シナリオ詳細
ダンジョン of 百合営業
オープニング
●百合営業しないといけないダンジョン
「なんですのここは!?」
『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー (p3n000015)は困惑と共に顔を上げた。
ひょんなこと(便利なワード)から依頼を受けダンジョン攻略に来たビューティーたちは偶然にも(便利なワード)不思議な魔法のかけられた部屋へと迷い込んでしまった!
顔から落ちたせいで痛む鼻をさすりながら周囲を見回すと、そこには無数の道具。たとえば一般的な学校にあるような机と椅子が並ぶエリアには黒板やロッカーが当たり前のようにあり、窓の外には夕暮れの風景がリアルさながらに浮かんでいる。
かと思えば就業時間を過ぎたオフィスらしきスチールデスクとパソコンが並ぶエリアや、石造りのダンジョン内部らしきエリアや、ファンタジーな酒場や、お嬢様学校のチャペルや、保健室や、薔薇咲く庭園や、波打ち際や、雪降る山荘や、とにかくなんでもかんでもあった。いまこの二行くらいの間に物理的な矛盾があると思うけどこの際矛盾は忘れてくれ。ついでにあらゆるコスチュームがかかったハンガーもあると思ってくれ。サイズは魔法でなんとかなるんだよ魔法で。
そう、このあらゆる可能性を肯定した『セット』の中で、ビューティーはいつのまにかセーラー服を纏っていた。
ハッとして自らの服をぱたぱた叩くと、ビューティーは起き上がり壁に書かれた古代文字に目をやった。
その文字を解読すると、こうある。
『百合営業をしないと出られないダンジョン』
●説明しよう!
説明しようね!!!!!
この摩訶不思議な『百合営業をしないと出られないダンジョン』は文字通り百合百合した一連の演技をしてみせないと出ることの出来ないダンジョンだ!
ルールはカンタン! 最初に入っちゃったビューティーを相手役として百合を演じるだけ!
お望みのセット(都合良くあるものとする!)でお望みの衣装と小道具(あるものとする!)を使いお望みのシチュエーション(できるものとする!)における百合シチュを演じきるのだ! 三角関係シチュも可!!!!!!!!!!
判定は都合良くそこにいるユリフリークゴーレムが百合判定プレートを掲げることで判定してくれるぞ。
折角なのでビューティーを相手にしたシミュレーション映像をご覧いただきつつイメージを膨らませていただこう。
●シミュレーション・シチュ、放課後百合ビューティー
聞き慣れたチャイムの音が鳴ってからどれだけ経っただろう。運動部のかけ声と吹奏楽部の演奏が混じる校舎の一角。夕日の差し込む教室の扉をあなたは開いた。
教室の窓際。椅子に座り一人で何かをしていたのはロール髪の少女。クラスメイトのビューティーであった。
「あら……?」
あなたに気付いたビューティーは手を止め、あなたを振り返る。
「まだ帰ってませんでしたのね。忘れ物かしら」
きょとんとする彼女の側に歩いて行くと、彼女が何をしていたのかわかる。手のひらに収まるような小箱タイプの裁縫セットを開いて、机の上に置いた上着に針を通している。取れたボタンをつけなおしていたのだろう。
くるくると器用に糸を結び、白い糸を噛む。ぷつんと切れた糸が、重力に従って垂れ下がった。
実際、忘れ物を取りに来ただけだ。彼女の隣の机の引き出しからそれを取り出したところで、ビューティーがぱちくりと瞬きをする。
「ねえ、あなたのボタンも取れてましてよ」
指をさすビューティーにつられて自分の制服を見てみれば、確かに上着のボタンがひとつ取れていた。
ビューティーはちょいちょいと手招きをして、椅子をひいてみせる。
「座って? つけてあげますわ」
予備のボタンがまだあったのだろう。花の形をした木のボタンをひとつ取り出すと、服を着たままのあなたを自分の正面に向かせた。
針に糸を通し直し、ボタンの外れた部分へと顔を近づける。
ふわりと香る石鹸のいいにおいと、制服の胸元から覗く鎖骨のちょっぴり薄いライン。目をそらすと、夕日が視界をわずかにかすませる。
「じっとしていて。すぐに済みますわ」
実際、すぐに済んだらしい。数分だったのか。それとももっと長かったのか。運動部のかけ声と吹奏楽部の演奏が混じり合うそれを聞いている間に、きゅっと強く糸を引く感覚に気付いた。
見下ろすと、ビューティーがあなたの胸元に顔を近づけ、その唇を開いた。
白い歯がのぞき、糸を噛む。
ぷちんと糸が切れ。そして、ビューティーはちらりとそのままあなたの顔を見た。
時間が、流れた。
数分だったのか。それとももっと長かったのか。
針を持ったままの手があなたの頭の後ろに回り、そっと針を持たない指で首の後ろを撫でる。胸にそってゆっくりとのびあがったビューティーの唇は、開いたまま。
あなたに――。
「あ」
ビューティーの手から針が落ち、床に転がった。
はっとしたビューティーが慌てた様子で立ち上がり、落ちた針を探して拾いあげる。
「はい、おしまい。また取れたら、つけてあげますわ」
ビューティーは笑って、あなたの胸のボタンを指先でつついて見せた。
そして、ゴーレムは満面のスマイルマークを頭部分に表示して『百合です!』プレートを掲げた。
- ダンジョン of 百合営業完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月25日 22時05分
- 参加人数6/6人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
●楽屋裏からお届け
「百合、営業……?」
『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の背景には宇宙があった。
アイコンやスタンプになってないのがおかしいくらい自然に宇宙だっ――あっもうある!
