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シナリオ詳細

<咬首六天>あまたの怒り、だったもの

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 炎のあとに残るものはなんだろうか、と問われれば、多くは「灰」だ、と答えるはずだ。
 人だろうと、獣だろうと、建物だろうと。灼熱のあとには灰となるのが定めのはずだ。
 さて、果たして燃え盛るような怒りがあるとすれば、それは灰を残すのだろうか。尽きぬ怒りがあったとして、それを強める鞴(ふいご)があったとして。
 焼き尽くしたあと、人の心はせめて、灰くらいは残ってくれるのだろうか。

「……間違いない。俺の仲間のドッグタグだ」
 鉄道施設ルベン内、ホームにて。
 以前、魔種によって退けられたイレギュラーズは「原罪の呼び声」に狂わされたオースヴィーヴル軍人達を見た。戦う力を削がれてなお立ち上がろうとした者は、傷ばかり増えて早晩死ぬであろうことが分かりきっていた。
 そうでない者は……否、どちらにしても、死体一つ残されておらず、わずかな状況証拠のみのこの状況が不自然なのだ。
「新皇帝派のバケモノや魔種がいるなら、そいつに交じっちまってるのかもな。なら、俺達が仕留めてやらなきゃならねえ。アンタ達も、頼むぜ」
 軍人のひとりは、同行したイレギュラーズに気丈な笑みを向けてそう告げた。なにがしかの恨み言を受けると思っていた彼らは少し拍子抜けしたが、「先に仕掛けたのは俺達だ」と続けられれば後に続ける言葉がない。
 あらゆる誤解を乗り越え、彼らは一致団結したのだ。今はまず、ルベンにある遺跡や古代技術の接収が先決となる。だからこそ、新たな潜入口の存在が疑われるこの場に踏み込んだのだから。
 オースヴィーヴル軍人達の能力はイレギュラーズに劣り、死すれば利用される恐れもある。その対策とはいかぬまでも、彼らは数名ずつに分かれ、履帯を履いたトラックとその荷台に乗って移動している。いざという時の離脱策だった。
 それにしても、風が強い。
 冬を迎えた鉄帝では、風の強さに伴う寒気はより重篤な事態を招く。可能な限り風が無い方が助かる、というのが本音である。風の弱まるタイミングを見計らったはずだが……。
 懸念を顔に浮かべた一同の前で、ひときわ強い風が吹いた。それにのって現れたのは、周囲の散らばっていた資材や金属を巻き込んで人型に整形した、不格好な小型の人形たち。
 そしてその背後には、灰が人の形をとって現れていた。


 灰の中から、多数の声音を不格好に組み合わせたような不協和音が響く。何れも人の声であり、恨み言だ。
 それに合わせるかのように前進する人形は、見れば灰がこびりついている様な痕跡が見え……要するにこれは、灰によって操られているということだろう。
「あの灰をどう倒しゃいいのかわからねえが、人形共は足止めくらいなら出来らぁ。倒しても原型が残ってりゃ起き上がってくるだろうから、本当にバラバラにする必要はあるだろうが」
 軍人達は口々に戦意を露わにし、人形達と対峙する。その戦いの空気に引き込まれたか、赤いオーラを纏った死体、名付けるとすれば「プレーグメイデン」か。それらがゆっくりと、だが確実に向かってきていた。
 ……あれと合流される前に、灰を撤退させるか撃破したい。予期せぬ天衝種の到来を避けるためにも、早急に勝利をつかまねばならない――。

GMコメント

 一応このシナリオの前段となるシナリオはあったりするのですが、今回は直接関係しないので脇においておきます。

●成功条件
・『憤激の灰』撃破or撃退
・プレーグメイデン+αの合流(目安10ターン)前に『灰瓦礫』の半数以上の完全撃破+オースヴィーヴル軍人の撤退完了

●失敗条件
・オースヴィーヴル軍人から半数以上の犠牲を出すこと(後述の理由により発生率は低めです)

