シナリオ詳細
亜竜種少女ペア、未知の物体と遭遇
オープニング
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『覇竜領域デザストル』。
この地に住まう亜竜種達は日々、生息する亜竜、魔物達の脅威と隣り合わせの状況で暮らしており、非常に高い戦闘能力を持つ者も少なくない。
もっとも、それでも、恐ろしい生物に襲われて命を落とす者も少なくないのだが……。
それに抗い、亜竜種達は日々を逞しく生き抜いている。
「よし、そっちはどう?」
「大丈夫。片付いたよ」
亜竜種の少女ペア、シェイン、カレルのペアは覇竜の地をあちらこちら巡り、力を高めている。
多少の群れならば、2人で殲滅できる程度の力をつけていた彼女達だが、まだ覇竜から出るのは踏ん切りがつかない様子である。
これだけの力量があれば、他国でも十分傭兵などしてやっていけるだろうが。
魔物の群れを倒した彼女達が進んでいたのは、谷底の道。
彼女達はいつものように楽しく語らい、故郷の変化を確認する。
1年近くあちらこちらを歩き、飛び回る2人だ。
覇竜の道はある程度覚え、細かな違いや変化も察知できるようになっていた。
だからこそ、彼女達は以前から目にしていた崖が突如変貌していたことに唖然としてしまう。
「なに、あれ……」
「さあ……」
地面や崖に植えられた植物、蔦などによって隠されてはいたが、彼女達はそこに築かれた大規模な機器に驚く。
それは、イレギュラーズが先日、突貫工事で完成させた馬車などを崖上へと引き上げる為の昇降機なのだが、そうした知識のない彼女達は何をする物かがさっぱりわからない。
まあ、翼を持つ彼女達には不要なものではあるのだが、それはそれとして。
「ちょっとそこの集落で聞いてみましょう」
「これだけの規模だもの、きっと知っているはずね」
カレル、シェインの2人は早速、近場にある集落へと向かうことにしたのだった。
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他地方からも少しずつ関心が高まり始めている覇竜の地。
しかしながら、依然としてこの地域に生息する亜竜、魔物は脅威であり、多少腕に覚えのあるものですら用心棒や警護の仕事に同行するのを躊躇う状況に変わりはない。
「まあ、覇竜に興味があっても、行きたいと主張してくれる人は今もほぼいないっす」
『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)は今なお、世間一般での覇竜という地域の敷居が高いことをイレギュラーズ達へと伝える。
イレギュラーズやリヴィエールは新たな交易路をフリアノンまで開拓させるべく、折を見て足を運び、整備を続けている。
少し前には、今いる第一中継地点となる集落の先にある崖に昇降機を建造したばかり。
「なんか、すごいのができてたぞー」
『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)もそれを確認して、「おー」と驚いていたらしい。
そこへ、やってきた少女達に、熾煇はここでも「おおー」と驚きの声を上げる。
「ああ、イレギュラーズ」
「やっぱり、あの機械は貴方達が造ったのね」
亜竜種少女ペアのカレル、シェインが熾煇との再会、初めて会うメンバーと交流を深めて。
「へえ、馬車を……」
「下手に近づいていたら、私達も危なかったね」
魔物達避けに様々なトラップが仕掛けられていたというから、2人は苦笑いしてしまう。
「あたし達はしばらく商売の話をしたいっすから、メンテを兼ねて2人に使い方を教えたらどうっすか?」
折角、昇降機に興味を持った2人だ。
使い方を教えれば、メンテを行う手が増えるのではというリヴィエールの提案もあり、一行はリヴィエールらパサジール・ルメスの民を集落に残し、昇降機へと向かうことに。
しばらくすると、そそり立つ崖に設置された昇降機がメンバー達の視界へと入ってくる。
それらへと近づこうとする面々だが、その近くを徘徊していた外敵の存在に気付く。
「あれは……」
「アダマンアント、だっけ」
少女達を含め、イレギュラーズもその一隊に警戒を強める。