「花売りか何かだろう、か……よくわからないが、やるだけやってみよう。ままが居るなら安心、だ」
視線の先では『まま』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が慈母の笑みで頷いている。
「マリアちゃん…私の大切な愛娘。
そう…きっと私は、このダンジョンのような言い訳を待っていたのだわ。
マリアちゃん可愛い…大好き」
心の声が全部口から出ていた。
慈母の笑みとセットにするとすごい威力である。
「それにしても……百合ってなにをすればいいのかな。ねえ、ビューティさん?」
「私に言われましても!?」
くるくると巻いた髪を左右に振り回し、ビューティーがぷるぷると首を振る。
「とりあえず普段やっていそうなことを順番に試してみてはいかがかしら?」
「なるほど……」
完全に理解した(してない)っていう顔でエクスマリアが頷く。
一方で、『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)は『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)と手を繋いでなんだか楽しそうだった。
「えっと、よく話を聞いてなかったんですけど……ここでアリスさんと遊べばいいんですよね。それなら、よくやってますし……大丈夫ですよね」
えへへ、とはにかんだように笑うノルン。
アリスは半分が優しさでできている笑顔で頷いた。ちなみにもう半分は鎮痛作用。
「そう……だね。ノルンは……美少女に、なる……けど」
「美少女になるんですか!?」
女装を通り越して!?
ハッ! と何かに気付いたように腰周りをぺたぺたすると、ノルンはさーっと顔を青くした。
「そ、そんな……ボクの身体が……!?」
正直言われるまで、というか直に触るまで気付かないくらいなので、ぱっとみほぼほぼ変わっていないノルンである。
けど美少年のトランスセクシャルは解釈違いって人よのなかにはいるよね。なのでそういう人は美少年フィルタをこのまま通して百合(概念)を楽しんでね。
そんな、去年のエイプリルフール(https://rev1.reversion.jp/illust/illust/62644)とある意味逆の格好となったノルンが『これもとに戻るんですよね?』と困惑の限りを尽くしていると、『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が指先の上でくるくると回していたカードをぴたりと止めた。
「……なんか、つくづく百合と縁があるな私……雰囲気清楚機とか再現性東京の案件とか……」
そして、ひーふーみーとその場に居る面々を数えてみる。エクスマリアは華蓮とペア。ノルンはマリアとペア。沙耶はなんやかんや幸潮とペア。ビューティーが最大で一人六役演じるかもしれなかったこの場面で、まさかの零役という状況がみえてきた。
一人寂しくこの楽屋で雑草をもしゅもしゅしているビューティーを想像して、なんか沙耶の心に哀れみがわいてきた。あるいは慈悲かもしれない。
「幸潮、ここは三人で行かないか」
「ほう」
『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が一段か二段高い所に置かれたパイプ椅子に足を組んで座っていた。こいつだけ急に登場の仕方が大袈裟だなと思った沙耶だが、ある意味いつもの幸潮である。
「……仕方ない。少しばかりデカい"舞台"を書く。少し待ってろ」
そう言ってペンを取り出すと、原稿用紙にさらさらと何やら書き始めた。
「混沌における『夢野幸潮』は性の区別を持たねども、この身なりだけはまさしく『偶像崇拝』……即ち、人を導く運命の従者」
「なんて言ってるんですの?」
翻訳を求めるビューティーに、沙耶が少しばかり首をひねった。
「『自分はシスターだ』と言ってるな」
「此の万年筆は、本来語らるる描写を司りしモノであるが故に」
「理解が一歩も進みませんわ」
「気にするな、そういうヤツだ」
