シナリオ詳細
<帰らずの森>せめて、僅かなる目印を
オープニング
●帰らずの森
前人未踏の地、帰らずの森と呼ばれていたピュニシオンの森。
鬱蒼としたその森の奥に何があるのか、ほとんど分かっていない。
その森の中に、一際高い木があった。
種類としては広葉樹だが、たまたま一歩突き抜ける機会に恵まれたのだろうか?
ひょろりと高いその木は森の中を歩いている限りではどうということはない木だ。
しかし、その木は上から見ればある程度の目印にもなる。
だから空を飛ぶ亜竜はそれを目指して飛んでくることもある。あるが……今日ばかりは、タイミングが悪かった。
「ギャアギャアと騒がしいんだよ……散れアホが」
その木の先端に立っていた亜竜種にも似た女が手を振ると、無数の雷撃がワイバーンの群れを粉微塵にする。
「フン。昼寝でもするつもりだったってえのに……また後で来るか」
翼を広げるその女は、亜竜種に似ていた。しかし、亜竜種では断じてない。
黄金の長い髪を緩いみつあみにした、髪の色と同じ黄金の瞳を持つ亜竜種に似た姿を持つ女。
それは竜種にして将星種『レグルス』の一角。
『雷鳴竜(らいめいりゅう)』アイロッドであった。
●目印を見つけ出せ
森を攻略する為のヒントを集めて欲しい。珱・琉珂が発したその言葉は、イレギュラーズをピュニシオンの森の探索へと駆り立てた。
しかし、帰らずの森と呼ばれているピュニシオンの森に何の策もなく踏み込むのは、ただの死にたがりでしかない。
だからこそ、森を攻略するヒントを集める……という話になったのだ。
しかし森を攻略するヒントといっても、何が必要なのか?
恐らく千差万別の答えが返ってくるだろう中で、1つの答えを出した者がいた。
それは『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)であった。
「まあ、色々あるがのう。何かがあって散らばっても再集合できる目印がある、というのは相当強いと思うんじゃよ」
実際、ピュニシオンの森のような場所で「目印」の有無は生死を分けるだろう。
しかしピュニシオンの森は知能の高い相手も無数にいる。それを敵対的な相手に解読されれば、新しい危機に繋がる可能性だってある。だからこそ理想としては「自分たちにだけ目印として機能する自然物」であるのが望ましい。
しかし、そんなものは不可能だ。だからこそ次点として「そこにあっても不思議ではなく、そして目印として妥当なモノ」が望ましい。
あとは、そんな都合の良いものがあるか……なのだが、答えは「ある」になる。
ピュニシオンの森をフリアノン方面から真っすぐ進むと、他と比べると背が高く飛び出た広葉樹がある。
かなりの年数を生きていると思われるその木は、上空の視点から見るとそれなりに目立つ。
それでいて、うざったいほどに大きくはない。つまり、何かの機嫌を損ねて突然消えるといった心配もなさそうだ。
まあ、空からの視点が必要になるが……その辺りはどうにでもなる。
「問題は、その木が本当に安全なのか……じゃの。それを確かめることが出来ればピュニシオンの森の探索……一歩進む結果になるじゃろうて」
- <帰らずの森>せめて、僅かなる目印を完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●帰らずの森へ
「ふっ、敵地潜入してルートを構築するのは怪盗の下調べによくあること……つまり私もよくしている。このようなもの赤子の手をひねるように簡単だ。しかも今回は背の高い木という目標まで定めているしな。とはいえ竜は厄介だな……さっさと終わらせて帰るとするか」
「空をおよげる わたしなら のっぽの木を さがしやすいですの でも…… 危険な生きものに 見つからないように 樹冠の すこし下くらいの 他の皆様と すぐに合流できる程度の場所を 抜き足差し足忍び足…… もとい 抜き尻尾差し尻尾忍び尻尾 ですの」
『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)に『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はそう言いながら飛行しているが……実際、ピュニシオンの森の「上」を飛行すれば何があるか分かったものではない。
おまけにこれから行く場所には竜種がいるかもしれないのだ。そんなものに見つかれば機嫌を損ねるかもしれない。だからこそ、可能な限りリスクを排除するのが正しいのだ。
そう、リスク。それを避けるためにノリアは自然知識とサバイバル知識を利用し危険な生きものの痕跡に気づけないか考えていた。
物陰にいるものを見逃さない為に磁気感覚器を研ぎ澄まして茂みなどの向こうも把握しておこうとしていた。
(これで… ちょっとは ドメスティックアイを こちらから さきに見つけて はなれやすくなるでしょう レーザーの音で アイロッドさんを 起こされてしまったら かないませんの……!)
