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シナリオ詳細

<エウロスの進撃>ディープスノウ・ディープウォーター

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オルスバインの街
 鉄帝東部に位置するオルスバインの街。ここには大規模な水道施設が存在する。
 付近の街に水を供給する役割も持つこの街を、新皇帝派の――というより、賊どもがほうっておくわけがない。
 水。それは、人が生きる上で最も重要なリソースの一つ。
 言い方を変えれば――それを独占できれば、金になるわけである。
「外は吹雪いてている様だが」
 豪奢な屋敷の中で、男は言う。筋肉質な男である。食卓の上にはいくつものパンや肉などが置いてあって、暖かそうな湯気とおいしそうなにおいを漂わせていた。
「大変だろうな! この冬に!」
 がはは、と男は笑う。肩に記されていた徽章は、鉄帝軍の大尉クラスの徽章だ。『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に所属する彼――ガナッツォ大尉は、ぼうぼうと燃える暖炉の温かさに心底感謝した。ついでに、このクソ寒い中、金も力もなく、外に放り出されている雑魚共について、心底同情もする。
 周りには、おつきの部隊兵士がいて、彼らも新時代英雄隊の兵士たちだった。彼らはガナッツォのおこぼれにあずかっている身分でもある。相応に豪勢な食事を、この後にすませる予定だ。
「大尉の慧眼は流石ですね」
 その内の一人がおべっかを言う。
「新皇帝が弱肉強食のお触れを出した瞬間に、この地を征服した。なるほど、水が無ければ人は生きられません。その蛇口を我々が牛耳れば、人は生きるために何でもするのでしょうね」
「そう! その通りだ! まぁ、主に金と食糧が対価になるかな!」
 ガナッツォはそう言って、焼いた肉を噛みちぎった。
「この地を支配している限り、俺達は平穏だよ……誰も俺たちには逆らえまい!
 力が全て。良い時代になったもんだなぁ?」
 大尉の部隊は、確かに『強かった』。強かったからこそ、この地を制圧できたし、この地を奪い返そうなんて決起した市民たちをぼこぼこにして追い返してやった。殺しはしなかった。殺してしまったら、誰が自分たちに金と食糧を献上するのか。自分たちは理性的だ。その辺の悪漢どもと違って。だから『英雄』を名乗れる……。
「ま、精々俺たちのために、外のアホどもには頑張ってもらわないとな!」
 ガナッツォが笑うのへ、おつきの兵士たちが追従した。屋敷の後ろには、広大な浄水場が存在して、ちらつく雪を飲み込んでさらに水量を増やしていた。一帯を潤すための広大な水は、今はここで数名の男達の欲望を満たすためだけの金庫に成り下がっていた。

●ディープスノウ・ディープウォーター
 オルスバインの街。鉄帝東部に水を供給する、浄水施設の存在する町である。
「なるほど。ここが新皇帝派の悪党に占領されている、ってわけね?」
 燦火=炯=フェネクス(p3p010488)がそういう。周囲には、蒸気スノーモービルのはく蒸気があちこちから立ち上っていた。
「はい。ここを抑えることができれば、周辺の都市に正常に水が供給されるはずです」
 そういうポラリス・ユニオンの兵士に、燦火が頷いた。数十名の兵士と共に、オルスバインの街を奪還する。電撃作戦の戦端がひらかれようとしていた。
「アンタ達は、正面から攻撃。領主館――浄水場も兼ねた領主の館を襲撃して、敵を引き付ける」
 リズリー・クレイグ(p3p008130)が続いた。
「アタシたちは背後からだ。浄水場側から攻撃を仕掛ける。そうすれば、敵のボスを狙い撃ちにできるってわけだ」
「攻撃にはスノーモービルを使うのか?」
 秋月 誠吾(p3p007127)がそういうのへ、兵士が頷く。
「接近までに使ってください。一応、水上加工もしていますので、浄水場の水上でも使えるはずです。水上バイクみたいに」
「ふむ! 爽快に出撃できそうであるな!」
 呵々、と咲花・百合子(p3p001385)が笑う。
「敵は絵にかいたような悪人であるようである! そうなれば容赦などは不要であろう!
