PandoraPartyProject

シナリオ詳細

冒険でしょ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ギルドローレットは、客を一人、迎えていた。
 海洋からはるばる来たのは、荒くれる海を往くもの、その代表的な名詞である、海賊船長その人だ。
「……ねえあの人半袖短パンだよやばいよ……もう寒いって時期なのにやばいよ……」
 黒く焦げた肌、逞しい骨格と肉付き、それを覆う少しよれたシャツとパンツ姿の船長は、正直ちょっと頭おかしい。
「バカ聞こえるだろ、あれが海のトレンドなんだよ流行の波に乗ってんのっ」
「海の上だけに?」
「お前なに上手いこと言えたみたいな顔してんの上手くねーんだよ」
「ねえ聞こえてんだけど?」
 それはおいておいて。
 何故彼が、海からわざわざ陸路で幻想のローレットに来たのかと言うと。
「礼がしたくてな」
「お礼……参り?」
「ちげーよ!」
 ゴホンと咳払いで流れを切った船長は、いいかよ、と前置きする。
「幻想から海洋にでしゃばって来て、ちょいと経ったろ。それまでギルドにゃ色々世話んなったろ?」
 その労に報いを、ということらしい。
「と言っても金はやらんぞ、こちとら奪う専門の海賊だ。それが与えるなんてあっちゃならねぇ」
 海賊の矜持とでも言うような考えだ。
 しかし、れならば何を礼とするのか、と言う問題が出てくる。
 そこで、
「与える事はしねえ。だから一緒に、宝探しに行かねぇか! 海賊の本業は襲って奪うだけじゃねえ、冒険だってその一つだ!」
 海原を進み、前人未到の島や海域を我先にと制し、そこにあるものを自分のものとする。
 そういう体験をローレットの者にもさせる事で、海賊なりの感謝を伝えたいということだ。
「行き先は最近見つけたちょいと特殊な島でな。普段はただのでっけぇ岩礁にしか見えねぇんだが、潮が引くとそこに島が出てきてな。調べたところ、複数の入り口を持つ遺跡だってことがわかったんだ」
 本来なら自分達だけで探り、その宝をごっそりいただくのだが。
「その入り口の一つを、あんたらに提供したい」
 と、そういう提案だ。
 もしそれを飲むならば、いつものように八人のグループを一組作り、海賊船に揺られて現地へ。
 干潮時に現れる遺跡の入り口を押し広げ、未知の世界へ潜る事になる。
「それに際して、注意点がある」
 干潮時に潜ると言うことは、潮が満ちるとまた海の中に沈むということだ。
 そうなると、水圧で中からは開けられないし、次の干潮まで中がどうなるのかわからない。
「つまり、時間制限がある」
 それは、およそ三時間とちょっと。
 行きと帰りの往復に掛かる時間を考えて動かなければならない。
「遺跡はトラップだらけだ、アクシデントもあるだろう、それをいかにして掻い潜りお宝を手に入れて帰るのか……どうだ、ワクワクすっだろ? するよなぁ!」
 そんなわけで、海賊からの誘いを受けるか否かは、イレギュラーズに委ねられた。

GMコメント

 ユズキです。
 なんかちょっとゲームブック的冒険どうでしょうな依頼です。
 以下の補足を読んで、楽しい冒険しましょう。

●依頼達成条件
 冒険する。

●遺跡について
 大体入り口からお宝がある場所までは歩いて一時間です。
 なので、往復二時間です。

●遺跡のトラップについて。
 途中途中で別れ道が4つあります。
 右か左、どちらを選ぶかでどの罠が発動するか決まります。
 選んだ後の選び直しはダメですよ! メッ!
 長さ自体は同じなので、罠の内容だけ変わると思ってください。
 ちなみに帰り道では発動しません、親切。
 
 以下、罠の種類と消費時間。
 対応策やスキル等を使うことで消費時間を抑える事ができるかもしれません。

 ・鉄槍が四方から出てきた!
 1~5分の消費。

 ・出口付近で大岩が転がってきたぞ! 逃げろや逃げろ!
 5~15分の消費。

 ・複数の骸骨兵が行く手を遮った、蹴散らして進め!
 5~15分の消費。

 ・ガコンッと足元が口を開けた、落とし穴の連続だ!
 5~15分の消費。

 ・行き止まり、かと思いきやパズルが設置されている。並び替えて壁を3回開かせる!
 5~20分の消費。

 ・急勾配の上り坂……すごい疲れる……!
 強制10分の消費。


●その他
 大体なにしてもたぶん平気です。
 タイムオーバーになった段階で、皆さんは自動的に「これ以上はまずいな」となって引き返します。
 めちゃくちゃシリアスな雰囲気で挑んでも、はちゃめちゃボケ倒して進んでも、両方兼ね合わせても、なんだかんだ進行します。
 れっつ海賊。

