シナリオ詳細
<咬首六天>折れた翼の物語
オープニング
●ダイダロスの子、フランセス・D・ナウクラテー
状況は最悪だった。
横殴りに振り付ける雪。届かぬ声。迫る危険と、泣き出す子供達。
涙も凍る極寒の地で、救いを求めて進む彼女の足元で、ぽきりと刃のひとつが折れて落ちる。
「せめて、この人達だけは」
残った刃を広げ、彼女は振り返る。
制止の声をふりきり、自分達を追跡する集団を足止めするために。
旧ヴィーザル領タレクに暮らしていた彼女にとって、このタレクを守って戦うことこそが天命であった。
新皇帝による動乱の折、タレクを落とそうと攻め込んでくるモンスターの襲撃はなんとかシャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)の協力をうけて撃退した。
その後は暫くの間攻撃がなかったものの、民の不安は変わらなかった。いつまた襲撃があるかもしれないと警戒を解くことが出来ず、疲弊を癒やすことが難しい。根が素直で献身的なフランセスは率先して見回りを引き受けたが、そんな彼女こそが最も疲弊する状態が続いてしまった。
そこへきて、この未曾有の大寒波である。『フローズヴィトニル』と称されるこの寒波はタレクの民の誰もが経験したことのないほどの記録的、あるいは伝説的な大寒波だ。ただでさえ死に直結しかねない鉄帝の冬が、よりによってこんな時期に猛威を振るうのだ。
このまま村に残っていては備蓄も底をついてしまう。そう判断したタレクの民は最も近い大派閥である北辰連合へ合流すべく移動を開始したのだが……。
「皆さん、早く行ってください!」
もう幾度目になるだろう。新皇帝派の軍、それも精鋭で構成される『グロース師団』なる部隊が散発的な襲撃をしかけてきていた。
吹雪の中を犬ぞりと徒歩で進む民たちの中で戦える者はごく僅かだ。無理をして挑めば死にかねないし、大怪我をおえば助からない。
故にフランセスばかりが矢面に立ち、高い戦闘能力をもつ彼女でさえかなりの消耗は免れなかった。
「くっ……!」
雪に足をとられながらも、なんとか跳躍し、『I.K.R.-SKIRT(イカロ・スカート)』を展開する。スカートの内側から展開した流体金属製の刃が素早く動き、斧を繰り出す敵兵を切り裂いて行く。舞い散る鮮血が雪を染め、それをかぶりながらも別の兵が剣を繰り出す。
なんとか刃のひとつで受けた剣だが、幾度もうけたダメージによってI.K.R.-SKIRTのほうが砕け、地面に落ちた。
もう半分ほどしか刃を展開できていない。だが、せめてこの集団は引き受けなくては……。
雪が降り積もる。
地面に落ちた血は瞬く間に凍り付き、その上につもった雪によって白く上書きされていく。
ここで倒れたら、自分は見つけてもらえるだろうか。雪に埋もれ、消えてしまうだろうか。
そんなことを考えながら、フランセスは……しかし、笑った。
「あの子達が無事なら、私はいいのです。ここで命尽きるなら、それも『天命』」
笑い、そして、構える。
「私はダイダロスの子、フランセス・D・ナウクラテー! 貴方たちとは『差し違えて』差し上げましょう。命を惜しまないなら、かかってきなさい!」
対するグロース師団の兵たちは、ギラリと笑って襲いかかる。ああ、相手もまた命がけか。フランセスは理解し、そして彼女が思う最後の戦いに身を投じる。
●折れた翼の物語
北辰連合に属していたシャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)のもとに、タレクの民たちが救いをもとめ合流してきた。
彼らは無事受け入れられたものの、村長の話によればフランセスは自分達を生き残らせるために新皇帝派の軍に対する足止めをたった一人で引き受けたという。
そして彼らは残り少ないであろう財産を突き出しながら、シャルティエへ請う。
「どうか、あの子を助けてあげて。あんないい子が、私たちのために死ぬなんておかしい」
こうして、急遽フランセス救出作戦が開始されたのである。
- <咬首六天>折れた翼の物語完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年12月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●翼を剣の物語
雪降りしきる平原。吹雪によって黒く濁ったかのような有様を、犬ぞりによってかき分けるかのように進む。
高速で乱れる大粒の雪を払いながら、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は視界のよく通らぬ眼前をにらみ付けた。
「置いて逝かれるのはとてもつらい事だ。
特に誰かの犠牲で命が助かったなら……。
生きてる事に罪悪感を感じ、命が助かっても心に傷が残る」
決意のように、あるいは天命のように呟くウェール。
ゆえに、やるべきことはブレない。これが依頼でなかったとしても――。
「俺の息子はそうだった。俺の犠牲で命が助かったが、最終的に心が傷ついた……だから絶対に助ける!