通常のアダマンアントと共に行動していたのは人型4体。
それらは、かつて、アダマンアントが亜竜種を試験体として作った蟻帝種の後継に当たる存在。
亜竜種をベースとしており、彼等はアダマンアントとしての自我を強く持つ。
「つまり、犠牲になった同胞がいるってことね」
「彼等自身に罪はないけれど……、見過ごせないね」
何せ、亜竜種に近い姿を持ちながらも亜竜種を敵視し、排除しようとしてくるのだから、これほどタチの悪い相手はいない。
加えて、昇降機の情報を持ち帰られると、悪用すらしかねない。残党とはいえ、潰しておくに越したことはない。
「手伝うよ。あんなのに後れは取らない」
「ええ、行きましょう、カレル」
少女達と共に、迎撃に当たるイレギュラーズ。
向こうもすぐにこちらの存在に気付いて。
「ローレット……!」
「同胞を殺した恨み、今こそ晴らそうぞ」
彼等もまた戦闘態勢を整え、こちらへと向かってくるのだった。
- 亜竜種少女ペア、未知の物体と遭遇完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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亜竜種少女カレル、シェインと共に、イレギュラーズは昇降機へと向かう。
ギフトによって仔竜の姿をとる『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)は久しぶりに会う2人におーと声を荒げて。
「元気してたか? あれから頑張ってるかー? 俺は頑張っているぞ」
「ええ」
「何とかやってるよ」
「久々に会ったが、元気そうで良かったぜ」
『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)も少女達が揃って活動していることを喜び、『荒くれ共の統率者』ジェイク・夜乃(p3p001103)は仲間と交友を深める少女達にさながら娘を見る父の様な目を向けていた。
改めて、一行の目的は先日建造した昇降機なのだが。
「……そういえば、以前関わったことがあったような気がするな」
『陰性』回言 世界(p3p007315)が記憶を手繰る間に、初めてこの場に出来た建造物を見上げたメンバーは。
「昇降機ィ? とか練達で初めて見たけどこっちでもあるなんてマジ傑作よねぇ~!」
「改めて見ると、こんな昇降機が出来るほど交易路も整備されてきたらしいな」
フレイヤ・レーヴァテイン(p3p010956)は覇竜に出来たそれに笑顔を浮かべ、『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は未開拓領域である覇竜で、フロンティア精神豊富なチャレンジを行っている状況に、生まれ故郷を思い出す。
「あそこにいるのはアダマンアントだっけ? あれも久しぶりに見たなー」
ただ、そんな穏やかなムードも、熾煇が指し示した先にいた一隊の存在で一変する。
「…………?」
「なんだこれは」
昇降機に興味を持つそれらは、しばらく前に覇竜で一斉に活動し、イレギュラーズによって掃討されたと思われたアダマンアントの群れ。
通常種だけでなく、亜竜種を元に作られた蟻帝種の第二世代までいるではないか。
「俺が連れていかれたら、俺みたいなアリが産まれてくるんだろーか?」
「残党の状態でも生き残ってるか。あっちも逞しいもんだ」
呑気にコメントする熾煇の傍、郷愁に浸る間もないと嘆息するマカライト。
そして……。
「はあ? 蟻共が居るとか聞いてないんですけど?」
並々ならぬ怒りを漲らせるフレイヤ。
彼女にとって、故郷を滅ぼしたアダマンアントは存在すら許せぬ怨敵なのだ。
「まったく、この蟻共まだ生きてやがったのか。余計なところに出て来やがって……」
『一ノ太刀』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)も今なお活動を続けるこの種族に……とりわけ、亜竜種を象ったような蟻帝種に苛立ちすら感じていた。
「また懐かしい蟻が出てきたっスね。でも、オレもあの時より少しは強くなったっス」
