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シナリオ詳細

<獣のしるし>むねいっぱいのおもいでを

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●正義と善行は異なるが、往々にして混同される
 クッキーの入ったバスケットを持って、深い森の奥へと進む。
 馬車のわだちは勿論ひとの足跡すら残っていないような、獣道と呼ぶにも荒すぎるそれれらを抜けると、小さな石造りの建物が突然見えた。
「本当、何度来ても迷いそうになる……」
「結界とはそういうものだ。少なくともこの森ではな」
 その建物の管理人と分かる者にしか分からない会話をして、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は案内されるまま扉をくぐる。
 かなり昔に建てられたものを無理矢理改装したらしいそれは、中身も随分古びている。ココロはきょろきょろと見回して、窓辺の椅子に座る眼帯の少女を見つけた。
 白いワンピースをきて、物憂げに外を眺める少女。ジェニファー・トールキン。
「あら、また来たの? 病人のお見舞いじゃあるまいし、ひまなのね」
 嫌味をいうジェニファーだが、そのトーンにココロは嫌味を感じなかった。
 なにせお互い殺し合った仲だ。武器を突きつけ合っていないだけで仲良し気分だし、こうして嫌味を言うのはむしろ関係性が発展したとすら言えた。

「『殉教者の森』を知ってる? あそこに怪しい集団が見つかったの。鉄帝を目指して進軍してるみたいで、影の軍勢って呼ばれてるみたい」
 ココロは紅茶を淹れながら、そんな世間話をした。
 ティーカップを手に、ジェニファーが紅茶の水面を見つめる。
「アドラステイアがらみだと考えてるなら、違うわよ」
「ん?」
 そんなつもりじゃなかったけど、と言いかけて、しかしココロは言葉の続きを待った。
「『わたしたち』聖銃士は天義の誤った政治体制に反発してアドラステイアを守ってきたし、戦ってきた。
 『影の軍勢』はベアトリーチェの再来とまで言われてるんでしょう? 私達が、そんな魔種の手先みたいな行動をするわけないじゃない」
 実際してるようなものだけど……とは思ったが、確かにそうだ。天義の誤りを指摘している集団が誤りそのものになるなんてことは矛盾がすぎる。もはやそれは、アドラステイアと無関係である証拠のようなものだ。
「うん。というか……聞いてたんだね、影の軍勢のこと」
「ここでの暮らしは暇なのよ」

 『影の軍勢』の噂は徐々に広まっている。
 正確には『黒き人影の軍勢』。
 鉄帝・天義間の国境沿いである『殉教者の森』に現れた彼らは、『汚泥の兵』や『ワールドイーター』、そして『月光人形めいたもの』で構成されている。共通しているのはそれらが影で出来ているという点で、かつて天義を震撼させた冠位魔種ベアトリーチェの軍勢を彷彿とさせた。
 勿論、死者が蘇らないのは世界絶対のルール。冠位魔種とてそれは同じだ。
「彼らは確か……鉄帝への進軍が目的なのよね。いまあそこは魔種が皇帝をやってるんでしょう? あそこから攻め込んできてもおかしくはないし、天義教会の仕業なのかしら」
「それは、ないとおもうけど……」
 ココロはちいさく唸った。『誤りそのものになる筈がない』というのは、天義教会側も同じだろうから。
「どのみち、行って確かめるしかないか……」
 ココロはポケットから折りたたんだ依頼書を取り出した。
 それは、影の軍勢に襲撃をしかけ撃滅せよというものだった。

●影の軍勢と『メメントイーター』
 『殉教者の森』に出現し進軍を続けるいくつもの集団。
 もし彼らが本当に国境を越えて鉄帝入りすれば、まず被害に遭うのは一般市民だろう。当然新皇帝はそのフォローなどしないのだから、状況がどんどん悪い方に転がるのは目に見えている。
 第一、連中の構成が『ベアトリーチェをおもわせる』という時点で怪しすぎるのだ。
「見て、中心を飛んでる赤い大きな鳥」
 マスケット銃を手に進む沢山の『汚泥の兵』を守護するかのように上を飛ぶ強大な鳥。緋色のシルエットだけがわかる、毛皮も顔もわからない鳥のようななにか。
「あれが『メメントイーター』。ワールドイーターの一種で、思い出にちなんだものを好んで食べる怪物なんだって」
 ココロは仲間達と共に森へ入り、一団を観察していた。
「私達には大切な思い出がいっぱいある。あそこに突入したら、真っ先に狙われるのはそんな私達だよね」
 けどそれは好都合だ。自分達を餌に、奴らをここで倒すのだ。
「鉄帝が大変な時なんだから、邪魔はさせない。みんな、行くよ!」

