シナリオ詳細
星じゃない何かに、願いを
オープニング
●アストラリスと三人のロボット
始まりはどこから語るべきだろうか?
あなたあはもしかしたら、幻想王国にあるギルドローレットの酒場にてある依頼人と出会うかもしれない。
その過程で、導入を描くことにしよう。
あなたはふらりと訪れた酒場の席に、ある女性が近づいてくるのが見えた。
黒のスリムなタートルネックセーターに、茶色のワイドパンツを合わせたシンプルな装いをしているが、その上に白衣(ラボコート)を羽織って銀縁の眼鏡をかけている。
「いいかしら」
そう言いながらあなたの前に座って、あなたと自分の分となる二つのグラスをテーブルに置く様は、彼女の自己肯定の高さを思わせる。
瞳には強い光が見え、それが知識への探求と常に吸収を怠らない情熱であるとすぐにわかった。
そして依頼内容がいかなる類いであるかも、すぐに。
「私はジェイド。大学で研究をしている者よ。あー、正確には『していた』かしら。現代日本系の世界でね。こっちでも似たようなことをしているんだけど……あなたたち冒険者には論文よりこっちを見せた方が話しが早いのかしら」
ジェイドはひとしきり自己紹介を終えると、あなたの目の前に一つの石を置いた。
彼女の指に嵌まったリングの小さな宝石とは大きく異なる、ごろっとした石だ。鉱山から掘り出してそのまま持ってきたという有様である。
もしあなたに鉱石を見分ける技術や知識があるならこの特殊性に気付いただろう。もしそうでなくても、ジェイドはすぐにそれを示してくれる。
「よく見て」
取り出した小さなピックで石を叩いてみせると、石は青白い星のようにふわっと輝きを見せた。
「ヴァーダク鉱山にアストラリスが埋蔵しているという噂はあったけれど、これはその証拠となるかもしれない石よ。すごいわよね、希少な石の鉱脈を発見できるなんて。勿論土地の貴族にも調査の承認はとってあるわ」
証拠。承認。そんな言葉から、もしかしたらあなたは既に依頼内容を察したかもしれない。
その色をみてとったのか、ジェイドはこくこくと頷いた。
「そうよ。あなたには鉱山に入って、この鉱石が本当にあるかどうか確かめてほしいの」
とりつけた約束はあくまで調査だから取り過ぎないように注意してねと付け加え、ジェイドはまずは前金をあなたのテーブルへと置いた。奢りも兼ねてと言うことらしい。
●ガイアン、レインレイン、エテール
あなたにとっての始まりはどこだろうか? 酒場にてジェイドに直接依頼を受けた所からだろうか。それとも、依頼を受けた仲間に誘われたところだろうか。
あるいはギルド越しに増援の依頼を受け、直接鉱山にやってきたところからだろうか。
いずれにせよ、あなたたちは鉱山に集まり例のアストラリス鉱石がここから採掘できることを確認するため、中へと入ることにした。
証拠をわざわざ見つけたり作ったりする必要はない。ローレットの依頼は映像記録として残るので、それ自体が証拠として機能できるからだ。そうでなくても、記録機器はジェイドからもたされている。
さあ、鉱山の中へと入ろう。
ヴァーダク鉱山は休業中になっており、鉱山夫たちはいない。トロッコも撤去され、道具類も持ち出されてもはやただの巨大な穴だ。
というのも、随分と前にこのあたりにモンスターが出没し鉱山夫たちを襲ったという情報があったのだ。
もしあなたに情報を精査したりさらに多く集めたりする能力があれば気付いただろう。そのモンスターたちは三体のロボットに手懐けられており、彼らロボットに直接襲われた者も僅かにいたということを。
いずれにせよ、仲間と共に進めた調査の結果『ロボット』の存在へと行き着いた。
しかし気になるのはそのロボットたちの素性であったのだが。
「チックショウ! 掘っても掘っても土ばっかりじゃねえか! たまに鉄! たまに銅! アストラリスはいつになったら出てくるんだよ!」
ツルハシを放り投げて毒づいたのはドラム感のようなシルエットをしたロボット、ガイアンだ。
ガイアンはドラム感から直接はえたような腕と脚をじたばたと動かし、いかにも不満をぶつけるという様子である。
そんなガイアンを横目に、ほっそりとしたシルエットのロボットがツルハシを振っている。
