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シナリオ詳細

<鉄と血と>戦え、何を、この生を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●立ち上がる革命派、蜂起する人民軍
 フローズヴィトニルの影響激しい鉄帝が、冠位魔種バルナバスに蹂躙されて久しい。
 だが、人々の士気は高かった。
 武器を手に、彼彼女らは集った。戦うのだ、戦って勝ち取るのだ。それが鉄帝の流儀だ。
 奪われたなら奪い返せばいい。平穏を、無事を、笑いあえる明日を。
 噂によれば、海洋王国と豊穣郷からの物資と援軍がすぐそこまで来ているそうだ。
 立つなら、今だ。
 バルナバスはあまりにも侮っていた。
 牙持たぬ人々の覚悟を。

●寒村にて
「このまま飢え死にを待つおつもりですか?」
 バルガル・ミフィスト(p3p007978)は、両腕を広げた。
 彼の眼の前に居るのは、疲れ果てた顔をした村人たちだ。
 無理もない。生計を支える唯一の手段、仕送りが途絶えてしまったのだ。芋の浮いたスープを啜ってはため息をつき、薪の残量に心かき乱されながら日々を送っている。
 そうさせてしまったのはバルガル自身なのだが、その情報は伏せてバルガルは語気を強くする。
「なにもせず手をこまねいて、死を受け入れるおつもりですか。あなた方のために散っていった、ご家族はなんと思うでしょうか」
 ここは鉄帝の端にある吹けば飛ぶような寒村。ヴルチャークと呼ばれた、新時代英雄隊第128特務部隊の故郷の一つだ。バルガルはヴルチャークを屠り、奴隷を助け出した。その彼がここに立つのは理由がある。
「革命派へ身を寄せてみませんか。少なくとも衣食住は保証されます。革命派は来る者拒まずです。必ずやあなた方の力となってくれるでしょう」
 綺麗事を並べ立てるが、半分は事実だ。革命派擁する人民軍は、兵力を募集している。それはなにも前線で戦う兵士だけではない。兵站を担う補給部隊や、後方支援部隊も強く求められている。彼らのような何も持たぬ人々であっても、あの巨大な組織に組み込まれてしまえば、じゅうぶんな戦力になるだろう。
 それに、とバルガルは思案する。新時代英雄隊には、家族のためにしかたなく身を売った「まっとうな兵士」が少なからず存在する。彼らは激動の波に揉まれて最悪の選択をしてしまっただけなのだ。バルガルが屠ったヴルチャークも、そんな一派だった。その故郷が反新皇帝派へ所属する。
 前例を作ってしまえば、新時代英雄帯から「まっとうな兵士」を離反させる布石になるだろう。
 村人たちはざわつきだした。生まれ故郷を捨てるなんて。だが彼の言う通りだ。今のままではお先真っ暗だ。
 やがて村長らしき老人がバルガルの前へ進み出た。
「……村を捨てて、どのくらい歩けばいいのじゃ。もはやこの村に残っているのは、来年撒く種麦しかない。それを兵糧とするのは、少々勇気がいる」
「だいじょうぶですよ」
 バルガルは普段のシニカルな表情を押さえて、快活そうな笑みを浮かべてみせた。
「この村から最も近い人民軍の基地は……」
 そこまで口にして、バルガルは鋭く振り向いた。
「どうやらイレギュラーズの皆さんを呼んで正解だったようです」
 いつのまにそこへ展開していたのか。新時代英雄と呼ぶのもおこがましい愚連隊が、背後を取っていた。
「クヒッ」
 リーダーらしき男が喉を鳴らす。
「村を焼き討ちするだけの退屈な仕事だと思いきや、賞金首のイレギュラーズがごろごろしてるじゃねえか。こりゃ臨時収入にありつけそうだぜ」
 あなたは村人たちへ建物の中へ避難するよう告げた。恐怖に駆られた村人は、言われたとおり家の中へ入っていく。ひとまず、彼らのことは安心していいだろう。
 バルガルはいつもどおりの表情へ戻った。薄目で愚連隊を見据え、口を開く。
「たまには、正義の味方を気取りたいときもあるのですよ」
 敵の数は多い。練度も低くはないように見える。だが、とあなたは得物へ手をかけた。相棒は心配するなと言わんばかりの、確かな手応えを返した。

