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シナリオ詳細

<咬首六天>浮遊島より堕天する

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヴィトルト、失踪
 ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の思考には疑問符が絶えず浮かび上がっていた。議題は先日のアルマスク解放作戦、待ち伏せという形で強襲を受けたことだ。
 作戦がどこからか漏れていた? 漏らすような不届き者がどこかにいる? あれは果たして自分達の部隊だけだったのだろうか?
 当然、ほかにも交戦記録は残っている。だが新皇帝派として正面切っての戦いであって、待ち伏せ姦計のたぐいではない。そんな思考の渦の底にある可能性を、ココロの善性はあえて無視した。
「たぶん、作戦の一部にヴィトルトも関わっているはず。彼と相談すれば、何か掴めるかもしれない」
 彼は策動に長け、様々なケースを思いつくはずだ。あわよくば、漏えいに対するカウンターも。
 だから、情報を引き出すために顔を見たかったのだが……見つからないのだ、どこにも。
「ヴィトルトは、どこに……」
「コメダ氏をお探しですか? 先程、ポータルを経由してベデクトに向かうと仰ってましたが……変ですね、スノーモービルは必要無い筈ですが」
 ヴィトルトを探していたココロに、ポータル周辺の警備兵が話しかける。彼は今しがた、シフトを終えたばかりなのだ。
 その証言は正しいのだろう。しかし、あまりに不審点が多い。
「ベデクトに……?」
 不可解なものを嗅ぎ取ったココロは、仲間達に声をかけベデクトに急行することを決意する。
 よくわからない感情が渦巻くのを、彼女は認識しないふりをした。

●最も悲惨な末路が見れる場所
 浮遊島アーカーシュは、鉄帝上空に在るため様々な情報を得ることができた。
 それは勿論、断片的ではあるが敵情についても、だ。だからこそ多数の作戦を並行して行え、敵勢を削ぐことができた。
 ヴィトルトも一つ、情報を掴んだが為に『己の目的』を達成するために地上を目指した。
 彼は優秀な作戦指揮を立案できる。だが、彼は常々飢えていた。その根源に気付いたのがいつであったか。
 自軍の戦力を温存したいがために、敵軍を誘導した。結果として『敵を捲く』目的が高じて『同士討ち』という結果を招いた。そのときの敵兵の動転ぶり、そして疑心暗鬼からの大規模な同士討ちたるや!
 結果として自軍は手を汚すことなく敵は壊滅し、そして彼に大きな成果と、大きな満足感を齎した。
 相手の嫌がることを進んでやりましょう、と道徳は説く。それはとりもなおさず「相手が忌避する仕事を優先し信頼を得ましょう」ということで――?
「つまり、鉄帝(このくに)の人々が嫌がるような、攪乱戦術は進んで行うべきなのではないだろうか?」
 以前からヴィトルトが持っていた思考の違和感の最後のピースは、かの作戦で嵌ったといえた。

 イレギュラーズ、そしてアーカーシュと北辰連合は血道をあげてベデクトの奪還を成功させた。人々を守るために、だ。
 なら、人々を最も悲惨な末路に叩き落すだろう勢力を、居住区に引き入れたらどうだろう。
 いち早く気付くであろうイレギュラーズ達はさぞや怒り狂うだろうか。
「ここか。精々うまくやってくれよ」
 スノーモービルを停め、ヴィトルトは壁面に爆弾を貼り付けると距離を取り、耳を塞ぎ口を開いた。
 爆轟が響く。裂け目から現れたのは天衝種達と、マスクで顔を覆った新皇帝派、アラクラン。
「貴殿がヴィトルト・コメダか。協力感謝する。往くがいい、我等の同胞は貴様を見逃すだろう」
 リーダー格の男が顎をしゃくると、ヴィトルトはスノーモービルにとびつき素早く壁外へ走らせた。
 そしてその後ろ姿を、ココロは目にした。
 戦わねばならぬ敵達の攻勢以上に、衝撃的な光景であった……その顔を見なかったことだけは、ヴィトルトのその日最大の失策だった。

GMコメント

 参考シナリオ:<アルマスク攻勢>計略的偶発遭遇

●成功条件
 敵戦力の壊滅(2/3以上の撃破)

●『アラクラン』構成員×10
 『敗者狩り』を行い、次々と殺人を繰り返す狂人集団です。基本的には弱い者いじめが得意な連中ではありますが、戦闘もそれなりにやる方です。
 各々がつけているマスクはガスマスクであり、【BS緩和1】を共通で持ちます。
 接近戦に極めて強い(構成員の性能比較、遠近の戦力差として)為、距離を取ったほうが楽ではあります。引き付けるならその限りでもありませんが……。
 回数、各種制限ありつつ【必殺】を備える構成員が半数混じっています。
 接近戦だと【致命】【必殺】、遠距離だと【恍惚】【出血系列】【スプラッシュ(小)】がとんでも厄介です。

