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シナリオ詳細

<天牢雪獄>銀閃の乙女と古びた階級章

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ユリアーナが『少しばかり古く見える階級章』の手入れを始めてから少し。
 思い出されたのは懐かしい日のやり取り。
「大佐。貴方が思っていたのは、こういう事ではなかったのだろう。
 だが、そうなってしまった以上、私は貴方を打ち破ろう。
 ……貴方に教えを請い、貴方の全てを学んだ者として」
 少しばかり綺麗になった階級章を見つめ、ユリアーナは小さく呟いた。
 ふと扉をノックする音を聞いて返事をすれば、久しぶりに見た気のする友人たちの顔。
「ユリアーナ、貴方から私達を呼んだのでしょう?」
 そう言って部屋を覗き込んできたのはヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。隣にはマリア・レイシス(p3p006685)の姿もある。
「む? ――もうそのような時間か。済まない、手入れをしているうちに感傷に浸ってしまっていたようだ」
 そう返事をしたユリアーナの手元を見たマリアはそれが何なのかを軍人として理解する。
「ユリアーナ君、それはもしかして階級章かい?」
「うむ……酷く懐かしい物だ」
「貴方、軍人でしたの?」
「――あぁ、そうだったらしい」
「なんだかはっきりとしない返事ですわね?」
 ヴァレーリヤが首を傾げれば、ユリアーナからも曖昧な微笑が返ってくるのだ。
「その話も含めて、実際の作戦会議で説明しよう」
「分かった。それじゃあ、行こう。皆もう集まっているよ」
 マリアが促すのに続いてヴァレーリヤが歩き出せば。
(——リボリウス。お前を叩き潰して、故郷を返してもらおう)
 階級章を胸に。ユリアーナが踏み出した一歩は覚悟を示すように力強く。


「遅れてしまい申し訳ない。それから——集まってくれてありがとう。
 諸君に少し、手伝ってほしいことがある」
 そこにはユリアーナを呼びに来たヴァレーリヤとマリアの他、数人のイレギュラーズの姿がある。
 一同の前にあるテーブル、そこに広げられた地図が関係していることはあきらかだろう。
「前も言ったけど、私達は仲間でしょ?」
 そういうオデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)にユリアーナからもう一度「ありがとう」と礼を述べた。
「もう怪我も良くなったみたいだね。良かった」
 そう言うヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は以前にユリアーナを救出する戦いに参加していた。
「あぁ、随分と時間がかかってしまったがね。
 ……君も参加してくれた私の故郷、ザパルドナヤ・ベルゴルスク都市圏は今、新皇帝派の手中にある。それを奪還したい」
「連中は一枚岩ではないさそうでス。
 ただもうかなりの時間が経ってるわけで……状況は前回よりも悪いかと?」
 そういう佐藤 美咲(p3p009818)に対してユリアーナも頷くものだ。
「それについては私にも考えがある」
 そういうとユリアーナは自らの胸にある階級章辺りを軽く叩いてみせた。
「詳しい話は省くが、私は故郷で自警団長をしていたが、その前に鉄帝国軍にいたことがある。
 私は除隊したつもりだったのだが……つい最近、バイル宰相に掛け合ってから知った。
 私はどうやら、『休職』していたらしい」
「現在進行形でユリアーナ氏は鉄帝軍人であるということでスか?」
「あぁ……私の恩師でもある上官は除隊申請ではなく休職申請をしていたようだ」
「クラウゼンが? でもどうしてだろ?」
 その言葉にイグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は目を瞠る。
 ユリアーナが言う恩師とやらがクリスタル・ヴァイスでの戦闘で遭遇したクラウゼンなる鉄帝軍人であることはその際の対話で察しがついた。
「詳細は私にも分からないが……彼は私が軍人を辞めるのを惜しんでくれていたからね。
 恐らくは、いつでも戻れるように除隊ではなく休職としていたのだろう」
「それだけかな?」
「……1つ思うところはあるが、それは今回の件とさほど関係もないからやめておこう。
 今はまず、今回の目的から話そうか」
 イグナートが続けるとユリアーナはそう言って1枚の羊皮紙を取り出しテーブルに広げた。
「リボリウスは一応、新皇帝派から階級を貰っている軍人だ。
 ——彼を斬り捨て、新皇帝派に根っこまで浸かってる連中を追放する」
「リボリウス……」
 ヨゾラはその羊皮紙を見て拳に力が籠るのを感じた。
 人を傷つけ、力こそ正義と標榜する男。
 実際に会ったその男への怒りは胸の奥で燻っている。
「要するにぶん殴ればカイケツって事だね?」
「でもそれだけで解決するとも思えませんわよ」
 イグナートに頷いたユリアーナへヴァレーリヤが疑問を呈した。
「ヴァリューシャの言う通りだよ。
 敵が占領してる場所を解放するのなら、上だけ倒しても上手く行くとは限らない」
 ヴァレーリヤの問いかけにマリアが続ければ、ユリアーナが頷くものだ。
「あぁ、そこでこれだよ。
 リボリウスは自分が『尉官として部隊の再編を命じられた』ことを根拠に占領を行なった。
 ——ならば、全く同じ根拠で以後の軍勢を……反新皇帝派が使っても文句は言わせない」
「だから、ユリアーナ君は『それ』を身につけたんだね」
 マリアの問いに改めてユリアーナが頷く。
 静かな、責任を負う事を覚悟した者の眼がそこにはあった。
「まぁ、新皇帝派に着く者すべて薙ぎ払うのだから、文句を言う者は出ないとも思うが」
 改めて微笑みを浮かべたユリアーナが更なる説明を続けた。
「私の部下がリボリウスの下から脱走した者を集めていてね。
 私はその部下や脱走兵をで町に攻めようと思う。
 恐らく、リボリウスは兵を率いて迎撃に出るだろう。
 私達で彼の軍勢を抑えておく。その間にリボリウスの下へ君達が突撃してほしい」
 真っすぐに行ってぶん殴ってほしい。
 ――私がそれまで抑え込んでみせるからと、そう言って女が笑っていた。


