シナリオ詳細
<カマルへの道程>銀麗カンナビーナ
オープニング
●獣の花園
銃声。それも常人であれば腕がへし折れるのではと思えるほど激しく大きなそれは、ターゲットサイトのど真ん中を破壊した。
銀色の弾丸はその更に向こうにある岩にぶつかり、深くめりこんでいる。
傭兵団『凶(マガキ)』の一員にして、狼たちに育てられた女パドラは、片腕で構えた大口径リボルバーピストルを上向け、衝撃を逃がしていた。
「おーいパドラぁ、転移陣の追加調査が決まったぞ」
「てんいじん?」
「幻想種をどっかに転移させたあやしげな魔術装置があったろ。あれの名前だよ」
虎の頭をした獣種マラティーがどすどすとその巨躯に見合った足音をたてて駆け寄ってくる。
「例の? って何よ」
ゆっくりと毛皮を櫛でとかしていた山羊頭の美女ジャテーフトが、ハイビスカスの華飾りをそっと角につけてぼやく。
「ラーガ・カンパニーだよ。あそこに『転移陣』があったっつー話しは聞いてるだろ?
施設は引き払われてたんだが、転移陣の先が月の王国だとしたらヤベエ。偽命体(ムーンチャイルド)やら晶獣やらが送り込まれてくるかも知れねえ。出口で待ち構えてぶちのめして、転移陣を確保しちまおうって作戦だぜ」
「それ、追加調査、ちがう」
顔を頭巾で覆った白猫頭の獣種がぽつりと声をあげた。大柄なジャテーフトや優美なマラティーと違って、ニランジャナは小柄で無口そうな獣種だ。性別もよくわからない。
「フッ、どこに行こうと、俺たちの居る場所は鉄火場となる定め……」
葉巻を加えハードボイルドな雰囲気をかもす鶏頭の獣種クスンバ。赤いトサカをそっと手でなであげると、パドラへと向き直った。
「だが、俺たちだけでこなすのか? それとも、あのイカした連中を連れて行くか?」
「イカした? ああ……」
パドラは銃を下ろし、そして無表情っぽい顔を少しだけほころばせた。
「そうさ、お前さんの大好きなローレットだよ」
「ば、ばらすな!」
顔を真っ赤にしてパドラは叫んだ。
●
「ってわけ。一緒に来る? 別に、来ても良いけど」
クールぶってそう言い切り、白い髪をさらっと手ではらうパドラ。
そこはラサでもおなじみとなりつつある野外バーだった。
ビールの瓶が置かれ、パドラはそれを栓抜きで開く。豪快に中身をあおると、瓶をドンとカウンターテーブルに置いた。
台詞と行動だけを見るとクールだが、虎頭のジャテーフトがあなたにそっと耳打ちした。
「こいつ、お前とまた会えるってんで昨日の夜寝れなかったんだぜ」
「一晩中お喋りに付き合わされたのよ。気のないそぶりしちゃって、素直じゃないんだから」
やれやれと首を振る山羊頭のマラティー。
「パドラ、可愛い」
白猫頭のニランジャナが呟くと、鶏頭のクスンバがハッハッハと低く笑った。
「うるさいうるさい!」
顔を真っ赤にして銃を抜くパドラ。
「待て待て銃はやめろ銃は」
「説明、説明しような依頼の」
クスンバとジャテーフトがなだめると、ふーふー言っていたパドラは再びビールをあおって冷たいそれを額にあてた。
「ごめん、えっと……どこまで喋ったかな。ラーガ・カンパニーの転移陣が使えなくなったから、古宮カーマルーマに直接攻め込もうって所までだよね」
おさらいをしておこう。
ラーガ・カンパニーとはアンガラカの流通と幻想種拉致の元とみられる悪徳商人ラーガのもつ施設であった。
この施設では浚った幻想種を解剖し臓器売買ルートにのせたり、スケープゴートとするため奴隷商人に売ったりする傍ら、本命となる『月の王国』へ幻想種を送り込む転移陣も使用されていた。
送る先は『月の王国』。アンガラカの出所であり、偽命体(ムーンチャイルド)や晶獣たちがいることを考えるとろくな場所ではないだろう。
「あれだけあっさり捨てられるってことは、ラーガの施設はあれだけじゃない筈。
ここをまずは押さえて、月の王国の探索の足がかりにしようってわけ」
作戦自体は単純だ。
