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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>絡繰技師ガスター

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ガシャン、ガシャン、ガシャン。鋼鉄の足音が町のあちこちで響き渡る。
 聞こえる音はそれだけではない。銃声に、何かが切り裂かれる音。何かが砕かれる音。
 誰かが、死ぬ音。
 この日、ラド・バウ近隣のとある町を襲った一団は、魔物でもなく、兵士でもなく、ましてや盗賊でもなく。鋼鉄の絡繰兵達であった。
「ガ、ア……や、やめ……」
 脚を切り落とされ、命乞いする村人の頭を、絡繰兵は容赦なく踏み潰した。何度も何度も。
 また別の場所では銃が取り付けられた絡繰兵が民家を襲撃し、住民も家屋もまとめて蜂の巣にしていた
 鋼鉄の人型に銃や巨大な刃が取り付けられた絡繰兵達は、町の人々を見境なく襲い、そしてその原型が留めなくなるまで殺し、壊していた。
「ふむ……悪くはない出来だ。シャバに出てからしばらく。仲間の囚人もおらず、どうしたものかと思っていたが……どうやら絡繰技師としての腕は衰えていない様だ」
 絡繰兵達の中心、一際大きな絡繰り兵に搭乗し、操作している女がいた。
 その女の名はガスター。かつて鉄帝国において優秀な技師として活躍し――そしてその裏で発明した様々な『絡繰』を用いて暴力的な実験を行い、多くの人々を殺害した元死刑囚だ。
 ガスターもまた、新皇帝の恩赦を受けた囚人の1人。だが彼女は誰とも群れる事無く、自ら作り上げた絡繰兵と共に、再び暴力的な実験を繰り返していた。
「だが……標的を必要以上に『壊して』しまう点は頂けないな。非効率だし、何より美しくない。もう少しスマートなやり方をするように改良しなければ……」
 ガスターはぶつぶつと呟きながらメモを取る。どこまで行っても尽きる事のない発明欲。彼女にとっては絡繰を造る事が何よりも重要で、目の前で起きている虐殺はあくまで実験であり、その過程に過ぎなかった。
「貴様ぁ!! この絡繰を止めろ!! さもなくばここで貴様を射殺する!!」
 町の衛兵達が銃を構え、ガスターが乗っている巨大絡繰兵の前に躍り出る。
「ああ、それは丁度いい提案だ。撃っていいぞ、ほら」
「貴様ぁ……!! 撃て、撃て!!」
 衛兵達が一斉に銃弾を放つ。だが、銃弾は巨大絡繰兵の強固な装甲によって阻まれてしまう。
「よしよし。やはり装甲の硬度は問題なし、と……魔術強化ガラスによって搭乗席からの視認性も高い。この巨大絡繰兵の完成度は中々に高い……ああ、そうだ。忘れていた。君たちはもう消えていいぞ、ご苦労様」
 そしてガスターが軽く操作すると、巨大絡繰兵の腕に取り付けられた機銃が火を噴き、衛兵達の身体が纏めて吹き飛ばされる。
「おっと……そろそろこの町の住人を消費しきってしまうな。まあ、いくつか課題点も見えてきた所だ。しばらくはこの町で調整を続けるとしよう……ああ、死体は纏めて燃やしておいてくれ。臭いのは嫌だからな……次は火炎放射器でも取り付けるか……ぶつぶつ……」
 ガスターは絡繰兵達に指示を投げると、次なる研究に思いを馳せるのだった。


「絡繰技師ガスター。そう呼ばれる囚人が、現在ラド・バウ近隣のとある町に……いや。とある町の廃墟に陣取っている。町の住民は、全員殺された。彼らの為にも、そして次の被害を出さない為にも。その囚人に攻撃を仕掛け、撃破するんだ」
『黄泉路の楔』冬越 弾正(p3p007105)が、そう話を切り出した。弾正は先日のとある殺人鬼と囚人との戦いの後、現在消息を掴めていない凶悪な囚人の居所を探っていた。そして入手したのが、この絡繰技師ガスターという囚人が起こした事件についての情報だ。
「ガスターはその名の通り、自らが造り上げた絡繰を兵器として運用し、残虐な『実験』を重ねているらしい。仲間の囚人がいるわけでもないが……既にガスターの周りには多くの絡繰兵達がいる。馬鹿に出来ない戦力だと考えられる」
 生存者の証言によると、絡繰兵達は銃や巨大な刃を取り付けられ、それらを駆使したり、あるいはその重量のある機体で攻撃を仕掛けてくるという。
「そしてそのガスター自身は、他の絡繰兵よりも数倍巨大な絡繰兵に搭乗し、自ら操作して虐殺を行っていたらしい。この巨大な絡繰兵が、最も大きな脅威となる事は間違いないだろう……俺からの情報はこんな所だ。準備が出来たら……町へ向かい、この事件に決着を付けるんだ」

