＜咬首六天＞再びの、火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」へ

オープニング

●アーカーシュのサウナ
　独立島アーカーシュ。
　浮遊島アーカーシュに集った勢力であるが、この場所では古代人の遺跡を稼働させた施設が幾つか存在する。
　それらの機能は様々だが……生活を豊かにするものもあるし、ちょっとした気分転換に良いものもある。
　火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」。たとえば、そう名付けられた場所がアーカーシュにはある。
　古代文明のサウナ施設であるが、非常に心身が『整う』とされる場所である。
　その名の通り火と水のエレメンタルが施設を稼働させており、かつて『夢語る李花』フルール プリュニエ（p3p002501
）にフゥーと名付けられた火のハイエレメンタルが管轄する場所でもある。
　アーカーシュ外周の小島に存在し、幾つかの小さな小島を超えていく必要のあるトート・ノゥだが……中央のドーム状の建物にサウナと休憩所などが集約されている。
　火と水のエレメンタルのコンビネーションによって完璧に調整されるサウナは、それだけで素晴らしいものだが……精霊たちとゴーレムたちによって、更にその機能は上昇しているという。
　勿論、レリッカ村の住人が行けるはずもないのでイレギュラーズに限定されてしまうのだが……だからこそオデットは「寒くなってきたし、サウナ施設の稼働状況を確認してもいいかも？」と思っていた。
　アーカーシュもかなり広いが、折角あると分かっている施設を使わない理由もない。
　しかし……いざ行ってみようとすると、気付いてしまうこともある。
　アーカーシュに侵攻してくる飛行型天衝種、ラースホーネットの存在にだ……！

●ラースホーネットをぶっとばせ
「というわけで、ラースホーネットを倒してサウナを確認しに行かないといけないわ」
　オデットはそう集まった仲間たちに告げる。
　火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」。
　外周浮遊小島と呼ばれているそこに至るまでには幾つかの小さな小島を超えていかなければならないのだが……飛行するか岩ほどの小島をジャンプすることで辿り着くしかないだろう。
　しかし、今であればサキノソラ号やバジランテという手段もある。そこまで難しい話でもない。
　問題なのは、そのルート上に天衝種「ラースホーネット」がいるということなのだ。
　最近は運び屋の印象の強いラースホーネットだが、こと空中戦においては決して油断できる相手ではない。
　そして何より、ラースホーネットは放っておけば他の天衝種を運んでくる。そういう意味でも、見つけ次第倒さなければならない相手だ。
「見た限りだと……普通じゃないラースホーネットもいたわ。新型だと思うけど、そういう意味でも急がないと！」
　その新型ラースホーネットがどのようなタイプかは不明だ。
　攻撃型かもしれないし、特殊な型かもしれない。
　だがどのみち放置は出来ない。ラースホーネットたちを手早く倒し、火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」の安全を確保しなければならないのだ……！