シルエットを例えるなら、古典的なオデンだろうか。△の頭に〇と□の身体。そして細長い一本足の先にローラー。その姿勢でよくバランスをとれているものだと思うが、どうやらそれが当たり前であるように彼は身体を器用に振ってツルハシをあやつっている。彼の名はレインレインだ。
「黙って掘り続けろ。簡単に見つかるならそもそもここまで強硬手段をとったりしない」
「あんだとレインレイン、コノヤロウ!」
掴みかかろうと腕を振り上げたガイアン、つるはしを握って対抗しようとするレインレイン。
その間に、いかにも人型といった様相のロボットが割り込んだ。
女性的なふくらみのある上半身。顔は女性そのもので、髪はピンク色のショートにそろえてある。
人間でないと一目で分かるのは、彼女の首や手足が金色の金属で出来ているためだろう。
「二人とも、思考が乱れていますよ。仲間割れをしては目的を達成できません。そうでしょう?」
彼女の名はエテール。どうやらエテールに指摘されると弱ってしまうようで、ガイアンもレインレインもフンと小さくだけ不満をもらしてから作業に戻った。
あなたはこの時点で、あることが気になっているだろう。
彼らの目的は? なぜ鉱石を掘っている? わざわざ鉱山夫を追い出してまで?
その答えの一端を、エテールは静かに呟いた。
「アストラリスが見つかれば、きっと私達が人間たちを支配できるはずですから」
あまりに規模の大きなこの言葉は、果たして真実なのか。それとも嘘や誰かの欺瞞なのか。
その答えを知るには、やはり冒険に出るしかない。
- 星じゃない何かに、願いを完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年04月04日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●アストラリスと三体のロボット
「ゴーレム? ロボット? やっぱりゴーレム?」
手の中で鉱石をゆるやかに回しながら、『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)は隣でなにやら調べ物をしている『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)に問いかけた。
ここは依頼を受けたギルド酒場から随分離れ、ヴァーダク鉱山のそばに作られた酒場だ。
鉱山にはモンスターが出るせいで鉱山夫たちは開店休業状態に入ったらしく、酒場でくだをまく姿がちらほら、である。
サンディは『自分は違いますよ』という顔で出されたお茶に手を付けると、鉱石を調べたそうにしているサイズにそれをパスしてやった。
「どっちだと思う?」
「どっちでも一緒だろう。気になるのは材質かな」
「そこは拘るんだな」
ちらりと視線を『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)に向けてみると、金属製のカップでちびちびと何かを飲んでいる。何も飲まないよりはマシという顔で、いかにも美味しくなさそうだ。
「ん? 俺の意見が聞きたいのか?」
「俺よりは詳しそうだしな」
サンディの言い分はもっともで、錬の得意分野は『改造』だ。
こっちへと召喚され、『絶望の青』へ挑むあたりの頃から船をとんかん改造しては果敢に戦っていた彼である。機械やなにかに関してもサンディよりきっと詳しいだろう。
「そうだな、俺としては……」
カップをテーブルに置いて、手で包むように持つ。
「『ロボット』がその言葉通りの存在なら、彼らは自主的な改造やカスタマイズが出来ない状態にあるか、そもそも不可能である可能性がある」
「ほう? そりゃまたどうして」
鉱山夫たちと一緒になって酒を飲んでちゃっかり仲良くなっていた『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)がカップ片手に歩み寄ってくる。
「採掘をしたいなら腕にドリルでもつければいいからだ。アンタだって、何日も一人で採掘作業をしなきゃいけなくなるなら、その義手を作業に特化したものに取り替えようとするだろ?」