GMコメント

●成功条件
 絡繰技師ガスター、並びに絡繰兵達の撃破(生死は問わない)。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●戦場情報
 先日ガスターの襲撃にあったとある小さな町。住民は全員逃げ延びるか殺され、人気は無い。
 町の中心部の広場にガスターは居り、改良を加えた巨大絡繰兵に搭乗して動作テストを行っている。
 
●絡繰兵×??
 正確な数は不明だが、先日の襲撃の際には確実に10体以上はいた。
 しかしある程度時間が経ち、ガスターが更に量産している可能性が高い。
 銃や刃、その他兵器が取り付けられており、淡々と虐殺をこなす。
 機体はとても頑丈だが、動きは鈍め。特に回避能力に乏しい。

●絡繰技師ガスター
 絡繰を開発する事だけが生きがいと自称する女。その技術は確かだが、倫理観が大きく欠如している。本人曰く、『私はただ絡繰を開発したいだけ』。
 巨大な絡繰兵に搭乗し、イレギュラーズ達と戦闘を行う。
 本人の戦闘能力はとても低いが、巨大絡繰兵が破壊されるまでは攻撃を加える事が出来ない。

●巨大絡繰兵
 ガスターが開発した渾身の発明品。その他の絡繰兵とは違い素早い動きを可能とし、その上で耐久性もその他の絡繰兵とは比べ物にならない程高い。
 機銃やチェーンソー、小型ミサイルといった兵器の存在が確認されている。
 巨大絡繰兵のHPを0にした段階で、ガスターが外に放り出される。

 以上です。よろしくお願いします。

  • <総軍鏖殺>絡繰技師ガスター完了
  • GM名のらむ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
冬越 弾正(p3p007105)
終音
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
航空猟兵

リプレイ


「ふむ……悪くない動きだ。水準以上の機動力と装甲を兼ね備えている。量産性を求めるには少々コストがかかるが……」
 囚人、絡繰技師ガスターの襲撃を受け、静まり返った町。惨劇の痕跡が広がるその町の広場で、ガスターは巨大な絡繰兵に乗り込み、試運転を行っていた。
「そろそろ次の実験を行う頃合いか……町か集落を見繕わなければな……ん?」
 その時、ガスターは絡繰兵達の目が赤く光り始めた事に気づいた。赤い目は、『獲物』を確認した時のサイン。
「ふむ……誰だ?」
 ガスターもまた巨大絡繰兵を操り、絡繰兵達が向いた方向を見た。視界の先には、ガスターに向かってくるイレギュラーズ達の姿が。そしてその中の1人『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が、凄まじい勢いでガスターに突撃する。
「貴方、速いんですってね? けど、此処じゃブランシュ以下ですよ……と、いう訳で。どれだけ硬いかテストしてあげるですよ」
「何を……」
 ガスターが何かを言うよりも早く。ブランシュはガスターにキラッとエフェクトを出しながらウインクしたかと思うと、身体に取り付けられたエンジンスラスターが起動、更には『エルフレームシステム』のリミットが強制解除。そして放たれたあまりにも速すぎる跳び蹴りが、ガスターの眼前、巨大絡繰兵の頭部に直撃した。
「この威力は…………!!」
 その凄まじい威力を誇る一撃は、巨大絡繰兵の巨体を吹き飛ばし、地面へと叩きつけた。轟音が辺りに響き渡った。
「んー……硬いってのは嘘じゃあないみたいですね。切り替えていきますか」
 相応の損傷を与えた筈だが、まだ足りないらしい。ブランシュは呟くと、次なる攻撃に備える。
「誰だか知らないが……面白い連中が来たものだ……」
 ガスターは不敵に笑みを浮かべ巨大絡繰兵を即座に起こすと、イレギュラーズ達に武装を向ける。
「私の実験の為。キミ達の命、消費させて貰おう」
 そして戦いが始まった。


