シナリオ詳細
<獣のしるし>影の三傑は全てを喰らう
オープニング
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「ヒ、ヒ、ヒィイイイ……ダメだ、あんな奴らに勝てない、こ、コロ、殺される……!!」
息を切らせ、嗚咽を漏らし、聖騎士は森を駆け抜ける。
その姿は聖騎士にあるまじき見苦しいものだと言うものもいたかもしれない。だが、当の本人にはそんな事は関係なかった。
生きるか死ぬかの瀬戸際に、プライドなんて実に下らない。
「グルルルルルル……!!」
「ヒ、ヒ……!!」
『アイツ』の唸り声が聞こえた。聖騎士は草むらの中に飛び込むと、悲鳴が漏れそうになる口を抑え息を殺す。
ドス、ドス、と重い足音が響いた。聖騎士は身体を強張らせたままチラリと視線を横に向ける。
草の隙間から、ギラギラとした銀色の毛並みが見えた。
「(『アイツ』だ……!! 俺たちの部隊を襲って次々と喰い千切った、あの巨大な狼……!! だけどあと2人はどこに……いやそれだけじゃない、無数の影の兵士が……)」
「グルルル……見えんな。取り逃したか……?」
銀色の巨大な狼はキョロキョロと辺りを見回す。どうやら草むらに身を隠す聖騎士の姿には気づいていない様だった。
「(頼む、このまま行ってくれ、頼む……俺はまだ、死にたく)」
「おい、バカ狼。てめぇ獣の癖に鼻が利かねぇのか? ここだよ」
「えっ」
不意に背後から男の声が聞こえた。それに気づいた次の瞬間、聖騎士の命は絶たれていた。背後から振り下ろされた刀に、首を切り落とされたからだ。
「ああ、そこだったか。悪いな、カシム」
「全くだぜ……ほらよ」
カシムと呼ばれた男――黒い神父服を身に纏い、長い刀を腰に提げた男は、たった今切り落とした聖騎士の頭を刀で突きさし、銀色の大狼の方に放り投げる。大狼は器用に空中で頭をキャッチし、そのままゴクリと吞み込んだ。
「首から下もこっちにくれ」
「自分で取りに来いや! 俺はテメェの飼い主じゃねぇんだぞ、フィン!」
カシムはそう言って草むらの中の死体を抱え、フィンと呼んだ大狼に放り投げる。フィンは聖騎士の身体を、身に纏った頑丈な鎧ごとバリバリと食べ始める。
「まあそう固い事を言うな。同じ主に仕えている仲じゃあないか。もっと仲良くやろう」
「なんだぁ俺と対等だって言うつもりかぁ? 俺様はルル様直属の部下! 直属の! 部下っ!! 寵愛を受けているし信頼もされてる! 一方テメェは? 確かにルル様の指示で動いているが要はペットだろうがペット!! 一緒にすんじゃねぇよ」
「お前もペットみたいなものだろう、ハハハ」
「んだとこら狼コラァ!!」
「ところで、致命者……メイと影の兵達はどこだ? 姿が見えないが、げっぷ……」
聖騎士を跡形もなく食べつくしたフィンは、そこらに生えている草木や地面を食べ始める。
「残党を狩り終えたら死体を抱えて来るだろうよ……いや、もしかしたらその場で取り込んじまうかもしれねぇが……」
「で、ここからどうする? カシム」
「やることは変わんねぇよ。このまま鉄帝国に向けて進軍する。『喰らい』ながらな。敵が現れれば全員殺して、やっぱり喰らう。そんだけだ」
「了解。まあのんびり行くとしよう」
フィンがそう呟いた直後、ガサガサと草木をかき分けながら人影が現れた。
黒いフード付きローブを纏い大鎌を持った、死神の様な姿をした金髪の女が。その背後には、死体を抱えた影の兵士たちがいた。
「お前たちが雑魚一匹を馬鹿面下げて追いかけている内に、アタシは残りの雑魚を殲滅してやった。褒めろ。そして悔い改めろ」
カシムはあからさまに不機嫌そうな表情で女を睨み返す。
「てめぇもペット同然の存在の癖に口だけは達者じゃねぇか、メイ。このハリボテ女が」
「お前こそよく口が回るじゃないか、脳筋侍。そのハリボテと同程度の戦闘能力しか持たないお前はなんなんだ? ん? リーダーを変わってやってもいいんだぞ? 貴様の不良品同然の脳みそに比べれば私が指揮した方がマシだろう」
「ざけんなくたばれバーカ」
「お前がくたばれバーカバーカ」
「ムシャムシャ…………」
『聖女』の部下にして神父服の剣豪カシム。致命者、死神モドキ『メイ』。銀色の大狼、ワールドイーター『フィン』。そして無数の影の兵士――彼らこそが殉教者の森の制圧の為に訪れた聖騎士の部隊を壊滅させた一団であった。
「チッ……フィンがそいつらを喰ったらさっさと行くぞ、まだ仕事は始まったばかりだ」
「言われずとも分かっている」
「お前達もう少し協調性を持てないのか」
彼らは殺戮と暴食を繰り返しながら、殉教者の森を突き進む。
●
「ご機嫌はいかが、イレギュラーズ? 今日はディープレッドな依頼を持ってきたわ……殉教者の森で『黒き人影の軍勢』が進軍を進めているって話は、もう知っているかしら? 今回の依頼もまさにそれ絡みよ。みんなは殉教者の森へ向かって、とある一団に戦闘を仕掛けてもらうわ――影の兵士達に、死神の様な姿をした致命者。更に巨大な狼の姿をした、高い知性と戦闘能力を持つワールドイーターに、神父服を着た剣豪……改めて言うけれど中々にディープレッドな依頼よ」
そんなバラエティ豊かな敵勢力は、現在殉教者の森を『喰らい』ながら進軍しているという。このままでは遠くない時期に国境まで到達し、更なる被害が広がってしまうだろう。
「既に天義の聖騎士隊はかなりの損害を受けているみたい――みたい、というか。そもそも今回の依頼は聖騎士達からのものよ。聖騎士から援軍も出すから、彼らと協力して敵勢力に打撃を与えて欲しいとの事よ。可能なら討伐してしまうのが望ましいけど、ね。それを成すのはかなり難しいと思うわ」
以前彼らと遭遇した聖騎士の一団、その生き残りの証言によると、ワールドイーターの大狼と神父服の剣豪、死神モドキの致命者はそれぞれがとても高い戦闘能力を持っているらしい。また、影の兵士は個々の戦闘能力は大して高くないらしいが、その数はかなりのものだったという。
「説明はこんな所ね。結局連中の目的や事件の全容は見えていないけど……まずは目の前の敵に対処する所からね。それじゃあ気を付けてね。イレギュラーズ」
- <獣のしるし>影の三傑は全てを喰らうLv:35以上完了
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- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月05日 22時35分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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殉教者の森。『影の軍勢』共が侵攻を続けている広大な森の中。
