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シナリオ詳細

<咬首六天>雪下の実りを得に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●食べ物情報
 収穫したきのこをどう食べるか話しながらの、きのこ狩りの帰り道。
「雪下野菜をご存知ですか?」
 エルシア・クレンオータ(p3p008209)が零したそんな言葉に、「なぁに、それ」と劉・雨泽(p3n000218)が興味を示した。
「雪の下に野菜があるの? 寒さで枯れてしまわない?」
「外に出ていたら枯れるかもしれませんが、雪の中って意外と温かいらしいんです」
「ああ、なるほど」
 雨泽が得心したのは、豊穣の雪が多い地方で作られるかまくらを思い出してのことだろう。
「雪下野菜は甘くて美味しいのだそうです」
「それは食べてみたいよね」
「はい。きのこと一緒にお鍋の具にしても美味しそうです」
 あとに続くのは、どんなものがあるのだろう。どんなものがあるとうれしいだろう。といった想像の話。
 他愛もない話に花を咲かせ、ローレットも目前となったその時、エルシアがぽつりと零した。
「寒い地方――鉄帝の食料問題的にも、見つかるといいのですが」
 憂うその声が、雨泽の頭の片隅に引っかかった。

●収穫に行こう
 ザクザク、ザク。雪を踏む。
 新しく降ったふわりとした雪の下の雪は、雪と氷の間の子のようで、踏みしめる度にざくりと足元で雪が鳴いていた。
 雪に覆われた真白の山の中、進んでいく男女の影がここのつ。
 それから荷台のような少し大きめなソリを数人で引いている。
 もこもことした服は防寒力は高いが、どうしたって動きづらい。そのため一行の足取りはひどくゆっくりだ。
 はあと白い息を零して顔を上げたエルシアの鼻と頬を赤く、その寒さを語っているけれど、寒さに閉ざされたこの道を引き返そうとは思わない。寒くとも、動きにくかろうとも、前へ進む。目的があるからだ。
「……この辺り、でしょうか」
 白い息を零しながら、銀髪の女性が足を止めて辺りを見渡した。スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)だ。
「そうだね、村人の話では、きっと」
 スティアの言葉に、雨泽が首肯する。
 雪下野菜が鉄帝にも無いか探した雨泽は、ヴィーザル地方のとある村でも行っているという情報を得た。春や夏の間に種を蒔き、秋の間に収穫せず、冬の蓄えとしているのだとか。
 種を蒔く量は年々増やすようにされている。この近年村人の人数も右肩上がりになっていたのと、動物たちに食べられてしまう可能性も見越してのことだ。そうして今年の冬も村人たちが生きながらえるのには充分余りあるほどの種を蒔いた。
 ――訳なのだが、ここで問題が発生した。今年の冬が『例年と同じ』ではなかったのだ。皇帝が代わり、犯罪者や魔獣が跋扈し、加えてひどい寒さと雪。
 早い話、村人たちは収穫ができなくなってしまった。
 そこで、交渉したのが雨泽だ。代わりに収穫に行くから、村人たちが冬を越すのに必要な分以外を貰えないだろうか、と。
 その言葉に村人たちはふたつ返事で応じた。収穫が出来なくては冬を越せず、山に出れば魔獣や吹雪に飲まれてしまうかも知れない。それをイレギュラーズたちが代わりに請負、報酬も自分たちで消費しきれない野菜でいいと言うのだ。
 村人たちは雪に埋もれてしまわないような高い木の枝に『目印』を付けていると聞いているのだが――
「目印が見つからないね」
「そうだね、それに……」
 スティアがチラと視線を向けるのは、まるでそこに何かがあるみたいに『不自然に盛り上がった雪』だ。何か――例えば木が倒壊し、雪が覆い隠せばあのような形になるのかもしれない。
 他にも、周囲の木々に獣の爪痕のような痕が見られる。
 それはまるで、獣が縄張りを示す痕に酷似していた。
「ともあれ、こうして佇んでいる訳にもいかないよね」
「ええ。野菜を見つけませんと」
 雨泽の言葉にエルシアが頷いて。
 けれど充分に気をつけようと、スティアが皆に注意を促した。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 ご飯がないと生きていけないので、食糧ゲットしにいきましょう。

