シナリオ詳細
<伝承の帳>悲恋譚には愛の手を<天翼のグランサムズ>
オープニング
●
「ヘレナ、今日は随分と機嫌がいいね」
壁にもたれながらスライヤーは眼前の婦人へと声をかけた。
陽の光の差し込む窓辺の椅子に腰を掛けてぼんやりと本を読んでいた貴婦人は、ゆっくりと顔を上げた。
繊細を通り越して華奢な女性は、比較的血色の良い顔に笑みを湛えて。
「身体の調子がいいってのとは違うみたいだね? なにかあったのかい?」
「ええ……少し。久しぶりにお会いしたんです」
「ははぁ、なるほどね……」
表情を柔らかく、ほんのりと緩めたヘレナを見て、「御馳走様」とスライヤーは肩を竦めた。
「……今日は天気もいいですね、外に、行ってみませんか?」
「構わないよ、せっかくだしヤツェクとアンタがどういう会話をしたのかも教えてもらおうかね」
「ふふ、秘密ですよ、それは」
「そうかい? まぁ、あの手合いは本気になると途端にへたれるタイプだろ? どうやって進んだのか、教えて貰いたいんだけどね?」
スレイヤーが続ければ、ヘレナはくすくすと零しように笑い、「それでも、駄目ですよ」と微笑むのだ。
「――ねえ、お母様」
その時、ヘレナはその声を聞き、スレイヤーは表情をこわばらせた。
「大丈夫ですわ、殺しはしませんもの。……少しだけ、お話を言いかしら?」
ヘレナは振り返り、声の主を見た。
「……えぇ、お母様の『騎士』がくるまで、すこしだけ」
諦観に似た笑みを浮かべる彼女へ、ヘレナは――
●
男――ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は悩んでいた。
下らぬ騎士願望だと、情熱的に勢いだけで押し切れるような若い恋など出来ないのだと。
彼女を保護するのは男同士の約束だから、なんて自分に言い訳していた。
堂々巡りの恋愛は本気で愛した思い人と結ばれたことのなかった男は、か弱い女と思っていたその人につい最近ケツをひっぱたかれたばかりである。
「……流石にあそこまで言われて何もできないのは男じゃないだろ」
今のヤツェクを見た彼のAIは何というだろうか。
どうせ的確に正確に射抜いてぐうの音も出ない正論で揶揄されながら殴られる。
故に、あれを呼び出すなんてことはしない。
(……告白しよう、あぁ、そうだ。ヘレナ、おれは……アンタの事をどうしようもなく愛してるんだ)
樫の木に覆われた穏やかなオークランドの土地にひっそりと微笑む折れそうなほどに華奢な女性を思い起こして、ヤツェクは決意する――した、のだ。
そう――だから、まさか、彼女がその護衛ごと姿を消すだなんて思いもしなかった。
●
「――アダレード! 自分が何やってるのか分かってるのか!」
神の国――それは宗教国家ネメシス、通称:天義においてその存在を確認された領域である。
『冠位傲慢』ルストの手の者である『遂行者』たちが聖遺物を核として作り出した彼らの領域。
ある場所ではありえたはずの歴史を、再現したかのような空間を構築するその領域は、混沌にあって混沌には無いとでもいうべき場所。
『聖遺物』や『其れに準ずるもの』及び『遂行者が細工をした何らか』の元に顕現せしめるそれは、冠位の権能の1つという。
天義の現体制を糾弾する預言より始まった歴史改変。
それはイレギュラーズの活躍により致命的な被害は避けられてきた。
そして、彼の預言は必ずしも『天義のみを対象としたもの』ではなかった。
そんな折、新たに下された預言は『幻想王国』に降りる大規模な帳に関するものだった。
――もしも、ヘレナが姿を消したのがそれに巻き込まれたのなら。
そう思い、テセラ・ニバスの帳『異言都市(リンバス・シティ)』の内部に存在していた『アリスティーデ大聖堂』を超えたヤツェクとイレギュラーズは、天を舞う黒翼を見た。
「あら、おじさま。こんにちは、鉄帝では大活躍でしたわね?」
金色の髪を靡かせ、女は――アダレード・オークランドは切なげに笑う。
以前までは長髪だった髪は乱雑に、短くなっていた。
「ふふ、私が何をやってるのか、でしたっけ? さぁ? もう何も分かりませんわ」
魔種アダレードは微笑むままに言う。
「私が愛したグレアム様は貴方達に討たれました。
仮にも私を貴族なんて身分に押し上げた父は、貴方達に討たれました。
ええ、正直なところ、私はもう、どうでもいいのです。
だから、そう、傲慢に! ただ、傲慢に、逝きたいように死んでやろうかしら、と。
ふふふ、その前に、母親の顔の一つでも見てからにするのはそんなにダメな事かしら?」
「一年ぶり、でしょうか。随分と長い間どこに隠れていたのでしょう」
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)の問いかけに、アダレードは微笑する。
「ふふ、どこでもいいではありませんか。皆様の手で死ぬ女ですもの?」