転移陣の前で待ち構え、こちらへ送り込まれた偽命体(ムーンチャイルド)や晶獣たちを撃退するのだ。
「作戦にはマラティー、ジャテーフト、ニランジャナ、クスンバ、それに私(パドラ)も加わるから戦力は結構整うはず」
パドラは額にあてていた瓶を降ろすと、しずくを拭ってからその血紅の目であなたを見た。
「一緒に戦えるね。よろしく」
そう言って、乾杯を促すように瓶を差し出した。
- <カマルへの道程>銀麗カンナビーナ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年03月17日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「パドラさん、久しぶり」
『氷狼の誓い』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)が手をかざすと、パドラもまた手をかざしぱしんと軽くハイタッチをした。
そして手をぎゅっと握り合う。
「あの時は心配を掛けて済まなかった」
「いいや? 今回も宜しくね」
「こちらこそ、だよ」
手を離し、そして二人は……ラーガ・カンパニーの社屋前へとやってきていた。
「お、来たな」
虎頭のマラティーが振り返る。
警備にあたっていた山羊頭のジャテーフト、白猫頭のニランジャナ、鶏頭のクスンバといった面々も集まってくる。
「フッ……闇の饗宴」
「施設のクリアリング、済んでる。転移陣まわりだけ、危険」
クスンバが急に意味の分からないことを言ったので、ニランジャナが補足してくれた。
ジャテーフトが花飾りに手をやる。
「『月の王国』から送り込まれる戦力だとしたら、私達だけで制圧できる戦力とは思えないしね。第一、逃げたラーガが足止め目的で放り込んでくるんでしょう? 前回の戦力よりちょっと上を狙ってくるのが妥当じゃないかしら」
「待ち構えて、迎え撃つ」
『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が実にシンプルな答えを返すと、ジャテーフトがトンッとアッシュの肩をノックした。
「そういうこと。でもって?」
「相応にタフな環境である、かと」
「わかってるじゃない。話の早い女は好き」
「というか……それだけの戦力をビールケース倒すみたいにサッと遅れるものなの?
月の王国ってどれだけ敵が居るやら……」
『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)がうんざりといった様子で肩をすくめると、虎頭のマフティーが牙をむき出しにした。分かりづらいが、これは笑っているのである。
「楽しいだろ?」
「楽しいかなあ。ボクはこのあとバーで騒ぐほうが楽しそうだけど」
「そいつは俺も楽しみにしてる」
「まあ調査するにせよ何にせよ確保したほうが色々と丸く収まるってこったな。確保しちまえばその後は戦力を送り込まれても問題無いんだろ?」
『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)がそんな風に言ってくるが、ニランジャナは『さあ?』と白猫頭の首をかしげた。
答えを代わりに述べてほしいという顔でパドラを振り返る。
「すぐ死ぬであろう戦力を逐次投入するような間抜けはいないんじゃない? というか、ここ押さえたら今度は突入でしょ、流れ的に」
「だな。ここを押さえられたら向こうさんは防備を固めるターンに入るわけか」
勝てば進み、負ければ引く。そう考えればシンプルだ。
(ラーガ・カンパニーか……困ったものだ。サヨナキドリはラサにも支部を置いているからこういった商人がらみの事件は積極的に解決していきたいところだね)
『闇之雲』武器商人(p3p001107)が口元に手を当て、なにやら自分のことを考えているらしい。
世の中が動けば誰しも己の身を考える。武器商人は己の商会を考えているようだ。
