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シナリオ詳細

<ジーフリト計画>雪だるまと共闘なのだ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『麗帝』ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズが敗れ、新皇帝バルナバスの即位からしばらくが経つ。
 鉄帝は6つの派閥に分かれ、それぞれの思惑に沿って立ち回る。
 先帝ヴェルスの治世に戻さんとする帝政派。
 南部戦線の英雄ザーバ将軍率いるザーバ派(南部戦線方面軍)。
 我関せずと政治不干渉を貫くラド・バウ独立区。
 ギア・バシリカを中心に民の救済を願う革命派。
 ノーザンキングスに抗する戦力を持つポラリス・ユニオン(北辰連合)。
 空浮かぶアーカーシュに拠点を持つ、独立島アーカーシュ。

 現在、それらの派閥のいくつかが新皇帝派とフローズヴィトニルの封印を巡る地下道での攻防を繰り広げている。
 それと同時に、別所で大きな動きがみられる。
「新皇帝派は、各地の本拠地襲撃を画策しているようです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が現状について説明する。
 ただ、すでに各派閥も新皇帝派の動きは察知しており、警備、防衛網強化によって事なきを得ている。
 ザーバ派は敢えて敵の動きに乗った作戦に出ていたようだった。その作戦が成功するかは作戦次第といったところ。
 帝政派としても、この新皇帝派の動きを利用して作戦を展開したいところ。
「帝政派の長であるバイル・バイオン宰相はザーバ派との会談を望んでいます」
 アクアベルが言うように、帝政派はザーバ派との共闘を望んでいる。
 新皇帝派の眼は地下道攻略戦の方へと強く向いている状況もあり、バイルは秘密裏にザーバ派と接触を画策しているのだ。
 ただ、新皇帝派も広域に部隊を展開している。もちろん、各派閥の動きを察知する為だ。
 それらに、バイルを襲撃されるわけにはいかない。
 途中にいる新皇帝派の排除は必須であるのだが……。
「そこに、まさかの頼もしい存在がいてくれました」
 アクアベルはこれ以上なく笑顔を浮かべる。
 行ってみればわかりますと、彼女は敢えて深くを語ることなく、メンバー達を現地へと送り出すのだった。


