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シナリオ詳細

<カマルへの道程>反撃の刻は来たれり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●転移陣の守り
 ラサの古代遺跡、古宮カーマルーマ。その広々としているはずの一室は、巨大ゴーレムや巨大リクガメ、砂狼のような晶獣が蠢いているため、やや狭く感じられる。
 晶獣らを一瞥しながら、騎士鎧の男がつぶやいた。流れるような長髪に貴族然とした風貌のこの男は、その鎧も含めて、全身が紅血晶で出来ているかのように思われた。
「こ奴らでは少々心許ないが……やむを得ぬな」
 男は、グラオ・クローネの夜に晶竜を放ってネフェルストを襲った。その時に使った晶竜からすれば、やはり晶獣では物足りないものを感じてしまう。だが、使える晶竜が今はいない以上、この晶獣らでこの場を守らなければならなかった。
「何時かは、とは思っておったが、よもやもう此処を突き止めようとはな。やはり、ローレットは侮れぬ」
 月の王国がラサに仕掛けている以上、この遺跡の存在が探り当てられることは、男も想定していた。だが、その想定よりも早く事態は進行していた。
 せめて、晶竜ルージュ・アンジュによるラサ支部への襲撃が、もう少し上手く行っていればと思わないではない。だが、まだ自身が動くべき時ではないという判断によって、その機を逸することになってしまった。
 ともかく、この奥にある月の王国への転移陣を奪わせるわけにはいかない。
「この場に現れし者は、鏖とせよ――よいな」
 男は晶獣達にそう告げると、奥の部屋に入り、転移陣で月の王国へと戻っていった。

●転移陣を奪え
 晶竜ルージュ・アンジュの襲撃を受けたローレットのラサ支部は、元の姿を取り戻しつつあった。
 破壊された場所は修理され、職員達も――一見、ではあるが――何事もなかったかのように働いている。
 その一室に、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)はイレギュラーズ達を集めていた。
「今回皆さんにお願いしたいのは、『月の王国』への転送陣の確保です」
 グラオ・クローネの夜にネフェルストを襲った晶竜らは、『女王』と呼ばれる娘が支配者である月の王国が差し向けてきたこと、月の王国からラサへは、古宮カーマルーマにある転移陣を通ってやってきたことを、勘蔵は告げる。
「既に、いくつかの転移陣を通じて月の王国への進軍も始まっています」
 もっとも、その王宮は今はまだ遠く、砂漠地帯を攻略して橋頭堡を築こうとしている段階だ。
 だが、何時か王宮に攻め入り、月の王国の攻略戦を行うことになる。
「その時のために、カーマルーマに数多くある転移陣を、一つでも多く奪取しておくことが重要です」
 そこまで言うと、勘蔵は一息ついて、呼吸を整えた。そして、再度口を開く。
「……先のグラオ・クローネで、月の王国は此処にまで手を出してきました。
 そこまでやられて、やられっぱなしでいられますか?」
 勘蔵は、イレギュラーズ達を見渡しながら問うた。やや語勢が強いのは、支部を攻撃された際に危うく生命を落としかけた故だろうか。
「しっかりと、月の王国に反撃してやりましょう。この依頼は、その第一歩です。皆さん、よろしくお願いします」
 イレギュラーズ達に向けて、深々と勘蔵が頭を下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は<カマルへの道程>のシナリオをお送りします。
 立ちはだかる晶獣らを撃破して、転送陣を確保して下さい。

●成功条件
 敵の全滅(=転送陣の確保)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ラサの古代遺跡、古宮カーマルーマの内部。100メートル四方の部屋です。天井は20メートル程度。
 照明等は持参しているものとします。そのため、別途暗視や照明などは特に必要ありません。 

●初期配置
 イレギュラーズは、部屋の入口(一片の中央)に全員が一緒にいます。
 晶獣の側は、部屋の中央付近にいます。
 シャグラン・プーペとポワン・トルテュが前衛の中央にいて、その左右にサン・ルブトーが広がっています。
 シャグラン・プーペらから20メートル後方に、リール・ランキュヌとポワン・トルテュがいます。
 イレギュラーズ達とシャグラン・プーペの距離は、40メートルほどです。