「あぁ――力が、力が湧いてきやがる!
 ローレットどもめ、俺の誘いを断りやがった顔がいいだけの女がよ!
 余裕しゃくしゃくで来やがって――後悔させてやんよ」
 その手に握る剣に燃え盛る炎を抱き、リボリウスなる男は過剰な自信と怒りを露わにする。
 一度は取り逃がした女が、軍勢を率いて接近中との報告が来てからというもの、リボリウスの胸を焼く怒りは熱を増した。
 悍ましき原罪の呼び声は、既にその身を侵している。
「今度は、どうしてくれるか。前は手加減してやったが次は――次は、一枚ずつ肉を剥ぐか?
 あぁ、どうしてくれよう。顔と身体は良いからな。あぁ――ゾクゾクするじゃねえか」
 そういって炎に揺らぐ顔は酷く醜く歪んでいる。
 開戦まで残り数日。
 魔に堕ちた男はその日を楽しみに待っていた。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 長げえ!!と感じられるかもしれませんが、分かりやすく言うとトップイラストの女の人を監禁・拷問した自信過剰ゲス野郎をぶん殴ろうというお話です。
 相手はゲスなのでサクッと初めてサクッとぶん殴りましょう。

●オーダー
【1】『焔劔』リボリウス・リンデマンの撃破
【2】リボリウス親衛隊の撃破

●フィールドデータ
 ユリアーナの故郷、ザルパドナヤ・ベロゴルスク都市圏にある町の郊外。
 雪交じりの平原です。
 イレギュラーズは撤退を装うユリアーナを追ってきたリボリウスの迎撃に出る形となります。
 周囲ではイレギュラーズ陣営とリボリウス陣営の戦闘が繰り広げられています。


●エネミーデータ
・『焔劔』リボリウス・リンデマン
 新皇帝派の鉄帝軍人です。階級は中尉。
 馴れ馴れしく自信家であり、また同時に残忍な性格です。
 前段シナリオでイレギュラーズによりユリアーナを奪還され、
 原罪の呼び声による狂化状態でしたが呼び声に屈し、魔種になっています。
 元はユリアーナと同じくザルパドナヤ・ベロゴルスク都市圏を構成する町の1つで自警団長をしていた人物です。
 以前のシナリオでユリアーナを監禁・拷問の末、全治4ヶ月の絶対安静にまで追いやりました。