 ガシャン、ガシャン、ガシャン。絡繰兵達は無機質に、淡々と。目の前の命を刈り取る前に動き出す。
 その光景を複雑そうな表情で見据えていたのは、『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)だ。
「珠緒と蛍さんは、自意識を得た絡繰人形と共に暮らしています……この場の子らには哀れみを覚えますが……外道の主から切り離すが情けでしょう」
 珠緒は上空に放った2体のファミリア―と視覚を共有。広場を中心に広がる絡繰兵達の配置を把握し、テレパスとギフト『桜花水月』を併用し、即座に仲間達に伝達する。
「了解……ならボクが向かうべきは……ここだよ!」
 珠緒の情報共有の直後絡繰兵達に突撃したのは『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)。絡繰兵達は火炎や銃弾を蛍に浴びせかけるが、蛍は『桜雲』を展開。純白の手甲型防衛武装から桜色の魔法陣が何重にも展開され、火炎も銃弾も纏めて遮断する。
「そう易々と喰らってあげないわよ……アンタ達にこれ以上何も……人も物も壊させないわ!」
 そして蛍は剣を形どった防衛武装『藤桜』を構え、絡繰兵達に突き付けた。剣に纏った桜色のオーラが一気に広がったかと思うと、オーラは桜吹雪となって舞い散った。そうして絡繰兵達の注意を引き付け、自失へと誘う。
「今だよ、珠緒さん!」
「了解です……行きます」
 蛍が引き付けた絡繰兵達に接近する珠緒。並列思考補助具『御霊守』を起動すると、絡繰兵達を取り囲むように幻花の陣が構築される。高らかに響き渡るホトトギスの声、そして雷鳴。全方位から放たれる電撃によって絡繰兵達の内部回路が損傷する。
「主が違えば、異なる未来もあり得たのでしょう……長く苦しめたくは思えません。一気に終わらせましょう」
 珠緒は幻花の陣を覆い、絡繰兵達を包むように紫色の結界を構築。陣の内に迸り続けていた雷が更に鮮烈に光り輝いて絡繰兵達を貫く。ある者は破壊され、ある者はエラーを発しながら同士討ちを行っていた。
「ガガ……ガ……」
「さあ、アンタ達の敵はこっちだよ! ボクを止められるなら止めてみなさい!」
 いくつかの絡繰兵達の銃口が珠緒に向けられる。が、即座に蛍は再度オーラの桜吹雪を舞い散らせ、自身を標的と定めさせる。放たれた弾丸を蛍は剣で弾き返し、更に絡繰兵が破壊された。
「ふむ……面白い。絡繰兵の思考を誘導し、更にそのルーチンに損傷を与えるとはな。今後の課題が見えたな」
 そんな様子を観察していたガスターがそう呟く。
「何も面白くないわ! 町ごと虐殺しておいて『実験』だなんて言いのける奴の話はね!」
「社会を『自ら』逸脱し、害する者は。放逐されねばなりません」
 蛍と珠緒が言い放つと、ガスターは小さくため息を吐く。
「キミたちには理解できないか。それも致し方ない」
「その必要があるかも疑問な所だ。最早御主に酌量の余地は無し。因果応報。ここで死んでいく身なのだから」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はガスターにそう言い捨てると、残存する絡繰兵達に目をやる。
「ただ虐殺を繰り返すだけの、無機質な軍団か。下劣極まりないな」
「それは傷付くな。キミに美的センスが無いのではないか?」
「さてな。だが御主にそのセンスとやらがあるというのなら、そもそも私には必要のないものという事なのだろう」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はガスターにそう返すと、蛍が引き付けた絡繰兵達の側面へと回り込む。大太刀を構え、そしてその刀身に和魂と荒魂の一部を注ぎ込む。
「ガガ………ガ……」
「無駄だ」
 絡繰兵達の1体が汰磨羈に向けて火炎を放ったが、汰磨羈は軽く大太刀を振り払うと、炎が断ち切られてしまう。