●天衝種『アイシー・バーン』×5
 氷像型の天衝種ですが、体内に炎を宿しています。【火炎無効】【凍結無効】。
 攻撃は近距離大威力の叩きつけ攻撃、神超列【凍結系列】【足止め系列】の『ロングブレス』、神中扇【凍結系列】【乱れ系列】の『アイシクルフィールド』など。

●戦場:ベデクト住居区画西側
 一定ターン経過すると、天衝種が住居の在る方へ指向を変更します。
 出来るだけ早い撃退が望まれるでしょう。一般人の死亡は失敗条件にありませんが、どのみちロクな死に方はさせてもらえないので注意。
●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <咬首六天>浮遊島より堕天する完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月10日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
武器商人(p3p001107)
闇之雲
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

リプレイ


 スノーモービルの駆動音はすでに遠く、イレギュラーズの耳にはもう届かない。今、届くのは天衝種の敵意のうめき声と、アラクランの連中の品定めするかのような下卑た視線だ。イレギュラーズが現れたのも織り込み済みといった風情の立ち姿は、明らかに色々と理解した上で動いているといっていい。
「状況から察するものもありますが、まずは目の前の脅威への対応が求められますね」
「アタシは頭の良い方じゃあないけどさー? この状況でしょ、いくらなんでも分かっちゃうわよ?」
 『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)も、『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)も。そして他の多くのイレギュラーズは、目の前の事態の違和感の正体、そしてそこから導き出される事実を概ね承知していた。把握していた。全ては迂遠な『仕掛け』であったのだと。
「バカのやったお痛の代償は落とし前は後でつけさせるとして、一先ずは目先のたんこぶをなんとかしねえとな」
「やれやれ……こちらを嵌めてくれただけでなく、置き土産してくれるとはな」
「困ったものだねぇ。ベデクトを変に荒らされたら動乱後の復興にも差し障りが出そうだし、しっかり不穏分子は排除させてもらうとしよう。ヒヒヒ!」
 『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)や『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)から見れば、『彼』のやり方は周到な計画の上に最後の仕上げまで完璧な、悪辣すぎる手管の上に成り立ったものだった。今まさにベデクトの市民を襲おうという不届き者を引き入れ悔しがる姿を楽しむ……あまりに最低だ。そこに感じるのは敵意ではなく、ただただ「そうした方が悔しがり、怒りを露わにするだろうな」という推論に基づく遊興めいた筋書きであること。『闇之雲』武器商人(p3p001107)からすれば、目の前で再生しようとしている営みがブチ壊されるのは我慢なるまい。騒乱の終結後に訪れるであろう『商機』ごと持っていかれるに等しい愚行なのだから。
「お師匠様の書庫にある戦術の教科書に書いてあったことですが。意図的に敵を自分らのウィークポイントに誘引し、チャンスだと思い迂闊に深入りした敵を包囲して叩きのめす、なる戦い方があるそうです……もしかして」
「ああ、違いない。アーカーシュの入管は整備されつつあるけど、この手法は……」
「ヴィトルトはそれをやりたかったのでしょうか。でもこの作戦は、準備とノウハウが不可欠。学者はえてして理論だけでやれると思っちゃうから……完璧に進めるのが前提な作戦は勘弁してほしいわ」
「内部に――っとちょっと待ってねココロさん。多分、ヴィトルトは……いいや」
 『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)は途中まで『人生を贈ったのだから』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の言葉にうんうんと頷きを繰り返していた。いち早く状況から察せられる魂胆を見抜くべきだと。今回見えてきた事態の穴をどう対処するか、まず考えねばならないと。だが、ココロはヴィトルト・コメダの行動が戦略的思考に基づく某方かの目論見(しかもアーカーシュ優位の)を組み立て、イレギュラーズすら信用せずに事を運んでいるんじゃないか、と。彼が善性からなる行動を取ったのだと、信じていた。
「考えなきゃいけないことは沢山あるけど、まずはベデクトの人達を守る為にもぶちのめす! 色々考えるのはその後にするよ」
「ま、そっちのほうが楽だわな。氷像は任せた。構成員はこっちで叩いて減らしとく」
「……そうね、アタシはどうとか、それより前に誰も犠牲を出さない方が先! 天衝種は確実に倒す!」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は自らの直感に従ってハベの向こうを睨みつけた。方角はわかるが、確か森林地帯を挟む。聞き知った相手の特性を考えると、今知覚した方角から転身した可能性が大だ。直感が信じられない相手、という不気味さを却ってより強く感じる結果となってしまったが、それが『確信』をより強めたことは明らかだ。バクルドも彼なりの単純さはある意味、考えあぐねる必要がない分救いでもあった。
 京にとって、ココロは正直なところ推し量れぬ相手で、且つ浅からぬ関係にある。だからだろうか、その未知をどうこう思案するよりは力を振るった方が明快に片付く。……そればっかりではよくないと分かっていても。
「ヒヒヒ、面白いことをするよねェ。結果はなんにも面白くはないけど!」
 武器商人の飄々とした語り口は、真意の推し量りづらいところがある。だが今は確実に、不機嫌だろうと理解できる。なにしろ――彼の今後の商機を邪魔したなら、当然か。


