シナリオ詳細
<総軍鏖殺>火葬屋ジェイル
オープニング
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『火葬屋ジェイル』。そう呼ばれた囚人が居た。その名の通り火葬屋を務めていた彼は、常に笑顔を絶やさず、遺族への心遣いを絶やさない、善良な市民だと誰もが思っていた。
だが、違った。ジェイルは、人間を焼き殺す事を至上の悦びと捉える、凶悪な殺人鬼でもあったのだ。
しかしそんな彼も、その犯行を永遠に続ける事は出来なかった。ついに犯行が発覚した彼は捉えられ、凶悪な囚人として収監される事となった。そして今。
新皇帝によって恩赦を受けたジェイルは、これからの日々に胸を馳せ、期待に心を躍らせていたのである。
「あ、実に……あ、実に素晴らしいと!! そうは思いませんか、見ず知らずの旦那様?」
「ア、アガ……!!」
ジェイルは素性も名前も知れぬ、ただの通りすがりにして、致命的に運が悪かった男の顔を掴み上げ、尋ねる。だが元より返答は期待していない。ジェイルの掌からは炎が溢れだし、男の全身を包み込み、そしてジワジワと焼いていたからだ。身が焦げ、呼吸もままならない。
「それでも! こうして無事娑婆に出られたという喜びはあったとしてもそれでも! あの輝かしい日々を思い出さずにはいられません……火葬屋、もっとやっていたかったなあ!!」
ジェイルの言葉に呼応する様に、掌から放たれる火の勢いが強まる。しかしそんな事どうでも良かった。ジェイルにとっても、燃やされている男にとっても。男はもう死んでいたからだ。
「けれど、この世で起きる出来事の大半は捉え方次第!! 過去を振り返るよりも、今を、そして未来をどう幸せに生きるかを考えるべき!! そうは思いませんか見知らぬ旦那様? 思いますか! それはどうも!!」
ジェイルは一気に火力を高めると、黒焦げになった男の死体を地面に放り、パンパンと手を払う。
「出来れば灰にしたかったのですが……私の魔術だけでは火力が足りず、本当に申し訳ない……さ、行きますよ皆さん!! 輝かしい未来を掴む為!!」
「へい……で、標的は?」
「標的? そんなの兵士だろうと民間人だろうとなんだっていいですよ、燃やせれば!! 確かこの近くにしょぼくれた町がありましたね! まずはそこを焼き払っちゃいましょう!!」
ジェイルは取り巻きの囚人たちを引き連れ、町を目指す。
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「火葬屋ジェイル。人間をその手で焼き殺し、弔う事に悦びを覚える快楽殺人鬼。彼は現在ラド・バウに向かっている。今回の君たちの仕事は、襲撃に合っている村人たちを救出し、彼らを討伐する事だよ」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、集まったイレギュラーズ達に説明を始める。
「ジェイルとその取り巻きは、例の新皇帝による恩赦で解き放たれた囚人のグループだ。彼らは小さな町や旅人を見境なく襲い、金品を奪って焼死体に変えているらしい。そして彼らは現在、サングロウブルク近辺のとある村に向けて移動している。移動ルートから見ても間違いない。恐らく、キミ達とジェイル達がその村に到着するのはほぼ同時になるだろう。戦場は村の中になるだろう」
ジェイルと取り巻きの囚人達はこれまでの襲撃において、町に到着次第バラバラに行動し、市民や家屋に見境なく火を放ち、逃げ惑う市民達を殺し、どさくさに紛れて金品を奪うという方法を繰り返してきた。恐らく今回もそうなるだろうとショウは言う。
「囚人達はみんな、どこで調達したかも知れない火炎放射器を装備している。それで人々を焼き殺し、家屋も燃やす。また、ナイフや剣といった武器も持っているみたいで、各々ある程度の戦力は持っていると考えていいだろう。そして話の流れから察したかもしれないが、最も戦闘に長けているのは、間違いなく火葬屋ジェイルだ」
火葬屋ジェイルは過去の事件のデータから見るに、炎を操る魔術に長けており、近距離、遠距離問わずに強烈な炎を放ち攻撃するだろうとショウは言う。