●憤激の灰
 ルベン攻略戦時に現れ、結果命を失ったオースヴィーヴル軍人の成れの果ての天衝種。多数の人間の遺灰の群体です。
 物理攻撃に強い耐性を持ち、【火炎無効】【覇道の精神】を持ちます。回避・反応高め。
 すべての攻撃に【万能】を持つため、怒り状態でも無理してまで近づこうとはしません。
・塵灰(神中扇:【窒息系列】【乱れ系列】)
・渇血(物超貫:【出血系列】【HA回復(中)】【攻勢BS回復(中)】)
・蝕身(自付、【副】【棘】)
・人形劇(【副】、行動不能の「灰瓦礫」を数体、再起動させる) 
 などのスキルを用います。ほか、灰の武器化による攻撃などバリエーションはそこそこ。
 灰瓦礫の完全破壊数とイレギュラーズのコンディション、軍人達の残存具合などを加味し、撤退する傾向にあります。

●灰瓦礫×15
 灰人形の灰がこびりつき、動き出した周辺の資材や瓦礫などです。
 HP自体は世辞にも高くなく、オースヴィーヴル軍人達で対処可能です。
 が、倒れた後は「死亡」ではなく「行動不能」となるため、灰の能力で再起動する、もしくは行動不能後3ターン以内にHPの5倍程度のダメージを叩き込むと資材が木端微塵になり復活できなくなります。
 攻撃は近接物理のみ。特殊なスキルは用いませんが、数が脅威ではあります。

●プレーグメイデン×5(+アンデッド系天衝種少数)
 生前に激しい怒りをもったまま死んだアンデッドです。オースヴィーヴルとは関係ないと思われます。
 中~超射程の【毒系列】【痺れ系列】【狂気】をまき散らしてくるため、軍人は先んじて撤退させたいところ。
 アンデッド系天衝種は、死ににくい肉壁程度の性能しか持ちません。が、連続戦闘になるので残存体力に注意。
(これらをほっといて撤退しても、灰の撃退に成功していれば失敗とはなりません)

●オースヴィーヴル軍人×10
 友軍。ビークル型歯車兵で移動します(3台)。
 徒歩の時は機動3、歯車兵搭乗時は機動6まで向上します。
 乗り降りにターンを消費するので、降りて戦闘になったら撤退時まで乗らないと思います。ビークルに武装も装甲もないし。
 灰人形数体を受け止められますが、火力的に囲んで叩いても完全破壊は無理なので気を付けましょう。
 念の為申し上げますと、「エネミーがビークル壊して逃げ遅れて壊滅失敗」というケースは今回想定しておりませんのでご安心を。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <咬首六天>あまたの怒り、だったもの完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月05日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
シラス(p3p004421)
超える者
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす

リプレイ


「大変なことになっていますね……」
「ああ、酷いものだ。天衝種ならば仕留めねばならないし、軍人の成れの果てならばもう休ませてやらないといけないな」
 『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)は自分達に向けて敵意を放ってくる天衝種とその分体の姿に、その異常性に、心からの哀れみを覚えた。音楽でもって支援行動に徹するのが主となる彼女であるが、今回ばかりはこの混迷たる状況を脱するに、汎ゆる可能性を講じなければという気分にもなる。『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も彼女と共通点は多少なりあるが、いざ強敵とあればポリシーで戦いができないことを重々承知している男でもある。この局面に於いて、彼ほど『情動が強く、かつ割り切れている』人間は居ないかもしれない。
「我 フリック。我 フリークライ。我 墓守。死者 魂 安寧ヲ」
「そうですね、鉄帝の民であった人々は、救われなければなりません」
 『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は墓守としての矜持から、死者の魂を正しく弔うことを信条としている。だから、魂が歪んだままそこに在るのであれば弔いたいという気持ちが出て当然だ。あれがオースヴィーヴルの民だった者らの成れ果てだとすれば、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)にとっても救うべき対象であることは間違いない。この国の人なのだから。
「急いで始末せねばならぬ、か」
「やれやれ、死んだ味方を利用されるってのも気分悪いぜ」
「ああなっちまったからにはどうしようもねえ。墓も何も作れねえしな……頼むぜ」
 『冥焔の黒剣』リースヒース(p3p009207)は周囲から漂う気配に殊更に警戒を強めた。長引けばその気配そのものと戦うことになるが、ここに居るのは自分達だけじゃない。『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)と軽口を叩き、歯車兵のハンドルを握るオースヴィーヴルの隊長の目は鋭い。だが瞳は揺れ、動揺を隠しきれていなかった。土にも還れぬ灰など、どれほど惨めで哀れか。アルヴァは心底からの哀れみを覚えた。
「こいつは弔いだ、退ける訳がない」
「ああ、"同類"という奴だ。燃え尽きることが救いになるというならば、それができるのは"キミ"だけだ。そうだろう?」
 『竜剣』シラス(p3p004421)はあの灰に込められた無念や怒りといったものを肌で感じ、その意味をより強く感じていた。革命派としてこの地を守らねばならぬが、それ以上にこの地で散ったオースヴィーヴルの兵を弔わねばならぬ。その想いを横目に、『闇之雲』武器商人(p3p001107)は胸の裡から熾る炎にゆっくりとした、言い聞かせるような口調で語りかけていた。……灰にもなれぬままに憤怒を撒き散らしていた嘗ての討伐対象と、燃え尽きども未だ残された命の残滓。どちらも醜い死後を与えられたという意味で共通している、と言わざるをえない。だからこそ、他人のように無下には扱えない。ゆえに確実に倒さねばならない。
「灰になっちまうまで戦ったお前等の分、俺達が戦ってやるってんだ。それでいいだろ」
 オースヴィーヴル兵の言葉を、天衝種が理解できたとは思えない。ゆっくりと前進してくる灰瓦礫に向け、アルヴァとオースヴィーヴル兵が真っ先に向かう。
 死に急いでいる訳ではない。仲間の願いを叶えるため、そして生きる為に戦うのだ。


