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シナリオ詳細

タスカーズ・ネスト、いいオークの日ウィーク2022

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いいオークの日
 いいオークの日――!
 それは、11月9日をさす! 11(いい)月09(おーく)日、という語呂合わせから生まれた記念日であり、とりわけ混沌世界においても、その語呂合わせ的な記念日は存在していた。
 というのも、混沌世界は人種のるつぼ。人間種などを始めとする、元々混沌世界に住んでいた種族の他に、異世界より召喚された『旅人(ウォーカー)』達も多く存在するのである。旅人は各世界の法則に則って生まれた存在であるため、例えば混沌世界にはもともと存在しなかった、様々な姿をとった存在が、当たり前のように存在するわけである。
 そんなわけであるから、混沌世界ではほとんど『モンスター』と同義である『オーク』という種族に対しても、旅人(ウォーカー)という単位で見れば、多くのオークが混沌世界に召喚されていたといえる。例えば、ローレット・イレギュラーズとしては知名度のあるオーク『ゴリョウ・クートン (p3p002081)』などは、オークの旅人(ウォーカー)として非常に高名であり、混沌世界に存在する『旅人(ウォーカー)のオーク』にとっても、ある種の憧れと、同族――それが世界を異にする存在だとしても――としての誇りの具現のような存在であるともいえた。
 さておき、話を戻せば、良いオークの日の話だ。此処、幻想に存在するとある都市には、旅人(ウォーカー)のオークたちの集まり築いた街がある。オークたちの住むその街の名前を、『タスカーズ・ネスト』と呼ぶ。
 タスカーズ・ネストでは、毎年11月9日を始まりとして、一週間のお祭りを開催する。『いいオークの日ウィーク』と名付けられたそれは、まさに「1109(いいおーく)」のごろ合わせを記念日として、オークに生まれたこと、そしてオークとして他の種族と仲良くやっていけることの感謝を込めて、内外に大きく開かれた祭りとして、地域の名物にもなっていた。

「ふぅむ、困りましたね」
 と、やたらとイケボで、イケメンのオークが言う。名を、ドゥオモ。オークである。練達に本拠地を置く彼は、練達の地にて有名映画スターとしての地位を得ていた。イケボとイケメンである彼は、悪いオークからちょっと愛嬌のある味方オーク迄、あらゆる役をこなしきり、『映画界に蔓延っていた古いオーク観を一掃した稀代の名優』と、地元の映画雑誌などではほめたたえられるくらいには、有名な俳優であった。
 そんなドゥオモがタスカーズ・ネストにやってきたのは、良いオークの日のイベントのためである。ディナー・ショー――と言っても、格式ばったものではなく、街の広場で多くの屋台を並べ、皆でワイワイ楽しく食事とをるというものだが――のメイン司会者として帰郷したドゥオモは、しかし現在の祭の状況に、少々困り顔をしていた。
「鉄帝に発注した道具と食材が届かないとなれば、ディナーショーの開催が危ぶまれる……」
「へい、これが困りものでして」
 と、少しガラの悪そうなオークが言った。かつてドゥオモの命を狙い、イレギュラーズ達に懲らしめられた男達だったが、今はすっかり改心して、ドゥオモの付き人をしている。
「ほら……鉄帝は今大騒ぎでしょう。幻想も、アーベントロートの騒ぎで色々と、ね」
 言うまでもないことかもしれないが、鉄帝は皇帝の交代とい一大事変が起き、幻想もアーベントロートにて大事件が勃発している。この辺りはアーベントロートの影響下にはないため直接的ない影響はないが、それでも、馴染みの商人などはこれらの騒ぎに大変大慌ての様子だった。
「そうなると、人手も足りない、材料も足りないってわけで……」
「ふぅむ……」
 ドゥオモがイケボで唸った。窓の外を見れば、良いオークの日ウィークもすでに三日目。多くの人々が、お祭り騒ぎに興じている。ディナー・ショーは最終日であり、皆で大いに食べ、笑い、歌い、一年の時を穏やかに過ごせたことを大いに喜ぶ、〆の大切なイベントだ。それができないとなれば……。
「やはり、ここは手を借りるしかありませんね……ローレットに」
 ドゥオモがそういうのに、付き人のオークは頷いた。彼らならきっと、手を貸してくれるだろう――。