神父服の剣豪カシム。死神モドキメイ。ワールドイーターフィン。そして影の兵士共から成る一団もまた、じわじわと侵攻を進めていた。
「ムシャムシャ……段々木を喰うのも飽きてきたな……ムシャムシャ……」
銀色の大狼、フィンは草木を貪りながらぼやく。
「文句言うなわんころ。これもルル様の為だ」
神父服の剣豪カシムが吐き捨てながら刀を振るう。周囲の木々が一瞬で切り倒され、綺麗に積み重なった。そしてフィンはそれらを纏めて喰らう。
「分かっているさ……文句を言っているつもりはない」
「ならいい。まあ退屈な気持ちは分からなくもねぇけどな。しばらく誰も斬ってねえ……いややっぱ確かに飽きてきたな……」
「真面目にやれバカ共が。この深く暗い森の中。いつ敵の奇襲を受けてもおかしくは無いんだぞ」
大鎌を構えた黒衣の女。致命者、死神モドキメイが吐き捨てる。
「四六時中神経を張ってねぇと索敵も出来ねぇテメェとは違うんだよメイ。バーーカ」
「貴様今すぐに叩き斬って……」
「シッ」
「?」
不意にカシムがメイを手で制する。カシムはピタリと動きを止め、目を閉じる。
「おいどうした、カシム。腹でも壊したか?」
「んな訳あるか……来るぜ、何かが」
カシムが呟くと、フィンとメイは顔を見合わせる。
「貴様、相変わらず獣以上に鋭い感覚を持っているな、脳筋侍。で、数は?」
「20、30、40、50……? おいおいおい。どんだけ居やがるんだ、こっちの雑魚兵士とそう大差ねぇ数がいるじゃねぇか……それにめちゃくちゃあちこちに広がってやがる。メイ、雑魚兵士共を広く展開させて包囲させろ。あの数は面倒だ」
「いいだろう」
メイが応え、カシムの目つきが鋭く光る。
「行くぜ……狩りの時間だ」
●
「この辺りを、凄く血生臭い奴らが通ったと思うんだ。何か知らないかな? 居場所を教えてくれたら、ボクたちが追い払うから」
『猛獣』ソア(p3p007025)は、ギフト『森の王』を用いて、殉教者の森の草木達との意思疎通を試みる。
草木がざわざわと揺れる。とても怯えているとソアは感じ取った。
「ん……分かった。ボク達に任せて。みんな、こっちだよ! ボクについてきて!」
ソアは仲間達に呼びかけ、森が教えてくれた方向へとグングン突き進む。
「一体どうして、こんなことになっているですか……? 彼らの動きで、何かを知る事が出来ればいいのですけど……」
影の一団を捜索しつつ、殉教者の森を突き進んでいたイレギュラーズ。そんな中、『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)はそう呟いた。けれど今は目の前の事件に対処しなければ、と聖騎士達に向き直った。
「回復を皆に行き届かせるために、メイを守ってくださいなの。よろしくです!」
メイは援軍として随行していた聖騎士の内2名に、自らの護衛役をお願いしていた。メイの言葉に、2人の聖騎士は盾を構えて頷いた。
「ワールドイーターに影の兵……おまけに死んだ人が出てきてる場所もあるなんて……わからない事が多いけど……でも、それでも少なくとも彼らの隙にさせて良いことが無い事は分かる!」
『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は決意と共に呟く。
これまでイレギュラーズ達は幾度に渡ってこの森の事件の対処に当たってきたが、未だ事件の全容は見えてこないが、ロクでもない事だろうという事は疑いようもなかった。
「…………! 引っ掛かった。居るぞ、100メートル以内に。近づいてきている」
「だな。だが……妙に少ねぇ……それに、凄いスピードでこっちに来る奴がいるぞ」
エネミーサーチを用いた索敵を行っていた『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)と『スケルトンの』ファニー(p3p010255)がイレギュラーズに敵対心を持つ存在を確認する。だが、引っ掛かったのは3体のみ。
「……なんだァ……?」
その時、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)はピタリと足を止め、目を細める。
ガサリ、と草木が揺れる音がした。この森には草木が多い。少しでも風が吹けばそんな音が聞こえるのは当然の事だ。
「だが、『違う』な……そこだ!!」
不意にブライアンが茂みに飛び込み、鋭い上段蹴りを放つ。潜んでいた影の兵士の脳天を打ち、吹っ飛んでいった。
「全員構えろ! お客さんだぜ!!」
ブライアンが叫んだ直後、ガサガサと無数の影の兵士たちがその姿を現した。そして、1つの人影がこちらに跳んでくるのが見えた。
「やるな。完全に包囲してから仕掛けるつもりだったが……仕方ない」
それは黒衣の致命者、死神モドキメイであった。大鎌に紫色の炎を宿し、振りかぶる。
「全員フィンの餌になって貰おう。奴はウェルダンが好みでな」
大鎌を地面に叩きつける。そして広がった紫色の炎が、イレギュラーズ達に迫る。
「生意気にステルスでも持ってたのか? あるいは唯命令に忠実なだけの心の無い人形だったのか……まあどっちでもいいけどな」
迫る炎を咄嗟に後ろに跳んで避けるファニー。先ほどまで立っていた地面が、灰と化した。
「アンデッドか。死人は地獄にでも帰っていろ」
「俺様はスケルトンだ。そこんとこ間違えるんじゃねぇ。何より死人の面の皮を引っ提げているアンタに言われたくないぜ、死神モドキ」
「フッ……」
クルクルと大鎌を振り、薄く笑みを浮かべる致命者メイ。そして周囲の状況を伺う。
「脳筋侍はかなりの数だと言っていたが……なんだこいつらは」
カシムが察知したという敵の大群。その大半は、慟哭する骸骨に、飢えに喘ぐ死体、そして哂う亡霊たち。『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)のギフト『Trick and Treat』によって召喚された死霊の群れであった。
森に広がるように召喚された彼らに惑わされ、必要以上に広く影の兵士達を移動させてしまった、と致命者メイはすぐに理解する。無駄に広い展開は、その行為自体が影の兵士達の各個撃破に繋がる。
「マリカちゃんの『お友達』だよ♪ もしかして勘違いしちゃった? だったらごめんね☆」
「ふん……このミスはあのバカのミスだ。私にとっては喜ばしい事……と言いたい所だが、そうも言ってられないな」
そう言って大鎌を掲げると、周囲の影の兵士達がイレギュラーズ達に襲い掛かる。
「コロス……コロス……コロス……!!」
「こいつらに構っている暇はないな……作戦通り分かれて、各々の目的を果たすんだ!」