『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は久々に見たアダマンアントを相手に、自らの力を試そうと意気込む。
「アダマンアント……」
「私達にとっても仇敵ね」
覇竜の各地を巡る2人だ。アダマンアントによって滅ぼされた里も目の当たりにしているはずだ。
「2人なら余裕だよな。1体ずつ確実に潰すように、頼んだぜ!」
「お前達なら出来る、それを証明してくれ」
ミーナ、ジェイクの呼びかけに、少女達は同時に頷く。
かなりの数の戦いもこなした今なら、アダマンアントにも後れをとらないと2人は決意を漲らせる。
「もっとゆっくり話をしたいが、まずは邪魔な此奴等を片付けよう」
「全くもって同感だな」
ジェイク、ミーナが構えをとると、アダマンアントらも殺気を感じてイレギュラーズ達の方を振り返る。
「…………!」
「うむ、奴らを排除してゆっくり調べるとしよう」
ここまで生き残った連中だ。外敵を排除して昇降機を調べる気満々の様子に、世界の表情が陰る。
「あの血と汗と努力の結晶を破壊されてしまうだけならまだしも……是非とも御遠慮させていただこうじゃないか」
昇降機の技術を悪用する恐れがあるなどとんでもないこと。
世界もアダマンアントを手早く排除すべきと幻影武器を創り出す。
「まあいいや。ざっくりと片付けてやらぁ」
「害虫は駆除するに限るわよね? アハハハ! ……ブッコロしてやる」
素早く大太刀を抜くエレンシア。白髪を赤く染めたフレイヤも八重歯を見せ、敵へと飛びかかっていくのである。
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アダマンアントは集団で押し寄せてくるのが脅威だが、今回交戦するのは一小隊でしかない。
その中で、注意すべきは小隊内でも格上の蟻帝種だと熾煇は感じて。
「あの2体、火を使うのなら俺と相性は良さそうだよな」
1体は前に出て幅広な両手剣を使っているが、他2体は少し距離をとってから炎術を使う様子。
熾煇は紅の竜の魔力を撃ち込むことで、それらを前線へと引っ張り出す。
他の敵は、マカライトやミーナが受け持つ。
甲殻を纏った巨躯の狼といった風体のティンダロスへと騎乗するマカライトは内より燃え上がる炎でアダマンアント数体を惹きつける。
仲間への被害を軽減させるのはもちろんだが、昇降機に被害が及ばぬようにというマカライトの配慮だ。
ミーナは少女ペアがアダマンアント1体を相手にし始めたのを視認し、それ以上が彼女達へと向かわぬよう名乗りを上げる。
ふらふらと向かってきた敵が自分に向けて拳や酸を向けてきたことで、ミーナは見定めた1体の全身を斬りつけて血を流させていた。
世界もまた、タンク役として立ち回る。
すでに幻術によって創造していた武器を盾として展開しつつ、彼は両手剣を振るう蟻帝種1体と炎術を使う1体に見える様存在感を示す。
「あぁ……そういえば戦ったことあったかな……」
アダマンアントのことを世界が覚えていないわけないが、笑いを浮かべて敢えてそう呟くことで敵を煽る。
「我々を愚弄するか!」
重い刃を振りあげる蟻帝種。
此方の挑発に乗ったのを吊り上げた眼鏡の奥からしっかりと確認した世界は魔眼を煌めかせていた。
他メンバー達は通常個体であるアダマンアントから討伐に当たる。
イレギュラーズ側の布陣後ろから、突撃戦術を仕掛けるジェイクはさながら楽曲を奏でるかのように両手の拳銃から鉛を撃ち出す。
前線のメンバーがうまく敵を引きつけており、ジェイクは敵の力を削ぐことを優先して攻め立てていく。
「悪いっスが、思い通りにはさせないっスよ」
ライオリットもまた敵の力を封じるべくテンションを高め、纏めて炎と氷の息吹を浴びせかける。
その温度差は物質ですらも簡単に劣化させる。生物は言わずもがなだ。
「「…………!!」」
ライオリットの炎と氷を同時に浴びて苦しむアダマンアントだが、それでも殴り掛かり、食らいついてくるのは生に対する本能だろうか。
後は攻撃対象を合わせ、敵を各個撃退したいところ。
「まだ生き残ってやがったか蟻共! 来るなら纏めて叩き潰してやるぜ!」
