シナリオ詳細
<獣のしるし>ふたりの夢を喰らうもの
オープニング
●二人の夢
天義より派遣された騎士、ボルドーとルコアは大の親友であった。
同じ村で生まれ、『峻厳たる白の大壁』ことレオパル聖騎士団長に憧れた二人は共に夢への道を走った。
同じ歳に首都へと上京し、教会の見習い騎士から始まり幾度も死線をくぐり抜け、そして見事騎士として認められたのもまた同時であった。
彼らは競い合うライバルであり、夢を共有する親友であり、兄弟家族以上の強い絆に結ばれた二人だった。
だから、国を揺るがした『冥刻のエクリプス』事件の象徴でもあるベアトリーチェを連想させる影の軍団が現れた時には、二人同時に立ち上がった。
そして……。
「逃げろ、レコア」
血塗れの鎧。兜は地面に落ち、頭から流れた血がぽたぽたとその兜へとたれている。
汗と血の混ざったにおいのなかで、ボルドーはその赤髪の隙間から、親友レコアを見る。
青髪青目のレコアもまた、鎧は血にまみれている。
「二人同時に死ぬことはない。俺が死んだら、レオパル殿の部下になる夢はお前が――」
「馬鹿言うな!」
レコアは叫び、ボルドーの腕を引っ張って無理矢理立たせた。
「援軍はすぐに来る。それまで耐えるんだよ。俺だけ叶えたって、そんなの」
涙声が混じるレコア。その背に、黒い斬撃が走った。
血を吐き、倒れる。レコアに支えられていたボルドーもまた同じように地に倒れた。
「聖女ルル様のために。聖女ルル様のために。聖女――」
壊れたテープレコーダーのように同じ言葉だけを述べ続ける、黒鎧の騎士。
『冥刻のエクリプス』の際闇の勢力に与したことで倒され死んだ筈の、黒騎士クリザンテームであった。
彼は影のように伸びる長剣を振るい、追撃を放とうと構えている。
いや、実際影なのだ。剣も、そして彼自身も。『影』によって作られたまがいものだ。
「こんなところで――阻まれてたまるかよ!」
レコアは手にしていた剣を投げつけた。それを切り払って防ぐクリザンテーム。
隙を突く形でレコアはボルドーに肩を貸し、共に走り出す。
「レコア、もういい。お前だけでも」
「うるせえ! 叶えるんだよ、二人で! いまここを、生き延びて――!」
●黒騎士クリザンテームとソウルイーター
『殉教者の森』の中を急ぐ、イレギュラーズたち。
彼らにもたらされたのは、殉教者の森内部にて発見された『影の軍勢』の情報であった。
鉄帝・天義間の国境沿いに存在するこの森に、まるでかつてのベアトリーチェが放った汚泥の兵たちを思わせる『影』でできた軍勢を発見。彼らは鉄帝へ向けて進軍しており、このままでは鉄帝国辺境の村々が被害に遭うのは確実だろうとみられていた。
今の鉄帝を収めているのは新皇帝バルバジス。つまりは冠位魔種だ。辺境の村々を彼が助けるとは到底考えられない。この影の軍勢を撃破しなければならない。
それにだ。
騎士レコアからの救援要請によれば、騎士レコアと騎士ボルドーによる一団は黒騎士クリザンテームと見られる『致命者』に率いられた部隊を補足。撃破しようと動いたが、予想外に出現した『ワールドイーター』なる怪物たちの攻撃をうけ部隊は壊滅。撤退中だが、それも間に合うかどうかという瀬戸際だというのだ。
もし二人が死んでしまっても、せめて味方の助けになろうとしたのだろう。彼らは敵の情報をこちらに伝えてくれていた。
まず黒騎士クリザンテーム。
彼はベアトリーチェによる厄災が起きたその事件の中で魔種勢力に与し、悪徳の富を得ていた男だ。闇の魔法と剣術を組み合わせたその魔闘術は変幻自在。非常に強力な騎士であったと語られている。
『影』によって作られたまがい物のクリザンテームもまた、同じ武術を使いレコアたちを苦戦させた。ボルドーもレコアも腕の立つ騎士だ。その部下達も訓練をうけたそれなりの兵であるにも関わらず、苦戦したのだから、その実力は推して知るべしだろう。
加えて『ソウルイーター』と呼称さられた個体が複数確認されている。
これはROOにてワールドイーターと呼ばれた存在に似た、いわゆる世界を喰らう怪物である。
翼をもった騎士の姿をしたこの『ソウルイーター』たちは強き心や魂をもつものを好んで襲い喰らうという特徴を持つそうだ。
時間をかければ二人の命は失われる。急げ――!
