シナリオ詳細
<獣のしるし>正義を語る黒き影
オープニング
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ザッザッザッ……。
夜、森へと踏み入っていく黒い集団。
ただでさえ、冬が近づいてきていることで底冷えを感じる時期になってきているが、それらは一瞥しただけでも異様と感じ、寒気すら感じさせるものだった。
集団は大きく2種。
片方はバクが人型をとったような怪人。
もう片方は、兵士を思わせたが、形は安定せず、どす黒い怨霊を思わせる。
そして、それらを率いていたのは1人の少年。こちらもまた黒い影であった。
「魔種を……許してはならない……」
オオオオオォオォオオオォォオオオォ……。
黒き影は呟く。それに応じて、集団からも不気味な声が漏れ出す。
「鉄帝国に巣食う脅威は排するべし……」
オオオオオォォオオオォオオォオオォ……!!
それらはゆっくり、ゆっくりと森の中を進み、鉄帝を目指す。
●
鉄帝の政変。
魔種……『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドが新皇帝となり、鉄帝国内は彼の勅命によって荒れに荒れている。
そんな状況に隣国である天義も動きを見せていた。
「皆様、お疲れ様です」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が鉄帝に程近い天義の集落へとイレギュラーズを呼び寄せ、状況説明を行う。
政情によって鉄帝国内が荒れているのは周知の通り。
その鉄帝を狙い、天義国内で動きを見せている勢力がある。
「なんでも、黒き人影の軍勢が現れ、鉄帝に向かって進軍を始めているそうです」
天義は魔種を不倶戴天の敵としている。
ただ、「冠位強欲」と取り巻きが国内に救っていた事もあり、天義の教義が揺らいでいる部分もある。
「確かに、以前ほど信仰が絶対とは思いません。ただ、私達の生き方にとって、大きな指針になると考えています」
そう告げたのは、天義の聖騎士小隊長ルーシーだ。
彼女はかつて<冥刻のエクリプス>において、イレギュラーズと共に冠位強欲の取り巻きと交戦した過去がある。
その後、ルーシーは長らく天義国内の復興に尽力していた。
現状、天義は国内の異分子集団、アドラステイアへの進行準備を整える最中だ。下手に他国を刺激するのは避けたい。
その為、今回こうして聖騎士団であるルーシー達は黒い集団の掃討の任を命じられ、ローレットと3年ぶりに共同戦線を張ることになったのだ。
「以前とは違い、もう迷いはありません。例え弟の姿をした敵であっても……」
彼女はそう告げるのは、アクアベルのもたらした情報から、黒い集団を率いているのが自身の弟の姿をしたモノだと感じていたからだ。
「黒き集団を率いるのは致命者と呼称されますが、かつて天義の事件で命を落とした存在をベースに象った存在とされます」
ルーシーの弟は実質的には異なる部分もあるが、関連事件で姿を見せたことで、選ばれてしまった可能性もある。
致命者は何者かによる強化を受け、かなりの力を持っているらしい。
また、黒い集団は大きく2種類。
片方はバグの姿をした怪人で、相手を眠らせてから食らうという。それは、ROOに存在したワールドイーターを思わせる。
もう片方は兵士を思わせる人型をとる怨霊の様な影の兵だ。
かつて冠位強欲が使用していた兵士にそっくりな存在を思わせる影の兵は、とりついた相手を取り込もうとしてくるというから恐ろしい。
「幸い、今回はローレットの皆様との共同戦線。力も入ろうというものです」
この3年で成長した自身の力量を見せることができる。加えて、ここにきて、まだ自分の弟を利用するのかという憤りもあって、ルーシーも気合が入る。
彼女の部下達もローレットの戦いを直にみられると少なからず興奮していた。
「なんらかの意図を感じる集団なのは間違いありませんが、今はその歩みを止めていただきますよう願います」