 一気呵成、見事に首をとって参ろうぞ!」
「首をとるって言うとちょっと物騒だけど、そうだな。ここの今の支配者は相当の悪人のようだ」
「街にも活気がないみたいだからね。双頭の重圧をかけてるんだと思う」
 燦火の言葉に、仲間達は頷いた。本来は清水の街として知られていたこの街は、今や悪徳の懐を肥え太らせるためだけのそれに堕してしまった。それ故に、そんな状況は今すぐにでも是正しなければならない。
「よし! 皆、準備は良いわね!?」
 燦火の言葉に、仲間達は頷く。蒸気式スノーモービルにまたがり、その蒸気を吹かせた。
「行くぞ! 出陣!」
 リズリーの言葉と共に、エンジンを吹かす。雪煙を噴き上げながら、一行は戦場へと突撃した!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 作戦名、『エウロスの進撃』。まずはオルスバインの街を奪取しましょう!

●成功条件
 すべての敵の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 オルスバインの街。そこは東部の広くに上水を届ける浄水場を持つ、一大水源地でした。
 しかし、今は新皇帝派の兵士によって占拠され、水は独占されてしまっています。兵士たちは水を高く住民たちに売りつけ、逆らうものは力で押さえつけているようです。
 そのような暴挙を許すわけにはいきません。皆さんは、スノーモービルを利用して、領主屋敷兼浄水場の背後から一気に内部に侵入します。そのまま、現れた領主……新世代英雄隊のガナッツォ大尉の率いる兵士たちをすべて撃破してください。
 作戦決行エリアは、浄水場。大きな湖のような浄水施設のある陸地になります。基本的には地上で戦えますが、水上におびき寄せてもいいかもしれません。敵は水中・水上行動などは持っていないので、水の上で戦うとなれば、敵にとっては不利になるはずです。まぁ、少々水は汚れてしまうかもしれませんが……。

●エネミーデータ
 ガナッツォ大尉 ×1
  蒸気式スチームガンを装備したガン・マン風の男です。近距離~中距離での射撃攻撃を行います。
  意外とすばしっこく、回避能力は高いように思えます。攻撃を集中するなどして、的確に攻撃を当てていくと良いでしょう。
  BSとして出血系列を付与してきます。鋭い銃弾は、皆さんに深い傷を負わせるでしょう。

 フォッシル軍曹 ×1
  舞台の副官的存在です。蒸気式スチームライフルを装備して、中距離~遠距離での射撃攻撃を行ってきます。
  準指揮官のような存在です。彼が存在する限り、以下の兵士たちは連携の取れた行動をとって来るでしょう。
  逆に言えば、彼がいなくなれば後は烏合の衆になるともいえます。

 新時代英雄隊の兵士 ×14
  新時代英雄隊……新皇帝派閥に属する敵兵士たちです。蒸気式スチームバズーカなどで武装した遠距離兵士と、蒸気式スチームライフルを装備した中距離兵士が半々で存在します。
  遠距離兵士は、名前通り遠距離から範囲攻撃を仕掛けてきます。中距離兵士は、中距離~近距離レンジでの単体攻撃が主です。
  遠距離兵士は接近されると非常にもろいようです。引き付けたり、突っ込んだりして、その本領を発揮させないように戦うとよいでしょう。
  戦闘能力自体はさほど高くはありませんが、フォッシル軍曹がいる限り、連携の取れた攻撃をしてきます。集中砲火を受けないようにご注意を。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <エウロスの進撃>ディープスノウ・ディープウォーター完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
騎兵の先立つ紅き備
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
燦火=炯=フェネクス(p3p010488)
希望の星

リプレイ

●攻撃開始!
