シナリオ詳細
<ジーフリト計画>我が身を守るための一歩
オープニング
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ギアバジリカに存在する難民キャンプ。
そこはクラースナヤ・ズヴェズダーの革命派やイレギュラーズによって守護されてきた一般人たちのキャンプだ。
力を持たず、下手をすれば同胞すらも喰らわねば明日さえも生きれなかった地獄を救い出され。
加えて発生した新皇帝派のグロース師団による襲撃さえもイレギュラーズと革命派によって潜り抜けることが出来た。
――新皇帝派に息子を殺された男は言う。
「俺らが今生きているのはあの人たちのおかげだ。
けれど、恐怖に震えてギアバジリカの中に閉じこもり続けるだけではいけないんだ」と。
――モンスターに妻を食われた老人は言う。
「自分達の家族に最も高い値段をつけるのは、私達自信だ。
私達が弱かったから、奪われるしかなかった」と。
――家族を失い一人きりになった青年は言う。
「力が欲しい。あの人たちのように、戦う力が!」と。
それらは力を持たぬ子らに芽吹いた決意。
踏みつぶされ、滅ぼされる以外の道を持たぬ子らが抱いた決起への決意。
だが、彼らが手にしているのは薪を割る斧や雪を払うスコップのみ。
それらは充分に武器になるが、重装なる鉄帝軍人に抗うには大きな不安を持つ獲物。
「……」
その様子をリア・クォーツ (p3p004937)は複雑な面持ちで見つめていた。
――そもそも、『難民たちが戦いたい』と願うような自体にならない事の方が重要だ。
一度でも武器(それ)を手にすれば、最早止まらない。
人々の怒りは、奮起は止まるまい。
どれほど健闘しようとも、彼らによる血の雨が降るだろう。
どれだけ完璧な勝利を目指そうと『全く被害を受けずに勝つ』などと言う芸当は特殊事例を抜きにして有り得ない。
故に、彼らには絶対的に必要なものがあった。
それは圧倒的に操作が容易で。圧倒的に火力が合って。
もっと言うのなら、『この世で最も技量に関係なく簡単に人を殺せるもの』だ。
そしてそれは、この鉄帝国が都スチールグラードには山と存在しているはずのもの。
――『銃』と呼ばれる兵器。
それを手に入れる為に、革命派では『サイト・アハトアハト』なる帝国陸軍武器保管庫襲撃計画が練られていた。
『ジーフリト計画』とも呼ばれるこの作戦は各派閥によってそれぞれの目標を持っていた。
「シスター」
視線を向ければそこには青年が1人立っていた。
「アルブレヒト君も行くつもりなの?」
そう声をかけたのは炎堂 焔(p3p004727)だ。
アルブレヒトの事を気にかけて再び訪れたばかりだった。
「おふたりの言いたいことも分かります。
自衛の為に武器を手にすることは大事です。
彼らは自分の身を自分で守るために鍛えられてきました。
でも、自衛とこちらから攻めるためではまるで違う」
「分かってるなら――行かせるべきじゃないわよ」
「そうだよ、アルブレヒト君には――アリカちゃんだっているでしょ?」
「それでも彼らを守るために『銃』が必要な事は変わらないでしょう。
――彼らを守るためにも」
「……分かってるわ。私だって自衛のためなら何も言うことはないわ」
一つ息を吐いてリアが首を振る。
「そうだよね、此処の人達が自分を守るためでもあるから……うぅん……」
そういって焔が考え始めた。
●
「総員、構えよ――」
重火器類の搬送経路用の小型貨物列車らしき架線を走り抜けたイレギュラーズは当初の人数よりかなり増えていた。
元々、リアや焔、アルブレヒトにイレギュラーズを加えただけのメンバーの予定だったこの集団は、リアたちがルベンで出会ったフリートヘルムらの部隊の支援を受ける形で大所帯となっていた。
「あんたは、あの時の!」
フリートヘルムが声をあげる。
視線の先には待ち受けていた――或いは守りを固めていた飛行種の女がある。
「おや、誰かと思えば、あの時の単細胞ではありませんか」
「あんたが、どうしてそのあんたが此処にいる!