●目的
 雪下野菜を見つけ、収穫する

●シナリオについて
 シュネーレッティヒという雪下野菜を探し、収穫しましょう。
 一日ではすべての収穫ができるわけではないため数日をかけて行いますが、リプレイは『最初の一日目』になります。
 早朝に村を出発し、昼前には畑(があると思われる場所)に到着し、収穫。そして日が暮れる前に村につけるように帰還する、というのが一日のサイクルです。日が暮れた雪山での行動は自殺行為ですので、欲を出しすぎず無理なく収穫をしましょう。
 収穫をしていると二足歩行のウサギに似た魔獣が現れますので、これを倒しましょう。魔獣のお肉もまた、ヴィーザルの飢えた人々の食糧となります。
 できるだけ沢山収穫できるような策があると、とても良いです。

●フィールド
 ヴィザール地方の雪に覆われた山の中。見渡す限りの白と、背の高い木々たち。
 とある村から運搬用のソリを引きながらてくてくと歩いていきます。
 フレーバーにはなりますが、防寒具や足元の都合で普段通りのようには行動し難いでしょう。

●シュネーレッティヒ
 雪の下に埋まっている大根に似た野菜で、葉は短めです。
 真っ白でツヤツヤとした光沢があり、太いものはそれなりに重たいです。途中で折ってしまうことのないように気を付けて収穫しましょう。雪うさぎはコレの葉が雪から出ているとご飯にしているようです。
 一般的に出回っている大根よりも甘みがあり、鍋にしても煮ても、漬けても美味しいです。

●魔獣『ロップイヤーフットホークラビット』1体
 筋肉ムキムキな二足歩行のウサギちゃんです。体長は2mほど。
 マッチョメンな身体に、可愛らしいウサギのお顔がついています。とても可愛いです(お顔は)。
 この雪の中では弱者は生き残れません。ウサギちゃんもムキムキに進化しました。前脚も後ろ脚も、木を折れるくらいのパワーを有しています。力と防御、そして寒さ対策への進化を遂げたせいか、それ以外の抵抗値が低いです。
 シュネーレッティヒを狙っています。お野菜大好き。

●同行NPC
 劉・雨泽(p3n000218)が同行しており、収穫のお手伝いをします。
 戦闘の際はソリが破壊されないように移動させたりするでしょう。
 してほしいこと等ありましたらプレイングで指示をお願いします。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <咬首六天>雪下の実りを得に完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)
魂の護り手
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

サポートNPC一覧(1人)

劉・雨泽(p3n000218)
浮草

リプレイ

●自然の冷蔵庫
 びゅうと白を纏った風が吹く。
 それはひんやりなどといった優しいものではなく、風が吹く度に視界を新たな白で染める雪の女王の凍てついた息吹だ。
「う~、すごい寒さ……!」
 ぴゃっと首を竦めた『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)が思い出したように時計を見て、時間を確認した。白に染まった世界での時間は解りづらいため、ユイユが告げる時間は一行の行動選択――主に作業を切り上げる時間を決めるのにとても役立つことだろう。
「皆、着いてこれているか?」
 一行の中で一等寒さに強いであろう『北辰連合派』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)は誰よりも荷物を多く持ち、時折足を止めて振り返り、仲間たちの様子に気を配ってくれてとても頼もしい。
「大丈夫です」
「大丈夫だよ」
 凍傷にならないようにもこもこと着込んだ『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)と『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は顔を上げ、頼もしいベルフラウへと笑みを向けた。
「しかし、シュネーレッティヒか」
「ヴィーザルっ子のベルフラウには身近なものなのかな」
 雨泽の問いにベルフラウが「うむ」と頷いて。
「あれは甘くて美味い。幼い頃、冬に風邪を引くと摺り下ろして塩で調味したものを母が良く食べさせてくれたものだ」
「あまくておいしい、ですか? お鍋にしてもおいしいでしょうか?」
 おいしいという言葉に反応し、一面の白を瞳に映していた『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)が、ベルフラウへとキラキラとした視線を向けた。
「煮込んでも美味かろうな。すりおろしてみぞれ煮も良さそうだ」
「大根に似ているお野菜なら、食べ方は色々できそうだよね」
「お野菜を雪に埋めて保存と甘みの増進を兼ねる……良い生活の知恵です。依頼を無事に終え、引き取り終えたら色々と試してみたいものですね」
 ベルフラウに続いてスティアも食べ方の話に加われば、木々の声へと意識を傾けていた『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)も小さく笑う。時折悲しむような木々の声が聞こえてくるとその木は傷を負っていて、そのことが酷く気がかりではあったが。
「雨泽様はどんな食べ方が好きですか?」
「大根に近いなら、おでんとか鰤大根にしたいな」
 ニルの言葉に雨泽が笑みとともに返し、一行は村人から目印があると聞いていた場所へと向かった。

