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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>氷雪の魔種 白き武装を纏いて

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●列車砲確保を阻止すべく
 部屋の中央にある机の上に、鉄帝の地図が広げられている。その地図を眺めるエカチェリーナ・ミシェーリは普段にも増して冷たく、厳しい表情をしていた。配下の将校は、萎縮しつつただエカチェリーナの言葉を待つばかりである。
「――ついに、南部戦線の者共が列車砲を手に入れようとしている。由々しきことだ」
 静かに、冷たく、エカチェリーナが告げた。
 バーデンドルフ・ラインを拠点とする南部戦線ことザーバ派は、今やゲヴィド・ウェスタンの攻略に至らんとしていた。その最大の目的は、ゲヴィド・ウェスタン駅にある列車砲である。当然、新皇帝バルナバスに与するエカチェリーナら新皇帝派としては、ザーバ派による列車砲の確保は阻止したいところだ。
「南部戦線の者共に列車砲を確保されるぐらいならば、破壊する。そのために、私が出るのはもちろんとして――」
 エカチェリーナは、目の前の将校達をぐるりと見回す。そして、問うた。
「別働隊として、『コランバイン・ウェポンコンテナ』を迂回させ派遣する……我こそは、と言う者はいないか?」
 『コランバイン・ウェポンコンテナ』の単語に、将校達はざわめいた。コランバインとは、エカチェリーナらが開発中の試作型パワードスーツだ。そのコランバインと武器庫としてのコンテナを一体化して運用しようというのが、『コランバイン・ウェポンコンテナ』である。
 コランバイン自体が希少であり、ウェポンコンテナに至っては輪をかけて希少だ。当然、コランバイン・ウェポンコンテナを運用して別働隊となる者の責任は重大であるが、一方で、この任を成し遂げればその武功は大きなものとなる。
「その任、ぜひ私に!」
「いえ、私めに!」
 次々と将校達が名乗りを上げる中、エカチェリーナは一人の青年将校を選んだ。
「ウラノフ大尉。この任、貴様に任せよう」
「ははっ、ありがたき幸せ!」
「我々は北より、ゲヴィド・ウェスタンに迫る。だが、我々は南部戦線の者共によって止められよう。
 貴様は西へと大きく迂回し、南部戦線の者共の目がこちらに向いているうちに、ゲヴィド・ウェスタンを急襲せよ」
「ははっ!」
 ウラノフ大尉は恭しく頭を下げ、重大な任務を受けた栄光を噛みしめた。

●陽動なれど、陽動のみに非ず
 北から迫るエカチェリーナらの軍勢に対し、ザーバ派は迎撃の軍を出した。ザーバ派からの要請により、イレギュラーズもその軍に加わっている。両軍は、ゲヴィド・ウェスタン北方の郊外で対峙。
「南部戦線の者共は、やはり迎撃の軍を出してきたか」
 優雅な曲線美を持つ、全高四メートルほどの白いパワードスーツ『フレイア試作型』の中で、エカチェリーナは満足げに独り言ちた。これで、目論見どおりに陽動は成ったとエカチェリーナは確信する。
 だが、わざわざ試作中の専用パワードスーツまで持ち出して、自ら軍を率いここまで至ったのだ。ザーバ派と、それに与するイレギュラーズ次第では、陽動で終わらせるつもりはない。
「私に続け! 奴らを突破し、ゲヴィド・ウェスタンに雪崩れ込むぞ!」
 ゴウ、と吹き荒れる猛烈な吹雪を『フレイア試作型』に纏わせながら、エカチェリーナは先頭を切って進撃する。それに新皇帝派軍人が、天衝種が、次々と続いた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体シナリオ<大乱のヴィルベルヴィント>のシナリオをお送りします。
 ゲヴィド・ウェスタンの列車砲をザーバ派に確保されるわけにはいかないと、魔種エカチェリーナが動き出しました。このシナリオでは、そのうち陽動として動いたエカチェリーナらとの戦闘を扱います。
 エカチェリーナらは陽動とは言え、止める者がいなければ当然列車砲を破壊しにかかります。
 列車砲を守るため、ゲヴィド・ウェスタンに迫るエカチェリーナを撃退して下さいますようお願いします。