  • 冒険でしょ完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年10月04日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
アト・サイン(p3p001394)
観光客
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声

リプレイ


 海を行く船は、賑やかだった。
 波を割り、上下に揺れ、目指す島へ一直線に向かうその甲板上。
 八人のイレギュラーズが居るからだ。
「ああ、久々のダンジョン、久々の冒険ね……!」
 舳先に近い場所で到着点を見る『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は思う。
「……どうして本業が来たときに限って私は戦闘特化なのかしらね……!」
 適材適所、というものだ。
「まあまあ。頼りにしてるよ、司書?」
 と、イーリンをその偽名で呼ぶのは『観光客』アト・サイン(p3p001394)だ。
 目深に被るフードの奥から笑みを覗かせ、嘆息するイーリンを見ている。
「それに、一緒に冒険できるのは楽しみだ」
「ワタシも頼りにしてますよ?」
 そんな二人に、『放浪カラス』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)が近づいていく。
 海洋貴族の一人として、海賊とお付き合いがなかったわけではない彼だが、冒険に誘われる経験は流石に無かったのかもしれない。だから、
「いやぁ、宝探しとはロマンだねぇ? しかも専門家が二人同行とはね!」
 ちょっとノリノリだ。
「いざ船よ、我らを財宝の島へと連れていってくれたまえ!」
 いや大分ノリノリだった。
「元気でいいねぇ」
 眩しい、という風に目を細めてそれを眺める『水底にて罰を待つ』十夜 縁(p3p000099)は、船室へと続く扉の横に腰かけていた。
「待ち受けるトラップだらけの海中遺跡、か……いやー最高に浪漫だ。非力なおっさん的には恐ろしいけど」
 可能なら見張りを兼ねて入り口付近で待機したい、と、彼は思う。
 だが仕事として受けてしまったのでは仕方ない。
「そこら辺、諦めるのがようござろうなぁ」
 そんな心情を察した『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が側で苦笑する。
 怠惰な雰囲気を感じるが、船に乗ってしまった時点で労働は免れないのは、本人も理解のある所だろう、と。
 そう思うのだ。
「しかし、義理堅い海賊が居たものでござる」
 見る先、舵を取る船員の姿が見える。目が合うとにこやかに白い歯を剥き出しに親指を上げてくる、ノリの良い船員だ。
「財宝も楽しみでござるし、腕試しにも丁度よかろう」
 舳先の三人とはまた別の意味で、下呂左衛門も前向きだ。
「財宝の島で海賊ごっこか……」
 と、跳ねる波の飛沫を、船ベリの欄干に寄って見ていた『特異運命座標』秋宮・史之(p3p002233)が呟く。
 すぅ、と鼻で空気を吸い込めば、飛び込んでくるのは潮の匂いだ。
 海洋らしい風景と雰囲気に、これから起こる冒険へのワクワクが胸にある。
 あるが、しかし。
「俺……トラップへの対処力がなあ」
 仲間みたいな特殊な技巧があるわけではない。サポートがメインになる、という自覚があり、そういう不安もまた胸にあるのだ。
「気にすることはないわ!」
 そんなナイーブな史之に言うのは『慈愛のペール・ホワイト』トリーネ=セイントバード(p3p000957)だ。
 ニワトリ然とした彼女はふわりと欄干に飛び乗り、史之を見上げる。
「だーんじょんだーんじょん、大丈夫。誰にも役割があって、ニワトリ魂もこけぇーっと唸るわ!」
 うるさかったならごめんなさいよ、と二つの翼でくちばしをバッテンする姿は愛らしい。
「みんな、島がみえたよ」
 船室の屋根から見ていた『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)の言葉に皆が見ると、海から浮かび上がるようにして、島があった。