そうして、アクアベルは説明を締めくくったのだった。
- <獣のしるし>正義を語る黒き影完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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夜――。
天義側から鉄帝方面へと進むイレギュラーズは聖騎士小隊と足並みを揃えて進軍する。
「月光人形とは別の者の致命者……」
「月光人形事件か……」
『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の呟きに、『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が反応する。
その頃、セレマは一般的な魔術師に過ぎなかったそうだが、話には聞いていたそうで。
「しばらく天義に近づけないほどの大事だと聞いていたが……、さて、今のボクでも対処可能なものかな」
続き、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)も討伐すべき一団に加わる集団に着目して。
「R.O.O.で対峙したワールドイーターと現実でも戦う事になるとはな」
「ワールドイーター……」
豊穣が発見される直前くらいに召喚されてきたという旅人の『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も、それ以前の事件については知らないとしながらも。
「R.O.O.の件の元になった何かなのか、それとも真性怪異のように、現実とリンクして侵食する程の何かが……?」
「奴らが食ったもんは『元々なかったもの』になっちまう。止めねぇと本当に取返しのつかない事になるぜ」
アーマデルへと説明するベルナルド。
影の兵も不気味な存在だが、話題の上がった相手は危険な存在として、皆危機感を抱く。
スティアは森を前に、瞳を閉じて。
「何が目的かはわからないけど、誰にとっても良くないことなのは確かだよね」
混乱する鉄帝に向かうその集団はここ……殉教者の森で止めるのみ……!
静かに決意するのであるスティアの言葉に、皆頷くのである。
●
夜の森へと踏み込むイレギュラーズと聖騎士団。
鬱蒼と茂る森の中、銘々に闇夜の対策を講じていて。
例えば、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は冒険者セットから頑丈なランタンを取り出して光源とする。
「暗闇の中に挑んでいくんだ。用意して損って事は無いさ」
聖騎士団も代わる代わる照明の術を使うことで対応していたが、相手は奇襲してくる可能性もある。
警戒を強めて、カインは索敵を滞りなく行う。可能なら、先制攻撃したいところだが……。
多少照明があっても、人数が多いこともあってカバーするのは難しい。
「影の軍勢はなぜ鉄帝へ向かおうとしているのかしら」
仲間達からその声を伝え聞いた『銀焔の乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が言葉から、冠位憤怒に反応しているのだろうと推察する。
「術士で怨霊の存在は感知出来るだろうか?」
また、アーマデルは居場所を自らの力で探れないか霊魂疎通を試みるが、影の兵として存在する怨霊は例のように見える別者らしい。
「ねえ、みんな。声を聞かせて」
そう感じた『猛獣』ソア(p3p007025)が虚空へと呼び掛ける。
視界こそ悪いが、森はソアにとってはテリトリー。
彼女はギフト『森の王』を使って草木や獣たちの囁きに耳を傾け、断片的ながらも情報を集める。
加えて、ソアは感覚を研ぎ澄ませ、耳や鼻を利かせて。
「なんかブツブツ呟いたり、呻いたりしてるのが聴こえる……あっち!」