 『ゲルトフラウ地帯』。
 帝政派とザーバ派の勢力圏の中間地点に存在するこの地域には、かつて古い路線が通っていたという。
 それもあって、ザーバ派バイル宰相はボーデクトンより車両で移動をしているという。
 その途中でこのゲルトフラウ地帯を通ることになる。
 路線地帯や林地帯と合わせ、ここには平原が存在している。
 無論、冬の鉄帝だ。辺りはどこかしこも雪が積もっており、徒歩では移動も一苦労する場所である。
 そんな場所を進んでいたイレギュラーズであったが……。
「あれは……」
 イズマ・トーティス(p3p009471)は平原にいる新皇帝派の小隊と対峙する幾つもの白い物体を視認する。
 それらは……、過去、幾度かローレットが雪合戦を繰り広げた雪だるま達だった。
「少し見ないうちに、この地も物騒になったものである!」
「我らがいる限り、この平原は譲らないのである!!」
 雪だるま夫婦が鉄帝軍人を牽制しており、平原の明け渡しを許さない。
「「その調子である!」」
「「負けるななのだー!!」」
 混沌とする鉄帝にあって、雪だるま達の姿は何とも和む。
 しかも、鉄帝軍人すらも圧倒する状況は実に頼もしい。
「なんなんだ、この雪だるまは……!?」
 新皇帝派、女性中尉が困惑する。雪だるまのいる平原では、武力でねじ伏せようとしても、雪だるまらが尋常でない力を発揮してくるのだ。
「これでは、ヴェルクルス中佐に申し訳が……」
 そこに現れる帝政派のイレギュラーズ。
 ただ、軍人らも戦場外にいた雪だるまの子供達へと銃を向けて牽制する。
「動くな。こいつらがどうなってもいいのか!?」
 任務遂行の為なら、軍人達はやりかねない。人外の雪だるまなのだから、相手も躊躇などないだろう。
「なら、雪合戦で決着はどうだ?」
 そこで、イズマがそんな提案を持ち掛ける。
 ルールは平原の一定範囲内で雪玉、もしくは雪製武具で相手をKOさせること。
 軍人達が勝てば、雪だるま達はこの平原から去る。イレギュラーズも軍人達に手出しはしない。
 雪だるまが勝てば、軍人達がここから去る。それでも暴れるなら雪だるま達が本気になって敵を排除することだろう。
「……いいだろう」
 どのみち、軍人達も例え子供達を人質ならぬ雪だるま質としたところで、力で雪だるま夫婦を排除するのは厳しいと考えていたはず。
 イレギュラーズとしても、雪だるま達に被害なく軍人らを撃退できるなら、それに越したことはない。
「もちろん、俺達も参戦させてもらう」
「当然、我ら夫婦が参加するのである!」
「こちらは小隊全員で相手になろう」
 こうして、イレギュラーズ&雪だるま夫婦vs新皇帝派軍人10名での雪合戦が始まる。
 ルールは平原の一区画上で相手全員をKOすること。
 武器は雪玉、あるいは雪製の武具のみ。
 飛行は自由。事前準備として30分が与えられ、バリケード、トラップの作成も自由だ。拘束系のものはともかく、雪で相手にダメージを与えられる仕様である必要がある。
「ルール破りにはきついお仕置きである!!」
 それは、敵味方問わない。雪だるま夫婦、外で見守る子供達が全力で殲滅してくるので留意しておきたい。
「では、戦闘準備開始なのである!!」
 だだっ広い平原に散開する両陣営は、手早く戦闘準備を開始するのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <ジーフリト計画>のシナリオをお届けします。イズマ・トーティス(p3p009471)さんのアフターアクションも兼ねております。
 帝政派とザーバ派の接触を拒む新皇帝派、ヴェルクルス中佐の手勢を撃退していただきますよう願います。
 
●状況
 今回の舞台は、帝政派とザーバ派の勢力圏の中間地点に存在する『ゲルトフラウ地帯』です。
 雪降る中、新皇帝派を止めねばなりませんが、そこに駆け付けてくれたのは……!!
 もちろん、決着は雪合戦です。
 現場は雪が積もっただだっ広い平原。大岩など障害はありません。雪玉、雪製の武器のみ使用できます。
 バリケード、トラップは自作自由ですが、正々堂々戦う雪だるまの定めたルールにより、敵味方共に30分しか準備期間が与えられません。
 威力は手持ちの武器に準拠しますが、雪玉、雪製武具は1回使用すれば崩れてしまいますので、使いどころが肝心になるでしょう。

●敵
◎新皇帝派軍人×10人
 いずれも鉄騎種、20代の若い軍人達でヴェルクルスの部下達です。
 剣術の得意な女性中尉が率いる小隊です。
 3名が遊撃、6名が後方射撃を得意とします。中尉、遊撃の計4名はブースターを使った飛行が可能です。
 雪合戦ルールには従うようで、主に雪玉を使って攻撃を仕掛けてきます。
 破壊工作にも長けており、トラップも設置するなど油断はできません。
 ルール無用で雪だるまが恐ろしいまでの力を発揮することを知っており、雪を使ってこちらを殲滅しようとしてきます。

○ヴェルクルス
 右目と左腕が機械となった元鉄騎種、憤怒の魔種。新皇帝派。
 片手斧と冷気、雷の術式を得意としています。
 今回は指示のみ部下に与え、自身は別所で活動しているようです。

●NPC
○雪だるま夫婦
 全長5mほど。
 旅人の一団で、子供達を引き連れて混沌を旅しているらしいです。
 今回、冬になって鉄帝に戻ってきたところ、国内の混乱に巻き込まれてしまったようです。
 今回は夫婦のみの参戦。しかも、イレギュラーズとの共闘です。
 後方からの狙撃、広範囲に渡るロケット砲、中距離からの乱舞を使い、飛行可能。統率、カリスマ持ちと実に頼もしい存在です。
 なお、ルール無用のプレイは味方であっても容赦ないので、ご注意ください。