刀を振り上げ突撃してくる影の兵士。その胴体にガンブレードを突き刺した『真実穿つ銀弾』クロバ・フユツキ(p3p000145)は引き金を引きながら刃を引き抜くと、影の兵士の肉体が衝撃によって砕け散った。
「こいつらの対処は俺達の仕事ですね……作戦通り、深手を負ったら無理をせず、回復を優先して立ち回ってください!」
『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)は、聖騎士達を率いて影の兵士たちに突撃する。ルーキスに向けて一斉に振り下ろされる刀。ルーキスはそれらを一瞬にして刀で捌き、刀を振るう。影の兵士達の首が飛び、次々とその身体が消滅していく。
「こちらに向かってくる敵から順番に倒していく!周辺にはまだ多数が潜んでいる可能性がある。奇襲には注意せよ!」
「「「ハッ!!」」」
先陣を切ったルーキスに続き、聖騎士達も次々と影の兵士達に攻撃を仕掛けていく。
「そして俺も……いや俺達の仕事もここだ。正直、アンタに貸しを作るってだけで胃が痛い思いだが……」
「ホントだねぇ、まさかこの私をこき使うだなんて。随分偉くなったもんじゃない~?」
ベルナルドの言葉に、【掣肘パラディン】小鳥遊 リンドウはニヤついた笑みで返す。ベルナルドは苦笑いを浮かべつつも、続ける。
「……異端審問官の配下であるアンタにとって、今回の事件は対処すべき共通の敵だろう? ……聖騎士と共に影の兵士の討伐を頼む。こちらが優勢と感じるまでは俺とルーキスも加勢するが、その後は聖騎士を纏め、奴らの撃退が完了するまで耐えて欲しい。生存重視。1匹を殺すより1人を生かせ。そういう方針で頼む」
「りょーかい。おねーさんは優しいからねぇ、今日の所は大人しく従ってあげるよ」
軽い口調でそう応えると、リンドウは剣を構えて影の兵士達に切り込んだ。その激しい戦いぶりを見て、もう少しだけ胃が痛くなるベルナルドであった。
「お前たちの相手など、アタシとコイツらで十分だ。わざわざ手柄をくれてやる必要もない」
そう言い、再び大鎌を構える致命者メイ。その前に立ち塞がるのはファニーと、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)だ。
「そういう訳にもいかないですね……貴方が致命者、『メイ』ですか。聞くところによれば、かつて大量殺人の罪で処刑された死刑囚だとか」
「そうなのか。知らなかった」
アリシスの言葉に、致命者メイは心底興味なさそうに応える。
「(この様子から見る限り、、聖騎士アシュレイの例に漏れず記憶までは再現されていない様子。致命者というのは、全てそういう存在なのでしょうか)」
その姿は模倣に過ぎなかったとしても。自我をもって自律行動が可能なら、月光人形よりも使い勝手の良い兵であると言えるかもしれないとアリシスは思案する。
「あるいは……影の兵士とやらも、再現性が低いだけでメイの様な致命者と同質の存在なのかもしれないですね……」
「おい。アタシをあの、奇襲もまともに仕掛けられないポンコツどもと一緒にするな……それよりも、だ。アタシは1つ、非常に不愉快な事がある」
「なんでしょう」
「お前達2人だけか? アタシの相手をしようというのは。だとしたらとても……悲しいな。そこまで舐められているとは」
「それはどうでしょう。やってみなければ、何も分かりませんよ」
アリシスはそう言い、短く魔術を詠唱する。するとアリシスの指の銀の指輪が魔力の帯びた光を放ち、メイに降り注いだ。
「ふん……まあ、いいだろう。精々楽しませてくれ。アタシを止められるというなら、止めてみろ」
「それはこっちの台詞だぜ。この俺様を、止められるものなら止めて見せろよ」
そう言い放ったファニーの指先が、妖しく白い光を纏うのだった。
●
影の兵士達とメイとの接敵したイレギュラーズ。そして何処からか、獣の唸り声の様なものが聞こえてきた。影の兵士、メイの対処に当たるイレギュラーズ達は唸り声に向けて駆け出した。
「よう。犬っころのエサ御一行様。本日は良いお日柄で。なんつってなぁ! 死ね!!」
そんな粗暴な声と共に、神父服の剣豪、カシムが姿を現した。そして勢いよく刀を振るうと、一瞬にして無数の『飛ぶ斬撃』がイレギュラーズ達に放たれた。
「クッ……!! 重い……!!」
その1つを刀で弾いたサクラ。その腕は衝撃で痺れ、この一瞬で目の前の男の実力は本物だと確信する。
「だけど、止まる訳にはいかない……天義は勿論、鉄帝の民にも危害は加えさせない! ……天義の聖騎士、サクラ・ロウライト。推して参る!!」
サクラは居合の構えでカシムに迫る。
「正義は我にありってか? 悪いが、正義は俺たちのものだ!!」
サクラが放った居合の一閃が、カシムの刀が受け止める。ギリギリと鍔迫り合いにながらも、両者共に一歩も引かない。
「正義……? この中途半端な侵攻が? 正義を語るなら何か確固とした理念がある筈。一体何が目的なの? 聖女ルルって何者!?」
「テメェ如きがルル様を呼び捨てにしてんじゃねぇぞゴラァ!! 舐めんな!!」
カシムはサクラの腹を蹴上げ、サクラは数歩後ろに下がる。そして間髪入れず放たれたカシムの突き。しかしその時には既にサクラの姿は前になく――。
「そっちこそ、あまり舐めないでよね!」
カシムの側面に一瞬にして回り込んだサクラが、再び居合の斬撃を放ち、今度はカシムの身体を深く切りつけた。
「正直、刀使いとして貴方の技に興味はあるけど……悪いけど優先すべきものがあるんだよね!」
サクラの攻撃は終わらなかった。カシムが体勢を立て直すよりも速く、更に2度の居合の斬撃を放つ。刻まれた傷により、その動きが大きく鈍る。
それを確認した後、サクラは小さく、しかし鋭く息を吐くと、刀――禍斬・華を構え直す。そしてその聖刀の力を開放し、更にその反応速度が向上する。
「これが! 天義の聖騎士として! そして一人の武人として鍛え上げた私の技だよ!」
「チッ……確かにそこらの雑魚騎士とは違う様だな……」
息を大きく吐き、呼吸法によって自らの心身を整えながら、一旦周囲を観察するカシム。
「ひのふのみの……4人に雑魚騎士2人か……ハリボテ女に2人、雑魚兵士に2人と雑魚騎士10数匹……フィンに2人……まぁ2人なら任せてもいいか……フィン!! そっちに行った奴らはテメェでなんとかしやがれ! こいつらを殺したらそっちに行く!!」
「了解!!」
この広い戦場、視界の悪い森の中でカシムは戦況を素早く把握し、とてつもなく大きな声で指示を出す。どうやらカシムの感覚は、それ自体が異能力と呼べる程に優れている様だった。
「つーわけだ、こっちも暇じゃねぇんだ。早急に死んでくれ」
「とことん行儀が悪い連中な様だな。カシム。そしてアンタの願いを聞いてやるつもりも、当然無い」
クロバは紅と黒の太刀『鬼哭・紅葉』を構え、カシムに言い放つ。