「はーいみんな、余分な荷物はなし。腹は五分目、準備運動は終わった?」
「はいせんせ」
「はいカタラァナ」
「おやつはバナナに入りますか?」
「バナナをおやつにしなさい、入りません」
 イーリンとカタラァナの、そんなやりとりと確認を終えた八人は島に降り立った。
 鈍く、重厚な扉に閉ざされた入り口の前へ進むと、それは自然と両開きに口を開ける。
「さて、これから先はローグの領域だ。ダンジョンを踏破し、勝利を得る。その為に、全力で行こうか」
 先頭を切って、アトが進む。
 手には3m程の棒を持ち、反対の手にはカンテラで明かりを確保。
 その横に下呂左衛門、カタラァナと並び、後ろにイーリン、トリーネ。
 最後尾には史之とレイヴン、縁と続く。
 そうして潜る薄暗い遺跡の入り口から、いきなり左右への分かれ道が現れた。
「いきなりですねー……どちらを進みます?」
 問うたのはレイヴンだ。
 それに、顎に手を当てたイーリンは一瞬の思考を挟み、意見を求める事に決めた。
「そうね……カタラァナ、どう?」
 聞く先は、広域の探査に優れるカタラァナだ。
 彼女は一歩だけ仲間から前に出て、短く、大きく空気を体に取り込むと、
「ーー」
 まず一音、口から吐き出す。
 平地ではおおよそ、半径100mまで届く澄んだ声が、遺跡の壁や床、天井を震わせ反射して通る。
「どっちの道も、特に何もない通路って感じだよ? ちょっとだけ上り坂になっているけど」
 歩くのに支障は無さそうだ、と続けると、側壁を調べていたアトも、そこに大きな特徴の差は無かった様だ。
 それなら、もう、手段は一つで。
「十夜、直感を信じよう」
「いきなりおっさんに振るのね……そうだねぇ」
 勘を信じよう。
 そんな意味で託され、縁はやれやれとボリボリ後ろ頭を掻きながら、右、左と見る。
 なんとなく右の方な気がするが……。
「イーニーミーニー」
「マイニーモー♪」
「イーニーミーニー?」
「マイニーモー!」
 前で女二人が占いというので歌っているが、それで俺を見ないでくれ。と溜め息混じりに縁は右を指差した。
「では行くでござる」
 先陣は下呂左衛門だ。
 棒で地面を叩くアトと、反響音で構造を把握するカタラァナが耳を使うならば、
「拙者は目と鼻を使うでござるな」
 もちろん五感は、常に最大限に働かせるが。
 些細な違和感一つ、逃す訳にはいかない。
「通路の先が特に無いって事は、聞いたトラップの内、どれが可能性あるのだろう?」
「そうね……落とし穴とパズル、それから上り道の可能性は消えたと見ていいわ」
 史之の疑問にイーリンが答える。
 カタラァナが伝えた構造では、床下の空間は無いし、壁も無い。上り坂も、上るのに支障が出るほどじゃなかった。
 つまり。
「つまり、槍か、骸骨か、大岩転がし……」
 ラッキーなのは槍だろう。
 何せかかる時間が少ない。
「大岩だと困っちゃうわね! 私なんかプチっといっちゃうわ、プチっよ!」
 パタパタと翼を広げて訴えるトリーネがそんなことを言って震える。
 その光景を想像してしまったのだろう。
「ねえ」
 不意に、何かに気付いたカタラァナが、
「前に岩、落ちてくるよ」
 と、クスッと笑いながら、震えるトリーネに言った。
「ギャー! 大岩ー!」
「こけええぇ! ぺしゃんこはいやぺしゃんこはいやああぁ!」
 ごとん、ゴロゴロ。
 前方、通路の終わり付近。その天井に開いた穴から落ちてきた丸い岩は、緩やかな斜面の床を少しずつ進み、加速を得て転がってきた。
 悲鳴をあげるレイヴンとトリーネを尻目に、岩が落ちて転がる一連の流れが見えていた下呂左衛門は前に進む。
「まあ、拙者、頭を使うより気合いで、の方が向いてござるゆえ」
 浅く息を吸い、深くそれを吐く。
 腰を軽く落とした前傾姿勢で、もう一度息を吸い、一拍。
「ああ、これじゃトレジャーハンターじゃなくて、遺跡荒らしだわ……」
 イーリンが嘆きながら、大岩へ向けて魔力砲撃をぶちこんだ。
 止まりはしないが減速をしたそれに、史之が追撃で飛び込む。
 低い姿勢で行き、転がる岩の方向に逆らう意識で、下から上へ。
「くらえ! 暇を持て余した俺の八つ当たり!」
 手首についた装置を起動し、現れる円形の障壁で殴り付ける。
 そうして、一瞬の停滞を受けた岩を、
「ーー!」
 下呂左衛門の一刀が真っ二つにした。
 バランスを無くした岩はそのまま左右に崩れて転がり、真ん中に道が開く。
「うむ。この道はこれで5分、と言った所でござろう」
 遺跡に入ってから、約20分が経過した頃だった。