今度は命も心も笑顔も全部守る為に全力を尽くす!!」
その決意に賛同するように、『花に願いを』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は剣に手を伸ばした。
"なぞなぞ"の名を冠する細身の片手剣には、彼の決意と問いかけが込められている。
(迷わず、自身が信じるものをひたむきに信じて、やりたい事を成す。……自分の醜さに気付いた僕からすれば、それは太陽みたいに眩しいくらいで……)
ダイダロスの子、フランセス・D・ナウクラテー。異形の翼をもつ少女。
彼女と戦略図を前に笑い合った記憶を、共に戦い抜いたあとの笑顔を思い出す。
そしてそんな「きれいなもの」を壊そうとする存在があることを。
「だからこそ、僕も今は……迷ってられないんだ。尊く、村の人達からあんなに慕われてる彼女を、こんな所で死なせられない!」
一度でも共に戦えば、フランセスの気高さやひたむきさが分かるものだ。
『魂の護り手』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)だって、そうだ。
「新皇帝派、また、弱った人、邪魔、してる。本当に、むかつく。
それに、フランセス、心配。一人、流石に、無茶。
きっと、大切な、財産。それ、無駄に、しない。
フランセス、きっと、助ける。だから、待ってて」
同意を求めるようにちらりと見ると、コートの前をぴっちりとしめた『希望の星』燦火=炯=フェネクス(p3p010488)が難しい顔で頷いた。流石の彼女もこの吹雪はこたえるのだろうか。それとも風の抵抗をうけてそりが減速することを心配してだろうか。
「まったく、随分と派手な無茶をするじゃない!
心配する方の身にもなりなさいよね?
でもまぁ。なんだかんだで生きて足掻き続けていた点は褒めてあげる。
ここからは、安心して私達に任せなさい!」
吠えるように吹雪にむけて叫ぶ言葉は、フランセスにあてたものだった。
『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は同意を示し、『急ぎましょう』と身をかがめるような姿勢を取った。
犬ぞりが速度をあげ、フランセスが足止めを行ったポイントへと急速に近づいていく。
分厚いロングコートを纏い、眼鏡へ手袋越しに指をあてる『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)。
「強い少女だな。命懸けの足止めとは全く。助け甲斐がある」
それに、とジョージは自分達に助けを求めてきた難民達のことを思い出した。
彼らは拠点にたどり着くなりフランセスの救助を求めた。大きな派閥に加わるにあたって財を投げ捨てては自分達の立場を悪くしかねないだろうに。それほど彼女を大切に思っていたのだろう。
「そこまで強く、カリスマのある少女なら、生還すれば、残った者達の精神的な柱になるだろう。
そうでなくとも、そんな覚悟。子供にさせる物ではない。
その覚悟、俺達が引き継ごう」
「覚悟、ね。なるほどコイツはそういう……」
『スケルトンの』ファニー(p3p010255)は察したように顔をうつむける。
手袋越しにぎゅっと握りこぶしを作り、自らがフランセスの演じる舞台の端に立つ光景を想像した。
と、そんな時。
「……そろそろだぜ」
ぴくりと顔をあげるファニー。
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)がセンサーへ反応があったのだと察し、雪に紛れるかのような白い髪を抑えた。
「フランセスさん……剛毅な子ね」
(新皇帝派はちょっとやり過ぎだけれど、それでも一人で相手をしていい手合いではないのだから、もうちょっと我慢してほしかったかしら……?でも、それだと被害も出ていたかもしれないし。難しいわねぇ……。
とにかく、彼らには帰ってもらって。フランセスさんには休んでもらいましょう)
視界が開け、照明具を腰から下げて戦うグロース師団の姿と、今にも倒れそうなフランセスの姿をとらえた。
「あらあら、一人の女の子をあんな人数で囲って。恥ずかしくないのでしょうか。それとも腕に自信がない?」
