シナリオ詳細
<総軍鏖殺>極北の名果と大いなる自然に挑みて
オープニング
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鉄帝国の北部、帝都スチールグラードを出て、北へ。
雄大なる山々のそびえるその辺り。
自然の猛威吹きすさぶ、人が理由なく立ち入らぬその場所に、ずんぐりとした球がある。
白に茶の混じったようなクリーム色。
もぞもぞと動き、球が伸びて楕円を描き、ゆっくりと立ち上がる。
それでもってようやく、それが動物の一種なのだと理解できた。
もふもふとしたクリーム色の体毛を、ぶるぶると振るわせて雪化粧を払ってみれば、その姿は熊に近い。
何かを探すように視線を巡らせたソレは、前脚を降ろして四足で歩き出す。
身体を揺らしながら、ゆったりと歩く姿は雄々しく、鼻先を地面につけているのは何かを探しているからか。
のそのそと動いていたそれは、やがて鼻を鳴らしながらくるくると円を描き、前脚で器用にも地面を掘り始めた。
前脚に並ぶ鋭い爪をスコップのようにして土をさらい、地面の中にある鼻先を掘った穴に近づけたかと思うと、がぶり。
穴から這い出た熊が咥えているのは、つるりとした丸い何か。
大きな熊に咥えられていて錯覚しそうだが、比率を考えると野菜にしては大きめに見える。
のっそりと座り込んで、自らが咥えたそれを咀嚼し始める。
『ぐるぅ』
『ギャォ』
唸り声と共に姿を見せた別の一匹に、掘り出した物を喰らいながらひと鳴き。
さすれば、唸り声をあげた方が咆哮を上げ、やがてどこからともなく同じように姿を見せる熊たち。
それらはゆっくりと動いて、最初に一匹がさらった土の周りを嗅ぎまわり、掘りだしてはナニカを食べ始めた。
雄大なる自然に生きる動物の一幕。
大地にて繰り広げられるそれを見下ろすように、大空を舞う鳥たちもまた、自らの生き方を示すものだ。
『クルゥゥゥオォ』
風を切って空を行く、大いなる翼。
その嘴は長く、鋭く、シギ類やサギ類を思わせるが、その大きさはそれらには到底分類できないほど大きい。
木々の上を滑るように舞うそれらの一団が、やがて一直線にある木々の方へと突っ込んでいく。
針葉樹ではあるものの、幹や枝の一つ一つがごつく見える木が、山の一帯に実りをみせている。
赤くて可愛らしい木の実が積もり始めた雪の冠を作っていた。
その木の実めがけ、矢のように鋭く鳥が迫り口を開く。
木とぶつかるその瞬間、バスン、と音を立てて鳥が口を閉ざし、木の実を丸呑みにした。
食されなかった実が衝撃で地面に落ちるのなど目もくれず、その鳥たちは幾度かそれを繰り返していく。
熊であれ、鳥であれ、それらが行く先を蜘蛛の子を散らすように動物たちが四散する。
それだけでこの2種がこの地の生態系における頂点なのだと容易に見てとれた。
●
「見つけた! エルリアちゃんのスケッチで見たのより、実物で見ると大きく感じるね」
ファミリアーの視点から雪山に生きる動物たちの様子を見ながら、炎堂 焔(p3p004727)は息を殺しながら呟いた。
「あとは何とかしてあの熊と鳥を防ぎながらお野菜と木の実を回収するだけ……だね」
焔の言葉を受けたスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)は動物たちの動きを見て呟く。
焔とスティア、それに6人のイレギュラーズ達は、焔立案の上で今回の作戦に参加していた。
冠位憤怒と思しき新皇帝に反発する形で鉄帝国は分裂した。
独立島アーカーシュや北辰連合は不凍港に向けての作戦を練り、帝政派やザーバ派もまた、各々がトリグラフ作戦を進めている。
ラドバウ独立区でも、帝都を始めとする地下鉄の存在を把握し始めたところ。
――だが、それら各派閥にて共通事項がまだ1つ残っている。
冬の到来に向けて大切なこと――即ち食糧問題だ。
それをほんの少しでも緩和するため、焔は友人であり植物学者でもあるエルリア・ウィルバーソンへ『鉄帝でも育つような作物』を聞きに行った。
エルリアから教えて貰ったのが、あの熊が食べている野菜であり、鳥が食べている果実だった。
有毒であり、生食にこそ向かないものの、非常に高い栄養価をもつというそれらの回収が今回の目的だ。
- <総軍鏖殺>極北の名果と大いなる自然に挑みて完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月30日 23時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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冬の猛威が山々に銀化粧が降り積もっている。
天へと伸びる幾つもの針葉樹を見上げれば、頭上を鳥たちが飛んでいる。
針葉樹の足元には可愛らしい赤い実が転がっている。
これが目的の木の実だろう。
「ほぉ……! これがイチイグワかな? 毒があるんだってね! どんな味がするのかな~♪」
そういう『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が空を見上げる。
『グゥワッグゥワ!』
鳥たちの鳴き声が響き、イレギュラーズめがけて飛んでくるのは5匹の鳥たち。
5匹の鳥たちがかわるがわる降りてきては鋭利なる身体で斬りつけてくる。
「こらっ!危ないじゃないか!
