PandoraPartyProject

シナリオ詳細

煌浄殿の秘密の扉

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

秘密の扉の先に


 春に降る雨は何処か冷たく感じるものだ。
 暖かな陽光は分厚い雲に隠れ、桜の薄紅色もくすんで見える。
 憂うように障子を開けて雨空を見上げた樋ノ上セイヤは小さく溜息を吐いた。

 セイヤは煌浄殿に棲まう呪物である。
 煌浄殿とは深道家に仇成す夜妖を回収し封じる役目を担う場所。
 普通の人では太刀打ち出来ないような凶悪な夜妖を服従させ深道の力とする。
 一見すると夜妖にとっては監獄のようなものに見えるだろう。
 しかし、それは間違いだとセイヤは考える。
 夜妖にとってこの煌浄殿こそが安らぎの揺り籠なのだ。
 自分を害する凶悪な夜妖も居なければ、追い払う人間も居ない。
 人間を弄んで殺してしまうよりも、もっと愉しい出来事が沢山あるのだ。

「ねえ、セイヤ……廻を放してあげて」
 チック・シュテル(p3p000932)が首を横に振って近寄ってくる。
 此処は煌浄殿のセイヤの部屋。和室にラグが敷かれ、そこら中に玩具やぬいぐるみが散らばっている。
 部屋の隅にはX字の磔台があった。この部屋自体が呪物としてのセイヤである。どんな内装にも変えられるし、猫耳尻尾を生やしたり、ミィミィしか言えなくしたり出来るのだ。
 つまり、この部屋に入った時点で罠に嵌ったようなもの。

 セイヤはチックを見上げ首を傾げた。
 このチックは『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)の友人で、時々こうして煌浄殿へとやってくる。
 セイヤも夏祭りの時に出会い、仲良くなったのだ。ふわふわしていて弄り甲斐がありそうだとセイヤは前々から思っている。
「え? 痛いことはしてないぜ? ミィミィ喜んでる」
 いつものように廻で遊んでいたセイヤ。今回はバニー衣装だ。ぷりんとしたお尻と太もものベルトが芸術点が高いとセイヤは思っていたのだが……チックはお気に召さないようだ。
「というか、何も縛ったりしていない。ぬいぐるみにしがみ付いてるのは廻の意志だぜ」
「でも……嫌がってる、よ」
 チックはそう言うが。廻は本当に嫌がっているのだろうか。恥ずかしそうにしているだけで逃げようともしていない。暴れたりもしない……まあ、最初の方は力加減が分からなくて骨折ったりしたけれど。
 ひょっとすると、縛られたり遊ばれたりするのが好きなのではないか。この目の前のチックも、実は廻のようにされたいのではないか。
 ――――いや、そうに違いない!

「じゃあ、チックも一緒に遊ぼうか!」
「え? ちょ……セイヤ!? ダメだよ! だめだってば!」
 セイヤはチックとの距離を詰め、細腕を掴んだ。力の差は歴然。
 抵抗しているつもりであろうが、チックではセイヤを振りほどけない。
 己のテリトリーに居る夜妖は強力である。
「あれ? 首のとこどうしたの? 赤いタトゥー?」
 慌てた様に首元を抑えるチックにセイヤは新しい玩具を見つけたような愉しげな顔をした。
「もしかして、春泥が言ってた『烙印』か? ははぁ……なるほどねぇ! えー、めちゃ面白い事になってんじゃん! チックこっちおいで……吸ったらどうなるのか見たい!」
 逃げようとするチックの手をぐいぐい引いて廻の元へ連れてくるセイヤ。
 廻を抱え込んだセイヤはそのままチックをも抱き込む。
「セイヤ、止めて……っ!」
 今のチックにとって小刻みに震える無防備な廻の肌は美味しそうに見えてしまう。
 血を吸いたくなってしまう。
 自分の口を押さえたチックに、セイヤは口角を上げる。
「吸いたいのに、吸いたくないって我慢してるお前の顔は、興奮するなチック」
 玩具を見つけた子供みたいに呪物(セイヤ)は満面の笑みを浮かべた。


 煌浄殿の一の鳥居の前でぺこりとお辞儀をした『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)は集まったイレギュラーズの中にニル(p3p009185)を見つけて手を振る。
「集まって頂きありがとうございま……」
「ウオオオオオ! ニル!! ニル!!!! お菓子くれるのか!?」
 テアドールの言葉を遮って、大きな白い犬が二匹、ニルへと突進した。
 べろべろとニルの顔を舐めている犬達は煌浄殿の呪物『シジュウ』である。
「わ、わ……シジュウ様、くすぐったいです」
 顔だけでなく腕や首をべろべろと舐め出すシジュウの頭をボンと叩いたのは、煌浄殿の実務を担当する深道海晴だった。
「シジュウ、ニル君が困っているからやめなさい。やめんと今日のおやつは無しやからな」
 海晴の声にビクリを身体を震わせたシジュウは犬の姿から人間の姿へと変化する。
「お菓子はいる。大人しくする」
 シジュウの変わり身の早さにニルとテアドールはくすりと微笑んだ。

