シナリオ詳細
羅刹十鬼衆地獄巡り
オープニング
●終焉を語るには
豊穣郷はカムイグラ。これはある物語の最終幕であり、そしていくつもの因縁と宿命の交わるひとつの終着点である。
事はおよそ数年前。カムイグラの首都高天京を厄神の災が襲った日。機を待っていた魔種の一団『羅刹十鬼衆』が動き出した。
東西南北から攻め入るは、四つの災厄。
おぞましく繁殖し村々を食らい波のように押し寄せる『子鬼(ゴブリン)』。
殺生石に率いられ街を一夜にして人外魔境へと変えてしまった『百鬼夜行』。
暴徒と化した狂信者たちの凶行によって平和を破壊し尽くす教団『灰桜』。
歪に改造された乙女たちを怪物へと変え、空を飛ぶ異形の群れと成した『天女』。
イレギュラーズたちによって撃退され、四神の結界によって都の平和こそ守られたものの、結界の外……つまりはカムイグラ地方領では未だ彼らの暗躍が続いていたのだった。
悲しく、そして残酷な数々の事件。
それらに挑み解決していったイレギュラーズはついに、『羅刹十鬼衆』が集合し計画しているという作戦を看破した。
計画名は『神樹斬り』。
ある島にてため込んだ膨大な戦力を結界に叩きつけることで首都の守りを今一度破壊し、今度こそ都を地獄に変えようという計画である。
その名も無き島は、彼らによってこう呼ばれている。
『羅刹島』――と。
●最後の英雄
「ついに、見つけたわ……」
鬼城・桜華(p3p007211)は荒れる海の上、船の手すりを掴んで呟いた。
眼前には『羅刹島』。カムイグラ各地で『繁殖』し選りすぐった協力な子鬼たちが大量の物資と共に一箇所へと集められているという計画を辿り、この島が浮き彫りとなった。
島は大きな山を中心とした無人島だったはずだが、いつの間にか城のようなものが建設されている。羅刹十鬼衆の根城となっているのは間違いないだろう。
「見な、空もあの有様だわ」
豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)が顔をあげると、空中には無数の妖怪が飛び交い、そのなかには『天女』の姿も発見できた。
ティスル ティル(p3p006151)がキッとそれらをにらみ付ける。
『華盆屋村』なる異形の里から脱出した華盆屋 善衛門は、間違いなくこの城へと逃げ込んでいるだろう。あの時点でかなりの戦力削ったはずだが、まだあの中に戦力を蓄えているのだとしたら……。
「やはり、援軍を呼んでおいて正解だったかな」
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はちらりと後ろを見た。
彼女たちの乗る船とは別に、いくつもの船が後に続き『船団』と化していた。
これまで様々な事件を解決する中で出会った武士や大名、そして武装した村人たちである。中には泰山(たいざん)による洗脳を受けて灰桜の信者となっていた者もいたが、戦いの中で改心し、今では白亜(p3p008770)たちを支援する側へと回っている。
「今度こそ、ここで『終わり』や。ここまでの計画でハッキリした。ヤツはまだ『不死』やない。……殺せる!」
「…………」
無明(p3p008766)も黙したまま、白亜の言葉に深く頷いた。泰山に協力していた叫喚(きょうかん)もここへと入り込んでいるのは間違いないだろう。他の羅刹十鬼衆たちも、同じく脅威だ。
羅刹十鬼衆の一角であった『一(いち)』という魔種はかつてカムイグラの戦いにおいて封印から解かれ暴れ出したが、二たちの活躍によってこれを鎮圧。再封印を施すことができた。四神結界の内側ということもあり、この封印が解かれることなどないと断言していい状態だ。
「皆も、ここまで一緒に戦ってくれて……」
ティスルはそこまで言いかけて、首を振った。ありがとうも、あるいはそれに類する何かも、今は必要ない。
これが最後の戦いだというのなら、言うべきことは一つだ。
「倒すわよ!」
敵の主力となるのは子鬼の首魁『我流魔』。そして百鬼夜行の主『豪徳寺 英雄』。
加え天女使い『華盆屋 善衛門』。灰桜の教祖『泰山』。
それに加え、たった一人でそれらに並ぶ剣術使い『初鹿野・露葉』。
それだけではない。羅刹十鬼衆に属し、同じく計画を進めていた叫喚、珍法、天神山 葛葉、依田 天満といった面々も恐るべき脅威となるはずだ。
だが、カムイグラを神の災いが襲った人は違う。
今ここに居並ぶイレギュラーズたちは、いずれも世界に通用するほどの強者たち。
たとえ相手が魔種といえど、援軍たちと力を合わせれば勝てぬ戦ではない。
『応!』という船団からあがる声が、それを肯定するように響いた。
●子鬼の我流魔
飢えていた。渇いていた。死にかけていた。
獄人と蔑まれたからではない。
集落でひとりぼっちだったからではない。
しいて理由をつけるなら……そう、『運が悪かった』からだ。
文字の読み書きはおろか、言葉すらろくに覚えられなかった彼は家族の中でも優先順位の低い子供だった。
元々貧しい鬼人種の農家だった両親は子供を10人ほどこしらえ、そのいずれもまあまあに育っていた。しかし彼だけが遅れ、彼だけが取り残された。
『このまま大人になったとて……』という父親が発した言葉を最後に、彼は山の中へと捨てられたのだ。
ゆえに飢えて、乾き、死にかけた。
ゆえに野草を喰らい、獣に噛みつき、泥水を啜ってでも生きようとした。
そして、そう……これはもしかしたら『運が良かった』からかもしれない。
彼に魔種による呼び声があったのだった。
たちまち屈強な肉体を手に入れた彼は周辺の動物という動物を殺して喰らい、それでも満たせぬ飢えによって山を下り、集落を襲った。その中に親や兄弟の姿はあったはずだろうに、彼にはもうわからなかった。
滅ぼした村を文字通り食らいつくした後に彼は、やっと自分の名前が『がるま』だったと思い出した。
いや、それだけだ。思い出したのは名前だけ。
脳裏を他に占めるのは、飢えと渇き。
次々に生み出した己の眷属たる『子鬼(ゴブリン)』を群れにして、彼は今も飢えている。
「アイツ……クル……オウカ……子鬼殺し……ヤツモ、喰ウ」
●華盆屋 善衛門の空想天女絵巻
豊穣の国に、華盆屋 善衛門という男がいた。
