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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>革命の歯車は動き出す

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オースヴィーヴルの少尉
 朝日が昇り、地上にあまねく日差しが差し込む頃だった──。
「間違いない、その僧服……『クラースナヤ・ズヴェズダー』の一味だな?!」
 新皇帝派によって制圧された鉄道都市ルベン――その近辺で威圧的な声が響いた。
 オースヴィーヴル軍に属する少尉、鉄騎種のカリバーンは、小隊を率いてルベンの内部へ進軍しようとしていた。その矢先、正義漢のカリバーンは見過ごすことのできない存在を見つけたのだ。
 ルベンの付近をうろついていた僧服の2人を見咎め、カリバーン率いる小隊は明らかな敵意を向ける。
 今ではクラースナヤ・ズヴェズダー――革命派は、革命の為と称し、オースヴィーヴル領で虐殺、略奪に加担した組織という風評が広まってしまった。
「何を企んでいる? 悪逆の徒め!! 貴様らの好きにはさせんぞ!!!!」
 声を張り上げるカリバーンが一瞥した方角には、鉄道施設の1つであるルベンがあった。
 ルベンの地下には古代兵器が隠されているという情報がある。オースヴィーヴル軍は、鉄帝国に対する本格的な挙兵に向けて動き出していた。戦力を増強するための一手として、ルベンを軍の制圧下に置こうという狙いがあるのだ。
 ――またも革命派が蛮行に及ぶつもりなら、捨て置くことはできない。ルベンの古代兵器に手を出そうとしているなら尚更である。
 偶然にも遭遇した革命派の人間を断罪せんと、カリバーンの小隊はその気運を高めていた。一斉に武器を構える軍隊に対し、ルベンを背にしていた2人は脅えたように逃げ出した。
 カリバーンは、ルベンへと向かう2人を追うように指示を出した。そのままルベンに向けて前進する小隊は、2人の後を追って都市のゲートをくぐる。その都市には新皇帝派の勢力もはびこっていることは承知していた。逃亡するために、革命派も危険を冒してまで踏み入った――というカリバーンの予想は裏切られることになる。
 まずカリバーンらを出迎えたのは、地面や建物の壁を滑るように移動する、無数のブロック状の物体だった。手の平サイズの大きさの黒いブロックは、その1つ1つが寄り集まることであらゆる形状へと変化していく。
「うわあああああああああああ?!!」
 無数のブロックによって形作られた巨大な手が瞬く間に現れ、カリバーンを小人のように摘まみ上げた。
「カリバーン少尉?!」
 宙吊り状態になるカリバーンを見上げれば、更なる危機が訪れている事実が視界に入る。
 建物の上や上空からは、多くの天衝種(アンチ・ヘイヴン)が小隊を見下ろしていた。
「お前らには、ここで革命の犠牲となってもらおう!」
 クラースナヤ・ズヴェズダーのものと思われる僧服を身につけた2人組は、そう高らかに告げた。天衝種の襲来に慌てふためくオースヴィーヴル軍をあざ笑い、2人組はカリバーンを拘束した巨大な手と共に、ルベンの更に内部へと去っていく。

●応援要請
「あれは……」
 ルベン内部やその周辺の状況を把握するために、革命派は斥候役を差し向けていた。ルベンに巣食う天衝種にもその動きを気取られないように潜入していた斥候の1人は、オースヴィーヴル軍の存在に気づき、双眼鏡を覗き込んだ。
 僧服を来た人相の悪い男2人は、新皇帝派の工作員と見て間違いなかった。
「我々の戦力だけでは……すぐに応援を呼ぼう」
 これ以上新皇帝派の工作によって、オースヴィーヴル領に被害が出る事態は避けたい。オースヴィーヴルとの溝が決定的に深まりかねない事態に対し、斥候の彼らは即座に陣地へと引き返した。

「――オースヴィーヴル軍が、新皇帝派の工作員と接触しました!」
 ルベンに向かったオースヴィーヴル軍の情報が、斥候役から革命派に属するイレギュラーズにも伝えられる。
 革命派の陣地では、ルベン攻略に向けた出撃準備が進められていた。予期せぬ新皇帝派とオースヴィーヴル軍の動きを受けて、陣地の様子は慌ただしくなっていく。
 ――今すぐに、ルベンに向けて出撃するしかない!
 一同の総意によって、出撃の号令が発される。それと同時に、機械仕掛けの自動人形──歯車兵の一群が一斉に起動された。
 革命派は、持ち得る最高の技術力を注ぎ込み、古代文明兵器の戦力投入を試みる。戦闘への応用は未だ試作段階だが、イレギュラーズを支援するためのそこそこの戦力は持ち合わせている。
 歯車兵たちを付き従え、真の革命を望む者たちは、ルベンへと進軍を開始した。

