シナリオ詳細
<黄昏の園>その花冠、枯れることなし
オープニング
●黄昏の園にて
草原に、花冠が落ちている。
特になんということもない、普通の花冠だ。
名もなき花を冠の形に編み込んだような、何の変哲もない花冠。
此処に居た何者かが戯れに作って放り投げていったかのような、そんな普通の花冠。
けれど、少し見ればその不可思議さに気付くだろう。
まるでつい先程作ったかのような瑞々しさ、雑に放り投げられていても一切形に影響のない頑強さ。
そして何より……名もなき花で溢れたこのヘスペリデスの何処にも、花冠に使われているのと同じ花冠が存在しない。
いったい、この花冠は何なのか?
少なくとも、このヘスペリデスに住まう者にその答えを持つ者は居ない。
ならば、誰であればその答えを持つのか? この花冠はいったい?
……事情を知る者は、こう答えるだろう。
これこそが「女神の欠片」の1つ……永遠の花冠である、と。
●永遠の花冠を求めて
ラドネスチタによる『選別』をうけ、イレギュラーズが辿り着いたのは『ヘスペリデス』と竜種達の呼ぶ緑豊かな場所であった。
この場所は『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオスが竜種と人の架け橋となるべく作り上げたらしい。
人の営みを真似して作った遺跡は不格好。咲く花はデザストルの特有の名も知らぬ花。
覇竜とはこのような未知だと再度突き付けるようなこの場所はされど、不器用で不可解な感情を形にしたかのようでもあった。
いつか滅びに向かうのだというこの場所において……やるべきことは、幾つも存在する。
「『女神の欠片』……ってこと、だよね」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は、『花護竜』テロニュクスと『魔種・白堊』がベルゼー・グラトニオスの苦しみを少しでも和らげるためにイレギュラーズに協力を要請したというモノの名前を呟いた。
勿論、何処まで信じていいものかは分からないが……女神の欠片は様々なものに形を変えているという。
たとえばそれは亜竜の卵にであったり、あるいは竜種の鱗にくっついていたり。
勿論そのようなもの、命懸けになることは確かだが……多少ではあるがもう少し生き残れる確率が高いものもある。
それがヘスペリデスの草原に落ちているという「永遠の花冠」だ。
見た目はただの花冠に見えるが既存のどれにも当てはまらない不可思議な花で作られており、花冠とは思えぬ頑強さと、いつまでも劣化しない性質を持つという。
そしてどうやらこの花冠こそが「女神の欠片」の変化したものであるようなのだ。
……こういうとただ花冠を拾ってくればいいだけの話に思える。しかしながら、そう簡単にはいかない。
問題の草原は亜竜カノントータスが縄張りにしており、近づく者に苛烈な砲撃を加えてくるのだ。
更に悪いことに『風塵竜(ふうじんりゅう)』ファリアンが本を読む際の椅子にしている岩がその近くにあるのだという。
カノントータスはファリアンを撃ったりはしないが、スティアたちには遠慮なく砲撃を加えてくるだろう。
そうすると、煩さの原因のスティアたちにファリアンがどういう行動に出るかも分からない。
理不尽との戦いのようでもあるが、それでもやるしかないのだ……!
