シナリオ詳細
天義汎用モブ貴族VS空飛ぶシャーク・パイソン
オープニング
●天義にサメが泳ぐ日
その日、静謐なる城の都は阿鼻叫喚の地獄と化す――。
突如月食の赤と共に現れた血に飢えた怪物は、地獄よりの使者か。
悪しき背教の儀式より生み出された、シャーク・パイソンが天義の空を舞う!
立ち向かうは天義汎用モブ貴族たち! ああ、力なき彼らはシャーク・パイソンの魔の手から天義の街を守れるのか――!?
パッポラ監督最新作、大長編アクション映画・『天義汎用モブ貴族VS空飛ぶシャーク・パイソン』、近日公開――。
「なにこれ」
と、仲間のイレギュラーズがそういうので、あなたも胡乱気な顔で目の前の男を見つめた。
パッポラ・ベーコンパン監督。天義でも(一部のクソ映画マニアに)有名な映画監督である。
練達より仕入れたビデオ・カメラと映像技術を駆使して動画を撮影。
いわゆるDVDなどの映像媒体や、映像記録魔術スクロールに保存し販売する映像会社の代表。
最近では、『サイコパカラクダ・シャーク』とか、『悪魔の毒々しいシャーク』とか、『勝手に戦え・シャークVS地獄のアストリア』とか、B級を下回るC級くらいの作品を大量生産した監督が彼である。
そんな監督に呼び出されてみれば、手渡されたのが汎用貴族(TOPに立ってるあれ)の衣装であった。
「役者が」
監督が言う。
「バックレまして……」
「逃げられたのですか?」
そういう仲間の言葉に、パッポラ監督は頷いた。
話によれば――。
ちょっと辛い撮影をお願いしたら、翌日からぱったりと連絡が途絶えてしまったのだという――。
「たった……たった、『空飛ぶ殺人人食いザメとリアルに格闘してほしい』とお願いしただけなのに……!」
「そりゃ逃げるわ」
仲間の一人が呆れたように言うので、あなたも嘆息した。そりゃ逃げるだろう。一般人……鍛えていたとしても、役者は一般人。空飛ぶ殺人人食いザメ、などという得体のしれない生き物と格闘するのは御免である。
「そこでですね」
「読めました」
仲間が言った。
「やれというのですね……撮影を……」
「そうです!」
監督ががくんがくんと頷く。
「これは一大スペクタクル社会派大人向け映画になるはずなのです……社会問題とか社会風刺とか、そういうのも織り込んで」
「絶対失敗するぞ、そういう映画」
「いけます! 今回は! 天義最優秀クソ映画賞を総なめできるはずです!」
「それって名誉ある賞なんですか?」
嫌そうに仲間の一人がそういう。
「そもそも、何で天義でサメなんですか? サメなんですから……海洋とかでとった方がいいのでは?」
「えっ、天義と言ったらサメでしょう? ほら、よくサメも飛んでますし……?」
「そんな馬鹿な」
仲間の一人が言った。
「そんな……そんなことが。いや、あるかもしれない……?」
思い起こしてみる。
思い起こしてみる。
サメが飛んでいたことがあるかもしれない……。
「飛んでるのです」
と監督が言った。
「いいですか。そもそもサメとは、身近な恐怖の象徴と言えるのです……海に行けばだいたいいますからね。そして人を襲う凶暴性……良いですか、最も想像しやすい、死のアイコンとも言える」
「それって熊とかでもいいんじゃ」
「もちろんそうです! ですがっ!」
ばっ、と監督は両手を広げた。
「サメ、良いじゃないですか……!」
趣味か、と全員が悟ったので、それ以上は何も言わなかった。
「それで、私たちがやるべきなのは、どの部分の撮影ですか?」
「当然、役者たちが逃げてしまって、撮影できなかった部分の撮影です。つまり、『空飛ぶ殺人人食いザメとリアルに戦闘』する部分――」
「それを」
仲間が嫌そうな顔をした。
「この汎用貴族モブ服を着て……?」
「そうです」
監督がそういう。あなたも思わず嘆息した。まぁ、顔出しで撮影するよりはマシだろう……。
「というわけで、皆さん、サメと戦って何とか勝ってください。
このシーンは丁度クライマックス。決戦の時ですから、サメはまぁ、普通に処理しちゃって大丈夫です。
というか、処理してしまってください。こんなの逃がしたら、不正義で処理されてしまうので」
「はぁ……」
仲間が嘆息する。監督は気にした様子もなく、続けた。
「それから……できるだけ派手に! 格好よく! お願いします! 作品の目玉なので!」
「まとめると……」
仲間が言った。
「なるべく派手に見栄えが良いように、カッコよく……汎用モブ貴族のコスプレをして、『空飛ぶ殺人人食いザメとリアルに戦闘』する……でいいんですね?」
「そうです! どうぞよろしくお願いします!」
監督がジャンピング土下座した。あなたはその様子に肩を落としつつ、しかしこんな依頼書を覗いてしまったことの不幸を呪うしかあるまい。
納期は迫っている。撮影もすぐにやらなければなるまい。
気持ちはさておき、ハイ・ルールもある。イレギュラーズ達は、決して逃れられぬサメ映画の呪縛に絡めとられようとしていたのだった――!
