シナリオ詳細
きのこの森探険 ~秋のきのこ狩り~
オープニング
●きのこの森
幻想の外れにある森は、豊かな自然と種類豊富なきのこで有名だ。
木々が色付く実りの秋は勿論のことながら、冬も春も夏も、年中きのこ狩りを楽しむことができる。家族連れや仲間、また菌の研究にと足を運ぶ研究者で、訪う者たちは後を絶たない。
森には敷地をぐるりと覆う柵があり、森の管理を担うレンジャーたちが日々森の中の異変に目を光らせている。迷って出てこられなくなる者がいたり、限定された期間ではあるが珍かなきのこが生えるからだ。
そんな森の存在を最近知ったのが、今回の依頼人である。
曰く、きのことは旨味の宝庫なのだとか。
曰く、主役にも脇役にもなれる素晴らしい食材なのだとか。
――という、何だかとても熱量を感じられる書簡がローレットへと届けられた。
「依頼人は……隠していないようだし言っちゃうね」
受け取った書簡を手に劉・雨泽(p3n000218)は、面白そうに笑ってから依頼人の名を口にした。
豊穣の八扇のひとつ、刑部省の――『刑部卿』鹿紫雲・白水(p3n000229)。
「彼、美食家なんだってね」
どこで噂を聞いたのか――諸国視察に赴いている『中務卿』等から話を聞いたのか、彼は秋の味覚を欲している、というのが今回の依頼内容である。
「それでね。君たち、『許可バッジ』を貰ったんだってね?」
刑部卿がわざわざローレットへと依頼を出したのは、そういうことらしい。
レンジャーたちから許可バッジを得ている者は、レンジャーたちに理由を話せば『特別指定区域』にだって入れる。バッジは信頼の証なのだから。
「刑部卿は『コノハナタケ』と言うきのこが欲しいのだって」
それは珍かなきのこで、仄かに梅の香りがするのだそうだ。
見た目は白色で、形は大きさは――と、雨泽は身振りを交えて書簡に書かれていた内容の説明をしていく。
「マツタケってあるでしょ? 見た目はアレに似てるみたいだよ」
けれどもマツタケよりも希少で、生える場所が限られている。
そしてバッジを得ているイレギュラーズたちは、探す必要はあるが、確実に生えている場所へいくことができる。
「依頼品を入手したら、後は自由にしてくれて大丈夫だよ。……あっ、森は火気厳禁だから、食べたい時は森の外で、だけは守ってね」
それじゃあ楽しいきのこ狩りに行こうか。
雨泽は垂れ布を揺らし、にっこりと笑うのだった。
- きのこの森探険 ~秋のきのこ狩り~完了
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月30日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC4人)参加者一覧(10人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●きのこを探して
「それじゃあ、通らせてもらうね」
「薄暗いのでお気をつけて……と、もうご存知でしょうけれど」
森の入口でバッジを見せた『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)に、以前会ったことのあるレンジャーが快く入り口を開いてくれる。
この森は普通の幻想の森より湿度が高い。だからこそ、キノコがよく育つのだろう。
ガーガーと変な声の鳥がバサバサと羽音を残して飛んでいくのを見上げた『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)の頭上で小鳥が暴れている。警戒しているのか、それともフリークライに聞こえた『不思議な声』が聞こえたのか……は、わからない。
(フリック イツノ間ニカ 毒キノコ 食ベテタ?)