改めて、高らかに呼びかけるエレンシアはAKAによる力をその身に纏い、通常種1体に大太刀で殺人剣を見舞う。
それは、邪道の極み。確殺自負の殺人剣。
だが、高い技量が必要となる上、敵とて覇竜に息づく強力な種族。エレンシアの攻撃も効いているはずだが、そう簡単には倒れてはくれない。
少し距離をとり、亜竜種少女ペアもアダマンアント1体を相手取る。
突き出した杖から素早く雷を発するシェイン。その着弾と合わせて跳躍したカレンが長剣を振り下ろす。
アダマンアントは通常種でも、一般の亜竜種からすれば強力な相手なはず。
だが、しばらく覇竜の各地を旅していた彼女達だ。息を合わせて戦う2人なら、アダマンアントと互角以上に戦える。
「何かあったら俺が守ってやるぞ。防御は薄いけどな!」
小さな体で胸を叩く熾煇に、少女達は笑い合いながらも更なる攻撃を目の前の敵へと仕掛けていく。
イレギュラーズも負けてはいない。
特に、並々ならぬ感情でアダマンアントを敵視するフレイヤはアダマンアント1体を深き闇に包み込んで。
「そのうざったい装甲でも、私の攻撃には手も足も出せないでやんの♪」
威圧感すら抱かせる形相のフレイヤは闇を振り払って殴り掛かろうとしてくる相手を見下ろして。
「やーい! ざ~こ♡ ざ~こ♡ 自慢のつよつよ装甲が役立たないのはどんな気分?」
フレイヤはそんなアダマンアントを一層煽り、なおも闇で包み込んでいくのである。
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アダマンアントは一時期、イレギュラーズとしては本腰を入れて相当に当たった種族。
それ故に、メンバー達にとっては立ち回りしやすい相手と言える。……気さえ抜くことがなければ。
徹底的に大太刀で斬りかかるエレンシアに続くライオリットがそのアダマンタイトを追い込む。
速力を威力に変えて軍刀で切り刻むライオリット。アダマンアントはなすすべなく地面へと潰れてしまう。
隣にいたアダマンアントもじたばたと脚をばたつかせ、抵抗するが、ジェイクの突撃戦術で一時的に力を奪われて酸を吐くことも、力を籠めて殴り掛かることも、強靭な顎を活かして食らいつくこともままならない。
己の体から生える鎖の内、3本を膨張させたマカライトはさながら黒龍のごとく絡め、敵の体へと食らいつかせる。
蟻帝種を抑える熾煇がここぞとアダマンアントへと迫り、空中へと跳ね上げる。
そいつは足をじたばたさせていたが、それが元になって体が空中分解してしまった。
直後、今度はミーナが闘気の棘で別の1体を貫く。
彼女はさらに影から大鎌の刃を大きく振るい、その首を跳ね飛ばす。
首がなくなった胴体は急に完全停止し、横倒しに倒れていった。
残る1体はカレル、シェインペアが息のあった攻めで戦いの主導権を渡さない。
だが、アダマンアントも酸を吐きかけ、彼女達の攻勢を止めるだけでなく、手傷も負わせて。
「「うっ……」」
猛攻に些か怯む少女達だが、世界がハイネス・ハーモニクスで一人ずつ癒せば、戦意を再び高めた彼女らは同時に攻撃を仕掛け、シェインが燃え上がらせた敵をカレルが軽やかに切り裂き、見事に仕留めてみせた。
「おー!!」
2人の活躍もあって、熾煇もこれ以上なく戦意を高ぶらせていたようだ。
アダマンアント通常種が全て倒れれば、メンバー達の攻撃対象は蟻帝種へと移る。
中でも、フレイヤは通常種もそうだったが、蟻帝種にも鬼気迫る表情で激しい怒りを炎と化して浴びせかけている。
ギリギリと歯ぎしりする蟻帝種。アダマンアントでありながら、人の姿をしたそれらにエレンシアが叫びかける。
「蟻は蟻らしく蟻の姿してりゃいいんだよ! 他の姿を模するなどと!」
通常種と変わらず、エレンシアが殺人剣を行使して仕留めようとするが、敵は身体を切り裂かれながらも業火を激しく燃え上がらせる。
炎に包まれ、体力を削られたエレンシアがパンドラを少し砕いて意識を保つ傍で、蟻帝種はなりふり構わず炎を乱舞させてくる。
しかし、フレイヤはそれすらさらりと避けてみせて。
「アハッ☆ こんな小娘も焼き殺せないなんて……よわよわの雑魚過ぎない? 糞蟻さん?」