犬ぞりのスピードをあえて落とさせず、ぴょんと飛び降りたフルールは精霊天花を開始した。
●きみの物語
ここが死に場所だ。フランセスはそう確信していた。
敵の兵の練度は高く、中でもベスター少佐なる人物はフランセスの戦闘技術とI.K.R.-SKIRTの性能をもってしても苦戦して然るべき強敵であった。
生きて帰るなどという甘えは捨て、危険になれば逃げるなどという甘えも捨てた。
(村人の皆さんは、安全な場所まで行けたでしょうか)
速度からすれば充分にたどり着いた頃だろう。それまでの時間を稼ぐ間に、逃げる隙は完全に逸してしまったが、それでいい。
取り囲まれたこの状態から生かしてくれるほど、敵もまた甘くはないのだから。
せめて一人でも多く道連れにして――と構えた。その時である。
「あらあら――」
何かをいいながら、精霊天花を終えたフルールが燃える焔の如き髪をなびかせ現れた。
吹雪くなか皓々と光るその有様は、敵の注意を否が応でも引きつける。
雪上を滑るように飛行し、腕に燃えさかる炎の剣を作り出すと敵兵の一人へと斬りかかる。
「チッ、援軍です少佐!」
敵兵の実力も大したもので、フルールの強烈な一撃を剣で受けるとすぐに報告を飛ばした。
「戦力解析!」
「はッ! 解析終了、伝達します!」
「F陣形、散開し受けよ!」
ベスターの対応は極めて早く、そして部隊員の能力をフル活用してすぐに対応した陣形へと切り替えてしまった。
ワンチャン指揮系統を混乱させようと考えていたフルールも、ここまで素早く対応されたのではたまらない。
故に、こちらは相手の対応力を実力で突き破るしかなくなったわけだ。
「さぁさぁ、今度は私達が相手してあげるわ。それとも、手負いしか狙えない臆病者かしら!?」
わけだが――それこそ望むところなのである。
燦火は火のドラゴンロアを発動させると、ベスターめがけ赫衝波を叩き込んだ。
その詠唱を一度は聴いていたフランセスが、『あなたは』と小さく声を出す。
「アンタ達って、集団リンチしか能がないのかしら? 違うというのなら、サシで勝負して見せなさいな」
「……」
対するベスターは冷静である。燦火の放つマナエネルギーによる霊撃魔術を盾で受け止めると、黙って次の攻撃に対応した。
冷静な相手はこちらのペースに乗せづらい。燦火はやりにくそうに歯噛みした。
だが、やるべきこと自体は変わらないのだ。
シャルティエがフランセスの隣に立つと、剣を突きつけるように構え叫んだ。
「シャルティエ・F・クラリウス。高潔な戦士を救う為──参る!」
何故、という問いかけの視線をフランセスが向けたが、シャルティアの横顔で全てを察したようだ。
ウェールはそんなフランセスに肩を貸すと、『ヴァルキリーオファー』の術式を発動させた。
「タレクの民達はあんないい子が、私たちのために死ぬなんておかしいと言ってたぞ。
お前さんが死んだらあの人達みんなが泣くんだ。
命が助かっても心に大きな傷ができる……これまであの人達を守ってきたのなら、今はタレクの民の心を、笑顔を守る為に生きろ!」
ウェールの言葉に、フランセスは苦笑して首を振る。
「守るつもりが、あの人達に守られてしまいましたね」
皮肉です、と呟くフランセス。だがウェールは知っている。
「『そういうもの』だ。失う前に気づけたのは、幸運だな」
一方では、敵兵とシャルティエが激しく剣をぶつけ合い戦闘に入っていた。
さすがはグロース師団。鉄帝のあちこちで名を聞くことになった過激な新皇帝派軍人たちだが、その実力もなかなかのものである。
「そっちは任せるよ!」
「了解」
シャノは弓を構えて矢を放つ。幻影の矢が無数に生まれるが、散開した兵はそれを回避する。中央にとらえた敵兵だけが、矢を剣で切り落とすことで対応してきた。
「フランセス、やらせない。相手、自達。
射手、一対一、苦手、思う。間違い。かかってこーい」
シャノは(自分の中ではかなり)堂々と言い放つと、吹雪の中でばさりと翼を羽ばたかせ舞い上がる。
敵兵はそんな彼を強敵とみなしてか、宙を駆けるかのように凄まじい高さまで飛び上がるとシャノへと斬りかかる。
「近づいた、勝った、思った? 残念」
その時には、既に敵兵の足には矢が刺さっていた。