ええっと……たしか、たしかラウラ! 革命派のラウラって名乗ってたよな!」
「あはっ、人がちょっと誘導しただけで思い込みで動いたのは貴方でしょう」
せせら笑う女。
「あんたが、あそこに逃げてったから俺達はあそこまで追撃して――今にして思えば、そうやって俺達を誘導したんだろ!」
「そうですが、なにか?」
静かにそう言って、女はゆっくりと銃を構えだす。
- <ジーフリト計画>我が身を守るための一歩完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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各地で襲撃の音が聞こえていた。
怒号が戦場のどこかから聞こえて、襲撃の声が響く。
(辛い世の中だ。厳しい世の中だ。理不尽な暴力が横行し、自分の大切な物を失ってしまう。それはとても恐ろしいことだ)
紅雷を迸らせる『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)はその手に拳を作りながら、敵を見据えている。
(でもね……己の身を……大切な物を守る為に降りかかる火の粉を払う事と、
奪われない為に相手を打倒しに行くことではまるで意味合いが異なる。
自ら進んで戦いの場に赴くのは私のような軍人だけでいいのさ。その為に我々がいるのだから。
だから……証明してみせよう! 私達が守ることを任せられるに足る存在であると!)
己へとそう誓えば、それに合わせるように緋色の雷光が戦場を迸る。
バチリと音が鳴るよりも遥かに前、雷光は戦場を走る。
燃えるような緋色の雷光を纏い、撃ちだされる蹴撃の極致。
避けることなど到底許されぬ連撃が瞬く間に兵士の気力を圧し折っていく。
(あの人がフリートヘルムくんを騙して、革命派と戦わせようとした人……)
ラウラとフリートヘルムに呼ばれていた女をみて、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はその視線を少しばかり下げた。
「……前の戦いの時に最後にフリートヘルムくんを撃とうとしたのもアナタ?」
「ふふ、さすがに分かりますか? ええ、そうですよ。
全く、馬鹿だ馬鹿だと思っていましたが、ころりと応じるのですから」
そう言ったラウラは明白すぎるほどに露骨にフリートヘルムを煽っていた。
(フリートヘルムくんは相性が悪そう……
煽られて突っ込んでいっちゃわないように注意しておかなきゃ)
ちらりと視線を向ければ、焔の思った通り、激昂するフリートヘルムが見える。
焔はカグツチを逆手に握りなおすと、思いっきりそれを投擲する。
天高く舞い上がった槍はその形状を解き、極大の炎へと生まれ変わる。
それは父ならば世界そのものすらも焼き払いかねぬ裁きの炎。
打ち下ろされた炎は敵陣を焼き払い、再び焔の手の中に集束して槍の姿に戻っていく。
(あたしは難民の皆にこんな事を望んでいたわけじゃないのに……
ただ、守りたかっただけなのに……)
星鍵を握る『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は状況に思うところがあった。
(でも、だからと言って彼らの想いを無視する訳にはいかないのよね。
だったら、あたしが頑張らないと。彼らだけじゃなく、アルブレヒトもフリートヘルムも……
シキも焔もみんな、あたしが守れるように。そうすれば、きっとこの頭痛も止まるから……!)