 オルスバインの街――雪の降りしきる中、ポラリス・ユニオンによる奪還作戦の幕が上がった。
 ポラリス・ユニオンの兵士たちは、正面から領主館を襲撃する。領主館は、この街の最奥にあり、そして背部に浄水場を湛えた、この街のシンボルである。
「正面攻撃を開始!」
 ポラリス・ユニオンの兵士が声を上げると、数十名の兵士たちが館正面に一斉攻撃を仕掛ける。爆発と、銃撃音。その襲撃に気付いた領主内部の兵士たちは、
「敵襲! 敵襲!」
 叫び、大慌てで迎撃態勢を敷いた。そんな様子を見やりながら、ガナッツォ大尉は舌打ちを一つ。
「なんだやつらは……水場を狙ってきたのか」
「だろうな」
 と、フォッシル軍曹が言う。
「ちっ。奴らもおこぼれ狙いか?」
「奴らは金なんぞ求めんだろう。あたりに気前よく配るんだろうさ」
 軍曹が鼻で笑うのへ、大尉は再び舌打ちをした。
「流行らんぜ、そういうのは……今の世の中じゃな!
 まぁ、いい。あの程度の戦力なら、こっちも押せるはずだ。
 軍曹、戦力を一気に投入しろ。数で正面を潰せ」
「ヤー。アホどもに現実を見せてこい」
 軍曹の命令で、下っ端の兵士が駆けだしていく。正面でのぶつかり合い。さほど時間をかけずに、これを潰すことはできるだろう……。
 だが。それは彼らの見落としの上に成り立つ予測にすぎない。
 突如、屋敷の後背、浄水場の方面より、鋭いエンジン音が鳴り響いた! 大尉と軍曹、そして残っていた兵士たちが慌てて外に目を向ける。
「なんだ!? 何かが後ろから降りてくる……!」
「馬鹿な! 後ろは浄水場……それに、雪深い斜面になってる! あんなところを降りてこれるはずが……!」
「発掘兵器か!」
 軍曹が叫んだ。
「やつら、スノーモービルかなんかを使ったんだ!」
「くそ! すぐに浄水場に迎え! 軍曹、俺たちも出るぞ! おそらくあっちが本命だ――!」

 その少し前。
 『希望の星』燦火=炯=フェネクス(p3p010488)をはじめとする、イレギュラーズ部隊は、浄水場を見下ろす坂の上で、スノーモービルのエンジンをふかしていた。
「攻撃開始、だね」
 『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)が声を上げる。目を凝らしてみれば、ちらつく雪の中、眼下にいくつかの光がぱちぱちと明滅していた。戦闘の、光だ。それからすぐに、騒がしくなる。衝突が始まったのだろう。
「みんなが、正面に敵を引き付けている間に、後ろから攻撃して、敵のボスをやっつける!」
 リリーの言葉に、
「ああ。
 ……しかし、スノーモービルなんてあるんだな。これなら加速したまま連中の所に突っ込める」
 『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)が、蒸気を吹き出すスノーモービルのボディをたたきながら言った。運転練習もろくにしてないが、ぶっつけ本番で何かをやるのも、この世界にきていい加減なれていた。
「となると、電撃作戦、ってやつだな」
「そうだな。聞けば敵は、相当のクソ野郎どもらしい」
 『一ノ太刀』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が声を上げる。にらみつけるように、眼下に視線をやった。あの明るい屋敷の中で、随分と敵は肥え太ったのだろう。市民たちの苦しみと引き換えに。
「新時代の英雄だか何だか知らないが、やってることはただのクソ野郎だ。
 なるほど、水は確かに生きるのに必要だぁな。