「集まって貰ったのは、セイヤの部屋から廻とチック君を連れて帰って来て欲しいからなんだ」
 海晴はテアドールに頷いて説明を交代する。
「セイヤはこの煌浄殿のどっかに居るんだが、隠れててな……俺だと中々探せないんだ。特に、邪魔されたくない時は全く見つからなくなる。明煌だったら分かるんだが今、呪物回収で出かけててな」
 この煌浄殿の主である深道 明煌(p3n000277)は不在ということらしい。
「でも、どうやって見つけるんだ?」
 アーマデル・アル・アマル (p3p008599)の問いかけに海晴は頷く。
「ああ、それについては大丈夫だ。セイヤはお前さん方ローレットのイレギュラーズには興味津々なんだ。だから、セイヤの部屋に行きたいと思ってドアや戸を開けると繋がってる」
 海晴がいくらセイヤの部屋に行きたいと願っても繋がらないのだという。

「でも、セイヤさんの部屋は何だか大変な事になると聞いたことがあります」
 ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)は、呪物たちからセイヤの部屋について少しだけ聞き及んでいた。
「uu……大変なこと?」
 怖い事だろうかとリュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は服を掴んで視線を落す。
「何でもセイヤ殿の部屋に行くと、バニー衣装やロリータ衣装を着せられると廻殿が言っていたね」
「……こわい、こと?」
 隣のヴェルグリーズ(p3p008566)の言葉にリュコスは顔を上げて首を傾げた。
「我は拘束されて鳥の羽で肌をくすぐられると聞いたけどねぇ」
 武器商人(p3p001107)はいつの間にか傍に来ていたナガレへと振り向く。
 視線を向けられた煌浄殿の呪物『ナガレ』は「そうですねぇ」と顎に指を当てた。
「廻様は、セイヤに様々な衣装を着せられていますね。可愛いものから際どいものまで。セイヤの部屋に入ると彼の良いようにされてしまうんです。声を猫みたいにされたり、縛られたり。文字通り彼の着せ替え人形ですね。美しさに煩い呪物なんかは『品が無い』とか言ってましたけど。私は愉しいスパイスになると思いますけどね。……私も行ったら香りで酔わせてあげますけれど」
 くすりと微笑んだナガレにぷるぷると身を震わせるリュコス。

「とりあえず、そのセイヤさんのお部屋に行けばいいんですかね」
 マリエッタ・エーレイン(p3p010534)の声に海晴は頷く。
「そうだ。セイヤの部屋に行って、奴が満足するまで遊んで……遊ばれるが正しいかもだが。とにかく、遊んで来てくれ。そうしたら全員帰ってこれるだろう。まあ、心配しなくても明煌が帰って来れば迎えに行けるから大丈夫だろう」
 よろしく頼むと海晴はイレギュラーズ達を送り出した。

GMコメント

 もみじです。煌浄殿の呪物『セイヤ』の部屋で遊びましょう。

●目的
・セイヤの部屋で遊ぶ
・セイヤの部屋で遊ばれる

●ロケーション
 再現性京都にある深道本家。
 母屋から少し離れた場所にある煌浄殿の『セイヤの部屋』です。

 和室、洋室など様々な場所に変化します。
 基本的には和室に玩具やぬいぐるみがが散らばった以下のような空間です。
 https://rev1.reversion.jp/illust/illust/70069

●出来る事
 セイヤの空間(テリトリー)なので、何でも大体大丈夫です。
 ひとりずつ入ってもいいですし、皆で入っても問題ありません。
 恥ずかしい場合はひとりで大丈夫ですよ。

 セイヤは皆さんに興味津々です。
 皆さんをどんな風に着せ替えしようかとワクワクしています。
 とても楽しんでいるので、無理矢理ぐいぐい着せられます。仕方ないです。
 セイヤは皆さんの恥ずかしがっている姿や、嫌だけどドキドキする姿をとても喜びます。
 そう、全てはセイヤのせいで、仕方ないので大丈夫です。

『どんな衣装を着せられるのか、その時どんな表情や仕草をしているのか』を書いてみましょう。
 例えば
・バニー衣装、ロリータ服、はだけた和服、猫耳尻尾を着せられたら?
・もし、拘束されたり縛られたり、猫の声にされてしまったら?
・鳥の羽で肌をフワーと触られたら?
・顔を真っ赤にしてぬいぐるみで隠そうとしたり?
・ドキドキするけどされるがままだったり?