「まあ、俺からの情報はこんな所かな。火葬屋ジェイルは、人のいい顔をしながら平気で家族友人知人を焼き殺す様な極悪人だ。殺戮を阻止して、その場で仕留めてしまうんだ。それじゃあ、気を付けて」
ショウはそう言って説明を締めくくった。
- <総軍鏖殺>火葬屋ジェイル完了
- GM名のらむ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月24日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「さあ、着きましたよ! 好き放題やって結構! 殺しも、盗みも! ですが燃やすのだけはお忘れなく!!」
ジェイルの掛け声に頷き、囚人たちが火を放つ。町の北側に面する2つの家に、火が放たれた。
一度火が放たれれば、町中に混乱が広がる。ジェイルは満足げに頷きながら町を見渡す。
「さあて、私も始めるとしましょうか……おやぁ?」
混乱する住人達に紛れ、こちらに一直線に駆けてくる者たちがいた。
ジェイルは静かに掌を突き出すと、魔力を込めていく。
しかし次の瞬間、魔術が放たれるよりも早く。一気に動きを加速させた『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)が一瞬にして囚人たちに肉薄し、桜色の剣を突き付け、結界を展開する。
「狼藉はそこまでよ! あんた達には明日も未来ももったいないわ、今すぐ監獄に……いいえ、地獄に送ってあげるから覚悟しなさい!」
超高速での接敵。これによってこの場に明確な敵対者がいるのだと知らしめる事に成功し、囚人たちの散開をある程度抑えることに成功した。
「ははあ……これはまた、面白い話ですねぇ」
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「(最短経路を取り、最速で囚人たちと接触する事が出来ました。これでかなりこちら側に有利に働く筈。珠緒達が相手取る囚人は多くなりますが、その分避難誘導は楽に、かつ早く終わる筈です)」
『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)は2体のファミリア、テレパスを併用する事で、町全域の情報収集と仲間達への情報共有を行っていた。ギフト『桜花水月』によって情報は精確さを増し、全てのイレギュラーズ達の行動が効率よく行われていた。
それに加えて珠緒はジェイル率いる囚人たちと相対し戦闘も行っていた。かなりの集中力を要する重労働な筈だが、珠緒は確かにそれをこなしていた。
「人の身を外れ、他社から何かを奪う行為を繰り返すあなた達を、珠緒達は見逃しはしません」
囚人の1人に火炎放射器を向けられると、珠緒は静かにそう言って魔導書を開いた。
「なら、死ねやぁ!!」
「足元注意ですよ」
パタン、と珠緒が魔導書を閉じる。すると囚人達の足元に紫色の光が展開。次の瞬間、その光から飛び出してきた無数の槍が、囚人たちを刺し貫いた。
「なんなんだこいつら……! こんなの相手にしてられるか……!」
囚人の1人が一目散に駆け出し、戦場の離脱を試みる。しかしそこに文字通り突っ込んでくる1人の男がいた。『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)だ。
「ザンネン! そうはさせないよ! 後頭部からシツレイ!!」
イグナートは背を向け逃げる囚人の背後まで急接近すると跳びあがり、落下と共に後頭部に強烈な拳を叩き込む。囚人の頭が地を割って、そのまま動かなくなった。
「今はここを抑えるのがサイユウセンかな! さあ、いくらでもかかってきなよ!!」
イグナートは囚人たちを挑発し、町へその矛先が向かないように誘導する。
「邪魔をするな、小僧」
「デカイね! 何食べてるの?」
囚人の中でもひと際巨体の男がイグナートを睨みつける。イグナートは軽い口調で返すと、ステップを踏みその囚人との間合いを詰める。
「焼け死ね」
「あんまりブッソウな事言わない方がいいよ! まあ、余計にエンリョが要らなくなって助かるけど!!」」
放たれる火炎にイグナートは片腕が包まれるが、イグナートは笑みを崩さぬまま拳を握りしめる。