 一つ目の罠を越えた先は、下りの階段が続いていた。
 縦長の通路は薄暗く、アトのカンテラが足元を照らさなければ、少し不安の大きい行軍となっただろう。
「あるこう あるこう」
 カツン、カツンとアトが叩く音に合わせて、カタラァナが歌う。
「みぎむいて ひだりむいて
 うえむいて したむいて」
  そうして辿り着いた二つ目の分岐点。
 側壁や床を調べても特徴は無く、構造的には階段と続いて下がっているという事だけはわかる。
「ぐるっとまわって みたならば
 どっちにいったら えんじゃろな」
 と、歌も終わり、しかし判断材料も無ければ直感に頼るか、それか。
「……左側だ」
 からんと棒が倒れる。
 いっそ運試しというやつだ。
 史之が倒した棒の先、左の道をイレギュラーズは進む。
「しかし、どんどん下がるもんだな」
 最後尾でのんびり歩を進める縁が、楽しげに前を行く仲間を見ながら呟いた。
「大体、もう30分になるか」
 既に遺跡の外は海の中だろう。制限時間内は平気とはいえ、
「水没だけはしたくねぇモンだ」
 嫌な想像は付いて回る。
 だが、しかし、まあ。
 浅い溜め息を一つ吐いて、
「おっさんの活躍しない罠に当たってくれ」
 そんな怠けた事を思う。
「うげ」
 と、嫌そうな声が前から上がる。
 見れば、先は行き止まりだ。
 なんの変哲もない壁があり、しかしその少し前に台座がある。
 四角形に盛り上がった台座は大人の腰暗いの高さまであり、その中央に細かいパネル状の破片が散らばっていた。
「パズル、ね」
 覗き込むイーリンとは逆に、後ろへ下がった下呂左衛門と史之とカタラァナと縁とレイヴンは思い思いに力を抜いて。
「じゃ、よろしく」
「諦め早いね!?」
 適材適所だ。
 そういうことにしよう。
「まあまあ任せてちょうだいな。にわとりはとてもかしこいので。こんなのよゆーなので」
 と、ぴょーんと台座に飛び乗ったトリーネの手元を見る。
 翼で器用に嵌め込んでいくパネルは、どうやら絵柄と模様を正しく繋げるモノのようだ。
「……ええと」
 合わない。
「ほら、ここ。ここをこうして……」
 合わない。
「……じゃあよろしく!」
 こけー! と鳴いたトリーネは傍観組に混ざった。
「はぁ……アト、どう見る?」
「そうだね」
 やはりそこに向かうのはイーリンとアトだ。
 といっても、解くのはアトがメインで、イーリンはそれを観るという感じになる。
 数多くのダンジョン経験を持つアトの、パターンに当て嵌めたやり方で、正解を導く考えだ。
「よし、開いた」
 パチンと嵌め込んだ最後のピースが、目の前の壁を左右に開かせる。
 そうして見えるのは、また新しいパズルの台座と壁だ。
「……うん、大丈夫。ちょっとレイヴン、こっち来てパズル動かして」
「え? ワタシやるの? え?」
 マジで? 正気?
 と言いたげなレイヴンを手招きしたイーリンは、台座の前に立つレイヴンに指示を出す。
「私の言う通りに動かしてくれれば、間違いないわ」
 一度バラして取り出したパネルを、彼女は観る。
 それだけで、そのパズルの正解を、イーリンは知る。
 いや、知っていたことに出来た。
 トリーネの試みとアトが導いた正解。それを材料に、イーリンのギフトがそう導いたのだ。
「おお、出来た、開きましたよ! ワタシもしかしてスゴい……?」
 結果、イーリンの指示通りにパネルを嵌め込み、レイヴンは残り二つのパズルを見事に突破した。