さて……と沙耶は楽屋になんとなく置かれていたお茶のペットボトル(パイプ椅子といいなんであるんだろう)を手に取ってキャップをひねった。
「私達は後に回らせてもらおう。先に行くといい」
手で出口の扉を示されて、エクスマリアたちが顔を見合わせる。
「なら……」
●ナーサリーマリア(聖母の近像)
ユリフリークゴーレムたちが見守る中、エクスマリアと華蓮に用意されたのはガーリーなベッドルームだった。
天蓋の突いたピンクレースのベッドと、それを囲むお菓子の家さながらの甘いインテリア。
天井を回る天馬と天使のプレートオブジェをぼうっと見上げてから、エクスマリアはスッと視線を降ろした。
ベッドに乙女座りをするエクスマリアと、向かい合う華蓮。
「とはいえ、何をしたら……とりあえず、仲睦まじくしてみればいい、か」
エクスマリアはあえて華蓮に背を向けた。
それが何を求めているのかすぐに察した華蓮が、そっと後ろから手を回す。
肩から滑る手が胸の前で交差し。背中にあたる暖かな感触にエクスマリアは瞑目した。
「マリアちゃん」
呼びかけられて、エクスマリアはくるりと彼女に向き直る。
(ぎゅぅって体をくっつけたら……私の胸のドキドキが、マリアちゃんの胸にも伝わってしまうかしら?)
頬を赤らめる華蓮に、エクスマリアも応えるように腕を彼女の背中に回す。
(ままの鼓動を感じていると、マリアも段々と高鳴ってきそうで、少し恥ずかしい……)
二人は照れからか視線をそらしあう。
再び交わされた視線を誤魔化すように、エクスマリアと華蓮は額をぴったりとつけた。
(触れられるのも、口付けされるのも、愛されていると感じて、心地よい。
だが、これはそういう仕事だから。もっと甘えてしまうのも、しかたないこと、だ。
ままの手を取り頬を寄せるのも、髪を梳いてもらうのも、膝を貸してもらうのも。
百合営業、とやらを行うための準備が必要だから、な。必要なことだから、しかたないんだ……)
エクスマリアは己の瞳の奥に隠していたものを解放するように、華蓮に回していた手をゆっくりと華蓮の頭へとあげる。
「だから、もっと。だいすきなままと。いっぱいふれあいたい」
漏れ出てしまった気持ちに、華蓮が微笑みで応えるのは分かっていた。
額にそっと口づけをして、そのまま流れるように頬へ。
(この胸の高鳴りは愛娘に向けて良い気持ちじゃないと分かってるのに…どこまで私は自分を抑えられるかしら)
目を細める。
(マリアちゃんはどんな事を望んでくれるかな…今なら…いいえ、いつでも何だって受け入れるのだわ)
それから暫く、無言でゆったりとじゃれ合う風景にユリフリークゴーレムたちは優しさと慈愛、そして穏やかさに満ちた顔でそっと『百合です』プレートを掲げたのだった。
●アリスとノルン
夕日の差す教室。並んだ机と椅子。
等間隔なボクたち。
けれどいま、ボクひとりだけ。
混じり合う誰かの声。誰かの気配。誰かの音。
大勢の誰かのなかで、ボクはひとりぼっち。
突然に開かれた、扉の音で、振り返る。
赤い目に映るあなたは、夕焼けに溶けてた。
「ノルン……おまたせ……」
言葉をひとつひとつ、箱の底から拾いあげては並べたような。そんなつたない口調で、しかしアリスは笑顔だった。
顔半分を髪に隠した彼女の気持ちを、ノルンはずっとずっと知っている。
お揃いのセーラー服。その他大勢に混じるはずのそれは、世界で二人だけの衣装みたいに見えた。
教室に入り、後ろ手に扉を閉める。
アリスの視線はまだノルンを見つめ。そらすことはなかった。
歩む足取りが。近づく距離が。まるで鼓動を高めるための仕掛けになっているみたいに、ノルンの気持ちを……そして頬を、隠しきれないくらいに高揚させる。
熱くなった頬に思わず自分で手を触れて。
アリスが目の前に立って、ひいた椅子をくるりと横向きにして座った。
肩肘をノルンの机につくようにして、すこしだけ身体を傾けて座るアリス。
「約束通り……ほら……持ってきた……よ……!」
彼女の手に握られていたのは化粧ポーチだった。