君達の大事な食料なのは分かるけど、少しくらい分けてくれたっていいと思わないかい?」
それらを退避しながら、マリアはそう言えば。
『グワッ、グワワッ』
敵意を隠さぬ鳥たち。
「仕方ないね、加減はするけど怪我させたらごめんよ!」
真紅の雷が雪原を赤く彩り戦場を駆ける。
「毒で身を守る植物には、『毒で身を守らないといけないだけの理由』が付き物だ。
今回の場合は、栄養価の高さがその理由という訳だな。
なるほど、これはかなり期待できそうじゃないか」
息を殺す『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は密かに移動してペリカンたちが一直線になる位置を取る。
「手早く終わらせてしまおうか――絶照・勦牙無極」
剣閃が美しく振り払われ、眩く輝く無極たる極光が真っすぐに戦場を貫いた。
壮絶たる破災の一撃がペリカンたちの装甲にも似た身体を削る。
「いや~有毒でもちゃんと手順を踏めば安全に食べられちゃうんすから知識って大事っすよね~。
本当に先人様々っすよ~」
笑いながら『No.696』暁 無黒(p3p009772)は走り出す。
気配を押し殺し、軽やかに駆ける様はまさに猫のように飛び出していく。
針葉樹を足場に蹴り飛ばして、ペリカンの背後から拳を叩きつければ、潰れた鳴き声が響く。
「そうだね、そのためにもまずは邪魔してくるペリカンたちを何とかしないとね。
せっかくエルリアちゃんに教えて貰ったんだし、失敗は出来ないよ!」
そんな無黒に頷いた『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はカグツチの力を限定的に解除する。
雪化粧に彩られた森を裂くは神の炎。
天を貫くように伸びたカグツチがペリカンたちを貫いていく。
「食料調達にも段々と難儀するようになってきたな。
だがまあ、正念場だからな、本腰入れてやるとしようか」
拳を握る『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は一気に飛び込んでいく。
握りしめた拳をペリカンの胴部あたりへと叩き込む。
鋭く突き立つように無数の拳打が打ち据えられ、その内部に炸裂する。
無数の拳はそれすらも必殺級だが、その真価は天命を抉る連鎖的な衝撃。
「こんな植物があるとは知らなかったな……実物の確保はもちろんだが、育て方や食べ方も確かめたいところだ」
メロディア・コンダクターを握る『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は鮮やかに剣を振り払う。
炸裂する音色は質量を持った弾丸となって戦場を馳せる。
過酷なる壮絶の楽団がペリカンたちを切り刻み、追い立て削っていく。
「そうだとしても、まさか草や木の実を収穫する時代に逆戻りとはね。
貧しい国だよほんと。贅沢を言ってられないのがゼシュテルの冬というモノではあるがね……」
自らの神性と軌跡を高め、『帝国軽騎兵隊客員軍医将校』ヨハン=レーム(p3p001117)はペリカンたちの猛攻すぎさったその刹那に術式を起こす。
美しきモノリスが針葉樹の森に突き立ち、鮮やかな光を放つ。
放たれた輝きが雪原に反射し、幻想を生み出していく。
放たれた眩き輝きはそれでいて温かく、傷を受けた仲間達の疲労感を取り除いていく。
「食べ物にも毒があるなんて……本当に厳しい環境なんだね。
少しでも皆の生活が豊かになるように頑張らないとね!」
迫りくるペリカンたちを見上げ『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はセラフィムを起動する。