 また、セイヤの部屋は何処にでも繋がっているので、探索をしてもいいでしょう。
 ただし、そこが煌浄殿の中とは限りません。迷って戻って来られない恐れもあります。
 深く探索する場合は『不明』になる場合があります。相応の覚悟の上でお願いします。

●NPC
○樋ノ上セイヤ(ひのえせいや)
 よく本殿へ入り込んで怒られている呪物です。
 他の呪物は明煌の言う事をよく聞きますが、セイヤは比較的自由に振る舞います。
 特に廻で遊ぶのが面白いのか、ちょっかいをかけては明煌の怒りに触れています。
 今回も明煌に無断で廻で遊んでいました。

 セイヤは皆さんに興味津々です。
 皆さんをどんな風に着せ替えしようかとワクワクしています。
 セイヤは恥ずかしがっている姿や、嫌だけどドキドキする姿をとても喜びます。
 沢山のイレギュラーズが遊びに来てくれて、大興奮しています。
 めちゃくちゃ遊ばれるでしょう。

○『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)
『泥の器』にされてしまい穢れた状態です。
 浄化の影響で体力が無くなっているようです。疲れやすく熱をよく出します。
 呪物が作る花蜜で栄養を補っています。
 浄化の影響で左脚が動かなくなりました。右脚も動かなくなりました。
 今はバニー衣装を着せられてミィミィ言ってます。

○『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)
 ROOの事件、竜との戦いを経てイレギュラーズの皆さんの事がとても好きです。
 今まで外に出られなかったので、色々な事を教えて欲しいと思っています。
 今回は、廻の左脚に続き右脚が動かなくなったと聞いて、
 魔術と科学技術を合わせた補助具を持って来ました。
 セイヤの部屋に入るのは初めてです。

○呪物達
 参加者の関係者の呪物は連れてくることができます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●サポート参加
 セイヤに遊ばれたいという方の為につけておきました。
 描写量はイベシナ相応です。行動は絞ったほうがいいでしょう。

  • 煌浄殿の秘密の扉完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年04月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC7人)参加者一覧(8人)

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
武器商人(p3p001107)
闇之雲
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)
翠迅の守護
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ


 煌浄殿の二ノ社の襖の前に集まったイレギュラーズ。
 ごくりと喉を鳴らし、其れ其れがセイヤの部屋へと吸い込まれていく。

「こうしてはいられないねぇ、廻君にチックさんを助けに行かないと!」
『陽だまりの白』シルキィ(p3p008115)は何処からでも入れる不思議な空間に感心しながらドアを開ける。
 部屋の中には大きな縫いぐるみにしがみ付いている『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)が居た。
「み、ミィ!」
「……えっ、廻君。わぁ……その……ねぇ?」
 廻にとってシルキィにこのバニー姿を見られるのは、何よりも羞恥である。
 顔を真っ赤にした廻と同じようにシルキィも頬を染める。
「じゃあ、シルキィちゃんも着よっか!」
「……えっ、わたしも? 着るの? それじゃあ……どうせなら、廻君とお揃いがいい……です」
 顔を真っ赤にしたシルキィは「皆を解放してねぇ?」とセイヤに懇願した。
 シルキィの衣装が廻とお揃いのバニー衣装に替わる。
「可愛いねぇ。廻と並べればもっと可愛いねぇ」
 セイヤはうきうきとシルキィと廻を並べて二人を鳥の羽で撫で回した。
「みぃ……みぃ」
「ミィ、ミィ」
 ……これはとても可愛いです( ・◡・*)

「えっと、セイヤ様はチック様のご友人なのですよね……? チック様が帰れなくなったと聞いて様子を見に来たのですけど」
 どうしてはだけた和服を着せられているのだろう。『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は小首を傾げる。
「可愛いねえ。じっと見ちゃうよ」
 セイヤの視線が何だか恥ずかしくてジョシュアは頬を染める。
 何か身を守れそうなものは無いかと辺りを見渡して大きな縫いぐるみに気付いた。
「これで少しは……」
「そうやって恥じらってる姿もいいね」
 ぬいぐるみをわざと引っ張ってジョシュアの肌を露出させるセイヤ。
「やめて、ください!」
「でも、髪が紫色になってるぜ? 喜んでるんじゃないの?」
「違うんです誤解です!」
 近づいて来るセイヤにぶんぶんと首を振って、むずがるジョシュア。
 ――とても可愛い( ・◡・*)

(祝音君、大丈夫かな……)
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は友人の祝音の事が気掛かりだった。けれど少しでも負担を軽くしたいとヨゾラはセイヤの部屋に入る。
「わわ……これは」
 バニー衣装は思ったよりも露出が激しい。
(まずいなこれ、本体が……魔術紋部分が奴に丸見えだ)
 鳥の羽がどこからか舞い降りてヨゾラの肌を撫でた。
「ひゃああっ!? 待ってそこはやめて! タトゥーっぽい部分、僕の本体だから……!」
 魔術紋を掠めた羽根にヨゾラは驚いて飛び上がる。
「次はどんな衣装がいいかなー?」
 わくわくと楽しそうなセイヤの顔がヨゾラの真上に見えた。これでは探索には行けなさそうだ。