亜竜ドメスティックアイ。激しい音をたてて戦うその亜竜との戦闘になれば、騒がしくなるのは確実。
だからこそ、ドメスティックアイとは可能な限り戦闘を避けるという方向で方針は固まっていた。
その上で今回の目的は「のっぽの木」を見つけることに会った。明らかに目立つその木は、何かあった時の集合場所として優秀だからだ。
「のっぽの木、目印にもなるし何より見てみたい! ただ、竜種を怒らせると木を粉々にされかねないんだよね……昼寝の妨げにならないように気を付けたいなぁ」
「そうね。背が高く飛び出た広葉樹……か。確かに……この森を本気で探索していくのなら、基点にできる場所は必要かしら。問題は、そういう目立つ場所というものは、この森に棲む生物にとっても同様だろうと言う事。安全かどうかは、実際に確認しない事には何とも言い難い所ね」
「その為にも今回の探索を成功させないとね」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『氷月玲瓏』久住・舞花(p3p005056)は、そう頷きあう。
探索を成功させるためには、目的地に迷わず辿り着く必要がある。
だからこそヨゾラはコンパスや荷物を持ち込み闇の帳を使い静かに気配を消し移動することで敵から発見される確率を下げていたし、自分のギフト「興味への道しるべ」を使いコンパスの補強にもしていた。
この場では自分たち以外全員が敵。そう考えるのが正しい。事実、亜竜ドラゴンヘッドとも何度か遭遇の危険があり……ドメスティックアイなどは警戒していなければぶつかり合っていた可能性はあった。このドメスティックアイとの遭遇はヨゾラとしても避けたいところであったが……今のところは大丈夫だ。
だからこそヨゾラは鳥のファミリアーとハイセンスによって索敵を更に補強していた。
ファミリアーを自分たちより先に飛ばし進ませることで敵の有無や、目標となる「のっぽの木」、そして竜種がいるかや竜種の様子等を確認する算段だ。
その中でも特にドメスティックアイに見つからないようにドメスティックアイの向きや数、他の敵の状態等も確認しつつ木々の枝を隠れて移動し、慎重に、遅すぎない程度に進ませていた。
そして舞花もヨゾラ同様に闇の帳で気配を殺しつつ、超視力に透視を重ねて地形を透かし見て敵の存在を見逃さないようにしていた。
可能な限り戦闘を避ける為、事前に発見して遭遇しないように慎重に進まないといけないと。そう肌で感じていたのもある。
「多少遠回りしてでも、戦闘は避けた方が良いでしょうね。特にこの辺りの亜竜だと騒ぎ処では済まない……もし亜竜同士で戦闘になっても、やり過ごすしかないけれど」
「有り得るのが怖いね。ドメスティックアイが喧嘩っ早くないといいけど」
交戦は最終手段だと。そう舞花とヨゾラは頷きあう。その為に沙耶もL.U.P.I.N.の二時間泥棒として超視力で広範囲を見つつ、広域俯瞰で木々の合間などに敵……特に騒音の引鉄になりそうなドメスティックアイがいないかを常に確認していた。
見たものやルートは瞬間記憶で記憶しつつ、必要に応じて、特に目標となるのっぽの木は最優先に精密模写で書き残すつもりだが……こうしたものを後で地図にすることで、今後の役にもたつことだろう。
「森の中で木を目印にするとは難しく思えるが、無いよりはマシか。迷子になるリスクが怖いから、少しでも安全を確保したいな。欲を言えば簡易拠点も作りたいところだ。ともあれまずは道程の安全を確認しながら進もう」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が適宜「気配遮断(弱)」で身を隠して進むのも、その一環だ。
超聴力やエコーロケーションで周囲を把握し、敵の鳴き声や障害物を察知して危険を避けようとする。
ファミリアーを上空に飛ばしてのっぽの木の位置を確認し、超方向感覚で方角を把握していれば、少なくとも方角をミスることはない。
そして……イズマの特に気にしている点としては「巣や水場があると亜竜が来る可能性が高い。位置を記録して要注意とする」ということであった。どんな時でも水場というものはそうしたものの溜まり場になりやすい。そういうことなのだ。