○子供達×30体ほど
 全長1.5~2mほど。
 大きな雪だるま夫婦の子供達らしいです。
 上位数名が選りすぐり隊として、野良バトルで活躍しています。
 今回、子供達は親とイレギュラーズの勝利を信じ、戦場外から声援を送ってくれます。
 ルール破りした者には彼等もイレギュラーズ、軍人問わず、徹底的に殲滅に当たってきます。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <ジーフリト計画>雪だるまと共闘なのだ!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
雨紅(p3p008287)
愛星
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
セシル・アーネット(p3p010940)
雪花の星剣

リプレイ


 辺り一面、雪積もるゲルトフラウ地帯の平原。
「がんばるのであるー」
「負けるななのだー!」
 多数の雪だるまに囲まれ、イレギュラーズはせっせと作業を行う。
「「任せるのだ!」」
 その中には、雪だるま夫婦の姿もある。
 この場のメンバー達が行う作業は主にバリケードや罠の作成、それに雪玉づくりだ。
「雪だるまさん達は元気そうで、良かった」
 久々の出会いに、長い青髪の音楽家男性、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は顔を綻ばせて。
「確かに物騒になってしまったが、力を貸してくれたら助かるよ」
「「こちらこそなのだ」」
 雪だるまも、雪合戦を行う戦場、そして子供達を護る為、逆にイレギュラーズへと助力を請う。
「雪だるまさんと共闘ですね! 何だかわくわくしてきたのです!」
 猫の獣種少年『特異運命座標』セシル・アーネット(p3p010940)は雪の上を歩くトナカイのマーシーと共に楽しそうに笑う。
「雪合戦って人間の子供たちがよく楽しんでいるあれですよね。体験できるなんて夢みたいです」
「雪合戦……初めて……。……少し楽しみ……」
 黒髪でオッドアイの片方を隠す『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)も日傘を差す虚ろな瞳の『玉響』レイン・レイン(p3p010586)もまたせっせせっせと雪玉を作り、この後控える戦いが始まるのが待ちきれないようだ。
「ギュッと握ると、手の感覚が無くなってくね……」
 クラゲの海種であるレインは冷たいのに耐性があって平気なはずが、こうして人の体で雪に触れるとそうじゃない気がすることに彼は不思議な感情を覚えていた。
「ふ、雪合戦で勝負を決めようとは……。陰陽鍛冶師改め雪製武具職人の俺の力が炸裂してしまうな!」
 別世界出身の鍛冶師青年、『雪製武具職人』天目 錬(p3p008364)はここぞと力の発揮どころと、雪で何かを量産する。
 同じく、雪だるまと面識のある錬は彼等が鉄帝在住だったことを思い出していた。
 別所ではバリケードや罠の制作が進んでいる。
「まさか雪合戦で勝負とは……」
「ゆ、雪合戦で決着つけようだなんて……シリアスな雰囲気なのにこれでよいのかしら……?」