- <黄昏の園>その花冠、枯れることなし完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年05月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ヘスペリデスにて
「ベルゼーさんが苦しんでいるなら助けたい。琉珂ちゃんと仲直りができるならその方が良いしね……ってことで女神の欠片を集めないと! 頑張っていこー!」
「砲撃の降ってくる戦場で女神のカケラ探しとはね! もうちょっと平和なところに落ちといて欲しかったね!」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)と「『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の叫びが響く。
青い空、美しい平原……建築物にも見える、しかし近づいて見てみれば形を真似ただけの意味のないオブジェクト。
離れた場所には名も無き花が咲き乱れ、ある意味で此処ほど「平和な楽園に見える」場所もないだろう。
しかし、此処ほど危険な場所もそうはない。何故なら此処はヘスペリデス。
かの『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオスが作り出し、竜種や亜竜の闊歩する楽園なのだから。
「ほーん。ここがヘスペリデスか。話には聞いてたが、綺麗な所だな。闊歩してるのがやべー奴らばかりなのがさすが竜の住まいって感じだが」
ヘスペリデスは『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)の言う通り、美しくも危険な場所だ。油断すれば簡単に死ぬだろうその場所で、しかし獅門たちの価値はこの場では此処に咲く草花と同程度のものでしかない。
「探す欠片は花冠だっけか。何でそんな形になったのか分からねぇが、分かりやすくて何よりだぜ。さっと見つけてさっと帰ろう。竜(ひと)の庭に邪魔してるのはこっちだしな」
「女神の欠片って本当にいろんな形であるのね。今回のは話に聞く限りそのままでもすごく素敵なものに思えるけど、この草原で探すのは骨が折れそうね、今回も頼むわよ? オディール」
『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が氷狼の子犬であるオディールにそう声をかける。
此処はヘスペリデスの草原近く。遠くにカノントータスが見えるが、射程内に入れば攻撃してくるだろうと思われるこの状況では、事前準備が大事なのは明らかだった。
オデットもオルド・クロニクルを使って周辺の環境の保護をするつもりだった。
何しろ、カノントータスだけならまだしも、此処には竜種である『風塵竜(ふうじんりゅう)』ファリアンが本を読む際の椅子にしている岩もあるのだ。
幸いにも今はいないようだが……いつ来るかも分からない。油断はできない。
風の精霊がいれば精霊疎通でコンタクトを取り、オディールと合わせて永遠の花冠を捜索に行ってもらうつもりだが……どうにも此処は精霊が少ないようだった。しかしまあ、オデットは1人ではない。協力することでより分厚い体制になるのだ。
「花畑の中に落ちている花冠なら見つけるのに苦労しそうだけど、草原の中に落ちているなら見つけやすい、かな」
『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)は広域俯瞰で花冠を探し始める。
(草原は土の色、緑の色。その中に別の色が落ちているなら、目立つだろう)
そう、花冠は花を編んだものだ。その色次第だが、目立つ可能性は高い。
「女神の欠片がついてる花冠かぁ。ただの花冠だったら壊れそうとか心配にはなるけど、それがあるなら話は別だね。……もっとも、モンスターも倒さないとだけど、めちゃくちゃ強い竜種のお兄さんがいるっていうのがネックだなぁ。まぁ自分が本読んでる時に下手にドンガラガッシャンしてたら嫌だよね。ましてそれが、お気に入りの場所の近くなんてことだったら……アタシなら発狂してるかもしれないな、とは思うよ」
『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)がそう理解を示す近くでは、『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)と『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が頷きあっている。
「永遠の花冠ですか〜名前からしてなんだか美しそうな代物でありますが、きっと美の化身たる私に似合うでしょうね! えっ? 角に花冠が引っかかるって? う〜ん確かに……」
「花冠……花冠の形になる女神の欠片なんてものもあるんでありますね……。すんなり回収できればいいでありますが……降りかかる火の粉はしっかりと払い除けるのみ! 竜の動向は気にはなるでありますが……最優先すべきなのは永遠の花冠の回収、そしてその障害となりうるカノントータスの撃破。手早くカノントータスを打倒し捜索に移らねば……!」
「そうですねえ」
ヴィルメイズも超視力と広域俯瞰で花冠を探すが……そんな中、カノントータスが此方に砲門を向けようとしているのが見えた。