 カリバーンを拉致したニセ革命派――新皇帝派は、ゲートから遠く離れた都市の内部まで進んでいく。その間にも、拳銃を抜いたカリバーンは抵抗し続け、自力で宙吊りにされていた体を解放した。
 古代文明の技術によって動く無数のブロックは、自在に組み合わさることで結集した形状を変化させていく。
 連なって動くブロックはカリバーンの背後に回り込もうとする。しかし、剣を構えたカリバーンはブロックの包囲を許さず、「一体何が狙いだ?!」と喚き散らしながらも、冷静に立ち回る。
「あんたなら丁度いい見せしめになりそうだ」
「ちょっとしたショータイムに付き合ってもらうのさ」
 僧服の2人と絶えず動き続けるブロックは、カリバーンへじりじりと詰め寄っていく。
 危機的状況に追い詰められるカリバーンだったが、激しい抵抗を繰り返す。
 剣を構えたカリバーンは、ブロックの塊を突き崩す一撃を放つ。崩れ落ちた複数のブロックたちは、火花と黒煙を上げて完全に停止した。しかし、それは何百とあるブロックの一部に過ぎない。
 男の1人――無精髭を生やした男は、カリバーンに向けてクロスボウを構えた。だが、拳銃を発砲するカリバーンは、照準を定めるのを躊躇させた。
 カリバーンは隙を見て、引き離された部下たちとの合流を試みる。しかし、その進路上には壁のように積み重なるブロックが瞬時に現れる。
 一瞬目を離した間に、ブロックの群れは男2人の足元へと結集し、塔のような高い足場を組んでいた。
「そろそろくたばる時間だぜ?」
 見上げるカリバーンにクロスボウを向けるもう1人、赤毛の男は、そう言ってにやりと口元を歪ませた。

GMコメント

 革命派、オースヴィーヴル軍の両者は、ほぼ同時に鉄道都市ルベンの攻略に乗り出した。
 新皇帝派の工作によって革命派を敵視するオースヴィーヴル軍だったが、革命派に救われた領民が多いのも事実である。軍とイレギュラーズが衝突することを望まないのは、オースヴィーヴル領の民も同じである。
 新皇帝派の罠によって誘き寄せられたオースヴィーヴル軍を、救うことはできるのか、和解は叶うのか――すべてはイレギュラーズに託された。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●成功条件
 メイン(最低限)の成功条件は、鉄道都市ルベンの西側ゲート周辺の制圧。
 サブ条件として、オースヴィーヴル軍とカリバーンの救援があります。

●革命派について
https://rev1.reversion.jp/page/kakumei

●オースヴィーヴル軍について
 カリバーンを含めた30人の小隊。
 天衝種と交戦中ですが、「革命派にルベンの古代兵器を悪用させてはならない!」という考えから、敵対する恐れがあります。敵対を避けるには説得が必須でしょう。

●天衝種について
 天衝種は計30体。
 青白い炎のタテガミを持つ獅子のような怪物が10体、燃え盛る炎の塊にコウモリのような翼が生えた怪物が20体。
 コウモリ型は飛行状態で戦闘に臨みます。上空からの体当たり(物近単【業炎】)、無数の炎のつぶてを飛ばす(神遠範【業炎】【識別】)などして攻撃を行う。
 獅子型は鋭い牙や爪による攻撃(物近単)、炎のタテガミから周囲に放射される炎(神自範【業炎】【識別】)で敵を一掃しようとします。

●カリバーンについて
 革命派とオースヴィーヴルの関係を更に悪化させようとする新皇帝派は、カリバーンを惨殺して見せしめにしようとしている。
 新皇帝派の2人に拉致され、都市ルベンの内部で孤立してしまった。
 少尉として、古代兵器にも応戦するほどの力を発揮するカリバーンだが、それほど長くは持たないだろう……。