GMコメント

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

やること
1)愚連隊の皆殺し
村を焼き討ちに来た連中です。新時代英雄隊の醜聞が漏れることを厭うたのでしょう。同情の余地はありません。
また、彼らを倒すことによって、村人の好感度が爆上がりします。

●エネミー
カロリオス・ブルドン
 悪のカリスマとでも呼ぶべき愚連隊のリーダーです。
 滂沱・無常・攻勢BS回復大を持つレンジ無視単の神秘銃を用います。基本的に愚連隊を盾にして攻撃してきます。

愚連隊 30人
 カロリオスに心酔している悪漢どもです。死ぬまで戦うでしょう。
 防無・ブレイクの乗った近~超遠単の物理銃を使います。至近では必殺の乗った銃剣で攻撃してきます。
 10人程度がマーク・ブロックを使用していくるようです。ツーマンセルを組んでおり、挟み撃ちにされると身動きが取れません。飛行型スキルがあると便利かもしれませんね。

●戦場
フローズヴィトニルの寒風吹きすさぶ大地です。寒さにより、機動、FBを除く全ステータスへ-20のペナルティがかかります。このペナルティはプレイングである程度緩和することができます。

●EX 開放しておきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <鉄と血と>戦え、何を、この生を完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月21日 22時07分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ

●火蓋は切って落とされた
「イズマ・トーティスだあああ! 見ろ、仙狸厄狩汰磨羈もいるぞ! 賞金首がごろごろしてるじゃねえか、今夜はタマぁ、カラになるまで女をヤレるぜ!」
 旦那! カロリオスの兄貴! 殺っちまおうぜ! 賞金首ごと皆殺しだ!
 欲望に目をギラギラさせる愚連隊連中を相手に、名指しされた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、かすかに首を傾け、冷めた目をした。そして、鼻で笑った。
「ああ、たしかに俺の賞金額はすごいことになってるだろうな。それで、俺の首も狙うつもりで? ……俺はそう来る輩には一切の赦しを認めないと決めている。逆鱗だと解ってて触るなら結構、やれるものならやってみればいいし……」
 彼は右腕を前へつきだした。オールドワンの証。この鉄帝を大事に思う者としての証。イズマは遠くにいるカロリオスへ焦点を合わせ、ピンと指先で弾く仕草をした。相手を軽んじているジェスチャーだ。カロリオスは見るからに不快そうな顔をした。
「……村の人々を暖めてくれるのかと思ったら焼き討ちか、酷いな。俺達は村民を救いに来たんだ、そんな事はさせないよ」
「ふふ、くくく」
 同じく名指しされた『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、喉を鳴らして笑う。おかしくてたまらないのだ。愚連隊ごときが、本気で自分を討つつもりでいる。汰磨羈はその程度の有象無象など、到底たどり着けない高みに居るというのに。
「清々しいまでの愚連隊っぷりだな。さぞかし、たくさんの悪事を働いてきたのだろう。ああ、皆まで言わずとも良い。私は聖人君子と違って十人の話を一度に聞く気はないからな」
 妖刀『愛染童子餓慈郎』の柄へ手をかけ、雪を蹴散らして姿勢を低くする。そのまま唇の端を吊り上げた。
「――ところで、御主等。因果応報という言葉を知っているか?」
「ああ? むずかしーことはわかんねえなあ! 汰磨羈のお嬢ちゃんは学があることで! そんな女がひいひい泣きながら地べた這いずり回るのがたまんねえんだよ! なあ、おまえら!?」
 カロリオスの兄貴の言うとおりだ! マワしてやろうぜ兄貴! 殺すのはあとからでもできらあ!
「弱い犬ほどよく吠えると言います。しかしこの狂態は、まるで餌やりタイムの保護施設にでも来たかのような気分です。それとも頭が狂犬病にやられているのですかね?」
『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は、わざとらしいため息をつく。首をコキコキと鳴らし、指先で唇を撫でる。品定めをしているのだ。さて、どいつから殺すべきかと。
「自分でも真っ当な商談を行っていたというのに、それを邪魔するとは。いやはやとても気分が悪くなりますねぇ」
 その横で拳を握りしめ、こきざみに震えているのは『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)だ。
「つくづく吐き気のするようなことをしてくれるな……、村人を皆殺しにしようとしたあげく、イレギュラーズが来たら臨時収入だとほざく? 全く、これ程まで怒りを感じることはそうそうない。弱者を何だと思っているんだ!」
「セーギの味方のおでましだぜえ! おまえら、蹴散らされる覚悟はできてるかー!?」
 ぎゃはははは! ねーちゃんがいきがってんな! キックかましてみろよ、ライダーっぽいあれでよお!
「……つくづく、度し難い」
 きつくにぎりこんだ拳が痛い。爪が刺さるのもかまわず、沙耶は怒気のあまり頬を朱に染めた。
 混沌たる戦場において、ひとり物静かな雰囲気をまとっているのは、 『革命の医師』ルブラット・メルクライン(p3p009557)だ。
「こんな時にまで略奪とは結構なことだ。帝都の手助けに行ってあげた方がいいのではないかね?」
「知ったこっちゃねえな、金がかせげりゃそれでいいのよ! そうだろ。オイシャサマ!?」
「……私の意思と矜持を愚弄するか。残念だが、荒療治が必要なようだ」
 ルブラットは沈痛な面持ちで首を振った。できれば害したくはなかったが。こうまで話が通じないとなると、いたしかたない。
「……あなたがたが、もはやどうしようもなく、正道から隔たっているのはわかりました」
『オンネリネンの子と共に』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は悲しげに言う。戦場に咲く一輪の花は、うつむいてさみしげ。
「わたしにとって、多くの人を助けていきたいという信条はとても大事なもの。それは焼き討ちしようとしていた敵であっても」
 そして顔を上げた。ココロの瞳に迷いはない。
「とはいえ、恩義のある方の……うん、借りを返すという言い方が適切かどうかわかりかねますが……その人の心情に寄り添うというのも同じくらい大事。バルガルさんの怒りに寄り添っていきましょう」
「ええ、彼らを殺す……それが依頼、望むこと……ですね。そして彼らも死ぬまで戦う者達……ならばこそ、この場に優しさは不要、善意が必要なのは戦いの後。心を魔女に、冷静に……そして冷たく『死血の魔女』の力を振るわせてもらいます」
『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は花びらを召喚する。まるで彼女の周りだけ、春があるかのようだ。
 烙印が、烙印が彼女の頬にある。まるで赤い花のようなそれは、儚いまでに美しい。彼女は、凛として言い切った。
「今の私は他者を蹂躙する悪意の力を振るう者。覚悟してくださいね?」
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は残念そうにクウと鳴いた。
「家族ってのは凄いんだよ」
 しみじみとした声音が、戦場へ響くも、すぐに愚連隊の喧騒にかき消される。
「血の繋がりが無くても、共に過ごした時間が短くても、家族を守る為なら躊躇いを忘れられる。自身を犠牲にすれば家族が生きられるのなら、悲しくても苦しくても家族を生かす選択ができる」
 それでもウェールは語っていく。自分へ言い聞かせているのだ。「家族」のために散った人々の、遺志を殺そうとする愚連隊を前に、寒がっている暇はないと。
「だから……誰かが手足を、全身を、血に汚してでも生かした大切な人々を……燃やすような輩に容赦はいらねぇな」
 ウェールは凶暴な笑みを浮かべた。