美しき旋律が木々を揺らし、迫りくるペリカンたちの脳を揺らす。
最速で飛んできたペリカンがスティアへとその鋏のような嘴を叩きつけてくる。
●
ペリカンたちとの戦いは比較的早期の終わりを見た。
ある程度の交戦の後に貴道が考えておいたスピーカーボムによる咆哮が木々を揺らして、不利を悟ったペリカンたちは逃げて行ったのである。
「あいつらはあまり食べ応えもなさそうだ。これぐらいでいいだろ」
持ってきていたドリンクで喉を潤わせ、貴道は次を思っている。
(ま、次は逃がすかよ。クマってことは哺乳類だ)
握る拳に気迫を漲らせ、貴道は次の獲物に向けて闘志を漲らせる。
「木の実は落ちてるのよりもまだ枝に実ってる物を取った方がいいみたいだね。
地面に落ちたのは衝撃で中身の種が割れて種に含まれてる毒が実にも移っちゃってるのがあるみたい」
最終に取り掛かる中、焔はエルリアから渡されていたノートを眺めながらそういうものだ。
カグツチを伸ばしてさっくりと斬り開けば、それがあまり衝撃を受けないようにしつつキャッチしていく。
「それなら私の出番だね」
マリアは自らの真骨頂とばかりに圧倒的な速度をはじき出して枝の間を駆け抜けていく。
鮮やかに駆ける紅の流星が飛び移っては木の実たちをもぎ取っていく。
「しかしまぁ、人類とは本当にしたたかな生き物だよな。
こんな毒性の強い食べ物を食えるようにしてしまうのだから」
そういう汰磨羈も冠位飛行で空へ。
ペリカンどもがしていたように愛刀でバッサリと枝を切っては果実をもぎ取っていく。
可愛らしい赤の実は、下手をすれば猛毒を持つというのだから。
「木はイチイに近いな。増やすなら種や挿し木か。
実と種を採ったら、土と枝ももらって苗木を作ろう」
イチイグワの木を眺めみたイズマは土と枝で苗木を作っていく。
「これとかは色もいいし、大きさも良い感じ! あとは潰れないように慎重に……」
焔からの注意点をスティアはそっと木の実に触れて、枝からもぎ取っていく。
「言われてた通り、イチイの実に似てるね」
ある程度取ったら荷台へと衝撃を与えないようにしながら入れていく。
「ひとまずはこれくらいっすかね~」
待機させておいたドレイクチャリオットにある程度のイチイグワを乗せて、無黒はぐぐぅ~っと伸びをした。
「毒抜きとかは後にして、まずはもう1個取りに行きましょうっす!」
「次はヒグマだっけ? ペリカンに比べたら相手にしやすそうだけど……
腐っても熊だし、油断はしないようにしないとね」
そういうヨハンの言葉に、一同は気を取り直して次の舞台へと歩き出す。
ぼこぼこと雪と土を掘り起こされた穴ぼこだらけの空間は直ぐに見えてきた。
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白化粧に満ちた大地に穴が幾つも開いている。
「わー! 素敵な景色だね!」
目を輝かせるのはマリアである。
一面の雪景色をぽつぽつと穴が開いていた。
ぽっかりと開いた複数の穴ぼこの近くでは、食事に勤しむ熊たちの姿がある。
「本当は少し分けてもらえればいいんだけど……ごめんね」
スティアは祈るような仕草でそう言いながら、戦場に福音の音色を奏でる。
響き渡る美しき福音の音色は凶暴なるヒグマたちの思考さえも魅了していく。
ぐるりと動いた頭部が確かにスティアを見れば、3匹ほどゆっくりと歩き出す。
「縄張りに入り込んじゃってごめんね、でもボク達もこれが必要なんだ」
姿を見せた焔が言うのが先か、こちらの匂いに気付いたらしいヒグマたちが臨戦態勢を取るのが先か。