片手で持つにはすこしばかり大きい、中身のぎっしり入ったそれ。ファスナーを開いて机に広げてみれば、化粧に使う道具が詰まっていた。これでもずっとずっと少ない方だと、アリスは言う。
本来ならランドセルを一回り大きくしたような鞄いっぱいに詰めるのだと。
元々化粧っ気のなかったノルンに化粧をさせるため、放課後での待ち合わせ。
「それじゃあ……はじめようか」
「はい、よろしくお願いします……」
おずおずと顔を突き出すようにして、目を閉じるノルン。
まるでキスを待つみたいな顔に、アリスはつい化粧ポーチに筆を落とした。
誰でもない他人たちの音のなか、教室に二人ぼっち。
アリスの持つ細い絵筆のような道具が、ノルンの唇に薄く薄く紅をひく。
白く透き通るようなノルンにひとたび紅を引けば、まるで雪原に血をたらしてしまったみたいによく見える。つい視線を吸い寄せられそうになるその魅力に、アリスは思わず笑ってしまった。
「もう、すこし……だから。じっとしてて……ね」
よくみて線を引くだけに、顔の距離は近い。それゆえに、声もまた囁くように潜まった。
ノルンの眉に黒く線を通し、どこかあどけない顔に幼さとかわいらしさを足していく。
元々あったそれをもう一回り深くした姿。アリスはノルンから香るごくごくわずかなおしろいの香りと、それよりも印象に残る石けんの香りに包まれていた。
ノルンの頬が赤く染まるのはきっとチークをほんのりと塗ったからじゃない。
目を瞑る間。ノルンの心の中ではいろんな言葉が浮かんで。そして、消えた。
ソーダ水の泡みたいに消えていくそれを掴もうとして、小さく『ぁ』とだけ声を出す。
丁度アリスが次の工程に進もうとノルンの顎に指を触れた瞬間だったせいで、ついアリスからも「ぁ」という声が漏れる。
思わず目を開けば、その距離は驚くほど近かった。自分の瞳がのぞき込めるくらいの距離で。
言葉は、でてこない。
その代わりにノルンは、アリスのスカートの裾をきゅっとつまんだ。
この時間がどうか、ずっとずっと続きますようにと。
ユリフリークゴーレムたちが目頭を押さえ、スンスンと泣いている。
青春と恋と百合の香りに涙腺をやられたのだろう。涙腺あるのかわかんないけど。
そしてユリフリークゴーレムのひとりが目元を押さえたまま『百合です』のプレートを掲げると、賛同するようにプレートが上がった。
ちなみに、ノルンはそのあとずっと両手で顔を覆ったまま真っ赤になっていた。
●沙耶幸潮
「「「「「清楚」」」」」
という文字が後光を放ち浮かんでいた。
眼鏡をかけ、シスターの様相をした幸潮が椅子に腰掛け、『無辜ナル罪ト権利ナキ刑ノ偽典』のページをめくる光景の、その頭上にである。
なのでこれは圧倒的清楚な光景だと思っていただきたい。
シチュエーションは……そう、夕暮れ。それも、日だまり落つる教会。ミッション系の学内に作られたチャペルのベンチで本を読む幸潮の役割は、さしずめ牧師といった所だろう。この学校では、もとい教派では女性牧師を認めているようだ。
カラン――と入室を示す渇いた小さな音が鳴り、幸潮は顔をあげる。
扉から入ってきたのは二人の少女であった。
ひとりはビューティー。金色のロール髪をした仮面の少女である。
もうひとりは沙耶。ごく普通の少女に見えて、しかしその瞳の奥には秘密があった。
「おやビューティー、まだ帰ってなかったのか。そろそろ下校時間が迫ってるぞ?」
校舎の中庭。花壇の並ぶその場所にぼうっと立つビューティーを見つけて、沙耶は声をかけた。
沙耶が学校から帰るのに、この中庭を通って近道することを知っている者は少ない。ビューティーもそのひとりだ。
「もしかして、何か気になるものでもあるのか?それとも……もしかして、私を待っていたのか? 悪い子だな……私もだが」
悪戯をするように笑う沙耶に、ビューティーは両手を腰の後ろで組むようにして顔をそむけた。
「さあ、どうだか。たまたまお花を見に来ただけかもしれませんわよ」
ビューティーのそのわざとらしい言い草に、今度こそ笑ってしまう沙耶。ビューティーは『ちょっと!』と言って責めるように沙耶を見つめた。