●成功条件
 エカチェリーナの撃退

●失敗条件
 エカチェリーナの、ゲヴィド・ウェスタン駅への突破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ゲヴィド・ウェスタン郊外。天候は曇り。時間は昼間。
 足下には雪が降っていますが、戦闘に関するペナルティーは発生しないものとします。

●戦場MAP
 至スチールグラード
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至ゲヴィド・ウェスタン

A:イレギュラーズ
B:ザーバ派軍人(各25)
C:エカチェリーナ&護衛の新皇帝派軍人(10)
D:新皇帝派軍人(各10)&ストリガー(各10)&ラルグ(上空、各2)

※あくまで、ざっくりとしたイメージです。
 正確な距離関係を示しているわけではありません。
※イレギュラーズ達の初期配置は基本的にAですが、
 ザーバ派軍人を指揮したり支援したりしたい場合はBにいても構いません。

●エカチェリーナ・ミチェーリ&PSPJFP『フレイア試作型』 ✕1
 新皇帝派の鉄帝軍大佐にして、憤怒の魔種です。しかし、その憤怒は心の中に堅く押し込めており、表面上は属性が憤怒であるとは想像できないほどに冷徹です。
 かつてはザーバ派の戦力を測るためだけに、シンデンの街を急襲して占領し、住民を残らず柱に磔としました。また、<トリグラフ作戦>妨害のために配下の魔種を派遣したこともあります。
 今回、エカチェリーナはロボのようにも見えるパワードスーツ『フレイア試作型』を装備――と言うよりも搭乗と言った方が近いのですが――しています。『フレイア試作型』が稼働不能となった場合、緊急脱出装置が作動してエカチェリーナは戦線離脱します。
 『フレイア試作型』はエカチェリーナの能力を全体的に増幅・強化しています。そのため、エカチェリーナの能力は隙のないハイバランスとなっています。

・攻撃能力など
 ブリザード・ソード・PS 物至単 【凍結】【氷結】【氷漬】【出血】【流血】【失血】
  パワードスーツ用サイズの、吹雪の力を宿した剣です。
 薙ぎ払い 物至範 【凍結】【氷結】【出血】【流血】
 ブリザードストーム 神超貫 【万能】【弱点】【鬼道】【凍結】【氷結】【氷漬】【絶凍】
  ブリザード・ソード・PSから、直線上に猛烈な吹雪を吹かせます。
 ビームガン 神遠単 【弱点】【連】
 吹雪の魔法 神/中~超/範~域 【鬼道】【凍結】【氷結】【氷漬】【絶凍※】
  吹雪を起こす魔法です。距離と範囲は撃ち分ける事が出来ます。
  【絶凍※】は、範での使用時のみです。また、範で使用した方がダメージも上昇します。
 自律行動型ビーム砲 神/至~超/単~域 【多重影】【変幻】【弱点】
  多数の自律行動するビーム砲台を放ち、敵を攻撃します。距離と範囲は撃ち分ける事が出来ます。
  威力、多重影、変幻の数値は、攻撃範囲が狭いほど大きくなります。
 機体を覆う吹雪
  フレイア試作型の機体は、猛烈な吹雪に覆われています。このため、毎ターン開始時、エカチェリーナから10m以内の距離にいる者は、【鬼道】【凍結】【氷結】【氷漬】【絶凍】の付いた神秘攻撃を受けるものとして処理されます。
  この効果はパッシブであるため、エカチェリーナはターン中に本来の自分の行動を行うことが出来ます。
 BS緩和
 【封殺】耐性
 緊急脱出装置

●新皇帝派の軍人 ✕50
 エカチェリーナ配下の、新皇帝を支持する軍人達です。
 能力はピンキリですが、攻撃力、防御技術、生命力が高く、回避、反応は低い傾向にあります。

・攻撃能力など
 剣 物至単 【出血】
 銃 物遠単

●天衝種(ストリガー✕40、ラルグ✕8)
 バルナバスに従う魔物達で、このシナリオではエカチェリーナによって統率されています。

・攻撃能力など(ストリガー)
 燃え盛る爪 物/至~近/単or列 【火炎】【業炎】

・攻撃能力など(ラルグ)
 嘴 物至単 【火炎】
 体当たり 物超単 【移】【火炎】【業炎】
 ファイアブレス 神遠貫 【火炎】【業炎】
 飛行

●ザーバ派の鉄帝軍人 ✕50
 エカチェリーナらを迎撃するべくイレギュラーズ達と共に送り出された、ザーバ派の軍人達です。
 能力傾向としては、基本的に新皇帝派の軍人と同様です。また、1:1なら新皇帝派の軍人とも天衝種ともそれなりに戦うことが出来ます。
 彼らの動きについてイレギュラーズ達から提案があれば、余程無茶なものでない限りは基本的に乗ってくれます。また、イレギュラーズ達の誰かが彼らを直接指揮することも可能です。その場合、指揮できるのはイレギュラーズ1人につき左翼右翼のいずれか片方となります。