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●精霊式サウナへ
「なんてことない思い付きだったけど、結果的にどこかの施設が荒らされる前に天衝種が見つけられてよかったってところかしら。サイズが来てくれてるし敵を蹴散らすのもメンテナンスも安心ね。後は無茶だけしてくれなきゃいいのだけど」
「ええ、大丈夫です。何より妖精居るところに妖精道具あり、力になりますよ、オデットさん。メンテナンスも癒しの一時もお任せください」
　『長老の友』オデット・ソレーユ・クリスタリア（p3p000282）に『カースド妖精鎌』サイズ（p3p000319）がそう頷くが、実のところ今回サイズは事前準備を欠かしていなかった。
　そう、サウナに入った後でも美味しく食べれるように、とフルーツサンドイッチを作っていたのだ。
「ハーブティで水分補給は出来ると思うが、フルーツの水分でもいい感じになるだろうし、サウナ後なら軽食がちょうどいいはずだ。汗かいた後は水分補給しっかりしないといけないからね」とは本人の談だが、早速色々やっている。まあ、サイズがそれで幸せならオッケーだろうか？
「移動しながらサウナの小島への道を他の（イレギュラーズ以外の）人がどうやったら利用しやすくなるか考えておこうかしら。定期便とか出すのがいいのかしらね？　せっかくならいろんな人に来てくれた方が精霊たちも嬉しいだろうし」
　オデットがそんなことを言うが……今回の目的地はアーカーシュ外周部の浮遊小島に存在する火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」であった。
　かのアーカーシュアーカイブスにも登録されている施設であり、オデットが以前関わった場所でもある。
　小島をジャンプするか、飛んでいかなければならない場所……それ故にオデットの考えは当然のものとも言えるだろう。
「サウナの妖精トトノウだっけ？　健康にイイ響きだし、リフレッシュ施設が多いに越したことはないご時世だからカクホしておきたいね！」
「アーカーシュにもサウナってあるんスね……ホントこの島は探せば探すほど不思議なモンがポンポン出てくるな。そういやこっち(混沌)に来てから、サウナは久しく使ってねぇな。ちょうどいい機会っス、一汗流してスッキリすっか。その前に、まずは厄介なハチの群れをシメてからっスよ」
「新型のラースホーネットってのも出るらしいし、ユダンはせずに行こう！」
「うっす！　まずは厄介なハチの群れをシメてからっスね」
『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン（p3p002377）と『紅眼のエースストライカー』日向 葵（p3p000366）も頷きあう。
　ジャンルこそ違えど互いに身体を動かすのが得意なせいか、並ぶと絵になる２人だ。
「よもやサウナとはな！！　こうしちゃ居れん！　サウナが我を呼んでおる！」
「サウナ一つに精霊を利用とは、アーカーシュの文明はなかなか贅沢なようで……ま、あまりサウナに馴染みはありませんが、せっかくなので利用させてもらいましょうか。冷えた酒でも用意しつつ、まずはお仕事ですね」
　『ナチュラルボーン食いしん坊！』ニャンタル・ポルタ（p3p010190）と『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド＝アルス＝アーヴィン（p3p009380）も準備は万端で、ニャンタルなどは飛行バイクのバジランテに水筒とタッパー、ビニールプールをのせている。
　そう、バジランテが使える現在、外周小島への行き来も大分楽になっている。
「いやー、しかし。あのサウナが、前よりトトノウ施設にグレードアップしたってマジ！？　こりゃあ早速、試してみないとな！」
「サウナ！　まさかアーカーシュにあったなんて！　極寒な地域に住んでいる鉄帝人としては心躍る素敵空間ですね！　あの体の芯から温まる感覚……その後に涼むのも気持ちいいですよね！　「整う」っていうのは本当に素晴らしい！　是非とも心行くまで堪能する為にも……邪魔者はぶっ飛ばします！」
　『ラッキー隊隊長』ジュート＝ラッキーバレット（p3p010359）と『立派な姫騎士』雑賀 千代（p3p010694）も、出発の準備は完了している。
「よし、行くよ皆！」
　イグナートの号令で全員が出発する。その先には……天衝種たちが待ち構えているはずだった。

