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シナリオ詳細

<帰らずの森>限りなき死の中を歩むということ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●帰らずの森
 静寂。
 そんなピュニシオンの森の中でなじみ深く、けれど最も縁遠くもあるものが此処にはある。
 美しく澄んだ泉。
 弱肉強食の理と血が大地の奥深くまでしみ込んだこの場所において、まるで穢すことを許さぬように澄んだ泉。
 その理由は何処にあるのか。それはあるいは、泉の中央に鎮座するクリスタルの塊のせいなのだろうか?
 いや、違う。まるで台座のように整えられたそのクリスタルの上に座する、青い髪の青年のせいなのだろう。
 まるで亜竜種にも似たその青年は、しかし亜竜種では断じてない。
 目を閉じ、座禅でも組むかのように座る青年は音を一切発することなく、ただその場と一体化するかのようにそこにいる。
 それになんの意味があるのかは分からない。聞いたところで答えはしないだろう。
 同種ならばともかく、格下の生き物と会話をすることに彼は意味を見出さない。
「ギオオオオオオオオオオオオ!」
 だがその静寂を崩すように、その場にモンスターが現れた。
 狂暴な、全身に鎧を纏ったかのような甲殻類のモンスター。
 覇竜でも長く勝ち残ってきたのだろう。その全身からは覇気が感じられる。
 この居心地のよさそうな場を奪おうとでも思ったのだろうか……しかし、それは少々悪手に過ぎた。
「……煩い虫だ」
 目を開くことすらせず、向けた手の先から放たれた渦巻く水流がモンスターを微塵に引き裂きながら何処かへと押し流していく。
 そうして、再び静寂の戻った泉でしばらくの時間を過ごした後、男は何処かへと飛び去っていく。
 そう、その男こそは将星種『レグルス』の一角。
『激渦竜(げっかりゅう)』ザナデスであった。

●水場を探せ
 森を攻略する為のヒントを集めて欲しい。珱・琉珂が発したその言葉は、イレギュラーズをピュニシオンの森の探索へと駆り立てた。
 しかし、帰らずの森と呼ばれているピュニシオンの森に何の策もなく踏み込むのは、ただの死にたがりでしかない。
 だからこそ、森を攻略するヒントを集める……という話になったのだ。
 しかし森を攻略するヒントといっても、何が必要なのか?
 恐らく千差万別の答えが返ってくるだろう中で、1つの答えを出した者がいた。
 フリアノン3人娘の、その1にして手間のかかるリーダー役。あるいはお騒がせ担当。
 すなわち『鉄心竜』黒鉄・奏音(p3n000248)である。
「必要なのは水の補給地点だと思うんだ!」
 そう、奏音の考えではピュニシオンの森の探索には凄まじい緊張が伴い、自然と水の消費も増える。
 また、休憩場所という観点からも水場の確保は重要であると考えられた。
 からば川か泉か。恐らく泉ならばピュニシオンの森の中にもあるだろう。
 そして、ある程度得られている結果などから「飲用に適した水場」のだいたいの予想は出来ているのだという。
 あとはそこに向かってみて、本当に水場として利用できるかを確認すればいい。
 そうすれば、ピュニシオンの森の探索における1つの手がかりとなるのは間違いないだろう。
「ボクたちの修行の成果が試されるって感じだよね!」
 青龍刀を担ぎながら奏音はそう微笑む。まあ、実際にはもう少しハードになりそうだが……これがピュニシオンの森の攻略の一助となるのであれば、やるしかないだろう……!

GMコメント

ピュニシオンの森を探索し、水場を見つけましょう。
大体の場所に目をつけている状態なので、当然地図などなく方角が頼りです。
今回の場合は「北西に数時間」といったすんげえアバウトなやつです。
……ですが、方角さえ見失わなければ辿り着くでしょう。この泉を確かめ、水が飲用に適するかを確かめることができれば成功です。
名前もないその泉には、時折ドラゴンが飛来します。
彼の機嫌を損ねた場合、命懸けの撤退戦になる可能性があります。
そうなった場合、この水場を今後使う事など出来ず失敗となる可能性が高いです。