「ならば……前回は取り逃がしたが、今回こそ、終わりにしよう」
そう、槍を構えたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に、アダレードはそれでこそと笑った。
「ねえ、剣士さん? あの呪いの終わり方は、どういうものだったのかしら?」
アダレードから視線を向けられた蓮杖綾姫(p3p008658)は少しばかり口を噤む。
「愛した人を嘆き悲しみ呪った、あの狼の話。
私、あの日記を寝物語に呼んだことがあったの。
悔やんでたわ、彼は。だからね、少しだけ――知りたいような気がするわ?」
酷く悲し気にそう語る女へ、綾姫は夢のことを少しだけ思い起こした。
- <伝承の帳>悲恋譚には愛の手を<天翼のグランサムズ>完了
- GM名春野紅葉
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年06月05日 22時45分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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「あれだけの傷を負って生き延びましたか。意外と生き汚いのですね、アダレード」
感心するように語るのは『悲嘆の呪いを知りし者』蓮杖 綾姫(p3p008658)である。
「ふふふ、おかげで随分と長くかかってしまいました」
そう笑う様に綾姫もなるほどと頷くものだ。
死にきれず、傷を癒すのにかけた1年ということか。
「とはいえ、私はの『悲嘆』について語る舌を持ちません。
私が語るのはただこの一刀にて。そちらの麗しき狼共々、存分に斬(かた)りあおうではありませんか」
「えぇ、それで構いませんわ」
微笑み告げたアダレードが全身から魔力を滾らせる。
「ヤツェクさんは思うがままに心に従ってください。
こちらはお任せを……惚れた女を前にして横目はイイ男のすることではありませんからね」
綾姫のからかうような声色に『騎士願望』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が頷いた。
「ちくしょう、来ると思ったがこのタイミングでか! 皆、すまない、おれはヘレナを助けに行く。
悪手かもしれないが、彼女がアダレードから呼び声を受けたかもわからんし――もし、ここがかつての再現ならば、ヘレナの夫もそこにいるかもしれん」
そう言った『騎士願望』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)を見て、アダレードが驚いた様子を見せた。
「……魔種とイレギュラーズであっても、俺達のやってる事は誰かの大切な人を殺す事なわけだ……。
しかし、だからと言って引き下がる事もできない。
やるなら最後まで。全て受け止めて断ち切るのがせめてもの誠意だ。さぁ、終わりにしようか」
ヤツェクを送り出した『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は空に揺蕩う黒い翼の女を見上げた。
「そうね、さっさと終わりにしましょうか」
こちらを見下ろすアダレードの瞳にはいっそ傲慢なまでにこちらへの関心を見受けられない。
圧倒的な速度で打ち下ろされた氷の雨を振り払い、愛剣を空に向けて叩きつける。
空気を打ち付けた魔力は強烈な反響を放つ。
独特な音色はアダレードの視線をイズマへと向けさせた。
(心臓が反応するからきてみれば……なんというか、恋愛で人生棒に振って、詰んでやけくそなんだな……ROOの自分や似た末路? な親の事を思うと一切笑えないが……)
空に浮かびこちらを見下ろす魔種の姿に『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は思わず小さな溜め息を吐いた。
「せめて早く眠れるようにしてやるさ……悲恋の呪いから生まれ身としてはね……」
サイズの本質は悲恋の呪いを纏う妖精鎌である。
そう語れどもどこかで違和感を拭えないのは奇妙であるとはいえ既婚者になったからだろうか。
本体へと魔力を注ぎ込み、刃が血色の変色を来す。
顕現した氷の棺にその身を閉ざせば、妖精体の一部が凍り付く。
「まあ、がんばれ?」
ヤツェクを見送ってからサイズは一気に飛翔する。
振り抜いた血色の斬撃は同色の顎を形成してアダレードを食い破らんと攻めかかっていく。
(神話や伝承で悲恋と名が付くものは数多く見れど、実際に目の当たりにすると何とも言い難いわね)
故郷たる星にせよ、混沌にせよ物語として事欠かぬソレに少しばかり思いを馳せた『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は改めて魔種を見やりそんな感想を抱く。
