PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>二人の『女』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラド・バウ混乱
 惑乱があたりに広がっていく。
 あちこちで怒号と殴り合う音が響き、今この瞬間も誰かたちに倒れ伏した。
 ラド・バウ独立区。その中心地であるラド・バウ闘技場では、今も戦いが繰り広げられている。それは日常のことのように思える言い方だが、しかし今この地で行われていることは、あまりにも日常とはかけ放たれていた。

 鉄帝新皇帝派への六派閥による一斉攻撃。厳密に居れば、その一歩を踏み出すための『拠点強襲』作戦は今この瞬間に開始されていた。例えば、帝政、ザーバ派などは鉄道拠点を狙い、革命派や北辰連合は不凍港を目指す。その中でラド・バウ派は、前者。鉄道拠点を狙う側に位置していた。
 帝都中央駅ブランデン=グラード。それがラド・バウ派の目標である。ラド・バウは選りすぐりの戦力――ローレット・イレギュラーズ達を含めた――をブランデン=グラードへと派兵。今まさに決戦が行われているはずである。
 では、ラド・バウ闘技場にて、何ゆえこれほどの乱戦が行われているのか――それは、イレギュラーズ達や、各派主要人物たちに『懸賞金』がかけられたことに端を発する。各派が、皇帝恩赦によって解き放たれた囚人に懸賞金をかけ、討伐を促したように、新皇帝派もまた、ローレット・イレギュラーズ達に懸賞金をかけたのだ。
 その結果、悪漢たちによる『イレギュラーズ・ハンティング』の幕が上がった。そして多くの兵力がブランデン=グラードに赴いているこのタイミングは、ハンターにとっては垂涎のタイミングであった。多くの囚人たちの狙いは、ラド・バウの姫、パルス・パッションの首にかけられた懸賞金に向いていた。ラド・バウが手薄な今なら、パルスをほしいままにすることが可能であると踏んだのであろう。
 かくして、ここにラド・バウ闘士たちと、防衛に残った僅かなイレギュラーズ達による防衛線が繰り広げれていた。普段は賑やかな独立区の様相は、それとは別種の『賑やかさ』によって塗りつぶされている。闘士の皆に笑いかけてくれた笑顔は、今日は皆建物の扉を固く締めて隠れてしまっていた。その街路を、下卑た男達が闊歩するたびに、住民たちの不安と恐怖は高まっていく。
 闘士たちとイレギュラーズ達は、その対応に追われていた。倒しても倒してもやってくる雑魚共をちらし、皆の安全を確保する。
「柄にもねぇなぁ」
 キドー・ルンペルシュティルツ (p3p000244)が、フン、と鼻をならした。そのダガーはすでに血で塗れている。別に止めを刺してやるほど暇ではないが、手加減してやるいわれもない。飛び込んできた悪漢の腕をダガーで裂いてやると、ぎゃあ、と悲鳴を上げて逃げ出していく。
「もうちっと根性いれろよ。こっちは柄にもねぇ防衛戦なんて引き受けてやってるんだ」
 挑発するようにそう言ってやる。本音と言えば、さっさと帰ってくれれば酒でもかっ喰らって休める所でありがたいのだが、嫌気をわざわざ見せてやる必要もあるまい。
「しかしキリがありませんね」
 アルプス・ローダー (p3p000034)がそう声をあげた。戦場を走り回るアルプス・ローダーに、しかし疲れの色は視られない。走るとは、アルプス・ローダーの平常である。
「だが、団子だ。つっこめば4,5人は轢き殺せるだろう?」
「ボディがへっこむので嫌ですね。人にぶつかると、結構衝撃が強い――」
