シナリオ詳細
<帰らずの森>毒沼のガーディアンズ
オープニング
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『覇竜領域デザストル』。
かつては前人未踏、おとぎ話の舞台ともされていた。
特に、竜種は幻の生物、伝承の存在であったが、覇竜へと至ったイレギュラーズは滅海竜リヴァイアサンと相対し、それが実在することを知っている。
人智の及ばぬ竜種と長らく同じ場所で過ごしていた亜竜種と縁を結び、仲間へと引き入れたイレギュラーズは、覇竜地域での活動を始める。
その最中フリアノンへと相談役として出入りしていた『冠位暴食』ベルゼーと対することに。
「まさか、里おじさまが……」
「わたくし達の敵になってしまうなんて……」
先日、イレギュラーズとして共に目覚めた『シェインの相方』
カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)は馴染みの相手の正体に驚きを隠せない。
覇竜を旅する彼女達はフリアノン出身。
同郷の者達に大きな衝撃が走るが、現実を受け止め対策を打ち出す他ない状況である。
『フリアノン里長』である珱・琉珂が先行して探索に出ていたところ、ピュニシオンの森の関所は見る影もない状況となっていたという。
『R.O.Oでは皆、死屍累々だったんでしょ? 現実でもそうなんだけどね。
けど……森の奥に、行きましょう。この森を越えた先にオジサマが居る。……と、言っても森はほぼ手付かずだわ。
だから、危険を承知でお願いするわね。森を攻略する為のヒントを集めて欲しい』
その彼女に従い、カレル、シェインはイレギュラーズと協力することに決めた。
●
程なく、フリアノンへと集まるイレギュラーズ。
今回、同行を決めたカレル、シェインがメンバー達へと挨拶を交わす。
「まさか、うちらがこうしてイレギュラーズになんてね」
「これから、どうぞよろしくお願いするわね」
改めて仲間として接してほしいと願う2人。
そんな交流もそこそこに、彼女達は覇竜の実状について説明を始める。
一通り説明を終え、2人は改めて、現状、里おじさま……いや、冠位魔種ベルゼーや六竜と対するべく、ピュニシオンの森を目指すことになる事を告げる。
「でも、うちらもあの森に立ち入ったことはないよ」
「一度入れば、生きて出られる気はしないの……」
自分達もイレギュラーズとなったのだから、この使命に立ち向かう必要があると感じる反面、森には太刀打ちすらできぬ存在が無数蠢くと2人は言う。
「どうか、うちらと森に向かってほしい」
「できる限り力になるわ」
覇竜を旅してきた彼女達の力は並みの亜竜種よりは格上であるのは間違いない。
心強い仲間を得たイレギュラーズは一路、ピュニシオンの森の探索へと乗り出す。
●
昼間であるはずだが、全く日の光の入らぬ森。
迷宮森林も相当に迷わせる場所であったが、ここは幻想種による木々の操作などではなく、森全体から放たれるおどろおどろしい雰囲気が方向感覚を狂わせる……そんな気がした。
生息する植物は見たこともないものも多く、素手で触れることすら躊躇われる。
遠くから聞こえてくる遠吠え。それはいかなる生物の発する声なのか。
メンバー達はやがて木々の間に広がる沼地へと出る。
それは濃い紫色の泥に満たされており、毒素を含んでいたのは明らかだった。
そして、イレギュラーズの気配を察してか、体を引きずるようにして現れる竜の姿が。
「立ち去れ。ここは貴様らが来る場所ではない」
後方から巨木が胴体となったような亜竜2体を引き連れた明星種『アリオス』。そいつはラードンと名乗った。
しかしながら、奥にいるベルゼーを追う為にも、イレギュラーズとしては探索を進めたいところ。
「悪いけど、うちらも後には引けないんだよ」
「例え強大な相手でも、わたくし達は立ち向かわなければならないの」
メンバー達の態度を見て、ラードンは鼻を鳴らす。
「ならば、種族の力の差を思い知るがいい」