「炎を宿した氷像とはなかなか美しいモノじゃあないか。天衝種なのが残念なくらいだ。ヒヒ!」
 武器商人の異様な気配は、天衝種達からしても異常なそれだった。少なくとも、その射程範囲内に踏み込んだ手合であれば、『それ』を無視して居住区に向かう危険性を本能で察知したはずだ。つまりはその存在を足止めせねば、という義務感。
「まずはその攻撃が無駄だって、理解らせる!」
「こっちに向かってきたんだ、やられる覚悟はできてるんだよな?」
 ヨゾラは武器商人に近づいた個体目掛け、混沌の波長を流し込む。闇に染まった足元は氷の透明感、その一切を失い滲んでいく。一部の個体は辛くもその混沌を踏み越えたが、その先に待っているのはミーナによる苛烈な一撃だ。混沌に塗れた者はもとより、そうでない者でも回避は難しかったろう。
「所詮、ケモノでしかない天衝種なんてのは、まあいいわよ、そういう生き物なんでしょうよ……でもねアラクランども、アンタらは見過ごせないわ」
 京はミーナによって傷を負った個体にズカズカと踏み込むと、その拳足で以て次々と破壊的な打撃を打ち込む。関節の動き、肩の回転、それら全てが連動した打撃は常になくスムーズに打ち込まれ、またたく間に天衝種の外殻を叩き割ってその炎に突き込まれた。名指しされたアラクラン達が声を上げるまもなく、まず一体が溶け消えた。
「どうしようもなくアタシの嫌いなタイプだもの、アンタら。一人残らず足腰立たなくなるまでズタボロに叩きのめしてやるから、覚悟しときな?」
「貴様ら、あんな娘の言葉を間に受ける気か?! 敗者は敗者らしく縮こまっていればいいものを、反抗的に徒党を組むから気が強くなっていかん! 市民たちを吊し上げ、その至らなさを理解させてやれ!」
 京の、心根すら凍らせるような冷たい敵意はアラクランを絶句させるに足るもの。だが、彼らも舐められれば負けとばかりに声を張る。天衝種が一体潰れたからなんだ、彼らを無視するという選択、市民を徹底的につぶして無力感を刷り込むという選択……下卑た発想だが、成功すればイレギュラーズへのショックは大きかろう。
「どうぞ。私を。此の核の輝きを見てください。この雪、そのマスク越しに見てもなお、見劣りはしないはずです」
「――は?」
 天衝種と同じように、アラクランを引き付ける役目を担う者などいない、と。そういう甘い見立てが成立するならの話だが。
 グリーフという存在を彼らは知らなさすぎた。イレギュラーズという者の在り方を、彼らは甘く見すぎていた。ゆえに、その胸に輝く宝石の魅力が覚悟の足りぬアラクランを引き付けるのは、火を見るより明らかだったのだ。
「弱者ばかり狙っちゃ、装備も腕前もただの持ち腐れだなぁ!」
「逃げて隠れて、追われて! 主流から外れた時点で貴様らは弱者なのだ! 個々の実力など、知ったことかよ!!」
 グリーフに惹きつけられ、バクルドの攻勢にさらされ、それでも彼らの言葉に些かの焦りもなかった。強敵であることは認めよう。ともすれば敗北がありうる事実も仕様がない。
 ただ、『奪われた』ベデクトを勿体ぶる者達などその大体が負け組、逃げた弱者である。一人では何も出来ぬ者たちである。
 だからこそアラクランは、弱者狩りに興じられる。故に彼らは、その醜く歪んだ矜持すらも金科玉条の如くに掲げるみっともなさをものともしない。
「そういった発想だから、自分達の実力も分からないまま好き勝手できるんだ。欲求に素直だから、あの男は……!」
「落ち着きなよ、シリングの旦那。ソリチュードのコにそれ以上『その話』を聞かせる気かい?」
 マルクは機を図るために彼らの言葉を、天衝種の動きを、戦いの推移を見守っていた。だからこそ、今吐き出された言葉に許されぬものを覚えた。
 だからこそ、今ここで天衝種もアラクランも、全て纏めて不運と混沌に塗れさせて倒さねばと思った。或いはその先にある相手も。だが、術式を用いてなお昂ぶるその言葉を止めたのは、やや離れた位置で天衝種を止めていた武器商人。身を苛む天衝種の猛攻に合わせて『煮え立った』炎は、その激しさに反して当人同様、静かに揺らめくのみ。
「……分かってる。だから、ここから一歩も進ませない」
「動きはかなりぎこちなくなってるけど、天衝種がそれを想定してないわけがない。攻撃を甘く見ず、居住地を死守が最優先ね。傷は私が癒やすから、無理はしないで」
「我(アタシ)は適当なところまで放っといておくれよ。あっちが暴れまわったほうが、『火の手』は強くなるからねぇ」
 ココロは仲間達に指示と治癒術を飛ばし、戦闘をあくまで機械的に、しかし倒すべき相手への敵意を強く刻んで立ち回る。敵味方入り乱れる洗浄での状況把握は激しいというのに、適切に治療と攻勢に回れる判断力は出色のものだ。それもこれも――この状況全てが『味方の善意』で成り立っていると信じて疑わないゆえに。