と、そこへ一頭のパカダクラが到着した。
追加メンバーが二人して乗っている。
「おまたせ! パドラっていうのはきみ?」
パカダクラから軽やかに降りたのは『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)だった。
スッと差し出したシキの手を、パドラは強く握って返す。
「私ね、君に会ってみたかったんだ!」
「嬉しいね。あとで奢ってあげる……マラティーたちが」
「俺ぇ!?」
後ろで虎頭のマラティーが抗議の声をあげているが、パドラは握った手を引っ張るようにしてラーガ・カンパニーの施設内へと歩き出した。
通路内は汚れているが、殆どが戦闘の跡だ。弾痕もあちこちに残っている。
「転移陣まわり以外はクリアリングしてあるんだったよね。本番は転移陣から召喚された敵を返り討ちにするところ。頼める?」
「任せて! 私、めいっぱい頑張っちゃうから! かっこいいとこ見ててよね!」
えへへ、と笑うシキにパドラも笑いかえそう……として、慌てて髪をかきあげる動作をして誤魔化した。どうやらクールに振る舞ってみせたいらしい。背伸びである。
「それにしても、ラーガ・カンパニーに月の王国への転移陣……そんなタチの悪いものがあったなんてな」
同じく通路を歩く『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)。
「そっちのかわいい子は?」
「かわいいこ!?」
「チャロロ、可愛いけど男だよ」
「可愛いけど!?」
言葉の端々にひっかかり(?)を覚えつつ二度見してくるチャロロ。
パドラは『よろしく』といってチャロロの低い背丈に合わせるように身を少しかがめて握手を求めた。
胸元がすぐ目の前に来るせいで、チャロロは思わず身を退きそうになる。しかしチャロロも男だ。顔を赤くしつつもしっかり握手にこたえた。
「さ、この先だよ」
パドラが振り返り、マラティーたちが武器を構え警戒しながら扉をあける。
因縁の場所。転移陣の設置された部屋である。
●
「下がって、罠かも」
その一言と共に、パドラは転移陣めがけて素早く銃を抜いた。大口径の銃を片腕で、しかもぴったりと一度で狙いをつけるさまには相当の筋力を要するだろうに、その所作にぶれはなく、しかも腕は細く白い。
チャロロがうっかり見とれた次の瞬間、転移陣が反応をみせた。
ミヨンという奇妙な音と共に空間がゆがみ、中から巨大なリクガメめいた晶獣が出現する。
出現時、既に防御姿勢。パドラの銃弾を弾くほどの強固な甲羅で身を守っていた。
チッと舌打ちするパドラ。次の瞬間、亀型晶獣ポワン・トルテュは甲羅の穴から圧縮した空気を放ち回転と突進をしかけたのだった。それも、部屋の壁をぶち破るほどの。
回転と突進。ただそれだけの動作が、施設を発泡スチロールかなにかのように粉砕していく。施設内に響くボゴゴというなんとも奇妙な音が斜め後ろから近づいてくるのを察し、真っ先に武器商人がその防御に飛び出した。
「ヒヒヒ――」
『衒罪の呼び声』を行使しながら立ちはだかる。誰がどう見ても頑強そうに見えない武器商人だが、そんな存在へポワン・トルテュは思い切り激突する。
ボーリングのピンもかくやという吹き飛び方をする武器商人。常人であれば死んでいて然るべき衝撃だったが、しかし武器商人はむくりと起き上がり再びポワン・トルテュへ立ちはだかろうとしている。
それを阻んだのは、同じく転移陣から飛び出してきたサン・ルブトーの集団だった。
武器商人がいかに危険であるか。いかに放置してはならない存在であるかを本能あるいは知性によって察したに違いない。
武器商人の動きを封じ、あるいは倒しにかかるサン・ルブトーの集団。
アッシュとジャテーフトがその剥ぎ取りにかかろうと踏み出したところで、転移陣から偽命体(ムーンチャイルド)が姿を見せた。見せたと同時に腕を鞭のように変化させ、アッシュとジャテーフトの足首へと巻き付け引っ張り込む。