初手より打ち出される最速の侵略が紅蓮の尾を引き駆け抜け、刺突が雄叫びを上げたヒグマの心臓目掛けて突き出される。
確かな一撃は、しかし。
『グゥルルゥゴォォ!!!!』
咆哮が響き渡る。
鋭利な爪が刃物の如く揃い焔に迫れば、持ち前の身体能力でそれを無理矢理躱してみせる。
「うーん、やっぱり熊だからかな!?」
じんわりと赤く心臓辺りが濡れているにもかかわらず、元気なヒグマに思わず声が出た。
肉薄と共に白雷を纏うマリアがそれに続く。
「とらぁ君のいい遊び相手になれそうな子達だね!」
放たれるは雷閃。苛烈なまでの白き弾丸が戦場の銀世界に乱反射を起こしながら乱れ舞う。
美しき連撃は心臓に風穴を開けながらも元気のいいヒグマから余裕を刈り取り続けて行く。
「ペリカンどもは見逃したが、ユー達は駄目だ。
1匹残らずミー達のご飯になってもらう!」
啖呵を切るように貴道が獰猛に笑う。
『グゥゥオォォォォ!!!!』
挑戦を受けるとばかりに極北ユキヒグマが雄叫びを上げた。
隆々とした肉体は貴道にも引けを取るまい。
「毒を持つわけでもなく、多少デカくて肉付きの良い自分達を恨むんだな――」
速攻とばかりに貴道が拳を突き出した。
拳圧が雪原の雪を巻き上げ、ユキヒグマの身体に叩きつけられていく。
連打を挑発と受け取ったユキヒグマが一気に駆け抜けてくる。
「血と内臓、雑多な肉は刻んで煮詰めて腸詰めのブラッドソーセージに!
主要な肉は凍らせるor塩漬け、燻製に!
当然、毛皮は防寒具に――一切無駄にはしないから大人しく糧となれ!」
突撃してくるユキヒグマの頭に合わせて、拳を真っすぐに打ち出した。
骨が砕ける音がしてユキヒグマが仰け反りながらも、強烈な爪の横薙ぎが迫りくれば。
天性の直感を以ってそれを退避する。
「流石に立たれると迫力があるな。
まぁ、それだけだが――足元ががら空きだぞ」
言い捨てる汰磨羈は貴道の猛攻にぐらつくヒグマを愛刀で払う。
足元の雪すら溶かす刀身の斬撃が背後よりユキヒグマの足を切り刻む。
ほぼ無理矢理に引きちぎるように、引かれた斬撃は堅牢なる筋繊維を物ともしない。
紅に焼く斬撃が花を開く。
続けて動くイズマは前へ。
ユキヒグマへと肉薄すれば、細剣に魔力を籠めた。
振り払う細剣は指揮でもするように美しき軌跡を引いて残影を描く。
美しき夜空の剣技は純白の銀世界に映える黒き閃光となる。
連続で撃ち抜く斬撃は苛烈にして流麗に、鳴り響く音色が戦場を彩っていく。
「逃げるなら追わない方針でいいとは思ったけど……まあ、あいつの言うことも間違ってないかな?
贅沢を言ってられないのがゼシュテルの冬ってのは、他らぬ僕の言葉なわけだし?」
そう首を傾げるヨハンが術式を起動すれば、温かな光が空より降り注ぐ。
「でもま、僕らの敵じゃないね。気にせずぶっとばせ!」
鮮やかな光のカーテンは消耗したであろう疲労を取り除く。
「いまのうち……っす!」
飛び込んでいった無黒が熊の1匹の背後へ。
完全なる気配消去は野生に生きる狩人たちのように。
刹那のうちに打ち出された拳が黒雷と白雷を纏いて伸びる。
完全なる死角に打ち出した拳に、ヒグマが唸るような咆哮を上げ、ぐらりと崩れる。
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「スティアスペシャル! は駄目なんだっけ……」
戦闘の終了後、ちょっぴりしょんぼりするスティアがいた。
「スペシャルはほら、鉄帝の人達に振舞う時でいいんじゃないかな!」
「そうだね! それなら、ひと先ずは試食会だー!