言われて、バクルドは自分の義手をちらりと見た。彼の義手は戦闘に特化した一品だ。『ガウス・インパクト』なる機構を搭載し、これまでいくつもの修羅場をくぐり抜けてきた。……というだけあってそうそう気軽に取り替えたいわけではないのだが、一人でツルハシを振り回すよりはドリルでもくっつけたいというのはわかる。
ロボットたちも同じだということだろう。
「なるほどな。けど、金がないって線は?」
「あるかもな。そこも含めて『出来ない』」
「そりゃまた、不憫な話だな……つっても、モンスターを手懐けてけしかけることはできたんだろ? 鉱山を占領するくらいの度胸と力があるなら強盗くらいしそうなもんだ。金がないって線は違うだろう」
そう応えたのは、カップに口をつけずにケチャップ山盛りのポテトフライをつまむ『Luca』ファニー(p3p010255)だった。
椅子の背もたれにどっかりと寄りかかり、四脚の後部だけでバランスをとっている。
「ま、ロボットの事情も気になるっちゃあ気になるが……俺様がもっと気になるのは石のほうだな。ちょっと貸してみろ」
サイズから受け取って鉱石をまじまじと観察するファニー。
ぱっと見た限りではそこまで詳しいことはわからないが、何かしら力を持っていそうな感じをファニーは石から受け取った。
「何かわかったかい?」
手の中でトランプカードをくるくると(ハンドスピナー的かつ無限に)回しながらファニーの手元を覗き込んでみる幽火(p3p010931)。
「まあ、少しだけな。この一個だけを数秒見てるだけじゃあまだなんともだ」
「ふうん?」
幽火がカードを止め、くるりとひっくり返す。いつの間にか彼の手の中でトランプカードがタロットカードに入れ替わっていたらしく、『節制』のカードがめくられた。
「『少し』は分かったんだね」
コップの水がまだ半分在ると思えるタイプなのだろうか。幽火が片眉を上げて見せる。
一方で、『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)がゆるく腕を組みながら形の良い眉をしかめていた。
「ロボットたちは、それを見つけると『人間達を支配出来る』と、言っていたのですよね」
気になります、ね。と思わせぶりに呟くフローラ。
「何か根拠があるということでしょうか?」
『愛し人が為』水天宮 妙見子(p3p010644)が彼女の話に乗っかってみると、フローラは少しばかりうつむき気味に応えた。
「別の第三者がそう唆したのなら、体よく支配されてしまっていることになるので……。気の毒だな、と」
「ははあ、そういう見方もありますか」
大前提に立ってみれば、アストラリスなる鉱石をツルハシ程度で掘り返しただけで『人間達を支配できる』などという強力な効果があってたまるものか。そんなものが鉱山から見つかるなら鉱山主が黙っていないし、研究者だという依頼人ジェイドもそれらしいことを言うはずだ。危険なものであるだとか、触れる際に注意せよだとか。
であるならば、ロボットたちが『この状況を作ると得をする誰か』にそそのかされたとみるべきなのだろう。
「妙見子さんは、別の見方をしたのですか?」
「いやあ」
妙見子が両手をぱっと開いてみせる。
「そもそも大丈夫な石なのかな、って思ったのですよ。だって青白く光るのですよ!?」
ヤバイ鉱物の典型みたいじゃありませんか! と妙見子が熱弁するのだが、混沌現地人であるところのサンディやバクルドはきょとんとしている。
対して錬やサイズ、地質学に詳しいファニーあたりはピンときたらしい。
「ああ……あのヤバイやつか」
「『星の光』がそういう意味ならヤバイな」
「けど、そんなヤバイものを素手で渡してくるか? あのジェイドって女、白衣のポケットから素手で取り出したんだぞコレ」
鉱石をテーブルに置いて見せるファニー。妙見子は急にシンプルなお顔になって「タシカニ」と呟いた。ダブルピースで。
「ま、妙見子の言うこともわかる。現物では無害でも、何かしら加工することで特別危険な効果が発揮される鉱石かもしれないしな。警戒はしておこう」
話しが纏まった様子を見て、フローラがかたっと席を立つ。
「では、そろそろ……お仕事にかかりましょうか」