思わず転倒し床を滑った二人だが、すぐにジャテーフトは短剣を地面に突き立てブレーキ。アッシュの足元めがけもう一本の短剣を放つと腕を切断し解放した。
素早く立ち上がり、ムーンチャイルドへと銀の剣を放つ。瞬間的に切れた腕を再生させたムーンチャイルドがそれとキャッチする――が、剣の柄が赤く点滅していたことにその瞬間気付いた。それが何を意味するか知るのは、爆発がムーンチャイルドの顔面付近でおきてからだ。
「腕を変形させるのは何もてめぇの特権じゃあねえさ、まあてめえに見せる意味もねえがな!」
バクルドはライフルを片手で打ちまくりながら転移陣から新たに出現する別のムーンチャイルドを牽制。そのまま突っ込み、カスタムされた義手の肘部分をドンと叩く。手首の中央から割るように出現したブレードが、その飛び出し動作もあわせた素早い突きによってムーンチャイルドの顔面を貫く。と同時にムーンチャイルドは真っ二つに割れた頭を無視して腕をカマキリのように変化。バクルドの両肩へと突き刺しねじる。
ぐおおと呻くバクルドだが、根性で負けるつもりは毛頭無い。片手でライフルをぐるんと回しリロード動作を行うと零距離で打ちまくった。
「走れ!」
クスンバが叫ぶ声に応じ、リーディアとシキが通路をひた走っている。
その後ろからは、通路をそのまま破壊しながら通路よりも大きなポワン・トルテュが追尾していた。
コケーと叫びながら身体ごと振り返り、クスンバが二丁の拳銃を撃ちまくる。
その全てがポワン・トルテュの回転する甲羅に弾かれた。
「誰役に立つ亀の豆知識とかしらねえか!」
「あー……実は甲羅にそってまるく肋骨がある、とか?」
「へー、そうなんだ。で、何に使うのそれ」
「逆に使い方があれば教えて?」
一方で案外冷静なリーディアとシキ。
「なんでそんな落ち着いてんだお前ら!」
「修羅場は慣れてるしね」
「そういうこと」
十字に交わる通路に至ったところで、シキとリーディアがそれぞれ左右にカーブ。まっすぐ逃げていたクスンバが「置いてくな!」と振り返り、そして――。
「おまたせ!」
床のメンテナンスハッチを直前で開き、チャロロが『機煌宝剣・二式』を下から突き上げた。
回転し鉄壁の防御を誇っていたポワン・トルテュが浮きあがり、そしてドブッという音と共に血をまき散らした。
「亀はおなかが弱い……気がした!」
「気がした!?」
ぺたんと座り込んでいたクスンバが起き上がると、ポワン・トルテュが回転をやめている。そうなれば、攻撃のチャンスだ。
クスンバは二丁拳銃を、リーディアはライフルを、シキは魔術弾頭を装填したガンブレードをそれぞれ構え、ポワン・トルテュの手足を出し入れするための穴めがけて撃ちまくった。
いかに装甲が堅くても内側にエネルギーを反射させれば滅茶苦茶に壊れる。堅い甲羅に柔らかい肉、である。
最終的に動きをとめたポワン・トルテュから剣を苦労してひっこぬくチャロロ。
「nice」
メンテナンスハッチの下から這い出るチャロロに手を貸し、パドラは横転したポワン・トルテュの死体に振り返った。
「回転を利用して貫通力に変えたんだね。やるね」
「え、そうだったの?」
「狙ってなかったんだ」
ミーナは『希望の剣・誠』と『死神の大鎌』を二刀流にして振り回し、四方から連携して襲いかかるサン・ルブトーを次々に撃ち払っていた。
「キリが無いな。一気にカタをつけたいんだが……」
「それならいいのがある、時間稼げる?」
ラムダは魔導機刃『無明世界』でサン・ルブトーを撃ち払うと、誘導するように通路を走った。
追跡するサン・ルブトーたちとラムダの間に入ったミーナはオーケーといって次々に繰り出される爪や牙の攻撃を防御する。
ラムダはリパルサーを起動して急加速すると、左右逆に用いることで急ターン。
「無尽にして無辺、遍く世界を包め灼滅の極光――」
ぽぽぽっ、と空中に光の球を作り出し、それらを一つに圧縮させる。