- 天義汎用モブ貴族VS空飛ぶシャーク・パイソン完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●映画撮影、スタート!
というわけで、一同は早速ロケ地(天義アダナシア大聖堂)まで来たのだ――。
「よくこんなまともな所でロケが抑えられましたね……」
思わずびっくりした様子で言う『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)。確かに、アダナシア大聖堂は、かつての聖人の名を刻む、割と有名なスポットである。
「あぁ、天義の正義を知らしめる映像の撮影です、と言ったら許してもらえました。
とはいえ、長々と選挙はできませんので、速やかに撮影したい所です」
「なるほど……」
エリシアが嘆息する。天義の正義を知らしめる。天義のモブ貴族が悪しきサメと戦う映画なので、嘘は言っていない。あるいは、アダナシア大聖堂担当の聖職者の中に、クソ映画ファンがいた可能性も無きにしも非ずだが、それは可能性として排除しておこう。なんか嫌だし。
「それにしても、この貴族の衣装……ペラペラの、練達あたりのコスプレ衣装かと思いましたが。中々質は悪くないのですね?」
と、エルシアが言う。来ているのは、貴族風のドレス衣装だ。もちろん、本物の貴族がこれを着ていたら一目見て鼻で笑われるだろうが、それでも、練達あたりの安っぽいコスプレ衣装よりはずっとましだ。
「ええ、今回予算が倍増したので! ちょっと奮発しました!」
衣装スタッフがそういうので、エルシアは「ちなみにいくらほど?」と尋ねた。すると、スタッフは、
「五倍です!」
にこやかにそういう。なるほど、とエルシアは思った。『五倍も増えて、この程度』なのだから、前回はよほどの低予算だったのだろう。さておき。
「というわけで、皆さんには空飛ぶサメと戦っていただきます!」
と、監督が言うので、
「サメが空を飛ぶ? のですよ……???
何を、言ってるのでして???
もう少し常識を学んでからモノを言ってほしいのでして」
と、陸鮫に乗ってふよふようきながら、『いつだってダイナマイト』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)がそういう。
「え」
監督が声をあげた。
「でも、実際に……それにほら、その陸鮫も」
「陸鮫は、陸鮫なのですよ?」
ルシアが言った。
「陸鮫は陸鮫だから、陸鮫であって鮫ではなわけでして。
鮫は鮫なので、陸鮫ではないのだから、陸鮫ではないのでして。
つまり鮫は鮫、陸鮫は陸鮫。陸鮫は飛びますけれど、鮫は飛ばないのでして。
よって、Q.E.Dなのでして」
「なるほど」
監督が唸った。
「あれは飛鮫です」
「飛鮫?」
「つまり、飛鮫は飛鮫です。陸鮫でもなければ、鮫でもない。つまり飛鮫は鮫ではないので、飛びます」
「なるほど」
ルシアが唸った。
「納得でして」
「何が?」
思わず、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が声をあげた。
「今の会話何? 高熱風邪の時に見る夢?」
「ふむ……だが、何となく……分かりかけてきた……」
『先導者たらん』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が呟く。
「世界のすべてが……分かりかけてきたぞ……。
サメが……空を飛ぶ理由も……1+1が2になる理由も……世界の成り立ち……そうか……サメとは……命……」
「いや、それ絶対わかっちゃいけない奴だって!!」
カインががくがくとシューヴェルトの肩を揺らす。はっ、という顔をした。
「僕は今何を?」
「よかった、虚無の世界に連れていかれる所だった」
サメとは何なのか。これがわからない。
「どうでもいいのですけれど」
『味のしない煙草』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)が手をあげた。
「私、カレーを作りますわね」
「なんで?」
『生イカが好き』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)が声をあげる。
「この状況でどうしてカレーを?」
「いや、ほら」
リドニアが言った。
「こういう時は、カレーですわよ。映画の前に、CMとか入るじゃありませんか。それを撮影します。私がカレーを作りましょう。ささっと。サメで。いかがですか?」
いかがですかと言われても。だが、ワモンは「うーん」と唸ってから、
「オイラはイカが食べたい!」
「なら、イカも入れましょう」
「ならよし!」
うんうんと頷く。
「よーし、イカカレーが待ってると思うとやる気も沸いてくるぜ!
