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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>略奪民族強襲! 南大門を守り切れ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

が始まろうとしていた●
 不凍港ベデクト。
 ノーザンキングス連合王国の部隊が遂に『不凍港ベデクト』への進行を開始。
 彼らにとっても冬は厳しいものであり、冬を凌ぐ為の重要拠点としてベデクトを制圧せんと向かってくる。
 
 獰猛なるノルダインはドラゴンシップで現れる。
 特徴的な船首に祈りを捧げ、岸壁に現れる。
 前方へ前方へ前方へ。
 食糧を毛皮を燃料を武器を鎧を香辛料を種を。
 前方へ前方へ前方へ。
 故郷の妻子を養うための物資を蹂躙しもぎ取り船にたっぷり乗せて帰還するために。この土地を自分達のものにするために。
 凍らない港。冬に海に出るための港。
 愛する者の命のためならば他者に賭ける容赦はない。
 男どもよ。帷子をまとい兜をかぶれ。
 盾を構え得物を握れ。
 前へ前へ前へ。
 生きるために、立ちふさがる者共の屍を踏み越えねばならないのだ。


「さあて、『冬』にむけて各所煮詰まってまいりました」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は茶にたっぷりとミルクを注いでいる。
「動きは大きく二つ」
 パカリと開かれる砂糖壺。
「元々各地の補給網を担っていた『鉄道網』を新皇帝派から奪還せんとする帝政派、ザーバ派、ラド・バウ独立区、革命派」
 ぽちゃぽちゃと沈められる四つの角砂糖。
「もう一つは『凍らぬ港』である不凍港ベデクトの奪還作戦。ポラリス・ユニオン(北辰連合)、独立島アーカーシュはこっちだな」
 ぷかぷかとマシュマロをほおり込み、その上からホワイトチョコを削り落とす。
「……しかし『敵』も座してそれを眺めている訳じゃない。新皇帝派――特に積極的に動いている『アラクラン』や『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』が勢力の動きを妨害せんと各地で迎撃の構え――」
 スプーンが突っ込まれぐるぐるとかき回される。溶ける角砂糖。
「更に不凍港方面には、この機会に勢力を拡大せんとシグバルド率いる『ノーザンキングス』の一派の接近も噂されてるな」
 熱でとろけるマシュマロとチョコレート。
 頃合いと見るや、ぐびぐびとメクレオはそのくそ重たそうな飲み物をのどを鳴らして飲み干した。
「それぞれ勢力の参戦要請も舞い込んでるぞ。どこになら自分の命をかけられるか見極めるといい」
 胸焼けしないようにな。と、情報屋は付け加えた。
 後に『大乱のヴィルベルヴィント(つむじ風)』と呼ばれる――六派軍事行動が始まろうとしていた。
 

「そういう訳で、『ノーザンキングスの略奪部族の相手をしてもらう」

「君らには、ベデクトの西南――「南大門」のあたりに陣取ってくれ。個々の先は近隣村落に続いている。他の部隊が港湾で連中を船ごとぼこぼこにしてくれたとして、どこを目指して落ちのびてくるかは自明の理だろ? 海賊から山賊になられちゃたまったものじゃない」
 凍てつく峡湾を統べる戦闘民族ノルダインは、甲板で海軍と戦うタイプの海賊ではない。
 ドラゴンシップで海沿いの村へやってきて、容赦の無い略奪蹂躙を行い去っていく。
 海から来るから海賊だ。連中は鉄製装備で●盾を持ち得物を振るう迫りくる壁だ。後ろから弓矢も撃ってくる。守るものがある方にとっては最悪だ。
「最大譲歩で、今期の連中の故郷への土産は自分の命ってことにしといてやろうじゃないか」
 浸透させてはならない。南大門を開けられたら負けだ。。