「今から食材も必要かぁ」
 ゴリョウがそういうのへ、ローレット・イレギュラーズの仲間達もふむ、と唸った。
 タスカーズ・ネストのローレット支部。依頼を受けたイレギュラーズ達は、早速タスカーズ・ネストの町長、ハギングと、ドゥオモの歓待と、説明を受けた。
「はい。それから、人手が足りないため、調理などもお願いしたいのです。終わり次第、食べる側に回ってもらっても構いませんが」
 ハギングが言うのへ、イレギュラーズの一人が言う。
「それは有り難いですけれど、大量の食材……ですか」
「できれば、タスカーズ・ネストの近場で、大量に用意できるものが欲しいな」
 イレギュラーズの一人がそういうのへ、ゴリョウは頷いた。
「ああ、運搬……は、俺たちは空中神殿が使えるからある程度はいいとして、だ。
 やっぱり、大勢をもてなすなら、それなりの数が欲しいよなぁ……。
 なんか心当たりはないかい?」
「この辺りだと……」
 モンスター・野生動物図鑑をめくっていた、イレギュラーズの一人が言う。
「グアッカロー・チキンの群生地が近いですね。ほら、あのでっかい鶏みたいな奴です」
「あそこまで来るとダチョウみたいなものだがな……」
 ふむん、と、イレギュラーズが唸るのへ、ゴリョウは頷いた。
「いや、あれだけデカけりゃ、チキン料理で結構な数はまかなえる。4~5匹はとりたいな」
「じゃあ、決まりだ。グアッカロー・チキンの群生地に行って、ついでに山菜や野野菜なんかもとれるだろ?」
 イレギュラーズの一人がそういうのへ、皆は頷いた。
「今や冠位魔種すら倒した皆さんなら、グアッカロー・チキンなら何とかできるとは思いますが」
 ハギングが言った。
「くれぐれもお気を付けください。我々の宴のために、皆さんが傷つくことの方が、問題だ」
「ぶはははっ! 気遣い感謝するぜ。だが、俺たちに任せな。今年も最高のイベントにしようじゃねぇか!」
 ゴリョウがそういうのへ、仲間達も力強く笑って頷いた。
 かくして、良いオークの日をすばらしい日とするために、イレギュラーズ達の戦いが始まろうとしていた――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 今年も良いオークの日でした!

●成功条件
 以下二つの達成
 1.グアッカロー・チキン五匹の調達
 2.ディナー・ショーの準備を成功させる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 良いオークの日。オークたちの街、タスカーズ・ネストでは、毎年11月9日に一週間、内外から多くの観光客を招いたお祭りを開催しています。
 その最終日には、オークの映画スター、ドゥオモさんの小粋な司会と共に、広場で大いに歌い、飲み、食べ、笑う、というディナーショーが開催される予定でした。しかし、昨今の動乱によって、食糧と調理器具の提供がストップ。人手不足と食材不足に、ディナーショーの開催が危ぶまれてしまいます。
 そこで皆さんの出番です! 皆さんは、タスカーズ・ネストの近くに生息する『グアッカロー・チキン』を、最低でも5匹ほど調達し、食材を確保。そのまま街に戻り、調理や設営などの準備を手伝ってほしいのです。
 オークたちの一年、その素晴らしい思い出のために、どうぞ皆さんの力をお貸しください。
 作戦決行タイミングは、昼。グアッカロー・チキンの生息地は、森と草原の広がるエリアとなります。
 特に戦闘ペナルティは発生しないほか、グアッカロー・チキン以外にも野野菜や山菜などがとれるかもしれません。