「強い、射手、抜き打ち、見せない。気付いたら、矢、刺さってる。そういうもの」
だが相手もさるもの。矢が刺さったことなどお構いなしにシャノの肩を斬り付ける。
シャノはこの戦いが一方的にならないと察し、本気でぶつかる覚悟を決める。
戦闘が始まり、状況がおおよそに固定される。
フランセスを集中して治療するウェールを除けば、敵と味方の数は五分五分。ここまで仲間がぶつかった際の感触からして実力もまた侮れない。
実力の底はまだ見えていないが、油断すれば殺されるのはこちらだろう。
が、相手もまた同じことを考えているらしい。
ジョージと向き合う兵が剣で天空をくるくるとかき混ぜるように動かすと、独特のフォームで構えた。
「さぁ来い! ここからは俺達が相手だ!」
ジョージはグローブを握り込み、斬りかかってくる相手の剣めがけてパンチを繰り出した。
強靱なその革は剣を弾き、ジョージのパンチは剣の勢いも押しのける。
が、直後に敵兵は短剣による突きをジョージへと打ち込んだ。
「少数か。精鋭部隊か? こんな所で目的の一つも果たせず、俺達相手に負け戦とはご苦労だな!」
ジョージの心臓部へ刺さる……筈だった短剣を直前で握って止める。
だが敵兵は素早く短剣から手を離すと、ジョージの背後へ回り込む。
素早いターンで対応するが、その時には既にジョージの脇腹から血が流れていた。
「さて、なぜこんなことをするのかしら……なんていうのはもう聞き飽きたかしら?」
その一方で、ヴァイスは白く鮮やかな力の塊を敵兵めがけて発射する。
対する敵兵は盾を翳してヴァイスの射撃を防御。
そのまま突進し、ヴァイスへと強烈なタックルを浴びせてきた。
あまりの衝撃にヴァイスは吹き飛び、ザッと雪に足を突っ張ることで転倒することを防ぐ。じんじんと痛む腕。
空間術式によって形成された結界術『虹色庭園』がタックルによって破られた。その事実に、ヴァイスは警戒を強め短剣を握り直した。
そこへ拳銃を手にした兵がヴァイスへ狙いを付けた――その瞬間。
「なぁ、遊ぼうぜ? こんな死に損ない相手に二人も三人も必要ないだろ?」
ファニーが射線を遮るように割り込んだ。
ジャケットのポケットに手を入れ、ニヒルに笑ったような角度で頭蓋骨を傾ける。
「連携なんてさせるかよ、おまえたちは頭上の星を見ることすら叶わない」
相手を指さすように、指鉄砲を構えるファニー。空中に突如出現した獣の頭蓋骨が光線を発射するが、それを紙一重で回避した敵兵はファニーめがけて銃を連射。
そのうち数発がファニーの胴体に命中し、チッとファニーは舌打ちしたように歯を鳴らした。
「あーあ、俺様はタイマンより怠慢のほうが得意なんだがなぁ」
●そして白く濁った空は
どちらが優性なのか。傍目には分かりづらかった。
敵兵とこちらの戦いは勝敗がつきづらく、確実に相手を倒せるかと言えばあやしい状況であった。
少なくとも、まだ誰も、一人たりとも倒せていない。逆に、倒されてもいない。
だが、信じられることはあった。
「よーく覚えて逝きなさい。これが、亜竜の女の恐ろしさよ!」
燦火がここぞとばかりに魂奪剣を発動。ドラゴンロアを刃に乗せ、斬りかかる。
と同時にウェールがウッドストックのスナイパーライフルを出現させ、絶妙なタイミングで敵兵の足を撃ったのだった。
対応行動をとろうとした兵の姿勢が崩れ、燦火の剣がクリティカルに命中する。
そう、ウェールとフランセスが抜けていたために拮抗していたのなら、彼女たちが戻ったところで状況はこちら側の優勢に傾くのだ。
ファニーが『追い風だな』と皮肉を言うようにささやくと、手をかざし肩をすくめてみせる。
無数の獣の頭蓋骨が宙に出現したかと思うと一斉に砲撃を開始。
相手は回避不能とみて防御に徹し始める。
氷の塊にアイスピックを立てるがごとくざくざくと体力を削っていく。
「逃げる、良い。それなら、追わない」
シャノはここが責め時だと考えてかナイフを抜いた。距離をとり続けるシャノを追跡ししつこく斬り付ける敵兵へ逆にこちらから迫ると、相手のタイミングを狂わせつつナイフで相手の足を切りつける。
フルールは手から紅蓮の鳳凰を放ちベスター少佐を襲った。
相手の顔色は悪い。流石に自分達の状況が悪化したと分かったのだろう。