GMコメント

●エネミー
・汚泥の兵(マスケティア)
 マスケット銃のような装備をした兵隊の集団です。
 固体戦力は低いですが火力を集中させやすくこちらを効果的に妨害してくるでしょう。
 序盤にいっきに蹴散らしちゃうのが妥当です。

・メメントイーター
 『ワールドイーター』の一種で、巨大な鳥型の怪物です。
 「思い出深いものを好んで喰らう」という性質があるようで、沢山の出会いや別れを経験している皆さんなど格好のご馳走でしょう。
 そもそもワールドイーターがどういうものかは、今回はそこまで重要ではありません。強いて言うならROOで観測された怪物が現実にも現れたということなのですが、同一個体というわけではないので無視してもいいでしょう。

・致命者
 この集団を率いているという存在ですが、どの集団も『既に死亡した人間』が率いており、その性質もまたベアトリーチェの放った月光人形を思わせます。
 今回この『致命者』が誰であるのかはわかっていません。白いローブで顔まですっぽり覆っているため、判別が出来ていないのです。

●フィールド
 殉教者の森という場所です。
 鬱蒼とした森で、木々の上をメメントイーターが飛行している状態です。なので結構目立つのですが、目立って問題無いほど戦闘力が高いということでもあるでしょう。

  • <獣のしるし>むねいっぱいのおもいでを完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
雪風(p3p010891)
幸運艦

リプレイ

●Si in silva deerrare, dubita te
 森の中を進む軍勢を、茂みから遠目に観察する『幸運艦』雪風(p3p010891)たち。
 これ以上接近すれば、潜行の得意な雪風といえど敵に見つかってしまうだろう。つまりは、ギリギリの観察ポイントということだ。
 相手も相手で、いつ自分達が襲われてもいいように構えているように見える。
 特に、集団を率いるかのように先頭を歩く白いローブの致命者は既に剣を抜いてすらいる。
「月光人形とやらの話は人伝に聞いています。『既に死亡した人間』が動き回るとは何とも不気味です」
 この事件も魔種の仕業なのだろうか。そうだとしたら……。
「『滅びのアーク』、でしたか」
「でして」
 『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)は頷いて雪風に肯定した。
「ルシアたちが活動をすればするほど溜まるものがパンドラ。数年前に天義をベアトリーチェから救った奇跡の力も、それに由来するものでして。あれから何度も、いろんな場面でそれは発揮されてきた……きっと、『世界の滅び』がやってくる時にも」
 対して、アークとは魔種が活動すればするほど溜まる力である。つまりは滅びの力であり、自分達イレギュラーズが対抗しなければならない根本的理由でもある。
 しかし、その一方で……。

