PandoraPartyProject

シナリオ詳細

酒場の死闘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●美味なる酒
 美味い、という事の意味を知った。
「――流石だなマスター。また腕を上げたんじゃないか?」
 ここは『とある酒場』である。今の所名を伏せさせてもらうが、ここは酒好きにとっては中々に好評を得ている名店であり――今、酒を口に運んだ男もソレを目当てにやってきた訳だった。
 されど店主は称賛の言葉にも口も開かない。ただ黙々とグラスを拭いて、厨房の方へと歩いていくだけだ。それに対し不愛想だな、とは思わない。ここの店主はそういう人だ。悪気がある訳でもなんでもなく只管なる無口。
「……ま、それもいいものだ」
 あれやこれやと口煩すぎるよりも、よっぽど酒の味を楽しめるのだから。
 再びもう一口。しかし今日はどうやら客が少ないようで、己の他には誰もいない。なぜだ? と思いはするが。
「こんな日も偶にはあるか……とっ?」
 軽く思考を流せば――その時。店主が皿を一つ。男の前に差し出して。
 乗っていたのは小さな牛肉。ステーキだろうか? 綺麗な焼き跡の付いたそれは、傍目にはとても美味しそうだ。ただ問題があるとすればこんな物を注文した記憶はない事で。
 マスター? と言う視線を男が向ける。だが案の定彼は何も答えない。グラスを拭いて、そのままだ。
「まさか……」
 サービス、だとでも? まぁ無口で、些か人となりが分からない店主ではあるが――後出しで代金を請求する様な人ではない。これは彼なりの厚意なのだろう。ならば感謝して頂くのみ。
 随分とサービスも良い事だ。男は皿に乗ったその肉を、ゆっくりと口に運んで――

 意識がぶっ飛んだ。

 あ、そういえばここの店主って。あ、あ――これやヴぁ――

●大敵なる料理
「知ってますか! ここ、酒場『燃える石』の店主さんってメシマズさんなんですよ!!」
 イレギュラーズ達を連れて、先述した『とある酒場』の前にまでやってきたリリファ・ローレンツ(p3n000042)は何やら失礼な事をほざいていた。が、事実ではあるので仕方がない。
 燃える石。それは堅気の者達ではなく――所謂かな無法者、という言葉が似合う者こそがよく利用する酒場の事である。店主は無口なれど彼に任せた酒に外れ無し、とまで噂される人物で酒好きからは絶大なる信頼がある……のだが。
「メシ……マズ、なのか? え、と……まぁうん、それで?」
「はい。それで――実は少し前から、ここの店主さんが新作料理をお客さんに無償で振舞うというテロを開始したらしくてですね。最近被害者が続出中なんです。皆さんにはそれを止めて頂こうかと思いまして」
 テロ言うなしテロ。メシマズの自覚が店主にあるのか、ないのか。それは分からない。
 だが被害は依然として止まらないらしい。今の所はまだ店主の料理の腕を知らない者が食したり、店主の圧に負けて料理から逃れられない者達だけの被害に留まっているが、このままではどこまで拡大するか分からない。故に。
「今日! 皆さんで店主さんを満足させてもらいまっす!! 具体的に言うと皆さん全員料理を食してください!! 逃げないでください。残さないでください! これはれっきとしたローレットの依頼なんですから!!」
「どこの誰からの依頼なんだよ――ッ!!」
 えっへん、という顔をしているリリファ。答える気はないらしい。
 まぁいい。幾らメシマズの料理と言えど死ぬことはあるまい。喉元過ぎれば熱さを忘れる、だ。速攻で完食してしまえば何も問題な……
「あ。それと偵察兼生贄がてら、ギルオスのあんちくしょうを焚き付けたら『ハハハ。食べれない料理なんてある筈ないじゃないか。酒場でしょ? 大丈夫大丈夫すぐ戻ってくるよ!』とかほざいたので――十分前に突入してもらいました!」
 結果があれです! とこっそり窓から覗き込んでみれば――テーブルの上に出されたスープらしき『何か』を前にギルオス・ホリス(p3n000016)の手が止まっていた。顔は笑顔だが死んでいる。笑顔を張り付けて死んでいる。どんなスープなんだアレ。速攻完食は難しいとでも? 一口入れた段階からやヴぁいとでも? あ、スープが動いた! なんかやばいぞアレ!
「――見なかった事にしよう。ところで、新作料理作りになんて、なぜハマって……?」
「うーん。これはあくまで噂なんですが、この前誰かに持たせた新作の唐揚げが全部なくなった事に大変ご満悦だったのがスタートだったとか。ま、噂なんですけれど」
 とにかく頑張ってくださいね! 私、信じてます!
 そう言って強引にイレギュラーズ達を入店させる。予約は入れておいたから、と。