「……今度こそ、悲恋の連鎖には終止符が打たれれば良いのだけれど」
ちらりと向けた視線は魔種ではなく、後方。
走り去っていったヤツェクの姿はもう見えないが――悲恋で終わらせないための鍵は既に動き出している。
その胸の内が穏やかなのは間違いなく大切な彼のおかげだろう。
充実を絵に描いたような生活を思い、ルチアは微笑む。
「死地を求めてやってきたということですか……色々と暗躍してきた結果がこれというのも物悲しい気はしますね」
弓を手に『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)がアダレードへと答えれば。
「敵とはいえ、知らない仲ではありませんので看取って差し上げましょう……覚悟はよろしいでしょうか?」
静かな色を湛えた紅の瞳がアダレードの瞳と交われば、魔種は笑みを刻む。
「それは嬉しいわ。私の覚悟を無駄にしないでもらえるかしら?」
傲慢なまでに真っすぐに告げられれば、リュティスは弓に魔力を籠めた。
「あらら、おじ様ったら。ふふふ、お養母様がそんなに大事なのね? 覚悟は決められたのかしら、騎士様?」
からかうような、侮るような声でアダレードが笑った。
「惚れた女にあそこまで言われて、腹くくらねぇのは男じゃないよな。行って来い、ヤツェク!」
寧ろ駆り立てるように『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)が言う。
「ほら、疾く求婚しに行っておいで。
そのための時間が作れないほど我(アタシ)達はか弱くはないさ」
続けてその背を押したのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)である。
「当然だ! ここは物語宜しく思い人を攫って逃げてやる! かくしてこの物語はハッピーエンドで終わる、だ!」
答えにアダレードが目を瞠り、すぅ、と目を細めたことに背を向けたヤツェクは気づかなかった。
(アンタが彼女と無事に結ばれたら、俺もアネモネに……歩み寄れる気がするんだ)
胸の内に秘めた思いは口には出さず、ベルナルドは仕掛けた装置を起動する。
胸に秘めた思いに気を取られ、視線を外したベルナルドも含め、その言葉は誰にも聞こえなかった。
「へぇ、それなら死に目の娘からも目を離さないで、しっかりしてもらわないといけませんわよ、お養父様?」
誰にも聞かれることなくアダレードの言葉は消えていく。
戦場と館を遮るように立ち込めたそれは幻影の霧。
「……つまらないことを」
酷く冷たい声がして、アダレードがこちらを見た。
「特等席で見せてもらえないと、こんなことをしている意味がありませんわ」
刹那、降り注いだ夥しい量の氷の雨が出鱈目に降り注いで装置を破壊した。
(特等席で見せて……だって? もしかしてお前さんは)
自分の目論みの失敗よりも先に、ベルナルドはアダレードの言葉が引っ掛かった。
その動きと相対するようにして、綾姫は銀麗狼へと駆け抜けた。
あの時は彼女の視点であったがゆえに風貌は知れないが――低く唸る狼はきっとその似姿なのだろう。
一呼吸の後、綾姫は数多の剣霊と共に駆け抜ける。
己が権能より繰り出す数多の剣、それら1つ1つの放つ剣閃は避けがたき舞となって紡がれる。
狼の首を落とさんと紡いだ一閃の直後、そこから始まるは奉納にして戦事の舞。
荒れ狂う剣の連舞は恐るべき死を狼へと齎した。
「死にたいだけなら戦う必要はない。自死を選べばいい。
だが貴女はわざわざ殺されに来たと言い、戦ってる。何の未練だ? 寂しいのか?」
「はっ、未練? そんなものあるはずもないわ。自死? 出来なかったから此処にいるのよ」
魔種は冷やかに言って弓を引いた。
氷の魔弾はイズマへと集束するように一斉にその猛威を叩きつけてくる。
「はっ、こちとらヤツェクを応援してる身だ。
色恋にとやかく言うつもりはねえ。でもな。母親を悲しませてんじゃねえ!
義理だぁ? だからこそ余計にムカついてるんだよ、クソが!」
激昂する『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)が燃える銀河のような腕を振るい戦場を一閃する。
「ヒトの恋路を邪魔するやつはオレに焼かれて地獄に堕ちな!」
誇りを炎に、熱に当てられたグラムリッパーが一斉に牡丹を見た。
「随分激しいわね、初対面なはずだけど?」
それを見下ろすアダレードが不思議そうに首をかしげるのが見えた。
「うるせえ!!」
苛立ちを隠さず牡丹は叫ぶ。
実際、それが八つ当たりでしかないことを牡丹だって自覚していた。
気に食わない――まるで気に食わなかった。
「……もしかして貴女――ふぅん?」
首をかしげたアダレードは意味深に笑みを刻む。
