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シナリオ詳細

<Phantom Night2022>アルプトラオム・ファントムナイト<総軍鏖殺>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幕間 冷たい心臓
「ベネラーくん、なんだってこんなアブナイところに?」
 護衛についてきた『暦』の睦月は、少年へ問いかけた。平々凡々とした少年だ。血のような赤い髪と瞳が印象的だった。
「いまはね、ここはいくつもの勢力が群雄割拠してるんだ。危険極まりないよ」
「だから身を隠すにはちょうどいいんですよ」
 少年は名無しの魔種から狙われていた。彼自身が魔種の極上の研究成果なのだそうだ。その影響か彼は少年の姿のままだ。
 故郷の村を滅ぼされ、父を殺され、少年の姿のまま、いつ暴発するともわからない呪いを抱えて、少年は今日も生きている。
「それに、僕、ほしいものがあるんです。今のこの国なら僕みたいな子供でも手に入るでしょう?」
 白い息が少年の口元からこぼれた。なにか思い詰めているのか、硬い声だった。
 睦月は少年の肩へ上着をかけてやった。もう呪いに食われかけている少年には、無意味な行為だと知りながら。

●鉄帝にて
 あなたがその村へ訪れたのは夕方に近くなった頃だった。
 酒屋を兼ねた宿へ入ると、赤い髪の少年と、ルビーのような瞳が美しい青年が暖炉の前でくつろいでいた。青年は睦月、少年はベネラーというのだそうだ。隣はいいかとたずねると、ふたりは快く席を譲ってくれた。なんでも旅の途中らしい。
 睦月がいれてくれたココアをふーふーしながら飲んでいると、ぬっとドラゴニアが現れた。ラサの格好をした装飾過多な服を着ている。
「お客さん、あんたはまた変わった格好だね」
 快活な中年男の声が発せられ、そのドラゴニアが宿の主だと察することができた。やっと一晩の交渉ができるとあなたが立ち上がった途端。

 どかーん。

 裏手から大きな音がした。
 同時に悲鳴が聞こえ、逃げ出す音がする。
 あなたが急いでそこへ駆けつけると、かぼちゃ、が、あの、黄色い、抱えたら腰がイッちゃいそうなくらいでかい、半径1mくらいはあるんじゃないかなこれっていう、そんなかぼちゃが、かぼちゃの群れが! ランタンを指先へひっかけ、魔女のような帽子をかぶり、黒いマントをひるがえす姿はまさに神話的生物。
「ヒーホー! たまには僕たちが食べる側にまわってもいいよねー!?」
「展開がわかりやすすぎる!」
 なにがどうしてこうなった。ええい、聞くのは野暮というものだとばかりに、あとからおいついた睦月がルビーの瞳を光らせてクナイを投擲した。まっすぐに飛んでいったそれが根本まで突き刺さる。さすがかぼちゃ。防御力は低いらしい。
「ヒーホー! こんなの効かないよー!」
「なんで!!」
「もしかして、変身してないからでしょうか」
 ベネラーがきょときょとと周りを見回した。周りでは思い思いに仮装した村人たちがスキやクワを片手に応戦している。そっちの攻撃は痛いのか、かぼちゃおばけたちは身軽に逃げ回っている。
 よし、ここは自分の出番だな。ファントムナイトの魔法にかけられたあなたはそう考えた。
 かぼちゃの旬はじつは冬。鮮度抜群のかぼちゃは柿に似た風味があるという。あなたは口の中に湧くよだれを飲み込んだ。

GMコメント

このシナリオではファントムナイト2022の衣装を参照します。
プレイングで衣装を参照してください。
イラストがない人は文章で書き込んでください。

●やること
1)かぼちゃ相手に無双する
2)かぼちゃパーティーを楽しむ
プレは60:40くらいがいい感じです

●エネミー
ジャック・オ・ランタン ✗40
火炎属性の攻撃を使ってきます。また近扇状の攻撃範囲を持つようです。
回避と命中が高く、反応も高めですが、防御面が紙なので無双できます。集中攻撃にだけは気をつけてください。

●戦場
雪の降るしずかな夕暮れです。特にペナルティはありません。
まわりでは血気盛んな村民の皆さんがジャックと戦っていますが劣勢です。助力するか、戦場を離れるよう誘導してあげましょう。
戦闘が終わる頃には夜になっているでしょう。村の広場で存分に料理の腕をふるってください。基本的なものは何でも揃っています。

