＜咬首六天＞野外でお風呂に入ろう。ゴーレムだけど。

オープニング

●泉の近くで
　アーカーシュに存在する、比較的小さな……５分もあれば周囲を全て歩けてしまうような、そんな泉。
　その近くに、何かがいる。
　何やら巨大な箱のようなものに手足がついたような……いや、これはゴーレムだ。
　そのゴーレムが、何かと戦っている。
　その「何か」は見る者が見れば天衝種「ラースホーネット」であると分かるだろう。
　ラースホーネットはゴーレムを攻撃しているが、ゴーレムは気にする様子もなく、その伸縮自在の腕を伸ばしラースホーネットを掴み引き寄せる。
　戦闘中だというのだろうか、しかしゴーレムのやっていることはどのような攻撃なのか？
　引き寄せたゴーレムは自分の巨大な頭部に……ラースホーネットを、バシャッという音をたてて、入れた。
　よく見ればゴーレムの頭部からは湯気が出ている。
　まさか、まさかとは思うのだが……このゴーレムの頭部は湯舟、なのだろうか？
　よく茹で上がったラースホーネットが消滅すると排水が行われ、泉から新しい水を供給し始めるが……まさかの風呂ゴーレムだというのだろうか？
　しかし如何にも暴走しているが……その強さは確かなものだ。
　その影響だろうか。ラースホーネットの運んできていた黒い球状のモノがその姿を真似て変形していく。
　ああ、なんたることか。こんな色物ゴーレムを真似た天衝種の誕生である……！

●人が思うものはきっと存在する。
　『タコ助の母』岩倉・鈴音（p3p006119）は、考えていた。
　この前相対した、こたつゴーレム。そんなものが存在するのなら、お風呂のゴーレムだって存在するのではないかと。
　何かの事情で野外活動する人だってアーカーシュには多かったはず。
　ならば、そんな人を手伝う野外風呂セットゴーレムだって存在していいはずだと。
　そしてどうにも、そんなゴーレムは存在するようなのである……！
「というわけでな、見つけてきた。風呂ゴーレム」
　鈴音はアッサリとそう言うが、聞いている方は何が何やらである。
　風呂ゴーレム。
　どうやらそれは、野外作業の多い人に快適な風呂を提供するためのゴーレムであったようだ。
　自律稼働する風呂ゴーレムは頭部に人間２人は入れそうな程度の大きさの風呂釜を備え、覗き防止の機能なども備えたプライバシーという概念も備えたゴーレムだったのだという。
　しかしかの魔王イルドゼキア襲来の折にその大多数は壊れ、残ったゴーレムも機能停止してしまったという。
　どうやら、今回見つけたのは機能停止を免れたものの暴走してしまった個体のようだが、どうにも天衝種マッドアーマーが真似たと思われる個体も混ざっているらしい。
　となると、そのマッド風呂ゴーレムとでも呼ぶべきものを叩き壊し、風呂ゴーレムを回収すべきであるだろう……！
　風呂ゴーレムは水の供給をスムーズにするためか、とある泉の側に陣取っているようだ。
　見つけたら風呂に入れられてしまうが、問題はない。きっとない、はずだ……！