『焔劔』の二つ名の通り、武器は片刃の長剣、炎を纏って攻撃してきます。
【火炎】系列、【出血】系列、【足止め】系列、のBSの他、【邪道】、【スプラッシュ】属性の攻撃を使ってきます。

火月(A):渾身の力を込めた焔の剣は対象を斬り伏せるでしょう
物近単 威力大 【業炎】【炎獄】【流血】【邪道】【ブレイク】

フレア・レイ(A):溢れだした紅蓮の焔が戦場を貫きます。
神中貫 威力大 【炎獄】【失血】【スプラッシュ】

焔月(A):振り払う斬撃は望月の如く戦場を迸るでしょう。
神自域 威力大 【業炎】【炎獄】【泥沼】

熾焔龍(A):極限まで高められた炎の斬撃は荒れ狂う龍の如く斬り開くでしょう。
物中単 威力特大 【紅焔】【滂沱】【邪道】【スプラッシュ】

「――力が、力が湧いて来やがる。
 あぁ、今度は全員、焼き潰してやらあ!」

・リボリウス親衛隊×4
 槍と大盾を持つ軽装騎兵が2人、重装歩兵が2人。
 タンクとしてリボリウスを庇う他、
 状況によっては自分達を殿に撤退する手助けを行ないます。

・リボリウス軍×30
 リボリウスの麾下兵力です。皆さんが関わろうとしない限りはほっておいても大丈夫です。
 基本的にユリアーナ率いる解放軍とドンパチやってます。
 リボリウスが撃破されれば敗走します。

●友軍データ
・『銀閃の乙女』ユリアーナ
 ザパルドナヤ・ベロゴルスクで自警団を務めていた女性。
 休隊扱いだった鉄帝軍人の立場に復帰し、中尉職に任官しました。
 リプレイ開始時、迎撃に出てきたリボリウスの軍を直属部隊でぶん殴って釣り出し、
 リボリウス達を突出させてくれます。
 その後は解放軍の指揮を行なうため、基本的には戦闘中での顔合わせないでしょう。
 交流や指示がある場合、突撃前に少しばかりの時間があります。


・ザパルドナヤ・ベロゴルスク解放軍×30
 ユリアーナの指揮下で戦う兵士達。ユリアーナのギフトで士気が高まっています。
 ほっといても戦線維持をしてくれますが、皆さんがプレイングで発破をかけてくれるとより士気が高まると思われます。

●リプレイ開始時状況
 ユリアーナ率いる解放軍と皆さん、リボリウス軍との大雑把な配置関係は以下の通りです。

       ユリアーナ直属部隊

20m

        イレギュラーズ
       リボリウス&リボリウス親衛隊

30m

  解放軍            解放軍
リボリウス軍          リボリウス軍

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <天牢雪獄>銀閃の乙女と古びた階級章完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年02月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
フローラ・フローライト(p3p009875)
輝いてくださいませ、私のお嬢様
金熊 両儀(p3p009992)
藍玉の希望