 ここは『燃える石』
 待ち構えるは店主。逃れられぬは閉められた扉。
 ――地獄へようこそイレギュラーズ。

GMコメント

 グッドラックッ!!

■依頼達成条件
 料理の完食。逃げちゃ駄目だ。

■酒場『燃える石』 店主。(マスター)
 店主、もしくはマスターと呼ばれる本名不明の人物。
 無口。ひたすらに無口。「……」や「――」の表現すらない程に無口。
 酒の選定に関しては類稀なる評価があるが、一方で料理に関しては遠回しに言っても、とてもよろしくない。程度はその場その時個人の嗜好で変化するが、一般的に言う「美味しい料理」にはほぼ確実にありつけないと思うべきである。燃える石にはお弁当もあるが【お察しください】
 名状しがたき外見の料理が出て来る事もあれば、外見は普通の料理が出てくる事も。不味さも卒倒する物からまだ「不味い」の範疇に留まる物まで。天に祈ろう。

 八人分も作ればきっと満足してくれることでしょう。
 だから残しちゃ駄目だ。戦うんだ! 燃える石常連たちの平穏は君達に掛かっている!
 頼んだぞイレギュラーズ!!

■その他
Q:一つの料理を複数人で食べてもいいですか?
A:全く構いませんが被害が増える恐れもあるので慎重に!!

Q:持ち込んだ香辛料とか追加したい。
A:やるが良い……ただし店主はバレぬようにな……!

Q:この料理、動くぞ!!
A:倒せ!! 口の中で、倒すんだ!!

  • 酒場の死闘完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年09月24日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー(p3p000244)
緑色の隙間風
エマ(p3p000257)
こそどろ
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
巡理 リイン(p3p000831)
なぐるよ!
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
かくて我、此処に在り
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
道頓堀・繰子(p3p006175)
探索上手

リプレイ

●難易度イージーだと思った?
「胃袋ベリーハードやないかこんな依頼!」
『怪猫』道頓堀・繰子(p3p006175)は思わず想像しただけで腹が不調になってきそうであった。ていうか依頼か。依頼なのか本当にこの、これ。誰が出した依頼なのだ本当に!
「ハッ! さては店主、店主でしょ! ねぇちょっと! せめて眉の一つくらい動かしてくださいよ! こっち向いて! 目を・見て・下さいよ――!!」
 調理場へと向かう店主。その恐ろしき背に言葉を投げかける『こそどろ』エマ(p3p000257)の表情はもはや絶望一食だ。間違えた絶望一色だ。
「ううぅ、ふ、へ、へへへ……キドーさん、祝勝会のから揚げ『美味しかった』ですねぇぇぇぇ……」
「くそぉ! キドー、おらぁ! 余計なマネしやがって……責任とっておめえが先陣切っていけよ! いいなオラァ! 新参もガキ共もいるんだからよぉ!」
 そんなエマに続いて『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)も言葉を紡ぐ。乱暴気味に。誰にだって?
「――はぁ? 余計なことぉ? 唐揚げぇ?」
 はて何のことやらと。
「さっぱりだぜ、ったくよ。祝勝会の差し入れとか知らねぇな俺は。いやほんともうスッカリサッパリ――あぁ今日もいい天気いい天気」
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)が後頭部を掻く。とぼけた口調を伴いながら、席に着かんとしていて――待て。その席は一番トイレに近い席ではないか。お手洗いに立ちやすい席を取るとは汚いな、流石ゴブリン汚い!
「やれやれ……元気だな。俺はもう正直帰りたいが」
 そんな様子を見据えながら『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は己が判断を若干後悔していた。食費を浮かせる為だったのだ。元はと言えば。『新作料理の試食』という所だけを見て飛びつき――その結果が。
「……これ、か。やっぱり内容もよく見ないとダメだなうん。これは下手な依頼よりも強敵だもの」
 ため息が漏れそうだ。やらんといけんよなぁ……代わりにそんな言葉が彼の口から漏れて。
「マミィが言っていました……『お店で出されたものは全部食べなきゃダメだよ』と……」
 そんな隣でも『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)が死にそうな表情になっている。脳内でマミィの言葉がリフレイン中だ。素晴らしい言葉だとは思うけれど、マミィ。マミィ。例外作っちゃダメデスかぁ? ダメです。
「ふふ……わかっていマスぅ、わかっていマスともぉ……
 あ、ワタシ目死んでないデスぅ? 大丈夫デスかぁ?」
「ああ――大丈夫だよ。何せまだ地獄は始まってすらいないのだからね」
 くっく、と喉を『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が鳴らしている。
 地獄へようこそ、だって? 成程面白い。地獄の香りは嫌いじゃないのだ。そこに招かれるなど。
「願ったり叶ったりだよ。『肉料理』と『料理に合う美味しい酒』を頼む」
 どうなるか。楽しみだ。ああ是非とも楽しみだ。
 地獄の様な狂乱を。馬鹿騒ぎを。未来を見据えて舌なめずる――