●サポート参加について
 今回、サポート参加を可としています。
 シナリオ趣旨・公序良俗等に合致するサポート参加者のみが描写対象となります。
 極力の描写を努めますが、条件を満たしている場合でも、サポート参加者が非常に多人数になった場合、描写対象から除外される場合があります。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●エカチェリーナ関連シナリオ(経緯を詳しく知りたい方向けです。基本的に読む必要はありません)
 『 <総軍鏖殺>雪の街に立つ、無数の柱』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8438
 『<総軍鏖殺>マキーホ平原会戦<トリグラフ作戦>』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8563


 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>氷雪の魔種 白き武装を纏いてLv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポート6人)参加者一覧(10人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
滅刃の死神
武器商人(p3p001107)
闇之雲
マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
輝奪のヘリオドール
フロイント ハイン(p3p010570)
友人/死神

リプレイ

●両軍対峙
 列車砲を破壊せんと、ゲヴィド・ウェスタンに北から迫る新皇帝派軍。その軍を迎撃するべく、イレギュラーズ達とザーバ派の軍はゲヴィド・ウェスタン北方の郊外で対峙していた。
「――陽動、ね。かといって、放っておくわけにはいかないのが大変なところだねぇ」
「陽動と判っていても止めざるを得ないね……あんなものを好き勝手暴れさせるわけにはいかない」
 防御陣地の構築を終えた『闇之雲』武器商人(p3p001107)が、新皇帝派の軍勢を見やりながら独り言ちると、『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)が頷いた。百に及ぶ軍勢が、ザーバ派の目を釘付けにするための陽動であることは、既に露見している。
 だが、武器商人やマルクの言うとおり、陽動だからといって放置は出来なかった。特に魔種が先頭を切って率いていることもあり、ゲヴィド・ウェスタンまで進まれれば西からの本命を止めたとしても、好き勝手に暴れられて列車砲や街に被害が及びかねない。また、この軍を率いる魔種エカチェリーナ・ミシェーリ大佐としても、迎撃の軍が取るに足らなければゲヴィド・ウェスタンまで進軍する気は満々であった。
「大丈夫、僕達ならやれる」
「そうだねぇ。しっかり、追い返してあげようじゃないか」
 如何に魔種が相手であろうとも、マルクも武器商人も魔種相手の戦闘は幾度となく経験済みである。自らの言を信じ込ませるように言うマルクに、武器商人は笑いながら頷いた。
「自分は陽動で部下に本命を任せるとは、上司の鑑だな」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はそうは言ったが、その目論見を通させるつもりはない。イズマは陽動も本命も"どちらも潰しに行く"つもりであり、この戦闘が終われば西からの本命に対処する仲間達と合流する手筈になっていた。
(俺の行動力を舐めるなよ? 列車砲は絶対に渡さない。俺達で勝ち取るぞ!)
 イズマは、静かに闘志をその身に滾らせた。
「陽動、の様な動きですが勢いが有り過ぎますね……?
 狙えるなら突破を考えているのでしょうが、させはしませんとも!」
 『夜を裂く星』橋場・ステラ(p3p008617)は、新皇帝派軍の勢いからエカチェリーナの目論見を察している。当然、そんなことをさせるつもりはステラにはなかった。
 それにしても、とステラは敵軍の先頭を進む白いパワードスーツを見ながら思う。
「吹雪を纏ったロボ……アレ、人が乗ってるんですか?」
「それも、憤怒の魔種が、ね」
 口をついて出たステラの問いに、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が答えた。この白いパワードスーツ――フレイア試作型こそ、この軍勢を率いる憤怒の魔種エカチェリーナが装備――と言うよりも搭乗と言った方が近いが――するパワードスーツなのだ。
「パワードスーツにしろ何にしろ、厄介極まりないですね」
「確かに、なかなか強敵だわね。数も多いし、気合を入れて頑張らないとね! いくわよ!」
 難しい顔をするステラの背中を、イナリはパァン、と叩いて激励した。
(憤怒の魔種。それが鉄帝軍大佐……もう、本当にこの国は変わってしまっているのですね)
 ステラとイナリの会話を聞いた『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は、鉄帝の変貌を改めて認識し、悲しみを感じずにはいられなかった。
 本来マリエッタとしては、国の中での諍いに何かしらの助力をするのは、気が引けるところである。だが、この変貌が魔種の手によるのであれば、そうも言っていられず止めなければならないと感じるところであった。
(エカチェリーナ……憤怒の魔種と聞いていますが、怒りに満ちている様子は感じられません。
 寧ろ怒りとは逆に、冷静さと落ち着きを常に保っているように感じます。
 ――しかし、それは怒りの感情を持っていないのではなく、蓋をしているだけなのでしょう。
 あの氷のような冷徹さの下には、マグマのように煮え滾る怒りが渦巻いていて、噴火する時を待っている)
 『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)は、これまで戦ってきた他のイレギュラーズ達の話と、フレイア試作型の醸し出す雰囲気から、エカチェリーナと言う人物をそう判断した。この考察は、実際のところ的を射ている。
 故に、憤怒を表出させずに抑制できているエカチェリーナを、ハインは危険だと感じている。
(静から動への瞬発が大きな力を生むように、冷静さから憤激への爆発が生み出す力は計り知れません。
 寸分も油断しないよう、全力で相手をさせていただきます!)
 ゴクリ、と唾を飲み込み、気合いを入れながら、ハインは大鎌「テートリッヒェ・リーベ」を手にして構えた。
(ただでさえ強力な魔種にパワードスーツという重装備。おまけに吹雪まで纏ってると来たか。
 ……戦争状態だ、割り切らないと犬死するだけならば)
 吹雪を纏うフレイア試作型と、その後方に展開する軍を眺めつつ、『真実穿つ銀弾』クロバ・フユツキ(p3p000145)は「ゼーレトリガー・滅式」と「鬼哭・紅葉」の二刀を手に取った。
「氷雪を纏うのならばそれを征するまで。クロバ・フユツキ――この剣は冬を尽くすもの也」
 白い息を大きく吐きながら、クロバは気勢を上げた。