リプレイ


 戦場の空気は張りつめている。
「リベンジマッチというやつスねー
 ま、負け戦は初めてじゃないのでそこまで気にしていないんスけど。
 ……それよりも、あれから4ヶ月、街がどうなっているかのほうが気になりまス」
 その空気の中、『罪の形を手に入れた』佐藤 美咲(p3p009818)はそう呟くようにぽつりと言った。
 思い出されるのはあの町で出会った兵士、情報収集の際にスリを試みた相手の男だ。
 一枚岩ではない事の証左でもあった彼は、果たして今もやっていけてるのだろうか。
「思い出して下さい。新皇帝派が荒らした村の惨状を。
 想像して下さい。私達の故郷が新皇帝派の手に落ちれば、何が起こるかを」
 静かにその時を待つ兵士達へと『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は滔々と説いていく。
「私達の隣人を、友人を、家族を救うために、この戦いに勝たねばならないのです。
 そのために、貴方達の力が必要なのです! 力を貸して下さいまし。共に戦って、故郷を救いましょう!」
 言葉を尽くしたクラースナヤ・ズヴェズダーの名物司祭の激励は兵士達を鼓舞するにあまりある。
「諸君! 皆悔しかっただろう!
 理不尽に故郷を占領され虐げられたことが! だがそれも今日で終わりだ!
 私と仲間達、そして君達とでこの状況を終わらせるんだ! 必ず奪還しよう!
 それでも不安ならば雷光殲姫たる私の戦いぶりを見ておくがいい! では! 武運を祈る!」
 続け、そう声をあげたのは『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)だ。
 鉄帝にその名の轟くマリアの声は故郷を目指して進む兵士達の心を奮い立たせる。
「ついに……あの屑野郎、もといリボリウスを倒す時が来たんだね。
 真っすぐに行ってぶん殴ってほしい……了解。その願いを叶えに行くよ!」
「ユリアーナが頼ってくれて嬉しいわ
 私もあいつはいつかもう一度ぶん殴ってやろうと思ってたのよ。
 そしてあなたが行きたいって言わないのも……あなたの分までリボリウスを殴ってくる。
 信じてちょうだい」
 そう語るのは『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)であり『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)だ。
「ありがとう。あの君達なら応じてくれると思っていた――当然、信じるさ」
 微笑みのままにユリアーナが頷く。
「ユリアーナ、身体は大丈夫ですの?」
 そこへヴァレーリヤとマリアもユリアーナへと声をかける。
「あぁ、体の調子は問題ない。
 復帰戦も終えたし、直属兵も長く私の部下だった者から選んだからね。
 彼らとなら何とかなるだろうさ」
「無理をせず私達に任せてくれても……ごめんなさい、無粋なことを言いましたわね。
「行きましょう。故郷を取り戻すために! 守るべき人達を守るために!」
「……うん、ヴァリューシャの言う通りだ!
 まぁ見ていておくれ。私がリボリウスの顔面に思い切り蹴りをくれてやるからさ!
「――心強い限りだ。そう言ってくれる君達のためにも、まずは少しばかり強めに叩き込んでやるとするか」
 マリアとヴァレーリヤ、2人の言葉にふと笑みをこぼしたユリアーナの全身から闘志が溢れ出す。
「ユリアーナの借りにクラウゼンとの縁もあることだからね!
 元凶になった野郎はちゃんとぶっ飛ばしたいと思ってたんだよ!
 所によっては袖触れ合うも多生の縁なんて言うらしいからね。
 託されたなんて思うのはおこがましいだろうけれど、決着を付ける代役はマカセテもらうね!」
 そんなユリアーナに負けずと闘志を滾らせる『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が言えば、ユリアーナも微笑みを浮かべて頷き。
「ユリアーナさんもあの時の傷はもう良い様で。安心しました。
 解放軍の皆さんにも、ご武運を」
 その様子に胸を撫でおろす『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)は胸元に手を置いて、少しばかり深呼吸。
「……私も頑張ります、ので。少しだけ、立ち向かうための勇気を分けて下さい」
「たしか……フローラ君だったか。
 そうやって気持ちを語れるうちは、人間というのは死なないものだ。
 恐れるべき相手を恐れることもまた、勇気なのだと私は思う」
 そうして、兵士達を代表するようにユリアーナが微笑んだ。
 幾つもの声が伝わり熱となってフローラの中に入ってくるようだった。
「……うん。きっと頑張れそう、です」
 そう言って柔らかく口元に微笑を描けば「それは良かった」と温かな声が返ってきた。
「儂は りぼりうす も ゆりあぁな も知らんぜよ。
 そもそも、ろーれっと としては新参者じゃ。
 まろうど らしく切った張ったに集中させて貰おうぞ」
 そう語る『特異運命座標』金熊 両儀(p3p009992)の在り方もまた正しかろう。
「――あぁ、それならばそれで構わない。よろしく頼む……」
「金熊 両儀じゃ!」
「うむ、両儀君。初めましてだね――私はユリアーナだ。
 君らしい切った張ったが出来る戦場であることを願っているよ」
「おうとも 正に鬼の如く暴れちゃる!」
「うむ、楽しみにしているよ――さて、それではそろそろ行ってこようか」
 微笑したユリアーナが爆発的な速度で戦場を駆け抜けた。
 それに続いて彼女の直属兵達が飛び出していく。