 その会話に割り込むように、飛び掛かってきた男を、アルプス・ローダーのホログラフィー・アバターの少女が力強く蹴撃した。迎撃に地にたたきつけられた男が、カエルみたいな声をあげて気絶する。
「まったく。女の子なんですよ?」
「おっかねぇ女もいたもんだ」
 余裕を見せる二人だが、周りの仲間達も充分以上の働きを見せていた。敵の数は多いが、しかしその大半は一般人に毛の生えたようなもの。そうなれば、制圧は容易いだろう――。
 そう確信した刹那、その観測を切り裂いたのは、アルプスの速さにも迫るほどの、強烈な『連続狙撃』だった。反応できたのはアルプス・ローダーだけだった。ホログラフィー・アバターの少女にキドーを抱えさせ、フルスロットルでエンジンを吹かす。タイヤをかする様に、銃弾が連続で着弾した。コンマ一秒でも呆けていたら、タンクに穴が開いていただろう。
「おい!」
「敵です。スナイパー」
 分かってる! と、キドーは叫ぶと、ホログラフィー・アバターの少女の小脇から飛び降りた。本能的にダガーを掲げると、その手に鋭い衝撃が走る。気配を感じさせぬそれは、暗殺者の一撃――!
「おいおいおいおい、嘘だろ! ヤ・クスィ――!」
 うろたえるように、キドーが言う。キドーに迫る暗殺者は、ゴブリンの姿をしていた。
「いきてたのね、クソザコ! シャンカ!」
 クスィが叫ぶ。シャンカ=狙撃手の名を呼ぶと、間髪入れず、正確無比な射撃がキドーを襲った。キドーは身体を横転させてそれを回避。ついでに近くにいた悪漢を蹴り飛ばして体勢を崩させた。悪漢の身体に銃弾が突き刺さり、悪漢が悲鳴を上げた。
「まあぁ酷い。人を盾にするなんて」
 からかうようにクスィが言うのへ、キドーが奥歯を噛みながら言った。
「アンタに言われたかねぇや……! アルプス!」
「はいはい」
 バイクが疾走する。ホログラフィー・アバターの少女がキドーをもう一度持ち上げて、距離をとった。
「群衆の中に、狙撃手が居ます。視えました。大柄な女ので分かると思います。ベンタブラックみたいな目をしていました。色じゃなくて、深さの印象が」
「悪党って事か」
 キドーが舌打ちをする。その一方で、狙撃手と暗殺者=シャンカとヤ・クスィが言葉を交わしていた。
「良いバイクだね。8回撃って8回逃げられた」
「あら、ノーコンじゃない」
 気軽にからかうように言うクスィに、シャンカは頷いた。
「そうだね。一撃必殺だけが狩りじゃないから」
 シャンカも笑ってそう答える。金色の瞳は、なるほど、確かにベンタブラックのように、底知れぬ洞が開いてるように見えた。
「あのクソオヤジも来てるんでしょ?」
 クスィの言葉に、シャンカは無言で以って返答とした。
「このクソみたいな包囲網を突破して、パルス・パッションと親父を両方狩りとりましょ。
 トロフィーはアンタに全部あげるわ。懸賞金は山分け」
「わかった」
 シャンカが頷く。クスィが再度、ダガーを構えた。独特の形状の――ハートの形をしたナイフに三本の爪が出ている――それは、獲物の首を狩りとる暗殺者の刃であった。
「その前に……ついでにイレギュラーズ達ももらっておきましょ」
「くるぞ」
 キドーが言った。アルプス・ローダーがエンジンをうならせる。付近で戦っていたイレギュラーズ達も、状況を察して駆け寄ってきた。
「強敵だな」
 イレギュラーズがそういうのへ、アルプス・ローダーが頷いた。
「厄介な奴です。お力添えを」
「もちろんだ」
 その言葉に、仲間達は頷く。
 混乱の続くラド・バウ闘技場。戦いの幕が上がろうとしていた。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 一方そのころ、2。