●シャグラン・プーペ ✕3
 ラサの遺跡に眠っていたゴーレムが紅血晶に反応し、変質して生まれた晶獣です。全高5メートルほど。
 怪力で殴りつけてきます。攻撃力が高く堅牢ですが、動きは鈍いです。
 【弱点】や【邪道】、【乱れ】系BSを有する攻撃を使ってきます。
 巨体故に、マークやブロックには複数人を要します。

●リール・ランキュヌ ×1
 強力な怨念を抱えていた亡霊が、紅血晶と反応したことにより生まれた晶獣です。
 嘆くような叫び声は、【毒】系と【狂気】系BSを有する高威力広域の範囲神秘攻撃として、イレギュラーズを苛むことでしょう。

●ポワン・トルテュ ✕3
 巨大リクガメの化石が紅血晶に侵食されて誕生した、大型の水晶亀の晶獣です。
 シャグラン・プーペの付近に2体、リール・ランキュヌの側に1体います。
 動きは遅いですが、シャグラン・プーペ以上に堅牢です。
 【怒り】を有する咆哮を放ったり、シャグラン・プーペやリール・ランキュヌの盾になったりします。
 巨体故に、マークやブロックには複数人を要します。

●サン・ルブトー ✕多数(20以上)
 ラサに多く生息する砂狼が晶獣によって変貌した、晶獣です。最低でも、20匹は下りません。
 非常に凶暴で、群れを成して人を襲います。
 手数の多いスピード型で、タイミングを合わせて一斉に攻撃してきます。
 攻撃は爪や牙で行われるため、【出血】系BSが想定されます。

●吸血鬼(ヴァンピーア)『???』
 全身が紅血晶で出来ているような肌の、同じく紅血晶のような輝きを放つ全身鎧を纏った騎士風の吸血鬼です。
 OPで、転移陣の向こうへと去ってしまいました。そのため、今回は皆さんと戦うことはありません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <カマルへの道程>反撃の刻は来たれり完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
百合草 源之丞 忠継(p3p010950)
その生を実感している限り、人なのだ

リプレイ

●集められた戦力を前に
「ローレット支部を狙ってきた奴がいたと聞いて来てみたが……なるほど、これだけの晶獣を配置するとはやる奴のようだな」
 古宮カーマルーマの一室に、巨大ゴーレムや巨大リクガメ、砂狼や亡霊のような晶獣が蠢いているのを見た『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は感心したようにつぶやいた。
「大した数ですが、些か寄せ集めという感もありますね。予め配置していた守護者というよりは、急いでかき集めたという趣があります」
「亀に狼に幽霊にゴーレム……もう有るもの全部使って守りに来てるってカンジですね」
 一方でこの統一感のなさは、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)や『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)が言うように、手元にある戦力を全部使った寄せ集めたものと言う印象を、見る者に与えていた。
 もっとも、寄せ集めであろうとその数自体が十分な脅威であるし、何より。
「何れにせよ、殲滅しなければ通れませんか」
「ならば、こいつらを倒して転移陣を確保するまでだ。そして、次こそ本人を引っ張り出してやろう」
 アリシスの言に、ラダはやるべき事は見えているとばかりに応じた。
 それにしても、紅血晶を追ったら吸血鬼に転移陣と、あれこれ出てくるものだとリカは思う。だが。
「なりふり構わないということは、焦りのある証拠……ならば、どこまでも嫌らしく追撃といたしましょうか」
 晶獣らの奥、転移陣のある方を見据えつつ、リカが言った。
(この戦い……ええ、相手に血を持つ者達が居ないのは……少し安心ですね)
 敵の構成を確認した『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は、ホッと胸を撫で下ろした。
 吸血鬼に烙印を刻まれてからと言うもの、マリエッタは今まで以上に血が魅惑的に思えて仕方が無い。
「……厄介な贈り物を、受け取ってしまいました」
 だが、今はこれを抱えてでも、進むしかない。吸血鬼と月の王国について、より知るためには。
「私に烙印を付けたこと……絶対に、後悔させてあげます。
 死血の魔女は与えられるものではなく、奪う者だと知らせてあげましょう……」
 転移陣の向こうにいる吸血鬼らに向けて、マリエッタは告げた。
(イレギュラーズに烙印? 吸血鬼化させようと?)
 そのマリエッタと、ラダの様子を見やった『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)はふむ、と思案する。
 それ自体は、発想として面白くはある。だが、吸血鬼化におびえて家で縮こまっているような者は、イレギュラーズにはいるまい。
「それをしっかりと理解してもらわねば、な?」
 エーレンもまた、ここにはいない吸血鬼らに向けて言った。
「月の王国、ねぇ……」
 転移陣の向こうにある国について、『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)がつぶやいた。おそらく、木漏れ日の妖精とは対極の者らが住んでいるのだろう。興味自体はあるが、本領を発揮できそうにないのが、オデットにとって少し嫌なところだ。
「――まぁ、いいわ。実際行ってみないとどんなところかもわからないし、手を出してきたのがそっちなら喧嘩は買ってやりましょってことで!」
 今回も大暴れしてやろうと、オデットは意気込んだ。それに、『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)が頷いて賛意を示す。
 ここに来る前に情報屋にも言われたことだが、このまま一方的に攻撃されるのはヴェルグリーズにとっても許容できない。事態を解決する為にも、相手方の本拠地である月の王国への移動手段を確保しておく必要はあった。
「一手ずつ、着実に進めていこう」
 まずはこの晶獣達を排除して、転移陣を押さえることからだ。そこに意識を集中しつつ、ヴェルグリーズは独り言ちた。
(敵に対して深く考えるな。斬る事のみを考えればいい――紅血晶が何なのか解明するまで、こ奴らを助ける事など叶わず)
 『名も無き忍』百合草 源之丞 忠継(p3p010950)は、『忍び刀・桐雲』の柄に手をかけつつ、この後の戦闘で晶獣を斬ることだけに意識を集中する。
 晶獣らは、何らかの存在が紅血晶によって変えられた者だ。その元となった存在を助けたいと言う情が、忠継の中にはある。だが、紅血晶の影響から解放する具体的な手段が見えてこない以上、その情は今は無用でしかなかった。