それとも何かの胞子を吸ってしまったのだろうか。
けれども楽しげに歩く仲間たちに異常は見られない。
(キット 気ノセイ)
小鳥へと指を伸ばし、止まらせて。
森の奥へとイレギュラーズたちは進んでいく。
「あったあった。こっちだよ」
雨泽の先導で暫く進んでいくと、看板を見付けた雨泽が顔を上げて指差した。
ここから先は、一般客は立ち入り禁止区域。しっかりと区域分けのバリケードには鍵が掛かっており、レンジャーたちから預かったであろう鍵で道を拓いた雨泽が、さあどうぞとイレギュラーズたちを手招いた。
当然のことだが、此処から先で動くものに出会ったら『人ではない』はずだ。だって、禁止区域なのだから。それなのにもし、人が居たとしたら、それは――。
「密猟だなんて愚かな行いをする輩、そうそう居ない、だろうしねぇ」
両手の指先だけを合わせてことりと首を傾げて笑うのは、『闇之雲』武器商人(p3p001107)だ。
けれども、もし。
もし居たとしたら――可哀想なのはきっと、密猟者たちだ。
何故なら武器商人は愛しい人たちへのお土産のキノコが欲しいし、他の皆だって食べるためのキノコや依頼のためのキノコが欲しい。
それに――。
「密猟だなんて、断じて許しません!」
語尾をはねさせ、『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)が拳を握る。深緑の森で目覚め、森に生き、森に親しみ、森の恵みを受けて育った彼女には、森の自然の大切さがよく解っている。
少しの生態系や環境変化でがらりと森は姿を変えてしまうのだ。キノコなんて気まぐれの最たる例で、何日か前の湿度や温度で生え方ががらりと変わったりもする。この森はレンジャーたちが管理をして希少なキノコも育てているのに、愚かな密猟者が――と思えば、焼いてしまいたくなる。……なんて、火気厳禁の深緑の掟とは反することを考えてしまうのは、森ガチ勢だからだろうか。
「密猟者なぁ……」
正規に許可を取ればいいのにと『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)は思うが、この森の禁止区域の許可を得られるのはバッジを所持しているか、またはキノコを愛している大きな研究機関等であるか、である。高いキノコを売り裁きたいだけの輩が許可を申請したところで、許可が降りることはないだろう。
「もう少し行くと少し広い場所があるみたいだから、そこを拠点としてキノコ狩りをしようか」
「ちょっと待って。皆、止まって」
雨泽が指差したところで、『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)が静止をかける。Я・E・Dの頭上の大きな狼耳は探ろうと進行方向に向けられ、尾は警戒するように膝裏にぺたりと垂れさせていた。
「誰かいるよ」
「ん、密猟者か?」
静かなЯ・E・Dの声に対して、『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)の声は少し楽しげだ。どこの莫迦かは知らないが、後からの酒の肴くらいにはなるだろう。
「アノヒト達 バッジ無シ」
「そう、みたいだね」
「アイツ等がいるってことは、コノハナタケはこの辺にあるって事であってる訳?」
見つからないように樹――と思ったら巨大なキノコだった――の陰に隠れ、イレギュラーズたちは密猟者と思しき者たちの同行を伺う。何かを探している様子から『偲雪の守人』百合草 瑠々(p3p010340)が目的は一緒なのだろうかと観察をするが、彼等もウロウロと探し回っている様子。終いには匂いがしただの俺はしなかっただの見つからないことにイライラしだす始末。やはり珍かなキノコは簡単には見つからないのだろう。
「あっ……」
イラついた密猟者のひとりがキノコを蹴った。
ぼふんっと胞子を吐いたキノコがへにゃりとしおれてしまう。
「サクッとやっちまおうぜ」
「お山においたをする密猟者さんには、それなりに痛い目におうて貰わんと」
「そうだな、森をあまり荒らさずに片付けよう」