「どうやら楽させてもらえるのはここまでか。本格的な探索は亀を撃破した後だな」
獅門は破竜刀を引き抜き、咲良が「よーし」と声をあげる。
「行くよ、獅門君!」
咲良のデッドリースカイが叩き込まれ、獅門の覇竜穿撃がカノントータスへと炸裂する。
「レグルスとやり合うには準備ブソクだからね! 出来るならどれだけのモノなのかやり合ってみたいところなんだけれどね!」
カノントータスとファリアン。両方を同時に相手にするのはあまりにも危険であり、同時に無謀でもある。
出来れば花冠も見つけておきたかったが、こうなれば戦いながらでも探していくしかない。
「まあ踏まれるだけなら後でそこへ行けば良いかもしれんけど、もし蹴飛ばされてどこかへ行ったら面倒だからな」
出来れば踏まれてほしくもないが、そこは女神の欠片としての何かこう不思議パワーがあることを信じるしかない。
とはいえ、そんなものばかり信じているわけにもいかない。
だからこそ、可能な限りカノントータスの数を減らしていかなければならないとイグナートはハンズオブグローリーからの覇竜穿撃を叩き込む。
「さあ、手早くやっていこうか!」
響くそんな声は……まさに、やる気に満ちたものだった。
●永遠の花冠
カノントータスの砲撃は、凄まじいの一言だった。
こんな場所にいるのだから当然だろう……並の亜竜よりは余程強い。
マギ・ペンタグラムを付与したオデットが壁になるべくカノントータスの前に立っているが、やはりその攻撃の苛烈さに息を呑む。
(凄い砲撃……オルド・クロニクルを使ったのは正解ね)
砲撃という言葉からイメージできる攻撃そのものを受けながら、オデットは立ち回っていく。
基本はヒーラーであるスティアの夜葬儀鳳花が炸裂し、ハリエットもラフィング・ピリオドを放つ。
文字通りの「動く砲台」であるカノントータスだが、この攻撃は確実に効いている。
「ファリアンていう竜が本を読むためにここに来る……。本を読むなら静かな場所を好むよね。静かに本を読みたくてここに来たのに、私たちが花冠を探してたり戦闘してたり、は拙いよね……で、あるならば。さっさとカノントータスを倒してしまわないといけないね」
そう、ハリエットの言う通りカノントータスを倒すことが結果的には永遠の花冠の安全に繋がる。
とはいえ、こうしながらも永遠の花冠の場所は探し続けている。いつでも確保できるようにするためだ。
「行けッ! D・ファンネルッ!」
ムサシがD・ファンネルを展開し、ヴィルメイズは下方使舞を舞う。
「花冠も見つけておきたいところですがねえ」
超視力と広域俯瞰で戦いながらも永遠の花冠を探していたヴィルメイズは、まだそれを見つけられていない。
この草原の草の中にあって、その花冠は目立つはずだ。はずだが……今まで放置されていただけはあるということか。
問題は、カノントータスの砲撃で壊れやしないかということだが……今のところはまだ大丈夫そうだ。
そして、もう1つの問題は。
「……おやまあ」
上空から何かが此方に向かってきているという、その事実だった。
それは岩の近くに舞い降りて。目の前で繰り広げられている戦闘をじっと見つめる。
そう、それこそは『風塵竜(ふうじんりゅう)』ファリアン。
緑の髪と目を持つ、眼鏡をかけ題名のない本を持った知的な雰囲気を持つ亜竜種の男……に見える、正真正銘の竜種である。
(竜種ファリアン……! どうするでありますか、此処で発光すれば一瞬でも隙を……いや、まだそのカードを切るのは早い……!)
ムサシもそう考えながら、位置取りを確認する。カノントータスとの戦闘はまだ終わっていない。
此処でどう動くか、それで全てが決まる。決まるが……そこに、スティアが進み出ていく。
(前回は邪険にされちゃったけど諦めないよ! リベンジだー! それに話をしている間は戦ってる仲間達を攻撃したりはしないだろうしね。一石二鳥のはず!)
それに今のタイミングなら話が出来るだろう。そう考えてスティアはファリアンへと近づく。
まず試すのは、携帯していた本を取り出して興味を示すか試す作戦だ。
「ファリアンさん! こんなこともあろうかと準備してたんだよ!」
ファリアンはスティアを見ることもなく岩に座るが、ひとまずは問題はない。
カノントータスも残り1体……そちらにもファリアンは興味が全くないようなので、このチャンスを活かすべきはここしかない。
だからこそ、スティアは徹底的に攻めていく。
「まずは天義の聖書! 人間の国の宗教の話だから珍しいかなって思って。もう一つは魔術書かな。片方だけならプレゼントするけどどっちの方が好みかな?」
「ファリアン、さん……だっけ。本はいいね。たくさんのことを教えてくれる」
「……」
そこにハリエットも近づいていって、そう話しかける。すでにカノントータスは倒し切った。ならばファリアンと敵対せずに済ませられるならば、それが一番いい。
ファリアンはスティアたちを胡乱げな目で見ると「おかしな虫だ」と呟く。
「此処で何をしているかは知らんが、さっさと消えろ。見逃してやる」
どうやら本は受け取ってもらえたようだ。読むかどうかはまたファリアンの気分次第だろうが……見逃しては貰えるようだ。
コンタクトは失敗ではない……ということなのだろう。
幸いにも戦闘は終わった。あとは永遠の花冠だが……スティアはファリアンの近くに落ちていないかサッと確認する。
(後で傍に近寄るのは大変かもしれないからね!)