この変な衣装は戦いにくくていやだけど、オイラのガトリングはそんなもん邪魔にはならないからな!」
「その意気ですわ!」
リドニアが笑う。かんかん、と鍋を鳴らした。
「へー、映画、ですかぁ。不思議なものがあるんですねぇ」
そういうのは、『(自称)将来有望な騎士』シルト・リースフェルト(p3p010711)だ。練達製のポータブルテレビを眺めながら、シルトはふむふむと唸る。
「僕たちはこれを撮影するのですね……わ、この爆発とかは凄いですね! 本物のようです!」
「特殊効果や、CGというのもありますけれど。本当に爆破しているものもあるそうですよ」
そういうのは、『特殊効果スタッフ』ユーフォニー(p3p010323)である。隣には、呼び出したばかりの今井さんがうんうん頷いていた。両手に今日の台本なんかを抱えている。
「この前、海洋でも撮ったのですが……楽しいですよ。
あの時は確か……タコとイカが戦っていました」
「海洋生物って何か恐ろしいものなのですか?」
懐かし気に言うユーフォニーに、シルトが胡乱気な視線を向ける。まぁ、サメは天義で空を飛んでいるし、タコとイカは海洋で大暴れしている。混沌世界おそるべし。
「あ、ユーフォニーさん、演出の打ち合わせお願いしますー」
スタッフから声をかけられたユーフォニーが、「はーい、ただいま!」と声をあげて、にこにこと去っていく。今井さんは、ぐ、と親指を立てて見せると、シルトに応援の意を示して、ユーフォニーを追う。
「映画かぁ。よし、僕も頑張りましょう! なるべく、視聴者を楽しませるようにしなくちゃ……!」
ぐっ、とシルトが拳を握る。どんなムービーであれ、関わっている人間は真剣なのである。出来上がったものが受け入れてもらえるかは別にして。
さて、そんなこんなで打ち合わせをしつつ、撮影の時を待つ。時刻は夕暮れ。夕日に赤く染まるアダナシア大聖堂が美しい。そんな美しい大聖堂の前に、檻に入れられたサメがうごうごしていた。
「うーん、なんか嫌な光景だな……」
思わずワモンがそういう。状況を説明すれば……いやな光景、としか言いようがない。
「冒険者だからね、変な光景は色々見てきたけど、今回のはその中でも指折りだなぁ……」
カインが苦笑する。
「まぁ、いい感じに何とかしましょう」
エルシアが言う。
「こう……祈りとか……そういうのを見せればよいのでしょう? というか、私はこのドレスで派手なアクションは無理ですからね……」
そう言って、ひらり、とスカートを揺らして見せた。確かに、中々派手なアクションは厳しいだろう。とはいえ、魅せ方はある。問題はない。
「えーと、それじゃあ、そろそろ放ちますので」
すっかりスタッフに紛れ込んだ感じのユーフォニーが言う。
「それは良いのだが……リドニア、戦闘プレイングを忘れているぞ?」
シューヴェルトがそういうのへ、リドニアが煙草をふかした。
「戦闘プレイング? ありませんわよそんなもの」
「何を言っているんだ」
シューヴェルトが困惑する。
「一応ノーマル依頼なんだぞ」
「はー、所詮はネタ依頼ですわ。デッドリースカイしてクリムゾン・インパクトする、とか書いておけば充分ですわよ。
洗井落雲、御遊びはこの辺りでいいかげんにしろって所を見せて差し上げますわよ」
「う、うーん……」
流石のルシアも困惑する。
「まぁ、確かに、ルシアも「ずどーんする」くらいのことしか書いてありませんけれど……」
「ま、まぁ、何かあったらサポートすればいいですよ」
シルトが苦笑しつつ言った。
まぁ、何にせよ。
撮影、開始である――!