(セイヤには怒ってる……けど、機嫌を損ねれば二人が危ない)
「だから……着せ替えられに、行きます。みゃ」
『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は一人でセイヤの部屋を開ける。
 前にうさ耳の巫女姿になったことはあるけれど。バニー衣装は露出が多くて恥ずかしい。
「次は猫耳かなー?」
「猫さんだ。みゃー」
「縛ってみる?」
 セイヤの言葉に祝音はブンブンと首を振った。
 これで猫の声にされてしまったら廻達と話せなくなってしまう。
 セイヤの部屋はどんな場所にもなる。
 一人で入った祝音は、涙目で誰も居ない部屋の中でセイヤと対峙していた。

 煌浄殿の呪物ナガレと『Luca』ファニー(p3p010255)、『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)を伴って部屋のドアを開けた『闇之雲』武器商人(p3p001107)は不敵な笑みを浮かべる。
「人間で遊ぶのが好きな呪物か。割と気が合いそうだな。さーて、俺は他の奴らの情け無い姿を眺めて楽しませて貰うとすっか」
 クウハの発した言葉も武器商人のカメラに収められている。
 意味も無く録画しているのだ。長年のイレギュラーズ生活でこういう依頼は録画をしなければならないと染み付いているのかもしれないと武器商人は頷く。
「商人が『興味があるならおいで』って言うから来てみたが……随分とファンシーな部屋だな……」
 ファニーは部屋の中を見渡して大きな縫いぐるみや玩具を見つめた。
「やあ、いらっしゃい。いっぱい来たね。どんな服を来たいんだ?」
「着せ替え……えぇと、オレでも着れそうな可愛いやつってあるのか? 可愛いやつっていうか、「可愛い」って言ってもらえるようなやつというか……」
「もちろんあるよ! このバニーなんてどうだ!?」
 ファニーの言葉にうきうきと目を輝かせるセイヤ。
「……うん? バニー? いやバニーって女物だよな……?」
「大丈夫大丈夫。廻はとても似合ってたから。ファニーくんだっけ? も似合う似合う!」
 色違いもあるからとセイヤはファニーへバニーを着せる。
「違う違うそうじゃない! 耳は折れ耳がいいかなとか知るか!」
 悪態をつくファニーをちょっと引き気味に見つめるクウハ。
「見るな……」
「お、おう……」
「そっちの子も一緒に遊ぼうぜ! 皆で着せ替えだ!」
 セイヤは今度はファニーの隣に居たクウハの前に立つ。
「あ? 俺でも遊ぶって? いや、いいだろ。獲物他にいるじゃねーか」
「うんうん。可愛く着せ替えしようなぁ!」
「話聞けってオイ!! あーもう畜生、仕方ねェな……。で? 何を着ろって? あ゛?」
 バニーボーイと聞いてセイヤを睨み付けるクウハ。
「ふざけんじゃねーぞ、俺は猫だ。兎を愛でんのは好きだが、自分が兎になんのは真平ごめん……、ってオイ!やめろ触んなこっちくんじゃねーよ!! 嫌だっつってんだろうがクソ野郎が!!」
 此処はセイヤの部屋。為す術もなく着せ替えられる。
「チッ、何だっつーんだこの腐れ呪物が……。前言撤回、コイツとは絶対仲良くなれねー……」
「2人共兎だねぇ、よく似合ってるよ」
 武器商人の微笑みに耳を下げるクウハとファニー。
「うるせーよ……」
「……え? 嬉しくない? そぉ? そっかァ……」
 これは唯の害の無いお着替えだ。カメラを回す武器商人もいつの間にかはだけた和服をきせられている。
 はだけているといっても、胸元は隠れているし見えているのは膝ぐらいまで。
 何時もと変わらないようなと首を傾げるクウハとファニーに武器商人は微笑む。
「ふふふ。羽根で撫でられるのは流石に擽ったいかな?」
 なんて全く擽ったく無さそうな声で武器商人はセイヤに振り向いた。