貧しい家に生まれ、父が病に倒れたために働きに出ざるを得なかった彼は、商人の家でとても人間的とはいえない労働を課せられていた。
だが彼は弱音を吐くことも逃げ出すことも、まして主人に反抗することもなかった。
常に糸目を作って人なつっこい笑顔を浮かべ、誰よりも早く起きて店の前に箒をかけ、寝る間も惜しんで読み書きそろばんを覚えようとした。
全ては己が妹のため。
可愛い可愛い妹のため。飛行種と精霊種の間に生まれた彼には紫の髪をした飛行種の妹がいた。
彼女たちが笑って暮らせるためならなんだってする。
蹴られようが砂を喰わされようが、笑って働ける。
それが善衛門という少年であった。
彼はその克己心ゆえに出世し、やがては番頭を任されるまでになった。
実家への仕送りは増え、手紙も山ほど書いた。
返事がないのは気になったが、元気な証拠と思って働き続けた。
そんなある日。
彼の取引先の主人から娼館へ誘われた。
女遊びに興味のなかった彼も付き合いだからと宿へ入り……そして。
妹を、赤い格子越しに見た。
彼は絶望と暗黒に呑まれ、その日を境に反転した。
娼館の主を殺し、逃げ惑う客達を殺し、娼婦たちを殺し、すべてすべて殺し尽くして……はたと気づく。
「あれ? どこへいった? アッシのかわいい――」
妹の姿が見えない。妹の腕は見つけた。足も見つけた。頭も手元にある。その昔彼女に贈った赤い櫛だってある。
どこだ? いもうとは、いもう、と――。
「あれ? いもうとって、誰でしたっけねえ……?」
頭にあるのは、目の前の『モノ』を直さなくてはという想い。華盆屋はそこいら中に転がった足だの腕だの胴体だのをつなぎ合わせてそれらしいものを組み立てては、それを『天女』と名付けた。
自分が探していた『――』が、きっとそれだと信じて。
それから幾年月が過ぎただろう。
「ああ、やっと手に入る……雀ちゃん」
あの子を使って組み立てれば、きっと『――』が見つかるだろう。
そう、信じて。
●豪徳寺の妖怪使い
鬼人種でも努力をすれば英雄(えいゆう)になれる。
豪徳寺家の次男、英雄(ひでお)はそう信じていた。
幼い頃から勉学に秀で、才能豊かで人からも好かれた彼は、鬼人種でありながら兵部省の八百万たちのもとで働くことが許されていた。
周囲の目や偏見もあって役職を得るまでにはならなかったが、それだって、いつか認められると信じ働いた。
自分を徴用してくれていた八百万の男も、「いつかお前を文官にしてやるぞ」と言っていたのだから。
だがそれは、やはり『嘘』だったのだ。
巫女姫の台頭に前後する形で起きた過激な鬼人種による暴動や、それに対しておきたより強い偏見。
その動乱の中で母と兄が殺されたと知った時、彼は『嘘』に呑み込まれた。
呼び声をうけて魔種へと反転し、自分を謀った者たちへの復讐を始めたのだ。
けれど。
『母と兄を殺した『――』に鉄槌を』という想いは、日に日にゆがみ、にごり、変化していく。
彼は力を奮うたびに、敵にも仲間にも嘘をつき続け、いつしか彼の戦う理由は『腐った国の破壊』という大それたものへ変わっていた。
その嘘は自らをも騙し始め、もう誰も、彼の最初の願いを覚えていない。
えいゆうになれると信じていた。
けれどそれは、嘘だった。
「嘘吐きだ。どいつもこいつも、嘘吐きだ」
だから壊してやるのだ。そうだ、最初っから、そうだった、はずだ……。
●初鹿野・露葉
鬼人種の女、初鹿野露葉には夢があった。
それはカムイグラから種族の偏見を無くす夢である。
故に努力を怠らず、常に自らを磨き、そして他にも積極的に接してきた。
露葉は貴族文化にすら精通した、世にも出来た女となったのだ。
鬼人種への偏見を差し引いても八百万がつい目にとめてしまうほど美しく、『おまえが八百万であればよかったのに』と言われるほど信用され、そしてそれ故に式部省の裏口から出入りする程度には国へと仕えることができていた。
非公式にとはいえ多少の裁量は与えられるようになった彼女は鬼人種が通える学校を作り、鬼人種を専門に見る医者を雇い、鬼人種への差別をなくそうと訴える人々を組織しはじめた。
そしてそれは――炎となって爆発した。
彼らは差別を無くすために国へ抗議するどころか、国の兵達に石を投げはじめ、やがて剣をとり、しだいにそれは立派な暴徒へと成長していく。
偏見はなくなるどころか加速し、露葉の思いは忘れ去られていく。
それでも自らの組織した、自らが責任を負わねばならぬ人々に祭り上げられることを、彼女は拒むことができなかったのだ。
望まず主張し、望まず矢面に立たされる。
そんな日々のなか、ふと聞こえた呼び声に……彼女は応えた。応えてしまったのだ。
気付けば彼女の両手は血に濡れていた。
自らが組織した筈の抗議団体と、その鎮圧にあたった兵。それら『全員』を斬り殺していた。
「私は……ああ、そうでした。『全ての八百万を排除せよ』と……」
望まずしてきた主張だけが頭に残り、露葉は血塗れの刀を手に歩き出す。
魔種の女、初鹿野露葉には夢がない。
なぜならもう、誰の望みも聞こうとしないのだから。
●叫喚と泰山
不老不死の薬があれば、何ができる?
叫喚と泰山という二人の鬼人種はそんな夢を語り合う古き友であった。
空飛ぶ豚や瓢箪から出る馬のように、ありえない空想を語り合って笑い合う、そんな友であった。
頭が良くて気の回る叫喚と、人に好かれてよく弁の回る泰山。二人は対照的ながらも気が合って、いつまでもそんな空想を語り合えた。
二人は共に遊び、共に学び、共に活動に参加する。
まるで運命の川に流されるように参加していた団体は、種族の偏見をなくそうと主張する女の作った団体であった。
団体の活動は日に日にエスカレートし、気付けば鬼人種の自由や八百万の排除を求める運動を起こすようになり、国の兵とぶつかることも多くなっていった。
このままではまずい。そう思った頃には、もう遅かった。
代表を務めていたはずの女が反転し、団体も兵ももろとも殺し尽くしてしまったというニュースが飛び込んできたのだ。
慌て、抗議活動に参加していなかった仲間達と共に現場へ駆けつけ……そして直面する。
自分達の空想が、所詮空想に過ぎなかったと。現実は、こんなにも残酷で冷徹なのだと。
二人は逃げた、逃げて、逃げて――ふと聞こえてしまった呼び声の中に、逃げてしまった。
不老不死の薬があれば、何ができる?