●リドニア・アルフェーネ暁に死す
「リドニアーーーーーッ!!」
シューヴェルトが叫ぶ。サメのよくわからないビームを喰らってリドニアが地面に埋まっていた。
「あれほど戦闘プレイングを書けと……!」
くっ、シューヴェルトが呻いた。因みにモブ貴族の格好をしている。ついでに言えば、演出係のユーフォニーのスキルによって、サメたちは過剰に悪っぽいエフェクトでめらめらしていたし、仲間達は神聖な感じでめらめらしている。演出のパワーである。
「うーん、いい画がとれてるなぁ」
監督もご満悦だ!
「ああ、なんという事でしょう……」
さて、一方、エルシアが「よよよ」という感じではらりと跪いて祈りをささげた。
「さぁ、祈りましょう……死んでしまったあの方のために、そして、悪しき不正義の鮫に天罰を~~」
エルシアがそういうと、自然への祝詞を唱える。エルシア曰く、「天義の神も大自然もきっと似たようなものですし」との事である。不正義ポイント+1。
兎に角、エルシアの祈りの力が、サメを愛に目覚めさせた。愛に目覚めた鮫はなんか落ちて死んだ。
「え、えと、ここでボイスです! 皆さん! せーの」
と、演出係のユーフォニーがそういうので、皆が口をそろえてこう言った。
『神の奇跡だ!』
なんかそういう事になったらしい。いずれにしても、(リドニアは地面に埋まっているが)それなりにイレギュラーズ達は奮戦していた。そういう事にしておいてほしい。映画としてはよい感じの取れ高である。
「エルシアの祈りに負けてられねぇな!
おりゃあー! 天義モブ貴族アザラシガトリングだぜーーっ!!」
ワモンが叫びながら、ばたたたたた、とガトリング砲撃をぶっぱなす。天義で、モブ貴族で、アザラシで、ガトリング。属性過多である。空を飛ぶサメがばぁっ、と散るが、冷徹なガトリングはその鮫を逃がすことはない。サメを倒せば如何入ったカレーを食べられるのだ。料理人は地面に埋まっているが。
「オイラのイカカレーのために死んでもらうぜーーっ!」
容赦のないガトリングが空を舞う!
「いまです、ルシアさんも、ずどーん、でして!」
演出係のユーフォニーが声をあげるので、
「了解でして! 陸鮫さんとの連携を見せてあげるのでして!」
ぴっ、と敬礼などしつつ、ルシアがクラッカーを構えた。
「まずは魔砲クラッカーでして!」
ずどーん、と音を上げながら、虹色の光が輝く!
「そして魔砲スポットライトでして!」
ずどーん、と音を上げながら、虹色の光が輝く!!
「さらに魔砲ダイナマイトでして!」
ずどーん、と音を上げながら、虹色の光が輝く!!!
「お次は破式魔砲クラッ」
「あ、もう大丈夫です!」
ユーフォニーがわたわたと手を振った。
「これ以上だは画面が虹色になってしまいまして!」
「なるほどでして! 今は我慢の一手でして!」
若干口調のうつったユーフォニーに、ルシアがうんうんと頷いた。
「ワーッハッハッハ! 祭りだ祭りだ! わらえわらえーーい!!」
なんか神輿の上に乗ったバイクに乗って、センスを振り回すシルト。
「つまり派手な演出とはこうですね! 先ほど映像を見て学習しました!