「決して無茶はすんな。死んだら奴らと同じになると思え」
 アルヴァは兵達を率いて灰瓦礫を包囲し、その半数ほどを引き剥がしにかかる。煉瓦を用いた体を振るってくるのを盾で受け止め、別の兵が盾の影から銃弾を打ち込む。蹈鞴を踏んだ個体に、ハンマーが振り下ろされれば動きは容易に止まった。ある程度の経験はあろうが、人間とかけ離れた外観のそれを的確に撃破したのはアルヴァの指揮あってのことだろう。
「こっちでも十分に引き付ける! 受け持てる数を見誤るんじゃないぞ!」
「瓦礫の方が自分は戦いやすいので、存分に力を振るわせてもらいます」
「戦力分析 大事。フリック 万全維持」
 イズマは包囲から外れた個体群に挑発を仕掛け、己を的として攻撃を受け止める。動きが単純化した個体を狙うのは難しい話ではなく、オリーブが狙いを外す道理もまた皆無。勢いに乗った彼の攻撃を受けつつ愚直にイズマへ攻撃を絞り込む灰瓦礫は、しかし涼花とフリークライ、双方の治癒が控える状態を切り崩せないでいた。
 ……が、そんなイズマ目掛け、灰を固めたような細槍が突き刺さる。憤激の灰による長射程攻撃か、と驚く以前に、それが瓦礫を貫いて届いたことに一同は戦慄する。使い捨て、再利用可能な兵とはいえ、容易に手放すのかと。だが灰の動きは止まらず、オースヴィーヴル兵がやっとのことで倒した個体、イレギュラーズの連携で動けなくなった個体が即座に再起動を果たしたのだ。
「猟兵長、トーティスの旦那。こっちでアレを引っ張るから、もう少し離れられるかい? 起き上がらせるのはともかく、他の攻撃に巻き込むわけにはいかないからね」
「何とかする」
「わ、わたしも出来るだけ攻撃に集中して動きを止めます! その間に!」
「柊木の方はいいコだね。期待してるよ」
 武器商人と灰との距離はやや遠い。一息でたどり着けるが、即座に引き離すには至らない。故に、連携して引き剥がすしかない。なによりあの威力。自分が受け止めるべきだと認識したのだ。声をかけられたアルヴァとイズマは二つ返事で動きを変え、兵達もそれに従い一時散開。治療を主としていた涼花は、この場の判断が――飽くまで彼女の中でだが――分水嶺になると悟り、声を張り上げた。次の瞬間に放たれた神気閃光は威力こそ前線級とはいかぬまでも、その挙動を鈍らせる働きを万全の形で果たしたといえる。強撃を確実に命中させ、行動停止に繋ぐ暇を。
「あちらもこちらも、怪我人ばかりか。兵達もよくやっているが……」
「デモ 想定内。涼花 リースヒース 働キ者」
 治癒に注力しているのはリースヒースも同じだ。積極的に傷を負いにいくイズマやオリーブはフリークライ、補助的に涼花が動く中、リースヒースは兵達の動きに特段の注意を割いていたのだ。数では圧倒している。が、個の力は拮抗か、再起動の分相手が上。傷による不安で精神を削られ、失敗を引き起こす事こそがこの戦いでは恐ろしい。
「統制がとれてて、壊れても動く、か。じゃあ、動きが乱れればどうだ? ……答えなくていい、『お前本体』に聞く」
 シラスが動く。
 不可視の糸を操って灰瓦礫の動きを乱し、涼花の作った隙を縫ってあわよくば倒す。停滞した戦列を縫う形で前に出、武器商人の後ろからさらに攻勢を仕掛ける。一呼吸で色々と熟せるのは灰の側の特権ではないとばかりに、周囲を観察し行動に移す鮮やかさは、鉄火場を潜ってきた者ならではの凄みを感じさせもした。
「何度も起き上がれると思うなよ……!」
「今ここで、確実に破壊します」
 倒れ込んだ灰瓦礫にイズマの剛撃が叩き込まれ、別の個体にはオリーブによる殺戮の再現が披露された。再起動を待つばかりだったそれらは、しかし灰の加護をうけるより破壊の波に呑まれるのが早かったようだ。確実に、いち早く。一分と少しの間に、イレギュラーズの思考は加速し、敵の攻勢もまた過激化していった。


「プレーグメイデン、あと30秒……いえ、それより早く接触する可能性もあります!」
「アンタらはここまでだ。奴らの仲間になりたくなけりゃ逃げろ」
 涼花は遠くを旋回させていた使い魔越しに、援軍の到着を視認した。推定通りか、僅かに速い。のんびりしていれば瞬く間に包囲される可能性すら見えていた。アルヴァは頃合いとばかりにオースヴィーヴル兵へ声をかけ、歯車兵への搭乗を促す。彼等の目には、あと僅かという口惜しさ、ここで死なぬことの重要性を理解した苦々しい決意が相半ばする。
「突出している兵はいないな? アバンロラージュで運ぶ必要もなさそうだ」
「後は俺達で対処する! いくぞ!」
 先導して退路へと赴くアルヴァを見て、リースヒースは周辺に残兵がいないことを改めて確認した。最悪、自分が馬車に乗せて追いかけることも考えたが取り越し苦労だったらしい。彼等は想像以上に、生きることに賢しかったということ。後ろ髪を引かれる思いでこちらを見た兵士達に向け、イズマは力強く声を張り、先を促した。その足元では灰瓦礫が一体、完全破壊を迎えたところだ。
「怒りはさ、生きている人間のものなんだよ。 アンタらの無念は俺が代わりに連れていく」
 灰瓦礫を背に、憤激の灰との間合いを詰めたシラスは己の神秘を総動員して撃滅すべく襲いかかる。如何に灰としての回避能力に長けたとて、一度なりとも彼の命中精度を上回ったとて、立て続けに攻められれば万全の状態を保てない。接近戦が故に激しい反撃がシラスを襲うが、消耗を厭わない戦い方をすれば実力差くらい埋まろうもの。加えて、その傷をフリークライがかなりのスピードで癒していくのだから数値以上のしぶとさが保証されている。
「竜剣の旦那、手助けは必要かい?」
「アンタの手を借りない奴の方が見てみたいね」
 最後の灰瓦礫の破壊を見届け、のんびりとした調子で近付いてきた武器商人の衣類には激戦の跡が見て取れる。治療を受けていないのはその特性ありきで戦っているがゆえだ。
 シラスの軽口に満足したように口元を歪めたソレは、散歩するような感覚で破滅の魔剣を振り下ろす。深々と『灰に突き刺さった』その有様はしかし、それでも消滅を免れる強靭さを見せつけてくる。風に乗って囁かれる怨嗟の声を聞き、不満げに口を窄めた武器商人の表情はコミカルでこそあれ、絶対に倒すという意思がしっかりと見えた。
「ヴヴ……」
「お前達は俺が相手だ! こっちに来い!」
「こちらで幾つか引き受けます。灰を叩くよりは効率的でしょうから」
「ン。無理セズ、デモ倒ス」
 イズマは灰を倒す、という決意は固く、意思は強かった。だがそれ以上に、仲間を信頼するということを忘れてはいない。だからこそ、その背を預かるべく己を的にかけた。彼の堅牢さであれば、プレーグメイデンの足止めで倒れることはあるまい。少なくとも、相対した二人が灰を倒し切るまでにフリークライの手を煩わせることはないはずだ。オリーブもまた、灰に叩き込めなかった分の力を全力で叩き込むべく身構える。何より、治癒も戦闘も並以上に立ち回れる涼花が控えていることを鑑みれば、アルヴァが戻ってくる頃には危なげなく大勢は決す筈だ。……灰にも、プレーグメイデンにも、最早逃げ場といっていいものは存在しないのである。