●古代兵器と新皇帝派について
 何百もの無数のブロックによって、様々な形状へ変化する古代兵器。天衝種が乗り移り、より強化された個体。新皇帝派の2人を攻撃からかばうなど、サポートに回る動きを見せる。
 髭の男、赤毛の男は、それぞれクロスボウ(通常レンジ3)を駆使して戦う。

●歯車兵について
 20体の歯車兵がイレギュラーズと共に行動します。近接攻撃のみで、強さは一般兵並みです。
 簡単な命令であれば従います。例えば「ついてこい」「攻撃を止めろ」などはOKですが、「カリバーンを探せ」のような命令には対応できません。

 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>革命の歯車は動き出す完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC4人)参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
一条 夢心地(p3p008344)
殿
イロン=マ=イデン(p3p008964)
善行の囚人
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

リプレイ

「急ぎましょう。時間を掛けてしまえば、間に合わなくなってしまいますわっ!」
 そう言って先行する『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、超人的な能力を発揮する。
 ヴァレーリヤは飛ぶように宙を駆けた。跳躍したその姿は、頭上高くにあるゲートの支柱の先へと降り立つ。見晴らしのいい足場を見つけたヴァレーリヤは、天衝種と交戦状態にあるオースヴィーヴル軍の様子を窺った。
 無数の炎のつぶてを降らせるコウモリ型の天衝種に加え、地上では獅子型の天衝種が牙を剥いて襲いかかる。
 カリバーンを拉致され、統率を欠いた軍隊は混乱状態に陥っていた。
 コウモリ型の天衝種を射程内に捉えたヴァレーリヤは、メイスを掲げて聖句を唱え始める。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し――」
 精神を集中させるヴァレーリヤは、メイスから天高く吹き上がる炎を操る。
「――その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 コウモリ型の方へ一気に押し寄せた炎の波は、濁流のようにその群れを飲み込んだ。正面から直撃を受けた一体は、真っ黒に焼け焦げた翼だけを残して焼失した。
 地上の天衝種や軍隊は、空を覆うヴァレーリヤの炎を見上げる。そのわずかな間に視界に過ったのは、騎乗用の亜竜――リトルワイバーンと、それにまたがった『嵐を呼ぶ魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)だった。
 ヴァレーリヤが発現させた炎に包まれる天衝種を間近で見たマリオンは、味方ながらにすくみ上がるような心地がした。
 ――天衝種よりむしろ、ヴァレーリヤの攻撃の方が怖いです! 凄い頼りになるけどね! まる!
 ヴァレーリヤの射線上に入らないよう注意を払いつつ、マリオンはコウモリ型の群れを駆逐するために攻撃を開始する。魔力を引き出すマリオンは、砲撃に等しい威力の一撃を放ち、コウモリ型の動きをかき乱す。
 地上の獅子型の注意を引きつけようとする『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)も、即座に動き出していた。
 ブランシュは魔力障壁を展開し、続けて獅子型の注意を自身に向けさせようとする。
「落ち着いて! 共にこの危機を脱しましょう」
 そう声を張り上げるブランシュから強い覇気を感じ取った獅子型は、一斉に唸り声をあげ始めた。
 予期せぬ援軍の出現に対し、カリバーンの部下たちはまだ事態を飲み込めていないようだった。同じく援軍として駆けつけた『善行の囚人』イロン=マ=イデン(p3p008964)も、歯車兵を引き連れて前線に加わる。
「さあ、正しき革命を示す時です……天衝種の攻撃を防いでください!」
 イデンは歯車兵に指示を出し、オースヴィーヴル軍の者らへの攻撃を防ごうとした。