●成功条件
 ヤ・クスィ、およびシャンカの撃退(生死は問わない)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ラド・バウ独立区に囚人たちが攻めてきました。彼らの目的は、イレギュラーズ達にかけられた懸賞金のようです。
 イレギュラーズ・ハントに巻き込まれたラド・バウを守る皆さんの前に、より強力な囚人、二人の女が姿を現します。
 狩人シャンカ。【皮剥ぎ】ヤ・クスィ。この二体の強力な囚人を相手にしなければなりません。
 万が一突破を許せば、内部に侵入され多大な被害が発生する可能性があります。それは避けねばなりません。
 作戦決行タイミングは昼。戦場はラド・バウ闘技場前広場になります。
 特にペナルティなどは発生しませんので、戦闘に注力してください。

●エネミーデータ
 囚人たち × ???
  無数にいる雑魚囚人たちです。あちこちで闘士やイレギュラーズ達と戦っています。
  毎ターン、ランダム体が戦場に乱入してきます。戦闘能力は一般人に毛が生えた程度のものが多く、シンプルに「居ると鬱陶しい邪魔者」としての乱入です。
  簡単に蹴散らせますが、その分本命の二人に対して攻撃が通りにくくなる可能性や、彼らの存在を二人に利用される可能性もあります。対処はしっかりと。

 【皮剥ぎ】ヤ・クスィ × 1
  囚人の一人です。特徴的なダガーを持ったゴブリンの旅人(ウォーカー)で、強力な暗殺者です。
  スピードファイターであることはもちろんながら、鋭いダガーによる出血や毒、簡易呪術による行動阻害系BSなどを付与してくるでしょう。
  弱点があるならば、耐久面に難を抱えていること。命中させるのは難しいですが、複数人で一気に攻めて、着実にダメージを与えてやるのがいいかもしれません。

 狩人シャンカ × 1
  囚人の一人です。人当たりのよさそうな笑顔に、しかし目は笑っておらず、深い洞のような闇を抱えているように見えます。
  大柄な女性で体力も充分にあります。得手はスナイパーライフルによる射撃です。その鋭い射撃は、一発が必殺の一撃。致命打になりかねません。。
  重装狙撃手と言ったイメージのパラメータ配分をしています。大火力で一気に体力を減らすか、或いはBSを重ねることが有効かもしれません。
  ヤ・クスィとシャンカは、ある程度不利を悟れば撤退します。倒しきる必要は、必ずしもないので、一気に攻め落としましょう。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>二人の『女』完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長の視察
セララ(p3p000273)
魔法騎士
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女
セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)
秩序の警守