「だが、そうだな。随分と良く出来た玩具だとは言っていこう……実に壊し甲斐がありそうだ!」
 陰と陽。2つの力を宿した刀身を勢いよく絡繰兵達に向けて突きだすと、その刀身から無極の光が放たれる。全てに破災をもたらすその光が絡繰兵達を包み込み、爆炎すら上げさせずに消し飛ばした。
「ガガガガガガ……」
「討ち漏らしがいたか。だが、これ以上の攻撃は許さない」
 半身が吹き飛んだ絡繰兵が銃を汰磨羈に向ける。しかし汰磨羈は即座に水行のマナより生み出した『汞手』を放つ。水銀の様な『汞手』は絡繰兵の全身に纏わりつくと、握りつぶし。純粋な霊力へと変換させた。
「どうやら……あまり絡繰兵達の活躍には期待しない方が良さそうだ。敵性存在ロック。ミサイル発射」
 ガスターが呟くと、無数のミサイルが放たれイレギュラーズ達に迫る。
「当たる気がしないな」
『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)。巨体と甲殻を伴う狼の様な生物『ティンダロス』に騎乗していたマカライトは、ミサイルの雨の隙間を潜り抜けながら機を伺う。
「…………今だ」
 絡繰兵とガスターを巻き込める位置が取れた瞬間、マカライトは呟いた。全身に魔力が込められたティンダロスが鈍い光を放つと、猛突。魔力を推進力と変えるその突進は絡繰兵達を打ち、そして巨大絡繰兵の巨体をも穿つ。
「犬は嫌いだ」
「お前の事を嫌いじゃない奴もそういないだろうからお互い様だな、『天才』。人命問わずの機械開発なんかを行う理由は、完璧への憧れか、唯の探求心か――なんであれ潰させてもらう」
「お前達が私の技術より強ければそうなるだろう。そうでなければ私が勝つだろう。何が起きようと結果は結果でしかない」
「そうか」
 マカライトは自らの腕と妖刀『不知火』から生えた3本の鎖を膨張、複製させる。そして顕れた無数の鎖が、瞬く間に巨大な黒龍の顎の形に編み上げられた。
「やはり理解できないな。理解する気も起きないが」
 黒龍の顎が大きく開くと、巨大絡繰兵の腕に喰らいついた。バチバチと火花を立てながら喰い千切ったパーツを黒龍が呑み込むと、跡形もなく消え去った。
「それを望んでいる訳でもないだろう、天才。他者からの理解も共感も、望んでいるとは俺には到底思えない」
「ああそうだ。理解してほしい訳もない。他者の感情や共感など、心底どうでもいい」
 巨大絡繰兵の両腕が機銃に変形する。そして自らを取り囲むイレギュラーズ達に一斉に弾丸を撃ち放った。『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は放たれた銃弾を装甲で受け止めながら、ガスターを正面から見据えていた。
「我、フリック。我、フリークライ。我ノ主ト双璧成ス科学者、常、口ニシテイル。『生み出したものに責任を持て。我々がなすべきことの全てを機械に任せる日が来るかもしれない。その時、我々に残された最後の役目は創造主として“責任”を取ることである』ト」
 弾丸がフリークライの全身を絶え間なく打つ。しかしその全ては弾かれ、フリークライは僅かにも怯まない。坦々と、しかしその言葉の奥底に感情を滲ませながら、フリークライは続けた。
「倫理観 問ウツモリハナイ。タダ、技師ナラバ。開発シタイダケ、通ラナイ。ガスター 責任放棄シテイル。ダカラ、フリック達、来タ」
「残念ながら。キミの主と私では見えている世界が違うのだろう。責任とは他者の存在を重視し、他者と共存する者が使う言葉だ。私には自分と、自分の開発以外全てがどうでもいい。責任を取る理由など、無い」
「デ、アルナラバ。報イを受ケル時ガ来タ。トイウ事ダ。ガスター、望ム、望マザルニ関ワラズ。世界ニハ多クノ人々ガ居テ。世界ハ誰ノモノデモ無イノダカラ」
 フリークライがそう言い放った時。フリークライの身体に挿し木された純白の花束がほんの僅かに光を放った。そして天から降ってきた光輪が、仲間の傷を癒し力を与える。