- <獣のしるし>ふたりの夢を喰らうもの完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年12月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●絶望と希望はおなじものだ。故に――
「レコア、もういい。お前だけでも」
「うるせえ! 叶えるんだよ、二人で! いまここを、生き延びて――!」
剣も手放し、血を流し、もはや自力で走ることも難しい親友ボルドーに肩を貸して走るレコア。そんな彼をあざ笑うかのように、翼を生やした黒い影の怪物ソウルイーターたちが回り込んでくる。
前も、右も、左も、そして後ろからはゆっくりと追ってくる黒騎士クリザンテーム。
もはやここまでという状況で、しかしレコアの目に絶望はない。
なぜなら、まだ信じていた。
「聖女ルル様のために。聖女ルル様のために」
「「聖女ルル様のために」」
ソウルイーターたちが合唱でもするようにコールする。そして彼らが一斉に剣を振りかざした、その瞬間。
――「させない!」
誰かの声と共に、無数の光が飛んだ。骨のように白い星、宙に弧を描く砲弾、燃えさかる炎の鳥。銀の矢に、呪詛の刃、こころの波動に、音楽の魔法。
中でもひときわレコアたちの目を引いたのは、彼らの目の前を駆け抜けた銀狼の獣人。『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)であった。
彼は黒騎士クリザンテームやソウルイーターたちの間に割り込むと、勇ましく咆哮する。
彼が心の器に満たし続けた憤怒の感情が、まるでウィルスのように拡散し何人かのソウルイーターへと侵食する。
「これ以上はやらせんぞ化け物共!」
懐から何枚かのカードを取り出しその力を発動させる。実体化した銀のラッパ銃を手にすると、ソウルイーターへと突きつけた。
心の器を一度ひっくり返したウェールのなかには、また彼の感情が注がれる。後ろに下がって安全な場所に行こうと、臆病な自分が囁く。レコアたちを囮にすれば効率的に敵が倒せると利己的な自分が囁く。
そんな中で、『父』としての自分が吠えた。
「俺たちイレギュラーズは幾度も死の運命を覆し、回避してきた。国が滅びかけた時も、仮想の世界が己を乱そうとした時もだ。だが忘れてはならない。
人は死ぬ。戦場では近くの友軍が、簡易救護所では遺言を託しながら兵が大勢亡くなった」
遺言を託された。国を託された。未来を託された。
平和な未来に魂だけでも連れて行ってくれ。そんな風に言った者もいた。
「これ以上悲しみを増やさせてたまるか!!」
ラッパ銃をぶっ放すウェール。
彼とぴったりと息を合わせた仲間達が素早くソウルイーターたちの間をすりぬけ、レコアやボルドーたちをかばうように輪を作った。
「レコア、ボルドー。ローレットとして君たちを助けに来た」
そう言って、自らの乗ってきた馬車を指さしたのは『先導者たらん』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)であった。
厄刀『魔応』に自らの呪詛をのせ、抜刀の構えをとるシューヴェルト。
流石にこうも割り込まれたのではレコアたちを相手にしている場合ではないと考えたのだろう。まだウェールの影響下にないソウルイーターの一体がシューヴェルトへと斬りかかる。
シューヴェルトはそれを抜刀によって払い、返す刀で相手を斬り付ける。
常人ならば血を吹いて死ぬほどの呪力が走ったが、ソウルイーターは袈裟斬りにされた胸部を影によって修復してしまう。
生半可な攻撃では倒しきれないな。そう判断したシューヴェルトは相手の放った二度目の斬撃を剣で受け止めた。
「さぁ、舞台の幕を上げようぜ!」
まるでテレポートでもしたようにレコアの後ろに立っていた『スケルトンの』ファニー(p3p010255)。
彼はジャケットのポケットに両手を入れていたが、黒い眼窩の奥に青い炎を灯したかと思うと獣の頭蓋骨めいたものを召喚。襲いかかろうとするソウルイーターめがけ光線を発射した。
ファニーはポケットから右手を出すと、クローバー型のロケットチャームのある場所をぽんと叩いた。
昔の自分だったらどうしていただろう。コレアとボルドーがイレギュラーズたちに救われた物語を沢山の報告書のなかから見つけて、それを傍観しただろうか。あるいは彼らが夢叶わず倒れる物語を観察し、皮肉げに首を振っただろうか。