「いたずらっこのセイヤから廻とチックを助けにいくよ!」
 なんて意気込んでいた『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は一緒に入って来たはずの仲間とはぐれたことに気付く。
「あれ? みんなどこ?」
「やぁ、いらっしゃい」
「Uhhaaaa――!!!!」
 言葉にならないリュコスの声がセイヤの部屋に響き渡った。
「あ、あ……セイヤ。ねえ、チックと廻は? かえして」
「一緒に遊んでくれたら返してあげるよ。大丈夫、怖く無い。ちょっと着せ替えするだけさ!」
 傷付けあわなくていいならとリュコスは渋々と了解する。
「Uhh…これ知ってるよ」
 リュコスが着せられているのはメイド服である。
 しかし、以前来た事のあるものより、風通しが良い……全体的に短いのだ。
「すごいすーすーする……肩が寒い……」
「ふふ、可愛いなあ!」
 リュコスはスカートの裾をぐいぐいと引っ張る。中身が見えそうだったからだ。
 もじもじとするその仕草が何とも可愛らしい。
「そしてこのカチューシャはなに? うさみみ?? ぼくはおおかみなんだけど」
「大丈夫大丈夫。似合ってるし可愛いぜ」
 似合っていると言われれば、リュコスとてまんざらでも無い。
 少し嬉しくなって笑みがこぼれる。
「へへ、それで手をあげて……!?!??」
 素直に手を上に上げたリュコスの耳に重たい手枷が嵌められる音が聞こえてくる。
「はわ、わ」
 これでは自由に身動きが取れないではないか。
「セイヤ?」
「うんうん、可愛い。ほら、鳥の羽をファサーってしてあげるな」
「ひゃわ!」
 曝け出している二の腕や肩、おへそへ鳥の羽が触れる。
「次は膝から太もも……」
「くすぐったいよ、やめて!」
 顔を真っ赤にしたリュコスは擽ったさに身悶えた。足裏でセイヤの肩を押しても全く効いていない。
 逆にその足を取られて鳥の羽で触れられる。
「ふ、ゆるしてくだひゃい……ごしゅじん、さま」
「だーめ。ちゃんと言えなかったからもう一回、おしおきだ」
 セイヤのやることは事前に聞いていた。だからどんな可愛い恰好も受入れることができた。
 されるがままなのも全部計画通り……その間にポルが廻達を探してくれるはず。
 それでも、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいとリュコスは身を捩らせた。
 ――なんて可愛いんだ( ・◡・*)

「こんにちは、ぼくギュスターブくん。ええ! ぼくのメイド服姿が見たいって!? おませさんだなあみんな」
 等と供述しながら、ギュスターブくん(p3p010699)はダイナマイトボデェに合うメイド服を探す。
 フレンチメイドで布面積少なめの横幅広めのヤツだ。
 タンスを開けては、中の衣装を引っ張り出して首を振るギュスターブくん。
「なんだあ、男性物ばっかりの箪笥だここもハズレかあ」
 引き出しの中から布を摘まみ上げたギュスターブくんは「あれぇ?」と首を傾げる。
「なんかきっちり畳んである小さい布があるねえ これはお高いぱんつなのかな? みんなはどう思う?」
「ミィ……?」
 覗き込んだ廻は見覚えのあるパンツに目を丸くする。
「ミィミィ」
 必死に、これは「暁月のぱんつ」だと訴えるがミィとしか聞こえないので分からなかった。

「これはこれで困ったことに遭遇してしまいましたね、チアキさん」
「はい」
 眉を下げたチアキと『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はセイヤの部屋に続く襖の前に立ち尽くす。
「放っておくわけにもいかないので、お手伝いいただければと思うのですが」
「けれど、セイヤの部屋は……」
「ええ。セイヤさんのお部屋に関してはもちろん把握してますよ。それに、ちょっと協力してほしいこともあるんですよ?」
 調査がてら悪戯をしてみようなんてマリエッタが微笑むから、チアキも楽しい気持ちになってくる。
「ふふ、楽しみです、たまには私の反撃ですよ?」
 それは誰に宛てた言葉だったのだろう。
 マリエッタは襖に手を掛け部屋の中に入る。其処にはメルヒェンな空間が広がっていた。
「やあ、いらっしゃい。チアキも一緒なんだね。嬉しいなぁ!」
「ええ、どちらかというと遊ばれるより遊ぶほうが好みでして。けれど強引に暴れるのもどうかと……チアキさんもそのほうがいいですよね?」
 マリエッタの言葉にチアキは頷く。
「セイヤさん。たくさんお洋服を出せるんですね……こう、お嬢様が着るような……ゴシックロリータ、というタイプの衣装なんですがあります?」
「もちろん、あるよ。マリエッタにもチアキにも似合うと思う。子供っぽいの?」
「ええ、少し子供らしくて、人形っぽくってもいいですし、むしろそうしてください」
 了解と勢い良く二人の前にゴシックロリータの服を並べるセイヤ。
 マリエッタは胸元や裾にフリルのついた愛らしいドレスを選ぶ。
「これにしましょうか。着替えを見るのはめっ、ですよ? あ、チアキさんもどうです? せっかくですし、ね? そうそうセイヤさんもちょっと悪戯は待ってくださいね? 最大限のもの、見せてあげますから」
 マリエッタとチアキはベッドの天蓋の向こうで服を脱いでゴシックロリータに着替える。
「ふふ、こういうの……どこかで着たことがあるような気がします」
 チアキに鏡を見せてほしいとマリエッタは微笑んだ。

「ねぇ? 死血の魔女さん? 鏡の中で、可愛らしい衣装を着た貴方は……不釣り合いな子供のお人形さんみたいな衣装を着せられたあなたは……ふふ、恥ずかしがってくれますかね?」
 チアキの鏡の中にはもう一人の自分が居る。
 どんな顔をしているのかとマリエッタは目を細め鏡を覗き込んだ。