のっぽの木……空からの視点であれば分かりやすいその木は、こうしてファミリアーなどを使えば常に位置も確認できる。
「ふむ、彼の森にその様な目立つ木があるとは相賀殿は中々お詳しいようであるな。然らばこの吾輩がその木と周囲の安全を確りと確認しようではあるまいか。こう見えても吾輩知性派であるがフィールドワークの心得もある故一切の問題なくこなしてこようではないか」
『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)も言いながら【気配遮断(弱)】の付いたダンボール箱を使って「華麗に」……そう、錬倒的には華麗に移動していた。
「吾輩のスゥーパァーインテリジェンスに記されたモンスター知識を駆使してドメスティックアイの首の可動域から視界を予測し死角を進むである」
錬倒のオラクルには、亜竜種にも似た「何か」が見えていた……恐らくばそれが竜種なのだろう。何処かのタイミングで会うと、そう予感していた。
「森への立ち入りは何をもってしても恐らく危険だ。どうせヤバいなら相賀のじっちゃんの案に乗るぜ! 俺の成長も見て欲しいし!」と、そう言っていた『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)もこの森の危険度は充分すぎるほどに感じていた。だからこそ事前準備としてR.O.O.にもログインし竜域踏破での森のログを可能な限り集めていたが……それがどの程度活かせるかは今のところ分からない。
現実的な手段としては叡智たるツァラトゥストラの効果による味方へのエキスパート(弱)付与が基本だ。
此処ではそうしたものが生死を分けると理解しているからだ。
味方がはぐれないように意識しながら、錠剤型パンドラ補強薬による暗視(弱)効果での視野の確保。
KURNUGIA-P508での録画は……まあ、何処も同じ感じに見えるので今後作る地図の補佐になるだろう。
ジュート自身は気配遮断(弱)しか身隠しに使えるものはないが……自身で可能な限り事前に敵を察知して避ける事に重きを置くこと、そして仲間にしっかりと頼ることでその効果を高めていた。
いと罪深き邪神の鎖で敵の不意打ちに気を付け、エネミーサーチで周囲を警戒するのも忘れない。万が一にはいつでも備えておけば、仲間との連携で完璧になるからだ。
そう、特に竜種に関しては本当に命に関わる。『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)も大前提として竜種との接触は可能な限り避けようと考えていた。
その為にも、その位置をある程度把握しておく必要があるわけだが……。
(ハイセンスで五感を使って探すのはもちろん、植物疎通を使って植物から位置に関する情報を少しでもいいから得たいところっスね。具体的な場所がわからないくても、方角や距離感がわかるだけでも話が違うっスからね)
そう、此処には植物は幾らでもある。もっとも動かない植物相手では他の木の位置について情報を取るのは難しいが、それ以外の情報も値千金だ。
(合わせて集合場所に使えるっていうのっぽな木のばしょについても聞き取れたらグッドっスね)
そこまで上手くはいかないだろう。いかないだろうが……全員が少しずつ結果を出していくことで、ライオリットたちは確実に目標へと近づいていた。
●のっぽの木へ
徹底的な亜竜ドメスティックアイ避けの方策により、なんとか避けることが出来ていたが……それでも、避けられないものというのはどうしてもある。
目標となるのっぽの木は太く、大きく……樹齢でいえば相当の年月を重ねたであろう、そんな木であった。
しかし、それ故……だろうか。大ぶりの枝の上に、1人の男がいた。
金の髪と目を持つ、まるでヤンキーのような雰囲気を持つ亜竜種の女……に見える何か。
スピスピと寝息をたてているように見えていたそれは、明らかに亜竜種ではない。
そんなものが、こんなところにいるはずがないからだ。こんなところであんな風に寝られるものが、普通の何かであるはずがない。
ならばアレこそが竜種……なのだろう。
(……昼寝が好きなのか?)