●ヴァーダク鉱山のモンスター退治
自らを強化し、ファニーは握りこぶしに青い炎を纏う。
振り抜いた拳に連動するようにどこからともなく召喚された獣の頭蓋骨が口をがぱっと開けば、青白い光線が放たれた。
トロッコ線路のひかれた坑道をとぼとぼ歩いていたワーム型のモンスターが光線の直撃をくらい、ギピッと声をあげて消し飛んでいく。
「弱っ! モンスターをけしかけたって聞いたがもんなもんなのか!?」
「これでも鉱山夫の皆さんにとっては脅威なのでしょう。なにせ危険な作業ですから」
フローラは魔術をとなえ、グリーンに光るタロットカードを眼前に広げた。
そのうちの数枚が輝きをもち、遠くへ破壊的な領域を展開させる。
一方で、少々怪我をしていた仲間にタロットの光を向けて治癒を行った。
鉱山夫にとって『モンスター』はそれが弱いものであっても脅威だ。ガス漏れを連鎖的に発生させることもあるし、なにより非戦闘員かつ肉体労働者である彼らにとって怪我はそのまま稼ぎの喪失に直結する。
モンスターが出ようものなら、道具も鉱石も全部放り出して全力で逃げるというのが彼らの常識なのだ……と、ついさっき仲良くなったバクルドが聞いてきたらしい。
「ま、おかげで大した怪我人もナシだそうだ。平和といったら、平和だな」
ライフルを撃ちまくり、素早くリロードにかかるバクルド。放置されたトロッコの裏に隠れ、モンスターの放つ骨の弾丸めいたものを防御するとこちらを狙うスケルトンモンスターめがけライフルを発砲。相手の頭蓋骨が砕けて飛び、がらんとその場に倒れバラバラの骨となった。
隣のスライム状のモンスターがトロッコへ迫るが、馬跳びになって前に出たサンディが翳したマントでスライムの飛びかかりを防御する。
ジュッと何かが溶けるような感触があったが、マントが溶けて無くなるという様子はない。かなり弱い溶解液のようだ。
よし、と一度気合いを入れたサンディがマントを裏から殴りつけるようにしてスライムを追い払い、そこへ幽火の投げたトランプカードがざくざくと突き刺さった。
スライムにカードを差し込んだところで……と思うのは、もはや彼の術中に嵌まったも同然である。なぜならカードは途端にボッと炎上しスライムをたちまちのうちに火だるまにしてしまったのだから。
駆けつけたワイルドドッグが牙をむき出しにして襲いかかる。
が、それを阻むように妙見子が鉄扇を畳んで突き出した。
ガッとかじりついたはいいものの、それ以上は歯が立たないと察したワイルドドッグが離れようとしたところで、妙見子はその頭を空いた手で押さえつける。
「今です」
合図を受け、サイズが『黒顎魔王』の魔術を放った。
攻撃とほぼ同時にワイルドドッグを振り回すように位置を変え、サイズの放った魔術に直撃させる。文字通りに消し飛んだワイルドドッグを確認すると、その横を錬が駆け抜けていく。
通路の奥から駆けつけたもう一体のスケルトンめがけ攻撃をしかけるためだ。
「――『相克斧』」
引き抜いた式符を発動させ瞬間鍛造した五行の斧が、彼の手にぱしりと握られた。
素手で突っ込んでくるものだと思っていたのか、スケルトンが咄嗟に両腕を頭上に翳すように防御する。
笑みを浮かべる錬。なぜなら、そんなものにもはや意味はないからだ。
「もらった!」
大上段から叩きつけ、防御もろとも真っ二つに切り裂いていく。
その様子を確認すると、サイズや妙見子たちは更に奥へと進んでいった。
奥では、戦闘の音を聞きつけたのだろう、ドラム感のようなシルエットのロボット『ガイアン』がツルハシ片手に立ち塞がっている。
「おいテメエ! 邪魔しに来やがったんだなコノヤロウ!」
かかってこいとばかりにツルハシを振り回してみせるガイアン。
その横にローラーつきの一本足で器用にひゅんと停止したレインレインが同じくツルハシを握って立ち塞がる。
「「…………」」
鎌を構えたサイズと義手を突き出すように構えたバクルドが……その時点でちらりと顔を見合わせた。
間に立つサンディがとりあえずという
雰囲気で盾を構え、そして手袋をした手を広げてみせる。
「一応聞くんだが……そのツルハシが武器か?」
「「…………」」
顔を見合わせるガイアンとレインレイン。