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●風呂ゴーレムを探して
　＞＞＞＞＞＞　わ　し　じ　ゃ　よ　！　！　！　＜＜＜＜＜＜
「そう、わしじゃ！　風呂のこととあらばこのわし！！　チヨ婆におまかせじゃ！！！」
　『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド（p3p009158）の声がアーカーシュに響き渡る。
　アーカーシュは今日も良い天気だ。
　鉄帝を巡る状況を考えれば非常に恵まれているが……それは不断の努力により維持されているものでもある。
　元々アーカーシュは一番人が暮らすには厳しい場所であったのが、今では日々改善されてきており一種の安全地帯に近くなってきて魔でいる。
　こうした状況は、努力なしでは成し得ない。
　今回の件も言ってみればそういったものの１つであり、それ故に全員にそれなりの気合が入っていた。
「風呂ゴーレム……温泉を探すのに疲れて野外風呂なんだから実質温泉だろって疲れた人が作った気がするっきゅ」
　『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー（p3p001744）も、そう気合を入れる。
「風呂ゴーレムなら脱衣所とシャワーと風呂上がりの飲み物を用意するべきっきゅ。レーさんが聖獣だった頃の森には滝のシャワー、手作り脱衣所兼乾かしスペース、そして川の水で冷えたお酒があったっきゅ！最低でも飲み物保冷機能を付けるべきっきゅ！！」
　そんなレーゲンに『タコ助の母』岩倉・鈴音（p3p006119）もうんうん、と頷く。
「こたつに続いて冬に便利なゴーレム確保シリーズだなっ。こいつらがいれば野外でも安心だ！　だが付近の泉の水か～温泉だったらなぁ」
「そして私もまたまたやってきました魔界同人絵師雪歩ですわ。暖房器具×暖房器具のえちちであちちな同人本のためですわ。神は細部に宿るといいますしお風呂モンスターのデッサンをするためじっくり観察しますわ」
　鈴音の連れてきた雪歩もそう声をあげる。それはそうと内容がカオスである。さておいて。
「先日、練達にあるマイハウスの給湯器が壊れてな。お湯が出なくて死にそうになったのだが……引っ越そうかなぁ、アーカーシュに」
　『黄泉路の楔』冬越 弾正（p3p007105）も何やらそんなことを言っているが、今のアーカーシュは比較的過ごしやすいので、そう考える者もいるのかもしれない。まあ、アーカーシュにはテレビ番組などはないが……『高速機動の戦乙女』ウルリカ（p3p007777）も弾正に「そう考えてしまいますよね」と返す。
「お風呂ゴーレム……まさか……いえ、今更ですか……。ここまで来ると逆にアーカーシュの人々は普段から何をして生きていて、それは練達とどう違ったのかしりたくなりました……。それはそうとコピー天衝種もこんなのをコピーして、それでいいのでしょうか……？」
「確かにな」
　弾正もそれについては疑問だったが、まあ天衝種の考えることはよく分からない。
「野外でお風呂、所謂いつも露天風呂みたいなものでしょうか。まぁなんだかんだで寒いのが鉄帝という国です。古代より、湯沸かしはゴーレムに任せたいほどの労働だったと言えるのかもしれませんねぇ」
「風呂ゴーレムとそれを真似たマッド風呂ゴーレム……うんまぁ、混沌だからな！　何はともあれ暴走しているなら叩いて直す他あるまい！　ちょうどよく（？）男女比も4:4だし問題……問題ないな！」
　問題ないだろうか、本当だろうか。『陰陽鍛冶師』天目 錬（p3p008364）がちょい雑なことを言いながら頷いている。
「また、お風呂に入れる……と思ったけど……お風呂ゴーレム暴走してるし、天衝種が擬態してるし……暴走を止めて皆が心地よくお風呂に入れるようにしたいし天衝種のほうは殲滅だ！」
「お、おー！」
　『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探（p3p009413）に『特異運命座標』セシル・アーネット（p3p010940）も気合を入れた声をあげる。
　ちなみにそんなセシル、今回が初めての依頼である。初めてのお仕事がこんな胡乱なお仕事で大丈夫か心配ではあるが、頼りになる先輩方がいっぱいいるので大丈夫だろう。たぶん。
　横にへにゃっとなっている猫耳と身体の内側に丸まっているを見るに緊張は隠せていないようだが……周囲の先輩方のリラックスっぷりを見習って大きく育ってほしいものである。
「うう、緊張します。でも、アーネット家の子として恥じぬよう頑張ります！」
（まだちょっと弱いです……嘘です、すごくよわっちです。でも、父上や兄さん達みたいに立派になるために僕は頑張るのです！）
　そんな一行が泉の側に行くと、そこには確かに複数体のゴーレムの姿がある……！
「今回は泉の近くで真っ向勝負かな。というわけで……まずは水着になりますっ」
「えっ⁉　何故ですか⁉」
「相手がお風呂だからね！」
　青と黒の二色をバランスよく使った水着に一瞬で着替えた鈴音にセシルが混乱しているが、きっとそのうち慣れてくれると信じて……！