「あぁ、雑魚ども! どこの誰かと思ったら、あの時の雑魚どもじゃねえか!」
 紅蓮の焔を纏う長剣を振るい、溢れんばかりの自信と怒りを露わに男が激情を見せる。
「邪魔だ邪魔だ邪魔だぁぁ!!」
 疾走するリボリウスらは完全に孤立をきたしていた。
「随分とお喋りでスね。あの時から変わって無さそうでス」
 その様子を見て、美咲は刹那の内に銃口を向かってくる的に向けるものだ。
「いつもなら突入のための牽制でスが――」
 刹那の内に、マシンガンの引き金を弾いた。
 ぶっ放された弾丸の山が直線を薙ぐように走れば、割り込んできた重装騎兵の身体がリボリウスへの盾となる。
「街を不当に占領し、そして私の友人によくも好き勝手やってくれたね……
 己のしたことを心底後悔させてやろうじゃないか!」
 マリアは緋の雷を纏うままに軽装騎兵へと突っ込んでいく。
 空を翔けた緋色の雷光が騎兵の上から兵士を叩き落とし、その精神性と魔力を削り落としていく。
「さぁ、おまんら、斬り合おうぞ!」
 大太刀サイズの木刀を携え戦場に姿を見せた両儀は告げるや親衛隊目掛けて突っ込んでいく。
「"小手先無用。力一つ"此れ鬼の流儀なり。防御なんぞは儂に無いも同然!
 どうせ防げんのじゃ、そん時間を大将首ば取る攻め手にしちょった方がえい」
 振るわれる剛剣が文字通りの暴風の如く戦場を吹き荒れて行く。
「フラレてクヤシイ気持ちは十分伝わったけれどやり過ぎたね!
 練達ではお前みたいなヤツをストーカーって呼ぶらしいよ!」
 リボリウスの眼前へと躍り出たイグナートは闘志を露わに獰猛な笑みを見せる。
「なんのこっちゃ知らねえが、良い度胸じゃねえか!」
 リボリウスが牽制とばかりに振り下ろす炎の剣を振り下ろす。
 イグナートはそれを受け止めれば、呼吸を以って気を巡らせていく。
「リボリウスも親衛隊もぶちのめす、お前等に次は与えない!
 ユリアーナさんや解放軍の皆がいてくれて心強い……生きて、勝つんだ!」
 ヨゾラはその背に抱く魔術紋を激しく励起させる。
 星空の願望器は自らにその身を捧げて温かな光を纏う。
 刹那の後、大空に星々が光を放つ。
 昏き凶兆の星の輝きが恐るべき運命を敵へと押し付ける。
「どっせえーーい!!!」
 攻め寄せる親衛隊目掛け声をあげたヴァレーリヤは一歩を踏みしめた。
 燃え盛る炎を纏ったメイスと共に振り抜かれた猛牛の如き一撃が軽装騎兵の馬を打ち据えれば、馬上の兵が崩れ落ちる。
「リボリウス・リンデマン……力を求めて、魔種に堕ちました、か」
 リボリウスの激昂は、その身から溢れる悪意は身体が竦みそうになるほど怖かった。
 それでも真っすぐにフローラは敵を見やる。
「……ここで。今度こそ。止めます!」
 自分を奮い立たせるように発した魔性の大号令が戦場に響き渡った。
「はぁ! やってみやがれ、嬢ちゃん!」
 気炎を吐き、そう吼える魔種は燃えるような悪意を抱く。
「まずはあんた達からよ。悪い奴らだもの、遠慮はしないわ!」
 オデットが空へと手を翳せば、熱砂の精霊が雪原に熱を齎した。
 雪交じりの砂嵐は空へと昇り、怒涛の如き猛吹雪を纏いながらリボリウスの周囲にいる兵士達へと叩きつけられていく。


