シナリオ詳細
<総軍鏖殺>起動実験エクスギア
オープニング
●仮想世界にはあった
「ギアバジリカから大砲使って棺桶が飛んでいって……空中で十字架みたいに開いて……で、地面に刺さる?」
正気? という顔でスパナを片手に顔を煤で黒くしたエンジニアが振り返った。
「最終的にはそれがロボになって宇宙飛んだよね」
「夢かなにかの話ですか?」
エンジニアのマジレスに茶屋ヶ坂 戦神 秋奈 (p3p006862)は『そんなわけないじゃーん』とけらけらと笑った。
「あれはROOっていう仮想世界での出来事なのですよ。現実のギアバジリカで再現できなくても無理はないのですよ」
ブランシュ=エルフレーム=リアルト (p3p010222)が実際に絵に描いたものをまじまじと眺め、そして目の前にある黒い棺に視線を移した。
歩兵特殊強襲装備・黒鉄十字柩(エクスギア)。名前からしてどうかしちゃってるこの装備は、遠方に対し急速に兵を展開する装置でありROOという仮想世界は割と普通に使われていた経緯がある。
「あっちじゃギアブルグとかギアスーパーアリーナとか、こっち(リアル)じゃありえないような兵器がごろごろあったからなあ。けど、『仮想世界だから無理』ってのは早計なんじゃないか?」
棺をこんこんと叩いたのはシラス (p3p004421)。
「噂じゃ、あんな風にギアシリーズが大量にあったのは、『古代の浮島』の情報を読み取ったからだっていうだろ?」
話すとめっちゃ長くなるのではしょるが、古代にはあっちこっちにアーカーシュみたいな浮島があってそれらはなんやかんやで一つを残して全部落ちたらしい。そのひとつというのがギアバジリカのコアになっているもので、なので厳密にいうならアーカーシュとギアバジリカは親戚みたいなものと言えるのかもしれない。
「だからこう……あとは気合いでなんとかならない?」
「気合いで機械は作れませんよお」
エンジニアが困った顔でスパナを置いた。
彼はブラックハンズ隊との協定によって派遣されてきたエンジニアで、彼らの保有していたギアバジリカに関する知識を提供するためにクラースナヤ・ズヴェズダー革命派に実質的な籍を置いている。
彼一人ではさすがに技術解明の糸口を掴む程度のことしかできなかったが、最近突如起こったパラダイムシフトによって革命派の技術力が爆増し、生産力や軍事力に大きな余裕ができたのである。
よって、こういうエンジニアが暖房器具を一生懸命据え付けて回る作業からも解放され技術開発に専念することができたのである。
「けど、結構いい線いってると思うのですよ」
ブランシュが棺の構造を確かめる限り、大砲に詰め込んで飛ばすことはできそうだし途中で軌道を調節することもできそうだ。
なにより『着弾』による衝撃を吸収し格納した兵にダメージを与えないという条件をクリアしていた。
「最後の機能が謎なのですよ。どうやってダメージをゼロにしてるのですよ……?」
「まあ、これは鉄帝にわりと昔からありましたし」
「あったんだー」
あったんだよ?
などと言いながら、よくよく考えてみたらリヴァイアサン戦とかにも鉄帝海軍が『大砲に詰めて前線に放り出す』という装置を導入していた気がする。当時はマジ鉄帝じゃんとか思っていたが。
「ROOの時みたいに国の端から端ってくらい極端じゃなくてもいい。離れた場所に兵力を即時展開できるってだけでかなり有効なんだ。特に俺たちみたいなローレット・イレギュラーズが協力してる時はな」
ローレットは少数精鋭。世界に通用するレベルの戦闘力をもった個人がバラバラに属するこの組織は、『個人を素早く送り込む』という運用に最も適している。
「で、今んとこどのくらいまでできてるの?」
秋奈が髪を指でくるくるしながら問いかけると、エンジニアの男はぼうっとした顔で壁際のハンガーを指さした。
「全然っすよ。八機稼働できる状態までしかできないっすよ」
「チョーできてるじゃん!」
●起動テスト? 人体実験?