「リンドウ、アンタの剣の腕を見込んで、頼みがある。
お前さんに借りを作るのは胃がキリキリするが、天義を救うって利害は一致してるだろ」
「へーぇ? おねーさんを幻想まで呼び寄せて、何をさせたいのかなぁ?」
ニヤつき気味に笑う隻眼の幻想種へベルナルドは言う。
「アダレードを俺達が倒すまで、銀麗狼と影の天使の抑えの手伝いを頼みたい
「それはあいつらのことかなぁ? おっかないねぇ、おねーさんはただの働き蜂なんだけど」
言いつつも隻眼の騎士はゆらりと敵の方を向いた。
「ヤツェク様、御武運を。
どのような結果が待つにせよ、ご自身が納得できる選択であれば手伝わない理由もありません」
走り去ったヤツェクを横目にして、改めてリュティスは魔種を見上げる。
「さて、まずはあちらだね」
後ろに向かって駆け抜けたヤツェクを見送るように、武器商人は視線を巡らせる。
視線の先には1匹の狼がいた。
こちらを見据えて低く唸る美しい毛並みの狼に武器商人は瞳を向けた。
「……おいで」
手を差し伸べるように酷く甘い声をかければ、狼の視線が僅かに武器商人と交わった。
それは避けるべき事態であった――しかし、そうと気づいた時にはもう遅い。
破滅へと誘う衒罪の呼び声が銀麗狼を絡め取る。
●
扉を開けるのもまどろっこしいとばかりに窓から飛び込んだヤツェクを銃口が見ていた。
「なにやってんだい、ヤツェク!」
「スライヤーか! ヘレナは……あぁ、良かった、無事だな。怪我はないか?」
足早に近づき彼女に触れればヘレナは驚いた様子を見せる。
「ヤツェク様こそ、あの子はもう大丈夫なのですか?」
きょとんとした様子のヘレナはそう言って視線を外へ巡らせた。
「あぁ、皆が抑えてくれてる。だから今のうちに逃げるぞ! 仲間が用意した秘密の隠れ家がある」
「……いいえ」
「え――」
目を瞠ったヤツェクに、ヘレナは静かに答え、そっと窓際の椅子に腰を掛けた。
「逃げる場所などありませんよ、ヤツェク様。ここが、唯一の安全地帯です」
ヘレナはそう言って微笑み、そっとヤツェクの頬に手を触れた。
「ヤツェク様。貴方は私を1人にはさせないと、約束してくださいますか?」
「あ、あぁ、もちろんだ! 約束する!」
強く頷いて答えれば、ヘレナは改めて微笑む。
「でしたら、ヤツェク様。私の前で、ちゃんと言ってください」
目を瞠るヤツェクの前で、スライヤーがそっと部屋の外へ消えた。
「――あの子に聞こえるくらい、大きな声で言ってほしいのです。
それが、あの子と私を安心させることのできる唯一の手段ですから」
「……分かった」
真剣そのものの瞳に頷いて、ヤツェクは深呼吸をして、頬に触れていた彼女の手を取った。
「……今まで待たせてすまない。
だが、おれの手は汚れ、騎士になるにはおいぼれだ。
だが、おれはわがままな悪い大人だからな。
おれが幸せになると同時にヘレナも幸せにならんといけないんだ。
我が貴婦人よ、どうか求婚を受け入れてくれませんか」
それの声は戦場に向けて届くほどに響き渡る。
「……はい」
ヤツェクの手をそっと包みこむようにして、ヘレナが嬉しそうに笑った。
●
「アダレード。お前さんだって本当は信じたいんだろ、愛する二人が結ばれる未来を」
ベルナルドの問いかけにアダレードの視線がこちらを見た。
「あははは、まさか。血が繋がらぬとはいえ、自分の母が夫殺しとの恋を実らせるのを、見たいと思っているとでも!」
嘲るように、高らかに笑ってみせたその声に、ベルナルドは静かに視線を向けたままだ。
黒騎士の聖衣に身を包み鳥籠の画家はその手に剣を握る。
青白い炎となった魔力を剣先へ束ねるままに向けた視線は静謐そのものだった。
「……本当にやけっぱちの奴が、わざわざヘレナを生かして俺達を待つ様な回りくどい事するかよ」
声を落として続ければアダレードの目が見開かれた。
それは図星を差されたようにも見えて――ベルナルドは剣を握る手に力を籠める。
そう、あまりにも回りくどい。
ただ自棄になって倒されたいだけなら、何もヘレナを巻き込んでみせる必要性はまるでない。
「これ以上悲劇は起こさせねぇ。お前さんの為にも!」
踏み込みと同時、ベルナルドは剣を振り抜いた。
真っすぐに閃く太刀筋はそれゆえに容易に躱すことの出来ようもので――けれど、魔種の身体は真っすぐに斬り開かれた。
防御態勢に入るにはあまりにも遅きに失した一閃、魔種の身体から鮮血が滲む。
「ふ、ふふふ、ふふふふ! 私の為にも! 私の為にもなんて、笑わせる!」
腹部を抑えながら笑った魔種の視線はどこかを彷徨っている。
聞こえてきた声に思わずサイズは思わず振り返った。
(魔種相手の戦場で本当にやったのか)
我に返ってアダレードの方を見やれば、彼女も驚いた様子で声の方を見ている。
(……なら)
グンと速度をあげてその首めがけて鎌を振り抜いた。
(慈悲はない……眠れ!)