 いやしかし地獄とは皆して言うが。果たして本当にそうなのだろうか?

「えへへっ、ごはんをご馳走になるだけでいい依頼だなんてっ! 思わず今日は何も食べずに来ちゃった! おなかぺこぺこだよ~!」
『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)は明るい未来に思考を巡らせている。地獄? いやまさかそんな筈ない! だってここは『飲食店』だ! 評判が悪くとも最低限ちゃんとした食材を使っている筈である。そう、ほら! 噂をすれば料理が出てきた! さすれば食材は。
「ちゃん、と、して、て……?」
 なんか液体状で真っ黒くて蠢いてるのが出てきた。なにこれ? スープか? なんか塊が見えるのだが何の塊なのか分からない。野菜? 肉? 店主は何も答えず腕を組んでこちらを見ている。喰えと、申すか。
「こりゃあれやな――酒場っちゅーより墓場にならへん!? 席の数は鬼籍の数ってな! にゃはは……」
 ははははは。
 店主が再び調理場へと歩を進める。シャレにならんわ全然おもんないなと、繰子は引きつり笑いと共にその背を見送らざるをえず。無表情が恐ろしすぎる。
 なにはともあれ。一瞬目を離した隙に増殖して量が増えている料理――料理――? を、前に。皆は覚悟を決めるのであった……!