 戦いが続いている。
 怒りを露わに、悪意を露わに魔種の激情は振るわれる。
 周囲を囲う騎兵たちを退けたその時、フローラは渾身の魔力をカードへ注ぎ込んでいた。
『怖いのならそれでいい、震えるのならそれでも構わない。
 君の仲間に――我々に君なりの勇気をみせてくれ』
「私なりの、勇気を。……――えぇ、お見せします」
 戦いの前にユリアーナに言われたことを思い出しながら、フローラは深呼吸して握りしめたタロットに魔力を込めた。
「……悪意に晒されてもなお、屈せず、立ち向かう。
 その意志こそが『強さ』なのだと、私は思います。
 だから……たとえ震えていたって! 狂気に屈した貴方には、私は、負けない!」
 カードを握る手は震えていた。それは、恐怖から来るものだったのだろうか。
 放たれた魔術は鮮やかにリボリウスを絡めとる。
「ちぃ、くそが! こりゃあ、あの時の! あぁ、また嬢ちゃんか!
 何度邪魔しやがる! くそったれがぁぁ!!」
 血走った眼の激情は――怖いけれど、いつの間にか震えは止まっている。
「やっとあんたをぶん殴れる!」
 そこへ突っ込んだのはオデットだ。
 その手には暖かな光。
 極小の太陽はしかし、優しさであり。
 その熱量を以って叩きつけられれば脅威にほかならぬ。
 注意散漫のリボリウスの鳩尾へとそれを叩きつけた。
「ガァッ!?」
 壮絶な痛みに男が目を瞠る。
「これぞ天下御免の太刀捌き、おまんに防げるか!」
 肉薄した両儀が渾身の気力と共に振り抜いた木刀はなるほど剣技ですらなかろう。
 気迫の籠められた鬼種の振り下ろしは強かに、苛烈にリボリウスの身体を痛めつける。
「オレが倒れたとしても、こっちの最後の一人がお前を倒せば勝ち。
 そうはいっても、やっぱりオレもぶん殴りたいからね!」
 そう言うイグナートは動きを封じられたリボリウスへと腰を落として構えていた。
 牽制代わりに打ち込んだ栄光の一手の流れをそのままに。
「小細工無しだ!」
 手刀を描いて撃ち込んだのは峻厳の一刀。
 黒き呪腕は黒き刃となって凄絶にリボリウスを撃ち払う。
「貴様は終わる。反転した意味も、悪辣な願いも……僕の破撃で消し飛ばす!」
 そこへと続くヨゾラは星の輝きをその手に集めている。
 魔術紋が再び輝きを取り戻し、それ以上に輝きを増していく。
 渾身、その魔力をその手に集束させて、リボリウスへと肉薄する。
「――夜の星の破撃!!!!」
 振り抜かれた一撃が真っすぐにリボリウスを撃ち抜いた。
 全身全霊を以って撃ち抜く夜の星の輝きが戦場に強烈な輝きを生む。
「がはっ!? く、くそ! くそが――なんで俺が、俺が押し負ける!?
 俺が、俺が押しまけるわけがねえ!!」
 斬撃を振り払い、炎の突きを描いたリボリウスが、走り出す――
「――マリィ、今でしてよ!」
 そう声をあげたのはヴァレーリヤだ。
「ヴァリューシャ! まかせて!」
 マリアは刹那の内に空を走る。
 一条の雷光は瞬く間にリボリウスの前方へと飛び込んでいった。
「ちぃ、そこをどけ!」
 流れるように紡ぐは聖句。
「主よ、慈悲深き天の王よ。
 彼の者を破滅の毒より救い給え。
 毒の名は激情。毒の名は狂乱。
 どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に」
 メイスへと集束する魔力をそのままに、ヴァレーリヤはリボリウスの背を捉えた。
 振り払われたメイスが衝撃波と共に強かにリボリウスの肉体を刻めば。
「リボリウス! 私の友人に――よくもやってくれたね! 極天式を見せてやる!」
 雷光が激しく迸る。それは神の雷。
 極天を戴く緋色の雷光は眩く、強かにリボリウスを撃ち抜いた。
 最初に打ち出された蹴りがリボリウスの顎を揺らし、そこから始まる雷光の連撃を真っすぐに撃ち抜いていく。
 戦いは続いていく。
 撤退の機を見誤り、嵌められた魔種は、イレギュラーズの猛攻を受けていく。
 そうして――戦いは終わりつつあった。
「く、くそが……どうして倒れねえ!」
 イグナートは恐れを見せるリボリウスを見据えたまま力を込めて行く。
「決着をつける代役をマカサれたからね! 倒れるわけにはいかない!」
 短い息と共に、イグナートの再びの手刀がリボリウスの腹部を貫かんばかりの鋭さで撃ち抜いた。
「あぁぁ? ちくしょうが、俺は俺は! 俺がァァ――――ァ」
 どこかへと手を伸ばすリボリウスを封じるように、叩きつけた。