好戦的なバクルドの言葉に、『曙の花』蜻蛉(p3p002599)も『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も同意を示す。
悪い密猟者にはさっさと退場頂いて、キノコ狩りを楽しもう。
――――
――
不殺を心掛けていようとも、手練のイレギュラーズたちが取り囲めばあっという間にことは済む。意識を奪った密猟者たちは猿轡を噛ませた上で縄で縛り上げ、イレギュラーズたちはキノコ狩りを始めた。
「なあ師匠。アンタなんでキノコ狩り来たの? 珍しくない?」
「うん?」
瑠々の問いに、武器商人は小首を傾げる。その姿は見て解るだろう、と言っているように見えなくもない。
「小鳥と楽しもうと思ってね」
武器商人は常にヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)が視界に入るように行動している。手にしているメモも、彼が毒キノコをを取らないようにいつでも注意できるようにだ。触れるだけでも肌が爛れるキノコもあるから――
「小鳥、それは毒きのこだから取らないようにね」
早速、事前に学んでおいた知識が活きた。手を引っ込めるヨタカの姿に満足気に笑みを深める武器商人に、なるほどねと瑠々は嘆息にも似た笑みを零す。突然後ろからブスリとされる心配は要らなさそうだ。
「雨泽様、これは食べられますか?」
オレンジ色のウサギのようなキノコを見付けたニル(p3p009185)が見せに来る。
「うん、大丈夫」
「ではこちらは?」
食べられる、の籠へとオレンジのキノコを入れると、次は白くて細長いキノコを差し出して。
「それも大丈夫。……ニルは結構、慎重派?」
「食べられないって捨てるのは悪いことです」
それはそうだと雨泽は頷き、「僕にも解らないものは解らないけれど、気軽に聞いて」とキノコ狩りへと送り出す。
「劉さん」
次に雨泽を呼ぶのは、はんなりとした柔らかな声。今いくねと雨泽は移動して、屈み込んでいる蜻蛉の隣へ腰を下ろした。
「この子、毒々しいお色やけど……どうやろ?」
「これは少し危ないね。その隣の蛍光色のはいけるかな」
「劉さんは詳しいんやね」
「……恥ずかしい話なのだけれど、幼い頃に家出をしたら食うに困ってね。色々口にしたことがあるんだ」
イレギュラーズじゃなかったら死んでたかも、なんて何事もないように笑う。
人の姿を得る前の、ただの猫だった頃の蜻蛉にも、そんな経験があったのかもしれない。
「美味しく焼いて、美味しくいただきましょ」
加工して美味しく食べられるのは、人型の特権だ。
「本来ならば森の肥やしにする処なのですが」
「はは、物騒だな」
「いいえ。密猟者は森の敵です。なれば当然のことです」
茨でしっかりと締め上げて灸をすえた密猟者を見下ろすエルシアの瞳は冷たい。
「気絶してるし、きのこを探しに行こうぜ?」
「そうですね……」
「それにしても、梅のような香り、か」
誠吾が故郷の日本で梅を見たのは、もう何年も前の話だ。
梅と聞けばその白い花を思い浮かべられるが、香りはどうだったかな……と考えて出てきたのが梅干しだった。うん、男子高校生は梅の花の匂いをわざわざ嗅いだりしないからね。
(コノハナタケを見つけられなくても、皆にきのこを土産にしたいな)
この世界に来てから、誠吾は様々な人たちに世話になっている。慣れない土地で、いつの間にかかけがえのない存在となった人たち。たくさん持って帰ったら、きっと皆、笑ってくれる。特別なキノコじゃなくとも喜んでくれるのを知っている誠吾は、皆できのこ料理を囲むためにもたくさん採ろうと森へ分け入った。
――ちぃちぃちぃ。
フリークライの頭上で鳥たちクルクルと回っている。
「アッチ キノコ アッタ? ウン フリック 向カウ」
後ろを振り返れば、仲間たちも方方に散らばっている。超方向感覚&MASTER機能を搭載しているフリークライはちゃんとこの場へ戻ってこれるけれど、迷子の人が出たらしっかりと探してあげようと、鳥たちにも見ていてねと告げて。
「こんにちは。今日はお邪魔しとります」
木々の陰からこっそりと覗き込んでいたリスのような生き物を見付けた蜻蛉は、しゃがみこんでコノハナタケを探しているのだと声をかけてみる。けれど、コノハナタケというものは人間がつけた名前であって、動物には理解が出来ていない様子だ。