「俺はイーゼラー教の信徒として、エンジニアの相棒と共に行動しているが、創り手というのは発明品を我が子の様に大切に思っているとよく聞く……ガスター、無責任の代償は払って貰うぞ!」
『黄泉路の楔』冬越 弾正(p3p007105)は強い口調でガスターに言い放ち、武術兵装『平蜘蛛』を構える。
「悲しい考え方の相違という奴だろう。自らが作ったものを愛するか、ひたすら利用するか。それは作り手の自由だとは思わないか?」
「身勝手な事を……この町を見ろ! どれだけの人が暮らし、生きていたか……ああ、分かっているさ。お前には最初から興味がないのだろう」
「ああそうだ。私はそれで何の問題もない」
 平然とした口調で言うガスター。対する弾正は鋭い視線をガスターに向けながら、平蜘蛛にUSBスロットを差し込んだ。
「許し難い。己が欲望のままに他者を害する悪しき者よ……貴様には蜘蛛糸ほどの慈悲もやるものか!」
 弾正が怒りを滲ませた口調で言い放った次の瞬間、平蜘蛛から独特の機械音が鳴り響く。弾正の怒りに呼応するかの様に。次の瞬間、巨大絡繰兵の左腕が爆発を起こした。
「なんだ……?」
 ガスターが呟いた直後、更に発される機械音。何度も何度もその音が響き渡り、その度に巨大絡繰兵のどこかが爆発を引き起こした。
 不可視の音色は確かな質量を伴って直撃し、爆炎を上げる。そして巨大絡繰兵の動きは、明らかに鈍くなってきていた。
「動けなくなれば、鉛で出来た棺桶も同然だ……人の道を踏み外した貴様が、望むような末路を得られると思うな!!」
「……中々やるな。最早実験などと言っていられなくなってきたか」
 ガスターの表情は変わらない。だが、徐々に追い詰められている事は十分理解していた様だ。
「アンタの技術は確かに凄いと思うわ。正直ね。でもその使い方がこれだというなら、今ここで止めるわ」
『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)は銀の籠手『メルクリウス・ブラスト』、銀の太刀『メルクリウス・ブランド』を構える。あざみ色の髪が一瞬黒く染まったかと思うと、その全身に魔の力が宿る。
「正義感が強い様だな、貴様らは。そんなもの持ってると生き辛いだろうに」
「余計なお世話よ。何と言われようとね……コイツの装甲、中々分厚いらしいけど。1度でぶち抜けないのなら、ぶち抜けるまで何度でも、よ」
 ティスルは跳躍と共に放った銀の拳で巨大絡繰兵の巨体を打ち上げる。そのまま空中にて太刀を用いた鋭い連続突きを繰り出す。迷いなく破壊する事に特化したその突きは、確かにその分厚い装甲を抉った。
「…………ここよッ!!」
 そして上から下へ振り下ろす様に銀の拳を叩きつけると、巨大絡繰兵の巨体が地面に叩きつけられ。落下の勢いで振り下ろした銀の太刀が装甲に深い傷を刻んだ。
「なるほど……長い間牢に入っていたせいで、感覚が鈍っていたらしい。世界にはここまでのバケモノ達が蔓延っていたのだと。その事をすっかり忘れていた。まだまだ改良は必要そうだ」
 想像以上の戦闘能力を発揮するイレギュラーズ達に率直な感想を漏らし、巨大絡繰兵を立ち上がらせたガスター。しかしその時には、既にブランシュが迫っていた。
「ええそうですよ? あなたの技術は凄いんですけどねえ。如何せんまだ足りないですよ。色んな方向に向かいすぎている。幅広い対応が可能な反面、例外には対処出来てないんですよ」
 そう言って、ブランシュは巨大絡繰兵の胸部に連続蹴りを放つ。ガスターの眼前の魔術強化ガラスに直撃し、ヒビを入れた。
「この通り、でしょ? 他者を攻撃する為の絡繰なのに、他人に興味が無さ過ぎて、誰を相手取るかという観点が持てず、しっかりとして方向性を定められなかったのでは? 次作るときの教訓にでもしてください。次なんて無いですが」
「確かにキミの言う通りだ。あらゆる意味で」
 絡繰兵は全て倒され、巨大絡繰兵の機体も既に大きく損傷していた。
 終わりは近いと、ガスターは既に悟っていた。