 水源を押さえて暴利をむさぼり、歯向かうやつは力で押さえつける、か。まさに生かさず殺さず、民から搾れるだけ搾り取る。悪政の良い見本だな、胸糞わりぃ」
「フン。
 発想は正しいがやり方が不味かった例だな。
 せめて『賊に占拠される前に保護する』という大義名分があればもう少し私腹を肥やせただろうに。
 この国は悪事ひとつとっても雑だな」
 『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が肩をすくめた。セレマの言う通りなら、確かにもう少し私腹を肥やせただろう。が、そんな頭の回る悪党が何人もいられても困るのも事実だが。
「相手が阿呆で助かった、というべきかな」
「うむ! 付け入る隙を得られたのは僥倖といえるであるな!」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が笑う。それから、ばしっ、と拳と手のひらを打ち付けた。
「弱肉強食大いに結構――だが、強い者に従うというのであれば当然吾に従ってもらわねばなぁ!」
 呵々、と笑う。大尉たちは、確かに強かったのだろう。だが、それも井の中の蛙といえただろうか。
「さて。わかっていると思うが、今日の戦いは時間がものを言うぞ」
「うむ。吾らが戦えるタイムリミットは、正面の部隊が戦力を抑えている間……」
「はい。最低でも、戦える間に敵の親玉の首を取りたいものです」
 『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)が言った。
「仮にタイムリミットが来ても、司令官の首を取っておけば、残りはポラリス・ユニオンの兵士の皆さんによる制圧も容易でしょう」
「まぁ、全滅させるつもりだけどな」
 ぎり、とわずかに奥歯をかみしめて、『暴風暴威』リズリー・クレイグ(p3p008130)が言った。
「……悪いな、ああ、悪い。
 少し、苛ついててな。
 最近アタシ、ガラにもなく頭使って色々考えてたんだよ。
 だってのに、シグバルドの野郎がどこぞの馬の骨にぶっ殺されやがってさあ。
 おかげでヤツと後々直接戦り合う楽しみのために我慢してたアタシの努力とか、ぜーんぶパーになっちまって……有り体に言やあ、ムシャクシャしてんだよね」
「察する」
 百合子がうなづいた。
「わかってくれるか。というわけだから、アタシは加減はしねぇ」
「いいんじゃないか?」
 エレンシアが言った。
「どうせクソ野郎どもが相手だ。加減なんか必要ない!」
「そうだよ! さんざん人を苦しめてきたんだから!」
 リリーもぷんぷんと怒った様子を見せた。
「脳筋どもめ、浄水場を破壊してくれるなよ?」
 セレマが肩をすくめる。誠吾が苦笑した。
「努力はするよ。さて、そろそろ行くか!」
 誠吾の言葉に、仲間たちはうなづいた。一斉に、スノーモービルのエンジンをふかす。そのままアクセルを押し込めば、スノーモービルは一気に斜面を駆け下りていった!
「くそ! 敵だ!」
 正面から、敵兵士の叫び声が聞こえた。浄水施設の囲いである木の板をスノーモービルの車体でぶち割って突撃! 前面に立ち並ぶ兵士たち……そして軍曹と、大尉!
「うおおおおお、らぁぁっ!!」
 リズリーが吠えた! 兵士たちの放つライフルの銃弾を物ともせず、スノーモービルで突撃! 兵士たちが慌てて飛びずさるのをしり目に、リズリーはスノーモービルの運転席を蹴り上げて、跳んだ。スノーモービルが壁に突っ込んで停止する。壊れていないのは、さすがの発掘兵器ということか。さておき、リズリーは上空でベルゼルガの斧を掲げると、大尉に向かって飛び込む!
「アンタがトップか!