GMコメント

 田奈です。
 不用意に攻め込んで来た略奪民族の一部はもはや袋のネズミ。
 最後の希望を刈り取るお仕事です。
 ここに現れる敵は港から横断できる実力を持った者。
 もはやこれまでと覚悟を決めるものも多いでしょう。
 ですが、ここで南大門を開けられ、周辺村落に逃れられては面倒なことになります。
 どうぞ、南の門を守ってください。

場所:不凍港ベデクト西南部・南大門周辺
 大きな門です。射掛け台なども存在します。適宜利用するとよいでしょう。
 比較的大きな広場です。足元は石畳。周囲の石材の建造物です。
 ここを破られたら失敗です。

*敵・凍てつく峡湾を統べる戦闘民族ノルダイン×とてもたくさん
 厳しい峡湾に住む人々です。獰猛です。
 人間種ですが、遺伝及び環境によって培われた筋肉量が半端ないです。
 最後の一人になっても意気軒昂でしょう。戦闘に脳内麻薬が決まった彼らに精神系BSは効きにくいです。
 鉄兜に鎖帷子、片手斧や剣(ウルフバート)と丸盾、
 さらに弓矢を装備している者がいます。
 がっつり横並びで建てを構えてぶつかり合った後ろから弓が飛んできます。ノックバックに注意してください。よろめいたところから襲われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <大乱のヴィルベルヴィント>略奪民族強襲! 南大門を守り切れ!完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
サンディ・カルタ(p3p000438)
ラド・バウA級闘士
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
武器商人(p3p001107)
闇之雲
岩倉・鈴音(p3p006119)
タコ助の母
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ


 あるいは、退き時を忘れ、血と欲に狂い、潮だまりに取り残される巨魚。
 あるいは、未来ある若者を逃がすため、あえて前に進む道を選んだ古強者。
 百の兵がいれば百の理由があろう。
 しかし、戦は、ヒトの個を奪い荒れ狂う力の奔流と変える。
 ローレットのイレギュラーズは立ちはだかるしかない。
 この門の向こう側を蹂躙されては内陸部への物流線が断ち切れる。
 最後の兵站を終え、南大門が閉ざされたのはたった今。これより先、残党狩りが終わるまでこの門を開けることはない。
 
「わーっはっはっは!」
『凶狼』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)は、高らかに笑った。
「南大門で、不凍港の中を進んでくる敵を倒す戦い……確かに受けたまわったのだ!」
 高笑いしながら、手はせっせと動いている。
「――というか、ノーザンキングスの風上にも置けねー奴等なのだ! ヤるからには命を持って償わせてやるのだ!」
 いかにも拾いたくなるような弾薬や転がされた得物、あるいは仲間の死体――触れれば手指が吹き飛ぶブービートラップだ。
 すんでで誘惑を断ち切っても、その周辺を効果範囲とした落とし穴や罠弓、地雷モドキが足止め目的で埋まっている。散開されては困る。
「覚悟しろ! ヘルちゃんはヤる時は遠慮なくヤる悪狼なのだ! 次は、サンディちゃんと合同で鍵の方にも罠を仕掛けるのだ」
「いつもは鍵なんて開ける側だが、その経験を活かして――」
『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)は、門の閂を固定する場前に別の鍵をかぶせた。そして、すこぶるつきの鍵穴をこしらえる。開くまで手間で気難しいけど開けるまでの過程がめっちゃそそる穴。開錠師ならわかるだろう。しかし、カチャっと開くだけ。どことも連動していない。開けたって、なんの成果も得られない。ヒトの嫌がることを率先してしましょう。
「――それと、そういう位置で作業しようとしたときに踏むような罠!」
 サンディが言うとヘルミーネは無言で手を差し出した。固い握手が交わされる。絶対にいるからな、開かなければ破壊しちゃえばいいじゃないって言う奴。
「最低でも鳴子みたいにその位置に敵が来たことを知らせるやつ、余裕がある・できそうなら落とし穴みたいに直接落としたりして開けに来た人自体を無力化させちゃう奴!」
 ヘルミーネは、皆まで言うな。と言った。
「ヘルちゃんも一緒にやる。どこに欲しいのか言え。下手に解除しようとすると弓が飛んでくる奴とかどうだ。これで大幅に敵を足止め出来るのだ! わーはっはっは!」