「食べるものとマナーと倫理観とその他諸々とこちらの仕事により、ここでお前らは通行止めだ――クロバ・フユツキ、いざ参る!!」
クロバはカシムに突撃する。振り上げた刀身に、鬼気から生み出した焔を纏い、一気に振り下ろす。
「そんな単調な剣捌きで……グオッ!!」
振り下ろされた刃をカシムが受け止めようと刀を構えた直後、焔が爆発。爆発の勢いが乗った斬撃を辛うじてカシムは受けたものの、その勢いに数歩よろめいてしまう。
「どうした剣術自慢、邪剣使いに邪道と謂われる剣戟、お前に見切るのは難しかったか!?」
クロバはその一瞬の隙を見逃さず、更に肉薄する。
「そうでないというのなら、この勝負、正面から受けてみろよ!!」
再度響き渡る爆発音。クロバが下段の構えから振り上げた刃が、カシムの顔を斬り、焼いた。
「グッ……! 生意気な口聞いてんじゃねぇぞ、ボンクラがぁ!!」
それ以上カシムは下がらなかった。目の前のクロバを標的に定め刀を握り締めると、勢いよく振り上げた。
だが退かなかったのはクロバも同じだった。自らの身体を斬られながらも更に一歩前に踏み出すと、横薙ぎの斬撃を放ち、爆発と共にカシムの胸を焼き斬った。
「こんな斬撃、かゆくてやってられねぇぜゴラァ!!」
「やはり中々に獰猛な戦闘意欲……だがそれでいい……!」
クロバは自らに刻まれた傷から、燃えているのかと錯覚するかの程の熱を感じていた。だがそんな傷の熱さとは対照的に、クロバは冷静に戦況を見定めていた。
「メイはメイの戦いを頑張るです。皆と気持ちは一緒です!」
メイは『葬送者の鐘』に魔力を込め、鳴らす。祈りと願いが込められた澄み切った音色が癒しの力へと変わり、クロバの傷を癒した。
「よう、余計な事してくれるじゃねぇか小せぇの……やっぱテメェから殺すか」
カシムは刀を大きく振り上げると地を蹴り、メイに迫る。そして大きく薙ぎ払うと、赤熱する巨大な『飛ぶ斬撃』がメイと聖騎士達に迫る。
「させるか……!」
聖騎士達がメイの前に進み出て、斬撃を受ける。それは彼らの身を斬っただけではなく、その動きを封じている様に見えた。
「聖騎士さん達……!」
「雑魚は寝てな。次は外さねぇぞ、チビ女」
再度カシムは刀を薙ぎ払う。聖騎士は動けず、飛ぶ斬撃が今度こそメイを斬り裂かんとした。
「身体は小さくても……それでもメイは、あなたと戦えるのです……! ねーさま、力を貸してください……」
メイは再び魔力を込め、鐘を鳴らした。瞬間、メイの眼前に巨大な土壁が地面より現れ、寸での所で斬撃を受け止めた。
「聖騎士さん達、すぐに治すのです……!」
そしてメイはすぐさま癒しの音を響かせて、自らがかばってくれた聖騎士達の傷を癒し、動きを封じられた彼らの身体を元に戻した。
「聞いていた通り、本当に強いのです……メイと同じ名前の死神さんよりも、もしかしてもっともっと強い……?」
「は、『メイ』か……当たり前だろうが。アイツはバカだから普段の俺の実力が全力だと思ってやがる……俺は1度もアイツに本気を見せたことなんかねぇんだよ、ハハ……つーわけで死ねオラァ!!」
「メイの戦いは、死なせない為の戦いなのです……!!」
カシムは戦場を駆け回り、斬撃の嵐をイレギュラーズ達に放つ。その一撃一撃が異常な威力を誇っていた。
「もう、初っ端から激しすぎ☆ 怒りのままに刃を振るうだけじゃなくて、どうせやるんだったらもうちょっと楽しめばいいのに♪」
マリカは生ける屍の鎌『The Sweet Death』を構える。するとマリカの周囲に無数の『お友達』が召喚され、怨嗟が込められた呻きを上げる。
「悪ぃが俺はこのやり方しかしらねぇんだ……チッ、さっき感じ取ったのはこいつらかよ……テメェのせいでヘタこいちまった。責任は取って貰うぜ」
「あ、さっきあなたのお仲間のメイちゃんがバーカって言ってたよ! マリカちゃんも大体同じ意見かな、バーカ☆」
「…………」
カシムは青筋を立てながら歯ぎしりをして、マリカを睨みつける。一方のマリカはそんな視線にも素知らぬ顔をして、鎌を振り上げる。
「今日は結構みんな元気みたいだね☆ それじゃ、みんな愉しんでねー♪」
そう言ってマリカが鎌をカシムに突き付けると、骸骨、死体、亡霊。無数のマリカの『お友達』がカシムに飛び掛かった。
「チッ……うざってえ……!!」
カシムは力任せに刀を振るい、『お友達』を斬り捨てていたが、一向に数が減らない。不意に放たれた巨大なスケルトンの拳がカシムの背を打ち、その体勢が大きく崩れた。
「あなたのお友達は『死神モドキ』みたいだけど……今日はあなたに本物の死神をみせてあげるよ☆」
その一瞬の隙に、『お友達』が怒涛の勢いで凶刃を振るった。骸骨が振るった大鎌がカシムの胸を抉り、亡霊の蒼い炎が身を焦がし。呪いが込められた錆びたナイフを死体が突き刺した。
「鬱陶しいんじゃゴラァ!!」
怒りの叫びを上げながらカシムが刀を振り払い、ようやく攻撃の応酬から逃れる。
「そんなに怒っちゃだめだよ☆ ほら、笑顔笑顔♪」
「テメェはマジで殺す……」
「出来もしない癖に☆」
「ブッコロス!!」
楽し気に嗤うマリカに、『飛ぶ斬撃』を放つカシム。
「出番だよ! 痛いのは一瞬だけだから大丈夫☆」
マリカは即座に地面に鎌を突き刺すと、魔眼が暗い光を放つ。そして現れた無数の『お友達』が壁となって立ち塞がり、斬撃を喰いとめる。
「テメェの事は一番嫌いだなぁ俺はぁ!! 死んでくれねぇかなぁ頼むからよォ!!」
「この場で死ぬ人がいるとしたら、それはあなたの方だよ♪」
未だ誰も致命傷を負ってはいなかった。だが、苛烈な戦いになる事は間違いないだろう。
●
「見つけたよ、悪いワンワンだね」
カシムとの邂逅から一瞬の後、ソアとブライアンはフィンの前に姿を現していた。
「まさか。私はとても良いワンワンだ……まあ、なんだ。そう焦るな。草でも食ったらどうだ? そう悪くない味だぞ、草。ムシャムシャ……」
カシムや致命者メイとは異なり、敵を前にしてものんびりとした口調で草を喰らうワールドイーター『フィン』。
「そういう訳にもいかねえんだよ……食事中の所悪ぃが、そっちが動かないなら俺達からいかせて貰うぜ!」
「む」
ブライアンは拳を固く握りしめ、地を蹴る。一瞬にしてフィンの眼前まで迫ると、その顎先に鋭いアッパーカットを叩き込む。
「むぅ……危ないじゃないか。咀嚼の途中に顎を殴るとは、酷い事をする。舌を噛むところだったじゃないか」
「……ッ! 本当に速ぇな……!!」
完全に当てるつもりで放ったその一撃は、寸前の所で跳んだフィンに回避される。
「仕方がない……私が倒れる訳にはいかないからな。お相手させて貰うとしよう
…………グルルルラァアアアアアアアアア!!」
直後、フィンはその顎を大きく開き、咆哮。そして放たれた黒いブレスがソアとブライアンに迫る。
「……ッ! と、危ねェ!」