●エネミーデータ
 グアッカロー・チキン ×???
  巨大なダチョウのような鶏のような鳥類モンスターです。
  見た目通りに素早く、あちこちを駆けまわり、鋭いくちばしや、鋭い爪のある脚などでキックなどをしてきます。
  その一撃は皆さんを容易にふき『飛』ばしてしまうでしょうし、『出血』させてしまうでしょう。
  数は多いですが、最低でも5匹ほど狩りとって、肉を回収できれば充分です。運搬方法は考える必要はありません。
  狩猟数は多ければ多いほどいいですが、多ければその分皆さんに負担がかかりますし、調理の時間が取れなくなるかもしれません。ほどほどを見極めましょう。

●リプレイの構成について
 おおむね、以下の2幕で構成される予定です。

 狩猟パート:グアッカロー・チキンを戦闘し、狩ります。
 調理パート:街に戻って、料理や屋台などの設営を手伝います。

 プレイングは、以上の二点を意識して書くとすっきりするかもしれません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイング、そして狩りと調理の腕を、楽しみにお待ちしております。

  • タスカーズ・ネスト、いいオークの日ウィーク2022完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年11月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
※参加確定済み※
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
玖・瑞希(p3p010409)
深き森の冒険者
陰房・一嘉(p3p010848)
特異運命座標