叫喚と泰山はただのビジネスパートナーだった。互いを信じ合うことも、笑い合うこともない、そんな利害のみの関係だった。
賢く暗躍し続ける叫喚と、人を信用させ利用する泰山。二人は対照的ながらも利害が合った。
白亜無明姉妹に目を付けたのは、そんな時だった。
彼女たちを蠱毒に育て、不老不死の薬を作ろう。
そんな空想を、目指して。
●幕開けのベルが鳴る
島へと船がつく。次々に上陸する仲間達。
子鬼や妖怪たちが迎撃しようと襲いかかる中に、大量の矢が飛んでいく。
さあ、最後の戦いは始まった。あなたの舞台は――。
- 羅刹十鬼衆地獄巡り完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月19日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC6人)参加者一覧(10人)
リプレイ
●羅刹島
カムイグラの地方大名からなる戦士達が挙兵し次々と岸に船をつけては乗り込んでいく。
放物線を描き飛んでいく無数の魔法と、子鬼たちの放つ矢。
空を飛翔し刀を繰り出す侍と、それを鋭く長い爪ではねのける天女。
軍と軍によるぶつかり合いは拮抗し、その中を『夢幻の如く』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)が豪快に駆け抜ける。
「武力による正面衝突は因縁のある先輩たちに任せてあたしはひとっ走りしてくるっす、偵察、伝令、破壊工作とかぜーんぶ任せて欲しいっす!」
「あっおい!」
侍の一人が呼び止める間もなく、ウルズは風を追い越すほどのスピードで敵集団をすり抜けていく。
ウルズの役割は敵集団の位置、それも首魁となる羅刹十鬼衆幹部たちを見つけ出すことだ。
「よっ――っと!」
瓦屋根を駆け上り、高い位置から見回すウルズ。
見れば、子鬼に守られた我流魔、妖怪達を従える豪徳寺 英雄、天女の群れの奥にひそむ華盆屋 善衛門、一人堂々と立つ初鹿野・露葉、子鬼や天女の戦力を借りた形の泰山……は見えたが、どうやら叫喚の姿は見えない。奇襲を狙っているのか、それとも仲間を見捨てて逃げてしまったか。いずれにせよ、位置は分かった。
「先輩たちに伝えるっす! 援護たのむっす!」
下でギターを鳴らし治癒のフィールを展開していた『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)に声をはると、涼花はアイコンタクトでそれに応えた。
歪曲運命黙示録、更にイオニアスデイブレイクを展開し自軍を強化。勢いを増した味方の兵達が敵陣を切り拓く。
「やはり鬼ヶ島で鬼と戦うとなれば! 豆撒きしかないであろう! ウッホウッホさあて鉄の星ばらまいたるわー」
支援効果を受けながらも兵達を指揮する『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)。
「鬼がわらわら湧いて来やがった。豆撒きタイムだ」
鈴音は拳を握りしめると、『鬼は外~福は内~』と唱えながら力をため込んだ。
兵と子鬼たちがぶつかり合うのを眺めながら。
そして。
「ちょっとはやいが血の雨赤サンタのお祭りダァ~!」
繰り出す拳からは紅蓮の魔力が放たれる。鈴音の号令(?)に従って素早く味方飛び退いたそのエリアには子鬼達。鈴音の魔力が全てを吹き飛ばしていく。
その中を――。
●可愛い雀ちゃん
『銀すずめ』ティスル ティル(p3p006151)は自らの髪が真っ黒に染まるのを感じながら、自らの心までもが引っ張られていることを自覚していた。
それはいわゆる自らを縛る呪いであり、執着の末に行き着いた誰かの地獄だ。
「長かった……けれど、やっと追い詰めた」
いくつもの戦い。いくつもの悲劇。ティスルはこれまでの戦いを思い出しながら、天女を次々に切り裂き、翼を羽ばたかせる。
空を穿つように飛ぶ彼女を、もはや天女達では止められはしない。
「いい加減、狙い狙われの関係は止めにしましょう。
愛した妹の面影を『名も知らない女』に求めるのは、今日限り。
私は私。雀芽さんには成れないし、成らないわ」
追う中で知った、華盆屋 善衛門という男の悲劇。彼の執着は反転によって歪み、この世に地獄をまき散らかすだけの悪魔と化してしまった。
終わらせられるのは、きっと自分なのだ。
彼が自分を呪ったのも、きっと意味があったはずだから。
「ティスルさん、気をつけて! いくらこの能力差でも、囲まれれば動けなくなります!」
『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)は自らの妖力で作り出した大きな鏡を宙に浮かべると、浴びた光を身体へと行き渡らせる。
薄紫の霧が一瞬だけふわりとあがったかと思うと、鏡禍は急加速をかけて天女たちを手刀によって真っ二つに切り払った。
「天女の事件とは何度か関わっていたのですが、どれもあまりいい気分にはならない事件でした。
その元凶を止められるのなら僕は割れぬ鏡としてここにありましょう」
鏡禍が数知れず解決してきた事件のなかでも天女事件は気味の悪いものばかりだった。生贄。改造。人さらい。
「恨みつらみは人を変える、か……」
反転によって歪んでしまったとはいえ、その基点はなんだったのだろう。鏡禍は華盆屋という男を想像し、考える。
いや、考えかけたと述べた方がいいだろう。
「ティスルさんのお話では狙われる可能性が高いのは彼女自身。ならば僕はそんな彼女の盾になって見せましょう」
いまこのとき、鏡禍には役目がある。考えを巡らせるのは、それを全うしたあとで充分だ。
「――ッ!」
突如、鏡禍の髪の一房がぴこんとはねるように上がった。近づく殺気に気付いたからか、それとも鏡禍の覚悟がみせた直感か。
「ティスルさん、ボクの後ろにっ」
鋭く叫ぶ鏡禍の後ろへ急ターンをかけて隠れるティスル。
そこへどす黒い魔力の波動が叩き込まれた。
「つうっ……!」
鏡禍は腕をクロスし魔力を防御。
触れたそばから鏡禍の腕を解かし変形させようとする。鏡禍は自らの妖力を練り上げると自らの形を修復していく。
「この力で……天女を作ったんですか。華盆屋 善衛門」
静かに、そして覚悟をもって呼びかける鏡禍。
その視線の先に、善衛門はいた。片腕を翳し魔力を放ちながら鏡禍を……いや、その後ろのティスルを睨んでいる。
「退きなさい、妖怪。アッシはそこの雀ちゃんに用があるんだ」
「そうはいきません」
鏡禍の姿がフッと湖面に映る月のように揺れたかと思うと、姿が消え善衛門の真横へと現れた。
妖力を込めた手刀を横一文字に繰り出す鏡禍。
善衛門はその動きを読んでいたかのように跳躍してかわすと、飛んできた天女へと飛び乗った。
翼をはやし左右十二本の腕をもつ長い蛇のようなシルエットをした天女。美しい女の頭を三つつけていたが、どれも目はなく鼻もない。のっぺりした顔に紅をひいた大きな口だけがあった。
その口から揃ってウフフと笑う天女の上で、善衛門は振り返る。自分を追って飛行するティスルを見てだ。
「ああ、ついてきてくれるだんね。アッシの可愛い――つ」
瞬間。善衛門の首がとんだ。
ティスルが一瞬にして加速をかけ、流体剣を細く鋭く整え彼の首を切り飛ばしたのだ。