咄嗟に大木の後ろに跳んだブライアンは、ギリギリの所でブレスを回避。止んだ所ですぐにフィンに向けて飛び出した。
「おいわんちゃん! 生憎草を食う趣味は俺達には無いけどな、ちょっとばかしおしゃべりする位なら付き合ってやってもいいぜ! 殴り合いながらでよければな!」
「別にいいぞ。喰いながらでよければな」
ブライアンはフィンの胴体に素早い拳の連打を放つ。フィンはその連打を素早い身のこなしで避けていたが、執拗な猛攻の末、ついに一発がフィンの胴体を捉え、その巨体を打ち上げた。
「まずはこの一連の軍事攻撃……この大きな流れを纏め上げ、方向性を与えた『誰かさん』はどんな面をしてやがるんだぁあああ!!」
そして打ちあがった巨体に追撃のストレートを放つと、フィンの巨体は木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んだ。
「痛いな……本当に殴りながら質問するとはな……ではこちらも」
そうフィンが呟いた次の瞬間、その巨体は消えていた。一瞬にしてブライアンの目の前に姿を現したフィンは牙を剥きだしにしてその頭に喰らいつこうとする。
「腹下してもしらねぇぜ!!」
ブライアンは背後に跳躍しながら拳を放つ。フィンの勢いが僅かに弱まり狙いを外すが、ブライアンの左腕に齧りつき、大量の血が流れる。
「お前の腕も大概硬いな……噛み切れん……で、顔か。どうと言われても困る。お前も狼の顔の違いなどよく分からないだろう。これで満足か?」
「心底がっかりしたぜ、そして離れろ! 躾がなってねぇぜ!」
グッと地面を踏みしめて、ブライアンは右腕を振りぬいた。鋭緑色の炎を纏った拳がフィンの横っ面を打ち付け、フィンはブライアンから離れ地面へと叩きつけられた。
「プッ……中々やるな。2人とはいえ……油断は出来なさそうだ」
「ねえ、ワンワン。あなたの飼い主の顔についてはもういいけど……そもそもなんでこんなところに来たの? ここじゃなければダメだったの?」
キッと顔つきが険しくなったフィンに、ソアが問いかける。いつ攻撃が放たれるかを警戒しつつも、ではあったが。
「さあ。知りたければルル様に聞け。お前たちがこの場を生きて帰る事が出来たのならば、いずれ目にする事もあるだろう……願わくは全員喰らいたい所だが」
どうやら目の前の狼は嘘をついていなさそうだとソアは判断した。偶々フィンに知らされていなかったのか、『ルル様』とやらはその真意を配下にも全く知らせていなかったのか、そのどちらかは判別できなかったが。
「そっか……答えてくれてありがとう、じゃあ攻撃するね」
「ああ」
そんな軽いやり取りの後、ソアは駆け出した。フィンの動きはやはり素早く、そして頑丈。戦闘能力というよりそれは、生存能力に特化している様にソアには見えた。
「けど……うん、見える、当てられる……」
素早い動作で回避行動を取り続けるフィンに、ソアは跳び込んだ。フィンの動きは確かに素早かったが、ソアもそれに負けない位素早かった。
「えへへ、追いついてやったよ」
「まずいな」
ソアは虎の爪を大きく振りかぶり、フィンは最早その攻撃は避けられないと悟った。
「速いだけじゃボクの爪からは逃げられないよ!」
凄まじい速度で振り下ろされた爪はフィンの喉元を大きく抉り、あまりの力強さにフィンの巨体が地面に叩きつけられた。その隙を逃さずソアはフィンの巨体に飛び掛かり、両腕を振り上げる。
「そう簡単には逃さないよ!!」
そして振り下ろされる爪、爪、爪。連続して叩き込まれる爪の一撃がフィンの全身を大きく削り取った。
「グルルルルァアア!!」
フィンが体勢を整えた時には、ソアの姿は傍に無かった。辺りに広がる草木に紛れ、姿をくらます。
「ん、素早いけれど。やっぱり狼なのは見かけだけなのかな?」
ソアの姿を見失ったフィンの背後から奇襲を仕掛けながら、ソアはそう呟いた。
●
イレギュラーズ達が相手取っていたのは3体の強者だけではない。ルーキスとベルナルド、リンドウは聖騎士達を率い、無数にひしめく影の兵士達を相手取っていた。
「コロス……コロス……コロス……」
「残念だが、俺達が来た以上それをさせる訳にはいかないな」
ルーキスは影の兵士が振り下ろされた刀を刃ごと断ち切り、切り伏せる。
「本当に数が多い……だが誰の差し金であろうと、この場を易々と通らせる訳にはいかない!」
ルーキスは強い口調で言い放ち、周囲の影の兵士の気を引き付ける。そうして誘い込んだ所に鬼の力を宿した斬撃の嵐を放ち、影の兵士達を斬り飛ばしていく。
「それに……あの3体の強敵達との戦闘状況も気になるな……手早くカタをつけて、そちらに向かえるといいんだが……」
「ペースとしては悪くない筈だが……ここらで気合を入れなおさないとな。よし」
ベルナルドは魔法の微光を纏う絵筆、『蒼穹の絵筆』をくるくると手元で弄び、構える。その筆先に宿る魔力の色は、紫。
「お前らもそろそろ疲れてきた頃だろう? 遠慮せずに休むといい。自らの身体に刃を突き立てれば、きっとそれは早く訪れるだろうな」
筆の先が妖しく光を放ち、ベルナルドは縦横無尽に筆を振るう。宙に描かれた紫色の不吉な夜空の絵はベルナルドの周囲から一瞬にして拡がり、影の兵士達を包み込む。
不吉と終わりを示すその紫色の夜空に包まれた兵士達の幾らかが、自らの身体に刃を突き立て、あるいは銃弾を撃ち込み、バタバタと倒れていく。
「そろそろ頃合いだな……聖騎士が影の人間モドキに負けちまったら名が泣くぜ! まだまだやれるだろうよ、なァ!」
「「オォオオオオオオオ!!」」
ベルナルドの呼びかけに聖騎士達が奮起する。事実、影の兵達との戦いは既に優劣が決していた。時間はかかるだろうが、残りは聖騎士達と、リンドウでなんとかなるだろう。
「ルーキス」
「ああ、分かった」
刀で銃弾を弾き返し、切り伏せながらルーキスが応えた。決して楽な戦いではない。援護に向かえるなら一秒でも早く向かうべきだ。
2人は影の兵士達を後に任せ、援軍に向かう。
●
「どうした……まだ俺様達は止まってないぜ? 死神モドキ……!!」
ファニーは傷を負った身体を抑えながらも、挑発的な口ぶりで致命者メイに言い放つ。
致命者メイを相手取っていたファニーとアリシス。その身体はかなりの傷を負っていたが、致命者メイも決して無事という訳ではなかった。
「ク……あのバカとは違い、アタシは軽率に油断などはしないと思っていたが……予想以上にやるな。ここまで持ちこたえるとは」
致命者メイは大鎌に魔力の呪いを込め、振り払う。激しく燃え上がる呪いの炎が、2人に迫る。
「その攻撃はもう見飽きたんだよ!」
不規則な動きで次々と放たれる炎の隙間をファニーは潜り抜け、グローブ越しにその指をピンと突き出した。