しかし、どうやらファリアンの近くにはない。これは安心材料だろう。
「……どうやらダイジョウブみたいだね」
イグナートも緊張をとき、そう呟く。
実際のところ戦闘が避けられなくなったら積極的に殴ってこちらに意識を向けさせるつもりだったのだ。
本体を殴っても意識を向けてもらえなさそうなら、手元の本を狙って弾き飛ばすつもりでもあったが……実にイグナートらしい相手を怒らせるポイントをしっかりと突く着眼点であっただろう。
(実のところ最強種のお手並みはハイケンしたかったんだけどね……)
しかしまあ、今戦う理由もない。それを少し残念に思いながらもイグナートも花冠を探す。
「いつまでああかも分からねえしな……回収してさっさと帰るか。ファリアンの旦那も気になるが、花冠の回収が仕事だからな。帰れる内に帰るに限るぜ!」
獅門の言う通り、ファリアンがいつまでも此方を見逃しているという保証はない。早めに帰るのが一番なのは間違いない。
咲良もファミリアーを使い、小動物の視点を借りて、それらしきものがないか探している。
確かにファリアンは今はああだが、他の何かが起こる可能性だって充分にある。
(むしろ、読書の邪魔はしないからアタシたちの邪魔はしないでって思うけど)
「知らない土地で何があるかわからないから、最後まで気を引き締めていかないとね」
咲良もそう呟き、ヴィルメイズもチラチラとファリアンに視線を向けながらも「さっさと帰る」方針には完全に同意であった。
「私がかまいたちを食らったら、この美しい体が大変なことになってしまいますので〜……回収してコソコソ退散しましょう〜」
まあ、余裕のある態度を見せているイグナートやスティアの肝が大きいのかもしれないが。スティアは自然会話で植物から情報収集しながら捜索を進めていた。
「せっかくだし、風景が綺麗な場所を中心に探してみようかな! どうせなら楽しんだ方が良いと思うしね」
そんな度胸試しのような探索方法が功を奏したのだろうか、スティアは草むらの中から花冠を掴み上げる。
この美しい花冠が「そう」であることは間違いなく。もう此処に用事はないと即座に撤退していく。
そうして撤退する中で……ヴィルメイズは、1度だけ振り向く。
「えーと風塵竜ファリアン……でしたかね? こちらが女神の欠片だの冠位魔種だのとバタバタしているというのに、のんびり読書とは。竜種というものは割と呑気なんでしょうかね? もしくはもう「諦めている」のでしょうか……?」
それは分からない。彼等が何を考えているのか、その性質ゆえにほぼ分からないのだから。
しかし……現状をどうにかできるかもしれない鍵だけは、確かにこの手の中にあった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
女神の欠片「永遠の花冠」を手に入れました!
GMコメント
ヘスペリデスの草原に落ちている「永遠の花冠」を持って帰りましょう。
付近には亜竜カノントータスの縄張りがあり、『風塵竜(ふうじんりゅう)』ファリアンが本を読む際の椅子にしている岩もあります。
ファリアンがどのタイミングで現れるのか、そもそも最初からいるのかは不明です。
「永遠の花冠」を持って帰れば依頼は成功ですので無茶はやめましょう。
●出てくる敵
・カノントータス×4
砲台のついたトーチカみたいな甲羅を背負う超タフな亀型亜竜。
射程内に入った相手に魔力の砲弾を発射します。
正面についた主砲と全方位の副砲があり、結構な火力があります。
・『風塵竜(ふうじんりゅう)』ファリアン
竜種。将星種『レグルス』の一角。竜の中でも天帝種同様に強大な存在達です。
緑の髪と目を持つ、眼鏡をかけ題名のない本を持った知的な雰囲気を持つ亜竜種の男のような姿をとっています。実際の姿は不明です。
本を読んでいる「だけ」に見えますが、思い出したように攻撃してくる可能性があります。
皆さんのことは歯牙にもかけておらず、その辺を飛んでる虫くらいにしか思っていません。
今回は指パッチンの動作でとんでもない威力のカマイタチを放ったりするようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。
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