 セイヤがいう『遊び』がどんな事をしているのかは知っていた。
 廻が困っているのなら何とかしなければと思っていた『白き灯り』チック・シュテル(p3p000932)はどうしてこんな事になってしまったのかと頭を抱える。
 目の前には廻の白い首筋が見えた。チックは烙印の吸血衝動に抗うため自分の指を噛む。
 はらり、はらりと零れ落ちる、血であるはずの花弁。
「ミィ……」
「おれは、いくら痛くても……大丈夫。廻が危ない事……なったら。もっと元気、なくなっちゃう。それは、嫌。暁月や明煌……龍成に燈堂の家の人達、廻を大切に想っている人達。皆、廻が傷ついた……知ったら。悲しい、思う。おれだって、廻がそんな事になったら……悲しい」
 チックの言葉に廻は首を緩く振る。せめて、逃げてほしいと伝えようとして、チックは気付いた。
「……ねぇ、廻。右脚も動かなくなる……して、る?」
「ミィ」
 悲しげにこくりと頷いた廻に気を取られている内にチックは自分がいつの間にか和服を着ていることに気付く。廻の袴とは違う。首回りや足下がはだけている。辺りを見渡せば畳と木の格子が見える。
「ここは?」
「座敷牢だ。そのはだけた着物とよく合うだろ? 廻もお揃いだ」
 その場に動けずにいる廻もはだけた着物を着せられていた。
 ドクリとチックの中で吸血衝動が広がる。また指を噛もうとして、それが叶わない事に気付いた。
「……縄。……どう、して?」
「チックも廻も赤い縄似合うよなぁ!」
 手首を後手に縛り上げられ身を捩るチック。目の前に廻の肌が見えて必死に目を逸らす。
 瞼から水晶の欠片が零れそうになるのを堪えた。それでも以前より『強い』吸血衝動に抗えない。
「……駄目。セイヤ、お願い……縄を解いて」
「ふふ、そんな風に抗ってる姿が、可愛いよな。チックは」
 誰も傷つけたくないのに。セイヤは廻の手を無理矢理チックの前に差し出す。
 片方の手でチックの唇を割って、歯に廻の指先を当てた。
 にじみ出てくる赤い血がチックの舌先に触れる。
「ぁ……」
「どう? 廻の血はどんな味? チック」
 花の蜜を吸った時の様に甘くて芳しい血の味。
 身体中が歓喜していた。血を啜ることを喜んでいた。
「は、ぁ……う、……ぅぅ」
 知りたくなかった。こんなの抗えない。こんな――
「ごめん、廻、ごめん、ね……」
 水晶の涙を流しながら、チックは謝罪の言葉を繰り返す。
「ミィ」
 大丈夫だと言わんばかりに廻はチックを抱きしめた。

「セイヤ様はきせかえとかいたずらがお好きなのでしょうか?」
 危険は無いと分かっていても廻もチックも心配だと『あたたかな声』ニル(p3p009185)は隣の『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)を見遣る。
「……テアドールがいるってことは、また、廻様の身体が動かなくなったのですか?」
「はい。両脚とも動かなくなったと聞きました。心配で補助具を持って来たんです」
 そんな状態でセイヤの部屋に囚われているのだ。早急に助け出した方がいいだろう。
「テアドールが行くなら、ニルも一緒に行くのです」
「ふふ、ニルが居てくれると頼もしいです」
 そんな風に笑うテアドールが心配であり心強いとニルは思った。
 セイヤの部屋の襖をあけて中を覗き込むニル。
「いろんなお洋服! ぬいぐるみもたくさん! これ、セイヤ様が集めたのですか? すごいのです!」
 バニースーツにロリータ服。ニルとテアドールには何でも似合うだろう。
「じゃあこんなのはどうだ?」
 セイヤが取り出したのは猫耳と首輪。それをセーラー(下はホットパンツの美少年スタイル)につけるセイヤ。もちろん、膝小僧と太ももは露わになっている。
 テアドールとお揃いの服を着て、何だか嬉しそうなニルにセイヤも笑顔になった。
「セイヤ様も一緒に着たりしないのですか? みんなでおそろいは楽しいと思うのです」
「そうだなぁ。俺もセーラー着る? いや此処はスーツで二人の首輪紐を引っ張るかな?」
 首輪の紐を引かれたテアドールとニルは自然と身体が近づく。
「テアドールが嫌がる事はダメですよ?」
 ニルはセイヤの手を取って背の高い彼を見つめた。
「セイヤ様、ここからはニルと遊びましょう!」
「ふうん? いいよ。その代わり着物ね」
 バタリと襖がテアドールとニルの間で閉められる。ニルがセイヤの気を引いている間にテアドールに廻を探して貰う作戦だ。

「次は着物?」
 はだけた着物を身に纏ったニルは不安げに瞳を揺らす。
 更には縄で両手を後ろに拘束され、目隠しもされてしまった。
「この格好でニルはなにをすれば……っん!」
 晒された肌に鳥の羽根の感触が当たる。
「くすぐったいですセイヤさ……ひゃん。や、だ。やです。コアをツーッてしちゃ……っ」
 胸元にあるシトリンのコアを触られるとぞわぞわとしてしまう。
 目隠しのせいでいつどこを触られるか分からなくて。恐怖で肌が敏感になる。
 身を捩れば縄が食い込み余計に身動きが取れなくなるニル。
「危ないことはされてない、けど……コアは、だめです……ぅ!」
 ニルの切なげな声が部屋の中に響き渡った。