 顔その者である面をもつ女性型秘宝種、『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)、白い肌とぼさぼさの紫の髪が印象的な『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)はその手伝いを行いながらも、若干戸惑いを覚えていた。
 何より、この事態に困惑しているのは、相手となる新皇帝派の軍人達だろう。
「なぜ、我々がこのような児戯など……」
 女性中尉はぶつくさ文句を言いながらも、部下に指示を与えつつ自らも雪玉を作っていた。
「やァ、まさか新皇帝派軍人と雪合戦することになるとはねぇ。ジン生、何が起こるかわからんものだ」
 【陣地構築】を使い、土嚢を併用しながら塹壕やバリケードを作成するのは、銀髪で両目を隠す商人ギルドオーナー『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
 そんな武器商人は面白そうな戦いだと笑いを浮かべて。
「雪だるま達には感謝しないとねぇ。ヒヒ!」
 本来なら、新皇帝派軍人は命の奪い合いをする相手のはずなのだが。
「まぁ……こ、殺し合ったりするのよりは健全だし…… 多分良いのよね……きっと……」
「武力では周囲を巻き込みかねません。それ以外でひとまず撤退させられそうというのは助かります」
 奈々美の言葉に同意する雨紅はだからこそ、何としても勝ちにいかねばならないと雪玉を強く握る。
 雨紅は少しでも多く雪玉を持てるようにと、小型になるよう強く固めていた。
「ふひ……」
 寒さに身を震わせる奈々美も雪玉だけでなく、罠やバリケード制作と色々立ち回り、柔軟に対応していた。
「準備は30分でしたっけ。どんどん作っていきましょう」
 セシルは雪だるま夫婦にも手伝ってもらい、マーシーにつけたソリへと作った雪玉を詰めていく。
 鏡禍もできた雪玉を妖力の衣で浮かせて持ち運ぶも、載せられない分は後方の仲間に託していた。
「雪玉を喰らっても倒れなければいいんですよね。きっと耐え抜いてみせますよ!」
 ルール把握を間違っていると思われる鏡禍に、皆がルールを説明する。
 攻撃として使えるのは雪玉、雪製武具のみ。準備時間はあるが、戦いの間も雪玉などに加えて罠、バリケードの作成は自由だ。
 それをぶつけ、体力がなくなってKOした者は退場。敵チームがいなくなれば勝利だ。
 なお、雪玉でのダメージでなければ、トラップ、スキルは有効である。
 武器商人もそれに耳を傾け、こくこくと頷く。
「あ、あたしあんまり物を投げるのは得意じゃないけど……。とりあえず、いつも通りに頑張るわ……」
 寒いと身を震わせる奈々美は、早く終わらせてあったまりたいと本音を漏らす。
「時間だ。早々に片を付けさせてもらう」
 早く終わらせたいのは軍人側も同じ。中尉は部下達と共に布陣を整えている。向こうもかなりの数のバリケードが築かれており、おそらくは雪製の弾丸もトラップも十分用意されているはずだ。
「さぁ、ルールを守って真剣勝負だ。この平原は渡さない!」
「兵站を軽視する軍に勝利はない事を職人魂を以て教えてやろう」
「「では、始めるのだ!!」」
 イズマ、錬が意気込んだ直後、戦場の夫婦と見守る子供達が揃って開戦の合図を発したのだった。