●本依頼は非戦闘依頼。危険の少ない依頼です。信じて?
 あぁ――思い出す。初めてこの店に来た時の事を。
 召喚され右も左も分からず、それでも腹は変わらず減って。だから腹を満たそうとしたのだ。故郷によく似た裏通りの雰囲気に、心のどこかで安堵を覚えた事があったか。
 ついでに言うとその時、頼んだ一番安いメニュー……安っぽいパンと水っぽいスープが出てきた時は思わず軽く笑った。ああそうだこれだよこれと。裏路地に相応しい世界共通の味を噛み締めようと、パンを口の中に放り込んで。
「――そうして俺は死んだんだ。あぁ……いいかお前ら。とにかくファーストインパクトに備えろ! 即ち、料理が粘膜に触れた瞬間だ。気を抜くと最悪、ぶっ倒れて頭打つぜ。あの時の俺みたいに……」
「キドォオ! おめぇもう倒れてるぞ!! 聞こえてるか俺の声! キドォ――! 一人で脱落させやしねぇぞ――ッ!! ぉ、ラァ!」
「ぐほぉ!?」
 ハッ! としたキドーの視界に天井が映っていたのが分かったのは――グドルフの声と強烈なるヤクザキックの痛みを知覚してからだった。あぶねぇ今の過去回想じゃねぇ走馬灯だわ! んだよこのパン前よりやばくねーか!?
「……とりあえず酒だな。酒は本当に美味いし、ある程度腹に入れておけば消化も早まる」
「いやいや。何を言ってるんですかお酒にそんな効果ないでしょ……」
「うるせぇ。世の中、信じる事が大切なんだよ。酒は百薬の長だぞ? ――信じろ」
 酒の飲めないエマはオレンジジュースで喉を潤しつつ、マカライトは酒を喉奥へと。飯を食いきれる程度の余地は残しながら飲み干していく。
 しかし料理か。かつて己が食した時は奇跡的に焼けた肉と、それを粉砕するソースが特徴だった。ただ不味い『だけ』の料理。恐ろしい……今日は何が出てくるのだと思っていれば。
 出てきた。多分、ビーフシチューらしきモノが。紫色だけど。
「……おい、これスプーンが通らないんだが?」
 おかしい。固くはない。だがスプーンが通らない。柔らかい抵抗が発生してスプーンを押しのける。ナニコレ。食べていいの? 大丈夫、消化できる?
「知っていマスぅ、こういうのは味わったら最期デスぅ。コツは噛む事じゃなく可能な限り早く飲み込む事デスぅ」
 味わおうとするから駄目なのだ。喉へと即座に。それがコツだと美弥妃は、合わせた両の手の平――いただきますの構えから覚悟を決める。
 出された料理は熱々な肉料理……問題はなんの肉なのか、だが考えるのも危険だ。やめよう。喉に詰まらないレベルまで噛んで後は速攻――あ、やばい噛み切れないぞこれ。ゴムを喰っている気分だ。
「んぐ……ぐ……ぐっ……!」
 飛び出てきた肉汁に舌が反応する。痺れるぜ舌が。なんだか感覚がなくなってきたな。麻酔成分かなこれ。四回か五回か噛んだ所で水を流し込む。お願い胃液さん勝って。
「……出来れば二度と会いたくなかったぜこの謎肉と謎ソース……マジで何で造ってるんだ……」
 店主は何も答えない。向けられたグドルフの視線にも微動だにしない。グラスを拭いているだけだ。
 聞こえていないのか。返事をする気がないのか。あるいは秘伝の技術を教える気はないという意思表示なのか。伺い知れないが確かなる事は一つだけ。今からこれを喰わなければならないという事である。いっそ一撃で意識を失いたい。
「ああ、ちくしょう! こうなりゃヤケだ――コツは胃に流し込むことォ!」
 料理をかっこみ余波が来る前に! 酒で! 流し込む!
 噛んではならない。口内に残してはならない。一秒以上、それは死だ! されど腹に入れば。
「全部同じだろうがッ! うぉぉぉお――俺はアルコールの力を信じるぞぉ!」
 グボァ!! 吐血舞う、飲食店によくある光景が広がっていた。
「やぁ店主――とびっきり美味しく作って欲しいね。かねてよりこの店の噂は聞いていたんだ」
 今日は楽しみにしていたと。称賛の言葉を投げかけるはマルベートである。え、ちょっと待って? 本気?
 店主の表情は変わらない。再び厨房へと向かう様に変化はない。無だ。無である――が。
「や、やめろよせぇ! 感じ取れよ、絶妙な雰囲気を……! 無口、無表情だが察しろ……! 気をよくなんてしたらさらに料理が追加でドン――」
「だからいいんじゃないか」
 瀕死のグドルフ。絞り出した言葉を一刀両断。なんでって?
「火を見ればもっと燃え盛るようにしたくなるのは悪魔の性分というやつだよ。油を撒く、というやつかな。どうせ地獄なら中途半端にするよりも過激に行こう――盛大に」
 この地獄の状況に油を撒くとは大した奴だ……君には一品多く出してやろう……!
「え、えひ、ひ、ひひひ……私は生きて帰る、生きて帰るんです……おうちかえる……」
「まだ始まったばかりだぞ頭抱えんな前を見据えろぉ!」
 その隣でエマは頭を抱えながら挑む番になってしまった。
 励ますキドー。されど目の前にあるのは以前食べた事のある蜂蜜たっぷりなローストチキン――に、よく似ているモノなのだが。ナイフで開いてみれば中からは別の際に出た銀色の泥状の何か、こう、もう正気が失われそうな液体がチキンの中から。やばい。
「うぅ……私もこの酒場にはよく来てますし、料理も何度も食べてますがだからってこんな……思い出フルセット的なの……やだぁ……発注してない……」
 思わず涙が溢れて来る。だって生き残りたいんだもん。
 う、うぎ、うぎぎとエマは躊躇する声が思わず漏れるがこれは依頼だ。意を決さなければならない。生きて帰れるかは知らないが逃げる事は出来ないのだ。店主の圧も来ている。厨房から鋭い眼差しが届いている。らめぇ。
「え、えーと……とっても新鮮そう、新鮮だと思う料理だね! これはいわゆる踊り食いって言われるヤツだよね! 結構グルメだから知ってるよ!」
 そんな感じでエマに視線が行ったのを確認したリインは、自身の皿の上と対峙。食材なんなのか分かんないけれど、動いているならきっと生で食べれるものなのだろうと。
 だから――塗布する。視線の外れた一瞬に、こんな事もあろうかと用意していた携帯マヨネーズを!