というわけで、早速機能を試すテストが行われることとなった。
実験に参加するのは革命派のなかでも活動的でかつ実力もあり、エクスギアも知っているシラス、秋奈、ブランシュをはじめとして数人程度。
「実験内容は、ギアバジリカの仮設大砲から皆さんを発射して、北方山岳地帯にて発見されたポイントまで着弾させます。そこで天衝種(アンチ・ヘイヴン)の一団と戦闘してもらいます」
北方山岳地帯には元々狩猟にむいた動物が生息していたが、冬に備えて狩猟に入った人々を狙ってかかなりのアンチ・ヘイヴンが投入されているらしい。
これらを駆除できれば食糧事情も割と解決しようというものである。
「まだプロトタイプですので、『着弾』時点で多少ダメージがあるかもしれませんが、皆さんなら問題にならない程度でしょう。事実どの程度のダメージやBSがあったかがわかれば、調整にかなり役立ちますから。そういったデータも今回はとっていきますよ」
エンジニアはちょっと楽しそうにそう言って、手にしたスパナで帽子をあげる。
「あ、僕っすか? アンジェロです。名前は覚えなくていいっすよ」
そして、からっとした顔で笑うのだった。
- <総軍鏖殺>起動実験エクスギア完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「ほう――! 愉快で奇怪な思考ではないか。
機械な、とでも認識すべきか?
何方にしても平穏、革命とやらの為だ。実験、試行は不可欠と謂えよう。
Nyahahahaha!!!」
『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)はそんなことを言いながら自ら棺へと入っていく。
ぱっと見何かの怪奇現象だが、ローレットで見慣れてる面々はわりと普通にスルーした。
「普通、人って棺に納められて大砲で発射されたら恐怖感を覚えると思うんですけど。
鉄帝の人は違うんですか? わあ、鉄帝すげえなぁ。きっとこんな事じゃ狼狽えないんだろうなぁ。ビッグになろう」
途中から思考を停止して虚空を眺め始める『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)。これを実戦に取り入れちゃうところが鉄帝人あるあるなのだが、考えつくひとは他国にもいるのでわりとスレスレの鉄帝ラインである。
「けど、ルシアたちもゴーレム発射用カタパルトで魔王城から出撃したのでどっこいどっこいですよ?」
「ハッ!」
そういえば! という顔で背筋を伸ばすブランシュ。
「というか。今はまだ箱だけですけども、いつかはこっちでもあの強そうなロボに乗ってみたいのでしてー。
でもそのロボの実装の為にもまずは箱の完成度を上げるところからですよ!」
ルシアの記憶に若干新しい、あの皇帝専用機。現実にアレが出てきたらなかなかの混沌末期感があるが、いつかはそんな日も来るのだろうか。
「えーっと、一応再確認でして。これに乗ってびゅーん!って飛んでいく予定ですよ? どのぐらい揺れそうです?」
「揺れ?」
エンジニアのアンジェロが『そんなのあったっけ?』て顔で振り返った。
「……多少」
「たしょう?」
絶対凄い揺れるな、と確信したルシアだった。そもそもあんまり試してない兵器(?)の実用実験である。やってみたらえげつないほどシェイクされるなんてこともあるかもしれない。
一方で『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)は棺をこんこんとノックして、その強度を確かめていた。
「いやあ、実際これが完成すれば軍事行動の上で有効なのは理解できるのですがね?
といかR.O.Oの中ならともかく、鉄帝にこの手の物がもとから存在している辺り、やはり蛮族だなあと思うわけですよ。
いやはや、やはり幻想と鉄帝は永遠に理解し合えませんね」
「けど俺、それと同じ発想の兵器、幻想の兵器開発所で見たぞ」
「聞こえませんねえ」
ウィルドはいい笑顔でシラスの呟きを無視した。
肩をすくめる『竜剣』シラス(p3p004421)。
「最悪の場合、事故っても俺達にはパンドラがあるからな」
「出撃するたびに死の運命を回避する必要がある兵器ですか?」
「実験段階で何かあってもギリギリ平気だってことだよ。問題があれば修正できるだろ?」
「なるほど。理にかなっている」
「そうだ、折角テスターがこれだけいるんだ。もっと色々試してみよう」
シラスは親指を立て、自らの顔を指し示した。
「大丈夫だ、俺は絶対に死なねえ」
「それあとで死ぬ人の台詞では」
「いいからもってこい。バイクとかミサイルとか一緒に積んで飛ばしてみようよ」
「ほほう」
『殿』一条 夢心地(p3p008344)は想像した。
自分がサンタクロースコスチュームを纏い、白い袋を担いで棺に入るさまを。