●討たれゆくサン・ルブトー
 イレギュラーズ達は、部屋の入口を背にして、前衛を縁とする形で半円の陣形を敷いた。
 そこからリカが飛び出して、左側に広がっているサン・ルブトー、砂狼が変異した晶獣らの中へと飛び込んでいく。
「さあ、いらっしゃい? ワンちゃんたち」
 サン・ルブトーらに向けて、リカは誘うようにウィンク。それに煽られて、サン・ルブトーらはリカへの敵意を剥き出しにした。
(せっかく、狙わずとも当たる程度に数がいるのだ。恩恵にあずからせていただくさ!)
 ラダは、右側に広がっているサン・ルブトーらに向けて、大型ライフル『KRONOS-I』で乱射した。KRONOS-Iの銃口から次々と放たれる銃弾は、砂漠の猛烈な砂嵐の如くサン・ルブトーらに襲い掛かり、「狙わずとも」どころか精緻に狙ったかのように、五匹のサン・ルブトーの身体を次々と貫いて斃していった。
(よし、俺も続く!)
 ヴェルグリーズは、右側の残るサン・ルブトーらの中へと突き進む。そして、その手にしている『神々廻剱』の写しの刀を、縦横無尽に振るう。ヴェルグリーズの近くにいたサン・ルブトーらの四体が、斬撃を次々とその身に受けて、傷ついていった。
(ならば、畳みかけるとしましょう)
 アリシスは、その四体のサン・ルブトーの周囲に揺蕩う根源的な力を穢れた泥に変え、サン・ルブトーらの運命を漆黒に塗り潰した。既に傷ついている四匹のサン・ルブトーは、何が起きたのかわからないまま生命力を奪い取られ、もがき苦しみながら死んでいった。
 右側にいる残り三体のサン・ルブトーに、マリエッタは熱砂の嵐を浴びせかけた。熱砂に身体を灼かれて、悶え苦しむサン・ルブトーらの姿に、マリエッタは唇の端を吊り上げて酷薄な笑みを浮かべる。
(……っ、いけませんね。どうにも)
 だが、すぐにマリエッタは我に返った。烙印を受けて以来、注意を怠ると今のように、マリエッタの意識ではなく血塗れの魔女の意識が表に出てきてしまうのだ。
 左側のサン・ルブトー十二体はリカに、右側のサン・ルブトー三体はヴェルグリーズに襲い掛かったが、リカもヴェルグリーズも、大した傷は負わなかった。
「さぁ精霊さん達、大暴れして頂戴ね」
 オデットにそう告げられた熱砂の精は、ヴェルグリーズを巻き込まないようにしながら、受ける者にとっては重苦しい砂嵐を巻き起こした。ヴェルグリーズに襲い掛かっていたサン・ルブトー三体のうち二体が、その砂嵐に強かに打ちのめされる。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。イレギュラーズに見つかったのが運の尽きだと思え!」
 その二体のサン・ルブトーへと、エーレンは駆け寄っていく。そして、海洋王国聖十字剣『サザンクロス』で、手当たり次第に斬りつけた。二度の吹き荒れる砂嵐によって弱り切っていたサン・ルブトーらは、サザンクロスによる剣閃を次々と受け、力尽きた。
「――百合草 源之丞 忠継、推参!」
 忠継は、敵の中央にいるゴーレムの様な晶獣シャグラン・プーペと、その側に侍る巨大リクガメのような晶獣ポワン・トルテュに向けて、名乗りを上げた。シャグラン・プーペは忠継に敵意を向けるような動きをしたが、ポワン・トルテュは忠継の名乗りに動じるような様子は見せなかった。
 三体のシャグラン・プーペは忠継をその太い腕で殴りつけて傷を負わせ、二体のポワン・トルテュはシャグラン・プーペのうち二体をそれぞれ盾となって守りに入った。
 後方にいる亡霊の様な晶獣リール・ランキュヌは、その狂乱の叫びによって、イレギュラーズ達の生命を蝕んだ。