リプレイ

●ヤ・クスィ
 闘技場のあちこちには、怒号が飛び交っている。無数の囚人と、闘士たちの戦いが繰り広げる戦場の真っただ中に、その二人の女は現れた。
「一匹。二匹」
 静かに数える女。その瞳は金のそれながら、ベンタブラックのように『暗く深い』。
「八かぁ」
 ふぅん、と言う。ベンタブラックの女=シャンカ。一方で女ゴブリン=ヤ・クスィは、イレギュラーズ達を挑発するために微笑んでみせた。
「あら、いいわね。全部首をさらって……いくらになるかしら。一匹クソやすそうなザコが混ざってるけど」
 そう言って、ヤ・クスィは『社長』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)へと視線を向けた。それだけで、身が縮こまるような気持になった。そしてこうささやく。「お前はちんけな小悪党だったじゃないか」。
「冗談じゃねェ!」
 その声を振り払うように、キドーは叫んだ。
「俺ぁキドー・ルンペルシュティルツ社長だ! スリや、たまにアンタがくれる仕事で糊口をしのぐザコじゃねェんだよ!
 分かるか!? ヤ・クスィ姐さんよ!」
「社長? ルンペル……なんだって?」
 ヤ・クスィが嘲笑するように言った。
「百年早いわよ、クソザコ。アンタはアタシの下で縮こまってるのがちょうどいいのさ!」
「わぁお、過激ね。シャッチョサン、あの女誰?
 ゴブリン基準でかなりの美人さんなんじゃない?
 性格キツそうだから俺はパスだけど。
 まさか元カノ?」
 フォローするように、そういう『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)に、キドーは、ふ、と軽く息を吐いてからキドーはいつもの調子を取り戻して言ってみせた。
「おう、そうだろ? 美人だろ〜? 千尋くん。
 俺の血の繋がりの無い姉で元上司で元カノよ。
 ……大抵、アレが彼氏ブッ殺して次の男見つけるまでの繋ぎだったけど」
「まさか、痴情のもつれか?」
 ふむん、と『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が唸った。
「そういうのは、弁護士を通した方がいいぞ。後腐れなくて済む」
「あら、お嬢ちゃん。話し合いより簡単な解決方法があるのよ。ぶっ殺せばそれで済むの」
 ヤ・クスィはそう言って、ふふ、と笑ってみせた。「それから」と続けると、
「もつれてないわよ、アタシはね。クソザコは知らないけど」
 チッ、とキドーが舌打ちをする。ブレンダが小さくつぶやいた。
「強いな、あれは。見ればわかる。隙が無い」
「呪術、暗殺、搦め手のオンパレードだ。クソ厄介な女だよ」
 キドーが答え、
「めんどくさい女に絡まれてんねぇ、シャッチョサン」
 千尋が苦笑する。
「問題ないわ! 面倒な囚人とか、そういうのの対処! ちゃんと勉強してきたから!」
 『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)が声をあげた。
「犯罪者、【皮剥ぎ】のヤ・クスィ! もう一度檻の中に戻ってもらうわ!
 そして確り更生なさい!」
 きっ、と視線を向けるセチアに、ヤ・クスィは嫌そうな顔を向けた。
「気に入らないわね、ああいう馬鹿は。
 更生ってのも嫌いだし、看守ってのも気に入らない。
 何あれ、クソザコ。今の女?」
「ふっ。そう言った下世話なジョークなどには動じないわ!」
 びし、とセチアが指をさす。ヤ・クスィは肩をすくめた。
「そうみたいね。真面目過ぎて面白くないわよ!」
 ヤ・クスィがかける――手にしたナイフ煌かせ。その姿が掻き消える。超反応による行動。
「後ろ……!・」
 とっさに、気配を感じたセチアが振り返る。顔面いっぱいに広がる、見知らぬ男の身体。囚人の男。
「セチア! そっちは囮だ!」
 キドーが叫んだ。セチアは、咄嗟に囚人の男を振り払う。首を搔っ切られてこと切れている。その影から、ヤ・クスィの身体が滑り込むように、ダガーを突き出した。セチアの喉目がけて突き進む。やられる。覚悟した刹那、セチアの身体がふわりと浮いた。
「こっちだ!」
 ブレンダだ! セチアを突き飛ばし、剣閃の間合いに突入する。そのまま、燃え盛る炎の刀身が、ダガーの刃を打ち払う。
「ここは私とやり合うのはどうだ?」
「いい女ね。気に入ったわ。皮を剥いで絨毯にしてあげる」
 一方、突き飛ばされたセチアはとっさに体勢を立て直して、
「ごめんなさい、ありがとう!」
 声を上げつつ、鞭を振るう。意志の力を乗せた一撃が、ヤ・クスィに迫る――が、ヤ・クスィはすんでのところでそれをよけて見せた。
「当たらないわよ!」
「ええ、でも、次につなげられる!」
 セチアの言う通り――突っ込んできたのは、千尋だ! バイクに乗っての、文字通りの突進!
「やぁやぁ我こそは『悠久ーUQー』の伊達千尋!
 盟友キドーのため別派閥からバイクで参上仕った!
 ってな! さぁて、元カノさん! 今日はいろいろ忙しいんでおかえり願おうかね!」
 バイクから飛び降りる! 飛び掛かる、上空からの一撃――地獄へ落ちろ! セチアの一撃で態勢を崩していたヤ・クスィは、小刀でそれを受け止めた。その拳が、小刀ごときを粉砕できないわけがない!
「ちっ、押しの強すぎる男も考えものよ!」
 ヤ・クスィがそう言って、小刀を捨てて身を翻す。しかし続くキドーの斬撃が、ヤ・クスィを襲う!
「オイオイオイオイ、よそ見かぁ~!?」
 あえて小馬鹿にするように、キドーがククリで襲い掛かる。ヤ・クスィは今度こそ、本命のハートのダガーでその刃を受けてめて見せた。
「キャンキャン吠えないでよ、クソザコ」
「ハッ! 二度とクソザコって言えないようにしてやるぜぇ!」
 キドーのククリが、ヤ・クスィのハートのダガーが、強烈な駆け引きのようにギリギリと音を鳴らしていた。