イズマはハンモックを持ってきてはいるが……実際目にしてみると、アレを相手にそんなものを渡そうという気には一切ならない。
渡そうとしたが最後、此方を特に何の感慨もなく殺しにきかねない。アレは、間違いなくそういうモノだ。
(もしも アイロッドさんに 目をつけられてしまったら…… 抵抗せずに しっぽを さしだしますの わたしたちが いくら うるさい 羽虫だとしても それが みずからを犠牲にして おいしいものを くれるというのなら 一度くらいは お目こぼししてやってもいいかという気には なってくれるでしょうから)
ノリアもそう考えていたが……少なくとも、此方を攻撃してくる風には見えない。見えないが……ノリアは思う。
アレは寝ている猫と同じだと。油断しているように見えるが、いつでも襲い掛かってくる。そういうモノだ。
(のっぽの木……想像以上に大きいね)
ヨゾラものっぽの木周辺の模写をその場で開始する。
何処までアレに近づいていいか分からない以上、この場所で模写するのが一番安全だ。
そして、あの竜種。此方に攻撃してこないのは、少なくとも此方を積極的に叩き潰す理由が今時点では無いという証拠だろう。
(亜竜種に似た姿……竜種、だね。以前の依頼の竜種は鳥を見逃してくれた……不干渉貫きたいけど、今のところは大丈夫、か)
「このまま暫く距離を置いて様子を伺うに留めましょう」
舞花のそんな提案に全員が頷く。わざわざ竜種を刺激したくはない。今が安全なら、それを保つのが一番無難というものだ。
勿論、木を離れて戻ってくる気配が無いなら、接近して安全を調べるつもりだが……あの様子ではしばらく離れないだろう。
(竜種……練達を襲った六体の竜と比べれば、ではあるけれど。まともに戦いたくない相手な事は確か。こうして竜種が来る事があるなら……木はあくまで目印に留め、付近に何か代わりの起点にできそうなものが無いか調べた方がいいかしら)
そうして周囲を見ると……何やら大きな岩のようなものが離れた場所に見える。のっぽの木に比べると少々地味ではあるだろうか?
「よし、目的の木は書き残した……さっさと撤退するか。竜の大物が起きないうちにな」
「寝たままだからな……ま、起こさない方がいいだろうな」
沙耶にジュートもそう頷く。もし寝起きであれば友好関係の構築も試みたが……わざわざ起こすほどではない。
そうなればどうなるか、火を見るよりも明らかだ。
「よし、じゃあ静かに戻るっスよ」
「それが いいですの」
ライオリットにノリアも頷き、全員が速やかにその場を離れていく。
竜種との遭遇。それは何度経験したとしても恐ろしく……そして、命を削るようなうすら寒さを感じるものであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
交戦は最終手段。そう書いてた時に「光線は最終手段」に変換されててあやうく皆さんが光の国のヒーローになるとこでした。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
ピュニシオンの森をまっすぐ進み、のっぽの木を見つけましょう。
真っすぐとはいっても木などの障害物も多いので迷いやすいかもしれません。
見事木を見つけたら、その場所のスケッチなど、後続が役に立つものを用意できるといいかもしれません。
ただし、のっぽの木の枝で竜種が昼寝しているかもしれません。
万が一『雷鳴竜(らいめいりゅう)』アイロッドの機嫌を損ねれば命懸けの撤退戦になるかもしれませんし、木も粉々になってしまうかもしれません。
●出てくる敵など
・ドラゴンヘッド×総数不明
竜種を思えせる頭部を持った亜竜です。
二足歩行しており、強靭な腕で獲物を殴り殺してマルカジリします。
頭部が肥大化したような外見ですが、全身が鱗で覆われておりタフで防御力もあります。
・ファイアリザードランナー×総数不明
口から火を吐き、二足歩行で機敏に走るトカゲ型亜竜です。
近距離の単体、あるいは範囲にファイアブレスを放ちます。
・ドメスティックアイ×不明
ギョロリとした一つ目の、全長1mくらいの亜竜。派手な音と共にレーザーを放ちます。
死角に全てを頼っているようで、音などには無反応です。
・『雷鳴竜(らいめいりゅう)』アイロッド
竜種。将星種『レグルス』の一角。竜の中でも天帝種同様に強大な存在達です。
金の髪と目を持つ、まるでヤンキーのような雰囲気を持つ亜竜種の女のような姿をとっています。実際の姿は不明です。性格は非常に気分屋のように見えます。
敵対的ではないように見えますが、味方ではありません。皆さんのことは歯牙にもかけておらず、その辺を飛んでる虫くらいにしか思っていません。
非常にマイペースで昼寝を愛しているようで、その辺りがアイロッドが皆さんに積極的に敵対するかのカギとなるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。
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