「オレは建物と違ってちょっとくらい燃やされてもヘイキだからね! オキノドク!!」
そして放たれる拳の連打。巨体の囚人は全身を激しく打たれ、そのままドサリと地面に倒れた。
イレギュラーズ達と囚人達の接敵。一方では救助活動を始めているイレギュラーズ達がいた。
「救援に来たイレギュラーズです。賊への対応は仲間が行っていますので、どうかご安心を。我々で住民達を避難させましょう」
「わ、分かった!」
『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)は町に到着後、すぐに衛兵達に声をかける。ルーキスは散らばっていた衛兵達の内3人に早々に接触する事が出来、そのまま避難活動を開始した。
「避難民は中央の池に誘導して下さい!動ける人達は池の水で消火活動を!」
衛兵たちは頷き、避難誘導と住居への見回りを開始した。
「余計な事を。これじゃあバーベキューが台無しだぜ」
「その為にここに来たんだ。お前らの馬鹿なバカ騒ぎを止める為に」
囚人の1人がルーキスに目を付け、にじり寄る。ルーキスは挑発と共に刀を抜き、切っ先を突き付ける。
「お前達の様な外道は……その性根ごと叩き斬る!」
囚人に攻撃の隙すら与えず、ルーキスは三連の斬撃を放つ。火炎放射器を両断し、それを持っていた両腕を断ち切り、最後は首を落とした。
「本当にこんな暇はないんですよ……さあ、皆さん落ち着いて避難活動を! 皆さんの命と財産を守るよう尽力します。なのでどうか落ち着いて、指示に従って下さい!」
ルーキスが避難活動を行っている傍ら、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)もまた同時に避難活動を行っていた。
「あなた達は消火活動の指揮と、まだ避難ができていない方々の救助をお願いします」
オリーブは残りの衛兵達を発見し、まとめて指示を出す。衛兵達は頷き行動を開始する。
「動ける方々は消火活動、避難活動を行ってください。囚人には近づかないように、自分たちが対処します」
更に市民たちにも指示を出し、オリーブは目まぐるしく町を回って手を貸していく。
「燃やせ……燃やせ……」
「……あなた達は市民を守ることに専念してください。ここは自分が」
虚ろな目で現れた囚人。衛兵達を後ろに退がらせ、オリーブは囚人の前に進み出た。
「君も燃えなよ、ほら」
「それはまあ、お断りですね」
囚人はオリーブを狙い火炎を放つ。オリーブは大きく上方に跳んで炎を回避すると、剣を振るう。放たれた無数の斬撃が囚人の身を切り刻む。
「痛い……痛い痛い……!」
「痛いという感覚は持っているんですね。それなのに他者の苦しみには興味がないと。救い難いですね」
呻く囚人にオリーブは一瞬にして間合いを詰める。そして至近距離で勢いよく身体を回転させながら剣を振るうと、囚人は胸に深い傷を切り刻まれながら吹き飛んでいった。
「大して強くはない……ジェイルの周りに戦闘能力の高い囚人が残っているのでしょうか……」
オリーブはジェイルと相対している仲間の事を考えつつも、避難活動を進めた。
「俺達イレギュラーズが救援に来た!襲撃者達は街の北側から侵入! この声が聞こえた人は慌てず騒がず迅速に避難を! 力がある人はできれば子供や老人の非難の手伝いをお願いします!」
町に『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)の声が響き渡る。住民たちの間に、徐々に冷静さが戻っていく。
「よし……このまま何を優先すべきかを間違わなければ、最善の行動を取れる筈」
ウェールは町中を駆け抜けながら、町の上空へ飛ばした鴉の視界を確認する。優先的に避難させるべき住民や、囚人の位置。人助けセンサーを併用する事で、更に詳細な位置を感知。更に珠緒からの情報共有によって更に状況を俯瞰的に把握する。
「ほら、掴まってください!!」
道中、ウェールは足をくじいた青年と動きの遅い老人を担ぎ上げ、手早く馬車に乗せる。避難が満足に行えない住民は、やはりそれなりにいる様だ。
「……! クソっ、一瞬だけ離れます!!」
避難活動の最中、不意にウェールの目に映った『ソレ』に歯噛みすると、ウェールは連れていた馬車を置いて駆け出した。