●精霊式サウナで整おう
「ガンナーの方を先に全部倒すっスよ！」
「ラースホーネットが何するものぞ！　狙撃な得意な烏天狗の私に！」
　針を叩き折るか、射出部分を潰せば攻撃手段を抑え込めそうっスね……と言いながら葵のラフィング・ピリオドが放たれ、その凄まじい一撃がラースホーネットガンナーを撃ち落とし、千代のプラチナムインベルタが放たれる。
「毒？　こんな事もあろうかとディープ・グリーンを用意してきましたので効きませんよ！」
　どや顔で大粒の見事なエメラルドをチラつかせる千代だったが……確かに新型相手にも有効な装備であるだろう。
　そう、天衝種の新型ラースホーネットガンナー。通常のラースホーネットと違い明らかに攻撃的なフォルムだが、耐久性自体は然程変わらないように見える。だがそれでもラースホーネットと連携されると面倒であるのは確かだ。
　だからこそ葵の提案でラースホーネットガンナーたちの位置を常に確認して、複数体の射程圏内に入らないようにポジションを細かく調整して被弾を少なくしようとする試みも実施していた。
「一気にきめるよ！　ボッ、てね！」
　イグナートのワイルドキングストリームがラースホーネットたちへと繰り出されるが、イグナートの今回の目的はウィルドと共に「皆の盾」でもある。
　そう、イグナートとウィルドの２枚盾はかなり堅牢で、ウィルドのアームズ・オブ・レギオンが弱ったラースホーネットを打ち落とす。
「うぅむ……まだまだこの技、覚えたてで消耗が激しいのお……」
　ニャンタルの黒顎魔王が炸裂し、ジュートの聖王封魔が発動する。
（そういや、ラースホーネットガンナーってのは新種の天衝種なんだよな？　Leonids emblemで浮かんできた方法は……真っ向勝負たあな。最初っから怒ってるみたいだし、黒い布とかで引き付けらんねーかなぁ）
　そんなことをジュートは考えていたが、まあ相手は野生動物ではなく天衝種なので難しいかもしれない。
「サイズが近くにいてくれるから安心して攻撃できるわ」
「ええ、お任せを」
　オデットとサイズのコンビネーションも抜群だ。
　サイズがオデットに黄金残響を発動し、オデットはヘビーサーブルズで重圧を伴う砂嵐を巻き起こす。
　そしてサイズ自身、オデットの攻撃に合わせて撃破できるように合わせてもいた。
「さあ、さっさと退治しちゃうわよ！」
　そうして、然程時間もかからないうちに全てのラースホーネットたちを退治し終わると……懐かしの火水精霊式サウナ「トート・ノゥ」へ辿り着く。そこには、火のハイエレメンタル「フゥー」の姿もあった。
「久しぶり、フゥー」
「ああ。久方ぶりだ。何やら余計なものも退治してくれたようで何よりだ」
「寒くなってきたからいろいろ利用したいの。いいかしら？」
「問題はない」
　そう、此処は精霊の力で実現されたサウナだ。ゴーレムたちもメンテの為に常駐しており、以前とは違いしっかりと整備された感が伺える。
「サクッとサウナの設備を点検しておくか、無事だがメンテナンスは欠かせるわけにはいかない」
　しかし、それでも万が一を考えてサイズはサクサクと点検していくが……問題は無さそうだ。
「あのハチ自体はここを狙ってきた訳ではないんスね。つってもどの道シメとく事には変わりはねぇか」
「此方には近づいてこなかったな。何を狙っているかは分からないが……私も此処を離れるわけにもいかなかった」
「そうっスよね」
「ともかく、楽しんでいってほしい。前回はあまりもてなせなかったしな」
　葵がふと見上げれば、水や火の精霊たちが可視化された状態で飛び回っている。なるほど、中々に楽しそうだが……早速着替えスペースで葵は持参してきた水着に着替える。「守るものは守らねぇとな、色んな意味で」とのことらしいが……まあ、マナーは大事だ。
　その楽しみ方も、実に「分かっている」ものだ。
　一回目は上段の温度が高い所に座ってがっつり汗を流す。
　その後は水のエレメンタルに頼んで体を冷やしたついでに水分補給。
　二回目に上段より低めの下段でゆっくりと体を温める、この二回に分けるのが葵のこだわりの入り方であるらしい。
「あー散々汗かいたあとの冷水がマジたまんねぇー。これだからサウナは最高なんスよ。メシやら休憩はその後でゆっくりするっス」
「サウナってヤツは温度の加減がなかなかにムズカシイモノなんだろうけれど、精霊が調節してくれるって言うのは画期的だね。これは本当にイイ感じに整いそうだよ！　水風呂もちゃんとあるよね？　どちらかと言うとオレはサウナ後の水風呂が楽しみ！」
「あー、あっちにあったスよ」
　和気あいあいと会話が進むが、イグナートは今回ちょっとしたものも準備していた。
「飲み物として牛乳とフルーツ牛乳とコーヒー牛乳とアーカーシュ地酒の牛乳割りをヨウイしてあるよ。冷やしておいてサウナの後に楽しめるようにね！」