「ユリアーナさん、終わったよ……リボリウスはきっちり終わらせた。
 もう大丈夫……っていうには、まだ早いかもだけど、この戦いで勝てた事、誇りに思うよ」
 ヨゾラはそれを告げるべくユリアーナの下へと辿り着いていた。
「ありがとう、ヨゾラ君。君達のおかげだ。
 あぁ、だが君の言う通りだ。まだ大丈夫ではない。
 ――我々には、まだ取り戻さねばならん物がある」
 ユリアーナは涼しげな、けれど挑戦的な笑みを浮かべてそう言った。
「そうだね、まだ終わりじゃない」
 それにヨゾラもこくりと頷くものだ。
「故郷を取り戻したのなら、祖国だって取り戻さないと」
「ヨゾラ君、ローレットの君達の力が無くては不可能だ。よろしく頼む」
 そういう声には信頼が感じ取れた。
「――他のところに合流されても困るしね。このまま薙ぎ払っておきましょう!」
 そう言い放ったのはオデットである。
 既にその手には砂嵐があった。放たれた吹雪が敵兵を薙ぎ払っていく。
 鮮やかに鮮烈に紡がれる妖精の悪戯は熾煇が崩れ始めた兵士を叩き伏せるには十分すぎる。
 その隙は応戦中の解放軍への大いなる後押しとなった。
 戦闘は語る意味をなさぬほどあっけなく終わっていく。

 イレギュラーズの手によりリボリウスが倒れた後、解放軍はそのまま町の中へと入っていった。
「まあ、ぶっちゃけここまでだったら私らもリボリウスもやってること変わらないんスよね」
 その道すがら、美咲はぽつりとそう零す。
「……そうだね。それも意図としてはいたが」
 美咲の言葉に彼女自身分かっていたのだろう。
 ユリアーナもまた静かに頷いた。
「……だから、私達には人々からの承認が必要となります。
 そして私は知っています。
 貴方が立つのなら、きっとそれに追随するひとが居ることを」
 重く頷くユリアーナへ美咲はそう続けた。脳裏にはこの町で出会った兵士の事。
 それからややあって、町の一番大きな広場に舞台は整えられた。
「……美咲君といったか。これが君の言っていたことか」
「準備はしました、ユリアーナ。
 他でもない貴方が叫びなさい。ここは貴方の街だと正しく刻むのです」
「分かった。ここまでしてもらっては――君の期待に沿えることをしよう」
 そう言ってユリアーナが壇上に向かうのを見届ける。
「――――」
 スピーチを耳に入れながら、美咲はぼんやりと思う。
(――なんだか、久しぶりに『らしい』ことをした気がしますね)
 この国に来てからの自分は嫌じゃないが――身に付いたそちらの技術も馬鹿には出来ないのだと。
 ふとそんなことを思うのだ。
「ふふふ、良いスピーチですわね、マリア」
 ユリアーナが紡ぐ演説を聞きながらヴァレーリヤが笑む。
「そうだねヴァリューシャ!」
 いつものように応じるマリアもあれば。
「――ですが折角の祝宴ですもの。
 これはもう、酒を飲むしかありませんわ!」
 そう言えば、酒樽の方へと走り出す。
「取り戻せて良かった。
 皆も協力してくれてありがとう。
 この町の修復もしないといけないかしらね」
 オデットはその光景を見ながら、精霊達へと声をかける。
 返事でもするように、ふわりと精霊達が躍っている。
「ほいじゃ、儂の流儀じゃ。奪うのならば最後まで……その霊魂ば食ろうちゃる」
 人々の士気が高ぶっていく声を聞きながら、両儀は小さくソレを見据えていた。
 漂うリボリウスの霊魂は悪意と憎悪に満ちている。
「では、両手を合わせて……いただきます」
 逃亡を図るようなリボリウスの霊魂を平らげ、その不味さに辟易する。
「口直しじゃ、酒を飲んでくるかのう」
 小さく息を吐いて喧騒の方へと歩き出した。

成否

成功

MVP

佐藤 美咲(p3p009818)
無職

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
町は解放され、軍勢は再編の後に帝都侵攻へ向けた準備を開始したようです。

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