「イッタ……!! なんだぁ……?」
そこに居たのは火炎放射器を構えた囚人と、壁際に追い詰められた1人の少年。ウェールが掲げたカードから実体化した銃が弾丸を放ち、囚人の気を引き付ける。
「俺は1人も死なせはしない……そして許しはしない。炎で、人を殺すなんて……汚させは、しない」
振り返った囚人の心臓を、風を纏った一枚のカードが貫いた。囚人は声もなく地に伏した。
「あ、ありがとう、狼さん……!!」
「……ええ。ほら、こっちに来てください」
少年の笑顔を真正面から受け止め、ウェールはその小さな手を取った。
3人のイレギュラーズ達が救助活動に専念している一方、町の北側入り口付近ではジェイルを中心とした囚人たちとの戦いを進めていた。
「で……なんでしたっけ? ああそうそう、地獄に送るんでしたっけ、私を」
ジェイルは心底馬鹿にしたような表情でイレギュラーズ達をあざけり、掌から強烈な火炎を放出する。
「…………!」
蛍はその火炎を避けることなく真正面から喰らう。やはりジェイルの攻撃は苛烈だった。
しかし蛍は涼しい顔を保ったまま、一歩も動かず自らの胸に二度拳を当てる。1度目で桜色の輝きを全身に巡らせ、2度目で自らが受けた傷を立ちどころに癒していった。
「この程度? この桜吹雪、散らせるものなら散らしてみなさい!」
「どうやら……イレギュラーズというのは燃えにくいゴミの様ですねぇ」
「あら、それは自分が生ごみだっていう自己紹介? ……大体ね、弔いの押し売りなんてお呼びじゃないのよ!」
蛍はジェイルに言い放ち、純白の手甲が眩い光を放つ。桜色の魔法陣が地面に大きく展開すると、構築された巨大な結界が囚人たちを包み込んだ。
「……なんなんですかあなた達? わたくしみたいな小物を相手にする暇が……グッ!!」
突如としてジェイルの胸に、雷を纏った斬撃が放たれた。『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の一撃。超速度の居合斬りであった。
「小物なのは間違いないがな。この狼藉を見逃すほど、俺たちは甘くないんだよ」
エーレンは言い、再び剣を居合の型で構える。ジェイルと、その周囲の囚人達の動きを注意深く観察しながら。
「改めて……鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ……お前たち、そんなに火事が好きなら自分の炎で焼かれてみたらどうだ? 一度やってみれば、それがどれだけ愚かな事だと気づくだろう」
「あなたも一度やってみればいいのでは? そうすれば楽しさに気づくでしょうねぇ」
ジェイルの言葉にエーレンは静かにため息を吐く。最初から理解しあえるなどとは思っていないが、こうも堂々と居直られると気が滅入る。
「それは御免だな。悪いがこれ以上好き勝手はさせない……放火も、放火殺人も無しだ……お前に言っているんだぞ、囚人」
「んなっ……!!」
エーレンは居合の構えのまま、ジェイルとは異なる方向に駆けた。他の家屋に向かおうとしていた囚人に居合の一撃。一歩後ろへ退がった後に、超高速の刺突。それは囚人の胴体のど真ん中を深々と刺し貫き一瞬にして仕留めた。
「ジェイル以外の戦闘能力は高くない。攻撃を集中させて、一気に数を減らすんだ」
「了解! オイラ達が来た以上、これ以上の蛮行は許さないぞ! もうどこへも行かせない!!」
『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は『機煌宝剣・二式』と『機煌重盾』。そして自らの身体に施された重装甲を武器に、囚人たちを町の人々に近づけないように立ち回る。町を襲うとする囚人もいたが、気を惹き、進路を塞ぎ、徹底的に妨害する。
「火を放ち人を殺し、そして金品も盗む火事場泥棒、ほんとうにタチ悪いよ!」
家屋へ向かおうとしている囚人の1人にチャロロは素早く反応し、突撃。大きな刃でその身体を斬りつける。
「邪魔すんじゃねえよ、ガキがぁ!!」
囚人は火炎放射器をチャロロに向け、至近距離から火炎を放ち、チャロロの全身を包み込んだ。
しかし熱さこそ感じたものの、チャロロの身が焦がされる事は無かった。