 ザーバ派の軍は、中央のイレギュラーズ達が突出し、そこから左右の後方にザーバ派の軍人達がそれぞれ左翼右翼として陣を構えている。その援護と指揮のため、イレギュラーズ達の中から『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が右翼に、そして『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が右翼にいた。
「敵は大軍。見慣れぬ指揮官。指揮下の方々は不安でしょう。だから伝えておきます。
 ――オリーブ・ローレルは皆さんと共にある。共に戦い、共に命を賭ける。
 そして、共に勝利するつもりだと」
 右翼の先頭で、オリーブはザーバ派軍人達に向かって演説を行った。オリーブの側には、彼が連れてきたと言うイレギュラーズらがおり、その事実がオリーブの言を真実と信じさせた。イレギュラーズ達が共にあるとなれば、ザーバ派軍人達の士気が高まらないはずがない。
 右翼のザーバ派軍人達は、大歓声を以てオリーブに応えた。
(――他国から見りゃ内戦だろうが、こりゃまるで戦争だな。鉄帝国内に蔓延る魔種の数も、以前より確実に数が増している。
 完全な魔種大国になっちまう前に、何とかしねぇとやべぇぞこれ)
 『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は、苦虫を噛み潰したような表情で、頭をガリガリと掻いた。とてもこんな危惧は口に出して聞かせられないが、とりあえずその危惧はさておいて、左翼に作戦を伝えなければならない。
「俺が敵の右翼を引き付けるから、皆はその敵を側面から攻撃してくれ。
 引き付けから漏れた敵は、必ず一体につき二人で当たって、数の優位を確保するんだ。
 そして、全体でこちらが優勢になったら、一気に包囲殲滅と行こう」
 アルヴァの具体的な指示に、左翼のザーバ派軍人達は「おう!」と頷きながら、その指示を心に刻んだ。