●シャンカ
「やれやれ、あっちは盛り上がってるみたいだね」
 となると、とシャンカは呟いた。イレギュラーズの総数は八。四人がヤ・クスィへと向かったのだとしたら、残る四人が、シャンカを狙う作戦になる。
「4人か。まぁ、ちょうどいい」
 シャンカにとって、それは獲物の数が多いだけであった。狩り。それは大体の場合は、自信の優位を保っての作業になるが、しかしシャンカが父から教わったそれは違った。どちらかと言えばそれは、効率的な人の殺し方であり、あらゆる状況下における『獲物の獲得方法』である。
「ああ、きみ。そう、そこの」
「ああ?」
 近くにいた囚人に、シャンカは声をかけた。にこやかに笑う。笑顔。目は笑っていない。ベンタブラックの洞。
「ちょっと死んでよ。死体を使いたいんだ」
「あ?」
 たん、と乾いた音が響いた。手にしていた短銃で、男の額を撃ち抜いていた。男は悲鳴を上げる間もなく絶命。そのままシャンカはその男の首根っこを掴んだ。それから、軽く放り投げる――上空から迫る、『魔法騎士』セララ(p3p000273)の強烈な斬撃を、その死体で受け止めるように軽減した。
「ひっどい!」
 セララが声をあげる。
「なんてことするかな!」
「こっちで殺しておいてあげたんだから、感謝してほしいな。無意味な殺しとか得意じゃないタイプでしょ?」
 笑う。その瞳は洞。シャンカはすぐさま長銃を構えると、セララに向かってぶっ放した。セララは大剣の腹を一杯に使って、その銃撃を受け止める。がうん、と狼が吠えるような銃声。セララが吹っ飛ばされる。
 空中で身を翻しつつ、セララが視線を送る。
「こっちっ!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)へと。焔が声をあげて、その手に掲げる、長大な炎! 加具土命、創造のための炎を、今は破壊に使う! がおおうん、と燃え盛る炎のそれは、加具土命の咆哮か。強烈な炎が、シャンカを狙う。シャンカはとっさに、近くにいた囚人を蹴り上げて、盾にした。が、それだけでは不十分だろう。爆風があたりを吹き飛ばす。シャンカは舌打ち一つ、あえて脱力してその流れに身を任せた。地面にたたきつけられる刹那に受け身をとり、重要器官を守りつつ、勢いを殺す。
「痛いなぁ。何をそんなに怒ってるの?」
 シャンカがそういうのへ、焔は明確な、怒りの表情を見せた。
「パルスちゃんを狙っているっていうこと! 絶対に許せない!」
「ああ」
 シャンカが言う。
「あなたが、そうか。パルスの友達、みたいな人。うん。資料に乗っていたよ」
 そう言って、笑う。丁度いいものを見つけた、というように。
「知ってる? 意外と身近な人が死んだダメージって大きいんだ。あたしにはあんまりわからないけれど。
 あなたの死体を持って行ったら、パルス・パッションにも隙ができるだろうね。ありがたく使わせてもらうよ」
 だん、と長銃が銃弾を吐き出す。焔を狙って放たれたそれを、焔は加具土命の炎によって消し去ってみせた。
「なおのこと、負けられなくなったよ! ……行って! アルプスちゃん!」
 『特異運命座標』アルプス・ローダー(p3p000034)のアバターの少女が、ぱくり、とセララから受け取ったドーナッツを齧ってみせた。
「了解」
 アルプス・ローダーが疾駆する。ぐおうん、とこちらも狼の方向のようなエンジン音。アバターの少女が、むっ、と気合を入れながらアクセルを吹かす。突撃――シンプルな突撃。すれ違っただけで、空気の圧が、シャンカの身体を叩く。
「くっ……!」
 強く、吹っ飛ばされる。遠ざかる――獲物、ラド・バウ闘技場から。痛みを感じながら、しかし狩人は立ち上がる。
「久しぶりだな。こういう獲物は」
 静かに言った。殺し、殺される、そういう狩り。
「申し訳ないですが、僕たちは狩りの獲物ではありませんよ」
 アルプス・ローダーがそう声をあげる。
「あなたがベンタブラックの瞳を持つならば、その洞、闇、照らし蹴散らす光になってみせます」
「ふぅん」
 シャンカが笑った。
「面白いね……面白い。狩りたくなった。狩ってみたくなった。そういう獲物は久しぶり」
「しっかしまぁ、巫山戯た手配書を真に受けてる奴は何人いるんだか……」
 『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)が、肩をすくめる。
「いやその、まぁ、ね? お前らの遊び心かもしれねぇけど。
 こっちにとっちゃめーわくなの!!!
 大体、新皇帝派が本当に金をくれるのかよ?」
 そう言ってみせるカイトに、シャンカは笑顔を見せた。
「そうだね。だとしても、今はもうそれもいいかな」
「あー、ヤバいよね。多分、狩人のやる気に火をつけちゃった奴だ」
 むむむ、とセララが言う。
「むかし、元の世界で戦った怪人にああいうタイプがいたよ……」
「勘弁してほしいな……」
 カイトが相槌を打った。いずれにせよ、敵のやる気に火をつけたのは確かだ。だが、元より撃退する必要があることに違いはない。
「やるよ、皆! パルスちゃんを守らなきゃ!」
 焔の言葉に、皆は頷く。
「それじゃあ、彼女にはおかえり願いましょうね」
 アルプス・ローダーがそういう。果たして、苛烈な戦いは続いていた。