「オイラは人呼んで炎の勇者だ! そんな炎効かないよ!」
チャロロは炎を受けきると、機械盾を構えて跳躍。跳躍の勢いのまま囚人の顎先に盾を叩きつけると、囚人は白目を剥いて吹き飛んでいった。
「全く……どいつもこいつも使えない……」
次々と囚人が倒れされる現状を見て、ジェイルは忌々し気に唇を噛む。
「言っただろう、お前はもうどこへも行かせない! ここで終わりだ、ジェイル!!」
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イレギュラーズ達の作戦は、かなりの効力を発揮していた、といっていいだろう。
村を訪れ、展開して行動する筈だった囚人達はその大半を抑えられ、僅かに散った囚人達は各地で各個撃破される。
ジェイル含む多くの囚人たちを少数のイレギュラーズで相手取る事となったが、その戦闘もかなり優位に進められていた。
最初期に放たれていた家屋への火も延焼する事なく消し止められ、散らばった囚人が放った火も、衛兵や市民たちの力を借りて早々に消し止められていた。
「はあ、嫌だ嫌だ……なぜ私がこんな目に……全くもってつまらないですよあなた達ィ!!」
ジェイルは明確な怒りを滲ませながら、その両手から火炎の渦を放ち、イレギュラーズ達を包みこんだ。
「そりゃあ良かった! キミが満足していい事なんかないからね! 怒りのままに放つ炎で、オレが燃やせるかやってみなよ! 出来るもんならね!」
イグナートはジェイルへの挑発を行いつつ、火炎の渦を突っ切る。そしてダッシュの勢いを乗せた渾身のボディーブローをジェイルに叩き込む。
「ゲホッ……どうして私の楽しみを邪魔するんですかァ!!」
「焼けて苦しむ人を見るのがそんなに楽しいか? 最低だよ、お前は! 天…お前は、ここでオイラ達が倒してみせる!!」
『機煌宝剣・二式』が紅く眩い光を放ち、チャロロは真っすぐとジェイルへ突撃する。
正義と勇気。2つの力を宿した強烈な斬撃の嵐がジェイルを斬り、強烈なダメージを与える。その2つの力は、どちらもジェイルが持っていないモノであった。
「イレギュラーズゥゥウウウ……!!」
ジェイルは憎しみを込めた眼でイレギュラーズ達を睨む。既に囚人達の大半が倒された。ジェイルは未だ余裕がある様だったが、数で言えば残りは少数だ。」
「お待たせしました。避難誘導は完了しました。珠緒さんから得られた視覚情報も併せ、町中に囚人は居ないことを確認しました。残っている火も、住民たちだけで消し止められます」
オリーブが剣を構えジェイル達のいる戦場へ加勢に入る。ウェールもルーキスも、避難誘導を行っていたイレギュラーズ達が次々と加勢に入る。
「そろそろ終わらせましょう」
オリーブはジェイルの傍に控えていた囚人に3連の斬撃を放ち、一瞬にして切り伏せた。
「良かった……どうやら、ボク達は間に合ったみたい……理不尽な暴力から、最大限無辜の人達を守れた……!」
蛍は自分達の作戦が上手くいった事に安堵しつつ、目の前の敵を見据える。蛍が纏った桜色のオーラが小さな刃を形どって放たれ、ジェイルの全身に突き刺さった。
「邪魔しないでくださいよぉ……これが私の生きる意味なんですからぁ……!!」
「違う。お前が人を焼き殺すのが好きなのは間違いないさ。でもそれは生きる意味なんかじゃない。お前はそれを見つけられず、そして快楽に逃げただけだ」
狂気の笑みを零すジェイルに、エーレンは冷静に言い放つ。
そしてジェイルに接近。再び放たれる雷を纏う居合斬り。その威力は先程のそれよりも苛烈で、ジェイルの全身に激しく蒼い雷が迸った。
「ガ……ァア……!! 嫌だ、死にたくない……燃やす、せめて誰かを燃やして死ぬゥ!!」
ジェイルは嗚咽を漏らしながら赤黒い火炎をまき散らす。
「燃やされませんよ、俺達は……既にあなたは外道に堕ちた身。せめて散り際位は、潔くあってください」
ルーキスは呟き、両手の刀に『鬼』の力を宿し、そして一気に振るう。術者の肉体すら蝕むその強烈な斬撃が、ジェイルの魂を直接斬る。
「私はこんな所で死ぬ男じゃない!! 私は、私はぁ!!」
「見苦しいぞ。勝敗へ決した。そして何度も言われてきた事だろうが、改めて言う。お前は間違っている。決定的に、その全てが」