視線を巡らせたリアは、やがてアルブレヒトを見る。
「もし、あたしがラウラを不殺出来なさそうだったら、代わりに不殺で倒して欲しいわ。
……無理だけはしないで、お願いよ」
「――シスター、貴女も無理はなさらず」
「……えぇ」
それだけ何とか頷いて、リアは星鍵を振り抜いた。
空間を裂いて斬り裂いた斬撃にラウラがこちらを見た。
「ン。力 求メル。
ソレガ何ノ為ダッタカ。誰ノ為ダッタカ 忘レナイ 大事。
始マリヲ 見失ワナイコト 大切。
我 フリック。我 フリークライ。我 墓守。
始マリ 常ニ コノ胸ニ」
静かに頷く『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)はその視線をフリートヘルムの方へ向けた。
ぎらつく怒りは騙されていたことに加えた先程の煽りもあっての事だろう。
「フリートヘルム。君モ 君達モ ソウ。
何故ココニイルノカ。忘レナイデ。罪 滅ボス。
ソレハ 騙シタ ラウラ ケジメツケル 違ウ。
今回タマタマイタ ソレダケ」
「そ、それは……その通りだが……」
ぐぅと唸るのは魔性にも似た質の魔力を帯びていた声だったからかもしれない。
だが、それ以上にフリートヘルム自身の性根が単純だからこそ、正論に弱いのだろう。
「騙サレテシマッタコト。鵜呑ミシテシマッタコト。ソノ自分自身 ケジメ ツケルコト」
「うぐぐ……あ、ああ……分かってる。分かってはいるが……」
「再度ノセラレナイ。イイヨウニサレナイ。迂闊シナイ。ソレコソ 罪滅ボシ。
ラウラ 言葉ニヨル惑ワシ 注意」
「……あぁ、そうか、俺達はまた……」
「……やっぱり馬鹿は駄目ですね。
乗せるのも簡単ならそれを言い聞かせるのも単純なのですから」
更なる挑発が聞こえるが、フリークライがフリートヘルムに視線を向けて首を振ってやれば、彼は小さく頷いた。
「できれば一般の人たちが銃を手にするとか、してほしくないんだけどな」
そう呟くのは『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)である。
此処にいる面々はフリートヘルム隊含めてどちらかというと戦場に出る立場の者ばかり。
その言葉を咎める者もいない。
(普通の日常を送る人たちの手が握るのは、田畑を耕す道具だとか、何かを作る工具だとか、
料理を作る調理器具だとか。そういうものでいいんだよ。
戦うのは、軍属や私たちの仕事でいいんだよ。けれど、この熱は止まらないんだろうな。
せめて命を落とす人が少なく済めばいいんだけどな)
目を閉じれば思い出す彼らの声に言葉を飲みこんだ思いは、ひと先ずは戦場へ向けるべきか。
「火力は劣るかもしれないけれど、当てることなら負けはしない」
叩き込んでいく弾丸はその確かなコントロールセンスもあって仲間達を避けるようにして敵軍に降り注ぐ驟雨となる。
「――自衛手段として銃を求む、正しい
――血溜まりを踏み、彼方を見据え、平穏を望む
――素晴らしい事だ、人間性に溢れている
――私も貌を晒さねば!」
そう『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)は嗤う。
「其処の――名前は確か、フリートヘルムだったな?」
振り返り赤毛の男――フリートヘルムを見やれば、青年は驚いたようにオラボナをみる。
「貴様の隊は遠距離近距離とバランスが良く視える。
私が奴等をエスプリ効果で引き付ける故、其処を叩くのは如何だ?」
「あ、あぁ、分かった」
驚いた様子を見せつつも、我に返ったようにフリートヘルムが頷いた。
「――ひとつの戦争とでも表現すべきか?
――さて。此処に在るのは肉の壁、果ての絶壁。
――貴様等、私を砕き、斃すならば『今』なのだよ」
静かに立ち、ゆらりと前へ。
その姿に警戒を露わに敵兵が銃口を向けてきた。
「行くぞ!」
それに合わせるように、フリートヘルムたちが声をあげた。
一斉に魔弾や銃弾が飛び交い、弾幕が終わるのに合わせて前衛が吶喊していく。
(弾幕が厄介だ……後方まで行きたいけど……)
握りしめた愛剣ごと、『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は一気に走り出した。
「無理やりにでも、こじ開ける――」
飛び込んだ端から一気に斬撃を走らせる。
鮮やかに、打ち込む斬撃の乱舞は美しささえ感じる軌跡を描きながら前衛を構成する対物ライフルを持つ兵を斬り伏せて行く。
「攻めるにしても、守るにしても。『力』が必要となるのは毎度の事だ。
力無き者を待ち受けているのは、淘汰という名の地獄だからな」
そう声に漏らすのは『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)である。
「そして、力があるならば選択が出来る。その選択に不安を抱くのならば、先駆者達が導けばいい。そうだろう?」
「……そうだね。難民の人たちが武器を取る。
本来ならしなくていいはずの戦いをする。
……悲しむなんてしないよ、そう決めたんだろうから」
そういうシキは、それでも胸の内に思うところはある。
(……ただ、和ってやつが死体の向こう側にあるなら、どうにもヤな話だとは思うけれど)
握る剣に、本の僅かに力が籠った。
「さて、私もそろそろ始めようか。まずはウォーミングアップといこう!」
あまりに過剰な霊気が溢れだして、その美しい銀色の髪が長く伸びていく。
ふわりと髪を躍らせ、汰磨羈は一気に戦場を駆ける。
「厄介そうな者から狙うのは常道だ」
側面への迂回より放たれる砲撃の如き斬光。
陰陽の狭間より放出された斬撃が戦場を貫いていく。
●
戦いは順調に進んでいた。
「自分の仕事もこなせないなんて、グロース師団の名に相応しいじゃない」
リアは仲間達の攻防を葉為に収めながら、眼前の女へと声をあげた。
「――それは、どういう意味かしら?」
ラウラの声に微かな不快感が帯びていた。
「だってそうでしょう? 貴女達の大将のグロースも、やる事なす事全てあたし達に阻止されてる無能者。
貴女にぴったりの上司って事よ!」
「ふ、ふふ、ふふふ。安っぽい挑発ですね――えぇ、ええ全く!