ここでカメラ目線! 視聴者ともこれで縁ができた!!」
なんともド派手な演出である。神輿とバイクは慌てて小道具の人が用意した。ありがとう小道具の人。
「さぁ、ここから反撃ですよ!」
シルトが神輿から飛び降りる! ついでにルシアがクラッカーをズドーンした! その輝きに合わせて、シルトが斬撃を繰り出す。サメが切り裂かれて、大地に堕ちる!
「えーと……不正義は成敗~~~!! サメなどお供にもならん!」
精一杯大見えを切ってみせるシルト! 一方、その隣に立って、かぁ、と喝の声をあげるカイン!
「不正義の怪物よ、これ以上の狼藉は許さぬ――ここから先は、我々が相手になろうぞ!」
かあっ! と喝の声をあげるや、手にした怪しい杖から強烈な魔力砲撃が解き放たれる! 放たれる極太の魔力ビームが、サメを次々と打ち落としていった! ああ、だが! 彼らの郵政もここまでであった――!
「ああっ」
エルシアがよよよ、と倒れる。
「エルシア殿ォ!」
役に入りきったカインが叫ぶ。サメは特に何もしていない。なんかエルシアが倒れた。
「皆様……申し訳ありません。私はここまでのようです……!」
かくり、とエルシアが倒れた。その後小声でささやく。
「『敬虔な神の僕があっさりと敗れるシーン』は、サメの強大さを印象付けて逆転のクライマックスに繋げる需要な役割を担ってくれる筈です……!
今ですよ、皆さん!」
ぐっ、と親指を立てて倒れるエルシア。因みに隣にはリドニアが地面に埋まっている。
「そ、そんな……!」
満を持して、ユーフォ―ニーがエントリーだ!
「ねえっ、私たち……分かり合うことは出来ないんですか?
共存の道は、ないんですか……?!」
きらきらとした瞳で、そう問いかける。サメが困ったような雰囲気を出した。冷静に考えると、急に連れてこられて戦わせられているので、サメも被害者だとは言えなくもない……でも討伐推奨の害獣だからなぁ……サメにも悪い所がなかったとは言えない……。
「……っ、わかりました……!
本当は一緒に空を飛びたかった、みんな幸せになれる方法を考えたかった……っ!」
くぅっ、とユーフォニーが悔しそうになんかそう言った。サメは困った顔をした。
「それが叶わないなら……覚悟、しなさい……!!!」
ユーフォニーがこっそりサメに食材適性を植え付けつつ、構える! そして、残る仲間達も、一斉に構えた!
「なるほど! ここから必殺攻撃のフェイズか!」
何か間違った映像を学んでしまったらしいシルトが叫んだ。とはいえ、おっしゃる通りである。ここらで片をつけなければ、映画の尺もリプレイの尺もない。
「人食いザメよ! この鮫狩りの貴族騎士が、貴様らを切り裂き、その肝臓をわがシャチに食わせてやる!」
シューヴェルトが陸鯱に乗り、叫ぶ! もう貴族胃の衣装は脱ぎ捨てた! 邪魔だったのである。こうなると撮影企画が滅茶苦茶だが、監督はライブ感を大切にする人なので、面白かったのでカットしません。
「いくぞー!!」
シューヴェルトが陸鯱と共に駆ける! その刃で、サメを次々と三枚におろしていった!
「いきましてーーーっ!!」
ルシアがぽちっ、とボタンを押すと、あちこちでダイナマイトが炸裂する! めくれ上がる石畳! 崩れ落ちる建物! まって、この修繕費どこから請求されるの!?
「しりませんでしてーーっ!!」
ルシアが突っ込む! 両手にダイナマイトを抱えて!
「リドニアさんの仇! エルシアさんの仇! 陸鮫さんの仇でしてー!
合言葉は『いつだってダイナマイト』こういうのは怖気づいたら負けでして!!
魔砲戦士は自らを魔砲となって鮫ごと存在の昇華をすることでこの災いを終わらせるのですよ!!」
何言ってるんだこいつ、インフルエンザの時に見る夢か?