彼の首はひゅるひゅると地面へと落下し、草地へと音をたてて落ちた。
そして。
「――返せ」
首だけで、呟く。
周囲の天女が密集し、その異様さにティスルと鏡禍。援護にやってきた味方たちも距離をとる。
「返せ――返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せェ!」
目を見開いた善衛門の首が中に持ち上がる。無数の女性の胴体を百足のように組み合わせた長い長い巨体から、腕を綱のように絡み合わせた『脚』を大量にはやし、肉の翼を作り出したその怪物は、再びティスルへと振り返った。
ゴォ――という空気をおしのける轟音と共に飛行するそれを、ティスルは回避しきれなかった。
腕の一本に掴まれ、空中をかきまわすように振り回され、そして地面へと投げられた。
鏡禍が飛び込み彼女をキャッチしなければ、酷いダメージをうけていただろう。
「あれが、善衛門……」
鏡禍は怪物と化してしまった善衛門を見遣り、再び妖力を高めていく。
「返せ!」
叫びと共に突進してきた善衛門。今度は巨大な鏡状の障壁を作り出して防御する鏡禍だが、何層にもわたって構築した障壁は一瞬にして破られ、鏡禍の腕が食いちぎられる。
「まだ……!」
鏡禍は歯を食いしばり、アクアヴィタエの瓶を開く。素早く修復された腕。鏡禍はあえて相手へと飛び込み、次なる攻撃を受け止めにかかった。
巨大な女の顔が、口を開いている。目も鼻もない、真っ黒な歯が並ぶそれが、鏡禍を喰らおうと口を開いたのだ。
あえて飛び込んだ鏡禍は顎の上下を両手両足で突っ張るように押さえると、『今です』と叫んだ。
「今度は届かせてみせるわ。何度も弾けると思わないことね!」
そう、これこそが最大の隙。ティスルは弾丸のごとく飛び、善衛門の巨体を穿ったのだった。
どろどろと崩れる怪物の巨体。
その中に残ったのは、両手両足の無くなった善衛門の身体だった。
整っていた髪は乱れ、顔の形も維持できなくなりつつある。できることといえば、地面に仰向けに横たわることだけだ。
ティスルはそんな彼のそばに降り立ち、見下ろす。
「遺言くらいは、聞いてあげる」
「ゆい……ごん……?」
「妹さん……雀芽さんに伝えるよ」
「雀……芽……? だれ、だ……? アッシは、そんな……あ、あ?」
目に、光りが宿る。
「ああ、雀芽。そんなところに居たのか」
理性的な、優しい声。
溶けかかった目でティスルを見つめ、笑みの形を作った。
「一緒に帰ろう。待たせて、ごめ――」
言い終わるより早く、彼の頭は溶けて崩れた。
もう元に戻ることはない。
彼の力が失われたからだろう。空を飛ぶ天女たちも次々に溶け、墜落していく。
ティスルは唯一溶けずに残った一枚の帯を拾いあげ、目を瞑る。
「伝えておくわ。あの子のお墓に、供えてあげる」
●夢はいずこに
「私はあんた達に直接縁がある訳じゃねーんだが……『天女』には大分世話になったんでな。悪いが、終わりにさせて貰うぜ」
城のような建物の中、翼を折りたたみゆっくりと歩く『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)。
その奥には、一人の女が立っている。
初鹿野・露葉。反転によって夢を歪ませ、殺戮の鬼と化してしまった地獄の徒。
「あなたは……知っています。天之空ミーナ。名声は響いていますよ」
「そりゃあどうも。アンタのことも知ってるぜ。確かに偏見は良くないよな。それをなくそうとしたお前は立派だよ」
「…………」
露葉は目を細め、刀に手をかけるでもなく両手をだらんとさげている。
ミーナは足を止めた。両者、武器の間合いの外。
「そして、偏見をなくさなかった仲間が許せないよな。暴に訴えるなんざしたら、後は負の連鎖だ」
「何が言いたいのでしょう……」
感情の動かないような声だが、ミーナはうっすらとだけわかっていた。
「お前の罪があるとしたら……そこで止められなかったこと。本当はわかってるんじゃねーのか?」
何かを言おうとする露葉を遮るように、もう一人の存在が現れた。
『善悪の彼岸』金枝 繁茂(p3p008917)である。
彼は革靴をコツンコツンと鳴らして板張りの部屋をゆくと、『土足で失礼』と言って露葉の足元を見た。彼女も土足だ。無礼はなかろう。
「天香・長胤の婚約者が殺されその報復として多くの獄人が、樫木や生徒だったあの子たちが殺されたのはあなたの責任ではありません。そう言っても初鹿野先生は納得できなかったんですよね」
彼の問いかけに、しかし露葉は返さない。
ただ黙し、こちらを見つめるだけだ。
繁茂は歯を食いしばり、自らの胸に手を当てて叫ぶ。
「でも自分達がされたからと言って八百万共にやり返しても、憎しみの火がくべられ続けるだけじゃありませんか!
あいつらに対する憎しみは消せやしない、けど! それを押し付けるのはダメでしょうが!!」
室内を反響する彼の声が、しかし静寂を生む。
数秒の沈黙のあと、露葉は引き結んでいた口を開いた。
「言いたいことは、終わりましたか?」
「――先生!」
「言葉は無粋。だから、皆ああなった」
「先生、あなたは!」
「やめときな。もうコイツは人間じゃない」
ミーナが剣に手をかける。
繁茂がハッとしたその時には、露葉もまた刀に手をかけていた。
ブン――と二人の姿がかき消える。
そして両者の間に衝撃が走った。
床が放射状に砕けていく。
繁茂はすかさず飛び込み、己もまた刀を抜く。ミーナの速さとはまた違う、強かで頑丈な剣筋。それは露葉の剣を受け、刀身を傷つけないようにやわらかく払いのけるだけの技量があった。
もはや昔の彼らではない。魔種と渡り合うほどに、彼らは強くなった。
魔種がおとぎ話の存在だったというのなら、彼らもまた、おとぎ話になったのだろう。
「やらせません!」
繁茂は素早くターンし襲い来る剣を、絶妙なタイミングで受け流し続ける。
手数こそ相手が勝るものの、繁茂の守りは充分に致命傷を避けている。
それでも繁茂の身体のあちこちに傷ができ、時にはぶしゅんと血をふくほどに深く切れる。
「よそ見をするなよ」
ミーナの剣がはしる。それも、刀身に纏った死の魔力を放って。
繰り出された剣は間合いの全く外にいた露葉へ襲いかかり、露葉はそれを察知し素早くその場から飛び退いた。
斬撃として飛んだ魔力は柱を破壊、粉砕する。
露葉は素早いステップでミーナの首を狙おうと迫るが、直線移動によって割り込んだ繁茂の鞘がそれを受け止める。
攻防一体。抜けるには難しい。
それを察したのだろう。露葉は一度飛び退くと、刀を鞘に収めじっと立ち止まって見せた。
「これは……」
繁茂は息を呑み、ミーナもまたその危険さに冷や汗を流す。
露葉の『間合い』には木の葉一枚ですら通れないほどの殺気がみなぎり、どんな相手も近づいたその刹那に斬り殺されるだろうことが……戦闘経験の豊かな二人には手に取るように分かった。
自分がいかに斬りかかろうとも血を吹いて倒れる姿が目に浮かぶ。
「ミーナさん……ここは、お任せ下さい。必ず隙を作ります」
「お前っ――」
ミーナはそれ以上を言わず、口を結んだ。口を挟む問題ではない。そう思えたのだ。
繁茂は頷き、そして歩き出す。
「あいつの思いも、あなたの思いも、私が継ぎます。だから安心してください。見送るのは、いつも私の役目ですから」