焔ちゃん、毒抜きってどうすればいいの?」
そういう焔に頷いて、スティアがやる気を取り戻す。
「それもエルリアちゃんのノートに書いてあったよ!
ええっと、ラディッシュは火を通せばいいみたい。
イチイグワの方は種を傷つけないようにそっと抜いてから……」
「……こんな感じ?」
スティアはイチイグワを焔の言う通りに作業を始めて行く。
「多分、ドライフルーツにするのにも種は取り除いたほうが良いよね」
手早く種を引っこ抜いて、水につけて乾燥させる作業を繰り返していく。
「焔、そのノートを見せて貰えるか?」
汰磨羈はそれを見て声をかける。
「うん、いいよ」
「助かる。……ふむ、かなり詳細に調査されてるみたいだな。
なるほど、これならこっちでもざっと調べるぐらいで良さそうだ」
受け取ったエルリアのノートの詳細を眺めみた汰磨羈は、持ってきていた実験道具を広げた。
幾つかのラディッシュとイチイグワを手に、ノートを読みながら毒性について簡易ながら調べて行く。
「ははぁ……生食に向かないものばかりだなぁ、焼けば食えるラディッシュは楽で良いね。
何かいい味付け方法ある?」
その様子を見ていたヨハンがそう言えば。
「うーん……ピクルスにしてみるとか?
残った葉の部分は勿体ないからスープにしちゃうね」
「良いかも! クマのお肉もあるし、煮物とかお鍋にもしてみよう!」
首を傾げたスティアが言えば、焔も頷く。
「それなら私はラディッシュを湯通ししてバターソテーにしよう!
塩胡椒も効かせてやれば美味しいに違いないよ!」
思いついたマリアがそう言って、ラディッシュを取って調理を開始すれば。
どこからかお腹の虫の鳴る音。
「ふっふっふっ、毒味は俺が承ったっす!」
そういう無黒の全身からは闘気が溢れだしている。
不屈の英雄を抱く魔術には状態異常を無効化する効果がある。
「じゃんじゃん持ってきてほしいっす!」
「まぁ、食べれなきゃ僕が癒すし、気にせず持ってきてよ」
そんなことを言う無黒に合わせてヨハンもそちらに回っていた。
「ぜひ私も参加させてくれ」
汰磨羈も味見組に参加すれば。
「分かった。じゃあ、鍋や煮物への調理に関しては俺に任せてくれ」
そう言ったのはイズマだ。
鍋に入れたラディッシュと調味料に熊肉を入れて煮込み、簡単なスープを作っていく。
ぐつぐつと煮だした音と共に、お腹を刺激する香りが辺りを包んでいく。
「……うん、確実に処理すれば問題ないみたいだ」
簡単な味見に火の通ったラディッシュを齧り見れば、問題なく飲み込んだ。
「後は……鍋と煮物、ジャムとジュースだったか」
呟きながらどんどんと調理していく。
●
新鮮な食材たちを使った試食会は戦闘での疲労もあってその効果を確かにする。
イチイグワは形状こそイチイであるものの、味もクワに近かった。
程よい酸味と強い甘みはジャムやジュースに適している。
ラディッシュもキャベツ状の形状の割に、割って煮物にしたり煮込むとどこか人参やダイコンのような味がした。
いわゆるラディッシュらしいラディッシュの味ではないが、美味というほかあるまい。
「お、美味しかったっすけど……お腹が……クルジイっす……」
お腹を摩りながら言う無黒がいた。
気のせいか来た時よりも大きく膨れているような気がしないでもない。
5匹の熊と、イチイグワ、ラディッシュを使っての料理は数多く並んでいる。
「お腹いっぱいだぁ……鍋で温まったし、そろそろ帰ろうか」
同じくお腹を摩りながらヨハンが言えば。
「そうっすね! 美味しい調理方法も見付かったし、これで少しは冬支度の足しになったっすかね!