大砲で撃ち出され、そのままシラス宅の窓ガラスをガシャーンと割って突入し、壁に突き刺さった棺がゆっくりと開くさま。
そこから這い出た夢心地が。『present for you』とか低い声で言いながら真っ赤な何かを突き出すさまを。
「そう思わぬか、ヴァレーリヤよ」
「えっ?」
想像に途中から巻き込まれた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が二度見した。
シャイネンナハトがくるたびにギルオスたちの家に突入してはその日の晩ご飯を『present for you』して帰って行くヴァレーリヤである。そこにこの兵器が加わると最強に見える。
「まさか現実でも使うことになるとは思いませんでしたわね。まあ、便利なのは便利なので、もちろん使うのだけれど」
なんだかんだ実戦には使われない未来が見えていたが、ヴァレーリヤは咳払いでごまかした。
そして……。
「ねえアンジェロ、棺を何の変哲もない椅子に擬態させるモードも欲しいのだけれど、お願いできませんこと?」
「してどうするんですか?」
「銀行強と――サンタクロースですわ?」
「いま絶対犯罪に相当する単語をいいかけましたよね」
「うわっっ再現度たかくらさんじゃん。めっちゃうけるー」
秋奈はROO時代(?)の思い出を脳裏によぎらせながら棺を開いた。
「まっ、ROOでも全然平気だったし。余裕でしょ余ゆ――」
●
「ギャン!?」
大砲から悲鳴と共に打ち出された八つの棺。
棺は暫くの間翼で風をうけながらミサイルのように空を舞い、まっすぐに攻撃目標ポイントへと進む。具体的にはゆるやかな放物線を描いているのだが。
肝心となる棺内部の状態を……いかに表現すべきだろうか。ドラム式洗濯機の中にやや大きめのぬいぐるみと化した自分がほうりこまれ延々ぶん回されてる状態を想像してみてほしい。常人では圧力に耐えることも難しいのだが、そこは魔術防核を形成することで無理矢理防御しているようだ。もうそろそろぬいぐるみのワタがでちゃうなって気持ちになった所で……。
棺の内側に『目標地点到着まで――』というシグナルが表示された。
空のエクスギアはガシャンと十字に両翼と先端部のピック、そして尾翼にあたるパーツを展開させ十字架のごときシルエットをとりながら軌道を地面へむけて急速に降下させていく。
そこからはもう地に撃たれた矢のそれである。ズガガガガッと地面へ次々に棺のピック部分が突き刺さり、さながら十字架が並ぶ墓場の様相をつくりだした。
本来なら自動で開くはずの扉を、オラボナは自らの手でめきめきと開く。
突然のことに驚く(或いは引いた)モンスターたちが身構える中、オラボナは僅かに開いた棺の隙間から顔を見せてにたりと笑った。
もうこの絵面からしてホラーだが、総HP5万くらいのヤツが空から降下(ランダムエンカウント)してくると考えると状況的にもホラーである。たぶん一番の解決策は逃げることだとおもう。
「さて、貴様等、随分と身勝手だな。
いや、真逆、私を倒さずに戯れる事が可能だと?
此方の水ほどに甘いものはない」
一回聞いただけではわからない事を言いながら、オラボナは早速敵集団へと接近。
危機感をビンビンにしたギルバディアがオラボナを押さえ込むべく突進する。
木を切り倒すほどの鋭く強靱な爪をオラボナめがけて繰り出すも、オラボナはそれをごく普通にうけ、そしてあろうことか微動だにしない。
ギルバディアはその様子に本能的な恐怖を感じたようだが、それを振り払うように両腕の爪でラッシュを繰り出す。それがまるで効果を見せていないことに、あるいはオラボナの体力をたったの1割すら削れていないことに更に恐怖する。
周りのモンスターたちは逆にオラボナから距離をとった。一体のギルバディアにその相手を任せることにしたようだ。オラボナを倒したり排除したりするのが無理だと、本能でわかったのかもしれない。
ということで別の……と振り返ったところで、やっと棺がガバッと開いた。
「や、やっぱりすごい揺れるのですよぉ……」
ふらふらと棺から出てきたルシアが、顔をあおくしてへたりこんだ。
綺麗な翼もなんかへろへろっとしている。トゥインクルハイロゥから浮かぶ文字もなんかへろへろしていた。
「もうちょっと優しく飛ばしてほしい、って送っておかなきゃでして……」
「うっ……」
同じく棺から出てきたヴァレーリヤが口元を抑え、そしてサッと棺の後ろに回った。『present for you』したのか、なんかすっきりして表に戻ってくる。
「凶悪な熊だか何だか知らないけれど、殴り倒される前に殴り倒してしまえば良いのでございますわー! 熊は熊らしく、蜂の巣でも漁ってなさい!!」
シュバッと格好良く構えるヴァレーリヤ。
ルシアもハッとして立ち上がり、同じくしゅばっと身構える。
「遥か彼方から「エクスギア実践部隊」参上でして!