●二人の『女』
 肉薄する――シャンカへと。敵の得手は長距離狙撃。ならば、その距離を詰めない理由はない。
「なるべく距離を詰めた方がいいですね。幸い、ヤ・クスィとも距離は離れています」
 アルプス・ローダーがそういう。厳密に言えば、ヤ・クスィと距離をとる様に、アルプス・ローダーがぶっ飛ばしたわけだがさておき。いずれにしても、両者の距離が離れていたことは確かだ。疑似的な1VS4×2になったわけだが、それにしても、周囲から乱入してくる囚人が、イレギュラーズ達の足を引っ張っていた。
「邪魔しないで!」
 焔が叫び、再び加具土命の炎を解き放つ! 強烈な爆炎が、乱入してきたばかりの囚人たちを容赦なく吹っ飛ばした。
「ふぅん……?」
 シャンカが声をあげる。なるほど、近づいて来れば囚人を利用して死の業とも思っていたが、そこは流石にイレギュラーズ、そうはさせてはくれないらしい……。
「おっと、アンタの相手はこっちだ」
 カイトが言う。
「悪いね。猟師は場を整える所から仕事が始まるらしいが……。
 俺も『場づくり(ゲイム・メイク)』なら得意でね」
「そう? じゃあ、どっちがうまいか試してみようか?」
 シャンカが獲物解体用のナイフを取り出し、カイトへと迫った。カイトはボディスーツごしに、その腕でナイフを受け止めた。痛みは奔る。だが、ナイフは身体を切断はしない。
「どうなってんの、その服?」
「さぁて?」
 カイトがそのまま指を鳴らす――同時に降り注ぐ白雨が、シャンカの身体を濡らした。重い。まるで引きずられるように――。
「パルスちゃんは友達なんだ。だからキミ達に狩らせるわけには行かない!」
 セララが地を這うように疾走し、大剣をすくい上げるように攻撃を仕掛ける。解体用のナイフを弾き飛ばし、それが宙に舞った。
「それにボクはラド・バウの闘士なんだ。ここラド・バウで闘士じゃ無い人になんて負けられないよね!」
 その勢いを利用して、セララは上昇。そのまま、今度は落下の速度を乗せて、大剣を振り下ろす。
「セララ・スカイソード!」
 上昇・下降の2連撃。シャンカは半壊したナイフを手放し、後方へと飛びずさった。
「銃を使わせてもらえないのは厄介だな……」
 舌打ちしつつ、シャンカがぼやいた。
「ええ、そのあたりは、徹底的に止めさせてもらってます」
 アルプス・ローダーが再びの体当たりを敢行する。ウィリィ状態に移行し、シャンカを打ち上げるような一撃を加えた。
「そうだね。敵の得手を封じるのは基本だ。
 良いバイクだね。やっぱり、ああ、狩ってみたい。
 こんな風に思ったのは、初めてウサギを狩った時以来だ」
「あいにく、僕たちはウサギではありません。
 あなたに手を伸ばすことのできる。僕が、ではありません。”僕たち”が貴女に王手をかける!」
 アルプス・ローダーの言葉は果たしてその通りか。王手を目指し、着実に一歩一歩を踏み出していった。
 一方、ヤ・クスィと4名のメンバーもまた、激烈な戦いを繰り広げていた。
「囚人をやってくれるのは助かるけど!」
 千尋が声をあげる。
「ホムラチャンの炎、巻き込まれそうで怖いわぁ!」
 おどけるように、そう言ってみせた。バイクのエンジンをかき鳴らし、突撃! 『Go To HeLL!』の一撃を叩き込む! 言葉通り、地獄へと叩き落とす強烈な一撃! しかしヤ・クスィはそれをギリギリでよけて見せた。