ですが、それでも閣下を侮辱するなど許されない!」
激情を露わに、ラウラが引き金を弾いた。
一斉に放たれた弾丸はリアの身体を縫い付けるようにばら撒かれた。
だが籠められた毒性も、凍り付くような軌跡も、それらによって齎されるはずの大量の出血も。
リアの身を穿つには至らぬ。
「あたしの精霊の加護、舐めないでよね!」
そう言い切った啖呵に、彼女の激情が増していくのが目に見えてわかった。
(いつまでも付き合ってあげるわよ、ラウラ!)
握りなおした愛剣が淡く輝き、その身に刻まれた猛攻の傷を癒していく。
「人が傷つくところってあんまり好きじゃないんだよね」
そう呟いたハリエットはその銃口をフリートヘルム隊がいる方へ向けた。
そのまま、静かに引き金を弾いた。
順調とは言え、未だに絶対的優勢とはいかぬフリートヘルム隊へと齎された鋼の驟雨は、まさに恵みの雨である。
支援砲撃となった強かなる狙撃手の猛攻に怯んだ師団兵めがけて、フリートヘルム隊が攻めかかっていく。
「さて。いつまで手を拱いている? 私を砕くにはあまりにも足らぬ」
オラボナはフリートヘルム隊を引っ張るようにして前線へと行く。
無理矢理に後衛まで伸びようとしていたシキの傷は多く。
オラボナは彼女へ向けられる攻撃を庇いながら、前線を切り開くフリートヘルム隊を連れて進む。
その戦果は確かなもので、結果として後衛と言える場所まで到達するのも容易となりつつあった。
続けて馳せる汰磨羈は未だに数名残る前衛を捨て、一気に後衛へと走り抜けた。
「人数と装備は十分に確保しているようだが。さて、その『中身』の質はどうかな?」
バルカン砲を携える兵士がそんな汰磨羈を追うように銃口を向けるも、既に遅い。
すらりと抜れた妖刀『愛染童子餓慈郎』は超高速で振り抜かれていた。
強烈な牡丹の花を散らせる斬撃はバルカン砲を真っ二つに斬り溶かす。
目を瞠るその兵士へも追撃のような斬撃が見舞われるも当然というべきか。
「良い腕だね! だがこちらも雷速必中! 負けてやらない!」
刹那、マリアは飛翔する。
リアへと弾丸をぶちまけ続けているラウラへと辿り着けば、そのまま燃えるような緋色の雷光が出力を上げた。
「くっ――いつの間にここまでの道が!?」
「――行くよ、極天式電磁投射砲『緋雷絶華』!!」
横なぎの蹴りより始まった蹴撃の乱舞はその軌跡を鮮やかに戦場に照らしだす。
●
「――流石に拙いですね、これは」
強烈な弾幕が勢いを弱め、前線が押し上げられつつあるとき、遂にラウラからそんな声が漏れた。
「グロース閣下を愚弄する愚かな女め。貴様を殺すのはまた後程とします!」
そういうと、ラウラがその翼を大きく羽ばたかせた。
「逃がさないよ!」
刹那、マリアは空へと飛翔する。
落雷を逆再生したような動きで駆け抜けたマリアはラウラの頭上から踵落としを叩き込む。
そこより始まる緋色の雷光の連撃はラウラの精神力を大きく削っていく。
ふらふらと飛ぶラウラは、そのまま危機回避でもするように着陸しなおした。
「そうだよ、逃がすもんか!」
続けて焔が弾けるように飛び出した。
圧倒的な速度を以って馳せる槍撃が逃亡に失敗した女へと痛撃を叩き込む。
「は、はは、全く。ここまで愚かだと笑ってしまいますね、フリートヘルム」
不意に、ラウラがそう言って笑う。
「我々に利用されて、次は革命派に利用されるなんて。
全く、馬鹿というのは直ぐに利用されて、迷惑ばかりかけるのですから!」
「ン アレモ 同ジ フリートヘルム達 攻撃サセテ 逃ゲル隙 作ルツモリ」
嘲るような言葉に回復の片手間でフリークライが言えば、苛立つようにラウラが舌打ちする。