ルシアたちが来たからにはもうこれ以上みんなの狩りの妨害はさせないのですよ!」
「黒鉄十字柩、No.8……一条夢心地、現着」
格好良く決めるルシアたちの後ろでうぃーんと開く棺。首に手を当てたポーズで姿を見せる夢心地。
何気なくヴァレーリヤが振り返ると、棺がバタンと閉じた。
もう一度前を向くと、ゆっくり開く。
普段はわりとやられる側の夢心地。今日は後ろから出る係である。
「黒鉄十字柩、No.8……一条夢心地、現着」
もう一度言いながら、首に手刀のように構えた右手を、左手は逆手に刀を握り込む。この独特のフォームから繰り出される斬撃の威力を、どうやらモンスターたちは本能で察したようだ。身構え、じりじりと囲むように広がり始めた。
「大丈夫? アゲてく? フフ、いいだろ…派手派手でいこうぜ!」
ダブルピースで棺から出てくる秋奈。
「やれやれ……」
額を抑え棺から出てくるウィルド。
そして満を侍して棺をガバッとあけ、飛び出し空中三回転をかけてから着地するブランシュ。
(これ、帝都に向けて放っていくのかな……。
確かに直接皇帝の所に行くことは出来そうだけど、絵面がかなりシュール。
革命派なの? 面白サーカス集団なの?)
などと心の中で一通り疑問を抱いたところで。
そういえばもう一人足りないなってことに気がついた。
「アレ? シラスさんはどうしたのですよ?」
「…………」
悪い予感をいだいたのか、ウィルドがゆっくりと最後の棺へ振り返る。
ギギッギギッと軋むような音をたててゆっくりと開いた棺から、大量の黒い煙がもくもくと漏れ出した。
そこから一気に扉が開いたかと思うと、バラバラになったバイクのエンジンやタイヤ、何に使うのかわかんない歯車類やバネ、そしてすすだらけになったシラスがごろんと転がり出てきた。
「「…………」」
ゆっくりと息を吸い、秋奈は空を見上げる。
――「いいからもってこい。バイクとかミサイルとか一緒に積んで飛ばしてみようよ」
――「大丈夫だ、俺は絶対に死なねえ」
お空でシラスがキラッて歯を光らせて笑った。
「……はは、なかなか快適じゃねえか」
シラスが顔をふきふきしながら立ち上がる。
「あっ生き返ったのですよ」
「パンドラってそういうのだっけ?」
「さぁて、お前らは実験台だ。かかってきな」
今日一番のカッコイイ顔で、シラスはモンスターたちへと手招きした。
●
オラボナが未だギルバディアのラッシュを平然と受けているその一方。
「熊は熊らしく、蜂の巣でも漁ってなさ――うおおおお!?」
ギルバディアを一体ほど殴り倒したヴァレーリヤは次のくまさんを屠るべく襲いかかったが、すごい勢いで迫る爪をブリッジ姿勢で回避した。
そのまま後ろ向きにごろんごろんと転がり、ブランシュの後ろにまわりこむと両手でがしりとブランシュを掴む。
「うわ!? なにするですよ!? ブランシュは回避型だから抑えられたらまずいのですよ!?」
「こんなところで晩御飯になるわけにはいきませんわー! 助けて下さいまし!」
「このままだとブランシュまで晩ご飯のおかずにされるのですよー!」
ぐおんと風をきって迫るギルバディアの爪。
オラボナならともかく、ブランシュがくらったら何かがメキッといってしまう。
「うおおおお!?」
「うわあああ!?」
二人で同時に仰向けにのけぞって回避する爪。
「二人とも、ふせるのでして!」
ルシアがマジックライフルを構え、詠唱を開始。トゥインクルハイロゥが広がり腕から抜けると、ライフルの前方へと飛び出し高速回転を始める。マニ車理論で高速連続詠唱を行うと、増幅した魔力がいっきに放出――される寸前にルシアがヨロッと傾いた。
「あっめまいが」
「うおおおお!?」
「うわあああ!?」
もっかいのけぞったヴァレーリヤとブランシュの上をルシア砲が通り抜けていく。
ついでに明後日の方向から奇襲しようとしていたヘァズ・フィランがジュッで蒸発した。
その様子を振り返り、ルシアへと叫ぶ二人。
「あぶないですわ!」
「焼き秘宝種になるところですよ!?」
「悪いのはあの棺でしてー!」
ブランシュとルシアは気を取り直して空へ飛び上がり、残ったヘァズ・フィランとドッグファイトを開始。
やはり熟練の技と言うべきか、見事にヘァズ・フィランの後ろをとり射撃を浴びせている。
「あくまで黒鉄十字柩の運用の肝は、強襲にあるからの。
着弾からの戦闘を極力スムースに行わなければ、効果が薄れてしまうじゃろ」