 さて、イレギュラーズ側はイズマや武器商人が中心となり、陣地の作成を進めていた。
 武器商人は土嚢を積み、合わせて塹壕まで作っていたし、イズマは雪玉と合わせて切り札となる雪製武器も出来る限り量産していた。
 周囲には落とし穴を中心にトラップもいくつか。これがうまく機能するのを期待したいところ。
「ふふん~♪ 僕とマーシーいつでも一緒~♪ どんな所もスイスイソリで飛ぶよ~♪」
 敵陣から軍人達が飛び出してくるが、それに先んじてセシルがトナカイのマーシーに乗って飛び上がる……が。
「はわわ、やっぱり重いですね」
 それでも、セシルは持ち前の運搬スキルを伴い、トナカイとソリの組み合わせによって運転技術を高める。
 重さもなんのその。空の上をすいすい飛行することで、上空から雪玉を落とすのがセシルの作戦だ。
「いきますよー!!!!」
 先手を取ったセシルはこちらに気付いた軍人達に向け、素早く雪玉を落としていく。
 落とすと言っても、その速さは異様に速く、見事に前線へと出た軍人らに命中していく。
 続けて、破滅の魔眼を開いたイズマが召喚したミニペリオンの群れが前方の雪を巻き上げる。
「ぐああっ!」
 中尉を含む数人が視界を塞がれて足を止めたところで、雪だるま夫婦が叫ぶ。
「「いくのである!!」」
 雪だるま夫婦はイズマやレインの要望もあって、雪玉で弾幕を作ってくれ、さらに軍人らの足止めを行ってくれる。
 これは、攻撃役が動きやすいようにというレインによる配慮だ。
 そのレインは風の精霊と疎通し、自身の見えていない軍人が放つ攻撃がどこから来るかを教えてもらう。少しでも生き残りの確率を上げ、仲間との情報共有に使う為だ。
「援護、するね……」
 加えて、レインは周囲の仲間達の命中力を高めつつ、仲間達の移動する先へと先回りし、雪玉を作って置いていく。
 それを利用していたのは雨紅だ。
 ブースターで飛び上がって前に出てきていた遊撃役の軍人らの雪玉を避けつつ、雨紅は敵陣へと攻め込む。
 同じタイミング、飛行して遊撃役の前に出た鏡禍が妖気の誘いを使う。
「雪合戦というのは正々堂々雪玉をぶつけあうものでしょう? 隠れてないで出てきましょうよ」
 すでに、ダメージを伴わない挑発はルール内と鏡禍は確認済み。
 煽られた軍人らは彼を睨みつけ、雪玉を投擲してくる。
 敵は敵陣へとこちらのメンバーを引きつけようとしており、何らかのトラップを仕掛けているのは間違いない。
 鏡禍は飛行することで地上のトラップは回避しながら、強引に自軍の陣地へと敵を引き込もうとする。
「例え飛んでいても、持てる雪玉の数などたかが知れているからな」
 雪製の絡繰兵士に自らを守らせていた錬は練達中位式に雪玉づくりを続行させつつ、飛ぶ遊撃隊に狙いを定める。
 素早く飛び回る相手だが、仲間の援護を受けた錬は落ち着いて式符によって鍛造した雪鏡を投げつけていく。
「な、投げるのは得意じゃないけど……魔法に乗せて飛ばせば……」
 そんな仲間の戦いを後方で見ていた奈々美はいつもの戦いと同じように、援護射撃を行う。
「自慢じゃないけど、雪玉ですらうまく投げられないから……」
 浮遊する奈々美は魔力に乗せ、雪玉を撃ち出すことに。
 魔力を使い、エネミーサーチで感知した雪の弾幕を展開していく奈々美。
 今は彼女も仲間と連携して攻めつつ、敵陣営が崩れるのを待つ。
 そこで、戦場を広域俯瞰していた武器商人も低空飛行して。
(もらうよ、海月のコ)
 ハイテレパスでレインへと呼び掛けた武器商人は雪玉を拾いつつ、破滅の呼び声を上げる。
 すでに、遊撃隊は鏡禍に気をとられているが、後方の狙撃役が距離をとって離れたのをみた武器商人はイズマと共にその追跡を行う。
「迎撃、てええええい!」
 叫ぶ女性中尉の指示で、一斉に雪玉を投擲する後衛陣。
 それらに向け、雨紅は地上から攻め入る。
「後方射撃の敵は雪玉補充もしているはず」
 敵陣へと突入する雨紅は敵の出方も気にするが、それ以上に地上から進むことで罠の存在を強く気掛ける。
 とりわけ、雪に残る痕跡ある箇所は、罠が仕掛けられている可能性は高いと踏む雨紅。
 だが、敵も軍人。
 敢えて跡を残して本命の罠を隠していた。
 どさりと落下する雪。仕掛けられた落とし穴に足をとられそうになった雨紅はアクロバティックに避けてみせる。
「これでも、身軽さには自信があるので」
 雪原を舞台に、紅い舞を躍る雨紅。
 秘宝種である彼女は自らのレアリティを見せつけ、軍人達の注意を引こうとする。
「敵の破壊工作は見過ごせないな」
 イズマはそれらの罠に対処しつつ、敵陣を進んでいくのである。