ラードンは手下である亜竜種らをこちらへとけしかけ、自らも跳躍しながら襲い掛かってきたのである。
- <帰らずの森>毒沼のガーディアンズ完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月31日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
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覇竜でも危険といわれる森へと、イレギュラーズは足を踏み出す。
「ヒャッハー! ここが覇竜でも名高き『ピュニシオンの森』か!」
前人未踏な冒険譚に、高橋 龍(p3p010970)は漢として憧れ、テンションを高めてしまう。
「見渡す限りの緑一色! これは迷子待ったなし!」
『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は「アナウンスがかかったら迷子センターまで迎えに来てくれる?」と『独立島の司令』マルク・シリング(p3p001309)に問うが、彼は苦い顔。
正直、そこまでたどり着けるかすら、メンバー達にとっては難しいのだ。
それは、亜竜種少女2人も同じ。
「カレルさんシェインさん、きっと絶対大丈夫です」
不安がる彼女達を、超方向感覚を生かして地図を作製する『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)が元気づけると、幾分笑う余裕も出始めていたようだ。
「さて鬼が出るか蛇が出るか……気ぃ引き締めていかねぇとな!」
龍の言うように、未知の危険地帯を歩くメンバーは緊張しながら探索を進める。
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は感覚を研ぎ澄ませ、遠くの物音すら逃さず進む。
やがて、足元がぬかるんできたことで、浮かび上がるメンバーも。
「暗そうだし、多少でも明るくしておきましょ」
『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は視界の悪さも感じ、ギフトによって光を発する。
こちらも僅かに浮遊するユーフォニーが、不測の事態に備える。
実際、すぐに一行はとある存在と遭遇したことで、ユーフォニーは皆に状況を伝達していく。
「立ち去れ。ここは貴様らが来る場所ではない」
巨大なヒルを思わせる姿をした若き竜種……明星種『アリオス』。
ラードンと名乗ったそれに、龍は驚きを隠せない。
「……って、ヒルかよ!? これも竜種!? 奥が深いぜぇ……!」
オォォォ、アオオオォォォォ……。
さらに、ラードンは従えていた亜竜種ウッドバーン2体を呼び寄せ、警戒態勢を強める。
「歓迎されていないのは分かっているつもりだったけど、中々に盛大なお出迎えだね」
「最初に警告してくれたし、優しさは持っていそうだね」
険悪な雰囲気を察知するマルクだが、『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はラードンの行為にも理解を示す。
「探検はワクワクするのだけど、森を荒らしたいわけではないのよね。……出来たら、話を聞いてもらえたら嬉しいのだけど」
オデットも、自らの考えを口にする。
話すことのできる相手に問答無用で戦うなど、智慧のない生き物になったみたいで嫌だ、と。
「皆様の地に勝手に踏み入り申し訳ありません」
そこで、ユーフォニーが相手に呼び掛ける。
覇竜は自分達にとって始まりの場所であり、この場所も、この場所にいる全てを大切にしたいのだ、と。
「話にならんな」
「踏み入っておきながら相反しているのは分かっていますが……」
ユーフォニーが言いよどんでしまった隣で、イズマが保護結界を展開して森を荒らす意志がないことを示す。
「弱き者よ。我より強者が犇めくこの森を進めると思うてか」
ラードンはイレギュラーズへと問う。