「まあ見飽きたのはアンタも同じかもしれないけどな……もう1度だ。躱せるものなら躱してみな。当たれば痛いだけじゃ済まねぇってのは、アンタももう知ってる筈だ」
そしてファニーは流星の軌道の様に、『指先の一番星』をなぞる。『死』そのものをなぞり、敵を苦しめるソレは、死神モドキ程度にには理解できぬ業であるとファニーは自負していた。
「チッ……!! 気味の悪い技を使う……!」
「そいつは個性的な誉め言葉だな……なあ、死神モドキ。本物の死神ってのは、相手の自由を奪うことすら動造作もないんだぜ?」
ファニーが呟いた次の瞬間、致命者メイの全身に針に刺される様な激痛が奔った。
肉体だけではなく、魂を直接削り取るような一撃に、次なる攻撃を仕掛けようとしていた致命者メイの動きが止まる。
「イイトコに入ったみたいだな……ハッ、そのご自慢の大鎌すら満足に振るえないとは、死神が聞いて呆れるな! 大鎌の扱いなら、俺様の恋人のほうがよっぽど上手だし、綺麗だし、魅力的だぜ!」
「貴様の恋人など知るか……!! まとめて土にでも埋まってろ!!」
動ける様になった致命者メイは鎌の先端を自らの身体に突き立てた。そしてそこから魔力を流し込むと、不思議な事にその傷が癒えていく。
「自己回復能力も持っていましたか……私がここに居て良かった、というべきでしょうか」
アリシスは『戦乙女の槍』を構えると、魔動器であるその槍の先端に魔力を集束させていく。
「それ以上好きにはさせませんよ」
そう言ってアリシスが突き出した槍の先端から眩い一筋の光が放たれ、致命者メイの胸を貫く。そしてその致命者メイの回復機能が制限される。
「どちらも面倒くさい事をする……お前らなんぞに時間をかけている暇は無いんだがな……!!」
「生憎ですが、もうしばらく付き合って頂きます。貴女達が何者なのか。喋るとは思っていませんが……探らせていただくとしましょう」
アリシスは再び戦乙女の槍を構える。
「お前の言う通りだ。喋る筈がない。敵に情報を渡して何の得がある。私はそこまでバカではない。他の2人は知らんが」
メイはクルクルと大鎌を振るいながらアリシスに接近する。アリシスは再び槍に魔力を込めていく。しかし先程よりも強く、激しい魔力を。
「どの道お前らはここで死ぬんだ。何を知ろうが知るまいが、大した話ではない」
そう言ってメイが大鎌を振るう。魔力を帯びた斬撃がアリシスを斬り裂いた。
「……ッ!! まだ……倒れませんよ」
深い傷を負いながらも、アリシスは魔力の充填を完了した。その槍に宿ったのは神殺しの槍の魔術。その概念そのものであった。
「あまり余裕ぶって、足元を掬われても知りませんよ」
そしてアリシスが突き出した魔槍は、致命者メイの身体を貫いた。そして一気に引き抜くと、その傷口から黒い影の様なモノが噴き出した。
「グ……!! 今のは中々効いたぞ……!!」
「自らの身体に刃を突き立てて回復する時点でそうだろうとは思っていましたが……やはり『普通』の身体では無い様ですね」
アリシスは大きな風穴が空いた傷口を観察する。そこからは血の一滴も流れておらず、傷口は黒い影が覆うと、修復されてしまった。
「ふぅ……まさか2人程度に足止めをくらうとは……これではあのバカにバカにされても仕方がない……が、いい加減終わらせて貰うぞ。他の連中もこの実力があるのなら……マズいな。アイツの援護に向かう必要がある……!!」
「目の前のスケルトンも倒せない癖に他人の心配とはな。何度も言うが、ここは通さねえ」
「ここを通せば……大きく戦況が変わってしまうでしょうからね。最後までお付き合い願います」
互いに、それなりの傷が蓄積していた。が、メイはかなりの戦闘能力を持っていると言われていた通り、中々倒れる気配を見せない。
現状致命者メイを抑えられてはいるが、このまま戦いが長引けば、対致命者メイの戦況は徐々に悪くなっていくだろう。そしてこの場のイレギュラーズが破られれば、他の戦場の戦況も一気に悪化する。
果たしてそれまでにイレギュラーズ達は決着をつけられるのか。この戦いは、時間との戦いでもあった。
●
「うおおおおお!! うぜえうぜえ、うぜえ!! さっさと死ね!! この、アホ!!」
対カシム戦。カシムの猛攻は凄まじく、致命者メイを超える実力を持っていると豪語していたのは嘘では無かった様だった。このままの状況で戦いが長引けば戦況が悪くなるのは、この場においても言えるかもしれない。
だが、このタイミングで2人の援軍が現れた。ベルナルドと、ルーキスだ。
「良かった、まだ戦線が崩壊してはいない……『剣豪』、カシム。悪いが俺の相手もしてもらう……!!」
合流したルーキスは、即座に刀を構えカシムに迫る。カシムはギリギリと歯ぎしりしながら、憤怒の眼でルーキスを睨む。
「くそっ、やっぱ雑魚兵士は雑魚兵士だなぁ! 畜生! だが…………いや、そうなるよりはいい。オラかかってきやがれェ!! 俺様が相手だゴラァ!!」
カシムは長刀を構えルーキスに応戦する。ルーキスは『瑠璃雛菊』と『白百合』、二振りの刀を構え間合いを詰める。
「俺の剣技が通じるか、試させて貰う!」
「通じる訳ねぇだろがぁあああ!!」
ルーキスは鬼の力を宿した重い斬撃を次々と放つ。カシムもまた鬼の様な形相で刀を振るい、それらの斬撃を次々と弾いていく。
「そんなもんかオラァ!!」
そしてカシムは一気に踏み込むと体勢を低くし、下から上へ弾けるような斬撃を放つ。ルーキスはこれを二振りの刀で受け止めるが、そのまま宙に浮かされてしまう。
「凄まじい怪力だ……だが、俺も捌いたぞ!」
そう。ルーキスの身体は宙に浮きあがったものの、斬撃そのものは刀で弾いていた。そのままルーキスは眼下のカシムに狙いを定め、一気に落下する。
「これなら、どうだ!!」
そして急降下から放たれた二連の突きが、カシムの刀をすり抜け胸に突き刺さる。そして蹴りを入れると同時に引き抜くと、凄まじい血飛沫が舞った。
「ヘヘ……デカい口叩くだけあってやるじゃねぇか……立場が違えば弟子にしてやってもいい所だが……だが俺はこの程度じゃ死なねぇ! 唯の剣豪がルル様の部下を勤められるかってんだ!!」
それは、どうやら強がりではない様だった。ここまでそれなりの時間を複数のイレギュラーズ相手に闘ってきて傷は増えているが、それでも生気が衰える様子が無い。
「ほんと、びっくりする位に頑丈☆ あなたの死体はとても頑丈な『お友達』になっちゃうかも♪ もちろん冗談だよ! 半分はね☆」
マリカが呼び出す『お友達』は際限なく次々と現れ、そしてカシムに襲い掛かっていた。
「でも、しつこいのは嫌いだからいい加減倒れて欲しいかな! これは本気だよ☆」
「こっちの台詞だってんだよ……!! ムカつく金髪女が…!!」
マリカの前方に一列になって表れたスケルトン達が一斉に矢を放ち、カシムの身体に次々と突き刺さる。
「うぜぇ……全員、斬る!!」