 すでにカリバーンの救出を図る別働隊も動き始めていた。
 それぞれの能力を駆使し、都市内部のどこかにいるカリバーンの行方を探す。
「拐われちゃったか弱いカリバーンさんも助けてあげないと、大変なのだわ!」
 カリバーンの捜索に乗り出した1人、『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)はその意気込みを示す。
 ガイアドニスは五感を研ぎ澄まし、周囲の気配に注意を払う。同時に『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)も自らの直感に従い、気配を感知した方角へ皆を導こうとする。
「……この方角で間違いなさそうだぜ」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は地面に残る痕跡を確かめ、カリバーンらの居場所を裏付ける。
 捜索を担う者らは、確実にカリバーンの下へ接近していく。『殿』一条 夢心地(p3p008344)は超人的な広い視野を駆使し、倉庫が並ぶエリアを俯瞰的に把握することができた。
「まったく、性懲りもない連中じゃ……」
 夢心地は、新皇帝派の姿を認めてつぶやいた。倉庫の影に隠れるようにして、カリバーンを袋叩きにしようとする男2人と、結集した形を変化させ続ける無数のブロック。斥候の報告にあった古代兵器の特徴を確かめた夢心地は、他の者とも正確な位置を共有する。
 『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)も小鳥のファミリアー――使い魔を駆使することで、カリバーンの状況を把握した。ンクルスは1人奮戦するカリバーンの姿を、ファミリアーの視界を通して垣間見ることができた。消耗している状態も窺えるカリバーンの様子から、ンクルスは1秒でもはやく駆けつけようと動き出す。
「これ以上、思い通りにはさせない……私が天罰するからね!」

 歯車兵と共に防衛線を築くイデンは、負傷していた兵士の1人を治癒の魔力で包み込む。軍隊の誰もが予期せぬ援軍の登場に救われる思いだった。しかし、ヴァレーリヤが身につけていた赤い十字架に気づいた1人は鋭い声をあげた。
「お前たちは……?!」
 革命派に属している者たちであることに気づくと、軍隊は取り付くしまもなく剣やライフル銃を構えてイレギュラーズを威嚇する。イデンは透かさず「待ってください!」と声を張り上げたが、1人の准尉がその言葉をかき消す。
「ルベンを狙っているのか?! 革命派の思い通りにはさせんぞ!!」
 准尉がまくし立てる間にも、無数の青白い火の粉が周囲に舞い踊る。
 獅子型の天衝種の1体が准尉に向かって飛び出したように見えたが、獅子型はブランシュの方へと突撃していく。
 天衝種を揺さぶるほどの闘気をみなぎらせるブランシュは、その巧みな動きと共に複数の天衝種を引きつけ、危なげなく攻防を制し続ける。ブランシュに向かって更にもう1体の獅子型が襲いかかろうとしたが――。
「どっせえーーい!!!」
 ヴァレーリヤは火を吹くメイスを振りかざし、その獅子型目掛けて猛牛のような勢いで突撃した。突き飛ばされた獅子型は、メイスから生じた炎に瞬く間に包まれる。炎の壁に閉じ込められ、獅子型の体は跡形もなく燃やし尽くされた。
 オースヴィーヴル軍を天衝種から守るようなイレギュラーズの行動に違和感を覚えつつも、兵士たちは警戒を解くことはなかった。
 リトルワイバーンにまたがったマリオンは、炎のつぶてをふらせるコウモリ型の天衝種を潰そうと宙を旋回していた。マリオンは魔力を変換した砲撃で確実に天衝種を仕留めていく。しかし、オースヴィーヴル軍はコウモリ型に向けて一斉に射撃を始め、マリオン諸共撃ち落としかねない。それを止めようとする素振りを見せれば、刃を向ける准尉や複数の兵士が敵意をむき出しにする。
「それがお前たちの策略か……我々を油断させるのが目的だな?!」
 その准尉の一言に対し、ブランシュは即座に否定した。
「策略にはまっているのは、貴方たちの方です!」
 盛大に吹き上がるヴァレーリヤの炎を警戒し、天衝種たちが遠巻きに隙を窺う間に、ブランシュはオースヴィーヴル軍の誤解を解こうと言葉を続ける。
「我々は貴方たちの味方です。決して友を、手を取り合った仲間を虐殺するなどあり得ません」
 ブランシュと示し合わせたように、ヴァレーリヤも准尉に対して熱心に呼びかける。
「今、ここで争っている場合ではないでしょう。貴方達の戦友の命が掛かっていますのよ!」
 ヴァレーリヤに続き、イデンも休戦を呼びかける。
「ワタシたちがここへ来たのは、貴方たちと戦うためではありません!」
 イデンは革命派を騙る新皇帝派の存在について触れ、新皇帝派の謀略であることを論じてオースヴィーヴル軍を説き伏せようとする。
 イデンの話を聞いた准尉は怪訝そうな表情を見せ、迷いが生じたように見えた。
「貴方達の指揮官のことであれば大丈夫。別働隊が救出に向かってございますわ」
 別働隊の存在を告げたヴァレーリヤは、更に准尉に念を押す。
「私たちが救出した村の方に、証言して頂くこともできましてよ。ここで協力することこそ、領民の皆様のためですわっ!」
 ヴァレーリヤたちが説得を続ける間にも、マリオンは果敢にコウモリ型の群れへと切り込み、その内の1体を一撃で仕留める。マリオンは天衝種をけん制しつつ、発砲を止めた軍隊へ空から呼びかける。
「判断し辛いなら指揮官さんが戻って来るまで、休戦して待機すればよいと思います! 現場判断の責任って重いしね!」
 兵士たちは、准尉の判断を仰ぐように視線を集中させる。
 天衝種の襲撃から救われたのは事実だが、どこまで相手を信じるべきか――准尉は腹を探るような眼差しを送り続けた。
 ブランシュは一層声を張り上げ、革命派の信条を解いた。
「同志アミナ様は、罪のない人々が苦しむことを望むような方ではありません! 誰よりも人を愛し、弱者を救わんとする人間です――」
 オースヴィーヴル軍に対して共闘を促そうとするブランシュからは、まさに聖女のような後光が射し始めていた。その様を見た兵士らは、次第に惚けた表情でブランシュの言葉に聞き入る。
「それでも同志アミナを信じれないというのなら、私を信じなさい。私は後光の乙女。革命の聖女と成らんもの。その御旗の下に集いなさい」