「そうできたらラクだったのかもな。けど俺様は約束をしちまった。ケツイを固めちまったのさ。『オレ』はオレの物語の主役になるってな――!」
光線をぶつけられたソウルイーターは影の盾でそれを防ぐ。かすり傷程度の微弱なダメージが、まるでスコール雨のように大量にぶつかり盾を強引に削り取った。
盾が吹き飛び、咄嗟に叩きつけた剣までもが破壊される。ソウルイーターは武器を修復しようとしたが、まとわりつく光のせいでそれができなかった。仕方なくファニーへ殴りかかるソウルイーター。
一方では、『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)がソウルイーターの斬撃を『こころのかべ』で阻んでいた。青白く連なる八角形めいた壁が現れ、強烈な斬撃を阻む。強引に通そうと壁を破壊するソウルイーターだが、ニルが至近距離から波動を放つのは同時であった。
「ニルはかなしいのは嫌です。レコア様とボルドー様……おふたりとも、ちゃんと帰れるように!」
凄まじい衝撃がソウルイーターを吹き飛ばす。翼をひろげ制動をかけなければそのまま後ろの樹幹に激突していただろう。
ニルはレコアたちへ振り返る。
「おふたりが情報をくれたから、ニルたちは動けたのです。
元気になって、おふたりの夢が叶うといいですね」
「そうか、あなた方は……イレギュラーズ!」
「間に合ったのか!?」
「そういう事です」
精霊天花を終えた『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は手足と髪から炎を燃え上がらせ、正面から斬りかかってくるソウルイーターの剣を焔の腕で受け止めていた。
そして、黒騎士クリザンテームへと視線を向ける。
「黒騎士さん、黒騎士さん。意志があるなら教えてくださいな。あなたは何者?」
問いかけに、クリザンテームは答えない。
いや、『聖女ルル様のために』とだけ呟き、その言葉に感情は見えなかった。
戦う感触と相手の言動から、フルールはこれらがワールドイーターと致命者の一種なのだと判断する。
特にソウルイーターは趣向の傾いたワールドイーターというところだろう。
「強者の魂を好んで食べると言うなら、イレギュラーズは格好の獲物と言うことでしょうか。まぁ、私から見ても強そうな人ばかりですし……あ、私はそうでもないと思いますよ?」
クスクスと笑い、握り込んでいた剣に力を込めて焼き切ってしまう。
ソウルイーターは剣を影によって修復するが、フルールはその隙に至近距離から紅蓮の鳳凰を解き放っていた。
燃え上がるソウルイーターをよそに、『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が剣を抜く。大きく湾曲したシミター系の武器のようだ。
刀身の反りを利用してソウルイーターからの斬撃を払うと、刀身にグリーンの光を纏わせる。
「屹度、此処で命を落とすには惜しい人々なのだと思います。
死地に在って、誰かに繋ぐことを選ぶことが出来る……。
そんな勇気を持つ人は、決して多くはないのですから」
詩を詠むかのように、あるいは小鳥がさえずるように美しく呟くと、アッシュは翳した手のひらから災禍顕現の魔法陣を展開させた。
呼び出された無数の光の礫が相手のソウルイーターに、そしてその周囲にあったソウルイーターたちへも降り注ぐ。
クリザンテームはそれを剣を高速で振り回すことで払いのけ――追撃とばかりに飛んできた音符型のエネルギー体を切り払った。
「親友でライバルで、夢があるなら、それを潰させたりなんてしないよ!」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は勇ましくそう宣言すると、レコアとボルドーへ向けて指揮棒を振った。彼らの心を癒やすような音楽が風を通して鳴り響き、二人の傷を癒やしていく。
「ありがとう。俺たちは――」
「大丈夫。ここは任せて下がって!」
アクセルの呼びかけに、レコアはふと自分が放り投げてしまった剣を見た。
「……わかった。行くぞボルドー」
「おいっ」
「行くんだよ」
ボルドーは自分も共に戦いたいという意志を示したようだったが、レコアが彼を引っ張る形で馬車へと放り込む。すぐに戦える状態ではないのだろう。