●晶獣は全て斃れり
 イレギュラーズ達は、サン・ルブトーを程なくして殲滅すると、リール・ランキュヌを撃破しにかかった。リール・ランキュヌの側にもポワン・トルテュが一体侍っており、その身を盾としてリール・ランキュヌを守りにかかる。
 ポワン・トルテュはリール・ランキュヌから引き剥がされてもすぐに戻ってきて、リール・ランキュヌの盾となる。そのため、イレギュラーズ達はリール・ランキュヌを撃破する前にポワン・トルテュを撃破せねばならず、リール・ランキュヌの撃破まで時間を要してしまう。
 その間に、リール・ランキュヌの叫びによってラダとオデットが、シャグラン・プーペの腕によって忠継が、深手を負った。
 だが、晶獣の攻勢はそこまでだった。シャグラン・プーペの攻撃が忠継に釘付けとなっており、必殺の気迫を伴わない攻撃以外で忠継が倒れることはない以上、これ以上イレギュラーズ達が傷つくことはない。
 ポワン・トルテュもシャグラン・プーペも堅牢であるためそこに至るまでの時間はかかったが、残る敵は傷だらけのシャグラン・プーペ一体となった。

「そろそろ、終わりにさせてもらうよ」
 ブン……! シャグラン・プーペに斬りかかったヴェルグリーズの姿が突然、ぶれた。かと思われた直後、ヴェルグリーズは何人かに分身していた。この分身は、ヴェルグリーズの圧倒的なスピードによって生じた残像だ。しかも、その残像の全てが質量を持つかのように、シャグラン・プーペへと斬りかかる。
 シャグラン・プーペの身体には無数の傷が刻まれ、所々でボロボロと身体の欠片が欠け落ち始めた。
「しかし生命だけかと思えば無機物まで……紅血晶、吸血鬼。より興味がわいてきたわね?」
 魔女の意識が表出しているマリエッタが、瞳を金色に輝かせながら、血によって創り出した無数の武具をシャグラン・プーペへと放つ。シャグラン・プーペの身体には、ハリネズミのように血の武具が突き立てられた。身体の欠片が、さらにボロボロと欠け落ちていく。
(――もう少し、ですね)
 最後のシャグラン・プーペの撃破も近いと見たアリシスは、神滅のヤドリギの概念を『戦乙女の槍』に纏わせ、擬似的ながら神殺しの槍を再現する。そして、シャグラン・プーペの胴を全力で突いた。その威力は本来の神殺しの槍には及ばないと言えども、アリシスの手にしている槍は、シャグラン・プーペの固い身体を易々と貫き通す。
 槍が貫いた穴から放射状に、シャグラン・プーペの身体に亀裂が入った。
「さっさと、倒れちゃいなさい!」
 オデットは自身の魔力と周囲の光を集め、小さな、小さな太陽を生み出した。そして、シャグラン・プーペへとその太陽を叩きつける。本来のものよりはごくごく小さいものとは言え、燃え盛る太陽は、シャグラン・プーペの身体を強く灼いた。太陽の高温によって、シャグラン・プーペの身体の表面はカラカラに乾燥しきって、細かくひび割れて剥落していく。
(これだけ、脆くなっていれば――!)
 エーレンの雷を帯びた一閃が、シャグラン・プーペの肩口を斬った。深く、シャグラン・プーペの身体に斬り込まれていったサザンクロスの刀身は、肩もろともに、シャグラン・プーペの腕を断ち切った。ズン、と鈍く大きな音を立てて、シャグラン・プーペの片腕が地に落ちる。