振り抜いた斬撃の軌跡は完璧なまでの奇襲をとなり得る一閃だった。
血色の斬撃はアダレードの命を刈り取るべく弧を描いた。
鮮やかな斬撃は確かに痛撃を刻み、アダレードの表情を痛みに歪ませる。
「人に新しい父が出来る瞬間、少しくらい感傷に浸らせてもらえないかしら? なんて」
――けれど、ただ気を取られているところを一閃して殺せるのなら、この戦いはHARDになど区分されない。
多数の魔法陣から氷の矢を生む魔女は改めてこちらを見た。
「ところでこの神の国、核はどこだ?」
愛剣を振るうイズマはアダレードへと問う。
「ふふ、私は持ってないわよ」
笑うアダレードの攻撃はまるで緩まない。
殺されに来たというにはあまりにも苛烈な魔弾の雨は確かにイレギュラーズを攻め立ている。
「――ならヘレナさんか」
「ふふ」
斬撃を撃ち込み、自らへの注意を惹きつけんとするイズマに笑うままアダレードが距離を取った。
「あんなにうるさくて激しい求婚、初めて見ました」
聞こえてきた声に『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)は笑う。
(自分をさらけ出す強い意志の発露。それは私には出来ないことで。ムカつく程に、妬いちゃいますね。ふふ)
茄子子はそんな感想を抱きながらも戦場の中央付近に立っていた。
その視線の先には、空にある魔種の姿。
(アダレード。私が最愛の人を亡くしたら、ああなるのかな。
……他人のことを考えるなんて、私らしくないか)
傲慢(わがまま)に死を選びながらも苛烈に攻め立てる魔種の姿を見やり、茄子子は自嘲する。
思い直して、茄子子は視線を仲間の方へ向けた。
「今治しますので、そこから動かないでくださいね」
意識を集中し、深く呼吸を繰り返す。
一帯を包む樫の木が生む大いなる自然の調和と自らを一体化するような感覚を纏い、パン、と手を叩いた。
祝福の色を纏ったそれは傷を受けた仲間を癒す賦活力となって響き渡る。
前線へと迫り、ルチアは静かに祈る。
澄み渡る心は信仰へ捧ぐ聖女のそれ、啓示の乙女が捧げる祈りに答えるように天からの祝福は降り注ぐ。
戦場に響き渡らんばかりの恋の歌。
紡がれるのは詩というにはあまりにも直球な願いである。
それを聞きながら、ルチアは微笑んで――熾天の宝冠が戦場を照らしだす。
「貴女も、母が幸せを得ることは喜ばしいと思うわよね」
目線をあげて問えば、屋敷の方へと視線を向け、羨むように目を細めていたアダレードがこちらを見下ろした。
羨望を覆い隠すような冷たい視線がそこにはあった。
リュティスは静かに漆黒の弓を引き絞る。
照準は真っすぐにアダレードを見定めていた。
生み出される漆黒の矢はきっとアダレードのみならず一帯を呑みこむ魔弾となる。
「ヤツェク様が戻るまで……いえ、戻っても私は貴女を撃ち落としましょう」
引き絞った矢を放てば、魔弾は一条の闇となって真っすぐにアダレードへと吸い込まれていく。
炸裂した魔弾はアダレードを呑みこみ、周囲へと黒い雨を落とす。
それは堕天の輝きであり、混沌より生まれる根源の澱み。
迫りくる銀麗狼の牙を受け止めながら、武器商人は視線をアダレードへと向けた。
空を舞う魔種はオークランド家の養女であるという。
養子というものについてソレは少しばかり思うところがあった。
「我(アタシ)も養子を取っている身だ。多少思うところはあるさ」
小さな声はアダレードには届くまい。
代わりに届けるは蒼き槍、流星の如く世界を灼くそれは煮え炎を纏い爆ぜるようにアダレードへと駆け抜ける。
壮絶極まる蒼炎の一打が魔種を貫いて、魔種が唸る。
●
「――アダレード」
綾姫は静かに傷だらけの魔種を呼ぶ。
引き攣れる数多の剣霊から取り出したる1本は、美しき輝きを帯びていた。
それは剣と呼ぶには短い――銀麗なるナイフ。
アダレードが落として去ったそれを創造したもの。
「私は語る口は持ちません。その代わり、私の知りえた『悲嘆』の一端を刻みましょう」
励起させるのはナイフに宿る想い。
刀剣に刻まれたそれを再現する綾姫の権能に応じるように、ナイフが淡い輝きを放つ。
「――わがみはつるぎ。ふるべ、ゆらゆらとふるべ」
巫女は祝詞を紡ぎ、権能を以って『悲嘆』を増幅させていく。
淡く光を抱いた刃を真っすぐに振り下ろした。
鮮やかな剣閃は確かに狼の斬り裂いた。
倒れる狼の表情はどこか穏やかで――握るナイフに籠められた呪いが解けていく。
それはすれ違った想いがようやく結びついたかのようだった。
●
「――これで満足か、アダレード」
光線銃を魔種へと向け、ヤツェクは問うものだ。
「いいえ――まだ満足はしませんわ、おじ様。
娘の前で、本気で私の養母を守れると誓えますか?