「白くて甘い香りで……、白と言うのはこのお色です」
近くに生えているキノコを指差せば、動物がついてきてと駆けていく。
「えーっと、キノコキノコ。ん、この桃色で甘い匂いはカンミモドキタケでそれに似た匂いだけど赤い斑点があるのはドクカンミモドキタケと、おぉこっちにも資料でしか見たことのないキノコがある」
ギフトの移動図書館からキノコ図鑑を取り出し、読みながらキノコ探しをしているルネは、随分と仲間から離れてしまっていることに気付いていなかった。
「……ん? ここはどこかな」
手元の本と視界の端に入るキノコしか見ていないのだから、迷子になっても当然である。
ああ、でも今はキノコの方が大切だ。
「まさか図鑑以外で見られるとは……持って帰っても良いだろうか? 研究したいな」
「年にひとつしか生えないような貴重なものは、もっと厳重に管理されていると聞いている。良いのではないか?」
しゃがみこんでキノコを右から、左からと覗き込み、悩むルネの頭上から声が降ってくる。こちらもメモ用紙を手に『保護者』に頼まれたキノコを探し回っていた、アーマデルである。
アーマデルの手には、何故だかにょきっと生えた美脚をジタバタしているキノコがあった。思わずそこに視線が行くルネにテテーンと掲げて「採った」と示したアーマデルの姿に、ひとつくらいなら構わないだろうとルネもキノコを採取した。
「あ! いい匂いがする!」
その香りを感じた時、思わずЯ・E・Dの耳と尻尾がピンと立った。
狼の名にかけて探してみせる! と意気込んでいたЯ・E・Dは、逸る気持ちで木々の間を分け入って、香りのする方へと鼻をひくつかせ――そうして辿り着いた場所にしゃがみ込む。
白くてマツタケのような形で、それでいて漂う梅の香。
宝物を見付けたように目を輝かせ、そっと両手で包み込んだ。
「コノハナタケ、見付けたよ!」
大きな籠を背負ったЯ・E・Dが大切にコノハナタケを抱えて報告すれば、イレギュラーズたちは俄然やる気をだしたようだ。
どっちで? の声には見付けた場所を案内し、もっと見つけようとЯ・E・Dは励む。コノハナタケ以外の食べられそうなキノコもポイポイと背中の籠へと放り込み、狩人はキノコ狩りだって得意なんだよと得意気だ。
「こっちにもあったぜ」
次に声を上げたのはバクルドだ。
「この茸は何にして食うのがうめぇんだろうな」
シンプルに焼き茸、酒蒸しに土瓶蒸し、ソテーなんかもキノコは美味しい。味を濃いめにすれば酒が進むが……香りのあるキノコは香りを楽しむ食べ方が良いだろうか。
「ウチはキノコの見分け方がわからんけど……これであってる?」
梅の匂いがするキノコを見付けたと、瑠々もコノハナタケを手にして。
森の匂いや土の匂いに鼻が慣れてしまってくると、鼻を近づけてもよくわからなくなる。けど、確かに梅の匂いがするよなぁとバクルドに見せれば、ふたりの手にあるキノコは見た目も似ており、間違いないようだった。
そうして暫く経てば、あちらこちらで『見付けた』と声を上げた笑顔のイレギュラーズたちが戻ってくる。傷がつかないように一度集合スペースへとコノハナタケを置いて、そうしてまたもっと探すぞと森へと戻っていくのだ。
「これは……食べられるキノコよね? こっちは……あっ、食べられないやつかしら」
特徴を聞いたキノコのみにターゲットを絞ったセチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)も、キノコ狩りを楽しんでいる。イレギュラーズたるもの、動かねばならぬ時に動くためにも、休息は必要だ。
「あれ、これは……」
ここでもひとつ、『見付けた』の声が上がるのだった。
「刑部卿ヘノ オ土産分 フリック 任セル」
フリークライはあらゆる植物の理想の土壌となるギフトを有している。コノハナタケを生やしておけば、届けるまでに鮮度が失われることはない。
「それじゃあ、よろしくお願いしますね」
「ウン 任サレタ」
エルシアがそっとフリークライにコノハナタケを手渡せば、にょきっと生えた。なんだか少し面白くて、可愛いようにも思えて、エルシアはクスクスと笑った。植物に優しいフリークライは森の仲間だ。