魔種、鉄帝というワード。後は怨霊の呻き声。
それらを頼りに、ソアは仲間と共に敵隊を追う。
メンバー達は直接その考えを汲み取ることこそできなかったものの、位置の特定に成功したことで少しずつ近づいていく。
「これはなんとも……統一性のない集団だな」
そう感じるのは、セレマだけではないはずだ。
まず、宙に浮かぶどす黒い塊……影の兵は時折人の形をとり、ゆっくりと進む。
「ゴーストの方はともかくとして、あれはバクか?」
セレマが指し示したのは、2足歩行のバク。ワールドイーターであるそれらはどこか笑いを浮かべながら歩く。
そして、集団を率いているのは一人の青年……に見えるが、姿を象っただけの黒い影……致命者である。
「…………」
再び弟の姿をした敵と対することになった聖騎士団小隊長ルーシー。
複雑な表情をする彼女へとベルナルドがおまじないをかける。
ローレットに属するベルナルドは今でこそ幻想暮らしだが、天義出身。
(立派な騎士様だってのは聞いてるが、信頼する相手には祈って祝福するのが天義流だろ)
「ありがとうございます」
我に返った小隊長ルーシーは凛とした表情で返礼し、小隊員達へと布陣の確認を始める。さすが、聖騎士を率いるだけある。
そこで、アルテミアが主張する。
軍勢を率いている致命者を抑えれば、全体の動きは鈍るはず。
「私が致命者の抑えにまわりましょう」
「お願いします」
致命者も強敵だろうから、自由にしておくのはまずいと、アルテミアが名乗り出ると、ルーシーも了承していた。
「崩れそうな時には私を盾にしてね。それぐらいの時間稼ぎはできるはずだから!」
「隊員には回復支援を頼みたい」
これまで、もっと苦しい戦いを潜り抜けてきたスティアだ。これくらいでは音を上げてはいられない。
敵の弱体、異常攻撃などを懸念していたベルナルドもまた、イレギュラーズ側の支援を要請していたが、聖騎士らは快く承諾してくれていた。
「一見、種類が違う様な相手の集まりだけど……裏で何と繋がっているのやら」
カインは見た目バラバラの集団の裏で手を引く存在の存在を察しながらも、武器を抜く。
「何にしろ、まずはその跳梁を防ぐのが先決だね。全く気を休めてられないねっ」
「にひひ……敵、全部狩り尽くしちゃっていいんだよね?」
そのカインを始め、仲間達へと『牙隠す赤ずきん』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)が目深にフードを被った奥で笑う。
「いいよいいよぉ、ボクと~ってもはらぺこなんだ! お腹いっぱいになるまで満足させてよねっ!」
腹を鳴らすリコリスは、舌なめずりする。
リコリスの食欲はともあれ、あの一団が今の鉄帝を刺激することで冠位憤怒の目が他国に向くのはマズイとアルテミアは確信して。
「ここで奴らを食い止めるわよ!」
進軍する影の一隊に対し、アルテミアは仲間達と共に仕掛けていくのだった。
●
「鉄帝国に巣食う脅威は排するべし……」
ゆっくりと北東へと進む黒い集団。
それらの行く手を遮るべくセレマは木々を物質透過して先回りし、行く手を遮る。
セレマは、自身の役割が敵より先手を取って相手の行動に蓋をすることと認識する。
その為、セレマは敵陣へと踏み込み、微笑して相手の視線を奪う。
「障害は排除せよ……」
オオオォォオオォオオオォ……!!
致命者の指示に吠える影の兵は此方に乗り移ろうと近づき、ワールドイーターは手招きして黒い霧を呼び寄せて眠りに誘う。
(扱う能力も相まって、冠位怠惰の一件に出てきたバクを思わせるじゃないか)
聞いたこともない能力を行使するバクがこちらのパンドラを直接削るのではないかという不安すらセレマは抱く……が。
「どのような相手であろうと、ボクの役目に大した違いはない」
多くの敵を自分が絡め取ることで、戦場の負担を軽減できる。
さらに、彼は身体を光り輝かせて。
(なにより、この美しさには輝きが添えられるべきだろう?)