 ヘルミーネの高笑いがこだましている。意気軒高。
「私自身罠を張るのは不得手なので、ひたすら戦闘に専念しましょう」
 作業中の二人に敵の手が及ばぬようにと『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は、戦場を睥睨する。
 凛としていたが満身創痍をおしての出陣だ。
「もはやここまでくれば大勢は決したようなものですが、追い詰められた手負いの獣はここからが恐ろしいと聞きます。ヤケになって被害が出てしまったら目も当てられませんから」
 死兵の恐ろしさは計り知れない。それが鉄帝領内に広がったら――。混乱は必至だ。
「此処が正念場ですね、絶対に守り切りましょう」
「ノーザンキングス、ここまで来たからには1人残らず殲滅するし……何が何でも通さないからね!」
 これからこの場所で起こる戦闘に備え、保護結界を展開する『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も体のあちこちにガタが来ている。
「持久殲滅戦、やってやろうじゃないか!」
 門を開けるための機構を確認する。閂は固定され、錠前は固定されている。紋自体を開閉させる巻き上げ装置は高い塀の中だ。そこに入るための入り口は巧妙に隠されているが、百戦錬磨の略奪者達なら見破ってくるかもしれない。
「冬を越すために必死なのはわかるが、おかえり願うとしよう」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)は、敵の懐事情の目星はついている。
「門を強化し、耐久力を上げよう。門が破られるまでの時間を延ばそうじゃあないか」
 ヒヒヒヒヒ! という特徴的な笑いで、武器商人ここにありとわかる。
「敵が沢山いると、倒しきるにもこちらの消耗がキツそうだ」
 損耗は少ないに越したことはない。ランニングコストもばかにならない。
「ンッフッフ。徹底的に動きを阻害してやろう! ここがお前たちの墓場になるのだ!」
『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)は、せっせとバリケードや柵を作り上げていく。
 淡い橙色の光を放つ羽根を付け、民家や近くから必要なモノをかき集める。
「ぜったいにこの門は通らせないぞ」

 鉄帝は燃えている。
 イレギュラーズも各地を転戦し、無傷の者など一人もいないだろう。
 鎧の下に包帯を隠し、薔薇色の頬紅の下に失血に青ざめた肌を隠し、痛みを押し殺して得物を握る。
「やることはシンプル」
 いっそ晴れやかな口調でシフォリィは言う。
「南の門を護る為に相手を倒すことです。とにかく敵が多いので範囲攻撃で倒していくのが筋でしょうね」
 略奪の徒を集めなくてはならない。方々に散らばられて街の屋台骨をしゃぶられても困るから。
 他のイレギュラーズが戦っているところに侵食されてはいけない。
 わき目も振らず、真っすぐここに向かってくればいい。


「奇襲ならお任せあれ! ってねっ」
『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)は、あえて一団の一部だけに当たるように範囲を調整して堕天の一撃を打ち込んだ。
 かかりにくいのはわかっている。たった一人でも不完全にかかればそれでいいのだ。
 自分の鼻先で同胞がぴたりと立ち止まる。いぶかしく思っても動けないと驚愕の表情。立ち止まる。何人も。軍のようにはあらねども、一族特有の行進が滞り、敵の術中にいることを知らしめる。キリングダンス。死神がわざと足音を立てて現れたのだ。
「略奪者に容赦はしないデス」
 十重二十重と重ねられた陣地の前に『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)は立ちふさがる。
「奪うことしか能が無いノルダインの戦士様達」
 相手の頭の中を害意で染め抜く呪術の範疇に敵が収まるまで。溢れた怒りで南大門とその向こうにある村落のことを忘れるほど染め抜くために。
「ワタシは貴方達の足を止めさせて略奪を阻む憎い敵デス。さぁ、どうすべきお分かりデスネ」
 アオゾラは覚悟の悪態をつく。
 青白い顔をした黒いドレスを着た触れたら折れそうな華奢な女が、滴りそうなほど朱い旗を振り回す。
 ここより先には通さないという誓いが屈強な戦士たちの血潮でなお朱く染まる。怒りにひらめく刃が女に迫る。そのすべてを受ける覚悟。降り注ぐ矢の雨。
「いらっしゃい」