刀を握り、走る。直線のコースだ。嘘もハッタリもない、真正直な。露葉はほんの僅かに驚きをみせたが、しかし冷酷に刀をぬき、『突き』を放つ。
剣を抜き払おうとした繁茂だが、まるで相手の刀身はうごかなかった。強引に突き出されたそれが繁茂の身体を貫く。
「ぐ……!」
直後。繁茂は露葉の腕と肩をしっかりと掴んだ。
血の流れる唇で、笑う。
「捕まえましたよ」
「――」
刹那、ミーナは駆け抜けた。
剣を振り抜き。露葉の後ろへと通り抜ける。
直後に血が吹き上がり、露葉は自らの首を押さえた。
「ああ、まだ足りないのでしょうか。これだけの力を手に入れても、まだ」
「悪いが。アンタの負けだ。繁茂、トドメはアンタが――」
ミーナが言いかけた、その瞬間。
突如として暴風が吹き抜けた。
見えたのはほんの一瞬。カッパの仮面をつけた少女が傷付いた露葉を小脇にかかえ走り抜けるさまだった。
「待て!」
追いかけようと走るミーナだが、もう気配はない。
「くそっ、持って行かれた!」
歯がみするミーナが振り返ると、繁茂ががくりと膝をつき腹を押さえている。
ミーナは迷った末に彼へと駆け寄り、肩を貸してやる。
「アイツは負けた。私らがカムイグラを闊歩している以上、もう好き勝手しようとは思わねえだろう」
「そう、ですね……」
目を瞑り、肩を貸されて歩き出す繁茂。
勝利は、血の味がした。
●泰山という男
「泰山のやつはうちが絶対にやらなあかん。
今回はお得意の信者戦法があんまつかえんそうやけど……それだけがあいつの強さじゃない」
妖怪や子鬼たちをなぎ払い、突き進む『必ず奴を……』白亜(p3p008770)。
そんな白亜を進ませぬためか、妖怪たちが列を成し立ち塞がる。
伝え聞く所によれば、羅刹十鬼衆のうち二名が脱落。追加一名が戦場から消えたという。
戦争は五割の損耗で敗北と言われるが、泰山ほど慎重な男ならば三割の損耗でも逃げに徹するかもしれない。
逃がすわけには行かない。だが敵があまりにも多く……。
「お前さんたちは羅刹十鬼衆の因縁を今ここで終わらせるんじゃ! だからここはワシに任せるがいい!」
そこへ救いの手をさしたのは『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)であった。
己の武器から繰り出すレジストクラッシュによって妖怪達を払いのけると、白亜の道を開かせる。
「友軍の支援は私に任せて下さい」
同じく『群鱗』只野・黒子(p3p008597)が持ちうる様々な能力を駆使し、白亜が泰山へと至るルートを開かせてくれた。
黒子がパスしてきたルートマップを一瞥し、頷く白亜。
後は任せたとばかりに走り出す彼女を見送り、オウェードと黒子は群れを成す敵へと向き直る。
「これが村人が言っていた「秘密」と言う訳じゃな……。
出来ればワシも泰山に向かいたかったが、少々幻想や鉄帝で忙しくなって長く戦える余裕が無いのう。
さておき、ワシも出来る限りの事はしておこうかね!」
オウェードは気合いを入れ直し、襲いかかる子鬼の棍棒を頑強さによって受け止める。
一方の黒子は『天上のエンテレケイア』と『殲滅兵団』を巧みな術式構築によって同時発動。到着していた友軍の兵たちを治癒、強化すると手にしていたキセルをくるりと回した。
「どう見る?」
オウェードと黒子はこの戦いを戦略的に観察していた。
「現状、泰山は最も弱い軍に『見せかけて』います。事前の偵察によれば叫喚は戦場のどこにも姿が見えず、隠れている可能性があるとのこと。ここまで存在を見つけ出せないなら、軍の弱さは誘い出すための罠とみるべきでしょう」
しかしそれを分かった上で、行かねばならぬ。
それが宿命なればこそ。
「神逐の横殴りから随分引っ掻き回してくれたものだ。
更には青龍たちの結界に手を出そうとは八つ当たりの度が過ぎるな、ここで一気に折らせてもらうぜ」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は『式符・陰陽鏡』を発動。
式符を用いて陰る太陽を写す魔鏡を瞬間鍛造すると、胸の前へと翳して構えた。
虚像の鏡像から溢れる暗黒の雫が子鬼や妖怪たちを包み込み、彼らの動きを阻害する。
「しっかし、魔種にもなって不老不死とは、また詰まらない物を探してるものだ。
終わりがあるからこそ挑み、輝くものもあるというのにな。
……それに終わりなき道の末に『いつかは星にも届く』では、余りに格好が付かないだろう」
錬は不敵に笑うと妖怪たちの間を駆け抜けた。
そして、堂々とこちらに『背を向けて』立つ泰山を発見する。
「見つけた――『式符・相克斧』!」
五行相克の循環を象った斧を瞬間鍛造した錬。握りしめたそれは激しい五行の魔力を纏い、泰山へと振り下ろされる。
対する泰山は――。
「見つけさせてやったんだよ」
そう呟いて、無骨な鉈を背中越しに翳した。
錬の斧が、あろうことか鉈一本でとめられたのである。
「こいつ……!」
普通ならばありえないことだ。錬のもつ中でも最強の攻撃手段であり、常人であれば一撃で命を奪うことすら可能な『兵器』とすらいえる鍛造術なのだ。
泰山はにやりと笑い、振り返る。
「泰山――ッ」
そこへ鋭く放たれる紫電一閃。
白亜の蹴りによって横一文字に繰り出された白い雷は泰山へと命中。したが……彼の眼前で雷がかき消える。
直後泰山の繰り出す鉈と蹴りが、二人の意識を刈り取らんばかりに繰り出される。
血を吐きそうになるのを耐えながら、歯がみする白亜。
あまりの事態に、錬は飛び退き白亜もまた距離を取った。
「天目」
「ああ、攻撃がここまで通用しないのはおかしい。何か仕掛けがある。気になることがあるとすれば……」
錬に言われ、白亜は思考を巡らせた。
そこで浮かんだのは事前情報にあった違和感だ。叫喚と泰山は協力関係にあったという。
この羅刹島に二人がはいった情報も確かだ。だがこの戦場を上から眺めて偵察したさいには叫喚の姿が見えなかったというのだ。
更に言うなら、泰山の得意とするところの『人心を掌握して盾にも矛にもする』という戦術が用いられていない。城の建設には動員したようだが、泰山ほど冷酷かつ冷淡な人間なら彼らを盾にして戦うだろう。
「しっかし、まさに『一夜城』って感じだな。表面だけを取り繕った形だけの城だ。こんなもの、作ったところで防御も弱いだろうに、何故作ったんだ? 『見せかけ』にしかならあないのに」
錬は攻め込むにあたって城の見立てを行っていた。確かに城はハリボテのように外面だけを取り繕った作りであり、本来城が持つはずの防衛基地としての役割がこなせていない。防衛に必要な仕掛けがほとんどこらされていないのだ。極端に言えば堀すらない。
そこでふと、ある可能性に気付く。
「『見せかけ』って、誰に見せるん?」
白亜の言葉によって、可能性はパズルピースとなって回答をくみ上げていく。
「見せるのは『俺たち』だ。俺たちの動きを『城攻め』にするためだ! 城攻めの前提は、相手が守りに徹して『逃げない』こと。なぜなら城を落とせばこちらの勝ちだからだ。
そうするメリットは――!」
「今気付いても遅えよ!」
泰山はニッと笑い、こちらに背を向けたまま走り出した。
そちら側に味方の兵はいない。つまり足止めができない。