●激突
 両軍の戦闘は、ザーバ派の側が防衛陣地を構築したこともあり、進撃して来た新皇帝派の軍をザーバ派の軍が防衛陣地を拠点として迎撃する形で始まった。まず、中央のイレギュラーズ隊とエカチェリーナ隊が激突し、遅れて左右両翼が激突する。
「雪崩が全てを飲み込めると思うな――来い、この戦線は苛烈だぞ!」
「――ぬうっ!」
 銀髪紅眼に変貌し、鬼気を漲らせたクロバは、殺気と共に斬撃を放つ。その斬撃は、回避行動を取ったフレイア試作型もろとも、その後方にいる護衛達をも斬り裂いた。
「鉄帝の吹雪よりも冷たい連撃だ、しかとその身に刻み込め!!」
 さらにもう一閃、苛烈に、容赦なくクロバは斬撃を放つ。その姿は、かつての名乗りである死神を彷彿とさせるものであった。
「さすが、イレギュラーズと言っておこうか。だが!」
 しかし、エカチェリーナも負けてはいない。多数の自律行動型ビーム砲を展開し、クロバとその周囲にいるイレギュラーズ達を、ビームで貫いていく。
「この戦いは、彼らをこれ以上進ませぬもの。だから、ある種正しき戦いです。行きましょう、皆さん」
 それが天からの啓示であるかの如く、マリエッタが告げた。その言葉は、仲間達とそしてマリエッタをも、奮い立たせた。
「熱砂よ、砂嵐となって彼らに纏わり付いて」
 マリエッタは、エカチェリーナの護衛らを出来るだけ多く巻き込むように、ラサを思わせる熱砂の砂嵐を巻き起こした。猛烈に吹き付けてくる砂嵐による息苦しさと、灼けるような熱が護衛達を襲う。そのうち、クロバの剣閃を受けた二人ばかりが力尽きて倒れた。
 イズマの響奏術が、味方を祝福するハーモニーを奏で出す。その音色は、フレイア試作型の周囲を吹き荒ぶ吹雪からの護りとなった。これで、この吹雪によって動きを鈍らされることは考えなくて済む。
「前回は見逃したが、今回はお前の相手をしに来たぞ。ここは突破させない!」
「見逃されたのは、どちらであろうな?」
 さらにイズマは、鉛を奏でる楽団を幾隊も召喚し、弾幕の嵐をエカチェリーナや護衛達に浴びせかけた。護衛達のうち、さらに二人が耐えきれずに斃れる。
「畳みかけよう――貴方達の運命は、漆黒に塗り替えられた!」
「――くっ!」
 マルクはそう宣言しつつ、混沌を漂う根源的な力に働きかけて、エカチェリーナと護衛達の運命を穢れた泥で黒く覆い尽くした。良からぬものを感じ取ったエカチェリーナはフレイア試作型の中でそう呻いたが、周囲の護衛達はそれに気付くこともなく、運命を塗り替えられたことで生命力を削られていった。既に、限界を迎えている者もいる。
「まとめて、吹き飛ばすわよ!」
「ぐおおっ!?」
 自身を強化するチートコードを起動したイナリは、目にも留まらぬスピードでエカチェリーナの隊に突入し、二往復、つまり都合四度、エカチェリーナの隊を貫いた。その都度、護衛達は弾き飛ばされ、中には力尽きる者も出た。
「さようなら。あなたは、もう終わりです」
「――!?」
 イナリに弾き飛ばされた護衛の一人に向けて、ハインはテートリッヒェ・リーベを横薙ぎに振るった。全然刃が届かないところから鎌を振るわれて終わりだと言われた護衛は、最期の瞬間にようやくハインの言葉の意味を理解した。護衛の側に出現した不可視の斬撃が、その首と、そして生命を刈り取ったのだ。
「キミにコレは、もったいないんだけどねぇ。ヒヒ!」
「がっ……」
 残る護衛は、二人。武器商人はそのうちの一人の側まで移動すると、全身の魔力を用いて神滅の魔剣を創造した。護衛を仕留めるには魔力の消費がもったいなくはあるが、ここまで来たなら速やかに排除を完了させておきたいところであった。
 魔剣の刀身で胸部を貫かれた護衛は、ゴポッ、と口から大量の血を吐いて息絶えた。
「これで、最後ですね」
「うわあっ! 来るな、来るなあっ!」
 ステラは、自律自走式の爆弾を最後の護衛に向けて走らせた。迫り来る爆弾に護衛は来るなと叫び続けるが、それを爆弾が聞き入れるはずもない。爆弾は護衛の元までたどり着くと爆発し、これでエカチェリーナの護衛達は全滅した。