●お風呂の戦い
　セシルはあえて初手は待機していた。
　仲間の様子を見るため……どんな戦い方をするのか、興味があったからだ。
「ゴォレムとな！　ふむ！！　抜群の安定感は◎じゃな！！！　わしもドラム缶で湯を売る身としてはその安定感は羨ましいの！！」
　斬神空波を放ちながらチヨはヒットアンドウェイ戦法をとる。
「このゴォレムは野外で風呂を沸かす！　わしはドラム缶とギフトで温泉を湧かす！　すなわちわしとこのゴォレムとは競合相手であり、戦友（とも）と言えよう！！　言うのじゃ！！！　というわけで風呂ゴォレムとは肉体言語でわかりあうぞい！！！！！！」
　言ってることはともかく、やっていることは至極真面目な戦法だ。
「まずはまずはマッド風呂ゴーレムから狙うぞ！　倒すのに加減がいらないし何と言ってもセクシーは御免だからな！　そういうのは女性陣に向かってくれたまえ！」
　錬もマッド風呂ゴーレムへ式符・陰陽鏡を発動させるが式符・殻繰も発動させており、手堅く攻めるつもりのようだ。
　そんな中、クールレジスタンスをキメていた鈴音はマッド風呂ゴーレムの湯に準備万端でドボンと浸かる。
「クールレジスタンスをキメて自ら入れば風呂の内部に弱点とか見つかる？　虎穴に入らずんばいい湯に入れずです！」
　なんかそんなことを叫びながら……けどまあ、それでもポイ捨てされた鈴音はふにゃっとしながらシムーンケイジを放つ。
「泉のお湯じゃつまらん。入浴剤いれないとっ」
　セクシィィィ！　という擬音で発動するシムーンケイジを微妙な顔で見ながらも、鈴音はそう叫ぶ。どうやらただのお風呂では鈴音を満足させるには程遠い……！
　そして……同じようにマッド風呂ゴーレムに浸かってしまっていた弾正などは、完全に覚悟を完了させていた。
「ほかほか？　セクシー？　来るなら来い！　前衛でガッツリ戦うさ。そう！　こんな事もあろうかと、洗われたら防具を脱ぎ捨てるつもりで下に来てきたのだ。恋人から譲り受けたシャイニングぱんつ！　へっちがーどで倫理の部分もバッチリ対応！　脱いでしまえばすぐ湯冷めする心配なく戦えるという事だ。おまけに過酷耐性(弱)で風邪とも無縁！　さぁ、アルス=マグナ断章で水辺強化の穏健を受けた我が一撃、くらってみよ！」
　セクシィィィ！　と音をたてながら飛んだ弾正は、その音を特殊食の対象としながらも謎の光で股間を輝かせる。
　ピカアアアアアと輝く股間は見事にへっちガードされており、見事な三光梅舟を放つ。
「セクシーサンキュー！！」
　もうどうしようもなくセクシーな弾正は、もう誰にも止められないセクシーっぷりだ。
「すごい！　こんな戦い方があるんだ！　僕も負けてられません。がんばります！」
「待って……あれは特殊だから……！」
　　祝音がセシルを止める。あのセクシーはまだセシルには早い。
「風呂ゴーレムさんは後で直してもらうからね……！　……天衝種は、そんな事ないから。殲滅するから」
　糸切傀儡でマッド風呂ゴーレムをまとめて攻撃する祝音は、戦いながら２種のゴーレムを見極めようとしていた。