カシムは矢を受けながら駆けた。そして戦場を駆け巡りながら無差別に放たれる百の斬撃が、イレギュラーズ達を一瞬にして斬り付けた。
「ク……! すまない、ここまでだ……!!」
メイをかばっていた聖騎士の2人が力尽き、倒れる。死んではいない様だが、早く処置をしなければその結末が訪れるだろう。
「この一瞬で、みんなかなりの傷を負ったのです……! このままだと、よくないのです……!!」
メイは鐘を鳴らす。祝福の音が響き渡り、今受けたばかりのイレギュラーズ達の傷が癒えていく。
「ヘ……テメェを守ってくれる壁も、まあまあ根性あったみてぇだがもう居ねえ……ようやく終わりが見えてきたみてぇだなァ……!! クッ……」
「……? 焦っている、のでしょうか? でも一体何を……」
カシムは挑発的に笑みを浮かべるも、その表情の奥底には余裕が無いと、メイは気づいた。
自分が死ぬという焦りではない様だった。だがこのままではまずい、と思っている様にメイの眼には映った。
「フゥ……遊んでいる暇はねぇ。いい加減終わらせて貰うぜ」
「それはこっちの台詞だよ……そっちに退く気がないのなら、私たちは徹底的にやる……!」
長刀を構えるカシムに、サクラは自ら刀を構えて肉薄する。
「シッ!」
「ハッ……!」
サクラが放った居合の斬撃をカシムが受け止める。刀と刀がぶつかり合い、再び2人は鍔迫り合いの状態となる。
「……」
「……」
言葉は交わさなかった。2人は渾身の力で押し合い――そして不意にサクラがふっと力を抜いた。
それは焦りから来た過失か。それだけでカシムの体勢は大きくゆらめき、そこを逃さず放ったサクラの斬撃がカシムの脇腹を斬り付けた。
「うぜぇなマジで……!!」
「アンタからすればそうだろうな。だが残念。俺もしぶとく行かせて貰う」
ベルナルドは蒼穹の絵筆を構え、カシムに接近。その絵筆の先に魔力を込めると、再び鮮やかな色が浮かび上がる。
「俺は聖女って名をかたって悪事を働く女が大嫌いだからな……そいつに尻尾振ってついてくお前さんも気に喰わねえ!」
「悪事かどうかはテメェが決める事じゃねぇ……!!」
「かもな。だが……その聖女とやらが決める事でもない。そしてこの蛮行は、何を理想に掲げていようと看過出来るものではないんだよ」
ベルナルドは魔力が宿った色を、何重にもして塗りたくる。そして描かれた『極彩色の光』が一点に収束したかと思うと、勢いよく放たれてカシムの身体を貫いた。
「訳わかんねぇ技使いやがって……!! クソ、マジでしぶとい連中だぜ……ハエみたいにしつこくたかってきやがって……!!」
「しぶといのはお互い様だ。殺し合いは好きじゃないが……『弱者』の戦いってやつは俺の十八番なのさ! ……なあ、一応聞いておこうか。アンタみたいな奴に立ってる奴は一体何者なんだ?」
クロバは再び紅と黒の太刀を構え、そしてカシムに問いかける。
「答えるかよバーカ」
「あっそう。まぁ、アンタみたいな野蛮なのの上っていうから余程のアレなんだろうな?」
「ルル様を馬鹿にすんじゃねぇぞゴラァ!! 野蛮なのは俺の個性だ!! でも俺はルル様の忠実な臣下だからそんな挑発には乗らねぇ!! 舐めんな!!」
「そうか、仕方がないな。だったら……これ以上用はないからさっさと消えてくれ」
クロバが放った紅と黒の二連の斬撃が、焔を纏ってカシムを斬る。
「チィッ……ここまで来りゃあ認めざるを得ないが、中々のタマだぜテメェら……流石に俺もぼちぼちきつくなってきた……クソ、間に合うか……?」
カシムはそう吐き捨て、刀を構え直す。
戦いの終わりは、すぐそばまで近づいてきている。
●
「グルルルルルルラァアアア!!」
放たれるフィンのブレス。跳躍、振り下ろされる爪。鋭い牙。フィンもまた猛攻を繰り広げていたが――しかし、ソアとブライアンを追い詰めるには至っていなかった。
しかし一方でフィンは俊敏で、とにかく身体が頑丈だった。故に、戦いはまだ続いていた。
「ゼエ……ゼエ……私は倒れないぞ……私が倒れてしまえば……」
フィンは猛攻の末に少し疲れたか、肩で息をしながらそう独りごちた。
「ブライアンさん……やっぱり、少し思ってた事があるんだけど」
ソアが不意にそう話しかけた。
「なんだ?」
「やっぱりこのワンワン、ここで倒しちゃうべきだと思うんだよね。剣豪も、死神モドキも、全員派手でインパクトがあるけど……奴らの目的はただ森を破壊して進軍する事じゃなくて、森を喰らう事みたいだから。『喰らう』役目のワンワンがいなくなっちゃえば、もう彼らの目的は達成不可能になっちゃうでしょ? そうすれば撤退してくれるんじゃないかなって」
「なるほど、まあ唯の侵攻なら火でも放てばいいしな……で、つまりどうすればいい?」
「つまり…………もっと死ぬ気で殴ろう」
「死ぬ気で殴る、了解! いくぜ!!」
結局の所やる事は変わらない。だが、目の前の相手を倒すことが勝利に直結するかもしれないとなればやる気も上がるというものだ。ブライアンは拳を構え、フィンに突撃する。
「ヘイわんちゃん! いよいよお別れが近くなってきたな! そう思うと少しだけ寂しさを感じちまうぜ! 嘘だけどな!」
「そうか……私も『同じ気持ち』だ」
「そりゃよかった! いくぜ!!」
ブライアンは全身に緑色の炎を纏い、拳を握りしめる。そして一気に地を蹴ると飛び上がり、その顔面に突撃する。
「喰らいなぁああああああ!!」
流星の如き突撃と共に振り下ろされた拳がフィンの額に突き刺さり、フィンの巨体が地面に叩きつけられ、そして地面が割れた。
「グ……クッ、カシムがまだ来ないとは……正直、誤算だった……無理やりにでも奴と合流すべきだったか……私の身体は頑丈だが、それでもカシムには遠く及ばない……」
フィンの強靭な肉体も、度重なる連撃によって大きく傷ついていた。フィンはよろめきながら身を起こす。
「残念だけど、もう決めさせて貰うよ……ボクの本気、見せてあげる」
ソアは鋭い爪を構え、よろめくフィンに接近する。フィンは顎を開けて待ち構え、
「グラァアアアアア!!」
そして咆哮。しかしソアはそのブレスを正面から『引き裂く』と、一気にその喉元に飛びついた。
「これだけは覚えておいて。悪い狼より……虎の方が強いんだよ?」
最後にそう言って。ソアは滅茶苦茶に爪を何度も振るった。フィンの首に凄まじい勢いで裂傷が刻まれ――。
「すまない……ルル様……カシム、メイ……」
自らの身体が崩壊するのを感じながら、フィンはそう呟いて。そして、ワールドイーター『フィン』は消滅した。
「……やったね」
「やっちまったなァ」
ソアとブライアンは達成感と共に、ほとんど同時にそう呟いたという。
●
「………………!! クソ、クソ、間に合わなかったか! クソッ!!」
イレギュラーズ達と激戦を繰り広げていたカシムが、不意に天を仰ぎ叫んだ。既に複数のイレギュラーズが倒れていたが、それでもカシムは己の負けだと悟った。