 シャグラン・プーペは最期の力を振り絞り、残った腕で忠継を殴りつけようとする。が、片腕を失いバランスの狂った身体では、忠継を捉えることは出来ずに終わる。それどころか、すれ違い様に放たれた斬撃で、シャグラン・プーペの残る腕も断ち切られた。
「浅かった、か」
 回避と同時に放ったとは言え、今の一閃でシャグラン・プーペを仕留めきれなかったことに、忠継は苦い顔をする。だが。
「後は、任せろ!」
 ラダが、シャグラン・プーペの胸部に狙いを定め、KRONOS-Iの引金を引いた。KRONOS-Iの銃身から放たれた弾丸は、あたかも吸い込まれるかのようにシャグラン・プーペの胸部に命中し、その奥へと貫通していく。シャグラン・プーペの身体が、ガクガクと大きく震えた。
「これで、お終いです!」
 『夢幻の魔剣』に大いなる魔力を纏わせたリカが、魔剣を大上段に振りかぶる。そして、シャグラン・プーペの頭部を目掛けて全力で振った。万物を斬り裂く雷を纏った一閃は、シャグラン・プーペの頭部を両断。
 ぐらり、とシャグラン・プーペの頭部が前方に大きく傾く。そして、シャグラン・プーペの身体はゆっくりと倒れていき、ズウゥン、と鈍く大きな音を立てるとそれきり動かなくなった。

●転移陣の先
「何とか、堪えきれたか……マリエッタはどうだ。気分が悪くは?」
「……私は、大丈夫です」
 戦闘中、疲労と共に渇きを覚えていたラダは、それに耐えられるうちに戦闘を終えられたことに安堵しつつ、同じく烙印を刻まれたマリエッタの様子を気遣い、問うた。ラダの問いかけに、魔女の意識を内に押しやったマリエッタが、何処か慌てたような様子で答えた。
(これだけの数を慌てて配置したと言う事は、概ね目的地へのルートとしても間違っていないと言う事でしょうね)
 アリシスは、そう推論を立てた。だが、逆に言えば、迎え撃つ側を目的地に追い込む形にもなっている。
(果たして、何をしてくるか……)
 そう思案してみるも、予想の付きようはなかった。
(それにしても、どうにも敵が多かったですね)
 リカは、それだけの数を集めた者の痕跡が残っていないか周囲を探った。が、それらしきものは発見できなかった。
 オデット、ヴェルグリーズ、エーレンは、転移陣が実際に機能するかの確認を試みる。
「うわぁ……」
 転移陣の向こうに出たオデット達の眼前には、一面の月夜と砂漠の世界が広がっていた。
(月と地上の戦。竹取物語の最後ではないか)
 月の王国と戦う。そう改めて意識した忠継は、混沌に転移する前に聞いた物語のことを思い出していた。だが、その物語と違うのは、地上の側は一方的に蹂躙される存在ではない、と言うことであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ラダ・ジグリ(p3p000271)[重傷]
灼けつく太陽
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)[重傷]
鏡花の矛
百合草 源之丞 忠継(p3p010950)[重傷]
その生を実感している限り、人なのだ

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によってこの場の晶獣は全滅し、転移陣は確保出来ました。
 それでは、お疲れ様でした!

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