいるとは、定命の者どもも存外見どころがあるのう!
妾の眼の力を使えばこの世界を破壊してしまうからどうしたものかと考えあぐねていたが、とは『雪風』玲(p3x006862)の独り言であった。しかし、依頼とあれば力の片鱗くらいは見せるのも吝かでない。
「たのもーう!」
「いらっしゃーい、偉大な吸血鬼ちゃん!」
えっ、そんなに妾のカリスマは溢れ出ておるのか? セフィロトの奴らめ、存外話がわかるではないか。
「気が利かんのう、妾の偉大さを知るのであれば、茶の一杯くらい出さぬか」
「はいはい、どーぞどーぞ! いやー、こんな力をもった子がいるなら崇めなくちゃいけないなー?」
拠点壊滅のために乗り込んだ玲、早くもナグリに懐柔された。い、いや、敵を欺くにはまず味方からという奴じゃぞ? ほ、本心から寝返った訳ではないからな?
……まあ、世の中ガチで本心から寝返った奴もいるわけなんだけど。
●裏セフィラの誕生
「な、なんだあの蔦は!?」
「助けてくれ……切っても切ってもまた生えてくる!」
正義の片隅に在りしセントマリアンナ村は、突如現れた蔦植物によりその歴史を閉じた。家々を、あるいは農園を覆うその植物を前にして、人々は泣き、あるいは力なくその場にへたり込む。
だが……僅かながらもその中に、歓喜の声を挙げる者たちがいた。
「この蔦だ……これこそが教典に記された『新たなる生命の樹』に違いない!」
「貴方様に間違いありません! 貴方様こそ我らセフィロトの待ち望んでいた救世主に違いないのです! さあ、我らとともに!」
突然崇めてきたセフィロト信者たちを見て、『わるいこ』きうりん(p3x008356)は良しとされた。
「セフィロト? なんじゃそりゃ? うーん……まぁ、私は“この”世界を滅ぼせるならなんでもいいよ。もちろん、幹部待遇はしてくれるんだよね?」
裏セフィラ『キシュ(きゅうりの意味)』は誕生せり。
その報せはナグリにより世界に駆け巡り、信仰の揺らいでいた信者たちを無駄に面白おかしく勇気づける結果になる――はずだったというのに。
何故、その報せは届かないのだ?
ナグリはどこで油を売っているのだ?
今、その答えを知る者は、大きく脹れた腹を愛おしそうにさする『全ては愛』ユグゴト・ツァン(p3x000569)だけだった。
「可愛い子。世界に面白可笑しい噂を振り撒いていたのは、きっと世界がつまらなかったからなのね? 私(同一奇譚)の愛を感じられなかったからなのね?」
そんな世界は滅んでしまえと思ってしまう気持ちは、彼女には“解る”。そして解ってしまった以上、彼女には“お母さんである義務”がある。
母の胎内に“戻ってきた”ナグリはしばらく暴れて彼女を悲しませたが、次第にそこが完全で素晴らしいものであることを理解したようだった。それを確かめた母は再びその胎をさすり、どこへともなく消えてゆく……。
次なるナグリを胎へと還すため。
そして“我が子”たち全てを慈しむため。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
実はリプレイでは文章のテンポ等を優先して省略している入手情報もあるのですが、ローレットにはそれらを含めた全情報が報告されているものとお考えください。
省略された情報に関して、詳しいことを知っておく必要は(少なくとも今のところは)ありません。それらの情報はロレンツォや各国が適切に活用してくれるでしょうし、もしも彼らだけでは手に負えない出来事が起こるようであれば、その時に改めて必要な情報が提示されるでしょう。
ちなみにキュウリをヘブライ語で引くとmelafefonと出てくるんだけど、調べたら「kishuとmelafefonのどちらかがカボチャでどちらかがキュウリなのは間違いないんだ。が、現代ヘブライ語ではmelafefonをキュウリとして使用しているがギリシア語の語彙とかを考えたら古ヘブライ語では逆だったはずだ! 今すぐ辞書を書き換えるんだ!」って力説して「今更そんな変更できるわけないだろ」って否決された人がいたらしいので本リプレイではkishuを採用しました。
GMコメント