常に幅広い森の戦況を鋭い感覚で察知していたカシムが、今しがたフィンが消滅した事を理解したのだ。
「俺達の負けか…………この場で被害を増やす意味は無ぇ。総員、撤退だゴラァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
カシムが耳を裂くような叫び声を上げた。それは残っていた影の兵士達、そして致命者メイの元にも届いた。
「なんだと……あのバカがいながら、フィンがやられたのか……!!」
致命者メイを巡る戦いは、ほぼ決着がつきかけていた。ファニーとアリシスは効果的にメイの行動を阻害し、かなりの粘りを見せていたが、それでももう一撃耐えられるかどうか、という所まで追い詰められていた。フィンの戦闘能力と、他2人。カシムとメイとの間には、大きな戦闘能力の隔たりがあった様だ。
「撤退命令……どうやら、私たちが勝った様ですね……」
傷だらけの身体を槍で支えてどうにか立ち続けていたアリシスは、安堵と共に呟いた。
「へ……ヘヘ……どうだよ。アンタは確かに強かったが……勝ったのは、俺様達だ」
「どうやら……その様だな。奴が死んだのなら、これ以上続ける理由は無い……撤退命令は絶対だ……まだ続けるか?」
「気持ちとしては当然アンタをここで仕留めたいが……仕方ねぇ。今日の所は見逃しておいてやるぜ」
「次は殺すぞ」
「こっちの台詞だぜ……」
ファニーがそう言い捨てると、メイは鎌を背に納めた。
「貴女達の目的が何であろうと……その目的が邪悪なものであるのなら、必ずそれは止められるでしょう……必ず、です」
アリシスのその言葉に、致命者メイは薄く笑みを浮かべた。
「…………全ては正義の名の元に、だ。最後に勝つのが正義だというのなら……最後に勝つのは、我々だ」
「本当にそうなら、正義という言葉に幾何の価値もないという証明になってしまいますね……」
「フッ……では、ごきげんよう」
そう言い残し、致命者メイは今度こそ姿を消した。ファニーとアリシスは重なった傷と疲労から、その場にゆっくりと座り込むのだった。
「ギリギリだったな……」
「ギリギリでしたね……」
そして、やはりほぼ同時にそう呟いたという。
「つーわけだ!! 俺は帰る!! 今度会ったら全員殺す! 首洗って死ぬ用意しとけ! 死ね! 寝てる奴らにもそう伝えとけ! じゃあな!!」
撤退の号令を上げた後、カシムは一方的にまくし立てて走り出した。
被害は大きい。これ以上の追撃は危険だと判断したイレギュラーズ達は、それ以上攻撃を仕掛ける事は無かった。騒がしい連中が姿を消して、あっという間に辺りは静寂に包まれた。
殉教者の森の激戦は、こうして幕を閉じるのだった。
●依頼結果
敵勢力、ワールドイーター『フィン』、致命者モドキ『メイ』、神父服の剣豪『カシム』、影の兵士達の内、ワールドイーター『フィン』が消滅。影の兵士達の推定8割近くが消滅。致命者モドキ『メイ』、神父服の剣豪『カシム』においては撤退した。
聖騎士15名の内重傷者は2名。負傷者多数。2名の重傷者においては素早い処置の甲斐もあり、命に別状はないという。
イレギュラーズ達においては多数の負傷者、重傷者と呼べるものもでたが、無事帰還する事に成功した。
『聖女ルル』と呼ばれるものの正体、本事件におけるそもそもの目的に関しては未だ不明だが、引き続き調査が行われるだろう。
イレギュラーズ各員においては十分戦いの傷を癒し、次なる依頼に備えて欲しい。
以上。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした。かなりの強敵揃いでしたが、皆様は敵に甚大な被害を与えた上で撃退する事に成功しました。
聖女ルルと呼ばれる何者かについては未だ不明瞭ですが、少なくとも彼女の計画に被害を与える事は出来たでしょう。
その時が来れば、カシムとメイが再び姿を現す事もあるかもしれません。
MVPは、ワールドイーターにトドメを刺したあなたに差し上げます。
GMコメント
のらむです。神父服の剣豪、大狼のワールドイーター、死神モドキの致命者、影の兵士、から成る軍団に戦いを仕掛けてもらいます。
●成功条件
敵勢力の撃退、あるいは敵勢力の討伐。
敵勢力にどの程度の損害を与えれば撤退を始めるかは不明。
●名声
当シナリオは天義/鉄帝に分割して名声が配布されます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●戦場情報
『殉教者の森』の中。草木が密集した状態で生い茂り、視界も悪い。
森そのものは広大だが、どこか閉塞感を感じる鬱屈とした戦場。
●聖騎士×15
天義からの援軍。全員が回復魔術を行使可能だが、回復量はそこまで多くない。
剣や槍を用いた近接攻撃が得意だが、魔術による遠距離攻撃も可能。ただし後者は攻撃力が低め。
イレギュラーズからの指示があればそれに従う。指示がなければ、各々影の兵士相手に近接戦闘を挑む。
●影の兵士×???
刀、もしくは長銃によって武装している影の兵士。
決まった陣形を取っている訳でもなく、視界の悪い森のあちこちにひしめくように存在しており、それ故に全体数を把握しにくい。だがどうであれかなりの数がいると思われる。
●ワールドイーター『フィン』
巨大な銀色の狼の姿をしたワールドイーター。高い戦闘能力と知能を持つ。
人も森も大地も、全てを喰らう。
戦闘においては『出血』を伴う噛み付きや敵を吹き飛ばす突進、『麻痺』の力が込められた黒い影のブレスを放つといった行動が確認されているが、全容は不明。
非常に俊敏、かつとてつもなく頑丈な肉体をしているらしい。
●神父服の剣豪『カシム』
『聖女ルル』という何者かの部下の男。ワールドイーター『フィン』に付き添い、円滑な進軍を進める為の指揮官かつ用心棒の様な役回りをしている。
敵であれば誰であろうと刀で切り伏せる凶暴な男。剣の実力は超一流らしいが、それ故にその技を目撃した生存者がおらず、戦闘能力は未知数。しかしワールドイーターよりも低い、という事は考え辛い。
●死神モドキ、致命者『メイ』
黒いフード付きローブに巨大な鎌、死神の様な格好をした致命者の女。
かつて天義において大量殺人の罪で処刑された元死刑囚と、顔が一致しているらしい。
大鎌を駆使した強烈な斬撃の他、『不吉系列』や『呪い』のバッドステータスを与えてくる魔術を行使する姿が確認されているが、その他の攻撃能力に関しては不明。
死神の姿に相応しい、とても高い戦闘能力を持っている事が確認されている。
以上です。よろしくお願いします。お気をつけて。
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