そしてレコアは馬へと飛び乗り、振り返る。
「情報を届けたので知っていると思いますが、奴らは騎士の姿をしていても『影の怪物』です。どんな動きをするかわからない。お気を付けて!」
「うん、そっちもね!」
アクセルは手を振り、遠ざかる馬車を見送った。
そしてクリザンテームたちへと振り返る。
「あの二人は追わせないよ。そして、君たちはここでオイラたちが倒す!」
そんな中、レコアたちを追いかけようと一体のソウルイーターが空中を飛んだ――が、それまでだ。
「五〇口径三年式十二.七糎連装砲――全基斉射」
対空して打ち出された砲弾がソウルイーターへと直撃。黒い爆発を起こす。
「かつて私にも多くの戦友がいました。共に高め合い助け合った素晴らしい仲間たちです。
そんな仲間たちを救いたい、助かってほしい、その気持ちはとてもよくわかります。
正体不明の敵といえど臆するわけにはいきません。一人でも多くの友を救うために……」
木の陰から姿を現した『幸運艦』雪風(p3p010891)が、ソウルイーターを睨むように見つめた。
その目の奥には、遥か無限に続く水平線があるように思える。
起伏の薄い表情から、決意がみなぎった。
「雪風、参ります!」
●夢の守護者たち
馬車の遠ざかる音を聞きながら、ウェールは低く唸った。
眼前には黒騎士クリザンテーム。
変幻自在に動く闇の魔法剣はウェールの俊敏な動きをもってしても受けきれるものではなかった。
彼の身体にいくつもの傷がうまれ、腕から血がしたたり落ちる。
レコアたちがやられたのはこれか……と内心で確信しつつ、仲間へと呼びかけた。
「ニル、止血を頼む!」
「はい!」
ニルは両手を組んで『天上のエンテレケイア』の魔術を発動。降り注ぐ陽光がウェールを照らし、傷口を固め流れる血を止めてくれた。
(もともとは強い騎士様だった、そのニセモノ……ヒトではないもの
なんでこんなことが起きるのでしょう?
胸が、ぎゅうってなります)
ニルはきゅっと口を引き結び、そしてクリザンテームから発せられる殺気に心を閉ざした。
「かなしいことは嫌だから、ここで全力をぶつけるのです」
自分を奮い立たせるかのようにつぶやき、力を更に込める。
一方でウェールは、クリザンテームが自分の挑発に『乗っていない』ことを察していた。
ソウルイーターのうち数体はウェールの『憤怒伝染』の影響下に落ち技巧の乗っていない剣を幾度も叩き込んでくるが、クリザンテームのそれは本気の技(アーツ)であった。
ウェールの存在を邪魔と考えて早期に排除しようとしているのは明白で、それゆえにウェールはかなり危険な状態にある。
「これ以上は……!」
クリザンテームの剣が伸び、ウェールの腕に巻き付く。回避しようとした動作が無理矢理に引き寄せられ、クリザンテームは開いた手の平をウェールの胸へと強く押し当てた。掌底にもにたそれは魔力の波動を放ち、ウェールの身体を突き抜けていく。
「ぐう……!」
常人ならば即死していてもおかしくないが、ウェールの心臓をわずかにそれていたからか死の運命を逃れていた。いや、それだけではないだろう。
彼の意志が、クリザンテームの猛攻に抵抗しているのだ。
「待ってて! いまそっちに!」
アクセルは指揮棒を軽やかに振ると無数の光の音符型エネルギー体を生み出した。カラフルなそれらが複雑な軌道を描いてソウルイーターたちへと飛んでいく。
相手も密集することの危険を察してか、あるいはウェールを孤立させるためか軽く分散しながらこちらを撹乱するような動きをしている。
「ここからだとソウルイーターに回復が届かない……シューヴェルト、お願い!」
「任せろ」
シューヴェルトはアクセルをマークするソウルイーターへ斬りかかり、つばぜり合いの状態へと持ち込む。
そこから……。
「こいつでどうだ、蒼脚・堕天!」
瞬間的に呪いの力を脚に集中させ、膝蹴りを入れるシューヴェルト。
狙いは相手を倒すこと……ではなく、決定的な足止めだ。
「ありがとう!」
アクセルが上を素早く飛行し通り抜け、ウェールへと治癒の音楽を発する。
その一方でフルールは紅蓮の鳳凰を操りながらソウルイーターたちと戦っていた。
「黒騎士さん。私達生者が憎いですか? そこに宿る感情は私達への憤怒や憎悪のような感情ですか? 絶対に、私達は相容れませんか?」
試しに横目で問いかけてみるが、クリザンテームは答えない。『聖女ルル様のために』という文句をいつまでもループ再生するだけだ。