抱きたいだなどと性欲しか見えないような話ではなく、ちゃんと、私の目を見て言えるの?」
言えないでしょう――と言わんばかりの目を向けられながら、ヤツェクは構えた。
「彼女は守り通す! おれの恋路は悲恋にさせない! 何故なら、それがおれの愛の形だからだ。
彼女が覚悟を決めてるならおれも正直に生きる。それだけだ。
老いた男のロマンチシズム、結構。今まで己の理想から目をそらしてきたが、そろそろ年貢の納め時だ」
「そう――なら、養女の最後の我儘も聞いていってくださいな!」
壮絶な笑みを浮かべ、アダレードがあらん限りの魔力を籠めた矢を番えた。
パンドラの輝きを残して、イズマは顔を上げた。
「傲慢に、逝きたいように死ぬ……今まで健気に尽くしてきたんだろう、最期くらいエスコートするよ」
全身全霊を籠めた魔力を愛剣に集束させていく。
傷だらけのアダレードはけれど未だその表情に冷たさを載せている。
傲慢の魔種である女らしく、彼女は此方を睥睨していた。
イズマはそれを見上げ、再び愛剣を振るった。
嵐の如く激しく、冷たく紡がれる斬撃は美しい旋律となって戦場に響き渡る。
「……わがままですね。やっぱり子供はこうでなくっちゃ」
茄子子は慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。
死にたいと言いながらも、苛烈な攻めを為すアダレードへ、茄子子は一歩ずつ歩み寄り、そのまま彼女を抱きしめた。
「な、なにを……」
驚きと恐れと、その他もろもろのないまぜの感情が籠った声を聞きながら、茄子子は笑む。
別に愛してなどいないけれど、最後に愛されたと思えた方がきっといいからと。
それは慈しみでも愛おしみでもない。
ただ、自身がアダレードの母親ならばどうするのか。
それを考えた末の行動だった。だから――究極的に、ただのエゴだ。
(でも、私も傲慢なので。そんなもんでしょ)
「1人は嫌だもんね。受け止めてあげる」
その言葉にアダレードが震えて、僅かに動きを止めた。
「受け止める?」
震えるアダレードが振り払おうとするのを茄子子は受け止め続ける。
やがて、諦めたようにふ、とアダレードが手を緩める。
そこへと放たれる猛攻を、茄子子は気にしなかった。
「安心して眠れ、アダレード」
ベルナルドは静かに剣を振り抜いた。
青白い魔力の斬撃が縦横無尽に駆け抜け、アダレードを縛り上げる。
牡丹は気に食わなかった。それは目の前の魔種がであり、同時に自分が、である。
なんでも聞く話によれば、アダレードは見世物小屋で奴隷のように扱われたところをヘレナに救われたのだという。
「よく分からないけれど、貴女も私と同じなのかしら?」
迫りくるグラムリッパーの攻撃を受け止めていると、ふとアダレードからそんな声が降ってきた。
「どういう意味だ!」
「誰かに救われてお世話になった人ってことよ」
この世界に来たばかりの頃を思い出しながら、牡丹は左腕を振り抜いた。
僅かに止まった動きに、アダレードが短く納得したような声をあげた。
そうだ、境遇が似ているのだ。
牡丹を救ったアイツは牡丹を娘のように可愛がった。
照れくさくて素直になれずにいた相手は、いつの間にか死んだらしい。
取り残された側の自分は――今、『取り残される側』を作ろうとしているのだから。
「ねぇ、貴女。その誰かさんとは最後に話せたかしら」
「――なに?」
その言葉に牡丹はぴくりと腕を動かす。
「私は出来たわよ。貴女達が来る前に、充分、最後の話が出来たわ。未練がないぐらいにね」
それは、牡丹の逆鱗に触れるには充分にすぎる発言だった。
鋭く伸びた銀河のような炎がアダレードへと痛撃を叩き込み、半身を焼き払う。
激情に任せた一閃は充分にアダレードを死へと追い詰めた。
「ひとまず成功したみたいで良かったわ。奥さんにいいとこ見せてあげないとね」
ルチアは微笑み、ヤツェクへとそう語りかけた。
その一方で捧げた祈りは穏やかで満ち足りた優しい色をして戦場を照らす。
●
戦いは激しさを増していく。
ルチアは目を閉じていた。
苛烈なる攻撃は仲間の多くに傷を増やし続けていた。
祈りを歌に変えて紡ぐ祝福の聖歌。
その音色は多くの仲間達の傷を癒し、体勢を立て直す力を与えるもの。
「過去は変えられるべきではない。
過去を変えたら、愛のために尽くしたのも、それを水に流せず投げ出すほど本気で生きた事も嘘になる。
そんな惨めな結末にはさせたくない。貴女は人生を全うした。それが悲恋でも、語り継ごう」
イズマは真っすぐにアダレードを見た。
精神を統一して、呼吸を整えたままに愛剣を振るう。
残響を残して紡ぐ嵐のような斬撃は冷気を纏い駆け抜ける。
「そう、なら私はどっちにしろ惨めに死ねというわけね。ふふふ、あはは、あはははは!」
笑ったアダレードが一気に距離を取った。
「今度こそ終わらせてやるさ」
ソレを追ったサイズは静かに魔力を籠めて行く。
「ふふふ、やってみて、妖精さん?」
傷だらけの身体でアダレードは柔らかく笑む。
本体たる妖精鎌の心臓部、そこに刻まれたる悲恋の呪いは消えなどしない。
新たに得た冬白夜の呪いの方も籠めて、サイズは深く息を吐いた。
(……沸き立てカルマブラッド、罪を喰らいて、悲恋の者に永久の眠りを!)