●愚かなるかな我らに挑むとは
 絢爛たる己は、凶弾によって打ち砕かれた。バルガルは気にせず、次の策を練る。柔軟な行動を取れるところは、裏を渡る人生が長かったからだろうか。平穏無事とは程遠い暮らしで、常に最善手と次善の策、両方を考える癖がついた。
 それにしてもココロの竜宮チャーハンはおいしかった。バルガルはジャケットをしっかりと羽織る。スーツはもともと紳士に愛された衣装だ。寒さには一定の耐性がある。
「それではいきますか」
 なんの気無しのようでいて、その目に宿る殺意は明らか。
 バルガルは怪しい影となって、意識の死角をたどり、確実に愚連隊の戦力をそいでいく。影としての動きは、彼の隠密性を高め、同時に依頼成功、すなわち愚連隊の全滅へとつながる。ごきり。マークを狙っていた愚連隊、そのしめあげた首の骨が折れる。
「動きを封じられる前に仕留めれば、話は早いでしょう?」
 もはや命尽きたそれにはなんの興味も抱かず、バルガルは冷徹な目で戦場を一望した。
「敵多数かつ地形的に隠れてからの奇襲も面倒。正面から殺しに行きましょう。不殺は一切せず。確実に」
「ああ」
 短くイズマが答える。
 極寒超越は、その名のとおり寒い程調子が上がる体質だ。イズマはまじめくさった顔で、物騒なセリフを吐く。
「返り討ちにして……一人残らず命をいただくよ。他に選択肢はないよな。俺も、愚連隊のお前たちも。俺が名声と悪名の裏でどれだけ戦ってきたかを教えてやろう」
 イズマは右腕を高く掲げた。一見無謀なその行為は、愚連隊の怒りを誘った。狂奔怒涛がイズマへ押し寄せる。なに、どうということもない。己の身は自動的に反撃するオールドワンの専用機構が搭載されているのだし、なにより、復讐が待っている。体力が減れば減るほど精度を増していく技の数々、次元さえ両断する一撃が、愚連隊へ襲い来る。
「カロリオス! 味方を盾にできると思うなよ! お前のその腐った根性、自慢の味方に叩き直してもらえ!」
 広範囲の魅了が決まる。カロリオスは焦り気味だ。まさか仲間が魅了されるなど、思わなかったのだろう。彼が舌打ちするところまで、広域俯瞰によりイズマにはよくみえていた。
「俺は自分の正義を貫き、誰かに手を差し伸べるためならば、凶行でも躊躇わずに踏み越えて進むと決めた。だが新時代英雄隊に行った村人は、決意の余地すらなくそれを強制されたことだろう。その遺志を潰えさせはしない」
 イズマは真剣そのもの。もはや彼の快進撃を止める者はいない。
「くそっ、おまえら、他の奴らを狙え! 狙えって言ってんだろ!」
 カロリオスがわめく。しかし。
「戦いの鼓動よ、古き道を極めし英霊よ、私へ力を貸せ!」
 沙耶のアッパーユアハートが決まる。限界まで高められた熱き鼓動は、愚連隊にはまぶしすぎた。ゆえに、後ろ暗い野郎どもは沙耶へ殺到する。こいつを殺さねば、己の存在が危ういと。
「今のうちに! 私ごと撃て!」
「……気は進まないが。やらねばならぬことはやらねばな」
 ルブラットが何かを投げつける。それは暗器。命中した者を、狂気に冒し、猛毒へ誘う。医者の扱う劇薬は、市販薬の数倍もの効果を持つ。そんなものへ触れてしまった愚連隊に、正気など残るはずもない。
(……ろ、したい)
「チッ」
 ルブラットは舌打ちする。
(……したい殺したい殺したい殺……)
 湧き上がる殺人衝動をねじふせ、ルブラットは攻撃を続ける。
 マークされた汰磨羈が嘲りの笑みを浮かべた。