夢心地は抜いた刀を両手で掴むと、その視線を鋭く、そして背を過剰なほど丸くした。
そして両足と両手を小刻みにプルプル震わせると、その振動によって剣先を激しくブレさせた。
彼を取り囲もうとしていたヘイトクルーたちが困惑したように武器を構え、そして一部はやぶれかぶれに突進。
夢心地は『おまだせしましだぁ』と訛った口調で喋りながら相手の剣をプルプルしたまま回避。振動をのせた斬撃によってヘイトクルーを一撃のもとに両断した。
ただの震えたババア(ババアじゃない)ではないことに気付いたヘイトクルーたちが今度は一斉に斬りかかる――が。
「秋奈ちゃんフィーバーすらっしゅ!」
コマのように高速回転した秋奈がヘイトクルーたちを次々に切り裂き、そして咄嗟に反撃に出たヘイトクルーの攻撃を額で受けた。
否。受けたとおもったその姿はすぐにかき消え、背後に現れた秋奈がポンとヘイトクルーの肩を叩く。そして耳元で、意味深に囁いた。
「レモンには、レモン3個分のビタミンCが含まれてるんだよ」
だからなに!? という顔で振り返るハイトクルー。
その時には秋奈は既にハイトクルーから遠く離れ、悠々と歩いている。なぜかしらんけど大爆発を起こしたヘイトクルー。
一方で、シラスとウィルドはギルバディアを前にハンドポケットの姿勢で並んでいた。
「どうでしょう? ここは、幻想の力を見せつけるというのは」
「俺が新世代勇者だってハナシしてる? まあいいけど」
ギルバディアがその豪腕で殴りかかる――その動きを、二人はまるで最初から知っていたかのように見切り、左右へとかわす。回避の動きではない。横向きに普通に飛び、ギルバディアを中心に輪を描くように側面やや後ろ方向へと回り込むとそのステップの勢いをまるで殺すことなく、むしろ足首から腰の動きで加速して回し蹴りを全く同時に繰り出した。
ギルバディアの背に打ち込まれる蹴りの威力は意味が分からないほど凄まじく、ギルバディアは思い切り吹き飛ばされ地面を転がった。
「おや、見た目以上にいい蹴りですね。靴に何か仕込みましたか?」
「格闘魔術、ってやつだ。アンタもなかなかだな。武術をやってるやつの動きだ」
起き上がるギルバディア。が、それ以上は許さない。
シラスとウィルドは同時に跳躍すると、一度の宙返りを挟んでギルバディアの顔面に全く同時の跳び蹴りを叩き込んだのだった。
地面を軽く掘り返してしまうほどの衝撃が走り。ギルバディアががくりと力を抜く。
振り返ると、撃墜されたヘァズ・フィランが次々に落ち、ヘイトクルーたちが叫びをあげて消滅していた。
「これにて一件落着、っと。とりあえず……問題は山詰み、だな」
シラスはこきりと首をならし、苦笑した。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
実験結果は革命派の技術部へとフィードバックされました。時間はかかりますが技術発展が見込めるでしょう。
GMコメント
歩兵特殊強襲装備・黒鉄十字柩(エクスギア)を現実で再現し、その実用実験を行います。
これが完成すると結構色々な問題が解決するらしいので、気合いいれてデータをとりましょう。
ちなみにデータの記録係は別に存在しているので、皆さんは普通に使用し戦闘して頂いて大丈夫です。
・手順
ギアバジリカから棺に詰めて大砲で打ち出された皆さんは、山岳地帯のあるポイントへと着弾します。
自動でジャガッと開く棺から即座に出撃し、割とビビってるであろうアンチ・ヘイヴンたちと戦って下さい。
●想定される敵戦力
・ギルバディア(狂紅熊)×少数
大型のクマ型の魔物。凄まじい突進能力があり邪魔な木々は軽く薙ぎ倒す程の性能があります。また、敵を吹き飛ばす様な一撃を宿している事もある模様です。
・ヘァズ・フィラン(黒天烏)×少数
一言でいうとカラスの様な存在ですが、非常に他者に対して攻撃的です。
空を飛行し、弱者と思わしき者を集団で嬲ります。反応、機動力、EXAに優れ、牙には毒もある模様です。
・ヘイトクルー(近接型)×多数
周囲に満ちる激しい怒りが、陽炎のようにゆらめく人型をとった怪物です。人類を敵とみなすおそろしい兵士達です。
近接武器のような幻影による怒り任せの物理至~近距離戦闘を挑んで来ます。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
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