●NPC
ベネラー
 魔種に呪われた子。関わっても関わらなくてもいいです。
睦月
 某PCさんの関係者。戦力にならないので、ベネラーをかばって逃げ回っています。放っておいても大丈夫です。

  • <Phantom Night2022>アルプトラオム・ファントムナイト<総軍鏖殺>完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
冬越 弾正(p3p007105)
終音
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
御刀 麗華(p3p010882)

リプレイ


「ベネラー君、私の後ろへ!」
「はい!」
 迫りくるジャックたちをクナイで牽制しながら睦月は考えた。
(まさか仮装していないだけで攻撃が通らなくなるなんて。護衛を買って出た以上、私がベネラー君を守らなきゃいけないのに)
 冷や汗がたらり。
「ヒーホー! おまえ弱そうだな!」
「睦月さん!」
 急襲するジャック。背後でベネラーが叫ぶのを聞きながら、彼をかばうために睦月は両手を広げた。
「さつりくしゃのエントリーだ!」
 ぐわっしゃ。
 横合いから飛び込んだ影がジャックを踏み潰す。その珍妙な姿に睦月とベネラーは固まった。
 埴輪。埴輪……。埴輪!? しかもその埴輪から、むきむきマッチョのぶっとい腕がぬっと突き出ている。その埴輪は大きな声で叫んだ。
「あおーん! オオカミが来たぞ~!」
「狼!?」
「埴輪!? どっち!?」
 狼狽するベネラーと睦月。
「どう? 僕の渾身の仮装。混沌広しといえどこれだけ情報量の多い仮装は少ないだろ!」
『お嫁さんに行くつもりだったのかい』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は胸を張って自慢しだした。顔と腕以外埴輪なのでよくわからないが、たぶんそうしているはずだ。
「いやしかし、その埴輪、どこかで見かけたような……」
 睦月が記憶を探り出したその時、新たな影がジャックを蹴飛ばす。蹴飛ばされたジャックは粉々になり「ヒーホー!」と叫んで夜空で爆発四散した。
「睦月、ベネラー殿加勢……加勢? に、来たぞ」
「頭領! 奥方!」
 振り返った先にあるその姿はただしく仮装。『報恩の絡繰師』黒影 鬼灯(p3p007949)、鬼の執事と座敷童のお嬢様姿。腕の中の小さなお姫様のために、番傘をさしかける姿はまさに謙虚で敬虔な執事のものだ。
「まにあってよかったのだわ。睦月さんもベネラーさんも無事で」
 愛くるしさにブーストがかかった章姫が微笑む。戦場へほんわりとした空気が一瞬充満した。
 やっと合点のいった顔をした睦月が章姫へ腰を折る。
「その埴輪はたしか頭領が……」
「うむ、リコリス殿が着ている埴輪は俺が仕立てたものだ。途中で何作ってるかわからなくなったが」
「なのでーす! いいだろ~!」
 リコリスが再度胸を張る。たぶん、そうしているはずだ(2回め)。
「どおりで見覚えが。ところで、頭領、顔布で全面的に顔が隠れてますが、前は見えてますか?」
「見えてる見えてる。頭領舐めるなよ。母上! 睦月の援護を!」
「はーい、そろそろ訂正するのも面倒になってきた、母上じゃないでーす! やっと出番!」
「霜月さんも来てくれたんですね。心強いです」
 ほっとした様子のベネラーを霜月がかつぎあげ、睦月とともに後方へ下がる。
 そこには『黄泉路の楔』冬越 弾正(p3p007105)と、『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)らしき姿。
「お久しぶりです、アーマデルさ……すごい光ってるー!」
「ああ久しぶりだな、睦月殿、ベネラー殿」
 おお見よ、これが噂のゲーミングカジキマグロだ!
「こんなところで会うとは。なにか探しものでも……? いや、言いたくなければかまわない。尋問したいわけじゃないんだ、ちょっと心配なだけでな……」
 1680万色にビカビカと輝くカジキマグロの着ぐるみを着込んだまま、いつもの調子で二人の身を案ずるアーマデル。シュールである。なお地味にマグロの目もゲーミングカラーになっている。ここまでくるといっそ粋だ。
 その隣でブラックサンタが、ええ声を張り上げる。
「再び会ったなベネラー少年! 俺は通りすがりのブラックサンタ。よく働くいい子がピンチと聞いて馳せ参じたぞ! けっして不審者ではない」
「あ、いや、弾正さんですよね?」
「冬越弾正ではない! サンタは実在するからな」
「弾正さんですよね?」
「ええい、頑固だな君も!」
「それよりオレの上から降りてくれ……」
 四つん這いのまま弾正を背に乗せていたスースラ・スークラがつぶやいた。いい加減限界なのかぷるぷるしている。いかにラド・バウ所属といえど、現役を引退して久しい身に鞭打ってトナカイやっているのだ。
「この程度で音を上げるとはスースラ殿も情けない」
「いや、さすがに身の詰まった成人男性は重い、腰に来る」
「収集がつかなくなってきたぞ」
 アーマデルがちょっとつまらなさそうに弾正の服のすそをつまんだ。いそいそとスースラの背から降りる弾正。
「それでは村人および暦のふたりとベネラー殿を頼んだぞスースラ殿!」
「仕方が無い」
「さて……」
「からくりぶたいの幕を上げるのだわー!」
「決め台詞を取られた!?」
 でも章殿がかわいいからオールオッケーな鬼灯だった。