意志の強さを見せつけるフレイヤはお返しとばかりに異能の炎を浴びせかけて。
「炎とはこう使うものよ、紛い物さん。全く……そのムカつく姿を取った代償は高くつくわよ」
――強欲龍(レーヴァテイン)の名の元に、完膚なきまでにねじ伏せると、フレイヤは地面から生やす巨大な土塊の拳でその蟻帝種を強く殴りつける。
「よわよわ糞雑魚蟻さんはとっとと死んでどうぞ」
彼女の言葉に反論すらできず、全身の骨を砕かれた蟻帝種は吹っ飛ばされたその場で果てていく。
別の蟻帝種には、ライオリットが仲間と共に猛攻を仕掛ける。
出来る限り、速力を活かして攻め立てるライオリットが相手を抑えつけ、マカライトもまた続く。
「見学だけで勘弁してくれ。こいつは何かを脅かす為のもんじゃないんだ」
マカライトは時折、敵が昇降機へと視線を向けていたのに気づいて制しようと、一撃目の赤、二撃目の黒と妖刀の刃を刻み込むが、それに耐えきった敵がマカライトの上半身を焼き払わんとする。
「何……!?」
だが、炎を意にも介せぬ彼に驚く蟻帝種の左右から少女ペアが息の合った連撃を繰り出した直後、世界が神秘の力を集中させた幻影武器をいくつも叩き込む。
「早々に片づけてしまわないとな」
対して、蟻帝種は言葉の代わりに血を吐き、前のめりに倒れていった。
(さすが、ペアの連携といったところか)
もう手を出す必要もなさそうだと、世界は彼女達の力を認め、残る敵の排除を優先する。
「…………」
刹那呆ける最後の蟻帝種。
ミーナの紅を受け、棒立ちになってしまっていたのだ。
残像を展開するミーナは、なおも死神の刃を敵の体深くにまで食い込ませる。
これ以上隙にはさせぬと、熾煇がその蟻帝種の体を空中へと跳ね上げると、ジェイクが照準をそいつに合わせて。
「保険のつもりだったがな」
蟻帝種に思うような立ち回りをさせぬ為、ジェイクが死神の狙撃で敵の胸部を穿つ。
その手から長剣を手放した敵にもはや戦意はなく。
地面へと落ちたそいつは立ち上がることなく動かなくなったのだった。
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想定外の敵との遭遇だったが、一行はそれらの敵を撃破して。
……いや、フレイヤだけはその姿形ですらも許さないらしい。
その死骸へとフレイヤは炎を発し、爆発を巻き起こす。
仲間達の視線を感じたフレイヤはもういいだろうという意志を感じたが、手を止めずに。
「……別に……ただ単純に故郷を滅ぼしてくれやがったこいつらが大嫌いでムカつくだけよ」
徹底的に一切の躊躇もなく跡形もなく、彼女はそれらを燃やし尽くす。
「それにしても、この蟻達は厄介なもんだな……」
生き残りが今なおいることに驚くミーナは、少女達に気を付けるよう促す。
「いつ何時、人生に落とし穴があるかなんて、わかりゃしないんだからさ」
揃って頷く2人の近くで、ライオリットが昇降機付近に罠を仕掛けていたことを思い出して。
「まぁ、わかっていれば、危ないものではないはずっスから」
彼がそれらの罠をチェックすると、それなりの数の罠が破壊されていたり、かかった亜竜や魔物が力尽きている姿も確認できた。
その為、ライオリットは罠を仕掛け直したり、罠で力尽きた死骸を排除したりと仲間と協力する。
その後、一行は亜竜種少女達に昇降機の使い方を教えることに。
「そう言えば、最終チェックに軽く携わった程度で昇降機自体には然程関わっていないんだよな」
「んー……、アタシはあんまこういうのは詳しくないし、教えられる奴頼むわ」
世界、エレンシアも今後使うかもしれないということで、利き手側へと回る。
「俺も一緒に教えてもらおっかな」
普段からワイバーンに乗って移動する熾煇はあまり使わないなぁと感じながらも、同じく聞き手に回る。
亜竜種少女達も昇降機には興味津々ではあるものの、自前の翼で崖上まで飛び上がることはできるとジェイクは前置きして。
「ただし、使い方を覚えておいても損はないぜ」
思ったより聞き手が増えたが、ジェイクは亜竜種ペアを中心に優しく操作法を教える。
「こーゆー、機械設備って俺は苦手だからなー」
覚えたら助けて欲しいという熾煇は、お礼にとっておきの肉をあげると主張する。