ウェールはわめき散らすジェイルに淡々と言い、宙に何枚もの『狼札』を放り投げる。すると宙で制止し狼札からいくつもの銃や弓が実体化され、一斉掃射される。ジェイルや残りの囚人を巻き込んだ激しい銃撃を受け、ついに立っているのはジェイルただ1人となった。
「私が……私の未来は……まだ終わらないィ!」
「……いいえ終わりです。あなたの人生も、悪逆非道も。全てはここで終わります」
珠緒は怨嗟の声を上げるジェイルをまっすぐと見据え、魔法術式を詠唱する。大量の魔力と集中を要する術式を高速で詠唱し、全身から魔力を放つ。
「燃えろ燃えろ燃えろぉおおおおお!!」
ジェイルは全身から黒炎を噴き出す。もはや魔力の暴走という域に達していた。
「貴方に輝かしい未来など……ない!」
だが珠緒は魔法陣の中心に表れた神滅の魔剣を手に取り、黒炎を前に一気に振り上げる。
一閃。圧倒的な魔力が込められた魔剣は、黒炎ごとジェイルの身体を断ち切った。
「ハ……ハハ、ハハ。ハハハハハハハハハ……!!」
ジェイルは全身に炎を纏いながら笑い焦げる。全てが愉快でたまらないとでもいう風に。
炎は笑い声と共にどんどんと強まっていき、そして――。
そして唐突に、消えた。そこに残っていたのは、僅かな灰のみであったという。
●依頼結果
イレギュラーズの活躍により囚人ジェイル、並びに取り巻きの囚人全ての討伐を確認。
避難誘導の結果、人的、物的な被害両面において被害は最小限に食い止められた。火傷を中心とした傷を負ったものは居たものの、死者が出る事はなかった。イレギュラーズもまた、負傷者は出たものの大きな被害を被る事は無かった。
討伐完了後には被害を受けた家屋の復興作業も行い、町が元の様子を取り戻す日も近いだろう。
上記の結果を以て本依頼を完了とする。
以上。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。迅速な行動によって被害は最小限に収められたといっていいでしょう。見事な活躍でした。
MVPは作戦全体の速度と効率を大きく向上させたあなたに送ります。
GMコメント
のらむといいます。よろしくお願いします。
人を燃やしたがる殺人鬼と、取り巻きの囚人たちと戦って頂きます。
●成功条件
市民の死者(衛兵を含む)を15人以下に抑え、ジェイルと仲間の囚人達を討伐する。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●フィールド情報&市民たち
サングロウブルク近辺の小さな町。人口は80人。イレギュラーズ達が到着した時点で2つの家屋に火が付けられ、人々はパニック状態に陥っている。中には子供や迅速に動けない老人の姿も。
街の各地には合わせて5人の衛兵が居るが、しっかりとした訓練も受けておらず襲撃があまりに突然だった為、あまり満足に行動できていない。衛兵達の戦闘能力はかなり低め。
町の中心には大きくて深い池があり、その池を囲むように建物が立ち並んでいる。囚人達は町の北側、イレギュラーズ達は町の東側にほぼ同時に到着する。囚人達が僅かに早かったため、既に2つの家屋に火が付いている。
●囚人たち
全員が火炎放射器と近接武器を装備している。正確な人数は不明だが10人程度はいると思われる。経歴がバラバラの為、戦闘能力もバラバラ。下は町の衛兵程度、上はイレギュラーズより若干弱い程度。町に到着後、散会して襲撃と略奪を開始する。
●火葬屋ジェイル
人間を焼き殺す事。人間を火葬する事。人間を焼き殺し己の手で火葬する事。それらに快楽を覚える凶悪な殺人鬼。家族の火葬を行いたくて待ちきれず、己の手で焼き殺した経歴がある。
ただ快楽の為に人々を焼き尽くさんと行動する。略奪は行わず、火を放ち人々を焼き殺す事に集中している。
戦闘時には主に火を操る魔術を駆使して攻撃し、『窒息系列』や『火炎系列』のバッドステータスを与えてくる。それ以外に攻撃手段があるかは不明だが、どうであれ最も強力なのは火を操る魔術だと考えられる。
能力値は特に神秘攻撃力、HPに秀でている。
以上です。よろしくお願いします。
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