キィンと音を立て、義手から開いた手のひら部分を発光させるバクルド。
対して相手の装備は貧弱そのものだ。間違って持ってきたにしても限度がある。
「まあまあ」
そんな両者の間に割って入るように、幽火がするりと現れた。
手にはトランプカードのセット。右手から左手に、まるでアコーディオンでも演奏するかのように器用にぱらぱらと移す彼の様子にガイアンとレインレインがつい目を取られたところで、幽火の手にポンッと花束が生まれた。
簡単な手品だが、見る者の気持ちをリセットさせるには充分だ。
毒気を抜かれた様子で、ガイアンたちがゆっくりとつるはしをおろし始める。
幽火は『今だよ』とばかりにフローラへウィンクサインを送った。
「私達は、あなたがたと敵対するためにここへ来たわけではありません。場合によっては、協力すらできるかも……と」
仲間達に守られていたフローラがゆっくりと前に出る。
武器にしていたカードはしまい、開いた両手を頭の位置に上げている。
そしてバクルドたちに武装を解除するように声をかけた。
両者がゆっくりとだが武器をおろし、しかしまだにらみ合う姿勢を崩さない。ここで話し合いの段階まで落とし込むのは自分の仕事だなと察したフローラは、一人だけあげていた手をおろしながらもう少しだけ歩み寄った。
「モンスターは倒してしまいましたが、これ以上戦闘をするつもりはないのです。私達の目的はアストラリスの調査と証拠の発見。あなた方のやっていることを見逃しても、依頼目的に反することにはならないのです」
フローラの言い方にひっかかりを覚えたのか、ガイアンたちが再び顔を見合わせてから……後ろにかばっていたであろうエテールに道をあけた。
エテールは前に出て、金色の両腕を小さく翳す。
「私達が何をしているのか、ご存じなのですか?」
決定打だ。と、フローラは察した。
なので今度はフローラがもう一歩踏み込んだことを言う。
「アストラリスを見つけたいのでしょう? 事情を話してくだされば、手に入れることを手伝えますよ」
実際、それは決定打であった。
●支配と、嘘
サンディと錬はそれぞれツルハシを降り続けていた。
ガイアンやレインレインと一緒になって。
「アストラリスを使った爆発で人類が滅ぶ? 流石に嘘だろ」
作業の手を止めて、錬が振り返る。
「なんだとコノヤロウ! 俺が嘘ついてるっていうのかよ!」
すぐけんか腰になるガイアンだが、これがデフォルトなのだとわかると案外会話になるものである。
「嘘ついてるのはアンタじゃなくて、アンタにそれを教えた奴かもしれないぞ」
錬のそんな返し言葉にガイアンがきょとんとする。
一方で、レインレインが三角頭を回して振り返った。
「それはどういうことだ? 俺たちが住んでた星はアストラリス製の爆弾で滅んだんだ。それは事実だ」
「ん、ん――まて。『住んでた星』? この世界の生まれじゃないのか?」
サンディの問いかけに『もっともだ』と頷く錬。レインレインがつるはしをおろして続けた。
「言ってなかったか。つまり――」
「つまりあなた方はウォーカーだと? その世界では『アストラリス』という鉱石は星を滅ぼすくらいの爆弾を作れたというのですね」
妙見子がぱちくりとまばたきをして問いかける。エテールが頷いて返した。
「はい。いかにも。この世界では違うのですか?」
フローラと幽火がちらりと顔を見合わせる。
ウォーカーがたまにおかす間違いのひとつに、『混沌肯定を勘違いする』というものがある。元の世界の常識に囚われ、この世界のルールによって調整されるテクノロジーやエネルギーといったものを取り違えるのだ。
「なるほどな」
サイズは大方の事情を察し、そしてファニーと共に調べていた地層のアストラリスを調べていた。
「こいつは確かに爆弾にできる。けど火薬やガソリンを使っても同じ事がおきると思うぞ」
「そんな……!」
エテールは両手で顔を覆い、がっくりと肩を落とした。
「それじゃあ、また人間達が世界を滅ぼしてしまうじゃありませんか……」
「待った待った。なんだって?」
手をかざしてバクルドが問いかけると、エテールは『常識では?』というように顔をあげる。
「人類は自分たちの力で世界を滅ぼす生き物では?」