それが思惑を証明していた。
「――お前たちもです、ローレット。
愚かな民衆に武器を与えれば暴発する。
そんな簡単なことも分からないのですか?」
「私達はその責任を負うのだ――そして是が、責任と覚悟を乗せた力の行使だ。とくと味わえ!」
ラウラに応じるように、汰磨羈は踏み込んだ。
爛爍牡丹より紡がれる乱撃はラウラの身体をパワードスーツの上から削り落としていく。
「悪いけど、貴女の仕事はここで終わりだよ。
飛んでいるなら撃ち落とすだけ、陸にいるのなら猶更だ」
静か似告げるハリエットの照準が真っすぐにラウラを捉えている。
あとはもう、引き金を弾けばそれだけだった。
真っすぐに放たれた弾丸は、躱すことなど許すことなく、削れたパワードスーツを抉りその肉を貫いた。
「性能のいい武器ってのは厄介だ。
難民キャンプに持ち帰っても使いこなせると思えないし、破壊させてもらうよ」
剣身へ魔力を籠め、シキはラウラへ向けて振り払った。
その身に宿る魔力が美しき輝きを帯びて斬撃を形作り、一気に戦場を駆ける。
輝くアクアマリンにも似た輝きの閃光はラウラのライフルを撃ち抜き、連撃に熱を帯びた銃身を圧し折り、その肉体にまで傷を刻む。
「な、何!? くっ――」
驚愕してみせたラウラが視線を武器庫の方へ。
這う這うの体で走り出そうとする彼女に迸る雷光。
「ぐぇっ!?」
「……これで良かったんですね、シスター」
ラウラの鳩尾へとめり込んだ拳をゆっくりと退けて、アルブレヒトが小さく呟いた。
リアが頷くのを見て、彼がほっと息を吐いた。
●
戦いが終わり、武器庫から大量の兵器が持ち出されていく。
「毎夜、殺した人の顔が夢に出てくる。
彼らにその一生を送る覚悟ができるなら武器を取るとのいいんだろうね……」
搬出していく歯車兵と民兵紛いの難民たちを見るシキは小さく呟いた。
ふと雨音を感じて、空を見上げた。
あぁ、やっぱりそれは幻聴で、振り払うようにシキは頭を振った。
「しかし連中の火力、弾幕、共に凄まじい。
難民に『持たせる』には少々刺激的か? 世も末だな!」
十分すぎるほどに浴びた数多の弾丸を想起し、オラボナは嗤っている。
真っ赤に弧を描いて、ここより先の物語に想いを馳せるかのように。
「ン。 ムシロココカラ。
民達 武器トドウ向キ合ウカダ」
それにフリークライもまた頷いて見せる。
恐るべき凶器を握り締めた、奮起する無辜の民の向き合い方を墓守は静かに見守っている。
「銃は手に入ったけど……難民の人達に渡すのかな」
運び出される武器を眺めながら、焔は思わず声に漏らす。
(わかってはいるんだ、ボク達だっていつも守れるとは限らない。
そんな時のためにも戦うための力は必要なんだって。でも、1度でもこれを使って戦ったら、
全部終わって生き残ったとしても、きっと何かが変わっちゃう、元には戻れなくなっちゃう)
「なるべく使わなくても済むように見ててあげてリアちゃん。
……アルブレヒトくんも、アリカちゃんもいるしやりたい事があるのも知ってるから、
本当はあんまり危ない事はして欲しくないんだけど、お願い」
焔の言葉を向けられた2人は、静かにそれに応じる。
「燃え上がりつつある炎を、制御することは難しいことは、僕も知っています。
僕の場合とは、全く状況が違います。
それでも彼らの気持ちがわかる故に、ここまで来ましたが……」
小さく、青年が呟いた。
抑え込んでいたであろう感情の言葉は、彼がアリカの為に暴走した時のことを思い出しているのだろうか。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
こんばんは、春野紅葉です。