なんとつまらない相手だろう。これでは獣以下だ。月光人形のほうがはるかに人間に見える。フルールは小さく首を振り、彼に躊躇する必要が無いことを悟った。
フルールの放つ鳳凰。ソウルイーターはそれを盾で真正面から受け止める。
と、その直後。
「おっと、そいつは軽率だったな」
横に回っていたファニーが手を広げ、ブンと地面に向けて何かをたたき落とすようなモーションをとった。
一切触れてはいないにも関わらず、まるで強力なサイコキネシスをうけたかのように地面に叩きつけられるソウルイーター。
反撃を無理矢理封じられたソウルイーターにトドメをさすのは、あまりにも容易い。
苦し紛れに剣を振るソウルイーターだが、ファニーはそれを飛び越えスタンピングパンチを叩き込む。グローブの内側、指の付け根が一瞬だけ金色に光り衝撃を放つ。
「一丁上がりだ。次」
「全弾発射」
雪風が放った魚雷が地上すれすれを滑るように走り、ソウルイーターへと命中。
おこった爆発が広がり、隣のソウルイーターまでもを巻き込んだ。
「お二人の夢も未来も食らわせはしません。
貴方達こそ私の砲撃の露と消えてください」
生き残る。それだけならば簡単だ。
死にゆく同胞たちに背を向け全速で走ればいいのだから。
しかしそれは、幸せな事なのだろうか。雪風は……。
「もう死なせません」
強く、相手をにらみ付け艤装の機銃を目一杯に打ちまくる。
雨のように鉛を浴びたソウルイーターが消滅し、パッと周囲の視界が晴れる。
その中を突っ切ったのはアッシュだった。
狙いはひとつ、クリザンテーム。
傷付いたウェールと交代するように剣で斬りかかる。
「最早過去となった貴方に、もう居場所はないのです。
たとえ紛い物の、写し身であったとしても」
「――」
「其の黒い鎧も、積み重ねられた悪徳も――此の手で、切り裂きます」
剣と剣がぶつかりあい、拮抗する。その瞬間にアッシュは手をかざし、赫々としたスパークを相手の顔面に向けて解き放った。
スパークといっても威力は爆発に近い。常人であれば上半身が消し飛んでもおかしくない衝撃だ。
対してクリザンテームは、その兜を吹き飛ばされるだけで済んでいた。
兜の下の顔は、記録にあったクリザンテームのそれだ。だが表情に生気はなく、目もまた虚ろだった。クリザンテームの形をした人形。そう表現するに相応しい。
「もう、あなたの役目は終わったのです」
気付けば、アッシュの剣がクリザンテームの鎧すら貫き身体に突き刺さっていた。
爆発すらも囮にして、剣を滑り込ませていたのだろう。
カハッという声をあげ、クリザンテームはまるで泥のようにくずれて消える。
アッシュは剣をふり、血もついていないその刀身を見つめた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
――レコアとボルドーは無事撤退し、病院にて治療を受けています
GMコメント
殉教者の森に出現した影の軍勢を撃滅するこのシナリオ
今回対応するのは黒騎士クリザンテームとソウルイーターによる一団です
・状況
騎士レコアと騎士ボルドーが撤退中。それを黒騎士クリザンテームとソウルイーターが追跡し、トドメをさそうと狙っています。
皆さんはこの状況にギリギリで間に合うものとします。
レコアとボルドーはそこそこ腕の立つ騎士ですが、瀕死の重傷を負っておりまずは回復を要するでしょう。治癒の手段が特になくても、彼らを一旦逃がして安全を確保するだけでも生存確率はずっと上がります。
●エネミー
『影』によって作成された怪物たちです
・黒騎士クリザンテーム
闇の魔法で作り出した長剣を伸ばしたり増やしたり時には飛ばしたりと変幻自在の戦いを見せます。
黒い全身鎧によって身体を覆っているため表情などはわかりませんが、いずれにせよ人間でないことは確かでしょう。
・ソウルイーター
強き魂や心を好んで喰らう怪物です。
翼在る騎士の姿をしており、弓矢や剣を用いて戦闘を行います。
複数体おり、個々の戦闘能力もそれなりに高いとみていいでしょう。
ちなみに『ワールドイーター』に似た怪物ではありますが、ROOのようなバグエネミーとは異なるものです。
●名声
当シナリオは天義/鉄帝に分割して名声が配布されます。
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