「俺の首が欲しい奴はいるかい? ――取ってみろよ」
 新皇帝派軍の右翼が防御陣地に取り付いたタイミングで、アルヴァが陣地から飛び出して低空飛行し、右翼のほぼ中心から挑発を仕掛けた。新皇帝派軍右翼は、軍人達も、ストリガーも、ラルグも、ほぼ全てに近い数が一斉に、敵意を込めた視線をアルヴァに向けた。
「敵の目前で背中を向けるなんて……迂闊ね!」
 最も自陣に近いラルグがアルヴァの方を向いたのを見て、『砂国からの使者』エルス・ティーネ(p3p007325)が月の魔力を秘めた一撃を放った。天衝種の中でも、空を自由に飛び回るラルグは早々に撃破しておきたいところであり、そのラルグが背を向けたのは好機であった。
 背後からの一撃を受けたラルグの敵意は、アルヴァからエルスに向いた。ラルグはエルスに報復するべく体当たりを仕掛けんとする。だが。
「素直な心、反省の心、謙虚な心、奉仕の心、感謝の心!」
 刑務所五訓を唱え、それによって看守たる自身を再認識した『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)が、人々を護ると言う意志と共に振るった鞭「彼女を受け継ぐ貴女の武器」によって叩き落とされ、息絶える。
「助かったわ――さ、チャンスよ。どんどん攻めていきましょ」
「でも、軍人だからって命を投げだしたりしないでよね! 全員で生還しましょ!」
 セチアに礼を述べたエルスが、左翼のザーバ派軍人達に呼びかけた。眼前の敵は、そのほぼ全てがアルヴァの方を向いており、彼らには背中を見せているのだ。これは、逃すべからざる好機であった。
 だが、いくら軍人とは言え無理をして命を落とされるとセリアとしては辛い。そのため、セリアは命を投げ出すような戦い方を戒め、生きて帰還することをザーバ派軍人達に呼びかけ、意識させた。

(来ましたね。十分に引き付けて……今です!)
 防御陣地に迫る敵左翼との距離を慎重に計っていたオリーブは、敵左翼が射程範囲内に入ったと判断すると、鉛を奏でる楽団を召喚して弾幕を浴びせかけた。敵左翼の前面にいる新皇帝派軍人やストリガー達の身体に、銃弾の痕が次々と刻まれていく。楽団の掃射に憤った敵左翼は、防御陣地を突破せんと迫ってきた。
「ぶはははッ! オメェさん達、俺を放っておいていいのかい?」
 だが、駆動泉鎧「牡丹・御神酒」を纏った『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が防御陣地の前に飛び出して、天狼盾「天蓋」を構えれば、敵左翼は防御陣地の突破よりもゴリョウの撃破に血眼となった。力強い声、鋭い眼光、そして何より重厚な体格と武装が、防御陣地を突破するよりもゴリョウを倒さねばならないと新皇帝派軍人や天衝種の本能に警鐘を響かせたのだ。
(鉄帝の帝政にとっちゃこんなの制度的な自滅というか、なんというか。
 そもそも、このサンディ様はかわいいレディの頼みしか聞かねえってことになってんだけどさぁ……。
 オリーブ・ローレルって奴がさぁ……)
 オリーブによってこの戦闘に参加することになった『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)は、味方の陰に隠れて内心でぼやきつつも、自陣の上空を取らんとするラルグに向けて魔血から創造した刃鞭剣を振るった。生命力を破壊力に換えて振るったその一閃は、ザーバ派兵士の陰から放たれたこともありラルグには対応出来なかった。刃鞭剣から飛翔した斬撃は、ラルグをその前後で両断した。
(――俺もつくづくお人よしだよなぁ。鉄帝の皇帝でもねえのにさぁ)
 ラルグを斃した後も、サンディの内心のぼやきは続いていた。
(やってやろうじゃんオリーブさん! さあ、狩りを始めようか!)
 サンディよりはやる気満々な様子の『深き森の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は、そのやる気を隠匿しつつ、日陰の外套を纏って雪の積もる地面に溶け込んでいた。狩人は、獲物に気配を気取られるような下手は打たないのだ。
(――今だ!)
 ラルグの一体がゴリョウに攻撃を仕掛けたその瞬間、ミヅハが動いた。解体用のナイフで連続して斬りつけ、ラルグを仕留める。そしてミヅハは、また雪模様の地面の中に溶け込んでいった。
(何とか、なりそうですね)
 元々攻勢に出て敵の攪乱に動くつもりであったが、急遽方針を防御陣地を拠点とする迎撃戦に方針を転換したオリーブは、内心でホッと胸を撫で下ろした。防御陣地により地の利を確保していることや、ゴリョウ、サンディ、ミヅハらの活躍もあって、右翼の戦闘は優位に進みつつあった。