「見分け方は…円状のエネルギー壁使う方が本物、かな。目印付けよう、油性ペンで可愛い猫さんを……」
　大胆にも本物の風呂ゴーレムに近づいてきゅっきゅっと目印をつけていた祝音は、弾正の醜態……もとい活躍を見ながら「あっ」と声をあげる。
「お風呂に入れるんだ。それなら風呂ゴーレムさんの方が良いなうわーーーーー」
　しかし人生そうはいかない。祝音もマッド風呂ゴーレムに風呂釜に叩き込まれ、セクシィと投げ捨てられる。
「あったかくて……立てない……温泉ではのんびりしたいけど、戦闘中は……困る……」
　まあ幸いなのはこのゴーレム、本気で相手を風呂に入れるだけなのでダメージは全然ないことだろうか？
　そんな中、レーゲンの衝撃の青がついに１体のマッド風呂ゴーレムを破壊する。
「泥なら泥船のように沈めっきゅ」
　まあ、落としても普通に登ってきてしまうのでもうとにかく破壊するつもりのレーゲンだが、そこには様々な感情が混ざっている。
「できればマッドを優先して消滅させたいっきゅ。セクシーなグリュックとか介錯違いっきゅ！！　グリュックはレーさんと一緒にプリティコンビとしてこれからもやっていくっきゅ！　濡れ透けゴーレムは撲滅っきゅ！　サーチ＆デストロイっきゅ！」
　そう、解釈違い。これだけは我慢ならないことだ。だからこそ今日のレーゲンは本気だ。
「ここは亜竜の霧里のお湯♪　ババンババンバンバン！　いちおー初手オールハンデッドで命中をあげるとか副行動は防御集中しとけよ！　コーパス・C・キャロルの回復もなあ～。また来週～♪」
　排水と同時に泉に投げ出される心配もない上に水着な鈴音などは怖いものなしだし、弾正は常時セクシーだ。
　セシルという純粋な新人がいるのにこの始末。でもこれがイレギュラーズだ。イレギュラーズなのだ！
「あ、やめてください！　濡れるのやです！　ぴええ！」
　そんなセシルも普通の風呂ゴーレムに湯船に叩き込まれていく。これも洗礼と呼ぶのだろうか？
「ぴにゃー！？濡らさないでえ！　だめです！　だめですってばー！」
　ブラウスが肌に張り付いて透けてホットパンツや太ももも濡れてしまうが、幸いにも今日のセクシーキングは弾正だ。
　率先してヨゴれにいくあの姿には学ぶものがあるかもしれない。どうだろう。
「う、う……何だか恥ずかしいのです。でもなんか、僕くらいならまだ……っていう安心感もあります」
「いくぜセクシー！」
　ふにゃふにゃになっていたセシルは弾正の雄たけびを聞きながらほかほかしていて。
「コピーされるほどの力がこのゴーレムにはあるのですか……？」
　ラフィング・ピリオドでマッド風呂ゴーレムを壊しながら、ウルリカはそう呟いてしまう。
「マッドアーマー本来の力なんて知りませんけど、機能として純粋戦闘力として如何にも生活支援系ゴーレムをコピーしても強くなるものでしょうか？　彼らの判断力に疑問を抱きました。もしやと思いますが湯を沸かす熱量の高さで強さを測っていませんか……？」
「身体の芯が冷えたら健康に悪いからの！！！　それからタオルを用意して素早く水分を取るのじゃ！！！　身体を冷やすなと言うとろうが！！！　なんじゃ！セクシィィィ！　とな！！？？　な　ん　ぞ　問　題　あ　る　か　！？」
「よし、もう収集つかないな！」
　錬が諦めたような声をあげるが……最後の風呂ゴーレムが倒されると、湯冷めで風邪をひかないようにほこほこ茹で上がり状態になった人たちにタオルを渡していく。
「よし、ただの風呂釜では風情がないから五右衛門風呂風に改造するんだぜ」
「フッ……ゴーレム修繕も手慣れてきたな。もはや匠の域と言ってもいいだろう！」
「飲み物保冷機能を付けるべきっきゅ！！」
「まあ、やってはみよう」
　錬と弾正がレーゲンの要望を聞きながら風呂ゴーレムを修繕していくが、確かに手慣れたものだ。
「敵ながらいいお湯でした……」
　ウルリカは消滅したマッド風呂ゴーレムが居た辺りを見ながらそう呟く。
「連れ帰ることができれば、共存の道も、不足を補うことも出来たでしょうに」
「ど、どうでしょうか……」
　入ると効果音がセクシーになるお風呂と共存できるか少し悩むセシルだが、経験の凄い先輩方にならそういう考えもあるのかもしれないと納得してしまう。
「わかりえたなら固い握手でシメだったんじゃがな！！　ついでに風呂に入りたいものがおったらドラム缶とギフトで温泉を提供するぞい！」
「温泉かあ。まあ、お風呂機能が直ってるか、確認したいな」
　チヨの言葉を聞きながら祝音もそう呟く。
「この後コーヒー牛乳飲もう、さすがにセクシーって言わない……といいな」
　普通の風呂ゴーレムなのでその辺はたぶん大丈夫だろうけども。
「あらあらこんなところから排水するんですのウフフ」
　雪歩が修理中の風呂ゴーレムを見ているのをそのままに、鈴音が満足そうに頷く。
「何はともあれ一件落着。アーカーシュに新しい仲間が加わるな！」
　そう、その名は風呂ゴーレム。
　野外でも簡単にお風呂に入れる素敵（？）なゴーレムだ！

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

というわけでお風呂ゴーレムを３体、無事に連れ帰りました！

●運営による追記
　本シナリオの結果により、＜六天覇道＞独立島アーカーシュの技術力が+10されました！