「海晴殿はおやつ番だった……? 過酷な役目だな……?」
 じっと深道海晴を見上げる『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は襖に手を掛ける。
「セイヤどのー! たのもー!」
 勢い良く開け放たれた襖の中はセイヤの部屋だ。
「こういう時はむしろ孤立して我に返った瞬間が怖いのではなかろうか、俺は怖くないが。皆でわーっとなってしまえば怖くはないぞ」
 だが、アーマデルは部屋の中に一人きりである。
「は? 怖くないが???」
「ふふ……可愛いねぇ。バニーとか巫女は着たことあるんだっけ? 縛ってもいい?」
「拘束……縛り……簀巻きはわりとだいぶ経験がある、大丈夫だ」
「分かった! 張り切って縛るぜ!」
 やはりこういう時は、ホットパンツは欠かせないだろう。スカートも良いが、やはり美少年には太ももを見せたパンツスタイルが好ましい。だぼっとした春のセーターに見えるか見えないかのホットパンツ。最高ではなかろうか。いや、素晴らしい。
「恥ずかしくはない……大丈夫だ、何が来ても今日は弾正はいないからせーふだ」
 自分がどのような服を着るかより、誰かに見られた時の反応が恥ずかしいから。
「セイヤ殿、『好き』の反対を知っているか」
「うん?」
 美少年アーマデルを縛りあげるセイヤはアーマデルの言葉に耳を傾ける。
「それは『嫌い』ではなく『無関心』。『嫌い』は執着、『好き』とはベクトルの違う興味」
「うんうん。これは痛くない?」
「大丈夫痛くない。それすらない、関わらず視界に入れないし反応もしない、それが『無関心』。……ヒトがそこまでいくのは相当だから、やりすぎないようにな……所でここは何処にでも繋がっているのだろう? キリ殿の存在した痕跡などはあるのだろうか?」
 アーマデルをコンパクトに縛り上げたセイヤは「うーん?」と考え込む。
 心当たりといえば、妹の詩乃や明煌についている三蛇だろう。白鋼斬影の血が濃いのはその四人である。
「今度聞いてみるといい。白鋼斬影について。何か分かるかも知れない」
 セイヤはアーマデルをコロコロと転がしながら微笑んだ。

「うーん、この部屋でのことは流石に星穹や子供達には話せないだろうなぁ」
 久々に墓まで持って行く秘密が出来そうだと『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は眉を下げた。
「早く帰ってきてくれないかな明煌殿……」
 覚悟を決めてヴェルグリーズは襖を開ける。その瞬間に辺りは座敷牢へと変わった。
「えーと……」
 ヴェルグリーズの身につけているものは白い肌襦袢一枚だ。
 その上、既に赤い縄で縛られている。セイヤの仕事の速さが期待度を表していた。
「やあやあ! 君が来るのを楽しみにしていたんだ! ヴェルグリーズ!」
 よく分からない御札までベタベタと張り付いていて何の意味があるのだろうかとヴェルグリーズは首を傾げる。よく見れば、赤い縄は蛇のように蠢いていた。
「って襦袢、襦袢がはだける……! 流石に裸で縛られるのはちょっと……!!」
 手も縛られ思う様に身動きが取れない。これはまずいとヴェルグリーズは考え、その場に伏せた。
「……うん、地面に寝そべればなんとか襦袢が完全に脱げるのは抑えられるけれど」
 ヴェルグリーズの意に反して、縄は動き回る。それを何とか身じろぎして防ぐという攻防が繰り広げられていた。そんな様子をセイヤは楽しげに見つめる。
「は、……」
 普段使わない筋肉が張って、息が上がってくる。
 この姿は、正直なところ、相当に危ない。幸い他の仲間は別の場所に居るらしい。
 独りぼっちは心細いが、こんな有られも無い姿を見られるよりはずっといい。
「いやどこに行こうとセイヤ殿は見てるんだろうけれど……!」
「ちゃんと見てるよ。大丈夫」
 というか、此処へ来た目的はチックと廻を助けるためである。
 ヴェルグリーズは何とかゴロゴロと転がる形で別の部屋に移動を試みた。
 しかし。如何ともしがたいことに。座敷牢の出口は開けられそうにもなかった。
「うぅ……あんまり大きく動くと縄の擦れる感覚が気持ち悪いなぁ……セイヤ殿そろそろ満足してくれないかな……もう十分楽しんだだろう?」
「そうだなぁ……おっと、明煌が帰って来たみたいだ」
「え?」
 座敷牢の押入れの襖が勝手に開いて、そこから見覚えのある男が姿を現す。
「雑に縛るなセイヤ。もっと美しくだ」
 深道明煌に似た彼の夜妖。シルベがヴェルグリーズの縄を解き、またかけ直してくれる。
「あ、え……これはその……標殿。違う、解いて」
 痛くは無い。むしろ心地よい程の締め付けである。流石は明煌に縄の能力を与えている夜妖だ。
 けれど、何だか息が上がってくるのは何故なのだろう。
 ヴェルグリーズはシルベの主人が迎えに来てくれるのを、まだかと待ち続けた。