●オーダー
【1】グロース師団の撃破
●フィールドデータ
スチールグラードに存在する帝国陸軍武器保管庫の一つサイト・アハトアハトの一角。
重火器類の搬送経路と思しき小型の架線が地面に敷かれている以外、普通の地面です。
●エネミーデータ
・『氷滅の弾丸』ラウラ
仮面で顔の左半分を覆った女性軍人。飛行種。
仮面の下の目はどうやら義眼の類のようです。階級は大尉。
蒸気機関を利用した狙撃銃は特殊技術でも利用しているのか、
連射性能に秀でているようです。
【凍結】系列、【毒】系列、【出血】系列のBSを駆使する他、
連射性は【スプラッシュ】や【連】で再現されています。
・グロース師団兵×20
軌道性、速度、膂力強化の性能を持つパワードスーツに身を包んだ軽装歩兵です。
全員が重火器を装備しています。
ショットガンを装備した近接タイプが8人。
肉薄して無理矢理弾丸をぶっ放して攻撃してきます。
対物ライフルを装備した近接タイプが6人。
近接距離から単体攻撃や【貫通】攻撃で攻撃してきます。
マシンガンやバルカンを装備した中~遠距離タイプが6人。
遠距離から数多の弾丸をぶっ放して弾幕を形成して攻撃してくるでしょう。
●友軍データ
・『優心雷火』アルブレヒト・アルトハウス
ラドバウの闘士。善良で正々堂々とした戦いをする模範的武人と評されていました。
下記3つの依頼にて焔さん、リアさんらと交流を持ちました。
今回は食材の一環としての他、難民の自衛のためにも武器は必要と考え参加しました。
ステータスはHP、物神攻、命中、防技などがやや高め。
【痺れ】系列、【火炎】系列を使う近接~中距離レンジのアタッカーですが、
やろうと思えばタンクの真似事も出来そうなスペックではあります。
ラドバウ闘士だけあり、ほっといてもある程度の戦果をあげるでしょう。
何かあれば指示を与えてください。
【参考シナリオ】
<総軍鏖殺>きみが生きてくれればそれでいいのだからと
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8441
<総軍鏖殺>この命が生きるのならばそれがいいのだからと
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8653
<大乱のヴィルベルヴィント>誰が為の贖罪なりや
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8778
・『棘朱の剣』フリートヘルム
赤茶色の髪の青年。
よく言えば素直で真っすぐ、悪く言えば思い込みが激しい馬鹿。
前段シナリオ『<大乱のヴィルベルヴィント>誰が為の贖罪なりや』にて革命派に降伏。
今回は罪滅ぼしとして部下ともに参加しています。
本能型の戦術指揮センスを持っています。
獲物は剣身に多数の棘が着いた朱色の剣。
相手の武器をひっかけたり、
斬った所をずたずたにしたりとかなり厄介そうに見えます。
【出血】系列、【致命】、【火炎】系列のBSを持ち、
その攻撃には【多重影】、【邪道】が籠められています。
・フリートヘルム隊×10
フリートヘルムの麾下戦力です。
クレイモア兵や斧兵、槍兵など近接系が5人。
ドルイド風の魔術師や猟師のような銃兵が5人。
基本的にはフリートヘルムの指揮に従い行動しますが、
イレギュラーズの指示にも従ってくれます。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
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