 天衝種との戦いを制し、オースヴィーヴル軍との共闘を目指す動きがある中、カリバーンは窮地に立たされていた――。
 無数のブロック状の古代兵器は、組み上げられたブロックで巨大なハンマーの形を築き、カリバーンを押し潰そうと振りかぶる。自身を追い立てるハンマーからカリバーンは幾度となく身をかわした。しかし、古代兵器の動きに集中していたカリバーンを新皇帝派――赤毛の男のクロスボウが襲う。
「ぐぅっ?!!」
 低くうめいたカリバーンの左肩には、深々とクロスボウの矢が突き立てられる。
 赤毛の男とヒゲの男は、古代兵器の攻撃の間を縫うようにして、いやらしく絶妙なタイミングでカリバーンを狙ってきた。
「しぶといなぁ……そろそろ諦めれば?」
 赤毛の男の軽々しい一言は、カリバーンの闘争心を余計に煽った。だが、絶望的な状況であることはぬぐい切れない事実であった。
 時間を稼ぐカリバーンは、どうにか打開策をひねり出そうとする。そんなカリバーンの予想を裏切り、その人物は前触れもなく現れた。
 カリバーンの目の前で、石造りの塀が何者かによって破壊される。
 シスターの見た目には似合わない凄まじい腕力を発揮し、塀をぶち抜いたンクルスは、
「もう、また偽物が悪さしてるぅ!!!!」
 そう言って怒りを露わにし、新皇帝派の一味と対峙する。
 シスター服を着たンクルスの姿を見たカリバーンは、「お前は……?!」と目を見張ったが、
「私が来たからには、もうカリバーンさんは傷つけさせないよ!」
 カリバーンの反応には構わず、ンクルスは宣言した。新皇帝派との間に堂々と立ち塞がるンクルスに続き、間を置かずガイアドニスも駆けつける。
「あらあら、大変! 怪我してるのね?!」
 ガイアドニスはカリバーンを治療しようとするが、カリバーンはガイアドニスを警戒し、触れさせようとはしなかった。
 ガイアドニスが駆けつけた直後にも続々と現れるイレギュラーズを前にして、カリバーンは険しい表情を崩さない。
「もう大丈夫だ、よく堪えた! 助けに来たぞ!」
 そう声をかける沙耶だったが、新皇帝派の男2人は何食わぬ顔で革命派を装う。
「手柄が欲しいのか?」
「こいつは俺たちの獲物だ」
 男2人には構わず、夢心地は刀を抜き放って臨戦状態となる。
「小細工したければ、どれだけしてもらっても構わぬ」
 そのひょうきんな見た目とは裏腹に、夢心地の眼光は一瞬鋭さを増した。
「――真っ向から叩き斬るのみじゃ」
 夢心地はそうつぶやいた直後、ブロックの集合体であるハンマー――古代兵器に向かっていく。即座に古代兵器へと接近した夢心地は、鋭く振り抜いた刃で巨大なハンマーとかち合う。ハンマーは弾き返されるほどの衝撃を受け、一部のブロックの表面には亀裂が刻まれる。石材のような表面が欠けた下からは基板が露出し、バチバチと火花を上げた古代兵器は後ずさる。
 男2人の反応が追いつかない内に、イレギュラーズは攻撃を畳みかける。
 沙耶は魔力によって紡がれる無数の糸を展開し、古代兵器諸共男たちの動きを封じようと攻撃を仕掛けた。
 同時にカリバーンの下に駆けつけたゴリョウは、半ば強引に男たちの前から引き剥がす。
「近づくな! クラースナヤ・ズヴェズダーの仲間だな?! お前たちの狙いは――」
 未だ敵意を向けるカリバーンは、声を荒げて言った。しかし、ゴリョウはカリバーンの言葉を遮る。
「異論は聞かねぇ! 俺が勝手にやってることだ!」
 カリバーンが攻撃にさらされないよう警戒するゴリョウ。同様にガイアドニスもカリバーンのそばにつきまとい、巨人に近い体格を生かしてカリバーンの動きを妨げる。
「私たちはあなたの敵じゃないわ! 革命派を騙る偽物を止めたいだけなのだわ!」
 説得を試みるガイアドニスは、カリバーンに対し怪我の治療を促した。沙耶は男2人の腕や足を絡め取ったところで、ためらう様子を見せるカリバーンを一瞥する。
「あなたも私たちも、偽物に利用されているだけだ! 私たちは、共通の敵である新皇帝派を倒すためにここへ来たんだ」
 沙耶がカリバーンを説き伏せようとする間にも、古代兵器はブチブチと魔力の糸を力任せに引きちぎる。やがて糸を引きちぎりながら、古代兵器は形態を変化させていく。
 コマの形に変形した古代兵器は、夢心地や沙耶を吹き飛ばさんばかりに勢いよく回転を始めた。2人が古代兵器のそばから飛び退き、古代兵器はンクルスのいる方角へと飛び出した。
 両手を組み合わせて祈りを捧げるンクルスは不屈の力を引き出し、秘宝種としての頑健な肉体を身をもって示す。
 ンクルスは動じることなく、巨大なコマと化した古代兵器を受け止めた。その勢いを打ち消したンクルスは、
「そういうのやられるの、本当に腹が立つんだよっ!」
 革命派を演じ続けようとする新皇帝派に非難の言葉を向け、古代兵器を押し返す。古代兵器は大きく傾きながらも、なんとかコマとしてのバランスを保った。
 古代兵器と、その影に隠れるようにしてクロスボウを構える男たちを交互に見据え、ンクルスは改めて強い口調で宣告した。
「カリバーンさんは、必ず連れて帰るよ!」