 だが店主の目を侮ってはいけない。

 彼は歴戦だ。なんのかはともかく。調味料を追加? それは味付けに不満があると?
 料理を捉える。マヨネーズ。その白き液体の跡を――
「わぁーお! その料理、美味しそうやないかい! ちょっちうちにも見せてーや!」
「勿論! 見て見て、こっちの方なんてとても素敵に泡立ってる~! どんな風に造ったんだろう!」
 だが一瞬早く繰子の隠蔽工作の如き皿の移動が。
 続いてリインのわざとらしい誉め……褒め? 言葉による言いくるめが間に合った。
「しかしマヨネーズとはいいモンを……うちのタコ焼きと合わせてみんか? きっと誤魔化しの一部を担えるで――過信は禁物やけど」
 繰子のギフトは粉モンを生み出す事が出来る。たこ焼きからあれそれまで……『マトモ』な料理を出せるのだ。調味料の類などではない、料理そのものを!
 己の料理もそれで処理をしている。エールも頼んで流し込みつつ、無理そうならたこ焼きで口直しとする。時々不味さが尾を引くので気休め程度になってしまう事もあるがそれでも無いよりはマシで。
「もう我慢できません! 秘蔵の胡椒を! 胡椒を振らせていただきます! 店主――! オレンジジュースじゃんじゃんもって来てくださーい!」
「調味料か……ちょっと待て。こっそり俺にもくれ。今から不本意だがスパートを掛ける」
 そして皆して大体半分ぐらい死力を尽くして食べた頃。ついにエマが胡椒を一瓶丸ごとぶち込んだ。勿論店主がジュースを向こう側で注いでいるのを確認してからだ。そうして戦闘を続行する意思を指し示したマカライトに胡椒を渡して。
 と、思ったらやばい。胡椒が胃の中で異物と喧嘩してる。あ。あ、やばい。ちょっと待って暴れないでうぉろぇ。
「マヨネーズなら……大好きなマヨネーズ味ならきっとなんだって倒せます!」
 死神リイン頑張ります! と行き込んだのが一分前。自慢の物理攻撃力を歯に集中して噛み砕き、喉に物理攻撃力を集中して落とし込み、美味いジュースで誤魔化す……が。
「ふぇぇ……もうやだ……もう、たべれないよぉ……ふぇ、ふぇぇ……」
 一分後ぐらいに限界が来た。小刻みに震える小動物の様に。三分の一程度まだ残ってる料理の前に恐怖を抱いている。あとちょっと!
「ふふ……こいつは強敵だね。予想以上の難物だ」
 マルベートはあくまで優雅に。ナイフとフォークで出されたナニカを切り分けていく。問題は切り分けた先から一定時間放置しているとまた再びくっ付いている点か。もうこれ一種の生命体では?
「ふむ――いいね。わる、くない。うッ……んッ、これは中々の噛み応え……! 舌がピリピリと痺れて、んんッ……! ワインに、合いそうだ……!」
 自分が焚き付けた面があるのだ。必ず食べ切る。ただ、声を張り上げて醜態を晒すのもまた己が許さない故――尋常なき冷や汗を流しながらも、一定の優雅さを保ち続ける。ちなみに君には食後のデザートが待ってるぞ!
「いいなぁ……! 全員、ぶっ倒れて逃げようとか思うんじゃねぇぞ……! 残ったらソレを処理するのは生き残った奴なんだからなぁ! おブッ」
 グドルフ、死亡確認――あ、いや違う立ち上がった。意識覚醒。再びえづく。頑張れ!
「どうした、吐きそうか? ハッ、ならこういう時こそ口ン中がヒリつくぐらい強い酒で誤魔化すんだよ。あぁマスター。ここの代金はローレットかギルオスにツケといてくれ」
「にゃはは~♪ ドートンリバーの向こうでタコ焼き屋の婆ちゃんが手ぇ振ってる~婆ちゃん元気~?」
 隅の男を指差すキドーはセカンドインパクトを乗り越えるべく酒と共に二口目を。半ば意識がどこぞへ飛んでいる繰子は幻覚を見ているのか意味不明な言動を繰り返している。毒耐性やらサバイバルやら揃えていた、筈なのに……上回られた、だと!?
「お水……お水をもっと。もっと下さいデスぅ……もっと量を……うぐ」
 同時に美弥妃もまた水を注文し続ける。心なしか顔色が悪い気が……おや? 髪色もなんだか入店時と変わっている。黒かった筈だが――薄紅藤色、と言った色が見え隠れ。これも食材の衝撃の影響か? やばい。
 心なしか他のメンバーよりも料理の量が少ない、気がするのがせめてもの救いだろうか。これだけを、これだけを食べ尽くせばいいのだから。もちっと頑張ってモグモグしようと。さすれば。
「――ご」
 食物? を喉の奥へと強引に押し込む。出てこようとするが、ええい落ちろや。
「ごちそう……さま……」
 ついに、皿の上から敵が消えてなくなって。
「でし……たぁ……」
 待望の一言が――死屍累々の酒場へと、響き渡った。