「逃がすか!」
錬は追いかけ、『式符・陰陽鏡』を発動。
しかし彼の放つ暗黒の滴は命中したにも関わらず泰山にレジストされてしまった。
「そうか、耐性を付与されたか! 俺と白亜の攻撃が通じなかったのも、物理と神秘両面に無効化結界を張ったせいだ!」
「やっぱり……」
生き汚く、生に執着する。『不老不死』などという夢を魔種になっても求めてしまうほどの男だ。どんな手を使ってでも生き延びようとするのだろう。例え、羅刹十鬼衆全てを『捨て駒』にしてでも。
「奴にとって羅刹十鬼衆は仲間やない。初めから自分が生き延びるための駒やった。初めから、真っ向勝負を挑む気がなかったんや」
警戒して正解だった。と、白亜は忌々しげに呟き追いかける。
「安心しろ。結界は常時発動型じゃないはずだ。なにせ奴は『立ち止まっていた』。攻撃させるタイミングを自ら作ったんだ。あのタイミングでなければいけない理由があったってことだ。だから今なら――!」
錬は再び『式符・相克斧』を発動。斧を繰り出し、泰山へと迫る。
白亜も同時に泰山へと追いつき、彼に雷を纏った拳を叩きこんだ。
「うお――!」
これには流石の泰山もまともにくらい、ひしゃげたように吹き飛ぶ。いや、実際に身体がひしゃげて吹き飛んだのだ。
自慢の再生能力も、高い火力による集中攻撃の前には追いつかない。
「これで終わりや。執着ごと、すりつぶしたる……」
白亜がトドメの一撃を放とう――とした、その時。
毒の霧が、暴風となって吹き付けた。
それは触れた一瞬で体表が崩れ落ちるのではと思うほどに強い刺激と痛みを伴った。当然泰山も毒霧に蝕まれるが……。
「ここで死なれては面倒なのでねエ」
傷付いた泰山を抱えあげる一人の男。叫喚だ。
「逃がすか!」
錬と白亜が同時に動こうとするが、彼らの脚に灰桜の信徒たちがすがりつくように抱きついた。
戦闘に参加させなかったのは、『このとき』のためか!
毒霧に蝕まれ信徒たちは次々に絶命するが、そんなことなど構わないとばかりに泰山はこちらを、白亜たちを振り向いた。
「羅刹十鬼衆もおしまいだな。けどまあ、生き延びさせてもらうぜ。奴らの志とやらに殉じるつもりはないんでな」
直後、黒い煙幕が彼らを多う。
「待て、泰山……!」
信徒たちを振り払いついに走り出す白亜。
だが、既に煙幕の中にも、そして外にも彼らの姿はなかった。
後ろから、子鬼や妖怪たちの軍勢が追いついてくる。
チッと舌打ちをして、錬はその軍勢へと向き直った。
「ここは、俺たちも生き延びる必要がありそうだな。また、戦うために……!」
●飢えと渇きと
大量の子鬼の群れの中を駆け抜ける『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)。
子鬼(ゴブリン)はみな醜く、汚く、愚かで、そして皆飢えていた。
フラーゴラはしかし、彼らをただ殺すべき敵だとまでは思えなかった。
だって……。
(ワタシも浮浪児だったころ、おなかを空かせていた時があった。
おなかが空くのは、つらくて、くるしくて……けど、もう『このひとたち』は手遅れなんだよね)
飢餓に苦しむために生まれ、飢餓に苦しみながら死ぬことを定められた魔種の眷属、子鬼たち。
きっとお皿一杯の食べ物を配ったとて、彼らの飢餓は満たされないのだろう。
ならば彼らを救う方法はたった一つ。『殺してあげること』だけなのだ。
「おやすみ――」
フラーゴラはライオットシールドを構えながらその裏で魔法の詠唱を終えていた。
『夜葬儀鳳花』の術式が完成し、子鬼達の足元から炎の花が咲き乱れる。
悲鳴を上げて力尽きる彼らに、フラーゴラは言葉もなく祈った。
もし輪廻があるのなら、今度は普通の子供に産まれてきてね。飢えも苦しみもない、普通の家の、普通の子供に。
『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)に子鬼達が群がっていく。
彼女の得意な能力……あるいは『呪い』は、子鬼(ゴブリン)の仇敵たるものである。
これまで幾度も子鬼との戦いを繰り広げた彼女の物語も、ついに最終章を迎えようとしていた。
「遂にこの時が来ましたか…悪逆非道なる羅刹十鬼衆、例え同情できる部分があれども、無辜の人々を傷つけるその在り方は決して許せないわ! 今こそ、覚悟しなさい!」
名刀子鬼殺しが煌めき、子鬼たちを切り払う。
側面から迫る子鬼達の集団があったが、炎の花が吹き上がることで阻まれる。
「フラーゴラさん!」
「因縁ある対決なんだってね、お手伝いさせてもらうよ……」
「ありがとう! お力お借りします!」
二人は頷き合い、城の奥へと突き進む。
城といっても一夜城。簡素な作りをした数階建てなだけの建物だ。
防衛能力などまるでなく、二人は子鬼たちを次々に倒し上階へと駆け上がっていく。
幾度めかの階段を守る子鬼を切り捨てた後、至った階層にそれはいた。
「…………」
一頭のシカが横たわり、その肉をむしっては喰らう子鬼の王(ゴブリンロード)、我流魔。
「我流魔……我が宿敵」
桜華が剣を向けると、我流魔は目の前の床に置いていたシカの死体をなぎ払った。あまりのパワーに死体が吹き飛び、壁を突き破って外へと放り出されていく。
冬の冷たい風が、壁の穴を通して吹き込んできた。
「アタラシイ……エサ……クウ……」
まるで知性の通っていないような目をした我流魔が、棍棒を手に取った。桜華を、その宿命を、己の宿敵と確信して。
翳した剣と棍棒がぶつかる。桜華の力が押し負け、彼女は壁に激突した。
(あたしはまだ弱い。けれど……!)
「子鬼スレイヤー、鬼城・桜華……参る!」
覚悟なら、負けていない。
桜華は相手に押し込まれるその状態から、腰から抜いた拳銃で相手の脚を撃った。
頑強な我流魔の皮膚は弾丸すらもはねのけるが、相手の踏み込みを邪魔することはできる。体勢をかえ補おうとした我流魔の一瞬の隙を突き、桜華は側面へと回り込んだ。
今度こそとばかりに棍棒を振り込む我流魔――だが、『二度目』はない。ましてこのフラーゴラを前にしたならば。
「やらせないよ――」
ライオットシールドによるバッシュをしかけるフラーゴラ。棍棒の勢いが完全に乗るより早くぶつかったことで、我流魔の姿勢が大きく崩れた。
「そこ!」
フラーゴラは次の行動を完全に先読みし、治癒の術式を短縮詠唱。発動――とほぼ同時に我流魔の蹴りがフラーゴラへ直撃した。
地面と水平に吹き飛ばされるフラーゴラ。しかし彼女の身体に残ったダメージはそれほど大きくはない。カウンターヒールが機能し、充分に衝撃を散らすことができたためだ。
ザッと脚でブレーキをかけ、とまって見せるフラーゴラ。
その頑強さに我流魔が目を剥いた――その瞬間。
ざくり……と、我流魔の背に刀が突き刺さった。
腹から突き出た切っ先を見下ろし、「ア?」と呟く我流魔。
刀の主はだれあろう、桜華である。
「あなたの飢えも、これでおしまい……」
よろめく我流魔。その姿に、もはや子鬼の王としての覇気はなかった。
「オナカ……スイタ……。サムイ……」
棍棒をとりおとし、膝をつき、地面に手を突く我流魔。その背に、桜華がそっと手をあてた。
「もういいの。もう、奪わなくていい」
「…………」
それは、奇跡だったのだろうか?