「だが、そうだな。最期に悪あがき位はしておこう。絡繰兵は全て消えたが、この自慢の逸品は易々と壊されはしない」
 ガスターは再び無数のミサイルを放つ。辺り一面で爆炎を巻き起こしたソレは、しかしイレギュラーズ達を壊滅させるにはやはり至らない。
「ドレダケ、絡繰兵、増産サレヨウトモ。ドレダケ、ガスターノ攻撃、苛烈デアロウトモ。フリック、味方、支え続ケルノミ」
 真正面からミサイルを受け止めたフリークライが意思を持った声で呟く。すると空からあたたかな陽光が降り注ぎ、その言葉通り仲間達の傷を癒した。
「この程度、逆境にすらならないわ。自慢の装甲も、ついに限界を迎えそうね?」
 ティスルは跳躍し、至近距離から放った銀の太刀の超速の斬撃が、一気に装甲を削り取る。
「ボクの知ってる人形師さんは、人と共に在る絡繰を作ってボク達に笑顔をくれる人だった! だからこんな在り方は許せない! アンタは許せない!」
 蛍の感情に呼応するかの様に、激しい桜吹雪が巨大絡繰兵を包み、装甲を弱体化させると、
「蛍さんと珠緒の連携攻撃、止めきれるとは思わないことです!」
 珠緒が構築した陣から放たれた無数の雷がその巨体を貫き、火花を上げさせた。
「その技術力、真人間であったなら重用したのだがな。残念だよ……貴様の技術は、貴様の死を以て全て無に帰す。往生するがいい」
 汰磨羈が超速、超高温を伴った一閃が放たれる。巨大絡繰兵の両脚はその一撃によって溶解し、両断され。そして脚から上が地面へズシン、と崩れ落ちた。最早自由に動くことすらままならない。
「エンジニアが『ネジ』ぶっ飛ばしちゃいけんわなぁ……まぁそんな訳で、終わりだ」
 マカライトの身体から生える6本の鎖が門を形成し、そこから召喚された鎖の巨人『タルタロス』の巨腕が振り下ろされる。巨大絡繰兵よりも大きな腕が二度振り下ろされ、巨大絡繰兵の両腕が叩き潰された。
「『次』があるなら、その時は人の為になるもの作ってくださいな。さよなら」
 そしてブランシュの超速の蹴りが巨大絡繰兵のど真ん中に放たれた。瞬間、魔術強化ガラスは粉々に砕け散り、その全身は凄まじい爆発を引き起こした。爆炎に紛れてガスターが飛び出し、地面へと転がった。
「『次』ね。あればいいがな」
 そう呟いて立ち上がったガスターの前に、弾正が立ちはだかった。
「終わりだ。死んでいった人々の命の代償など、誰にも払えはしないが……せめて次なる事件を起こさせない事が俺達の務めだ」
「そうだな。生きている限り私は何度でも同じことを繰り返す。やれ」
 弾正はカチリと平蜘蛛にUSBを差し込む。くぐもった叫び声の様な機械音が鳴り響いた。
 ガスターがその音を耳にした次の瞬間、その命は絶たれていた。虚空から現れた呪王の腕がガスターの胸に突き刺さり、その心臓を一瞬にして握りつぶしたからだ。
 ガスターは憮然とした表情のまま息絶え、倒れた。残っていたのはガスターの死体と、彼女が遺した虐殺の痕跡と、絡繰の残骸のみであった。

 戦闘終了後、町の修復作業が行われた。瓦礫や、虐殺の痕跡の撤去など。弾正は自らの技術を活かし軽微な損傷を受けていた家屋を住居可能な状態に迅速に修復していた。
 まとめて焼かれていた被害者達の遺体も、改めて弔われた。蛍が町の人々を呼び戻し、手厚く葬儀が行われた。
 ガスター、並びに彼女が作り上げた絡繰兵達は、フリークライの手によって纏めて弔われたという。
 死ねば皆星なのだから、と。フリークライはそう語っていたという。

成否

成功

MVP

ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
航空猟兵

状態異常

なし

あとがき

 おつかれさまでした。これにて依頼完了となります。
 ガスターによる次なる殺戮は防がれ、その後の修復作業や葬儀の協力も相まって、戻ってきた町の人々はあなたたちに心から感謝した事でしょう。
 MVPは、初っ端から最後まで凄まじい威力の蹴りで強固な巨大絡繰兵を一気に追い詰めたあなたに差し上げます。

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