「さ、このハルバードの錆になりたい者から来るといいよ」
 『穹の天使』ルシ(p3p004934)は、コウモリ型の天衝種の群れを前にしても不敵に微笑んだ。
 翼を広げ、重厚な斧槍を振りさばくルシは、砲撃並みの魔力を放つマリオンと共に上空の天衝種を一掃しようと飛び回る。2人は次々と飛行する天衝種を叩き落とし、地上で奮闘する者らにもその様を見せつけた。
「しつけのなってない獣には、お仕置きよ!」
 地上の天衝種を相手にするイレギュラーズの1人、『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)は、そう言って容赦なく鞭(むち)を振りかざす。
「何度でも食らわせてあげるわ!」
 ジョッキータイプの大振りの鞭を用いるセチアによって、獅子型の天衝種はしっぽを巻くほどにたじろいでいた。
 共に援軍として駆けつけた『砂国からの使者』エルス・ティーネ(p3p007325)は、共闘に応じたオースヴィーヴル軍、奮戦する革命派の面々を見つめて思いを巡らせる。
 ──革命、だなんて…私には叶わなかったけれど、この世界のほんの小さな革命ぐらいなら。手伝ってあげてもいいわよ、ね? ……なんて。
 かつていた世界で、革命を起こす前に敗れた自身の愚かさを、エルスはわずかな間回顧する。
「さ、考えるのはおしまい……」
 ──一体でも多く叩いて、味方の道を切り開いて行きましょ!
 死神そのものの巨大な鎌を携えたエルスは天衝種を圧倒し、天衝種の注意を引きつけるブランシュとも協力して、その数を減らしていく。
 メイスを獅子型に向けて突き出したヴァレーリヤが、聖句を唱えると、
「――どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に!」
 メイスから放たれた衝撃波は、炎のタテガミすらも吹き消す勢いで獅子型を吹き飛ばす。
 主に歯車兵の指揮を務めるイデンは、歯車兵を兵士たちの援護に傾注させる。天衝種の動きに注意を払いつつ、治癒の魔力を発散させるイデンは、懸命に負傷者の治療に当たった。