自分すら倒せぬようでは、どのみち誰かに命を取られてしまうと言っているのだ。
「まずは力を示す必要がありそうな所は、竜種らしいのかな?」
スティアが別所で出会ったアウラスカルトもそうだったという。
「仲間と協力して進めるのが俺達の強みだ。弱いばかりじゃない!」
「うちらも後には引けないんだよ」
「例え強大な相手でも、ね」
危険を退けられる戦闘力があることをイズマが主張すれば、カレル&シェインも一緒になって身構える。
メンバー達の態度を見て、ラードンは鼻を鳴らす。
「ならば、種族の力の差を思い知るがいい」
「種族の差、ねぇ……?」
それまで黙っていた『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)が自慢ではないが、自身が死神であることをアピールする。
もっとも、混沌肯定を受けたミーナは元人間の元天使であり、今は一般人とのことだが。
「……ああ、つまりは。竜だからって天下とった気になるのは早いってことさ」
「そうだよ、種族の力だけが全てだと思って侮っと足元をすくわれるよ」
「……練達でフェザークレスに会って思い知ってから、俺はそれを超えたくて戦ってきてるんだよ」
――そんなのは工夫次第でなんとでもなるってことを見せてあげる。
ミーナに同意するスティアに続き、イズマが立ち向かわなければならない相手がいる今こそ、この森を突破する時なんだと力強く語る。
「だから認めてもらうよ……俺達の力を!」
「…………」
もはや何も言うまいと、ラードンは早速攻撃を仕掛けるべく迫ってきたのだった。
●
敵対するのはいずれも地を這っているが、竜の名を冠する者達。しかも、1体は竜種だ。
「竜種も亜竜種も強靭な相手だ。的を散らしたら勝てないよ」
力勝負では勝ち目がないからと、マルクは作戦と連携で対抗するよう仲間達へと呼びかける。
マルクは続けて、カレルとシェインも統率して亜竜種ウッドバーン……木亜竜から攻撃するよう指示を出していた。
「力を認めさせて、撃退するのが目的だ」
「まず不殺かー、むずあじ!」
確認するイズマに秋奈が苦い顔をしてしまうが、ラードンらは構わず襲い掛かってくる。
巨体にも関わらず勢いよく迫り、炎ブレスを吐きかけてくるラードン。
木亜竜らも枝を思わせる木や尻尾を絡め、こちらの動きを止めようとしてくる。
前線にいたメンバーがそれらを受けてしまう間、自らもブレスを浴びていたユーフォニーは根源たる力を泥として浴びせかけていく。
ミーナも木亜竜の腕に絡まれながらも、そいつを足止めすべく木の幹の如き胴体に刃を食らわせる。
その体から飛び散り、流れ出したのは、樹液を思わせるような物体だった。
秋奈もまたもう1体へと迫る。
「盛り上げるのもそれなりにしておいて」
ラードンは別メンバーが抑えに向かっており、秋奈は木亜竜に引っ付いて嫌がらせ攻撃を画策する。
「沼!? 沈んでも戦えるでしょ! 呼吸不要!」
足元は毒の沼地だが、秋奈は全く気にせず残像を展開して一気に切りかかっていく。
「イズマ・トーティスだ」
幻想を纏うイズマは名乗りを上げて木亜竜2体を引き付け、精神を込めて、リズムを鋭く際立たせた熱を浴びせかけていった。
「まだ、固まっているのなら……」
比較的近い場所にいる竜3体を捉え、オデットは使役する熱砂の精をけしかける。
その精が巻き起こす砂嵐は強い重圧を伴い、敵陣を押さえつけようとした。
すでに、仲間達が引き付けてくれていることもあり、敵の初撃でブレスを浴び、枝に絡まれていたオデットは身を退く。
後方にいたマルクがすぐに号令を発し、彼女を含めたメンバーの態勢を立て直す間に、カレル、シェインも息のあった掛け合いで斬撃に魔術を放つ。
マルクも泥を具現化しようと詠唱する間に、ユーフォニーが高速詠唱して。
「これでいかがでしょう」
万能遠距離攻撃係長『今井さん』の力を借り、ユーフォニーは魔力を無数の書類と化して浴びせかけていた。
同時に、スティアや龍がラードンの抑えに向かう。