(死者の蘇り……)
 『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はつい自らの唇に指を当て、ほうっと熱い息をつく。
「私は蘇りよりも、死なない不滅のほうがよっぽど……」
 呟いてから、自分をじっと見つめる『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)の姿にハッと我に返った。
「あ、いえ、なんでも」
 苦笑して見せるマリエッタに、グリーフはあまり深く詮索するつもりはないようで、それよりも死者の姿をもした人形にこそ興味があったようだ。
「そこに本人の意図があるのかも、蘇った方が本当に本人なのかも、わかりません。
 望まず人形の形で蘇らせること。誰でもない不完全な誰かを生み出すこと。
 私はそれを、拒みます」
 そういえば、そういう話をしていたのだった。
 頷くマリエッタの横で、『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)がそれ以上にこくこくと小刻みに頷いている。
「それに、おもいでを、たべてしまう。
 そんなの、だめなのです
 忘れてしまうこと、思い出せなくなることは……かなしいこと。
 ニルは、かなしいのは、いやなのです」
 彼らはイレギュラーズであるまえにひとりの個人だ。世界の滅びの前に、自らの思想がある。
 その時点で既に、あの『影の軍勢』は許せないものとなっているようだった。
「どう思う、盟友」
 『矜持の星』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が短い髪をわずかになびかせ、ふり羽化得る。
「仮想の怪物が、外に迷い込んできた、か。はたまた、こちらの『本物』をこそ、仮想の世界が読んだだけ、か」
 いわんとしているのは、ワールドイーターがROOから出てきたものなのか、それとも元からこの世界にあったものをROOがあの形で読み取っただけなのかということだ。
 希望ヶ浜で起きた事件は神の伝播によって間接的に出てきてしまったものだが、深緑の『大樹の嘆き』は現実にあったものをROOが読み取っただけのものだ。
「特別な事情がない限りは、後者と考えたほうがいいでしょうね。ROOから情報を取り出すだけならまだしも、力を取り出すなんてことは今のところできていないはずよ。あのマッドハッターたちが放っておくはずないもの」
 手をかざしくるりと回してみせる『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
「それよりも。私には許せないことがあるわ。『知った顔が誰かを傷つける』……そんなこと」
「お師匠様……」
 『愛の方程式』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が手を出そうとして、その手を自らの胸に当てる形で引っ込めた。誰にも、胸の内に収めておきたいものがある。
 認めたくないもの。あるいは、疑い続けたいもの。
「……ジェニファーも、もしかして、アドラステイアを見定めたいのかな」
 彼女にとってあれは『居場所』で、あるいは『故郷』にすらなりえたものだったはずだ。一概に疑って、一概に否定されたくはないのだろう。それ以上に信じていたものがあったはずだから。
 ココロは一度首を振って、その考えを横に置いた。今は別。別の話だ。
「準備は良い? 行こう」
 手の中に力の炎を僅かに燃え上がらせ、ココロたちは歩き出す。