リプレイ

●ディナー・ショーに向けて
 タスカーズ・ネストをでて、しばし。移動するイレギュラーズ達が、草原の草を踏む。さ、さ、と揺れる草木の中に、しっかりとふみつけられてしまったそれを見つけた『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が、むむむ、とうなってみせた。
「まちがい ありませんの……! 大きな動物が歩いた後……! きっと、グァッカロー・チキンですの!」
 一生懸命に学んだ自然知識を思い出しながら、ノリアがそういう。なるほど、その通り、何か大きな動物が、この辺りを移動している形跡がそれだった。『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が、「ぶははっ!」と嬉しそうに笑った。
「という事は、情報通りってわけか! 助かるぜ、ノリア! グァッカロー・チキンがこの辺りにいるって教えてくれたのもノリアだったからな!」
 嬉しそうに言う様子に、ノリアも「ふふ」と嬉しそうに笑う。
「ゴリョウさんの お役に立てるなら 当然ですの!」
「グァッカロー・チキンか。ダチョウのような大きさと生態なら、肉は筋張っていそうなものだが……」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が、ふむ、と唸りつつそう呟く。それからすぐに、「ああ」と訂正するように声をあげると、
「いや、ノリアの知識を否定するわけじゃないんだ。不思議なものだな、という意味さ」
「わかってますの」
 ノリアが微笑んだ。
「確かに不思議と言えば不思議だな。だが、そこが混沌世界の面白い所だなぁ」
 ゴリョウも、ふむふむ、と頷く。
「確かにそうだ。グァッカロー・チキンは美味い、というのはきいたことがあるし、タスカーズ・ネストの町長やドゥオモのリアクションを見れば、それは疑いようもないさ。正直、俺も楽しみにしているよ」
 穏やかそうにマカライトが笑う。
「そうッス! イルミナも楽しみッス!」
 はーい、という感じで手をあげるのは、『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)である。
「チキン料理、ッスよね! 焼き鳥とか、チキンステーキ……油淋鶏とかフライドチキンなんかも!
 再現性東京で色々とチキン料理もたべましたが、どれもおいしかったッスねぇ……」
 じゅるり、と涎を垂らしそうな様子で、イルミナが言った。ふふ、と『冥焔の黒剣』リースヒース(p3p009207)が微笑む。
「なら、楽しみにしておいてほしい。私も、首尾よく肉が手に入れば、ジャークチキンのラップサンドを提供するつもりだ」
「わわ、それも楽しみっす! うう、身体が三つと言わずたくさんほしい……!」
 ほわーん、といった表情を見せるイルミナに、リースヒースは苦笑する。
「その前に、しっかりと狩りを成功させないとな?」
「そうだな。今回は、戦いというよりは、狩りという仕事だ」
 『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が頷いた。
「まぁ、相手は魔物のようなもの。いつも通りと言えばいつも通りだが、狩りの知識があれば、多少は優位に立ち回れるかもしれないな」
「うーん、そうなると、罠、とかかなぁ?」
 『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)が、むー、と口元に人差し指を当てながら思案する。
「やっぱり、ある程度数をとりたいんだよね? そうなると、一気に獲れるのがいいと思う」
「ふむ。落とし穴と槍衾、などはどうだろうか?」
 『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)がそういう。
「落とし穴の底に、斜めに切った木を槍にみたてて設置するんだ。もちろん、殺しきれはしないだろうが、機動力を削ぐことくらいはできるだろう。
 どう思う? ノリア」
 尋ねる一嘉に、ノリアは頷く。
「そうですね 良い案だと思いますの」
「ゴリョウ、なんか肉を傷つけるとか、そういうの有りそう?」
 瑞希が尋ねるのへ、ゴリョウは、ふむ、と唸る。
「槍の長さを調節して、本体へのダメージを少なくすればいいだろうな。
 できれば、腹の中で内臓を破壊しちまう……みたいなのは避けたい。肉に臭みが残っちまうかもしれない。
 その分、俺たちが苦労することになるが、いい食材をとるのには苦労しないとな!」
 ゴリョウがそういうのへ、イルミナが頷いた。
「おいしいご飯のための苦労なら頑張るッス!」
「では、その案で決まりだな」
 一嘉が頷いた。
「オレが罠を設置しよう。待機して迎え撃つチームと、追い立てるチームを選抜してほしい」
 そう言って、一嘉はスコップを片手に罠の設置場所に向かう。
「じゃあ、罠ができるまで、近くの香草なんかを探しておくか」
 マカライトが言うのへ、ゴリョウが頷く。
「おう、助かるぜ! 付け合わせなんかにたくさんあるとありがたい!」
「分かってる。最高の食材を探して見せるよ」
 マカライトがそう言って笑って、近くの草むらへと向かっていった。
「イルミナは大きな音を出せるッス! これで追い立てたりするッスよ!」
「移動に使った馬車も利用しよう。これだけデカいので追い立てれば、チキンの方も逃げ出すはずだ」
 イルミナ、そして義弘の言葉に、仲間達は頷いた。
「チキンたちの居場所やルートは、付近の精霊や霊魂の力を借りて確認しよう。
 代償に、余った内臓でも捧げさせてほしい」
 リースヒースの言葉に、
「おう。ま、モツは今回はやめておいた方が無難だろうからなぁ」
 とゴリョウが頷く。
「それでは みなさん 頑張りますの!」
 ノリアの言葉に、仲間達はそれぞれ決意の言葉をあげた。
 果たして草原にて、狩りが始まろうとしていた――。