 悪いんだけど、加減できねえからさ。死にたくなきゃあ死ぬなよ!」
「なんだ、テメェは!」
 大尉が短銃を打ち鳴らす。放たれた銃弾を、リズリーは斧の腹で受け止めた。がぎん、ぎん、と鋭い音が走る。リズリーは斧の刃を立てると、そのまま落下の速度を利用して振り下ろした! とっさに飛び跳ねる大尉。地面をえぐる斧の一撃。その衝撃が、大尉のほほに傷を走らせた。
「とんでもねぇやつだな! おい! 軍曹!」
「ああ! ビビッてねぇで攻撃だ!」
 軍曹の叫びとともに兵士が動き出す。連携だった動き。バズーカの爆風で足を止め、中距離からのライフルで確実な狙撃を狙う。リズリーは端林家ながらそれを回避する。
「あいつが司令塔だ!」
「了解である!」
 百合子が叫び、爆風の中を切り裂くようにかけた。軍曹に肉薄する。
「吾は、白百合清楚殺戮拳、咲花・百合子である!
 よそ見などしてくれるなよ、軍曹殿!」
 叩きつける、拳! 軍曹は、ひゅぅ、と慌てたように呼気を吐き出しつつ、スチームライフルの銃身でそれを受け止めた。すさまじい衝撃が、軍曹の体を駆け巡る――顔を引きつらせる。
「くそ、直撃じゃねぇのにこの痛み! 化物かよ!」
 慌ててライフルで百合子を振り払うと、そのまま銃弾を撃ち放った。たたたん、とスリーバーストの銃弾が百合子を狙う。百合子はダッキングをする要領で姿勢を下げて、その銃弾を回避して見せた。軍曹が驚く。
「つくづくぅ!
 おい! 足止めだ! タイマンでやるな、複数でかかれ!」
 軍曹の言葉に、兵士たちがバズーカを発射する。あちこちで爆風が鳴り響き、着弾した弾頭が浄水場の建物を粉砕――しない。『戦闘に巻き込まれただけならば、この地は破壊されない』。保護結界の力。
「やれやれ、どっちも脳筋肉ばかりめ」
 セレマが嫌そうに声を上げた。その顔面に銃弾が突き刺さる――が、次の瞬間、弾けたはずの頭は、何事もなかったかのようにそこにあった。いや、銃弾がさく裂し、柘榴のように弾けた、というそれ自体も、予想と想像に過ぎない。銃弾は突き刺さったかもしれないが、その美はそのわずかな『瑕』をも許さないのである。つまるところ、いくら銃弾が突き刺さり、実際そのように見えたとしても、セレマは一寸の創すらあらわにすることなく、そこに立ち続けていた。
「なんなんだあいつは!?」
 悲鳴を上げる、兵士。
「死ななねぇのかよ!」
「いいや、死ぬよ。ボクは別に不死ではない。まだね。今のボクは殺せる。でも君には無理だ」
 優雅に一礼をする――その額に銃弾が突き刺さる。が、そこにはもう何も残らない。ただ完璧な美だけがあるのみ。それは、兵士たちにとって、極上の恐怖に違いない。
「く、くそ! ねらえ、あいつを――」
「おっと」
 誠吾が、その妖刀を振るう。その斬撃が、兵士の持っていたライフルを切り裂いた! ざん、と音を立てて、ライフルの銃身が半ばから切れて落ちる。ぶしゅう、と蒸気が新たな逃げ場を見つけて噴き出した。
「そうはさせない。大将首はほかのやつらに任せてるんでな。アンタらの相手は、俺だ」
 誠吾が妖刀の『みね』で兵士の首をしたたかにたたいた。ぐえ、と悲鳴を上げて、兵士が倒れる――同時、強烈なバズーカの爆風が、誠吾を襲った。誠吾は飛びずさりながら、近くにいたライフル持ちの兵士へと駆ける。先ほどと同様にライフルを切り裂いて無力化すると、その腹にしたたかに蹴りを入れて、意識を刈り取ってやる。
「ウルリカ! 後ろのバズーカ持ちを黙らせたい!」
 誠吾の言葉に、
「かしこまりました」
 ウルリカがうなづく。その手をかざす。エア・ハンマー。不可視の衝撃波。
 す――たんっ、とASSがウルリカを『疾走(はし)』らせた。その速度がエア・ハンマーを起動、指向性を持った衝撃波が、バズーカ兵士のそれを撃ち抜いた! ばぐおん、と強烈な音を立てて、バズーカが破砕する――その衝撃に吹っ飛ばされた兵士が昏倒!