●non excommunicare lepus
「『神がそれを望まれる』」
 イーリンは胸に手を当て小さく呟くと、茂みから真っ先に飛び出した。
 それに誰よりも早く感づいたのは、先頭をゆくローブの致命者だった。抜いていた剣をスッとイーリンの方へ向け……そして一瞬ためらう。
 その一瞬によって、イーリンは相手が指揮に慣れていないこと。そして戦い慣れをしていないことを察する。
(もらった)
 『紫苑の魔眼』を発動させ、マスケティアたちを射程範囲内に捕らえる。
 密集していた彼らを影響下に置くこと自体は難しくない。あとは相手の抵抗力と運次第だ。
「開けゴマでいくわよ、盟友!」
「開けゴマ、か。心得た、盟友」
 流石の付き合いの長さといったところだろう。エクスマリアはイーリンが次の行動に移るより早く手を突きだした。金色の手袋が神秘的な輝きをもち、それが徐々に膨らんでいく。
 ローブの致命者の指示がとんだのは『やっと』だった。
「範囲攻撃だ、散れ!」
「遅いのよ」
 既にイーリンの魔眼の力におちたマスケティアの数人がイーリンをマスケット銃のストックで殴りつけるという形で襲いかかり始めている。彼らにとっての正常な運用方法からかけはなれた攻撃手段だ。つまりは、陣形と作戦を崩したということである。
 しかしこちらとて余裕でいられるわけではない。
(雑兵のわりに一撃が重い――!)
 イーリンは肩や胸に激しい打撃をくらい、それを払いのけようと『傾国の戦旗』を振り回した。
「ココロ、保たせて!」
「まかせてお師匠様!」
 攻撃か回復かで判断を迷っていたココロはすぐさま『フェニックス』の魔法を発動。手のひらから燃え上がる治癒の炎がイーリンをまき、打撃によってできたアザが『焼かれて』消えていく。
(今回はお師匠様がわたしを護ってくれる。本当は逆じゃなきゃいけないのに……)
 ココロの迷いを感じ取ってか、エクスマリアがついに砲撃を放った。
「開くのは、宝物を隠した扉ではなく、地獄への門になるが、な」
 うすい弧を描いて飛んでいく黄金の光。イーリンは素早くダッシュを開始し、マスケティアたちの包囲をくぐり抜けた。直後、黄金の爆発がマスケティアたちを襲う。
 爆発の衝撃で舞い上がる土と小石。直後、ローブの致命者の指示が飛んだ。イーリンを両サイドから押さえ込むようにマスケティアが掴みかかり、残るマスケティアがココロやエクスマリアへと射撃を開始する。
 だがこちらもたった一枚の防御で挑んでいるわけではない。
 グリーフが素早くココロたちの前に滑り込み、自らを中心に『マナの温もり』を発動。
 ダメージを負った味方を治癒しつつ、自らのボディで残る銃撃を引き受ける。
 身体にざくざくと刺さるように命中した弾は、よくみれば影でできていた。身体の中に残ることなくどろりと溶け落ちて消えていく。
 が、本当の脅威はそこではない。
「「来ます」」
 マリエッタと雪風が同時に声を上げた、その時。赤い大きな鳥――メメントイーターがグリーフめがけて突進を仕掛けたのだ。
 身体を食いちぎるような勢いで攻撃をしかけるメメントイーター。
 ――はっきり言えば、私には他の方ほどの思い出はないでしょう。埋め込まれたこの記憶が本当に存在したものかどうかも、いまとなってはわかりません。
 ――それでも。私が私として目覚めてからのこの2年ほど。
 ――質量的時間は短くても。
 ――看送ったたくさんの方。
 ――たくさんのモノ。
 ――護った人。
 ――モノ。
 『思い出をこめたもの』という意味で言うのなら、グリーフは至上のご馳走なのかもしれない。
 メメントイーターに攻撃を続けさせてはさすがのグリーフももたない。マスケティアの排除を仲間に任せ、マリエッタは自らの指に小さなカッターナイフを走らせた。
 たれた一滴の血が、更に吸い上げられるかのように大きな鎌へと変わっていく。
 マリエッタはそれを握りしめ、メメントイーターへと斬りかかった。
「させん」
 そこへ割り込んだのはローブの致命者。剣を翳し、マリエッタの鎌を受け止める。
 その太刀筋は柔軟かつ重く、常人であれば容易に切り裂いてしまえるマリエッタの攻撃をやわらかく受け流すのだ。
 そうなればマリエッタの判断は速い。攻撃をさっさと諦め、グリーフへの回復へシフトする。
「グリーフさん、これを!」
 治癒の力を込めた小瓶を放り投げる。それをキャッチしたグリーフの手の中で瓶は壊れ、グリーフの破損部分へ染みこんだかとおもうとその素材を高速で修復し始めた。
「マスケティアの排除は任せます」
「了解――雪風、参ります」
 雪風は独特な構造のブーツで地面を滑走すると、スピンジャンプの要領でマスケティアたちへと魚雷発射口を向ける。
「九二式六一糎四連装魚雷発射管――開け、発射」
 系十六本の九三式魚雷が発射され、地面スレスレを魔力的に滑走していく。
 それらはココロたちへの攻撃をしかけていたマスケティアたちに命中、激しい爆発をおこし周囲を巻き込んでいく。
「マスケティア、殲滅完了」
「――チッ」
 メメントイーターの防御に気を取られてマスケティアを失ったという失策に気付いたのだろう。ローブの致命者が舌打ちをする。