●材料調達!
 さて、草原には、何匹もの巨大な鳥がいた。鶏とダチョウのあいのこのような、巨大な陸生鳥だ。特徴としては、鶏のように立派なとさかを持って居る所だろうか。食材としては珍重されている。
 さて、そんなグァッカロー・チキンの群れは、草原を悠然と歩いている。特にこの辺りには天敵もいないはずである。まぁ、いたとしても、それを覚えていられるほどの知能はないのだが。そんなわけで、特に警戒心など持たずにとことこ歩いている鳥だが、しかし突然、
 ぐるああぁぁぁぁあおん!
 文字に起こすならこういった感じか、そのようなケダモノの声が響けば、警戒心を持とうというものだ。チキンたちが慌ててあたりを見回す――するとどうだろうか。草原の奥から、巨大な『何か』が襲い掛かって来るではないか! それはチキンたちには恐ろしい怪物に見えた。実際には、一台の馬車であった。
「よしよし、こっちを巨大な獣と思ってるみたいッス!」
 となれば、さっきの獣の吠え声のような大きな音は、イルミナが用意した音であろう。巨大な音と、巨大な馬車。二つがそろえば、すっかりパニックになったチキンたちは、バタバタと逃げだすことは間違いない。加えて言えば、隣にはティンダロスに乗ったマカライトが並走している。チキンからすれば、実際に怪物がいるようなものだった。はたして馬車に追い立てられるように、チキンたちは走り出した。
「後は、罠の方に追い込めばいいんだな?」
 義弘が言う。チキンたちの脚は素早く、捕らえるとなら中々の骨だろう。そうなれば、やはり罠という選択肢は正解だったかもしれない。
「よし、行くぞ」
 義弘が声をあげる。チキンたちの群れは、何匹かが外れていったが、しかし6匹ほどのチキンを罠の方向に追いやることができた。充分の量だろう。何せチキンは巨体と言える。食材という点で見れば、これだけあれば、ディナー・ショーに足りない分を賄うに充分だ。もちろん、これからこれを軽い必要はあるのだが。
「一発アイツら震わせな」
 マカライトの言葉に、ティンダロスが吠え声をあげる。再びの声に、チキンたちはますますのパニックに陥っていた。
「ふむ、この、妙な音を鳴らすチキンも一気に鳴らしてみるか。それから、花火に……とにかく音をあげてやればいい」
 リースヒースがそう言って、妙なチキンのフィギュアの腹をおした。ぶえーべべー、と奇妙な音が鳴り響く。漆黒の馬車の屋根やら壁やらには同様のフィギュアがついていて、風邪に乗ってぶえべべべー、と音を鳴らす。正直チキンでなくても割と怖い光景だ。
「いいぞ、そのまま行け!」
 義弘の言葉通りに、果たしてチキンたちは真っすぐに、罠の方へと向かっていった。目の前には落とし穴があって、そこに落ちれば、足を殺せるはずだ……そう考えた刹那! 六匹のチキンたちが、次々と地面に『落ちて』いった! 落とし穴だ! 深さ自体はさほどではないが、随分と広く掘ったらしい。そこに、小さな『槍衾』が仕込まれていて、チキンたちは次々と脚を傷つけていく。ぐえっぐえっ、こけ、と悲鳴を上げるチキンたち。慌てて這い上がると同時に、
「ぶはははッ! まんまとかかったなぁ!」
 ゴリョウが飛び出す! 突然の乱入に、チキンたちはますますの混乱の様相を呈していた。果たしてチキンたちは、パニックに陥ったままゴリョウにくちばしを突き刺そうとするが、ゴリョウの鎧がそれを貫き通すわけがない。
「ふっ、イキがいいな! 悪ぃが、食材にさせてもらう!」
 ゴリョウが一匹を捕まえて、地面にたたきつけた。首根っこを掴みあげ、『締め』る。ぎゅう、と悲鳴を上げたチキンが、そのまま絶命した。
「よーし、よりおいしくなーれ、っと!」
 瑞希がチキンを一体、殴りつけた。『食材適性を付与された(おいしく締められた)』チキンがばたりと倒れ、白目をむいている。
「罠のおかげだね! 結構いい感じに狩れてるよ!」
 瑞希が嬉しそうにそう言いつつ、もう一体のチキンに強烈な一撃を与えた。ぐえ、と悲鳴を上げて、チキンが地面に横たわる。
「フッ――」
 鋭く呼気をはきながら、一嘉がチキンに一撃を喰らわせた。血抜きも兼ねた斬撃で、チキンの首を一気に掻き切る。ぐえ、とチキンが昏倒。
「ふむ、こんなものだろうか?」
 果たして、追い立てていた六匹のチキンは、ほとんどが地面に横たわっていた。残る一匹が、決死の反撃をノリアに与えようとするが、ノリアは可憐ながら、触れれば強烈な棘で反撃する、可愛らしい薔薇の花だ。果たして棘の突き刺さったチキンが、ぐええ、と悲鳴を上げて昏倒した。
「おう、大丈夫か、ノリア?」
 ゴリョウが心配そうに尋ねるのへ、ノリアは頷いた。
「はい 大丈夫ですの これで狩りも終わり……ですのね?」
 そういうのへ、一嘉が頷いた。
「血抜きなどの下処理をしよう」
「なむなむ、おいしい料理になるッスよ」
 イルミナが手を合わせるのへ、ひとまず皆もそれに倣った。命をいただくのに、間違いはなかったのだから。