全霊を籠めた一閃は血色の閃光を放ち戦場を駆け抜ける。
連続する斬撃はサイズの出せる最大出力となってアダレードを切り刻んだ。
ズタボロになったアダレードが、茄子子から離れていく。
「……どうして、こんなことをしたの?」
驚いたように声を震わせるアダレードへ茄子子は視線を交えた。
「私がしたかったらそうしただけです。可哀想だからではありません……しいて言うなら、単純に興味があったから」
「――そう、ならいいわ。これで憐憫だとか言われたら反吐が出るもの」
傲慢に笑って、アダレードは残りの魔力をかき集めるのが見えた。
「ねえ、そこの片翼の」
倒れたアダレードがこちらを見る。
「言うな……」
牡丹はそれを遮って言う。
少しばかり落ち着いてくれば、牡丹にだって分かっていた。
八つ当たり気味の牡丹の感情を逆なでして、自身にトドメを刺す最初の一手を撃たせたのぐらいわかっている。
「そう、ならいいわ」
ボロボロの魔女は笑い、地面へと崩れ落ちた。
「最後に言いたいことはありますか?」
死に体のアダレードへリュティスは問うた。
「願い事も無理のない範囲でなら聞きますよ。
以前の私であれば容赦なく殺したとは思いますが……思う所がありますので」
「そうね……それなら――」
しばらく目を伏せたアダレードがまるで自嘲するように笑った。
「……お父様と同じ墓に埋めてもらいたいの。
グレアム様とは同じお墓には無理だから、せめてね」
リュティスは短く肯定する。
「まぁでも、まだ死ぬつもりはないけれど!」
ふらふらと立ち上がったアダレードは、今だ交戦の意志を見せていた。
リュティスはそれを見つめ、一気に跳び込んだ。
アナトラの剱を握る手には力が籠っていた。
目の前の魔種のそれがある種の意地であることぐらい、分からぬわけではない。
逝きたいように死ぬと吼えたアダレードは、傲慢らしく死ぬために笑っているのだと。
「……おやすみなさい、アダレード」
桜花はきっと魔種に最後の花を見せただろう。
死の舞はいっそ鮮やかに見惚れるほど美しく魔種の命を刈り取った。
●
ヘレナから神の国の聖遺物を受け取り、それを砕いたイレギュラーズは、本来の世界へと戻っていた。
「最期に会ってやるのもいい。我(アタシ)も養子を取っている身だ、たとえ血の繋がらなくても子供を喪うということに多少は思うところがあるのさ」
武器商人が言えば、ヘレナがやや目を伏せていた。
「別れはもう済ませてありますが……そうですね。お願いできますか」
少しだけ考えた様子を見せた彼女が顔を上げたのを見て、武器商人も頷くものだ。
身綺麗にされたアダレードの遺体は墓穴の傍に横たえられている。
そこへと歩み寄った貴婦人はそっとその場に座り、アダレードの頬を撫でた。
「……お休み、私達の最後の子。お養父様に会えるのなら、私はもう少し時間がかかると伝えてくださいね」
柔らかく微笑むヘレナの隣へヤツェクが進むのを見ながら、武器商人は静かにその姿を目に止める。
「そうそう、結婚式には呼んでくださいね」
2人へと声をかけた茄子子にヤツェクが目を瞠る。
「今度こそ、お幸せにね」
ルチアは2人の傍に近づくとそう声をかけた。
宗派は違えど、送るべき心からの祝福に変わりはなく。
これからの前途が平穏であるように願う。
その視線はやがてアダレードへも向けられた。
身綺麗にされた魔種は静かに眠りについている。
「貴女も……次の人生では幸せにね」
来世という物があるのなら、と。
ルチアは静かにつげるものだ。
●
ねぇ、お養母様? お養父様のことを愛していたのですか?