「強靭な体力と戦闘技能、この大軍があれば並の兵、並の門なら落とせるやもしれぬ」
 鈴音はアオゾラと同じく陣取り、呪文を練る。
「だがここに居るのは規格外の歴戦のイレギュラーズよ! 略奪の民よ残念だったな!」
 あるはずのないものが視界を覆う。できるだけ多くに知らしめねばならない――略奪の民は、視界に翻る終焉の帳の色は狂乱の紫と知るだろう。
「効きが悪いやもしれんが略奪民よ更なる狂気に浸かるがよい!」
 宙に投げるバリア・タロットは、巨大な鎌を持つ骸骨を宙に投影して青白い光の壁となった。ガイコツは眼前の死を表すのは世の別東西古今を問わない。雰囲気的にとそれを選んだが、効果があったと鈴音は内心ほくそ笑んだ。
 
「さァ、我こそは勇猛だと思うものからこちらへおいで。楽しく戦おうじゃあないか! ヒヒヒヒヒ!」
 逆上の土壌に怒りの花は狂い咲きする。
 本来なら構えた盾で敵を押し潰していくはずの戦士が我先にと武器商人を追う。乱れる隊列、滞る進軍。誰もかれもが別種の怒りに飲まれていく。同じ怒りなら団結もしようが隣の奴は他の奴を殴ろうとしていて自分の邪魔をするのだ。あるいは自分が邪魔なのかもしれない。なんということだそんな自分は死ななくては。
 怒りと共に狂乱に飲まれた者が時折自身で血花を咲かせる。
 正気でいる方が辛かろうと目を皿のようにした武器商人が破滅へ呼び込もうと戦場を走るのだ。
「――商談できそうな偉いのはどこだろうねぇえ?」
 武器商人がそう独りごちた時、自分をよけて押し寄せる泥流がノルダインを飲み込み未来を真っ黒に塗りつぶすのを見た。
「矢も厄介だし、盾でぶつかられても困るからね……足並みを乱すくらいは!」
 ヨゾラは自分の視界をさらに広域に俯瞰する。空を飛ぶ鳥のように。星の数の眼を持つ夜空のように。視界は澄み切っている。サンディが沸き上がったほこりを洗い流すように手を貸してくれたのだ。どうやったのかはヨゾラにはよくわからない。
「門に近づく敵が最優先だよ」
 泥流が何度も何度もノルダインを飲み込む。文字通り彼らの命運はとうに尽きている。それでも前に向かい、イレギュラーズに突進してくるのは付与された怒りばかりではなく死に場所を求めてでもあるのだろう。もはや、五体満足で帰れぬなら戦場で散る。
「――――――!!」
 快活に笑うヘルミーネののどからそんな声が出るなど信じられない。声にならない魔性の呼び声に応えた亡霊の慟哭は呪いとなってノルダインに降りかかる。
 一度、何かにとらわれたが最後、それは容易に引きはがせない呪いに巻き込まれるのだ。正気に返る機会さえ与えられない。
 そして、終わらない生き地獄の中で正気を保っている者はそれだけで脅威だ。恐ろしい。屈強な精神の持ち主で、戦線を立て直されてはかなわない。
「使い分けてさらに足並みを合わなくするよっ」
 ふいにかわいらしい声がした。ノルダインの手で握りつぶせそうなリリー。銃を持った可憐なお人形のよう。不意をつかれた。あるいはついた。
 次の瞬間、ノルダインの戦士の眼窩から雷がはじけ飛んだ。何が起こったのか。視界が真っ暗だ。音も聞こえない。口からほとばしる叫び声。それがまた別の誰かの隙を誘発する。足元をちょろちょろと小人が走っていく。
 リリーは笑う。倒れたノルダインの陰に隠れるようにして、丁寧に取り落としのないように銃弾を撃ち込み、死と混乱をまき散らした。