 しかし、目印は見つからない。
「目印、ない。どうして?」
 最初にあると言われた場所に無く、進み。それでも無く、『魂の護り手』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)が首を傾げる。
 気を付けて歩かねば知らずに野菜の上を歩いてしまうことにもなりかねず、一行の足取りはゆっくりだ。
「……木々がざわついています。傷ついた悲しさで……」
 エルシアが木々の感情に同調するように服の胸元を押さえると、「そうね……精霊たちも元気がない子がいるわ」と『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)が顎を上げて宙へと視線をさまよわせた。
 雪の精霊や風の精霊たちは、楽しげで元気。木の精霊は悲しい気配を漂わせて隠れているようだ
「先程から気になっていたのだが」
 ベルフラウが涼し気な視線を向ける方角に、シャノもうんと同意を示す。
「自も、気に、なってた」
 こんもりとした、不自然な形の雪。あの下にはもしかして、木が埋もれているのではないだろうか。
 シャノが倒木へと指をさす。
「掘ってみましょうか」
 ソリに乗せていたスコップをシフォリィが差し出せば、頼もしくベルフラウがその柄を取った。
 道中の木々に刻まれていた傷は、新しいものもあれば古いのもあった。最初はそれが目印なのかと思ったが、雨泽やベルフラウが事前に聞いている情報では『高い木の枝に赤い布』が目印である。矢張り魔獣が闊歩しているのだろうと警戒しながら歩を進めてきたが、爪痕らしきものが点在しているだけで姿は確認できなかった。
「矢張りか」
 赤い目印が見えた後も、ベルフラウは堀り続ける。
 倒れた幹の周囲を掘ってどちらに根本があるかを確認し、根本を見つける。そうして倒れた方向と傷をつけれた方向から、倒れる前の木の状態を推察し、「あちら側だな」と当たりをつけた。
「アラ見て、ウサギよ♪」
 小さな雪兎がぴょんぴょんと跳ねていくのを見付けたジルーシャが声を跳ねさせた。
「ぴょんぴょん跳ねて可愛いね」
「兎、いる。食べ物、ある?」
「そうかもだね。――おいで」
 スティアが雪兎を使役し、兎の低い視点から雪下で眠るシュネーレッティヒを探す。
「雪ってどれくらい野菜の上に積もってるのかな」
「どれくらいでしょう」
 透視が使えるユイユとシフォリィが首を傾げた。雪が1m以上の厚みがあった場合、透かし見ることはできないからだ。
「見て、雪と風が喜んでいるわ」
 目印のあった倒木から畑があると聞いた方角は生えている木々が控えめで、小さな広場のようになっていた。高い木々が辺りを囲んでいるからだろう。気流が変化して雪が舞い上がっている。他所よりも雪は積もらず、植えやすい場所と思われた。
 しかし、今年の寒さと雪は例年とは違う。
 それはベルフラウが最も感じていることだろう。
 開けているから木々は温かさを感じられず、ユイユとシフォリィの視界には野菜の姿は映らず、スティアの操る兎でも見つけられない。されども周囲を見渡せばぴょこぴょこと顔を出す雪兎たちが見える――誰かが動物と話せていたら、彼等から食べ物の在り処が聞けたかもしれない――ことから、この辺りにあると見て良さそうだ。
「では、掘るか」
 場所があっているのならば、掘るしか無い。
 掘るにあたって、ユイユとシフォリィの透視は大いに役立った。雪嵩がある内は遠慮なくスコップを突き立て、それ以外――葉が見えたなら加減をすればいい。
 堀った雪はベルフラウとぼやきながらも雨泽が避けていく。ベルフラウの提案で風が吹く側へと積み上げた雪は、良い風よけにもなった。
「見えてきたね!」
 真白の雪に、緑が見えた。
 パット表情を明るくしたスティアが兎と一緒に掘れば、兎がひくひくと鼻をひくつかせて愛らしい。周囲をうろついている雪兎たちも、例年ならばこの辺りにあるはずの食べ物が見つからなくて困っていたのだろう。鼻をひくつかせイレギュラーズたちの同行を伺っていた。
 そんな兎たちが、一斉にパッと身を翻す。
「――! 木々が怖がっています!」
 ざわめく木々たちの声は悲鳴のようで、『来た』『来た』と怯えるような意思がエルシアに伝わった。
 イレギュラーズたちは息を潜め、周囲に気を配る。遠くから匂いを嗅ぎ分けてきた獣なら、隠れても無駄だ。
 エルシアに伝わる怯えが強くなり――それはぴたりと消える。
 怯えるあまり息を呑んだように、しんとした静けさが舞い降りて。
 それは、ぴょこりと顔を出した。
 白い景色に、白い顔と長い耳。
 普通の雪兎よりも大きいが、ヴィーザル地方は高原に大型兎のヴィーザルジャイアントラビット等も生息している。
「アラ、ウサギ? 葉っぱを食べにきたのかしら、やーん可愛――」