●出てくる敵など
・ドラゴンヘッド×総数不明
竜種を思えせる頭部を持った亜竜です。
二足歩行しており、強靭な腕で獲物を殴り殺してマルカジリします。
頭部が肥大化したような外見ですが、全身が鱗で覆われておりタフで防御力もあります。
・ファイアリザードランナー×総数不明
口から火を吐き、二足歩行で機敏に走るトカゲ型亜竜です。
近距離の単体、あるいは範囲にファイアブレスを放ちます。

・『激渦竜(げっかりゅう)』ザナデス
竜種。将星種『レグルス』の一角。竜の中でも天帝種同様に強大な存在達です。
青い髪と目を持つ、涼しげな雰囲気を持つ亜竜種の男のような姿をとっています。実際の姿は不明です。
一定確率で泉のクリスタルの下へ飛来し、その上で静かに座っているようです。
敵対的ではないように見えますが、味方ではありません。皆さんのことは歯牙にもかけておらず、その辺を飛んでる虫くらいにしか思っていません。
どうやら静寂を好んでおり、その辺りがザナデスが皆さんに積極的に敵対するかのカギとなるでしょう。

●今回の友軍
・黒鉄 奏音
おてんば修行大好き娘。フリアノン3人娘、その1。
青龍刀をぶんぶん振り回し戦います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はDです。
 多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
 様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。

  • <帰らずの森>限りなき死の中を歩むということ完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年03月18日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)
ドラゴンライダー
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん

リプレイ

●ピュニシオンの森へ
 鬱蒼とした森の中を、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)たちは歩いていく。
 薄暗いこのピュニシオンの森は「帰らずの森」とも呼ばれる、最も危険な場所であった。
 だからだろうか。一歩歩くたびに死を感じるような、そんな感覚をヨゾラたちは感じていた。
「ピュニシオンの森の水場を見つけて、飲み水にできるか確かめる……竜種に見つからないよう……できるだけ静かに動くよ」
 今回の探索が慎重に進めなければいけないことを前提にすれば探索時間がかかるか分からない為、水分補充の為の小さめの果実も含む食料等の荷物も最低限必要なラインで持参している。
 方角が北西であることも分かっているのでコンパスも持ち込んでいるが……幸いにも此処では正常に機能している。
 更にヨゾラはハイセンスも用いて周囲の警戒を怠らない。事実、この時点ですでに何度か戦闘をしているのだ。
「このまま北西に数時間、方角を見失わないよう気を付けて進もう」
 敵に気付かれないよう、極力音を立てずに闇の帳を用い移動してはいるのだが、ファイアリザードランナーのようなドタバタ走りながらファイアブレスを吐く相手では、偶発的戦闘もどうしても発生してしまう。
 それでも竜種を思えせる頭部を持った亜竜「ドラゴンヘッド」との戦闘を比較的避けられているのは成果だろう。
 自然知識も活かし皆への伝達手段としてハイテレパス。鳥のファミリアーも使用しているが、何がどんなものを刺激するか分からないので可能な限り低空飛行している。水場を見つけるだけの仕事ではあるが……それでも、こんなに命懸けだ。
「水場……水場ですか。こういう所の水場は、間違いなく近隣に生息している生物にとっても水場である筈です。つまり……様々な亜竜や……竜種すら居るかもしれない、という事。選定と情報収集は、念入りに行う必要がありますね」
「触らぬ神ならぬ竜種に祟りなしってやつかな。カムイグラ方面の隠密特化部隊が羨ましくなってくるね。可能な限り気配を殺しつつ、ちゃちゃっと水質調査を終わらせて戻るとしましょう。しかし竜種にも色々いるんだなぁ、問答無用で襲ってくるヤツだけじゃなくて助かったよ」
 『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)と『氷狼の封印を求めし者』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)の言う通り、このピュニシオンの森では何処で竜種と出会ってもおかしくはない。
 だからこそ闇の帳に加えリースリットは広域俯瞰と超視力で森の木々の隙間を通して上空の視点から水場の有りそうな位置を探していた。
(湖、或いは川があればその場所は木々が途切れている筈ですから、見れば解る筈……)
 更には天地統帥で森に住まう精霊と意志を交わして、周辺の亜竜等の危険の存在や水場の位置・方向を聞いて情報収集にも努めるつもりだったが……精霊が少ないのか、中々見つからないのはこの森の特殊性故だろうか。
「森は視界が良いとは言えないからねぇ。さてと、用心用心」
 ルーキスも可能な限りの忍び足で森の中を移動する。
(泉の方向は分かってるんだから、超方向感覚で迷わないようにしておいて……)
 敵の探りにと可能な限りの広域俯瞰。視界に遮られないエネミーサーチの交互使用で隙が生じないようにしているが、勿論個人ではなくチームで分担しているからこそ比較的視界は少なくなっている。
「流石に帰らずの森って言われるだけあって道中だけでも何が起きるか分からないからね。どれだけ警戒しても足りないでしょう」
「ああ。戦いは避けるべきだろう。俺達も戦い続ける事は出来ないし、戦う時は要所に絞るべきだ」
 『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)もマッピングする手を止めないようにしながらルーキスへとそう頷く。
「ピュニシオンの森か……探索が進んで居ない、未開の土地に様々な亜竜達も生息していると聞く。おまけに竜種も存在するというのだから、油断は出来ない」
 ベネディクトもまた超方向感覚で北西に向かいながら、周囲を警戒していく。
 戦闘を行う事を基本的に避けて時には一直線では無く迂回も行って目的地である水場を目指すのが目的だが……流石に返らずの森と言われているだけではあり、完全に戦闘は避けられてはいない。
「奏音も迷子にならない様にちゃんとついて来るんだぞ」
「勿論、任せてよ」
 冗談まじりにベネディクトが言えば、『鉄心竜』黒鉄・奏音(p3n000248)がいつもよりはヒソヒソ声で返してくる。
 フリアノン3人娘のバカ担当と言えど、空気は読めないわけではない。
 というか、ベネディクトが頼み込んでついてきた静李に無言で睨まれているのも大きいのだろう。
 力関係としては奏音より静李の方が上らしいが、奏音がこの依頼に同行しているというのもベネディクトに頼まれたのも、静李が同行した理由の1つだろうか。
 ベネディクト自身は俺はハイセンスやギフト「黒狼王の血統」で敵対しそうな生物の位置や、情報を確認と情報共有を行いながら、不意打ちを避け、忍び足で斥侯の様な役割を担っていた。マッピングに加えこの役割をこなしているのだから、正直かなり慌ただしくはある。
「この辺に水があるところ知りませんか……! いえ朝露ではなく……!」
 そして近くの植物に自然会話で話しかけているのは『ドラゴンライダー』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)だ。
 相変わらず植物さんは何言ってるかよく分かりませんが何となくわかりました……と言っているが、まあ動かない植物に聞いても限界はある。
「隠密行動……静かにしなきゃだめ……!? うちがんばる……がんばります……!! 奏音さん一緒にがんばりましょう……!」
「そうだね、頑張ろうね!」
「ついに竜種に会えるかもなんですか!!  テンションあげあげになってきました!! 静かにですが……!!」
 ウテナは水場は冷たいはずなので温度視覚で青っぽい場所を探っていくが、未だそれらしき場所は見つかってはいない。
「帰らずの森、ピュニシオンの森……でありますか。初めて来る場所でありますが、水の確保は重要な任務! しっかりと果たして橋頭堡を作りたいところであります!」
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)もいつもより気持ち静かめに声をあげる。此処で水を確保できるようになるのは、今後の探索の為にも役に立つものだ。
(地図も無く森であるため下手な行動は遭難に繋がりかねない。それに……将星種と呼ばれる危険な竜種も近辺に出没するという話。彼との戦闘はこちらの被害も大きくなりそうでありますし避けねば……)
 ムサシも闇の帳を発動させてはいるが、それでも完璧というわけではない。近くをギイギイと声をあげながら走っていくファイアリザードランナーも此方には気付いていないようだが、何かの拍子に戦闘に移行してもおかしくはない。
 必死で気配を消して……万が一の時には保護結界で物が壊れる音を少しでも出さないようにしようとも考えていた。
 何が何処で竜種の逆鱗に触れるか分からない以上、そうするのが無難ではあったし……こうして近づけば近づくほどに危険は高まっていく。そう、これは戦えば戦うほど死に近づく道行。
 負ければ死、勝っても竜種により死に至るかもしれない。故に「戦わない」という選択肢を選んだが……それすら正解であるかは分からないのだ。