「ギャンブルや酒で自滅する奴は山ほど見るが、世界を滅ぼすほどじゃあないと思うぜ。というか、この世界を滅ぼすのは『人間』じゃあない」
「だな。爆弾に想いを託すにしても、ハナシが違いすぎるぜ。アンタ、召喚されたときざんげの話しを聞かずに出てったパターンだな?」
ファニーがやれやれと首を振る。
実際、アストラリスはファニーたちの協力によって見つけることが出来、ローレット側の調査依頼は成功していた。
別に抱えて持ち帰る義理まではないので、エテールたちが持ち帰りたいならそうすればいい話だ。爆弾の原料になるというのはひっかかるが、目的が滅亡クラスかつ勘違いだとわかったなら、そうおかしなことにもならないだろう。
というわけで、ファニーたちはこの世界と滅亡の予言について事細かにエテールたちに説明することにしたのだった。
その後の話を少しだけしよう。
ローレット・イレギュラーズと別れたロボットたちは、とりあえずアストラリスを抱えて鉱山を離れていった。鉱山夫たちの仕返しがあってもよくないということで、暫くは鉱山にも近づかないだろう。
人類への味方もどうやら(向き合うのに時間がかかるものの)改めてくれるようで、問題がもう一つ解決した気分だ。
「しかし……鉱山を占拠してまでアストラリスを探すのはやはり大がかりすぎます。彼らも悪意を持って人間を襲ったというわけでもないようですし。
一体だれがそんなことを実行させたのでしょう」
フローラの最後の呟きが、煤の舞う鉱山村に転がった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
あなたは鉱山に入り、ロボットたちと戦いつつアストラリス鉱石がこの鉱山からとれるという証拠を探します。
シナリオはバトルパートと非戦闘パートに分かれます。
前半はバトルが主体になるでしょう。
いずれにせよ実力によって強制的な排除ができない相手だと分からせなければ話し合い自体ができない状況にあります。
モンスターは主に鉱山にすまう土のモンスターたちです。
泳ぐように土の中を掘り進む岩石蛇や岩の邪妖精などが現れるでしょう。
●ひとくちプレイング
このシナリオのなかで一番気になっていることを書きましょう。
特になければ意気込みや感想でもOKです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
戦闘スタイル
ここではあなたのバトルスタイルを選択してください。
【1】アタッカー
率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
威力やBSなど形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
【2】ヒーラー
仲間は戦えば戦うほど傷付くもの。そんな仲間を治癒するのがあなたの役目です。
手持ちの治癒スキルを駆使して戦闘中の仲間を治療したり、時にはカウンターヒールでスタイリッシュにダメージを打ち消します。
【3】ディフェンダー
別名タンク。優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
非戦パート
戦闘が粗方済んだところで、ロボットたちと話し合い鉱石がでる証拠を得るという依頼目的を遂行しにかかります。
このとき、あなたの役目は何になりますか?
【1】交渉
ロボットたちと交渉を行います。
頭を使って交渉してもいいですし、パワーで交渉してもいいでしょう。時には優しさなどの感情に訴えるのもいいでしょう。
あなたなりの交渉方法があるはずです。
※交渉パートを誰も選ばなかった場合、戦闘のみで決着がつきます。
【2】採掘
いずれにせよ採掘作業はしなければなりません。
力仕事なわりに結構単純なので、特別な技能が無くても行うことができるでしょう。
実際ロボットたちは特別な技能はもっていなかったようです。
【3】調査
鉱石のことがやはり気になるなら、調査をしてみるのもいいでしょう。
石にしろ山にしろそれにまつわる情報にしろ、調べられるものは多そうです。
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