(注意を引かないとね)
スティアはラードンの意識を自分へと向けるべく、強い意志の力を魔力へと変換して撃ち出していく。
「我を相手どるか」
いささか呆れたようにも見えるラードンはスティアに向けてのしかかってきた。
相手は竜族。人間など歯牙にもかけず、本気で潰しても構わないという気概で攻撃を仕掛けてきている。
だが、スティアはそうではない。ラードンの命を奪わぬよう魔力を叩き込む。
(殺し合いをしにきた訳じゃないしね)
話で解決ができるならその方がいいが、今は話を聞く態勢にも入っていない。少なからず力を認めさせる必要がありそうだ。
龍もまた、スティアと同時に攻撃を仕掛ける。
「偉大なる竜の一柱であるラードン様、いざ尋常に……勝負だぜ!」
竜族が相手なのもさることながら、スティアが重傷を負った状態でこの戦いに臨んでおり、彼女を助ける為に立ち回る。
「……盾役は何人居ても困らねぇよな!」
自分達がラードンを引き付ける間に、他メンバーが素早く木亜竜を倒すという寸法。仲間達がそちらに集中できるようにするのが龍の仕事。
無論、とどめを刺すなんてつもりは毛頭なく、胸を借りるつもりで勝負を挑む。
己の内より燃え上がる炎を浴びせかけ、龍もまたラードンの関心を引かんとする。
「ふむ……」
取るに足らない生物といった印象しか抱いていなかったラードンだが、そんなスティアや龍の姿に、少なからず意識が向き始めていたようだった。
●
木々に覆われ、日の光がほとんど入らぬ森の中。
沼地の底から毒素が漏れ出るような場所で交戦を繰り広げるイレギュラーズ。
数では有利だが、ラードンが竜種とあって盾役となる2人の負担があまりにも大きい。
その為、メンバーもいつも以上に取り巻きである亜竜の討伐を加速させる。
オオォォォ……。
木亜竜の体から体液が流れ出すのを視認したミーナは、刹那高めた赤い闘気を叩き込んで紅い焔に包み込む。
合わせて魅了させようとしたが、亜竜も十分に強者。これにはしっかりと耐えてみせた。
仲間達の攻撃の間隙を縫い、ミーナは樹木の幹を思わせる胴体に触れ、闘気の棘で貫く。
再び赤い闘気をミーナが浴びせれば、カレルが素早く斬撃を見舞い、シェインが雷撃を撃ち込む。
回復の合間に、マルクが巻き起こしたケイオスタイドが木亜竜へと浴びせかかったところで、ユーフォニーが続く。
「…………」
体のあちこちが焔で包まれ、合わせて節々の奥まで入り込む泥によって、不調をきたしていた木亜竜は苦しみ悶え、巨木の如き胴体で体当たりを繰り出す。
(確実に行きましょう)
できるなら複数体巻き込んで叩きたいところだが、ユーフォニーはそれに固執せず、確実に1体ずつ書類の束を浴びせかけていく。
アオォォォォォ……。
木亜竜の瞳から光が消え、沼の縁へとうなだれるように倒れていった。
「ウッドバーンを倒すとは、な」
戦いの間も、ラードンは余裕を崩さない。
薄暗い森の中で閃光ブレスを発するラードン。その光に灼かれた盾役メンバーを癒すべく、マルクがこちらでも立ち回る。
「着実にいこう。無理は禁物だよ」
前線の盾役2人もそうだが、マルクは亜竜種少女ペアも気掛けて癒しをもたらす。
マルクの支援で少しでも余裕ができた龍は正義の拳をラードンへと打ち込み、スティアもまた極小の炎を舞わせて竜の巨体を燃え上がらせようとする。
「どうして問答無用で襲いかかってこなかったの? もし気になることがあれば教えてくれないかな?」
「貴様らがここで潰えたら意味のない話だ」
ラードンは興味こそ抱いていても、まだイレギュラーズを認めるには至らないようだ。
だが、もう1体の木亜竜が追い込まれていれば、話が変わる。
ここまで主にイズマが木亜竜を引き付け、空間を断ち切るようにして粉砕せんと試みていたが、その合間に振り回された木亜竜の尻尾をまともに浴び、逆にこちらのパンドラを砕く羽目になっていた。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしない!」
アオオオオオォォォ!