「雨泽さま、みていただけます、か?」
メイメイ・ルー(p3p004460)の手には、取っ手のついた可愛らしい籠。
「たくさん採れたね、メイメイ」
「どれも、かわいくて」
「……あ。メイメイ、おめでとう」
知らない内に籠に入れていたコノハナタケ。それを摘み上げた雨泽にメイメイは微笑んで、彼へ譲る。
「僕が貰っても良いの?」
「はい。かわいくて、たのしかったです」
胸はもう、いっぱいだから。
●おいしいきのこ
キノコの採取を程よく終えたら、楽しい実食の時間である。
密猟者たちをレンジャーたちに引き渡せば、彼等は驚き、そして感謝の言葉とともに七輪を快く貸してくれた。良かったらと干し肉もくれたのはおまけだろう。
「五個も貸してもらえたね」
「ヒヒ、大所帯だからねぇ」
ぱちんと指を鳴らしてルネが竹炭に着火をすれば、武器商人も蒼い炎に着火を願う。
「他の材料も用意できたら良かったのだけれど」
鳥や獣等の生き物は僅かに見かけたが、この森で狩って良いのはキノコだけなのである。生態系のバランスだったり、珍しいキノコを育てるために必要な動物等が放たれているらしく、残念だとЯ・E・Dが愛銃を撫でた。
しかし、準備の良い者も居る。
「少しだが食材を持ってきたんだ」
そう口にした誠吾が荷物から野菜を取り出し、七輪と一緒に借りた鍋でスープを作り始める。具材は葉物とキノコ、干し肉だ。
「刑部卿 欲シイ コノハナタケ 足リル?」
「多ければ多いほど嬉しいみたいだけど、多分、大丈夫じゃないかな」
高値(こうじき)のキノコだが、それぞれ一本ずつ食べるか持ち帰るかしても大丈夫な量は採れている。
「それやったらうちはお持ち帰りさせて貰います」
「我(アタシ)もそうしようかね」
「オレも主に食わせたいからそうするか」
「俺も持ち帰ろう」
食べさせたい人の顔をすぐに思い浮かべた蜻蛉、武器商人、瑠々、アーマデルはそう口にする。コノハナタケでなくとも、キノコはたくさん採れている。特別なものは、食べさせてあげたい人とともに食べるのが一番だ。
「フリック 主ノ オ墓ニ」
食べさせたい相手が鬼籍に入っていたって、お供えすることができる。墓前で焼けば煙が天へ昇り、きっとフリークライの大切な人の元へも届くことだろう。
特に持ち帰る予定の無い者が折角だから味わってみようと七輪に乗せると、ふんわりと馥郁たる梅の香りが辺りに満ちた。鼻を近づけて嗅ぐよりも、ずっと柔らかく、優しい香りだ。その香りに誘われるように非番のレンジャー等がレンジャー小屋から顔を出し、俺らもいいか? と酒瓶を揺らしてキノコの試食会へと加わった。
「コノハナタケは最初に食べるから!」
もうずっと食べる気満々だったЯ・E・Dは七輪の上のコノハナタケから視線を外さない。美味しそうな香りは、どんな味がするのだろうと想像を掻き立ててくれた。
「はい、メイメイ。僕と半分にしよう」
「えっ、雨泽さまこれは……」
焼いて梅の香りが増したコノハナタケは、先刻森でメイメイが譲ってくれたものだ。
「皆で食べたほうが美味しいってニルがよく言っているしね」
ね? とニルへと視線を向ければ、肉厚のキノコをはふはふと頬張ったニルが「はい、とってもおいしいです!」と笑みを浮かべた。
「はい、紫月……焼きたてだよぉ……」
「ありがとう、小鳥……」
「調味料は何にしよう……? 」
持ち込んだヨタカは調味料を前に首を傾げる。どの調味料もきっとキノコにあうだろうから、どれから行こうか迷ってしまうのだ。
それから武器商人のために飯盒で温めておいた熱燗も差し出せば、武器商人の口元が柔らかに緩んだ。
「最近は寒くなってきたから、熱いきのこも熱燗も美味しいねぇ……ふふ」
「茸にゃぁしっかり火を通せよ」
武器商人とは別に、手酌で酒を注いでぐびっといったバクルドが年長者らしく注意を促す。毒性がなかろうが、キノコは菌である。腹を下したくなければ火を通せと口にしたバクルドの言葉に、パチパチと爆ぜる七輪の上から漂う香りにトングを揺らしていたルネがトングを引っ込める。
「こちらはそろそろ食べ頃のようですよ」