「そちらから近づいてきてくれるとは好都合だ。望みどおりに切り捨ててやろう」
 絶照・勦牙無極。そのすさまじさは筆舌に尽くしがたい。汰磨羈の妖刀に陰陽が生じる。力強いそれらが相反し、激しく食らいあう。根源たる無極の光がほとばしり、マークしていた男ごと、愚連隊を消し飛ばす。
「カロリオス! 私達の賞金がいくらかは知らぬが――欲が過ぎたな」
 射程にカロリオスを捉えた汰磨羈は、余裕あるままに退路を断つ。強者の特権、勝者の当然。
「自業自得という言葉の意味を思い知りながら、疾く逝くがよい!」
 大技の連発。だが問題はない。ココロが支援してくれている。
「ふじのはなびら、ひいらりひらり。ふじのはなふさ、ゆうらりゆらり。おもうはかのひとただひとり、わたしのこころは、いずこ?」
 仲間へやわらかな祝福が投げかけられる。藤華想恋を歌ったココロは、さらに女神を召喚した。
「ここにいたれ、地母神。その怒りと恐れはいまは慎み給え。我らへ喜びを。爾の恩寵を」
 女神のキスがマリエッタへ施される。マリエッタはほほえみ、感謝した。
「ありがとうございます、ココロさん」
「回復はお任せあれ。あなたがたの矢羽となり、刀の錆を研ぎ澄ませましょう」
「心強いです」
 一転、マリエッタの瞳は炎をはらむ。
 命を奪うことへ戸惑いはない。相手が相手だけに遠慮しなくて済むのだ。……それとも、「死血の魔女」だったころの潜在意識が、そうさせるのか。
「寒風は熱砂で上書きされ、雪原は熱風で溶けゆくがいい。私は魔女、熱と嵐をも従える者」
 ラサでさえ及ばない熱風があたり一面に。愚連隊が倒れていく。蒼白な顔をしているのは、マリエッタによって、血抜きをされたからだ。尋常ではない返り血を浴びつつも、やはり彼女は美しい。それはギフトの効果なのか、彼女自身の美なのか。もはやマリエッタにすらわからない。わかることは……。
「血を奪うのは得意なんですよ、私。見ればわかるでしょう、カロリオス、観念なさい」
「くそが! なんだってんだよ、俺たちがなにしたよ!?」
「救いがたい……あなたの悪行もここまでです!」
 ウェールの懐で日輪結晶が燃えている。
 銀時雨と飛行で愚連隊を混乱させていた、その懐で。
 負けるわけにはいかない。どんなに優勢であろうと、窮鼠猫を噛むと言う。よって、ウェールは容赦などしない。
(いってらっしゃい、おかえりなさいと言ってくれる梨尾。怒った顔もすねた顔も、感情と連動して動くもふもふな尻尾もかわいい梨尾。大人になってもかわいい梨尾……俺が最期に残した涙声が、消えない心の傷をつけただろうな、それをつらく悲しく思いながらも、心の深い隅っこで、狂おしいほどに歓喜したケダモノ、それが俺だ! それが俺の愛なんだ!)
 ウェールはカードの驟雨をカロリオスへ降らせる。
「お前みたいな血も涙もない奴でも分かる外面教師な愛を教えてやろう!」
「こんなところで死んでたまるか! やってらんねえ!」
 逃げ出そうとするも、動きが鈍い。ウェールの与えた石化が効いているのだ。なにより、逃亡先を塞ぐように、汰磨羈が居る。
「くそぁ! くそがくそがどいつもこいつも役に立たねえ! こんな肥溜めだと知ってたら、来やしなかった!」
「叫ぶのだけは上手だったな。そこは褒めてやろう、カロリオス・ブルドン。もう誰もいない。常に何かに寄りかかってきただろうお前には、似合いの最後だ」
 ウェールの犬札が、カロリオスの心臓をえぐった。