「接近戦が得意って面してるからこっちから仕掛けてやったぞ。どうした! 早くしねえと何も出来ずにおっ死ぬぞ? まあそのほうが楽でいいがな」
「吐かせ! 貴様の手管が如何なものでも、我々は軽々には死ねぬ!」
「死に体だろうが、無理するなよ」
 バクルドが間合いを詰め、剣による外道の斬撃を繰り返す。威力は十分、精度も申し分なし。あわよくばそれだけで雑兵は死にかねぬ程。だが、目の前の兵は腕一本とガスマスクを犠牲に受けきった。バクルドの言う通りの死に体だが、コンバットナイフを突き立て、体ごと預けるようにして足払いを敢行する根性だけは並ではなく。
「俺ごと殺れ! 出来るだろう!!」
「……命は預かった」
 いきおい、バクルドを確実に仕留めるべく現れた二人目が手を開く。鉤爪状に軽くにぎったそれをバクルドに叩きつけんと一歩踏み出した刹那、彼はその姿勢で硬直した。直感で、間合いを詰め切れぬと悟ったのだ。
「貴方が見るべきはこの輝きです。そして貴方は、もう退っ引きならないところにいる」
「…………!!」
 違和感の正体はグリーフによる妨害魔術。威力はさしたるものではないが、そこに込められた悪意は下手な殺人剣より余程悪質なそれ。無遠慮に歩みを進めるグリーフに向き直ったその手はしかし、硬い感触に阻まれ傷つけることすらままならない。憎々しげに歪んだ首が転がり落ちた時、視界の端では自分が犬死にさせた仲間の姿が見えた。
「悪ィな」
「いえ、撃ち漏らしが出たのは私の責任ですから」
 剣を振って血を払ったバクルドは、グリーフの「ごくごく当たり前のように」ことを成す姿に一種の驚きと、それ以上の敬意を覚えた。アラクランの捨て身の特攻含め、バクルドの命を脅かすものではなかったものの遅れを取ったのは事実だ。感情を表に出さず、事実のみを重視した姿は一種の機能美ですらある。
「残ってる兵士は殆どいないな。居住区を目指した奴もほぼ倒しきったはずだ。となると……」
「ヴィトルトの行方だけど……駄目だ、もう何処に行ったのやら分からない」
 ミーナは弱っている兵士を仕留め、周囲を見回す。天衝種も仲間達の尽力により撃破され、最早ベデクトの驚異たりうる者の姿はないようだ。ヨゾラは改めてヴィトルトの行方を察知できぬか試みるが、流石にそう何度もうまくいくものではなかった。戦闘時間と、スノーモービルの移動時間とを鑑みるに、当てずっぽうに追うのは無理だろう。
「私は、このやり方を善悪で推し量れる立場にないわ。だから彼の目指すベストより、私なりのベターを目指します」
「……ああまでいくと、なんていうか」
「でも、自分の信じたいものを疑いなく信じられることは、ある意味才能だと思うよ。無下にしちゃいけない。その代わり、裏切った報いはとってもらうけどね」
 ヴィトルトは考えなしに外患誘致をやる者ではない。彼なりの考えがあってこうしたのだ――ココロは未だにそう信じている。どこかで分かり会える余地がある、と、R.O.Oでの経験を経て信じるに足る意思があった。その考えが、京には正直わからない。だが尊重するべきなのだろう、と思う。マルクはそんな京の葛藤もわかるし、ココロが相手を信じようとしているのを無理やり振り向かせて現実を見せようとは思わない。
 ……だが、彼女の気持ちとは別に、かの男は何れ報いを受けねばなるまい。
 そうでなければ、彼女が余りにも……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変おまたせして申し訳ありません。作戦は無事成功と相成りました。
 ココロさんの所見では、内側から敵を誘引したのも策、ということですが……果たしてどうでしょうか。
 恐らくは皆さんの見た通り、感じた通りの結論かもしれません。各人の誤謬も含めて……。

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