「よっしゃー、起爆はオイラに任せろ!!」
ワモンが叫び、ガトリングを掃射する! 残るサメたちをフッ飛ばしながら、ルシアの持っていた『殱光砲魔神ダイナマイト』に着火した。
爆発した。
ずどーん、と強烈な虹色の光があちこちに響き渡り、サメをまとめて吹き飛ばしたのである! クライマックス! 大勝利だ!!
「うーん、いい画がとれたなぁ」
ほくほくと、監督がそう言って笑った。
「ねぇ、これがいい画、って、天義の映画界って大丈夫なの?」
思わずカインがそう言った。
誰も返事はできなかった。
●カレーのレシピ
~シャーク・パイソンクッキング~
必要な物
<材料(8皿分)>
天義カレー<中辛>……2箱(280g)
玉ねぎ……中2個(400g)
じゃがいも……中2個(300g)
にんじん……中1本(200g)
サラダ油……大さじ2
水……1000ml
シャーク・パイソン……20匹
まずは具材を切りそろえていきます。
玉ねぎは繊維にそって、くし型に切るのが基本。シャキシャキ感が残り、加熱しても形が崩れにくいので、カレーにぴったりです。
じゃがいもは、皮をむいて、芽を取り除きます。
まず縦に半分に切り、一口大に切りそろえていきましょう。
にんじんも皮をむき、一口大に切っていきます。
野菜を切り終えたら、次はシャーク・パイソンを。
空飛んでるのでデッドリースカイしましょう。
今日はルーを使うのでシャークに下味はつけていませんが、軽く塩・こしょうをして小麦粉を薄くまぶし、お鍋にサラダ油とバターを熱して皮の面か らクリムゾン・インパクトでこんがり両面に焼き色を付けましょう。
後は厚手の鍋に油を入れ、材料を炒めます。
玉ねぎがしんなりしたら、水を加えましょう。あくを取り、具材がやわらかくなるまで煮込みます。
具材に箸がスッと通れば、十分やわらかくなっています。そうしたら一旦火を止め、ルウを割り入れて溶かします。
完成! 終わり!
カレーの匂いが漂っている。
今はすっかり撮影を終えて、スタッフ総出でカレーを食べていた。
「いやぁ、いい撮影だったなぁ」
監督がにこにこと笑った。
「どうですか、皆さん。このまま、うちの専属俳優に」
そう尋ねてきたので、イレギュラーズ達は異口同音にこう言った。
『嫌です』
終劇。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ご参加ありがとうございました。
後日百点満点のクソ映画評価を与えられた本作は、天義クソエイガ・オブ・ジ・イヤーの対象に輝いたそうです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
映画! 撮影! です!
●成功条件
映画的に派手になる様に『空飛ぶ殺人人食いザメ』を倒す。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
役者が逃げてしまったため、役者の代わりをお願いしたい――。
そのような依頼を受けてやってきた皆さんイレギュラーズ達。
そんなあなた達を待っていたのは、汎用モブ貴族の衣装と、『空飛ぶ殺人人食いザメとリアルに戦闘するシーン』の撮影依頼でした。
つまり、みなさんは、汎用モブ貴族の衣装を着て、空飛ぶ殺人人食いザメと戦う必要があるのです。それも、動画映えするように、カッコよく。
状況はめちゃくちゃですが、まぁ、やることはシンプルです。
かっこよく! サメと戦いましょう!
ちなみに、映画を派手にする提案とかは、監督は柔軟に受け入れてくれます。もうこの際、映画を乗っ取る勢いで行きましょう!
作戦決行時刻は夕刻。夕日の中でサメと戦います。特にペナルティなどは発生しません。撮影に集中してください。
●エネミーデータ
空飛ぶ殺人人食いザメ ×20
こんなのにいるの!? という感じで20匹もいる空飛ぶ殺人人食いザメです。
どういう生物かというと、空を飛んで、人を食べる殺人サメです。
飛行能力を持っており、飛行ペナルティをある程度軽減する能力も持っています。また、遠距離攻撃としてシャークハリケーンビーム(多分必殺とか持ってる)とか、近距離攻撃としてシャークトルネードエッジ(きっと出血とか付与してくる)とか、至近攻撃としてシャークオクトパスホールド(足止めとかする)を使ってくる気がします。
コミカルな依頼ですが、戦闘プレイングもそこそこに用意しておくといいと思います。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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