 事情は分かったと『翠迅の守護』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)は頷く。
 されど、ジュリエットは少し照れた様に俯いた。肌を晒すような衣装はあまり見られたくないというのは王女であった彼女ならばもっともな意見だろう。
 深呼吸をして、ゆっくりと襖を開ける。
「ええと、セイヤさん少しいいですか?」
「うん、なんだい?」
 まだ部屋の中には入らず、入口でセイヤに話しかけるジュリエット。
「廻さんの体調は著しく悪いと思われますので、せめて彼だけでも……先に部屋から出して頂けないでしょうか? 言葉さえ奪われ無ければ、私が何でも着て差し上げますから」
「なるほど。分かったよ。君がめいいっぱい遊んでくれるなら」
 いつもの赤い袴を身につけた廻を抱えて、セイヤは部屋の中から出てくる。
 くったりと目を瞑った廻を海晴が受け取る。相当に遊ばれた後なのだろう。ジュリエットは心配そうに廻を見つめた。
「大丈夫やで、お姫さん。廻はセイヤの部屋から出て来た時はいつも疲れて寝てるから。明煌もそろそろ帰って来るやろうし心配せんでもええよ」
「そうなんですか……きゃ!」
 不意に手を引かれて部屋の中に倒れ込んだジュリエットはふかふかのクッションの感覚に顔を上げた。
「さあ、これを来てよ。お姫様」
 差し出されたのは真っ白なウェディングランジェリーだ。
 未だかつてこんなにも布面積が狭い服を着たことがない。いや、水着と思えば着れるだろうか。
 普段の下着より心許ない。ジュリエットの真っ白な肌に朱が散る。
 その様子をセイヤは満面の笑みで見つめた。
「はい、一瞬で着替え終わるよ。ほら、もう可愛いお洋服に着替えたよ。じゃあ今度はこの猫耳だ」
 一瞬のうちにウェディングランジェリーへ着替えさせられたジュリエットは猫耳を頭に付ける。
「うう……」
「恥ずかしがってる姿もかわいいねぇ」
 部屋から解放されたら真っ先に自分の記憶を消し去りたいぐらいに恥ずかしい。
 せめてもの抵抗に大きな猫のぬいぐるみを抱きしめるジュリエット。可愛い( ・◡・*)
「……こ、これでご満足頂けたでしょうか?」
「うんうん、大満足だよ。可愛いねえ」
「でも何故この様な衣装ばかりなのですか?」
 ジュリエットの問いかけに「趣味」だと答えるセイヤ。
「……世の男性は、皆この様な事が好きなのですか?」
「それは分からないけど、好きな人のえっちで可愛い姿が嫌いな男は居ないんじゃないかな」
 セイヤの返答に思い浮かんだ顔に、ジュリエットは縫いぐるみに顔を埋めて恥ずかしがる。
「そんな事をしたら、きっと幻滅されるに決まっています。これきりです、きっと……恥ずかしくて死にそうですし」
「えー、そうかな。絶対喜ぶと思うけどな。やってみなよ? まあ、明煌の前で『好きな人のえっちで可愛い姿が嫌いな男は居ない』とか言ったら殺されそうだけど……」
 セイヤが言い終わる前に、部屋のドアが弾け飛び、一瞬にして二ノ社の居間に戻ってくるジュリエット。
 今、自分が有られも無い姿をしている事を思いだし視線を下に向ける。
 しかし、服も元に戻っていたようでウェディングランジェリー姿は見られていないようだった。

「セイヤ……」
「はい、すみません。今日は帰ってくるの早かったな明煌」
 殺気を放つ『煌浄殿の主』深道 明煌(p3n000277)に頭を掴まれているセイヤは大人しい。
「一週間おやつ抜きな」
「そんな……おやつ抜きだなんて。せめて廻の作ったクッキーだけでも」
 頭を握る手に力が入る。廻だけならまだしも、ローレットのイレギュラーズを何人も連れ込むとは。
 怖いほどの殺気を放つ明煌としゅんとなるセイヤ。
 海晴はイレギュラーズに振り返る。
「廻とチック君連れて帰ってくれてありがとな。助かったぜ。明煌いまめちゃ怒ってるから、今日の所はこれで。また、遊びに来てくれよな」
 大人の対応で手を振って見送ってくれた海晴の奥で、セイヤが縄で縛られて転がされているのが見えた。

 煌浄殿は今日も楽しい声が響き渡っている。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 煌浄殿のセイヤの部屋お楽しみ頂けましたら幸いです。
 リクエストありがとうございました。

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