 準備の前は、何もないだだっ広い雪原だった。
 ただ、30分という僅かな準備時間の間に、多数のバリケードが設置されて障害物が増えたことで、見通しがかなり悪くなっている。
 戦場となったこの雪原で繰り広げられる主な交戦箇所は大きく2か所。両陣地の中央と新皇帝側奥だ。
 中央は鏡禍が遊撃3体を抑える。
 宙を舞う両者のこと。雪玉もまた空を飛び交う。
 遊撃軍人を、鏡禍は妖気の誘いで気を引いて。
「倒れなかったら負けないのですよね。でしたら、耐えるのは得意分野です!」
 とにかく、耐えることが肝要と鏡禍はしばらく敵の猛攻に耐え続ける。
 敵陣の奥へと攻め込むメンバーは女性中尉の指示で投げつけてくる後方射撃役による雪玉の嵐に立ち向かう。
 武器商人が呼び声を上げて1人、続いて2人と吊りだし、引きつけに当たる中、雨紅、イズマが接敵していく。

「「負けるななのであるー!」」
 子供達の声援を受ける雪だるま夫婦が敵陣へと投げつける雪玉は現在、遊撃役へと浴びせかけられる。
 それらの雪玉の多くは、トナカイを駆るセシルによって運ばれたものだ。
 鏡禍へと雪玉を叩き込んでいた軍人側の遊撃役だが、他メンバーにとってはいい的だ。
 錬は幾度か投げつけていた雪鏡で、冷静に狙いすまして1体を撃ち落とす。
 その錬に続き、仲間に向けて飛ぶ雪玉に当たらぬよう避けるセシルがマーシーと共に空から攻め、敵の側面や背後から速球を投げつけて撃墜してみせた。
「ふふん、どんなもんですか! 僕達に敵うと思ったら大間違いなのです!」
「「我々に敵などないのだ!」」
「雪だるまさんたちもそう言ってます。悪い奴らにはバチがあたるのです!」
 雪だるま夫婦と協調し、セシルはドヤ顔で軍人へとへと言い放った。
 無論、雪だるまの得意な分野というのはあるが、そうせざるをえなかったのは軍人達。
 ルール上で勝つしか彼等が任務を遂行する手段はない。
 躍起になって仲間を倒そうとする最後の遊撃役の頭上に、奈々美が一気に雪玉を落とす。
 落下する雪玉には魔力が籠められており、連続して叩きつけられることで軍人の体力を完全に削ぎ、雪上へと叩き落とす。
「は、販促にならなくてよかった……。うぅ……」
 雪だるまの子供達が倒れた軍人を戦場外へと運び出すのを横目に見ながら、奈々美は仲間と共に敵陣へと向かう。