七輪の上には、食べられるキノコのみが載せられ、香ばしい香りを放っている。本当は密猟者たちに『改心』させたかったエルシアだが、彼等はレンジャーたちに引き渡し済み。少し残念に思いながらも、彼等は然るべき裁きを受けるはずだからと気を取り直して串を挿したキノコへと塩を振った。
「モグモグ。美味。鳥サン達モ 食ベル?」
鳥たちのために味付けをせずにキノコを焼いてあげる。小さくちぎりながら冷ましてフリークライの大きな掌へと乗せれば鳥たちはチュンチュンと喜びながらそれを啄み、その愛らしい姿にメイメイは焼きキノコを頬張るのも忘れて眺めてしまう。
「ん。塩とすだちでも美味しいねぇ」
武器商人が食べてご覧よとヨタカに食べさせる。
「豊穣のお醤油もよう合いますね」
「この味がまた酒に合うんだよなぁ! あぁ旨え!」
酒がイケる者たちは、バクルドの持ち込んだ酒を振る舞われて舌鼓。
「うーん。やっぱりまだよくわかんないな」
「ウチはまだ飲めねえしな……」
今年二十歳になった誠吾はまだそれ程酒を口にしたことはなく、来年までお預けの瑠々には美味そうに酒を口にする大人たちの顔を見て良さがわからんと口にして。
「茶葉をあれこれ持ってきたから、どうだ?」
「わたしもそちらを頂ける?」
Я・E・Dの声に、勿論! と返すのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
きのこがたくさん採れました!
刑部卿はコノハナタケ以外のキノコも好意で貰ったので、ホクホクです。
MVPは鮮度が保たれたコノハナタケに刑部卿が喜んでいたので、あなたへ。
きのこおいしい、やったー。
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
まだ秋!? 秋ですよね! きのこ狩りにいきましょう!
●目的
きのこ狩り
密猟者退治
●シナリオについて
場所は幻想王国内の森ですが、依頼人は豊穣の刑部卿なので、名声は豊穣です。
『許可バッジ』を見せれば森に入れます(無くても同行イレギュラーズは入れます)ので、レンジャーたちに見せて森に入り、きのこ狩りをしましょう。
巨大なきのこ等が生えている森を探索していると、密猟者に遭遇します。見るからに悪そうな人たちです。密猟者たちはイレギュラーズからしたらとても弱いので、えいっとすればやっつけれます。
火気厳禁です。
●きのこ!
色々な不思議なきのこが生えています。
ぐるぐると迷わすきのこ、白く光るきのこ、うさぎのような耳の生えたきのこ、お菓子のような香りの水で溶けるきのこ……等等、どれも採って大丈夫です。採りすぎない範囲なら!
今のシーズンは刑部卿が求めている『コノハナタケ』というきのこがありますが、とってもレアなので中々見つかりません。梅のような香りがするきのこなのですが……森には様々なきのこや草木花が生えておりますので、匂いが混ざって難易度が上がっています。
依頼分以外の収穫したきのこは持ち帰って大丈夫です。
皆ですぐ食べたい! 等ありましたら、森の外のレンジャー小屋で七輪が貸し出されます。
●密猟者 3名
へっへっへ、ボロ儲けしてやるぜー。
貴重なきのこ(コノハナタケ含む)が生息している区画に入り込み、乱獲しようとしている悪い人たちです。根こそぎ持っていき、お外で高値で売ろうとしています。
えいっとすればやっつけれます。殺さないように気を付けましょう。
●サポート参加
きのこ狩りを行えます。イベシナ感覚でどうぞ。
同行者さんがいる場合は、お互いに【お相手ID】or【グループ名】を記載ください。一方通行の場合は描写されません。
シナリオ趣旨・公序良俗等に違反する内容は描写されません。
●同行NPC
劉・雨泽(p3n000218)が同行します。
戦闘面は縛り上げたり等のサポート面で動きます。
きのこは特別好きではありませんが、毒があるかないかの判断はできます。
それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。
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