己の美貌に揺るがぬ自身を持つセレマはき、敵味方双方からの『的』となる。
アーマデルはそのセレマやカイン、ベルナルドや聖騎士等の照明を頼り、攻撃を行う。
(一応、自前の光源もあるが……)
現状、光が外れる場所は自らの暗視で補い、アーマデルは手始めに心半ばに斃れた英雄らの残す音色を響かせる。
扇形に広がるその声は集団の進軍をほぼ止めてしまう。
(俺は強力な個体よりも集団戦の方が全体に貢献できそうだ)
アーマデルは仲間を巻き込まぬよう配慮しながら、怨霊やバクに異常をもたらし続ける。
敵が固まっている状況ならば、格好の的だ。
リコリスも最も敵が集まる場所を超反射神経によって素早く見定め、蛇の如く迸る電撃が次々に敵を貫いていく。
間髪入れずに、リコリスは感電した相手の手前で舞い踊る。
リコリスに翻弄された目の前のバクは虚ろな表情で仲間を攻撃し始めた。
突如同士討ちを始める仲間に敵は少なからず驚いていたようだ。
「夜はねぇ、と~っても怖いんだよぉ? ほらほら、後ろに誰かいるんじゃぁない?」
リコリスはさらに電撃と合わせて舞い踊り、敵を魅了して同士討ちを誘う。
「前衛から攻撃開始、中後衛は神聖術での攻撃、支援を!」
聖騎士達はルーシーの号令で攻撃を開始していたが、カインはそのルーシーに視線を向けて。
(迷いはない、とは言うけど傷つかない、とは行かないんだよね)
相手……致命者がどれだけの手合いか、詳細は分かっていない。
その為、イレギュラーズはルーシーには小隊員を指揮して敵配下との戦闘に注力してもらうことにしたのだ。
数の不利を逆転した後、確実に致命者の撃破を狙う方がいいと、カインも判断して。
「もっとも、それも状況次第ではあるんだけどね!」
自らも敵の数を減らすべく、カインは収束性を高めた破式魔砲を放って数体を撃ち抜いてみせた。
ただ、これは仲間の密集していない初手のみできること。
「神聖な光が特段効く様な相手なら色々と話は楽なんだけどね……さて鬼が出るか蛇が出るかってね!」
次手からは広範囲に閃光を瞬かせ、密集する仲間や聖騎士らがいながらも敵のみを識別し、光に包んで消耗させていく。
思いの他効果が見込めたことで、カインはさらに閃光を放っていく。
「敵の数が多いけれど、今日は天義の聖騎士さんたちも一緒」
ソアも眠りを振りまいてこちらの行動を阻害すると思われるバク……ワールドイーターへと狙いを定める。
「眠らされるのは困っちゃうね」
近接攻撃を得意とするソアは、抜く一撃で仕留めるよう鋭い爪で切りかかる。
だが、敵も全てが痺れたり、発生した泥沼にはまっていたりするわけではなく、ソアへと黒い霧を吐きかけてくる。
眠気を覚えるソアは思いっきり自分の体に爪を立て、眠気を堪えるが、その間にも別のバクが殴り掛かってきた。
「すっごく痛い……許さないから!」
殴打をしっかりと防ぐソアだが、思った以上の痛みに憤りながらも反撃の爪を食らわせていた。
ベルナルドもまた聖騎士団を意識し、彼女達と無事に帰れるようにと気を配る。
発光して光源を確保しながらも、ベルナルドは自らを追い込んで自己強化し、仲間達の引き付けた敵を手前側から相手取る。
そして、ベルナルドは敵陣へと紫色の帳を下ろし、バク、怨霊問わず不吉と終わりをもたらさんとする。
加えて、その敵を含め、後衛の聖騎士らが神聖術を放って敵を光で包み、撃ち抜いていく。傷つくソアやベルナルドを、中衛の聖騎士が癒しの光で回復も行ってくれる。
そんな彼等の支援にベルナルドは口元を吊り上げつつも、次なる一撃をと絵筆を振るう。
仲間達の交戦の最中、前線に出ていたスティアはメンバーと盾となる。
序盤は影の兵がメンバーや友軍へと取りつかんとしていたし、バクは黒い霧を振りまいてこちらを眠らせて戦意を削いでくる。
スティアは動きが鈍った仲間が数人いれば、敵の攻撃をやり過ごす暇にヒーラーとして自分や傷つく仲間に花弁を象った魔力で癒しをもたらす。
仲間が万全に戦えれば問題はないとスティアはさらに立ち回り、癒しをもたらす。