「最良は何もさせないこと」
 シフォリイのある所に閃光あり。常人なら立ち止まる間にもう一歩。息を吸うタイミングを無視して詠唱。人はどれだけ止まらず動けるのかに挑戦するように光って回る機会のようになっている。シフォリィが光っている間、ノルダインは神の威光のもたらす際限ない痛みにひれ伏して何もできない。神の慈悲深さたるや、何度死ぬほどの衝撃が襲ってこようともこの光で死ぬことだけは絶対ないのだ。死なず、ただなす術もなく転がされるのみ。
 その上を、ヨゾラの泥流が飲み込む。考えようによっては生き恥を雪ぐ温かな泥だ。
 その泥を通りすがりのヘルミーネが凍らせていく。
「皆ことごとく死ぬがよい」
 呪文の結句をヘルミーネがつぶやいた。今、この場は氷結地獄である故に慈悲はないのだ。

 前列が進まぬなら。後方のノルダインたちが弓を引き始めた。矢に火がつけられ、門に向かって射掛けられる。
 開かぬなら燃やせばいい。ボロボロになった残骸を踏み越えていけばいい。
 せめて一矢報いなければ。
 射手が弓を放つ刹那。
「なんかやってると思ったんだ。武器商人さんがおしえてくれたとおりだった」
 生命力を破壊力に。熱線が射手を射抜いた。
 乱戦の中、サンディは門を開けようとする者を各個撃破していくことに心血を注いでいた。
 別の者が矢をつがえる。熱線がぶち抜く。何度も何度も同じことを繰り返す。ノルダインが矢をつがえたら死ぬと学習するまで。その心がブチ折れるまで。
「何もさせてやらない」
 サンディはニッと笑ってみせた。お客様、どうぞベットを。お支払いは生命になりますがよろしいですか?
 同じ所から撃っていたら反撃される。いつでも門に取って返せる距離を保ちつつ移動する。
「門は開けさせない」

 武器商人は、襲い来る斧の一撃から鈴音をかばった。
 崩れ落ちる武器商人。肩口から血が渋く。
「――聖王封魔パンチ!」
 おかげで鈴音から渾身の一撃だ。魔導書は唱えてよし、角で殴ってもよしの万能武器だ。
 殴りつけられたノルダインはしばらく動くこともできない。位置的にシフォリイの範囲攻撃に巻き込まれるだろう。
「大丈夫かい」
「ありがと。君の方が大丈夫――じゃないね」
 術が発動するまでのわずかな時間での応急処置が実のかかりをよくする。
「いやいや、回復持ちは大事だからね」
 武器商人はあけすけに正直だ。
 感謝を込めて、特盛の大天使の祝福だ。青ざめていた武器商人の顔色が見る間によくなった。
「回復していくからドンドン倒しちゃって! まったく引き際をわきまえない奴らだよ」
 そうだねえ。と、武器商人は応じた。呼吸があからさまに楽になったことに気づく。
「帰れるヒトには帰ってもらった方がいいねえ」
 損益収支が合わなくなる。倒せば倒すほど赤字だ。
「そりゃ――そうだよ。こっちも大変だし――」
 ちらっと鈴音の眼球にノイズのような映像が走る。遠ざかるヒト。誰も無傷ではない。それでも足を引きずりながら門を背に去っていく。遠ざかる一台の馬車。馬はいない。ノルダインが自分たちで曳いていく。
「去っていく奴らもいるよ……」
 呆けたような口調にハッとする。
 鈴音の中に宿る魔神の力が見せてくれた未来。そのかすかな可能性。
「へえ。その中で一等偉そうなのはまだ生きているかな?」
 武器商人は頬に固まった血を袖でこそげ落としながら言った。血にぬれた顔で商談は難しい。主に向こうの心証的に。
「あそこにいる二本角の兜の奴。号令を送ってるから」
 今と未来予想。バアルペオルの目が重なる視界。
 武器商人はそちらに向かった。
「――こっち向いてもらうデス。相手はワタシデス」
 死なないことに特化したアオゾラの不死の体。それでも多勢に無勢だ。受ける傷の方が多い
「さっきも言いました。容赦しないデス。後ろの方にいた皆様は聞いてなかったみたいなのでもう一度言いましたデス」