時間はかかるが、それだけに価値がある。いや、威力がある。
「対軍殲滅術式『無尽無辺無限光』」
「いいね」
ミーナはここぞとばかりにオリジナルアーツである『紅』を繰り出した。
ラムダの技をコピーするのではなく、ここはあえてである。
一匹を切り裂いたその次の瞬間、飛び退く。着弾したラムダの球が爆発を起こし、通路上のサン・ルブトーたちを殲滅した。
「おつかれ」
パドラが銃撃を放つと、頭を破裂させたムーンチャイルドが仰向けに倒れる。
至近距離で格闘していた虎頭のマラティーがぜーぜーいいながら汗を拭い、どこかに隠れていたらしきニランジャナがスッと姿を現す。
「皆、来た」
振り返るとシキや武器商人たちが部屋に戻ってきている。
「あとはマガキの傭兵たちに任せよ。頑張ったあとは打ち上げ! ね!」
●
「パドラー! みてた? かっこよかったでしょう!」
『ガンブレード・レインメーカー』を片手にビール瓶を翳してみせるシキ。
パドラはビール瓶を打ち合わせると、ぐいっと飲み干して微笑んだ。
「見てたよ。クールだった。また一緒に戦ってね」
そこのかわいい子も、とジューズをちびちびやってたチャロロを小突くと、チャロロはえへへえと照れたようにあたまをかいた。
「オイラかわいい? 照れるなぁ……」
「はぁい、食べたいものがあるコは教えておくれー」
料理をとりわけている武器商人。リーディアに皿を差し出してみるが、リーディアは手をかざして小さく首を振った。口元のマスクを指さす。
「コレを外す気にはなれない。あとでいただいておくよ」
そこへパドラとクスンバが話しかけてくる。
「烙印、だっけ。味覚や食欲に変化はないの?」
「つか、いまはなんともないのか? 吸血鬼になっちまうんじゃねえのか?」
「そこはあんまり……かな」
今は多少の吸血衝動があるという程度だ。意識すれば日常生活を送れるだろう。
これが強くなっていくとどうなるか……というのが、あやしいのだが。
「まっ、心配すんなって。もし血が吸いたくなったらほら、俺がちょっと食わせてやるから。友情に免じてよ」
クスンバがカハハと笑って腕を突き出してくる。どうやら食材適性スキル持ちらしく、宴会になると持ちネタにするらしい。
リーディアはマスクの下で苦笑した。
「秘宝種は呑めるのか? ってその点は大丈夫、ボクはこう見えて割と高性能だからね其れなりに飲食も楽しめるし大量に飲み食いしたとしてもスタイルも変わらないのだよHaha……羨ましかろ?」
「素直に羨ましいわ。私も機械の身体になれないかしら」
山羊頭のジャテーフトが酒をがぶがぶのんでいるラムダを眺め、そして冗談みたいに自分もがぶがぶと飲んでいた。スタイルはすらりとした女性の理想みたいな体型をしている。戦闘中は軽鎧のせいでわかりづらかったが、結構なモデル体型だ。
「ラーガカンパニーとやら、仕込みは此れだけでは済みそうにない気がしますね。叩けば埃が出る、程度で済めばいいのですが」
そう言いながら兎肉のソテーをはむはむやっているアッシュ。
気になるはなるが、今は楽しむタイミング。仕事の話しはほどほどにして肉とジュースを楽しもう。
「みて、これ」
ニランジャナがパドラの鞄を開いて、カバなのかビーバーなのかわかんないぬいぐるみを取り出してきた。前歯が出た赤くてまるい何かだ。
「成程、此れはユニークなぬいぐるみ。新しい世界です……。
わたしはうさぎさんが好きです……が、これはこれで……」
「うさぎも、ある」
取り出したのはなんか目がイッてる兎のぬいぐるみだった。
「想ったうさぎさんと、違いますが……」
『これはこれで』と、撫でるアッシュたちに気付いてパドラがウワーと言いながら駆け寄ってきた。
「ええいばらすな!」
「あんたも大変だねぇ、男所帯で暮らしてさ」
なーんかほっとけないとこあるのは、昔の私に似てるからかねぇ、などと呟きミーナはその様子をのほほんと眺めている。
バクルドはといえば。
「野郎どもおおおおおお! 飲むぞ飲めやぁ!