●ディナー・ショーに向けて
「ほほう……これは見事なものですね……」
 街に戻ってみれば、町長やドゥオモが迎えてくれた。ドゥオモが感心したように声をあげるのへ、ゴリョウが笑う。
「おう! 早速で悪いが、調理場を用意してもらえるか?」
「もちろんです、ゴリョウさんの料理の腕はきいております。私も楽しみですよ」
 ドゥオモが笑顔でそういうのへ、ゴリョウの隣でノリアが少し嬉しそうに聞いていた。
 さて、案内された調理場はかなり広く、一度に大勢のための料理を用意できる場所だった。早速チキンを運んでみて、まずは大雑把に解体する。
「肉質はまさにチキンって感じだな」
「本当に不思議なものだな……」
 ゴリョウの言葉に、マカライトは頷いた。
「さて、料理は門外漢なんだ。俺は設営の方の準備を手伝ってくるよ」
「なら、俺もだな」
 マカライトの言葉に、義弘が声をあげた。
「ゴリョウ、悪いが、まかせっきりになっちまう」
「いいさ。その分、設営に関してはオメェさん達の方がうまくやってくれるだろうからな」
 ゴリョウが笑うのへ、義弘が頷く。
「最善を尽くそう。ドゥオモ、悪いが周辺の屋台の設置図なんかをもらえるか。検討したい」
「良いのですか?」
「それも仕事の内だ」
 義弘が、ふっ、と笑って頷いて見せる。
「ああ、私も屋台を一つ出したいのだが」
 リースヒースが声をあげた。
「ゴリョウ、ジャークチキン分の材料を残しておいてもらえると嬉しい。先に会場の下見をしておく」
「おう! 最上の部位を残しておいてやるよ!」
 ゴリョウが頷くのへ、リースヒースが礼を言った。
「ボクは料理のお手伝いかな。こう見えても、ちゃんと料理はできるんだよ?」
 瑞希が、ふふ、と笑ってみせる。
「あ、イルミナも料理を手伝うッス! 専門的な所はちょっと難しいッスけど、一般的なことなら任せてほしいッス!」
 イルミナが、とん、と胸を張ってみせた。
「……あと! 味見とか、そういうのもお任せッス!」
 えへへ、とイルミナがそういうのへ、瑞希も笑ってみせた。
「それはボクも楽しみかも!」
「おいおい、味見しすぎて、ディナー・ショーの前に腹いっぱいになるなよ?」
 ゴリョウが肩をすくめてみせた。
「それで、何を作るのだ?」
 一嘉が言う。
「オレもアシストをしよう。数が数だ。手数は多い方がいいだろう?」
「助かるぜ! ノリアは……しっぽも本調子じゃないだろう? 休んでいてもいいんだぞ?」
 ゴリョウががそういうのへ、ノリアは頭を振った。
「わたしも すこしお手伝いしますの……!」
 穏やかに笑うノリアの気持ちを、ゴリョウは汲んだ。
「……ああ。それじゃあ、頼むぜ!
 で、だ。作るのは……そうだな。焼き鳥、唐揚げは屋台の定番だが、大鶏排なんかは大口のオークに受けそうだ
 皮を使った鶏皮餃子やチキンステーキ、フライドチキンはビールにも合うぞ!」
「じゃあ、皮を剥いだのと、そのままの部位が必要かな。チキンステーキは皮もパリッと焼いてるのがいいよね~」
 瑞希の言葉に、イルミナが頷いた。
「ああ~、わかるッス……」
 じゅるり。
「ジャークチキンの用意もしておいてやらないとな。では、ひとまず下処理をしてしまうか。瑞希さん、イルミナさん、手伝ってほしい」
「任せて~!」
「了解ッス!」
 瑞希とイルミナが、エプロンをつけて早速調理に取り掛かる。ゴリョウはノリアと一緒に、揚げ物の用の大きな鍋なんかを用意しながら、愉快気に笑った。
「なんだ、こうしてみんなで料理するのも楽しいもんだなぁ」
「ふふ そうですの!」
 ノリアもそう言って、笑ってみせた。
 