貴女を鳥籠のような環境から救い出したなんて言えば聞こえはいいけれど、幻想貴族だった貴女を強引に娶った事には変わらない。
貴女の事をこの地に導いて療養と生活の保護をしていたと言えば聞こえはいいけれど。
やっていたことは、ただ飼い主が変わった鳥と変わらないでしょう。
「ええ、愛していましたよ。
とんでもなく不器用で、打算的な自分を演じようとするどうしようもない男でしたが、私は彼を愛していました。
そして、アダレード。私達は貴女の事も愛していました」
私は、籠の鳥でした。
お養母様が私を救ったのなんて、自分と似たような境遇だったからでしょう。
そこに愛があったのですか。
「同情があったことは、憐憫があったことは否めないでしょう。
けれどね、アダレード――憐憫も同情も、愛情に変わることはきっとあるのです。
私達は貴女を愛していました」
だとしても、私は――
「私の娘、血の繋がらぬ――きっと、最初で最後の愛娘ですよ、貴女は。
この先もう一度結婚することがあっても、今から子を為すのは流石に身体の負担ですから」
どうして、笑っているのですかお養母様。
「貴女も愛した人が出来たのでしょう? その方の為に生きたのでしょう?」
ええ、でもあの方は精一杯に生きて亡くなりました。
私は、何もできなかったのに。
「それでも、きっと良いのですよアダレード」
どうして? どうしてそう思うのですか、お養母様
「……私と貴女はよく似ているのですから。
自分の目的の為に真っすぐで責任感が強くて――けれど自分のことになると途端に躊躇しだす。
そんな男が好きになってしまうところが、血の繋がらぬ母娘で似てしまうなんて、思いもしませんでしたけど」
あは、あはは……たしかに、私達は似た者同士に育ったのかも、しれませんわね。
「――さようなら、アダレード。きっと、これが母娘の最後の会話なのでしょう?」
えぇ、そうするつもりですわ、お養母様。
「……どうか、貴女らしくいってくるのですよ」
――えぇ、歪んでしまった私なりに、私らしく逝ってまいりますわ
そんな家族の最後の会話は、きっと誰にも伝わらない。
婦人はもちろん、彼女を見守っていた護衛の女性も、決してそれを口にしないだろうから。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
随分とお待たせしてしまいました、天翼のグランサムズ最終話でもあります。
これは悲恋の一族が終わるまでのお話です。
●オーダー
【1】アダレード・オークランドの撃破
【2】ヘレナ・オークランドの救出
●フィールドデータ
オークランド領、樫の木の並ぶ森の中にポツンと広がる広場のような空間。
人が腰を掛けるような切り株が存在しており、誰かがここで日向ぼっこでもしていたことがありそうです。
平地のため射程は良好。反面、遮蔽物は無く空から降り注ぐ魔種の砲撃も通りやすいです。
●エネミーデータ
・『黒羽の天翼』アダレード・オークランド
傲慢属性の魔種です。
ヘレナの願いでその亡き夫が身請けして養女とした飛行種の娘。
その後、傲慢の魔種グレアムと出会い、恋をしたことで自らも反転しました。
愛した男の為に養実家の過去を利用してその戦力を整え、愛した男の目的を果たすために尽力しました。
しかし、そのグレアムが戦死したことで最早すべてがどうでもよくなった様子。
かつては美しき金色の長髪と白色の羽をした白鳥の飛行種でした。
今は金色の髪は短くなり、濡れ羽色の翼をしています。
氷の魔術と弓術にたけた神秘型で単体、扇、貫、範射程を持ちます。
神攻、命中、反応、EXAなどが高く整えられています。
【凍結】系列、【乱れ】系列、【出血】系列、【足止め】系列のBSを用いる他、【邪道】や【スプラッシュ】を持ちます。
基本的に低空飛行状態を維持します。
・『ワールドイーター』銀麗狼×1
全長3~4m程の美しい蒼銀の毛並みと青の瞳をした狼型のワールドイーターです。
知性を感じさせる瞳をしています。
HP、神攻、命中、抵抗、反応が高く、それ以外は並みからやや低めです。
【痺れ】系列、【乱れ】系列、【呪縛】、【怒り】、【狂気】などのBSを操ります。
・『影の天使』グラムリッパー×8
ボロボロのフードに身を包み、袖からガントレットが覗く浮遊する怪物です。
常に3mほどの低空飛行状態にあります。
その両手に刃先が四叉に別れた鎌のような武器を握っており、ガントレットの爪先は鋭くとがっています。
●NPCデータ
・『銀色の華』ヘレナ・オークランド
リーグルの唄より始まった一連の動きの中でミーミルンド派に与し、イレギュラーズに討たれたオースティンなる貴族の妻です。
戦後に家が取り潰された後、ヤツェクさんの庇護を受けながら、旧領の町にてひっそりと暮らしています。
夫が魔種であったこと、養女もまたそうなったことを知り、自分が一人残されたことを自覚しています。
また、イレギュラーズが『神の国』を訪れる前にアダレードと何かしらの対話を行なったようです。
つい最近ヤツェクさんに『わたしは貴方の妻になる準備できてますけど、いつまで腹をくくらないおつもりですか?』とお叱りを与えたばかり。
『神の国』のオークランド邸に護衛の女性と共に閉じこもっています。
なお、彼女のいる部屋からアダレードとイレギュラーズの姿は見えるものとします。
・スレイヤー・ロランド
ヤツェクさんの関係者。ヘレナさんの護衛です。
現在もヘレナさんと共に『神の国』内部のオークランド邸にいます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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