 大きなウサギだからその分鼻もいいのかしら。
 なんてニコニコとしたジルーシャの視線の先で、それが立ち上がった。
「――くない!? ちょっと何あれ!」
「なるほど、筋肉で熱を得ているのか」
「寒さに適応したってレベルじゃないわよ!?」
 四足で駆けてきたであろうそれが二足で立ち上がると、可愛い頭より下は筋肉隆々のマッチョボディだったのだ!
 ふむと冷静に観察するベルフラウに反し、ジルーシャは慌てた。幽霊が出てくるよりはマシだけれど、ほんの少し前の可愛いものに対してのほわぁっとなった気持ちを返して欲しい。
「ムキムキ……だけど草食なのかな?」
「わあ、モフみが失われちゃってる~」
「マッチョ化、想定外、可愛くない……」
 スティアは首を傾げ、ユイユはもふもふな自身の尾に触れ、シャノは静かに不満げな声を落とす。逃げていってしまった雪兎たちはあんなにも可愛かったのに。
「ムキムキな兎さんも野菜がほしいのかな?」
「うさぎさんもおやさい……あっ」
 スティアが首を傾げ、ニルが尋ねようとした時。ムキムキな兎――ロップイヤーフットホークラビットが前脚を掛けた木がベキッとへし折れた。同時に響いた木々の悲鳴に、エルシアは胸を抑えてぎゅうと瞳を閉ざした。
 ロップイヤーフットホークラビットがイレギュラーズへと視線を向ける。その瞳は獣のそれで、菜食主義ではなさそうだと思わせるには充分なものだった。
「来るぞ!」
 ベルフラウが短く叫ぶ。
「おやさいをまもります!」
「ソリは任せたわよ、雨泽!」
「任せて」
 ニルが保護結界を展開し、雨泽は皆の戦闘の邪魔にならないようにソリを移動させる。
「大きなウサギには悪いですが、これも生きる者の摂理。収穫させていただきますよ!」
 ロップイヤーフットホークラビットが地を蹴るやいなや、一等素早いシフォリィが前へ出る。花吹雪が如き極小の炎乱でロップイヤーフットホークラビットを絡め取って動きを封じると、木々を想う気持ちから溢れたエルシアの涙から茨が伸び、白雪にロップイヤーフットホークラビットの血が散った。
「毛皮もお肉も、使いみちがあるよね!」
「うん。背中、狙う。革、小さく、取りづらく、なる。避ける、べし」
 ダンとユイユの銃弾がロップイヤーフットホークラビットを貫いて、素早く飛行して背後を取ったシャノの矢がロップイヤーフットホークラビットの背に突き刺さる。
「おやさいは勝手に食べていいものじゃ、ないのですよっ!」
「精霊たちが泣いているわ。アンタ、お行儀よく食事なんてできそうにないものね!」
「木をへし折る程の脚力か、面白い! では鉄は折れるか、試してみるが良い!」
 ニルとジルーシャが畳み掛け、何とか炎を振り払ったロップイヤーフットホークラビットの足を真っ向からベルフラウが剣で受け止め押し返す。
「収穫作業の邪魔をしないでよね!」
 氷結の花でスティアが野菜よりも自分へと視線を向けさせれば、またシフォリィが炎の花を咲かせた。
 イレギュラーズたちの連携で然程時間を要することもなく、ロップイヤーフットホークラビットはどうと雪の中へと倒れ込むこととなった。
「皆、怪我は――大丈夫そう、だね。さあ、収穫を続けよう!」
「肉は食糧に、毛皮は防寒具になる。収穫を進める者と解体をする者に別れるとしよう」
 スティアの言葉をベルフラウが引き継ぎ、ロップイヤーフットホークラビットの身体を数名で畑からそれなりに――血の匂いで寄ってきた獣たちに畑を荒らされないように――離したら、シャノとエルシア、スティアはベルフラウとともに解体側へと回った。
 素早く血抜きをして、内臓は抜いておく。魔獣の肝だから解らないが、薬になるかもしれないため、捨てはしない。生き物の身体に無駄な部位はひとつとしてないため、村へと帰ったら詳しく話を聞いて処理をするのが良いだろう。彼等は器用にナイフを操り、持ち運びやすいように部位ごとにロップイヤーフットホークラビットのの巨体を小さくしていく。
「兎肉、野菜と、鍋、したい」
 この依頼での収穫物はヴィーザル地方の人々へ振る舞われる。そういう依頼でイレギュラーズたちは動いている。
 けれど。
「保存に向かない部位なら村の人と分けて食べても大丈夫だと思うよ」
 ニルと協力してシュネーレッティヒを収穫していた雨泽がいいよねとベルフラウに視線を向け、領主の娘たる彼女は顎を引いた。ヴィーザルに住まう民たちの食糧も必要だが、明日からも収穫作業をしなくてはいけないため、イレギュラーズたちの体力確保も必要だ。
「ゆっくり、ていねいに……おいしくなぁれ、おいしくなぁれ」
「あら。ニル、野菜にもおまじない?」
「はい。きっととてもおいしいって、皆様よろこびます」
 ニルが折れることなく綺麗に収穫できたシュネーレッティヒを受け取ったジルーシャが微笑んで、ソリへと運んでいってくれた。