 外に出てみると、夕暮れが徐々にあたりを包みだしていて、広場には多くの屋台がその準備を始めている。リースヒースも一つスペースを借りて、馬車を設置している。そして、借りている器具の状態を確認していた。
「ふむ。温めも出来そうだな。調理は調理場での作業になるだろうが、販売するには充分だろう」
「練達のバッテリーやら、魔術保温器やら。何でもありだな」
 マカライトが笑う。
「なんとも混沌らしいな。いや、いいオーク、なんて、オークの旅人がこうやって集まって暮らしてるのも、何とも混沌らしいか」
「良いオークの日、か。
 無条件に悪しき者とそしられぬことは、良い。「ひと」というものは、個々が違う存在であろうから。混沌でこうやって生きている、それはオークも広義の「ひと」であろうということ。
 己のルーツを、存在を祝う祭。それが行われるということは、喜ばしいこと、だと思う」
 リースヒースは、そう言ってあたりを見回してみた。厳密のは、旅人(ウォーカー)達の集まりではあるのだが、それでも、こうやって多くの伝説では怪物として扱われるオークたちが、穏やかに過ごしている。それはきっと、とても素敵な光景に違いない。
「そう言えば、どうしてジャークチキンなんだ?」
 義弘が言う。
「好物なのか? 確かに、あれは美味いが……」
「ふむ。好きだというのもあるが――」
 リースヒースはくすりと笑った。
「最後に「邪悪を平らげる」のは良いオークの日に相応しいかと……な」
 ウインクを一つ。
「ふ……ははは!」
 義弘が笑ってみせた。
「悪くは無いな。ああ、嫌いじゃない。ふっ。俺も休憩時には喰いにくるよ。一つ残しておいてくれ」
「もちろんだとも」

 すっかり夜の帳がおりて、ディナー・ショーが開催されている。屋台には、チキン以外の料理もあったが、やはり今日この場で一番人気なのは、イレギュラーズ達が心を込めて作ったチキン料理だっただろう。
「おう! バンバン食ってくれよな!」
 ゴリョウが屋台で大声を張り上げる。屋台は長蛇の列で、ノリアがいそいそと客たちに料理を渡している姿見えた。
「ゴリョウさん 焼き鳥が しなぎれですの……!」
「おう! じゃあ補充するか!」
 楽し気なやり取りを見つつ、
「うーん、味見の時も思ったッスけど、本当においしいッスね……」
 テーブルにたくさんの食べ物を乗せて、イルミナがしみじみとそう呟く。対面には瑞希がいて、巨大な揚げ鳥をサクサク齧っていた。
「うん。ちゃんと覚えたから、覇竜に帰ったら皆に食べさせてあげるんだ~!」
「良い事だな」
 マカライトが頷いた。
「ああ。食材が足りないときは、力を貸そう」
 一嘉もまた頷いた。
「チキンの狩り方は、今回で学んだからな」
 ふっ、と義弘が笑う。
「ああ、私のラップサンドもたべてみてくれ。ゴリョウにも負けないつもりだ」
 リースヒースがそういうのへ、皆は頷いた。

 回りには、たくさんの人々の笑顔が見えた。種族や人種を問わぬ、笑顔。
 それは間違いなく、素晴らしい光景に違いなかった。

成否

成功

MVP

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 それでは、来年のいいオークの日にまたお会いしましょう!

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