●竜種との遭遇
「ふう、何処かに行ったみたいですね……」
 『劉の書架守』劉・紫琳(p3p010462)はファイアリザードランナーたちが何処かに走り去っていったのを見ながら安堵の息を吐く。
「それにしても、此処はチェックポイントとして優秀ですね。次回来る時の目印になるかもしれません」
「そうだな」
「方角と距離しか情報がないというのも困りますしね」
 紫琳はベネディクトと共にマッピングにチェックポイント情報を書き込んでいく。
 何があった時にそうした情報があれば、それを目印に戻ることもできる。
 そして紫琳自身、ファミリアーを進行方向に先行させて索敵しているだけでなく、超聴力とエコーロケーションで潜んでいる敵も警戒している。そう、全員が索敵を担当することでこの一団の索敵能力の分厚さは凄まじいものとなっている。
 余程隠ぺい能力に長けた者でなければ、この警戒網を潜るのは難しいだろう。
「ベルゼー様の手掛かりを何か掴むためにも、なんとしてもピュニシオンの森を攻略しなければなりません。その為にも、いずれ森の奥地へ踏み入る時のため飲み水の補給地点を確保しておくのは重要ですね。とはいえここは帰らずの森。安全そうな泉であっても何が起こるか分かりません。このまま最大限の警戒を持って臨みましょう」
「竜種は父上に似て美しいですが恐ろしいので、なるべく刺激しないようにしま……ハッ!?」
 導きの輝石に触れていた『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)が、今気づいたとでも言うかのように口元を押さえる。
「私の娑伽羅扇、竜種の角から作った的な話(真偽不明)があるのですがもしあの竜種のお知り合いの角だったらどうしましょう……?」
 そう、呪術用の扇であるヴィルメイズの娑伽羅扇は竜種の角と鱗を切り出して加工したという言い伝えがあるが、真偽は定かではないという代物だ。まあ、危ない橋は渡らないのが無難ではあるだろう。
その際は土下座してこのお酒(純米大吟醸・大カミさん)を詫び石ならぬ詫び酒として捧げて許してもら……えなさそうですね、虫ケラ扱いらしいので……。う〜んどうせ虫扱いされるならモルフォ蝶とかタマムシが良いですね! ……まあ違うと思いますけど、泉の探索の際は念の為扇を隠しておきましょう」
 ヴィルメイズは混乱しているように見えて通常運行なので、全員「そうだな」と適当に返している。この恐ろしい雰囲気の中では清涼剤とも言えるだろう。
「……大丈夫か? こんな所に居るんだ、ストレスもあるだろう……ほら、飴だ。貰いものだけどな」
「うっ、静李さんに気を遣われて心が痛い!?」
 唯一慣れていない静李にガチ心配されていたが、さておいて。
「……いる」
 ヨゾラが、そう口にした理由。それはこの先にようやく見つけた泉付近の木に留めたファミリアーの見たモノだった。
「情報にあった竜種だ。無音で座ってるね」
 そう、それは青い髪と目を持つ、涼しげな雰囲気を持つ亜竜種の男……に見えるモノ。
 しかしそうではないことは、この場からでも伝わってくる「圧」で理解できる。
 アレは……間違いなく、竜種だ。泉の中央のクリスタルに座り迷走しているように見えるソレをファミリアーの目で見ながら、ヨゾラは思う。
(竜種も亜竜種に近い人型になれる。この森の奥で、単独でいるならそれは……普通の亜竜種じゃ、ない。つまり……)
 その在り方は、あまりにも自由だ。
(これが……覇竜が覇竜たる所以。強大である竜種が、望むままに在る所……)
 そんな中、ヨゾラは竜種が僅かに目を開きファミリアーを「見た」のを……見た。そして、竜種の呟きをもファミリアーを通して拾っていた。
「このザナデスを無遠慮に見るか? しかしまあ、赦そう。虫にしては羽音を響かせぬ……それは何より重要なことだ」
 そう呟いただけ。しかし、今の一言で竜種……ザナデスの持っている「ルール」を確実に悟ることが出来た。
 そしてリースリットは水の精霊が嫌がっている理由も確かに理解した。精霊も、ザナデスが怖いのだ。
(ザナデスが居なければ、亜竜が居ても距離を置けば何とかなる筈……待っても泉に近寄れないなら、泉と繋がる川も探しましょう
そちらでも水の補給には足りる筈ですし、出来れば候補は複数欲しい)