●命よ燃えつきろ
「奪った血と魂が、戦いの続く私達の道を眺められるよう、送りましょう」
 マリエッタの言葉に、ひとつうなずいたココロは、一箇所に寄せた愚連隊から遺品を集める。彼らにも家族が居て、嘆き悲しむものが居るだろうとの配慮だ。そして油をかけて火を付けた。31人もの成人男子が腐敗すれば、重篤な伝染病が起きる可能性がある。医学的見地と衛生を考えた上で、ココロは動いていた。
「この者達は、斬られるべくして斬られた。それだけの事を行ったのだからな」
 汰磨羈は集まってきた村人たちへ、燃えていく遺体をさししめす。そのうえで続ける。
「だが、それは私達にも言える事だ。『殺したのならば、その報いとして殺されても当然である』。そこに、善悪による差異など無い。誰であろうと、その殺業に絡みつく因果からは逃れられん。……この話を聞いて尻込みした者は、素直に補給部隊や後方支援部隊に入っておけ。前に出て殺し合いをするのは、私達の様な覚悟が決まった者達だけで十分だ」
 ざわつく村人たち。……おっかあ、俺は……いいよ、何も言わずとも。わかってるよ……。
「それでいい。無理はするな」
 汰磨羈はやさしいまでの微笑を浮かべる。
「私は革命の医師。革命派に協力してきた身だ。人民軍への接触には手を貸す。役に立てると思う」
 村人がその言葉の重みを受け取り、こうべをたれる。ルブラットは仮面の下からおだやかな声を出した。
「ありがとう、勇気を出してくれて嬉しいよ。……ただ、本来皆殺しは正しい選択ではない。誰かを救う以上に銃弾を放つのなら、諸君も我々も其処に斃れている罪人と何ら変わりないのだ、人民軍に協力してくれると言うのなら、それだけは覚えておいてほしい」
 村人は深く感じ入った様子だった。そこにはルブラットへの畏怖と感謝とが、入り混じっているのだろう。
(梨尾……俺は、やりとげたよ。村人たちからの好意を感じる。彼らは俺たちを信頼してくれている。なにもかも梨尾、おまえのおかげだ……)
 ウェールは心からそう思った。胸の奥には大切な存在が今も息づいている。
「さて、仕上げといきましょう」
 バルガルはにいと笑う。シニカルな中にも、成し遂げた喜びがあった。まあ彼の頭は、すでに次の仕事の算段をしていたのだが。バルガルがイズマへ歩み寄る。その荷馬車の隣へ立つ。
「ごらんください、この『荷馬車いっぱいの食料』。これはすべてイズマさんからの餞別です。まずは腹ごしらえといきましょうか」
「ああ、好きなだけ飲んで食べてくれ。寒さとも空腹ともこいつでおさらばだ」
 イズマはにこやかなまなざしを村人へ送っている。
 ……おお、なんたる僥倖……すばらしい……勇者はやはりイレギュラーズだったのだ……。
 どうか我らと、この国の未来をお頼み申す。村長から頭を下げられたイズマは、しっかとうなずいた。
「人民軍の基地まで一緒に行こう。故郷を捨てさせてまで移動してもらう以上、責任を持って送り届けるよ。ひとまず腹を膨らませて暖を取って、寒さ対策も忘れずに、できる限りの準備をして出発だ」
「ええ、それがいいでしょう。種籾を持っていけば、人民軍へ合流した後も喜ばれます。根無し草になるとは考えないでください。たしかに人のいない村は荒れる。それでも、いつかはあなたがたは、ここへ帰ってこれます。自分が保証します」
 こんなときでも彼の舌はよくまわる。
「脚と食料の心配をしなければなりませんが、食料はみてのとおりイズマさんが用意してくれています。脚は自分が、ゴーレムを呼んでいますので、足腰の弱いお年寄りも女性も子どもも、問題はありません。何なら私もついていきますので、襲撃があったとしても凌げますよ」
 ……ありがたい……優しいお方だ……。
 村人は幸福な勘違いをしている。それを訂正してやるほど、バルガルは善人ではない。
(なぁに此処から離れてしまえば此方のものです。其れに、人手不足で猫の手も借りたいのは事実、ですしねぇ)
 ココロは燃えていく遺体を見ている。
「なぜ、戦わないと勝ち取れないと考えるのでしょうか。それは生き死により大事なことでしょうか。早く雪が融けて、春が来ますように……」
 そう言ったココロ。沙耶もまた村人へ微笑みかける。村人の不安を払拭するかのように。
「大丈夫だ、もうすぐキツい冬は明けるだろうから……」
 沙耶はふと気づいた。マリエッタが雪を溶かした大地、そこへ、ふきのとうが芽生えていることを。
 春は、すぐそこに。

成否

成功

MVP

バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!

ミッションクリアです、成功です!
MVPは言いくるめが上手なあなたへ。

お付き合いありがとうございました。またのご利用をお待ちしています。

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