通常ならばこの手の依頼は「情報を得られなければ失敗」になりがちですが、今回はシミュレーションなので「情報を得られなければ『その方法では不可能だった』という情報を入手できた」ことになります。
ですので皆様は、R.O.O内セフィロト教団の隠れた拠点を暴くため、という理由づけさえできれば何をしてもかまいません。あとはロレンツォがログを解析して上手くやってくれるでしょう。
●R.O.Oとネクスト
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、バグによってまるでゲームのような世界『ネクスト』を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に自分専用の『アバター』を作って活動します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline3
●『偽信闇記』ナグリ
トップ画像の左側の“男”。周囲に自分を関係者の女子だと思い込ませる能力を持ちます。
R.O.Oでは何故か12人いて一人称二人称年齢外見が全て異なるらしい(でも見た目が10代までの女子なのは同じ)。うっかり情報を洩らしてしまわないようにお気をつけを……。
全員に対処する必要はありません(そもそも12人全員出てこないかもしれません)。
●関係者・R.O.O住民としての自分
もしかしたら、関係者や自分自身がR.O.O住民として現れるかもしれません。どのような登場をするのか(協力者として現れるのか、敵として現れるのかも含む)はプレイングにてご指定ください。
必要であればEXプレイングもご活用ください。
行動場所
R.O.Oにおいて宗教団体セフィロトの活動が確認されている国家は、以下の6ヵ国です。
【1】国家希望なし
どの国で描写されてもいいや、という場合にお選びください。
【2】伝承(レジェンダリア)
無辜なる混沌の『幻想』に相当する国家です。
【3】鋼鉄(スチーラー)
無辜なる混沌の『鉄帝』に相当する国家です。
【4】正義(ジャスティス)
無辜なる混沌の『天義』に相当する国家です。
【5】航海(セイラー)
無辜なる混沌の『海洋』に相当する国家です。
【6】砂嵐(サンドストーム)
無辜なる混沌の『傭兵』に相当する国家です。
【7】翡翠(エメラルド)
無辜なる混沌の『深緑』に相当する国家です。
行動タイプ
どのようなアプローチをするのか、大まかな選択が可能です。
【1】既知の信者を調査する
新たな拠点や信者の情報を得るため、すでに信者だと判明している人物に対して調査を行ないます。尾行する、尋問する、新規入信希望者等を装って接触する、等の手段があるでしょう。
【2】事情通から情報を得る
信者以外の人々の中にも、教団の情報を知る者がいるかもしれません。情報と引き換えに依頼を受ける、危険と知らずに信者を庇護している有力者を説得する、不確かな噂話を集める、等の手段があるでしょう。
【3】アジトに侵入する
セフィロト信者たちのアジトの中には、アジトだろうと目されてはいるものの証拠がないため摘発を免れているものもあります。ちょっと泥棒や強盗が押し入って証拠を見つけてしまうかもしれない。基本的にはただの民家でもあります。
【4】ナグリを妨害する
現れたナグリを追い払う係です。調査が苦手な方も戦闘プレイングのみで確実に依頼に貢献できますが、もう少し気の利いたことをご希望であればナグリ判別法をお書き添えください。
【5】もっといいアイディアがある
上記のいずれにも合致しない・どれに当たるのか判断できない行動があればお選びください。
ナグリ
行動中にナグリと出会いたいかどうかを指定してください。
【1】希望なし
会うかも知れませんし、会わないかもしれません。万が一出会っても、ナグリを追い払う係がいれば不利益にはならないでしょう。
【2】ナグリ拒否
プレイングに言及がないかぎり、絶対にナグリに妨害を受けません。ただし、代償としてMVPに選出される権利を喪失します。
【3】ナグリ希望
主に上手く追い払える自信がある人と騙されたい人向け。ナグリの姿に希望があるようなら聞くだけ聞いておきましょう。
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