さぁ~! 沢山持って帰って街の人達に美味しい料理を振舞うっすよ!」
明らかに食べ過ぎた無黒の声が若干震えているのも仕方あるまい。
「そうだな。毒抜きも周知させれば役に立つはずだ。
帰ったら他の人達にも提供してみよう」
そう言って頷くイズマ、無黒のドレイクチャリオットに満載の食材を載せて一行は町へと帰っていく。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
大変遅くなりましたが、シナリオを公開させていただきます。
●オーダー
【1】イチイグワの確保
【2】極北ラディッシュの確保
●フィールドデータ
【1】イチイグワの森
大きな針葉樹林です。
果実はどちらかというとイチイの実に似た形状をしています。
栄養素はクワにも似つつその含有量は非常に豊富です。
含まれる栄養分に比例するかのように、果実そのもののサイズもかなり大きめ。
致死性の高い猛毒が含まれており、生では到底食べられたものではありません。
毒抜きの上でジャムやジュースなどの加工を施すと良いでしょう。
【2】極北ラディッシュの自生地
雪の降り積もった地上です。
極北ユキヒグマが極北ラディッシュを掘り出したあとがぼこぼこと穴が開いています。
地面を掘ってみればそこら中で掘り出せるでしょう。
キャベツのような楕円系の形状に人参のような赤ともオレンジともいえる色をしたお野菜です。
ラディッシュの名の通り、大根系の一種です。
キャベツと人参と大根を足して3で割ったような豊富な栄養価を持ちます……が。
致死性の高い猛毒が含まれており、生では到底食べられたものではありません。
熱を通せば無力化出来るようなので必ず調理しましょう。
●エネミーデータ
【1】イチイグワの森
・針樹ペリカン×5
非常に大きな鳥の一種です。
鋭利な嘴は鋼のように固く、鋏のような印象を受けます。
この嘴で実と枝をばつんと切ってそのまま丸呑みにする食事方法を取っています。
また、脚もごつく、三日月のような弧を描く鉤爪も特徴といえるでしょう。
食性の割に性格はかなり獰猛で縄張り意識が強く、
イチイグワを狙えば確実に敵とみなして戦闘行動に移行します。
豊富なHPを持ち、頑健な肉体はそれそのものが高度な防御技術となります。
連撃能力(EXA)が高く、個体同士の連携も予想されます。
物理戦闘が主体であり、鋭い鉤爪は【出血】系列の傷や【致命】傷を受けるかもしれません。
また、有毒な果実を好んで食す生き物であるためかその攻撃にも【致死毒】が含まれているものもあります。
鋭い嘴を用いる突きは【スプラッシュ】相当の連続攻撃が予想されます。
また、有毒の果実を好んで食す生態上、【毒無効】のパッシヴを持ちます。
【2】
・極北ユキヒグマ×5
ヒグマを思わせる体格の熊の一種です。
強靭な体躯と非常に長く鋭い爪を持ちます。
類まれな嗅覚で地面に埋まっているお野菜を探り、長い爪で掘り出して食事を取っているようです。
熊だけあり賢く、普通は人間を襲ったりしませんが、餌場を荒らせば当然のようにその猛威を振るいます。
豊富なHPを持ち、頑健な肉体はそれそのものが高度な防御技術となります。
連携能力こそさほど高くありませんが、その分個体の能力は油断なりません。
物理戦闘が主体であり、巨大な体躯から齎される突撃や薙ぎ払いはそれだけで【乱れ】系列の衝撃を与えるでしょう。
鋭い鉤爪は【出血】系列の傷を与える他、【麻痺】や【火炎】系列相当の焼けるような痛みを与えるでしょう。
また、有毒の果実を好んで食す生態上、【毒無効】のパッシヴを持ちます。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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