 リースリットはそう考えるが、川はない。どういう理屈か内部循環でもしているのだろうか?
 しかしザナデスが立ち去るまでは近づくのは悪手としか思えない。
「ふぅ、焦らない焦らない」
「水場にザナデスが居ないならそれで良し、だったが……」
 ルーキスとベネディクトもそう言いながら、ザナデスが去るのをただ待つ。
 故にウテナもギフト「竜疎通」で語り掛けるのはやめて何を考えているのかを感じようとするが……ほぼ何も分からない。
「……むむむ、何も分からない……つまりめちゃくちゃ強いってことですね……! やばやばです……!!」
 そう、賢く強大なもの程、その精度は下がるというその性質上、ザナデスの賢さと強大さは相当なものなのだろう。
「相手が何もしてこないのであればお互いに争う意味はないであります。なるべく余計な音を立てたり騒がしくしないようにするでありますよ」
「そうですね。このような場所に一人でいる時点でただの亜竜種ではありえません。恐らく将星種でしょうか……。何にせよ下手に刺激するのは避けるべきでしょう」
 ムサシに紫琳もそう頷き、ヴィルメイズも小声で囁く。
「あっあれが竜種……遠くからなので分かりませんがグッドルッキングガイの予感がいたしますよ。しかし歯牙にも掛けないとはいえ、今後亜竜種やイレギュラーズがここに出入りするとなったら煩わしく思うかもしれません。私達だってお気に入りの場所に蝿や蚊が増えたら嫌ですもんね? 私は蝶ですが。あの方の為にも、今後泉を利用する場合はむやみに荒らさず静寂を保つよう周知していかないといけませんね」
「……君、絶対にあれに近づくなよ」
「はい」
 静李に遠回しに黙ってろと言われたヴィルメイズがその場に正座するが……さておいて。
 そうして緊張感ばかりが増していく時間が過ぎて行った後、ザナデスはその翼を広げ何処かへと飛んでいく。
 その姿がはるか遠くに消えた頃……全員が大量の汗と共に泉の側へと転がり出る。
「あーえげつない緊張したぁ、肩凝りそーう」
「本当は話の一つでもしたくはあったのだが、この場にはそぐわぬ様だし、自重で正解だったな」
 ルーキスにベネディクトもそう言いながら、静李に「水質の調査も良かったら手伝って欲しいんだがどうだろうか」と話しかける。
「ああ、いいとも。その為に連れてきたのだろう?」
「ボクは?」
「奏音は……手伝いだな」
「おっけー!」
「飲めるかどうかは飲んでみればわかりますよっ。ギャンブルですギャンブル」
「あ、やっぱりウテナを押さえといてくれ」
「うん」
 ギャンブラー精神を発揮しようとするウテナを奏音が抑えている中、静李と紫琳、そしてヨゾラとリースリットによる水質調査が行われていく。
 ヨゾラによるアナザーアナライズ(弱)も使い調査していくが……どうやら、とんでもなく綺麗な水であるらしいことが分かる。
 そのまま飲んで味に異変ないか体調に異常発生しないか確認したいところでもあったが、その辺りは静李と水の精霊たちから話を聞いたリースリットが保証してくれる。
 ひとまず飲めそうではあるが、念のため水筒にもヨゾラは水を入れていく。帰ったら詳しい調査もしたいところだが、どうやら新鮮で綺麗な水を補給できる場所であることは確かなようだった。
「では戻りましょうか」
「何時までも留まっておける場所では無いからな。調査は無事帰るまでが調査だ」
 リースリットとベネディクトの号令に全員が動き出して。
 紫琳が、その泉を振り返る。
「竜種の立ち寄る場所、となると中継拠点として使うのは難しいでしょうか……。刺激しないよう周知する必要がありそうですね」
 ルールさえ守れば平気ではあるだろう。しかし、水の補給以外では近づくべきではない。
 それが、この探索で得た確かな成果であった。

成否

成功

MVP

劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者

状態異常

なし

あとがき

フリアノン3人娘、力関係は三すくみ(仲良し)。
奏音は棕梠に強く、棕梠は静李に強く、静李は奏音に強い。
此処、別にテストには出ません。

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