 雪を掘って、かき分けて。どけた雪はロップイヤーフットホークラビットの血がついた雪を埋めるのにも使って。
 せっせと収穫を勤しめば、あっという間に時間が過ぎてしまう。
「キミたち、そろそろ引き上げ時だよー!」
 時計で時間を確認したユイユが声を掛ければ、「もうですか!」とシフォリィが顔を上げた。場所を探したり、ロップイヤーフットホークラビットを倒し、解体に人手を分けたものだから一日目の収穫量はほどほどである。だから、もう少し収穫しておきたいなという気持ちも湧くが――日が暮れた雪山での行動は自殺行為だ。
「黒い布を敷いておきますね」
 まだ収穫していない野菜が埋まっているであろう場所へとシフォリィが黒い布を広げ、その上に赤い布を巻いたナイフをジルーシャが挿して飛んでいかないように固定する。
「村に帰ったら兎肉の加工を村の人たちにお願いしようか」
 解体で手についた汚れを雪に移したスティアが笑う。
 干し肉にしたり、塩漬けにしたり。この寒さだからすぐに痛むことはないが、人々の腹を長く満たせるような加工が必要だ。村の人たちにお願いをすれば、翌日にイレギュラーズたちが収穫していっている間にも作業を進めてくれることだろう。
「よーし、ソリ引くのはお任せあれー」
 行きよりもずっしりと重くなったソリは、ユイユが進んで引き受けてくれた。
 明日は今日よりも、きっと多くの収穫量となるはずだ。それを思えば嬉しくて、牽引する手にも力がこもる。
「村までお願いね。ちゃんと運んでくれたら、後でお礼にクッキーを焼いてあげるから」
 クッキーを焼いてあげれるのは数日後になってしまうけれど、その分たっぷりと焼くから。
 ロップイヤーフットホークラビットを運ぶために妖精の木馬を呼んだジルーシャが、木馬をひとなでした。
 さあ、日が暮れる前に村へと帰ろう。
 そうして鍋で身体を温めて眠ったら、明日も頑張ろう。
 イレギュラーズたちは行きよりも増えた積荷たちとともに、村へと帰っていくのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お野菜もお肉もゲットです。
村の人たちと分け合ったお野菜とお肉は、拠点へと持ち帰り次第、飢えに苦しんでいる村を中心に支給されることでしょう。
人々の心とお腹が、少しでも救われますように。

お疲れさまでした、イレギュラーズ。

●運営による追記
 本シナリオの結果により、<六天覇道>ポラリス・ユニオン(北辰連合)の生産力が+10されました!

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