「すばしっこいじゃないか!」
「まだまだケーケンが足りないわね、ボウヤ?」
 小馬鹿にするようにヤ・クスィが跳躍。小型のナイフを投擲する。ブレンダが、その刃を振り払った。刹那、剣は中空で叩き折れて、内部から紫色の粉塵が舞う。
「吸うな! 毒だ!」
 キドーがそう叫ぶのへ、ブレンダは叫んだ。
「問題ない!」
 毒霧の中を疾駆する。ヤ・クスィの姿を捉え、その炎と風、二振りの刃を振るった。ヤ・クスィがハートのダガーと、大型のナイフを利用して、その二刃を受け止める。
「しつこい女は嫌われるらしいぞ?
 ここで引くというのなら追いはしない。さぁどうする?」
「ふん……」
 ヤ・クスィの視線があたりを巡った。囚人たちの勢いも落ちている様だ。遠からず、この辺りはラド・バウ陣営によって制圧されるだろう。
「諦めて投降するなら尊重するわ。
 看守として……あなた達は守る対象でもあるもの!」
 セチアが声をあげるのへ、ヤ・クスィはくすりと笑った。
「面白いわね、看守さん。アンタみたいなのは初めて見たわよ。
 ねぇ、もう刑務所なんてものは存在しないわ。
 それなのに、アンタはこの国で、看守を名乗るわけ?」
「私にとって看守とは唯の職業ではなく在り方!
 例え、鉄帝から刑務所が消えたとしても!
 看守が不必要とされても、否、鉄帝が必要とされぬ地獄になったというのなら尚更名乗りましょう!
 地獄でも人として当たり前の事を、腐らずにし続け囚人達を導く者こそ看守なのだから。
 故に今こそ看守が必要であり、故に貴女達に絶対負ける訳にはいかない!
 私はセチア・リリー・スノードロップ! 看守よ!」
「だ、そうだぜ、ヤ・クスィよ」
 キドーが笑う。
「なあ姐さん。
 俺は過去を捨てるんじゃなく、全部呑み込んで前進するって決めたんだよ。
 アンタはクソザコだった俺を知ってる。俺の過去そのものだ。
 だから俺はアンタに勝つし、手にも入れると決めた!
 うちの正社員にも、俺の女にもしてやるぜ! 死なないでくれよ!
 ギャハ!」
 そう言って、ククリを構えた。ゆっくりと、その刃をたてる。駆ける。一触即発。
「シャンカ! 退くわよ!」
 ヤ・クスィが叫んだ。シャンカが頷く。
「そうだね。今なら楽に逃がしてくれそうだ」
 それは、イレギュラーズ達の意図が、『撃退』であり『撃破』ではないことを悟ったが故の行動だった。
「面白い獲物を見つけた。次は狩るよ」
「そうね。キドー、また会いましょ」
 二人の女はそうとだけ残すと、群衆の中へと消えていった。
「行ったか……」
 キドーが嘆息する。ギリギリではあった。お互いに余力がないのは、よくわかっていた。
「囚人ですか……厄介ですね……」
 アルプス・ローダーがそういう。これからも、奴らはイレギュラーズ達を狙うのだろう……それは、長い戦いの始まりのようにも思えた。
 ただ、いずれにせよ、イレギュラーズ達がこの場を守り切ったのは確かだ。
 今は確かな勝利を喜んでもいいだろう――。

成否

成功

MVP

セララ(p3p000273)
魔法騎士

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 ひとまずの襲撃は撃退できたようです。
 囚人たちとは、また遭遇することになるのでしょうか。

PAGETOPPAGEBOTTOM