否。桜華が、そしてフラーゴラが見せた慈悲の心が、心なき我流魔へついに染みこんだための……言うなれば、愛情であった。
「アア……アリガトウ……」
我流魔は呟き、まるでおなかいっぱいになったかのような安らかな表情で、その場にごろりと横たわった。
桜華は懐からお握りを取り出し、その横に置いてやる。
「彼が死にかけた時にこうして誰かがおにぎりでも分け与えてあげれば……彼は魔種にならずに済んだのかもしれない」
「うん……」
フラーゴラも、取り出したおまんじゅうを横に置く。
「おやすみ」
桜華は我流魔の首に刃をあて、そして……終わらせた。
●妖怪依存症
嘘に塗り固められた男がいた。
自らも騙し、夢にすら嘘をついてしまった男がいた。
「二度と大切なものを失わないために……私は『ママ』になった」
妻と子を失うことは、家族にヒビをいれるに充分だった。
『鬼子母神』豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)は、故に自らを再定義したのだ。それもまた、嘘のひとつだったのかもしれないが……。
「美鬼帝さん、それは――」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は途中まで言いかけ、言葉をとめる。
カムイグラという国が巨大な動乱に飲まれ、様々な人が様々なものを失ったという。外様の立場から見ても、イズマが捨て置けなくなるような事件はいくつも起きた。
これは、その一つなのだろう。
(豊穣の動乱は神逐で解決したと思ってた。
……まだ残ってたんだな。変わりゆく豊穣から取り残された者達が)
どうしようもない。再会した『親と子』がわかりあうことは、もうない。
イズマは悲しみを胸に抱きながら、妖怪たちの中を駆け抜ける。
「ごめんなさいね、イズマさん。うちの息子にケジメ取らせる手伝いさせちゃって…どうか協力お願いしますね」
「問題無い。どうか悔いなきように」
「ぶははははッ! 全員纏めてかかってこい! 俺が相手になるぜ!」
味方の兵達が奮戦するなか、イズマ達の道を決定的に切り開いたのは、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)であった。
そんな彼めがけ、凶暴化した妖怪たちが襲いかかる。
牙が、爪が、形容しがたい何かが鎧と盾でガードするゴリョウへとぶつかる。
ゴリョウは彼らを挑発し自らにヘイトを集め、そして『そのまま』にしたのだ。
(元は罪なき無辜の妖怪、この豊穣の一部なら無意味に殺させるわけにはいかねぇだろよ)
カムイグラという土地を発見してから、長きにわたる冒険があった。その中でよい妖怪や、友達になれそうな妖怪はいくつもいた。彼らもまた混沌に生きる者のひとつなのだと知っている。
「誰よりも嫌いな嘘(殺意)を無辜の妖怪に押し付けたら、結局やってること変わらねぇんだよ……」
どこか悲しげにゴリョウは呟くと、巨大な骸骨型の妖怪がしゃどくろのスタンピングを受け止める。
「豪徳寺 英雄……悲しい目をするやつだった。早く行って、終わらせてやりな。自分の嘘で雁字搦めになるなんて、悲しすぎるからよ」
妖怪達をかき分けたその先に、殺生石を握る英雄の姿があった。
こちらに気づき、キッと表情を険しいものにする。
間違っても同胞に、ましてや親に向ける顔ではない。決定的に違うものになってしまったのだという事実をつきつけられ、美鬼帝はそのいかつい顔を歪めた。
「何をしに来た、今更」
敵意をむき出しにした声に、美鬼帝は立ち止まる。
「貴方の名に込められたその想いが貴方を苦しませていたのか……悩み続けていたわ。
だけどなァ、やっぱり人様に迷惑をかけたケジメはつけなきゃいけねぇ!」
イズマはその隣で構え、英雄を見やる。
「また会ったな。俺の事、覚えてる?」
あえて軽く言ってみせるイズマに、英雄は沈黙で返した。視線がイズマへの肯定を示したが、それ以上に向きだしの敵意がこちらを威圧している。
……いや、敵意だけではない。英雄から湧き出す妖力が、まるで暴風のように吹き付けてくるのだ。
「もう後には引き延ばせない。覚悟を決めようじゃないか。なあ、美鬼帝さん」
「そうだな。馬鹿息子、親として……ケジメつける」
「ケジメだと」
英雄の敵意が更に鋭く増していく。妖力がまるで槍のように変化し、美鬼帝とイズマを貫いた。
だが、それだけだ。
イズマは構わず突進し、魔術を発動させ自らのパワーを引き上げると英雄へと殴りかかった。
(俺の力は今、美鬼帝さんの決意を叶えるためにある。故にそれまで戦い続けなければならない!)