 敵も味方も満身創痍。
 閃光に熱線が映り込み。獣性は止まらず、泥の上を氷が走る。
 そのすきを突き、門に縋り付くものが出始める。
「ここから先に通してたまるか…何が何でもぶちのめす!」
 ヨゾラは、数瞬前まで癒しの祝歌を歌っていた唇をかみしめ、ノルダインの腹をぶち抜く一撃を食らわせる。
 掴みかかるのを打ち据え、転がし、最終的には至近で殴り合う。事前に拵えた陣地でノルダインが分断されたことによってイレギュラーズは踏みとどまっていた。素通しだったらどうなっていたかわからない。

「もうこの辺りで退いた方がよかないですか」
 鈴音が見た兜のノルダインに武器商人が忍び寄る。
「『命以外の戦果が無ければ退けない』事情も分かってるつもりですよ。商人ですからね」
 心中お察しします。と、武器商人は心のこもった社交辞令を投げた。
「鉄帝だってぐちゃぐちゃなんです、門の向こうだって困窮してますからね。なぁんにもないんですよ」
 わかるでしょう? と、囁く。
「退いてくれればあの馬車と中身を差し上げますよ。馬車一杯の食糧! どうです?」
 悪魔のささやきだ。戦士の誇りと実利。何より命が助かること。天秤はぐらぐら揺れる。
「これ以上はこっちもかなわない。『どうぞ命ばかりはお助け下さい』」
 先方の体裁を整えるのも商売人の嗜みである。

 まだ自分の生死のかけ所を選ぶことができた幸運なノルダインは、イレギュラーズの「命乞い」を聞き入れ、撤退した。
 文字通り死に急いだノルダインは、望み通りイレギュラーズのまえで命を散らせた。


 戦場に静寂が訪れた。イレギュラーズのほとんどはもう指一本動かしたくないほど疲弊しきっていた。なんで立っているのかわからない。少しずつお互いを癒しながら合流する。
「わーはっはっは! 悪党は滅びた! やはりヘルちゃんつよいの――げほっ!」
 ヘルミーネは、小さく咳払いして、ようやく長く息をつく。
 空気に血の臭いがこびりついている。
「しかし…死んで霊になった以上はニヴルヘイムとして死出の旅路を見送るのだ」
 迷うことのないように。この地に縛られることなく、海を渡り、故郷に戻ることができるように。
「どうか良き死出の旅路を」
 それがヘルミーネの一族の――ニヴルヘイムの本来の役割なのだから。

 注意深く、一人の生き残りもないようにヨゾラは泥流を呼んだ。
「敵の骸の中にまだ死んでない敵が潜んでいるかもなので」
 やがて、泥流に飲まれてうめく声が聞こえなくなって、本当の静寂が訪れた。

 南大門は守られた。
 閂は外されることなく、蟻の子一匹通さなかった。
 むしろこれから罠を外して開けるのに手間取りそうなくらいだった。

成否

成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)[重傷]
不死呪

あとがき

お疲れさまでした。南大門が開くことはありませんでした。本当にゆっくり休んで、そのあとにお仕事頑張ってくださいね。

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