さて、致命者を抑えるアルテミアはどうか。
まずはアルテミアは青き炎を纏う斬撃を繰り出し、致命者を威嚇する。
「邪魔をするな……」
漏れ出す声は常人とは思えぬほど寒々しく、ゾッとさせられる。
そいつの繰り出す闇の力は不吉めいた者を感じさせながらも、体力までも削いでいく。
その攻撃は決して軽んじることができないが、アルテミアは防御して凌ぎながら問う。
「あなた達は何処から来たの」
「正義の使い……」
方向からも天義から来たのは間違いないが、首謀者は天義にいるのか、それとも……。
そこで飛んでくる怨霊の叫びにアルテミアは耐え、さらに続ける。
「誰の為に鉄帝へ向かうのか」
「聖女……」
アルテミアは怪訝そうな顔で剣にのせた双炎の蒼と紅を見舞い、致命者を燃やし、かつ凍らせていく。
多少はよろけた敵はすぐに踏みとどまり、闇の力を放出してくるのだった。
●
不気味な影の集団を相手取るイレギュラーズと聖騎士の混成チーム。
致命者ロイをアルテミアが抑えていることで、集団の足並みが揃わなくなってきている
(これなら、飛ぶ必要もないか)
怨霊の引き付けができない可能性も考慮していたアーマデルだが、仲間の善戦もあって敵の足止めに加えて赤い液体を振りまく。
液体に含まれる毒に苦しむ敵をアーマデルは空中へと跳ね上げて1体ずつ仕留めていく。力尽きた敵はいずれも、その体を少しずつかき消していた。
ただ、残る敵もただではやられず、怨嗟の叫びを放ち、黒い霧を発してくる。
「大丈夫だ。まだいける」
「一旦私が抑えるから、心を落ち着けるようにしてね」
影に憑りつかれて臆する聖騎士や仲間達へとセレマが号令を発した直後、スティアも呼びかける。
ああいう敵はこっちの精神を乱すのが目的であんな姿をとってたりするから、と。
「強い意思を持って相対した方が対処しやすいと思うよ! それでも駄目なら私を信じて頑張って!」
戦場を見回し、スティアはさらに叫ぶ。
――絶対に守ってみせるから、誰一人こんな所で死なせる訳にはいかない!
そのスティアの言葉は仲間達の士気を高める。
気を良くしたカインが神気閃光で敵を灼き、バク、怨霊含めて3体を纏めて消し飛ばす。
聖騎士達も1体、また1体と敵を倒しており、徐々に敵の討伐を進めていく。
踊るリコリスが1体を仕留め、ソアも反撃を駆使しつつ敵をずたずたに切り裂いてかき消してしまう。
その間もベルナルドの舞いが敵を魅了し、同士討ちした敵の数が減っていく。
ある程度数が減れば、セレマも囮役から攻撃へと転じ、指輪から紫の光を放出して敵の存在を終わらせる。
「…………」
淡々と戦う致命者ロイ。
アルテミアは周囲の敵による不意の攻撃にも対処し、合間に残像を展開しながらそちらの敵を排除し、再び致命者を抑えつける。
次第に敵の数も減り、メンバー達も駆けつける。
ソアはルーシーを連れ、共に致命者と対するが、相手はまるで反応を見せない。
「やはり、これはロイではありません」
中身は別物という情報があったが、記憶すらも持ち合わせていないことをソアは確信する。
もちろん、ソアは攻撃も疎かにはせず、勇ましく聖なる力を纏わせた剣を一閃させたルーシーに合わせて鋭い爪を薙ぎ払う。
「残念だねっ! キミ達は狩られる側だよっ!」
仲間達の中で一足早く致命者と対していたリコリス。
致命者へと飛びかかったリコリスはここぞと腹を満たすべく敵の体を噛みちぎり、体から血を流させる。
……と言っても、致命者もまた黒い影。流れる血もまた真っ黒いである。
そうした傷がある程度増えれば、リコリスは舞い踊って致命者の自傷を誘う。自らの傷も相まって彼女は強力な一撃を叩き込み、敵を追い込んでいく。
「黄泉帰り事件の時といい、こいつも誰かの作品だとしたら、悪趣味な事をしやがるぜ!」
至近から攻め立てるベルナルドは怒りを露わにして。
「何度も人の絆を冒涜しやがって……芸術家として、認める訳にはいかねぇ!」
前のめりに仕掛けるベルナルドは零距離から神秘の力を高めた極撃を打ち込み、致命者を大きく怯ませる。