すまないなと言いながら、沙耶はくるりときびすを返す。このまま帰るつもりは、どうやらなくなったようだ。
「ふふ、ならこの時間なら……礼拝堂にでも行くか。そこなら雰囲気もあるし誰もいないだろう……」
扉をあけた沙耶を迎えたのは幸潮だった。牧師が教会にいるのは養護教諭が保健室にいるのと同じくらいにあたりまえだ。
とはいえ沙耶が『いないと思ったのに』という顔を一瞬だけしたのは、きっと幸潮がこの場所を留守にしがちだということだろう。
「む、夢野……いたのか。またそのような格好で……」
幸潮はゆっくりとベンチから立ち上がり、その奇跡的なまでの衣服が風になびく。黒縁の眼鏡の奥で、幸潮の紫色の目が動いた。
「よく来たな、迷えるヒト等よ……なんて。今日も汝らはまだ帰りたくないのだろう」
ビューティーがこっそり『なんて?』と問いかけてきたので沙耶が『放課後の暇な生徒事情を察したらしい』と解釈を加えた。二人小声でこっそりと。
「……? 私の服装はどこからどう見ても『清楚』なる装いとなっているだろう。なぜそうも反応する」
幸潮がフッとシニカルに笑いながら背を向け、その奇跡的なスリットに指をかけふわりと布をなでる。
とかやってる間に、沙耶はビューティーの手をひいてそっと教会の外へ出ていた。
「読んでたのは……創世記か? 第3章って確か楽園追放だよな……」
「どういう話ですの?」
教会の前で、後ろ手に扉を閉めた沙耶が『ああ』と声のトーンを低くする。
「楽園の男と女が、欲望から知恵の実を囓り、恥を知り楽園を追放される物語かな。解釈には、よるが。
かの蛇や女ではないが、この学園にいて、確かにどこか不足を感じたことはあった……」
そう呟きながら、ビューティーの手をひき肩にもう一方の手をまわす。
「……不純な交遊かもしれない。退学になるかもしれない。でも……」
そっと抱き寄せる沙耶。
音をたて開く扉。
「待て」
「ハッ!?」
幸潮が扉から出てきたことでぞくりと背筋を伸ばす沙耶。
ビューティーがきょとんとするのをよそに、沙耶の後ろ襟を掴んで幸潮は教会のなかへと引きずっていった。
「"悪い子"らには、仕置きをしなくてはな。思考を蕩かす、甘き仕置きを」
「え、甘き仕置きだと、一体何を――!」
わー! と叫ぶ沙耶。
ユリフリークゴーレムたちはにっこり満面の笑みを浮かべ、そして全員一斉に『百合です』パネルを掲げたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おしまい!
GMコメント
あなたは『百合営業をしないと出られないダンジョン』に入ってしまいました。しまったつったらしまったんだよ。
このダンジョンではOPでシミュレーションしたような甘酸っぱい青春の香りがする百合シチュを演じる必要があります。ありますったらあります。青春具合は十台の若い青春でも三十台のオトナな青春でも構いません。どっちも好きです。
・シチュエーションと相手役
セットや衣装や小道具は全部都合良くあるものとします。好きなシチュを選んでゆりゆりしてください。
ビューティーが相手役としてキッチリ演じてくれるので安心してゆりゆりしてくださいお願いします。これで救われる命があるんです。
尚、一緒に依頼に入ったメンバーのなかで「この人とゆりゆりしたい!」というご要望があればそのペアあるいは三人とかでゆりゆりしてもよいものとします。なぜなら楽しいからです。
※この空間では男も女も無性も全員ひとしく美少女になるものとします。なぜなら楽しいからです。あるいは魔法です。
●今回頑張ってくれる美少女
・『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000015
仮面を被った謎のスーパー美少女を名乗っているが正体はみんなにバレている。
今日はゆりゆりするためにあらゆる役に挑戦する百合ファイターと化す。
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