●エカチェリーナ、逃亡
 護衛を全て倒し、残るはエカチェリーナのみとイレギュラーズ達は攻めかかったが、エカチェリーナは魔種を率いる魔種だけあってか強敵だった。イレギュラーズ達は、駆動系や装甲の継ぎ目を狙ったり、スプラッシュボールによるカメラアイ潰しを試みたりとフレイア試作型への対処を様々に工夫したが、エカチェリーナの方もそれを察しているのかなかなか試みは捗らなかった。カメラアイが潰れた以後も、心眼でも持っているかのように的確に、エカチェリーナは攻撃をイレギュラーズに命中させ、イレギュラーズからの攻撃の多くを回避し続けた。
 そうしている間にエカチェリーナの範囲攻撃によって、イレギュラーズ達の傷は深くなっていった。それでもイレギュラーズ達の中からは戦闘不能者が出なかったのは、マルクとマリエッタが状況に応じて回復に回り、『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)もまた絶えず歌声によってイレギュラーズ達への支援を行っていたからだ。
 だが、途中から合流してきたアルヴァを含めて九対一ともなれば、如何にエカチェリーナの技量が高いとは言えいつまでも戦闘を継続出来るはずがない。フレイア試作型の機体には次第に傷が刻まれていき、特に膝や足首の駆動系は自重を支えるのもやっとと言う状態に陥りつつあった。
「そこだ!」
「くっ!」
 アルヴァは雷霆の如くフレイア試作型に急接近し、その左膝を狙ってH&C M7360を連射した。エカチェリーナはその攻撃に対処しきれず、圧倒的な速度エネルギーを乗せた零距離射撃は既にダメージを受けている関節部を直撃。装甲の下の駆動系がスパークを放ち始める。
「その身に叩き込んでやる! 圧倒的な戦力だとしても、こうやってひっくり返される事もあるんだとな!
 その上で、氷雪を溶かし勝利への道筋を拓くまでだ!!」
 フレイア試作型の左膝は死んだと判断したクロバが、分解の錬金術と一刀両断の剣術が融合した滅びの太刀を右膝に、そして右肩に浴びせていく。フレイア試作型の左膝はクロバの判断どおり機能不全に陥っており、クロバの斬撃を受けた右膝と右肩は断ち切られた。右膝から下を喪ったことにより、左膝は自重に耐えきれなくなり、ガクリとバランスを崩して膝をつく。
「その立派な兵器も、ここまでのようだな! 手段も犠牲も選ばないお前を許す気は無い!」
 フレイア試作型の動きが止まったのを確認したイズマは、対物破壊に特化した猛攻を仕掛けてフレイア試作型の胸部の装甲を次々と断ち切っていく。だが、操縦席に座るエカチェリーナの姿が見えたところで、惜しくもイズマの攻勢は止まってしまった。一太刀も入れられなかったことにギリ、と歯噛みするイズマだったが、後に仲間達が続いてくれるはずだと気を取り直した。
「ようやく、本番ってところかしらね?」
「うぐっ!」
 瞬間移動でエカチェリーナの前に出たイナリが、両手にそれぞれ手にした木製の小刀「木落し」で、次々とエカチェリーナの身体を突いていった。白い軍服が、次々と真紅に染まっていく。
「貴女はそれでも軍人か! 軍人は国のため、民のため、その身命を賭す事をを役割とする者だろう!
 ただの暴徒に成り下がった者に、誇りなんて無い!」
「軍人か、か。軍人だからこそ、国主たるバルナバス陛下に忠誠を――ぐぶっ!」
 マルクは魔力を収束させて光の剣を創り出すと中段に構え、エカチェリーナに問いかけながらそのまま突進した。エカチェリーナはマルクの問いに答えようとしたが、鳩尾を貫かれ血を吐いたために最後まで答えることは出来なかった。
「今、ここで――あなたを、討ちます!」
 全身に魔力を漲らせ、瞳の色をエメラルドの緑色からヘリオドールの金色に変えたマリエッタが、その魔力の大部分を用いて神滅の魔剣をその手に創り出す。そして、エカチェリーナの心臓目掛けて突きかかった。だが、さすがに危険だと判断したエカチェリーナが腕でその剣筋を変えたため、魔剣はエカチェリーナの肩に深々と突き刺さる。
(――憤怒を噴火させる余裕など、与えません!)