 遊撃役が全て墜ちれば、自軍メンバーは一気に敵陣へと攻め込む。
 先行していた雨紅やイズマが侵攻に邪魔となる罠は排除しており、後続メンバーも比較的容易に進むことができていて。
 敵陣はすでに、武器商人が全ての狙撃役の攻撃を浴びている状況。
 自陣から攻め入ったメンバー達が見たのは、近づいてきていたその1人を雨紅が一気に攻めていた状況。
 先程、錬に作ってもらった雪製の細剣を構えつつも、雨紅は渾身の一撃で雪玉を投げつけて。
「フェイントってこうでしょうか」
 勿論、効果は抜群。ぶつけられた軍人は気を失って崩れ落ちた。
「遊撃隊があっさりと……」
 女性中尉はままならぬ戦況に苛立ちつつ、号令を上げようとするが、すぐに武器商人の呼び声や雨紅の舞で気をとられて布陣すら立て直せない。
 一方、イレギュラーズ側はレインが軍人の雪玉にさらされる仲間達の回復をと、聖体頌歌を響かせる。
 合わせて、レインは合間に作った雪玉を置いていくのも忘れない。
「くる……」
 定期的に、態勢を整えようとする女性中尉。
 しかし、統制は明らかにこちらが上。
「「一気にいくのだ!」」
 雪だるま夫婦が時間差で敵陣へとロケット砲を叩き込む中、錬が正面から式符で作った雪製の斧で攻撃を仕掛ける。
「雪製武具同士の激突なら負けるはずがないからな!」
「ぐっ……!」
 錬の一撃に大きく怯む狙撃役。
 敵は雪の弾丸や砲弾を使いはするが、直接交戦する為の武具は用意していない。
 得意の剣術を活かせず、支援を中心に動かざるを得ない彼女の前で、イレギュラーズの攻勢は一気に加速する。
 妖力の衣を使った鏡禍が雪を高く蹴り上げ、高く雪を舞わせたところで、夫妻の雪玉連撃が1体を倒す。
 鏡禍もまた相手の視界を奪った隙に相手の顔へと雪玉をぶつけて卒倒させていた。
「まだまだ戦えます!」
 セシルは落ちて割れた雪玉を再利用して丸め、敵陣へと投げ返す。
 傍ではレインが錬の作った雪製傘を握る。
 雪製とはいえ慣れた手つきで雪玉を防ぎながら、レインは手前の敵へと斬りかかっていた。
 続き、イズマが纏めて敵陣を捉えて。
「これで決める!!」
 レインの傘が崩れ落ちるのを目の当たりにし、イズマは雪製武器が一度しか使えないことをは再確認して。
「……ならば、その一撃で最大威力を叩き込めば良い!」
 自らの能力を最適化させたイズマは限界を超えた速度を居寤清水で一瞬だけ高めて。
「俺達が勝つ! 大人しくここから立ち去ってくれ!」
 敵陣を大きく刃で薙ぎ払ったイズマ。ここで2人が倒れ、軍人側は総崩れに。
「貴様ら、それでも鉄帝軍人か!」
 自らを含めて部下に喝を入れようとする女性中尉に、鋭い雪製の糸で裂いた残る最後の狙撃役を倒した武器商人が告げる。
「『相手全員をKOすること』、これが勝利条件だというのなら……キミたちの勝利は、『永遠に無い』」
 煽りながらも、的確な指摘をする武器商人は、敢えて体力を回復してもらわなかったことで、復讐の炎を燃え上がらせて至近から1体を叩き伏せる。
『好機だよ、刑天』
『了解です』
 呼びかけを受け、ここぞと飛翔する雨紅。
「なっ……!」
 同じタイミングで飛び上がろうとした女性中尉がそれに驚く。
 確実に狙いを定めた雨紅が雪製の細剣を一閃させる。
「これで……、終わりです」
「…………!!」
 刹那に意識を奪われた女性中尉はそれ以上舞い上がることはなく、雪の上へと墜ちていった。
「「やったのだーーー!!」」
「「勝ったのである!!」」
 戦闘不能に陥った軍人達を運んでいた雪だるま達も、親とその共闘相手の勝利に歓喜の声を上げたのだった。


 決着はついた。
 今回の戦いはイレギュラーズと雪だるま混合チームの勝利に終わった。
「次は、命の奪い合いだ。覚悟するのだな」
 ここで争ってもルール破りとなって分が悪いと女性中尉は踏んだのだろう。
 気絶したままの部下を連れ、中尉は雪積もる平原から去っていく。
 それを見届け、イレギュラーズ達は改めて勝利を喜ぶ。
「「お疲れ様なのだ」」
 労いの言葉をかける周囲の子供達。
「勝てたのだ」
「イレギュラーズのおかげなのだ」
 その雪だるま夫婦も共闘相手のメンバー達を労わる。
「雪合戦、楽しかったです」
 楽しめて勝敗がつくならそれに越したことはない。だって、命を奪わないのだから。
 鏡禍は、この対戦方式を生み出した雪だるま夫妻が天才かもしれないと絶賛する。
「「それほどでもないのだ!」」
 ドヤる夫婦の傍らで、奈々美は思いっきり体を震わせ、くしゃみしてしまう。
「……あ、あったかいオフロに入って温まりたいわ…… うぅ……」
 長らく雪上にいれば、体が冷えてしまうのはやむを得ないこと。
 本当に風邪を引いてしまう前に、メンバー達は雪だるま達と別れて近場の宿泊施設へと向かうことにしたのだった。

成否

成功

MVP

雨紅(p3p008287)
愛星

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは敵陣へと攻め込み、女性中尉を撃破した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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