「猟兵長、オースヴィーヴルの面々は無事に離脱したかい?」
「問題ない。周囲には戦闘に入れるような天衝種の姿はなかった。あのまま行けば順当に革命派と合流する」
「それは何よりでした。……こちらも、今し方終わったところです」
 若干の時間をおいて駆け戻ってきたアルヴァは、周囲に敵影がないこと、プレーグメイデンの死体が散らばっていることを確認して肩を落とした。もうひと働き、するべきかと考えていた所だったのだが……仲間達は予想以上によくやったようだ。オリーブの声にやや疲れは覗くが、さりとてひどい傷が見えないことから気疲れの意味が籠められていることが分かる。
「まさか、増援まで倒すことになるなんて……ギリギリなんとかなりましたが、ペース配分には課題も見えましたね……」
「デモ戦イ切ッタ。涼花 立派」
「相手が私のような人間を殺す手段を持っていれば緊張感はあったが……無かったのか、手段を講じる前に死んだのか。ともあれ、御身らの鬱憤のようなものを感じたが?」
 涼花は短期決戦を期して己の全てを差し出す覚悟で戦った。翻って、増援と戦うまでに魔力を残すつもりがなかったということになる。それでも十分戦えたのは、彼女の戦い方の巧みさと培った魔力量が故だろう。リースヒースから見ても明らかに過剰火力だったことを鑑みれば、オリーブやイズマの鬱憤晴らしに使われてしまった可能性も捨てきれない。
「あいつらも死者だ。きっちりあの世に送るつもりだったし、送れたなら最善の結果だったってだけだ」
 シラスは軽く言い切ったが、そこまでの積み重ねを軽視する男ではない。少なくとも、『俺と仲間なら送れる』という自負があった。そうできるだけの準備と信頼を積み重ねた。それ故の結果だと、理解していた。
「死して尚消えぬ怒り、か。せめて安らかに眠ってくれ」
「戦いで燃え尽きたなら、もう大丈夫だと思うけどねぇ。中途半端が一番よくないよ」
 灰の残滓はどこかに消えた。周囲を見回したアルヴァに、武器商人は飄々とした様子を崩さず、しかし温かな言葉を添えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 当初の撃破対象にくわえ、増援撃破を果たしました。状況終了、成功です。

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