仔竜の姿の熾煇が両手を広げて主張すると、少女達も思わずほっこりしてしまう。
「まあ、いざというときに思い出せれば色々便利だし、きっと悪いことじゃないだろう」
マカライトは新たな外敵が接近して来ないかと警戒を怠らないよう周囲を注視しつつ、見学する。
動力はアイテムや自身の魔力で補填が可能だそうだが、それが終われば、実際に起動させて。
ガタン、ウイイィィ……ン。
実際に数名のメンバーが乗ったリフトが崖を登っていく様子を、熾煇がおーと見上げて。
「昇降機、こんな感じで動くのかー。大丈夫か? すぐ壊れたりしないか?」
亜竜による攻撃ですぐ壊れてしまいそうだと、熾煇は懸念点を上げる。高いところで壊れてしまえば、飛べない者にとっては恐怖でしかない。
「でも、楽しそうだから、ちょっと乗ってみたいぞ!」
先程の事後処理の間に、予め操作方法を覚えていたライオリットと世界が図や写真を交えて纏めていた管理マニュアルを見ながら、亜竜種少女ペアも早速操作する。
ガタン、ウイイィィ……ン。
再び、昇っていくリフトには、少女達を含む先程と別のメンバーが搭乗していた。
これが、これからの覇竜を変えていくのだと信じて。
メンバー達は改めてこれまで開拓してきた交易路を崖から見下ろすのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは並々ならぬアダマンアントへの感情を見せたあなたへ。
次なる亜竜種少女ペアの登場をお待ちいただけると嬉しいです。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
覇竜交易シナリオ続編です。併せて、『紲家のペット枠』
熾煇(p3p010425)さんのアフターアクションも兼ねており、久々の亜竜種少女ペアのお話もお届けします。
このペアの登場、前回は9ヵ月前……だと……?
●目的
昇降機の防衛
亜竜種少女ペアに昇降機の管理方法を教えること
●概要
拙作「覇竜交易を阻む崖」にて作成した昇降機付近が舞台です。
昇降機に興味を持つ亜竜種少女ペアにこの危機の管理方法を教えてあげたいところですが、タイミング悪く昇降機に目を付けた亜竜、魔物の撃退を願います。
使い方については事後に教えてあげてくださいませ。
●敵:アダマンアント×7体
<覇竜侵食>で出現した群れの残党です。
○蟻帝種『第二世代』×3体
第一世代を祖として生まれた人型のアダマンアント。
亜竜種を模した姿ですが、中身は亜竜種とは全く別物です。
1体が両手剣で近距離戦を、2体が炎の術を操って中遠距離戦を仕掛けてきます。
○アダマンアント×4体
全長2m程度。硬い外骨格を持ちます。
顎での食らいつき、殴り掛かり、酸飛ばし、酸乱舞といった攻撃を行います。
●NPC
◎亜竜種少女×2名
拙作『亜竜種少女ペアの冒険』初出。
フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
覇竜内を旅しており、なかなかの強さです。イレギュラーズとの共闘には好意的ですが、基本的にはペアで戦わせると存分に力を発揮してくれるでしょう。
○カレル
18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。軽装鎧を纏い、剣舞を行う彼女は見とれてしまうほどの美しさです。
○シェイン
17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖を所持し、先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使うことができます。
◎リヴィエール・ルメス(&パサジール・ルメスの民)
パサジール・ルメス所属。情報屋。
亜竜種と商売の話がある都合で集落に留まっており、戦闘には参加しません。
何かあれば、事後に現場である昇降機へ足を運んでくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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