「新世代英雄部隊……面白い芸名ですね。誰の考案でしょうか? よいコメディセンスをお持ちのようです。
 それに、やっていることが腕っぷしによる制圧と税の取り立てでは、新世代というには古臭い。
 新世代の英雄を名乗るなら、もっと効率悪めの新しい商売で成り上がってください」
 淡々と告げる。同時に、再びASSにより方向転換と速度を上げて、跳躍(ステップ)――その速度をのせた衝撃波(エア・ハンマー)がバズーカ兵士を狙う! ばずん、と耳元で炸裂する、衝撃波音。間近で爆発が起きたかのような衝撃が、バズーカ兵士を吹き飛ばした。
「新時代の英雄だぁ? 新しい時代の英雄様はこんな力に物を言わせた暴政を敷く物か。そんなクソな英雄様は願い下げだな!」
 エレンシアが、叫びながら強大な大太刀を、暴風を巻き起こすように薙いだ。強烈な剣閃はまさに暴風域を巻き起こし、エレンシアを中心とした円のうちに、殺戮の暴風を巻き起こす!
「ぎゃあっ!!」
 悲鳴を上げて、兵士が吹っ飛ばされる。そのままぶっ倒れて意識を失った兵士には目もくれず、エレンシアは獰猛に笑いながら、その大太刀を振るい続けた。
「そっちが力で民をねじ伏せるなら、アタシ等はそれ以上の力でお前らをねじ伏せてやらぁ!」
 そのまま、近くにいた兵士に、強烈な大上段からの一撃をぶち込んでやる。それは、城壁破砕の一撃か。なんにしても強烈なその打撃は、兵士をぼろきれのように吹っ飛ばした。これまでの悪辣さの代価を今支払うかのように、強烈な痛みが兵士の体を駆け抜け、その意識を散らす。
「弱肉強食、なんて言葉のもとに好き放題してたんだろ? なら、アタシらが好き放題しても文句は言えねぇよな!」
 エレンシアの無茶苦茶な論理は、しかし彼ら悪党どもが恣にしていた論理だ。それをぶつけられて、確かに文句などを言う権利はないはずだ。
「テメェら! 給料は払ってんだ! 死ぬ気で働け!」
 大尉が見苦しく叫ぶ。そこへ飛び込んだのは、リリーだ。上空から、緑色のワイバーンを伴い飛び込んできたリリーが、魔道銃の照準を、正確無比に大尉へとポイントする。
「狼藉千万! そこまでだよ!」
 言葉とともに放たれる、魔道銃弾! 放たれたそれは広範囲に雨のごとく降り落ちた。その弾雨の輝きは、堕天のそれである――。
「くそっ、大したガンマンが居やがる!」
 大尉もまたガンマンであり、相応の実力を持った相手であったから、リリーの力を即座に理解した。走りだした大尉が、物陰に隠れようとする――それを見透かしたかのような呪いの弾丸が、大尉の持つ短銃の銃身をえぐった。じゅわ、と呪いが銃を通じて、大尉の体を蝕む。
「ごめんね! こう見えてリリー、"当てる事"と"連射速度"には自信があってねっ!」
 にぃ、と笑って見せるリリー。確かに、リリーの射撃の腕はその自信に違わぬものだ。大尉が応戦するが、リリーは『リョク』を華麗に操り、空を舞って見せる。だが――。
「……まずいかも」
 リリーがつぶやいた。上空に舞い上がったリリーが見たものは、瓦解の様子を見せる、領主館前のポラリス・ユニオンの兵士たちの姿だった。これ以上、時間をかけてはいられない。これ以上の猶予を求めるならば、兵士たちの手ひどい全滅を要求することになる。
「どうしよう! 全部倒せるだけの時間はないかも!」
「軍曹と、大尉だけでも倒す!」
 百合子が叫んだ。
「頭を取れば、そうやすやすと動けまい!」