「おお、それは良いですね」
　冷えた酒は効きそうです、とウィルドも頷く。
「人に寄って何を飲むかって言うのはイロイロな派閥があると思うけれど、オレはコーヒー牛乳派かな！　それはそれとして牛乳割りも飲むよ！」
　どれを飲んでも楽しいだろうが、鍛え上げた男たちの肉体がサウナで蒸されていく様は、まるでウィルドを親分に据えた一味の一時の癒し……といった風の完成度の高い光景であった。
「いやはや……確かにこれはいい感じですねぇ。領地の書類仕事で疲れた体が回復するのがわかりますよ」
　ウィルド曰く「無駄に鍛えた肉体」であるらしいが、そんな鍛えた肉体が３つ並べば芸術である。
「ふむ……あとでサウナの仕組みを見せてもらうのも良いかもしれませんね。可能なら領地にも作っておきたいですし……」
「知ってるか？　ロウリューサウナは上の方が温度が高くて、下の方が低い！　だからマジで汗かきたい俺は勿論、サウナの最上段で熱風を待つ！　両手を上げたら指が千切れそうなぐらいあちーけど、これが血行にイイんだってさー！　ぎぇー、トトノウー！」
「はっはっは」
　風の精霊が混ざってジュートにロウリュってるのを見ながらウィルドは笑う。これを再現できれば、かなり良い癒しになるのは間違いはないだろう。
　ちなみにサイズは「え、サウナには入らないかって……俺は鍛冶屋の職種の都合上、暑さの耐性が常人とは違うから、皆とレベル合わせたら汗かけないからね……それなら妖精の為に動いてた方が色々と整うのさ……」とのことであるらしく、皆が出て来た時のための準備を進めていた。
　まあ、男性側はそんな感じだが……女性側も中々に楽しげである。
「さあ、いざ行かん！　熱き聖地へ！」
「うひょー！！　待ちに待ったぞ！　……と、一旦落ち着こう……スー……ハー……む？！　何処からかヴィヒタの香りが！　いやいや、先ずは落ち着いて体を清めなければ！！」
　バスタオル姿の千代と、サウナ着のニャンタルが突入していく。
「さて、ここのサウナ室は何度なんじゃろうな……ムフフ♪　楽しみじゃ。我を導け！　天国の扉ー！」
　そしてニャンタルたちが迎え撃つのは適度な暑さと蒸気だ。
「暑いんだけど気持ちいい、これが整うってやつよね」
　オデットがそう気持ちよさそうにする中で、バスタオルをクロスアウトした千代に精霊たちが寄ってたかってサウナ着を着せていたが……さておいて。
「15分！　目標15分じゃ！　これは自分との戦いじゃな！　わはは！　施設の設備が分からんかったのでな、ビニールプールも用意した！　氷をいっぱい入れた水風呂の完成じゃ！　これで楽しみ2倍じゃぞ！　ムフフ♪」
「あっちにも水風呂が……」
「にゃにい!?」
　そうしてサウナから出れば、早速サイズがオデットに事前準備した料理や呈茶でウォーターエレメンタルがだした美味しい水と携行品の茶葉で上質なハーブティを仕上げ提供していた。
「汗をかいた体に染みるわー、最近寒かったからすごくありがたいことよね。にしたってサイズもメンテメンテと私のこと気にしてばっかりじゃなくてサウナに入って楽しめばいいのにね。楽しいって言うならいいんだけど」
「食事の時間じゃな！　オデットが林檎、サイズがフルーツサンドイッチ！　そんでもってジュートがたらふく料理を食わせてくれると言っとったからの。我も塩分補給に味噌汁と梅干しを持ってきたぞ！」
「任せな！　持ち込んだジュート特性ラッキー弁当を振舞うぜ！　ポイントはデカい海老フライ！　あとデカいハンバーグ！　大人だってお子様ランチ全部盛りみたいなの食べて気分上げたいってな！」
「ヒュー！」
「湯上りの牛乳……くぅー！　最高です！　あ、筑前煮も作ってきたんで一緒に食べましょう！」
　ジュートとニャンタルが盛り上がるところに千代も突っ込んでいき、その様子を見ながらイグナートやウィルド、葵たちが楽しそうに微笑む。
「そうじゃ。サウナ迄の道筋がどうとか言っとったな……うぅむ……道を作るにしても宙に浮く素材が要るじゃろうし…ここは道を作るのではなく、先ずはここに安全に辿り着くのを目的として、ゴーレムを護衛に付けた遊覧船の様な物はどうじゃろ？　バジランテではスピードが出過ぎる気もするし、アーカーシュには兵器用の乗り物しか無いわけでは無さそうじゃしな。帰りはゆったりさせたいしのう！」
　ニャンタルがオデットの言葉を思い出しながら言えば、全員がああでもないこうでもないと意見を出し始める。
　それは実現するかは彼等次第だろうが……そうした議論もまた、サウナ上がりには楽しいものであったに違いない。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

ととのいました！

●運営による追記
　本シナリオの結果により、＜六天覇道＞独立島アーカーシュの技術力が+10されました！