イズマの危機を察した秋奈が抑えに回って名乗りを上げれば、木亜竜はそちらへと枝のような腕を絡めて動きを封じに当たっていた。
下がったイズマが仲間の手当てを受けつつも、残像を展開してスピード勝負を仕掛ける。
速さならば、イズマに分がある。
木亜竜がイズマに翻弄されている間に、オデットが魔力と少ない周囲の光を集めて。
「ラードンが閃光を使っていたのは助かったわ」
その光すらも借りたオデットはこの場に小さな太陽を生み出す。
陽光は優しく暖かいが、敵対する者には非常に厳しい。
オオオオオォォォォ……。
オデットの放った太陽によって強い熱と光に灼かれた木亜竜は弱々しく嘶き、毒沼に突っ伏すような形で崩れ落ちていった。
「なるほど、な」
何に納得したかはわからぬが、ラードンは依然として余裕の態度を崩さない。
「私達はこの森について調べたいだけなんだ。だからそれ以上のことはやらないつもりだよ」
真摯に呼びかけ続けるスティアは福音を響かせ、しばらくイズマの回復と合わせて自身の傷を塞いでいた。もちろん、ラードンの侵攻も全力で食い止める。
ただ、次の瞬間、ラードンの爆裂ブレスが龍へと炸裂する。
危険を察知した彼が文字通り盾となったのだ。
「ハッ! 我慢比べと行こうぜ! ラードン様! 俺達、人の底力を見せてやるぜ!」
だが、全身火傷を負う龍も無事とはいかず、運命力を消費していた。
同じタイミング、スティアを庇っていたイズマは一直線に放った高熱をラードンの口に向けて放つ。
「ごめんなさいね。日の光が入らない森じゃこの光はちょっと痛すぎるかしら?」
態勢を整えつつ、オデットもまた小さな太陽を生み出す。
破片七晶石の助けもあってか、彼女をターゲッティングしたラードンだったが時遅く、強い光がその巨体を照らす。
皆渾身の攻撃を繰り出すはずだが、竜はまるで臆しない。
「この程度か」
平然と巨体をばたつかせて飛び掛かり、尻尾を叩きつけてくるラードンの攻撃をイレギュラーズは抑えられず、マルクが潰されかけて強引にパンドラを使って意識を繋ぎとめる。
そこで、ユーフォニーが先ほどの続きをと言葉を投げかける。
「ベルゼーさんの……ドラゴニアのみなさんにとって大切な方の手掛かりがこの先にあるんです」
迷惑はかけないようにするから、どうかこの地への立ち入りを認めてほしい。
懇願するユーフォニーが発生させた泥を浴びせかけていった直後、秋奈が飛び掛かる。
「何守ってんのか見せなさーい! へっちなものじゃないでしょ!」
彼女の軌跡は、さながら閃光が走ったかのごとく。
秋奈を追っていたラードンだが、いつの間にか間近に迫っていたマルクが極光の斬撃でその巨体を切り裂く。
逆側にはミーナの姿もあって。
「どうだい? 竜だ神だなんてのは、案外アドバンテージにならないもんだぜ?」
「……ほう」
あまり驚かぬラードンの体を、ミーナが強く蹴り上げた。
「何かを成す為の意志。それがお前には欠けてたってことだよ!」
その意志は決して曲がらぬと、ラードンは悟ったらしい。
「貴様らの力はわかった。もうよい」
「……事情を話して貰えないかな?」
軽く尻尾を振って戦いの意志を放棄したラードンに、スティアは改めて問うのである。
●
ラードンが構えを解いたことで、イレギュラーズも戦闘態勢を解除する。
「ねぇ、なんか意味深な実を守護ってるってホント?」
それに目を輝かせた秋奈に食べるよう促されたスティアはラードンへと果実へと近づく許しを請うが、相手は首を横に振る。
「好む同胞は多い」
見上げたところには、黄金に煌めくリンゴのような果実が1つ。
どうやら、その収穫量は極めて少ないらしい。
「上位の竜種が食べるデザートか?」
そんなところだと返すラードンに、龍は敬意を払いつつ果実の味について問う。
竜種が好んで食べる黄金リンゴ(仮称)は実に美味なのだそうだ。
下手に収穫すれば、ラードン以外の竜種の怒りを買いそうだと、マルクも現地点で下手に果実へと触れることを断念する。
オデットも元いた世界でラードンと似たような役割を担っていたそうで、果実についてきていたが、自分達が侵入者であることは間違いない為、できるだけ失礼のないよう接する。