 エカチェリーナの受けている傷は、常人なら明らかに致命傷である。だが、魔種であるエカチェリーナの生命力の底は、ハイン達には不明である。ハインは、中途半端に手負いとなったエカチェリーナが憤怒を露わにした際の爆発力を恐れ、仲間達に続いて一気呵成に畳みかけることにした。
「があっ!」
 マルクが刻んだ刺突の痕を狙い、ハインは創世の光を顕現させた。創世の光は極小の範囲の中で爆ぜ、エカチェリーナの腹部に重篤に見えるダメージを与えた。苦悶の表情を浮かべるエカチェリーナの腹部は、軍服はもう残っておらず肉が爆ぜて血に染まっているのがはっきりとわかる。
「はああああっ!」
 ここがエカチェリーナを斃せるかどうかの正念場と判断したステラは、瞬時に闘気を高めて紅いオーラを全身に纏う。そして、指輪「炎天・星火燎原」を変化させた紅い剣に闘気を全て注ぎ込むと、エカチェリーナの胸を深々と突いた。エカチェリーナは先程よりも大量の血を吐き、その身体はガクガクと痙攣した。
「……やりましたか?」
 紅の剣を引き抜いたステラは小さくつぶやいたが、エカチェリーナの目にはまだ光があり、その生命力がまだ潰えていないことは見て取れた。
「しぶといねぇ。だけど、我(アタシ)で仕舞いだよ」
 武器商人もまた、その手に神滅の魔剣を創造して、エカチェリーナに袈裟斬りを仕掛けた。斜めに深く刻まれた傷からドバッと鮮血が吹き出し、イレギュラーズ達もさすがにもうこれで終わったのではと考えた。
「……覚えて、おこう。イレギュラーズ、ども……」
 だが、虫の息ではあったがエカチェリーナは生き存えていた。そして、残る力を振り絞り緊急脱出装置を作動させる。すると、エカチェリーナの姿は瞬く間に操縦席から消滅した。
 もう少しでエカチェリーナ自身を斃せたと言う口惜しさと、ともかくエカチェリーナを退けたと言う安堵とが、イレギュラーズ達の中で綯い交ぜになる。その様子は、右翼を指揮するオリーブからも確認出来た。
「敵将は退きました! 攻勢に転じるのです!」
 オリーブはこの機を逃さず、右翼に攻勢に出るように指示する。防御陣地を攻めあぐねて戦力を磨り減らした上、将を退けられた新皇帝派軍の左翼に、この攻勢に抗する力はなかった。総崩れとなり、指揮官さえも我先にと逃れていった。そして、左翼の側も遅れて同様となった。

 戦闘がザーバ派軍の勝利で終結すると、イズマ、アルヴァ、オリーブ、涼花の四人はもう一つの依頼に従事するべく、ゲヴィド・ウェスタンの西方へと向かっていった。オリーブはそちらで役に立つかもとフレイア試作型の破片を拾って持っていったが、実際に役立ったかは――今は誰にもわからない。

成否

成功

MVP

マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使

状態異常

武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲
マルク・シリング(p3p001309)[重傷]
浮遊島の大使
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)[重傷]
航空指揮
橋場・ステラ(p3p008617)[重傷]
夜を裂く星
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)[重傷]
輝奪のヘリオドール
フロイント ハイン(p3p010570)[重傷]
友人/死神

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍により、エカチェリーナは退き、新皇帝派の軍も撃退されました。
 MVPは、幻想福音で戦線を支え続けたとして、マルクさんにお贈りします。マルクさんの回復がなければ、何人かは戦闘不能に追い込まれていたでしょう。

 それでは、お疲れ様でした!

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