●死闘跡
 店主は概ね満足していた。一気に八食分も作った故か。しかし。
「おぐ……えぇ……い゛ぎでま゛ず……わだし、いぎでる゛……!」
 空気の旨さを知ったエマが店の外でえづいていて。
「終わったなぁ……凄惨の宴。アレこんな言葉だっけ?」
 なんだか違う気がするが、まぁいいやとマカライトはベンチに腰掛ける。そのまま目を閉じる。まるで死んだかのようだが気のせいだろう。グッスリと眠っているだけだ。ピクリともしないだけで。
「ああ……」
 同時。酒場の外壁に背を預けて、座り込むグドルフは空を見上げて。
「……今日は、月が綺麗だ……な……」
 見えた星空に、言葉を残して。

 山賊グドルフ、路地裏にて散る――元気になるまで五日程かかりました。

「あー美味しかったですね! わたし生まれ変わった気分です♪」
「……輪廻転生してる!? え、大丈夫ですか繰子さん!?」
 標準語になってる! とリインは繰子の豹変に驚愕。元に戻るまでこれも五日かかりました。
「……ん。愛しの我が家に帰ってワインで口直しと行こうか」
 酒場の酒が悪い訳ではなかったが。
 ただ今宵は――ちょっと。家の酒でいいかなと思うマルベートであった。
「味覚! 嗅覚! 胃袋! 終わったよ……」
 そして最後に。とりあえずキュアイービルで全員治療すべきか、とキドーは悩む。
 効くかイマイチ不安だが……ダメもとで掛けてみるか。並べ並べ――

 と、したキドーの肩を店主が掴んだ。

「――えっ?」
 嫌な予感がしてキドーは振り向いた。彼は変わらず何も語らない。
 ただ見ていた。料理を完食した彼らを、ただ見据えて。
 勢いよく、キドーの背を二度叩く。そうして踵を返して酒場に戻って。
「……な、なんだったんだ?」
 誰かがそう、呟いた。
 彼は何も語らない。先のが感謝だったのか。また来いよという意味だったのか――あるいは――
 さてはて。真意はどうであれまた開くだろう。この酒場は。
『燃える石』は、常にこの路地裏に在り続けるのだから。あの、店主と共に。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加どうもありがとうございました!!!!!

激戦でした。全員重症にしようかと思いましたが流石に思いとどまりました。
店主は満足してくれたことでしょう……多分!!

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