ハッハッハ! 一仕事終えた後の酒はいいもんだ!
お前さんらも大した腕だな!それにパドラのその持ってる銃、なかなか良いものじゃねえか!?」
ビール瓶片手に完全にできあがっていた。
酒臭さが似合う男、バクルドである。
「いい銃にはいい腕に依って輝くもんだ」
「そう? そっちのライフルも、イイカスタムしてる。戦い方に似合ってる」
「だろぉ?」
バクルドは上機嫌にリボルバーの魅力について語ると、からになったビール瓶を翳す。
虎頭のマラティーはそんな彼と肩を組み、空のビール瓶を翳した。
「じゃんじゃんもってこぉい! 酒と飯!」
「ハッハー! そうだじゃんじゃんもってこい! 俺たちの友情に乾杯だぜ、ダチ公!」
こうして、夜は賑やかに過ぎていく。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
――マガキの傭兵、銀弾のパドラ、虎爪のマラティー、羊剣のジャテーフト、猫忍のニランジャナ、鶏肉のクスンバとの友情を深めました
GMコメント
転移陣を確保するため、送り込まれる偽命体(ムーンチャイルド)や晶獣たちを撃破しましょう。
●エネミーデータ
以下の種類のエネミーが出現するとみられています。
それぞれの数は不明ですが、「どれが出たら何をして対処する」といった作戦を立てておくとよいでしょう。
・偽命体(ムーンチャイルド)・アシッドタイプ
『博士』が作りだそうとした人造生命体、の、失敗作です。非常に短命で、かつてローレットの出会ったアルベドに似た真っ白な姿をしています。
人間性はほとんど失っており、また尖った耳など幻想種(ハーモニア)のような特徴も持っています。
身体の一部を粘液のように変形させる能力をもち、腕を刃に変えたり脚を跳躍に適した形に変えたりとかなり自由に動き回るでしょう。
・晶獣ポワン・トルテュ
ラサに打ち捨てられた、巨大リクガメの化石が紅血晶に侵食されて誕生した、大型のアンデッド・水晶亀です。
動きは遅いですが、タフで固く、他の晶獣を守るようにふるまいます。
こちらに【怒り】を付与する能力をもつタンク役です。
・晶獣サン・ルブトー
晶獣のうち、特にラサに多く生息する砂狼が変貌したものとなります。
血のようなクリスタルに侵食されたオオカミは、皆正気を失っています。
非常に凶暴で、群れを成して人を襲います。
高いEXAによる手数の多さが脅威となります。こちらの防御を削るのがうまい敵です。
●味方NPC
・パドラ
銀の大口径リボルバーを武器にした血紅の目と白い髪の女。
幼い頃に両親をラーガに殺され、凶に引き取られ育てられた娘でした。
むさくるしい獣だらけの環境で育ったせいか、ぶさかわ系のぬいぐるみなど可愛いものに目がなく、本人はクールに振る舞おうとしていますが皆さんに会えてうれしいのがバレバレです。
・マラティー、ジャテーフト、ニランジャナ、クスンバ
今回の依頼に同行するマガキの傭兵たちです。
どれも腕に自信があり、戦闘時には特に腕が立ちます。
誰か気に入った見た目のキャラクターがいたらからんでみてもいいでしょう。
●依頼後のおたのしみ
転移陣の確保が済んだらバーに戻って打ち上げをする予定です。
パドラと遊んだり、他の仲間たちと盛り上がったりしましょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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