「同感だ。烏合の衆なら、兵士たちでも御せるだろう」
 セレマがうなづく。その瞬間から、動きが変わった。
「誠吾君、ウルリカ君、エレンシア君。大将首から敵を引きはがせ。残りのメンバーで大将首をとって、撤退だ」
「わかった!」
 誠吾がうなづいた。手近にいた兵士を、漆黒の盾で殴りつけ、昏倒させた。
「エレンシア! ウルリカ! 頼む!」
「おっけー! まとめて薙ぎ払って足止めする!」
 エレンシアの大太刀が、バズーカ兵士を殴りつけた。同時、ウルリカのエア・ハンマーが援護射撃のごとく、あちこちに爆散する。
「攻撃を」
「応!」
 リズリーが吠えた。強烈な斧の一撃が、大尉の短銃を殴りつける。
「ちぃ……! だが、もう少し耐えれば俺たちの勝ちだ!」
「加減はできんといったなぁ!」
 リズリーが、まるで猛獣が吠えるかのような雄たけびとともに、斧を振り下ろした。強烈な斬撃、いや、打撃、そして衝撃。あらゆるものの混ざり合った『暴力』の一撃。リズリーのそれが大尉を吹き飛ばし、壁にたたきつけた。
「リリー!」
「おっけー!」
 リズリーの叫びに、リリーがうなづく。魔道銃から放たれた一撃が、大尉の体をうがった。体の中を駆けめぐる、魔術の弾丸。痛みが、呪いが、あらゆるよくないものが、大尉の体を侵食し、そしてその意識を永遠に失わせる。
「こっちはよしだよ!」
「百合子! 援護する!」
 リズリーが叫び、その斧を投げつけた――その先にいたのは、軍曹だ! 軍曹の持っていたライフル、そこに斧が突き刺さる。ばぐおん、と蒸気を吹き出して、ライフルが爆散した。
「ちぃーーっ!!」
 軍曹は懐から短銃を抜き放ち、リズリーにポイントする。銃弾がリズリーの肩口に突き刺さった。激痛。だが、それは判断を誤った行動だった。蒸気の幕府を吹き飛ばしながら、目の前に、百合子が迫っていたのだから!
「ラッシュでとどめ……と行きたいが、時間制限ゆえに! 一打必倒でお相手する!
 星見の拳よ――貴殿は何を見るか!」
 その拳が、軍曹の体に突き刺さった。百合子が見たのは、虚空か。あるいは、雪空の灰か。では、軍曹が見たものは、今際にてみたそれは、果たして。刹那の夢か。
 わからぬ。が、彼がそのまま、意識を失ったことだけは確実だ。ごふ、と息を吐いて、軍曹が倒れ伏す。
「そ、そんな! 大尉が、軍曹が!」
 残った兵士たちが、目に見えて浮足立っていた……あとは烏合の衆。だが、それらすべてを掃除するには時間が足りなかった。
「撤退信号、撃ちます」
 ウルリカがそう声を上げて、蒸気式の信号弾を撃ち放った。灰色の空に、ぼん、と火薬がさく裂する。
「スノーモービルを!」
 誠吾が叫んだ。
「可能な限りの戦果は挙げた! 振り返るな!」
 エレンシアが叫んだ。その言葉通り、敵の大将首は獲った。それは確実な、戦果だった。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 惜しくも今回の奪還は逃しましたが、敵のトップの首は獲りました。
 頭を失った兵士たちは、もはやただの烏合の衆です。
 近いうちに、ポラリス・ユニオンの兵士たちによる奪還作戦が行われるでしょう。
 そしてその際には、確実にオルスバインの街は解放されるはずです。

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