 が、そんな暇がないことは明らかだ。
「そこです!」
 ニルが両手をぱちんと、祈るように打ち合わせて力の循環を作った。そして掌底の構えをとると、手のひらにあふれんばかりの魔法の力を渦巻かせる。そのネガティブな渦は、メメントイーターへと向いていた。
 そうはさせるかと割り込みをかける致命者。しかしニルの繰り出す掌底はその防御を無理矢理貫通できるほどの激しい衝撃を伴っていた。
 呻き、そして吹き飛ばされる致命者。
 ローブが剥がれ落ち、金髪の女騎士の姿が露わとなる。
「「――」」
 一瞬で、仲間達の間で視線が交わされる。知っている人物か? 否。
 推測するならば、ベアトリーチェの騒動の際に命を落とした天義騎士のひとりだろう。
 なぜなら鎧には天義聖教会騎士団の紋章が刻まれていたからである。
「撃つ弾の違いってものを教えてあげるのですよ!」
 ルシアはすかさず飛び上がり、翼を広げて制動。空中に自らを対空させ強く前向きに飛ぶイメージで翼を大きく動かしながらライフルからありったけの魔法のパワーを発射する。
 反動と相まってルシアは1mほど後ろに飛ぶが、むしろそれだけで収まったのは予め翼を羽ばたかせていたからだ。
 周囲の木々が歪むほどの衝撃が、致命者の女騎士へと命中。
 メメントイーターを守っていた彼女は吹き飛び、そして叫びをあげながら影へとかえっていった。
「次!」
 ルシアの行動は早い。既にライフルを高速でリロードし、魔力のリチャージも完了していた。
 狙いは、今度こそ無防備になったメメントイーターだ。
「そんなに人の思い出を食べたいのでしたら!ルシアの『思い出』の集大成を! 心ゆくまで食らえばいいのでしてーー!!!」
 直撃。よけることなどできないのか、あるいはしないのか。
 巨大な赤い鳥であるメメントイーターは羽ばたきによって吹き飛ばされることを防いだが、その判断は誤りと言わざるを得ない。
 マリエッタとニルが左右から同時に襲いかかっていたためだ。
「あなたに『私』はどう映っているのでしょうね」
 マリエッタの鎌がメメントイーターの翼を切り裂き、ニルの手刀がもう一方の翼を切り裂く。
 空中での『こらえ』が効かなくなったメメントイーターは地面へと墜落し、土をえぐりながら滑っていく。
 だがタダでやられるつもりはないらしい。起き上がり、口を開き、そして真っ赤な光線を放射した。
 途中で無数に拡散し分岐した光線は仲間達へと飛んでいく。
「グリーフ、手伝って!」
 イーリンは旗槍を水平に握って立ち塞がると、ココロとエクスマリアの前に出た。
 一方でグリーフは残る仲間達を守るべく前へと飛び出す。
 二人は交線の収束をうけ、防御姿勢のまま派手に吹き飛ばされていく。あまりの衝撃にぶつかった木が破壊され、倒壊する音がした。
「お師匠様!?」
「いいから、行きなさい!」
 イーリンは無事だ。ココロはすぐに意を決し、燃え上がる炎を癒やしのそれから攻撃のそれへと転換した。
「――」
 エクスマリアはその意志をすぐに察し、攻撃にうつる。
 ココロのはなつ炎と、エクスマリアの光が合わさり、黄金の炎となったそれは攻撃直後のメメントイーターを包み込む。
 悲鳴をあげ、炎に耐えるメメントイーター。
 自らを治癒する力があるのか、炎がすぎさった後に自らに身体へとエネルギーを流し始める。
 だが、流し始めただけで、おわりだ。
 メメントイーターの背後をいつのまにかとっていた雪風が、九六式二五粍連装機銃を押しつける。
「斉射」
 激しい速度で連射された鉛玉がメメントイーターを通り抜け、そして、がくんとその巨体は力をぬいて地面に伏せたのだった。
「大丈夫ですか?」
 ニルが駆け寄り、そして伏せたメメントイーターへ警戒するように身構える。
 が、それ以上構える必要はなかったようだ。
 その巨体は影となって溶けていき、そして消える。
 ニルはふうと息をつき、雪風も『状況終了』と呟いて両腕を降ろした。
「念のために、ファミリアーでまわりをみてみます」
 ニルがそういって小鳥を飛ばしはじめる。マリエッタは致命者が消えたあとの土に手を当て、首を振った。何をおもってそうしたのか、はたから見た雪風たちにはわからない。
 ルシアはというと。
「グリーフさんたちは大丈夫でして!?」
 防御の堅い彼女たちでもあれだけ吹き飛ばされたのだ、流石に無事ではないだろう。
 駆け寄ってみると、土と木をかなり削ってはいたが無事なグリーフとイーリンの姿があった。どうやら死の運命をまたも回避したらしい。
「お師匠様! 大丈夫ですか!?」
 駆け寄るココロに、イーリンがスッとスケッチ画を翳す。先ほどの女騎士の顔だ。記憶し、書き出したのだろう。
「この顔を医学的に分析できる?」
 ココロは肩を落とし、苦笑した。
「お師匠様、医学では生きている人間しか診れません」
「そうだ。医者に診て貰うべきは、おまえだ、盟友」
 あとからエクスマリアがゆっくりとやってきて、治療してやれとココロの肩を叩いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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