こちらの戦力の底も把握しきれていないようで、陣形を変える様子もない。
(一人倒したら二人目に、そこから三人目に。状況は加速しますよ。どこで『損切り』をするのでしょうね)
「もう……寝てなさい!」
ヴァイスは手を高くかざし、自然のエネルギーの一部だけを味方につけた。
渦巻く吹雪が狼の咆哮のごとくうなり、敵兵へと放たれる。
それをまともにくらった敵兵は吹き飛び、そしてごろごろと雪の上を転がった。
ヴァイスにとってなかなか手強い相手だったが……それもおそらくここまでだ。なぜなら。
「シャルティエさん、合わせて!」
鋭く叫ぶフランセスの声。戦場から離れたんじゃなかったのかと呼びかけようとしたが、シャルティエはそれをやめた。声に込められた強い決意と信頼に、応えたくなったのだ。
シャルティエは剣に聖なる力を込めると、光の刃を敵兵めがけて放つ。
放たれた刃に『乗った』フランセスは、まるでスノーボードを操るかのように体重移動をかけるとI.K.R.-SKIRTを一本だけ展開した。
すぱん――と敵兵の腕を切り落とす。
剣もろとも落ちた腕を見て、敵兵は素早く彼女たちから飛び退いた。
「む」
ジョージは状況の変化を肌で察した。
敵兵がみるみる離れていく。
追撃とばかりに撃ち込まれた銃弾をグローブの手でキャッチすると、ジョージはそれを払い捨てた。
「どうやらここまでのようだ。その娘を殺せれば上出来だったが……まあ、いいだろう」
ベスター少佐がそこでやっと言葉を発し、落ちた味方の腕を拾いあげる。
「総員、撤退だ」
「待ちなさい!」
フランセスが勢いよく飛び出そうとしたが、シャルティエはその腕をぎゅっと掴む。
ここで深追いすれば、それこそ殺されてしまうだろう。
「きっとまだまだ君のやる事はあるんだから。死ぬなんて『天命』はまだ先だよ、フランセス」
「シャルティエさん……」
敵兵たちが黒く濁る吹雪の向こう側へと去って行くのを、シャルティエは睨むように見つめた。
一方のフランセスは興奮をおちつけ、肩をおろした。
「……そうですね。あなたと出会ったこともまた『天命』。まだ私は、生きるさだめのようです」
皆のところへ戻りましょう。
そう続けたフランセスに、仲間達もまた安堵の表情を向けたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――フランセスの救助に成功しました
――この成果により、村人たちからの信頼を獲得したようです。
●運営による追記
本シナリオの結果により、<六天覇道>ポラリス・ユニオン(北辰連合)の求心力が+10されました!
GMコメント
●シチュエーション
タレクの民からの依頼をうけ、フランセス救出作戦が開始されました。
犬ぞりを借りてあるため、雪上での走行に問題はありません。
皆さんが到着する頃にはフランセスは重傷を負っている頃だと思われます。勿論放置すれば死んでしまうのですが、預かっていた傷薬や【治癒】のスキルによって助けることは可能でしょう。
●エネミーデータ
『グロース師団』と呼ばれる新皇帝派の中でも精鋭が集まる部隊です。
彼らがいかなる狙いで移動中のタレクをこうも執拗に狙ったのかはわかりませんが、どうやらフランセスを生かして帰すつもりはないようです。
・ベスター少佐
グロース師団に属する将校のひとり。剣と盾を用いた騎士戦闘を得意としており、戦闘力もなかなかに高い。
【崩し】系のBSを全ての攻撃に備えているため、彼を相手取るなら耐性は必須となるだろう。
・新皇帝派グロース師団
ライフルと近接武器によって武装した集団。一人一人の戦闘力が高く、少数精鋭部隊と思われる。
ベスターは指揮能力にリソースを割いているものの、殆どの兵は『平均的に強く攻防治癒と大体何でも出来る』という柔軟な部隊編成が成されている。
当然連携能力も高く、ダメージコントロールも巧みであったらしい。
集中攻撃による各個撃破を狙うよりは、できるだけ多くのタイマン状態に持ち込んで連携能力を断つ戦術が有効。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
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