今度は態勢を整える暇すら与えず、アルテミアが再び残像を展開する。
相手の動きを十分に見切った彼女は最適化した動きで猛攻を仕掛ける。
「正義、かなわず……」
全ての残像に切り裂かれた致命者はそう一言漏らし、森の中に倒れていったのだった。
●
致命者を掃討した一行。
影の兵、ワールドイーターの遺体が徐々に消える中、アーマデルは仲間や聖騎士と協力し、とり逃しがないか周囲を確認する。
「出来る範囲で俺達が到着する前の状況を教えてくれないか?」
その最中、アーマデルは森に漂う霊に尋ねると、時折森に現れる影の集団が鉄帝に向かっているという情報が得られた。
「兵隊がゴーストでなければ、あれも月光人形ですらない。偽物の偽物とは笑えない話だが……」
果たして、どういう脚本だと訝しむセレマの傍で、ルーシーは気丈に部下へと指示を出していた。
また、遺体が完全に消えてしまう前にとカインやベルナルドがアビスウォークやアナザーアナライズで分析を試みる。
それらに共通するのは、全て影で構成されていたということ。
とりわけ、影の兵に関しては、ベアトリーチェ・ラ・レーテの使用していた兵士をベルナルドは連想していたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは致命者を抑え、仕留めたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
鉄帝の政情もあって、天義国内でも大きな動きがありました。
鉄帝、天義国境にある『殉教者の森』に現れる敵の討伐を願います。
なお、過去作のキャラも登場しており、参照も記載していますが、そちらは読まずとも参加には問題ありません。
●目的
全ての敵の討伐
●状況
殉教者の森に現れる一団は鉄帝へと進軍します。
鬱蒼と茂る森の中、こちらも天義の聖騎士達と協力して一団の進軍を阻み、討伐を目指します。
月明かりに森が照らされてはいますが、密集する木々もあって森の中はかなり薄暗い状況です。
●敵
○致命者:ロイ(仮称)
かつて月光人形とされたルーシーの弟を思わせる姿をしていますが、中身は全くの別物です。
何者かによる強化を施されており、闇の力を使って襲い掛かってきます。
ロイ、後述のルーシーに関しては「愛しい家族との対面」参照です。
○影の兵:怨霊×20体
どす黒い姿をした怨霊を思わせる塊です。
ふわりと空中を浮かびながら、時に兵士のような見た目となってとりついて抵抗力を削いだり、直接体力を奪い取って自らへと取り込もうとしてきたりするようです。
近距離攻撃をメインに行いますが、怨嗟の叫びをあげ、黒い魔弾を発してくることもあります。
○ワールドイーター:バク(仮称)×15体
2本足で立つバクを思わせる姿をしています。肉弾戦や霧を操っての敵の弱体化を行います。
敵対者を黒い霧で眠りに誘い、無力化してから文字通り食べてしまおうとするようです。
怨霊が取りついた者から優先してくる為、注意が必要です。
●NPC
◎天義聖騎士団小隊……20人、いずれも人間種。
◯ルーシー……25歳、聖騎士団小隊長
騎士剣を所持。実績を積み、頼れる女性騎士として後輩たちに憧れを抱かれる存在。
聖なる力を纏った斬撃、回復、隊員に支援強化とオールマイティに立ち振る舞います。過去の事件、及び数々の戦いで成長し、弟の姿をした敵でも容赦なく立ち向かいます。
「愛しい家族との対面」、「<冥刻のエクリプス>欲深き者達に規律ある裁きを」参照。
◎隊員……20人
10代後半から20歳くらい聖騎士の男女
主にメイス、錫杖。斧槍、弓を使う者が4人ずつ。
全員が回復支援、神秘系魔法を使用。
小隊長ルーシーの指揮で動きますが、希望があれば、ローレット勢にも助力します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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