「ここまでざっと、50分弱ってとこかな……あ、何か飲む?」
 分岐点三つ目。
 史之からの補給を受け、小休憩を挟む。
 遺跡の踏破率と罠突破のペースと合わせて考えても、かなり余裕がある方だろう。
 だから、進む。
 選んだ右の道は平坦だ。
「ねね」
 と、不意にカタラァナが喋った。
「足元、穴があるよ」
 それは、罠を発見した報告だ。
 よく見れば細い穴が、床の右半分辺りに空いている。
「そこを避ければ良いってことね!」
 見えている罠など罠ではない。
 そっと左側に寄って穴の隣へ踏み込んでトリーネは行き、
「あ」
 と、誰かの声と同時に、左右の壁から槍が噴出した。
「トリーネ!」
 長く使われてなかった罠なのだろう。
 穴に溜まった埃が勢いに吹かれ、視界を悪くする。
 そして、暫く経ち、晴れた頃。
「こ、こけぇ……トサカ、今のトサカを掠ったのだけど……!」
 小さな体が幸いし、槍はギリギリトリーネの上を貫通していた。
「カタラァナ殿……あれ、わざといわなかったでござるか……?」
「え? まあ、ほら。致命的な感じじゃなかったから」
 出現した槍をイーリンの魔砲がぶち抜くのを見ながら、下呂左衛門は遠い目をした。
 呆れだとかそういう気持ちは半分程で、目による穴の確認の為だ。
 通過する魔力の光に照らされた壁や床、天井に、穴は見受けられない。
「では、気を付けて進むでござる」
 拙者がしっかりせねば。
 意識を新たに、通路を進んだ。

 槍のトラップ通路は、調査された罠の中で最も時間消費の少ないものだ。
 実際、一度発動すると全ての槍が出てくるだけで、それをまとめて薙ぎ払ったので、ただの通路ともはや変わらない。
 だから、ものの5分で通路を抜けたイレギュラーズは、その勢いのまま合流地点を進み、次の分岐点へ向かい道を進む。
「ここが最後だね」
 言ったアトは、これまで同様に分岐の壁や床を調べる。
 右は、これまでと同じだ。
 しかし、左は。
「こっちだけ、少し荒れている……」
 素材や造りは同じだが、汚れや欠けが見える。
 明確な差だ。
「どっちの方が楽かな、十夜?」
 判断は付かない。だからまた、縁の直感に頼る。
 聞かれた縁は、持ち込んだ酒を軽くあおり、喉を湿らせると一つ頷く。
「左の方が楽そうな気がするな」
「じゃあそうしよう、宝はもうすぐだ」
 うきうきを少々と、警戒と注意は最大に。
 八人は最後の罠に飛び込んでいく。
 荒れていた壁肌は進む距離に比例するようにさらに荒れ、少しだけ幅が広くなったようだ。
 そうして、その道の先。
「気を付けて」
 床にごろごろと転がる物が見えた。
 それは、カンテラの火に照らされながら震える様に立ち上がる。
「聞いてた骸骨兵だ……!」
 数は多い。道の先を見通せない位の物量だ。
「あーれえー、たすけーー」
 わざとらしく、襲ってくる骸骨に声を上げたカタラァナの隣を、史之が通りすぎた。
「出番……じゃなかった先に進みたいんだよ俺達は!」
 ちょっと本音と共に拳をぶちこみ、吹き飛んだ骨が後ろの骸骨を巻き込んだ。
「ああ、修行時代を思い出すでござる……いや、あれに比べれば、骨の無い試練」
 さらに進む下呂左衛門は、抜いた太刀で両断していく。
 こちらの方が向いていると言わんばかりの二人だ。
「……後ろから着いていこうか」
「まあ、時間に余裕はあるわ。慌てず、急いでいきましょう」
 バキバキと骨が砕ける爽快な音の鳴る通路を、苦笑いの六人が歩いていった。


 遺跡に突入から、経過時間、1時間と30分。
「これは……」
 イレギュラーズは最奥、宝物庫の中に居た。
 目の前にはきらびやかな財宝が宝箱に押し込められて、台座に鎮座している。
 それを、アトが慣れた手つきでザックにまとめて仕舞う。
「よかった……おめでとうここまで来れた君たちの結束が何よりも得難い宝だ、とか言われなくてよかった……」
 かなり具体的に嫌なオチを想像した史之は置いておいて。
「イーリンやアトは、いつもこんなダンジョンに潜っているのか……体力と知能の休まらない事だ……」
 しみじみとレイヴンは感嘆に耽る。
 フィジカル面の弱い系なのだ。
 と、そんな彼の横をアトがダッシュで駆け抜けた。
「よし、スタコラサッサとここを出よう」
「え、なんでダッシュ?」
「というかなんか、この遺跡揺れてないかしら」
「もしや宝を取ったら崩れるとか、ありきたりなオチでござるか?」
「こけぇ!? 水没は嫌よ!」
「僕は水の中でもいいけどー」
「どこまでもおっさんに優しくないねぇこの遺跡……!」
 来た道をイレギュラーズは全速力で駆け抜ける。
 そうして船に戻り、肩で息をしながら沈む島を見送った。

 ちなみに揺れたのは、実際はただの地震だったとか、そういうオチ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
参加ありがとうございます。
またの参加を待ってます。

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