「あと、ベルゼーのことを聞きたいのだけれど」
「恐るべき方だ」
明らかに態度が異なるラードンの様子から、彼がベルゼーを恐れていることをオデットは察する。
若いとはいえ、竜種すら恐れる力……それはいかほどのものか。
しばし、情報を引き出していた一行だったが、引き返す時間を考えねばならないことを思い出す。
「別に私達はここを荒らそうだとか何か取ろうとか考えてねーよ」
少し目的地までの道程がわからないから、地図を作っているだけとミーナは自分達の状況を話して。
「だから、勝ったんだし、通らせて貰うぜ?」
「好きにするがいい」
静観の構えをとるラードンの傍を通過する一行だが、奥に行かずに近場の探索を進めることに。
イズマが近場の植物に目を向ける間、ユーフォニーも木の葉や木の実を採取する。
「そもそも私ちゃんら探索に来てたんだっけ!?」
うおーと気合十分な秋奈は片っ端からうろついて、近づく小動物にこんにちわと挨拶していく。
また、沼にガラス瓶を浸して水を持ち帰ろうとするユーフォニーに、秋奈が近づく。
「……中見えんわ」
暗視で毒沼を覗き込む秋奈だが、沼はかなり透明度が低く、浅い部分ですらまともに見ることはかなわなかった。
秋奈は「なんか気になるのとかなーい?」とラードン達に問うが。
「ほぼここで生活を営む我らに気になるものがあるとでも?」
「「確かに」」
至極当然にツッコミに対し、亜竜種少女2人は妙に納得してしまうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは果敢に竜を抑え、対話を試みたあなたへ。
対話の成果は近いうちに現れるはずです。
今回もご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<帰らずの森>のシナリオをお届けします。
前人未踏のピュニシオンの森……鬱蒼と茂るこの地にはいったい何が潜んでいるのか……。
●概要
ピュニシオンの森の探索です。
深緑の迷宮森林と同じかそれ以上に方向感覚を狂わせる光景、恐ろしい竜、魔物が巣食っております。
一行が行き着いた毒々しい沼。その大きさは直径15mほどはあり、深さは不明です。
その近くに実る果実を守るように現れる亜竜種、そして、竜種と対することとなります。
●敵:竜種&亜竜種×3体
〇明星種『アリオス』:ラードン
全長5mほど。巨大な黄色い体躯のヒルを思わせる見た目をしています。
森を守護する若き竜。特別な果実を守っているとされますが、詳細は不明です。
人の姿こそとることができませんが、強力な力を有しています。
尋常ではない膂力で押しつぶしてきたり、尻尾でなぎ倒したりと物理をメインに、炎ブレスや、昇華させた爆裂ブレス、閃光ブレスを発します。
〇ウッドバーン(略称:木亜竜)×2体
全長4m弱。巨木の幹のような質感をした胴体を蛇のごとくうねり、伸びる枝のような腕を使い、移動します。
木のような腕や尻尾を絡めたり、振り回したり、巨木を思わせる胴体を叩きつけてきたりとその力は脅威です。
●NPC
以下2人、同行します。
フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
○カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。軽装鎧を纏い、剣舞を行う彼女は見とれてしまうほどの美しさです。
○シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖を所持し、先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使うことができます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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