覚悟を決めたイズマの突進は、もはや英雄の溢れんばかりの妖力をもってしても止めることが出来ない。
そして覚悟という意味では、美鬼帝とて――。
「歯ァ、食いしばれ! 英雄! この、馬鹿息子が!」
イズマの打撃が入ったのと同時に、美鬼帝の拳もまた英雄へと届く。
幾重にも張り巡らされた妖力障壁をバキバキと破壊し、二人の拳が英雄の顔面を打った。
「くっ――!」
歯を食いしばり、吹き飛ばされることをギリギリで防ぐ英雄。
この戦いを正念場とみているのだろう。能力を出し惜しみすることなく解放する。
握っていた錫杖に力を込めると、二人をひと薙ぎによって吹き飛ばしてしまった。
妖力が紫の蝶のような形をとり、イズマたちの身体を切り裂いていく。
二人は踏み出そうとするも、脚が前へとでなかった。気合いや気力といったエネルギーを蝶が吸い取っているのだ。
近づけない。こんなに近くにいるのに。
美鬼帝が歯がみした、その横で。
「俺が時間を稼ぐ。その間に――!」
イズマは隠し球にしていた術式護符を発動。蝶による攻撃を全て自らの身に浴びると、イズマはずんと脚を前に出した。
蝶によるダメージは肉体にすら及び、流れ出る鼻血をぬぐってイズマは更に速度をあげる。
そんな彼を盾にしてすすむ美鬼帝。
ついに二人は、英雄のもとまでたどり着いた。
「英雄……!」
美鬼帝は手を伸ばし、英雄――抱きしめた。
「なっ――!?」
突然のことに驚く英雄。
もがくが、屈強なその腕からのがれられない。
「全く、貴方は昔から頑張り屋さんだったのよね……そのくせいつも自分で抱え込んじゃって。そういう所誰に似たのかしらね?」
美鬼帝はそう語りかけ、腕に力を込める。
「それでも頑張る貴方は……私達にとって誇らしかったわ。英雄、貴方は嘘つきじゃないわ、少なくとも私達にとって貴方は英雄(えいゆう)だったわ」
美鬼帝から零距離で流れ込んだエネルギーが、英雄の心臓を掴み、そして潰す。
血を吐く英雄は、その腕がなぜか美鬼帝の背に回っていたことに気付く。
「あなたは、うそつきなんかじゃない」
もう一度、確かめるように言う。
その言葉は届かないはずなのに。嘘に塗り固めた英雄には、もう信じられないはずなのに。
英雄の手からは、術扇と錫杖が落ち、美鬼帝を抱き返していた。
血と共に、目から涙がこぼれ落ちる。
「俺は……信じて……」
信じていた。
信じていて、裏切られた。
だからもう何も信じないように、嘘で自分を塗り固めて。
けれどもう。
そんな必要はないのだ。
イズマがふと見ると、地面におちた殺生石がバキリと音をたてて割れていた。
周囲で戦っていた妖怪達がハッと我に返ったように動きを止め、なぜ今こうしているのかわからないと言った様子であたりをきょろきょろ見回している。
「終わった……か」
イズマは息をつき、背を向けた。
美鬼帝は息絶えた息子を腕に抱き、目を瞑る。
もう、嘘をつく必要は無い。そう語りかけるかのように。
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
・我流魔の討伐:成功
子鬼を生み出す元凶であった我流魔が滅びたことで、子鬼たちも各地で討伐されていく中で自然に滅びてゆくでしょう。
・豪徳寺 英雄の討伐:成功
殺生石も破壊され、妖怪達の暴走は収まって行くでしょう。中には影響の残った妖怪もいる可能性がありますが、各地で討伐されていく中で自然と消えていくでしょう。
・華盆屋 善衛門の討伐:成功
天女を作成していた力の源が壊れ、滅びました。各地の天女たちも各地で討伐されていく中で自然にその姿を消していくでしょう。
・初鹿野・露葉の討伐:成功(ただし撤退した模様)
露葉を羅刹十鬼衆の仲間が助け、逃がした模様です。ですが戦いには勝利し、これ以上の跋扈は抑制されるでしょう。
・叫喚&泰山の討伐:失敗
泰山たちはこの戦場から逃げ切り、生存しています。あと一歩の所で惜しくも討伐に失敗しました。
・作戦総合評価:失敗
主目標であるうちの泰山たちを逃がしてしまったことで、作戦は失敗しました。
しかし羅刹十鬼衆が猛威を振るっていた原因である子鬼、天女、百鬼夜行の問題が解決したため、羅刹十鬼衆による地方への脅威を取り除くという作戦の大半は成功したといって良いでしょう。
GMコメント
羅刹十鬼衆をめぐる無数の事件の幕引きがついにやってきました。
舞台となるのはカムイグラ首都から大きく離れた無人島『羅刹島』。
大量の子鬼と天女、そして妖怪たちをくぐり抜け、首魁たる羅刹十鬼衆を倒しましょう。
●羅刹十鬼衆
古きカムイグラにて虐げられた者たちがその復讐や欲望の果てに魔種となり、集まってできた同盟のようなもの。それが羅刹十鬼衆です。
彼らは元々の目的がなんだったのかもぼんやりと忘れはじめ、魔種として反転してしまった今は滅びのアークを蓄積しては破壊や殺戮をくり返しています。
そして今、首都を破壊せんと力を蓄えつつあるようです。
ここで彼らを討ち滅ぼし、悲しみの物語に終止符を打ちましょう。
https://rev1.reversion.jp/guild/1084/thread/12131
●フィールド
『羅刹島』という無人島です。
この場所には子鬼や妖怪、天女たちが跋扈し、灰桜信徒たちは奴隷のように働かされています。
羅刹十鬼衆のメンバーはこのあちこちに散っていますが、おそらく皆さんを迎え撃つようにそれぞれの部隊を展開させ待ち構えるでしょう。
PCが戦う相手を決めている場合、偵察にでた仲間によってその位置が知らされ、迷うことなく到達できるものとします。
●エネミー
カムイグラの地方領その他から大勢の援軍が駆けつけてくれています。
そのため子鬼、天女、妖怪たちの説明は省くこととしましょう。
皆さんが真に戦うべき敵は魔種である羅刹十鬼衆たちとなるのですから。
・我流魔
子鬼の長にして永遠の飢えに苦しむ魔種。全てを喰らい尽くすという欲望だけが膨れ上がり、その力によって『子鬼(ゴブリン)』という魔物を生み出しました。
子鬼は村を襲い食料や道具の全てを奪い、女を浚い繁殖し、そしてまら村を食らいつくします。
その主たる我流魔を倒したならば、この厄災も大きく鎮圧されるでしょう。
我流魔の戦闘能力はそのずば抜けたパワーにあり、痛みや苦しみ、あるいは死した味方すら喰らってしまう飢えにあります。
・豪徳寺 英雄
百鬼夜行の主である彼は、殺生石を用い今も妖怪達を操っています。
逆に言えば、彼を倒し殺生石を破壊しさえすれば妖怪達のコントロールを失い、妖怪もそいれぞれ無害な(或いは野良の)ものに戻るでしょう。
彼個人の戦闘能力もまた殺生石から来ており、膨大な妖力によって攻防一体の力を見せるでしょう。
・華盆屋 善衛門
天女使いである華盆屋はこれまで戦闘を避け続けていましたが、ここまで追い詰められたことで自らをも改造し怪物へと変わりつつあります。
これまで戦った天女たちの力をまとめ上げたような怪物に、おそらくは変貌してしまうでしょう。
彼の狂った『復讐』を、今こそ止めてあげなくてはなりません。
・初鹿野・露葉
反転によって狂い凝り固まってしまった思想は、精霊種をはじめ立ち塞がる全てを排除しようという危険極まりないものへと変わってしまっています。
当然魔種となったために実力も高く、部下や眷属をもちませんがその刀一本で恐るべき戦闘力を発揮するでしょう。
・叫喚&泰山
この二人は羅刹十鬼衆の中でも深い協力関係にあり、戦のなかでもおそらく一緒に戦うことになるでしょう。
叫喚は多種多様な毒物・薬物に精通し、必要とあらば自分にも使用する男。今回の戦いでは薬物による激しい強化を施し、溢れんばかりのパワーを発揮するでしょう。
一方の泰山は人心掌握に長けた男で、『灰桜』教団の信徒たちを島にあつめこの城を建設させたようです。
ここでは信徒たちは大した戦闘力にならないと判断したようで、彼らを非戦闘員として奴隷のように働かせています。
よって戦闘においては泰山自身が表に立ち、魔術によって強化された身体能力と高すぎるEXF・自己再生・自己治癒能力にものをいわせた戦いを見せるでしょう。
他にも『依田 天満』『珍法』『天神山 葛葉』といった強力な魔種が戦いに加わる可能性があります。
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