 一度はガイアドニスを拒んだカリバーンだったが、身を挺してカリバーンを守ろうとするイレギュラーズの行動に感じるものがあったようだ。
「ここはひとまず、休戦なのだわ!」
 そう言って再度カリバーンを促すガイアドニスに対し、カリバーンは黙って従った。
 ガイアドニスやゴリョウが負傷したカリバーンを退避させる間にも、夢心地は苛烈に攻めかかる。その夢心地の勢いをくじこうとする新皇帝派、ヒゲの男はクロスボウの狙いを定めた。しかし、夢心地は顔色ひとつ変えずにクロスボウの矢を刀で弾き落とす。
 夢心地の動きを見て、明らかに驚愕している様子の男を沙耶は狙う。間髪を入れずに放たれた沙耶の魔弾は、古代兵器の守りをすり抜け、被弾を許した男は爆ぜるようにのけ反った。
「覚悟せよ、外道ども」
 確実に相手を追い詰めていく夢心地はつぶやく。すでに古代兵器も幾度となく攻撃を受け止め、無数のブロックから成る機体は限界が目に見えていた。あちこちのブロックから異音が鳴り、火花を散らすほどに古代兵器の動きは鈍くなる。ブロック同士がこすれ合う音を響かせ、古代兵器は徐々に変形を始めた。その瞬間、ンクルスは古代兵器の至近距離へと大きく踏み込んだ。
「バラバラに――」
 ンクルスは、ブロックが寄り集まった状態の古代兵器を一気に抱え上げ、その一言と共に全身に力を込める。とてつもない力を発揮するンクルスは、古代兵器を抱え上げた状態から、バックドロップの態勢に入った。
「――してあげるよ!!」
 古代兵器は一瞬の内にンクルスの技を食らい、地面に激しく衝突する。その衝撃によって土煙が立ち上り、同時に無数のブロックの塊であった古代兵器は、バラバラに崩壊した。
 完全に崩壊し、停止した古代兵器の様子を見た2人の男は、動揺を隠し切れていなかった。そこへ駆けつけたオースヴィーヴル軍が、更に追い打ちを与える。
「総員かかれ!」
 共に天衝種を退けてきたブランシュは、軍隊に号令をかける。
 先陣を切ったブランシュは、稲妻のごとく瞬時に新皇帝派へと迫った。
 目の前で閃いたブランシュの刃を必死にかわし、新皇帝派の2人は逃げることに全力を傾けた。
 歯車兵やオースヴィーヴルの兵士たちが新皇帝派の姿を一斉に追いかける中、合流したイレギュラーズはカリバーンの無事を確かめる。
 ガイアドニスから怪我の治療を受けるカリバーンの姿に気づき、複数の部下もその場に駆け寄った。
「我々は、革命派に助けられたようだ──」
 カリバーンは、半ば信じられないような様子でつぶやき、軍隊を引き連れてきたイレギュラーズの面々を眺める。
 ヴァレーリヤは改めて、新皇帝派の謀略が招いた事態であることを強調し、真摯にカリバーンに語りかける。
「私たち、クラースナヤ・ズヴェズダーは、決して敵対する意思はありません。信じていただけましたか?」
 一見無邪気な少女然とした口調で、ンクルスも革命派の信条を訴える。
「アミナさんとか革命派の人達は悪い事してないし、皆が平和に暮らしていけるように頑張ってるんだよっ!」
 わずかに険しい表情を緩めたように見えたカリバーンは、ゆっくりとつぶやく。
「この件については、慎重に精査しよう……」
 カリバーンは革命派に属するイレギュラーズに対し、友好的な反応を見せた。オースヴィーヴル軍の上層部に報告することを約束し、軍隊に向けてルベンからの一時撤退を指示した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。

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