 一方、周りでは村人たちがジャック相手に苦戦を敷いられていた。この魔法の夜はジャックのほうが有利なのだろう、するりと攻撃をかわし、大きく口を開けて村人の頭を飲み込もうと……。
「させません!」
 御刀 麗華(p3p010882)の妖刀「紅鬼桜」がきらめいた。銀線一閃、ジャックがまっぷたつになる。
「魔のものによる悪事、見過ごすことなど出来ません! 御刀麗華、参る!」
 麗華は村人を襲うジャックを次々と切り裂いていく。
(初依頼がかぼちゃの殲滅ってイレギュラーズって本当に何でも屋なんですね……)
 そんな本心は隠しながら。仮装がはずれて、ただのかぼちゃに戻ったジャックを踏みしめ、後光を背負いながら麗華は村人相手に声をかけた。
「皆さん! ここは私達が受け持ちます! なので避難してください!」
「ねえちゃん、色っぺえな!」
「後家にこねえだか?」
「バカこくでね、相手はサキュバスだべさ、吸い付くされてえか!」
「あんな美人なら吸われるのは本望だべ!」
 そう、麗華はサキュバスへ変じていた。コウモリめいた翼と悪魔の角を生やし、見えそうで見えないぎりぎりのラインを狙った衣装に、下腹部には淫紋というdskbコスチューム。
 麗華の周りへあっという間に村の男どもによる人垣ができた。みな目がガンギマリである。
「うう……この格好は……。私の趣味とかじゃなくて! 団長が『ファントムナイトならこれくらいがちょうどいい』って無理やり着せられただけで……私の趣味じゃないんだ! 信じてくれ!」
(そんな目で見られると感じる~! やめろ、やめろー!)
 ばき。どか。ごす。村の女たちが男どもを殴って連れて行く。ひとまずの危機はまぬがれた。
 しかし、ジャックはまだまだいる。数の多さに麗華が辟易していると。
「この頭カラカラのカボチャ頭どもめー。かかってこいー」
 ゆる~い声が戦場へ響いた。ジャックが殺到し、村人たちから離れていく。
(び、美少年! うへへ)
 麗華が鼻の下を伸ばす。視線の先にはカフェオレのような肌のショタ。鉄帝風の軍服を着込んだ『ちいさなハーフエルフ』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。ん、ゴリョウ? ゴリョウ・クートン?
 説明しよう! ゴリョウ・クートンの出自を。オークの父と宇宙エルフの母をもつ彼は、実は『ハーフエルフ』なのである! 説明終わり。彼がまだ父と母の庇護のもとにいた頃の姿となったゴリョウはウェーブがかったショートヘアが愛らしい少年だった。
 そんなゴリョウへ怒り狂ったジャックたちが一斉に炎を吐く。ゴリョウ(小)はそれを盾で受け、マントを払ってしのごうとする。
「小さくたってー、積んだ経験はそのままですよー」
 凛とかまえる姿はまごうことなき美しさ。普段の豪快さは影を潜め、代わりにしなやかな動きで敵を翻弄していく。さらにそこへ。
「大きいのいきます、ゴリョウさん!」
 しろがねの時雨が降る。通り雨のように激しく、一瞬。けれどもそれがもたらす甚大な被害はすさまじいものだった。振り返ったそこには、くりっとした赤と緑のオッドアイを持つ獣人の少年。
(おおっ! 美少年がもうひとり!)
 麗華は心の中で喝采をあげた。
 黒装束に身を固め、緋色の刃をぬきはなち、マフラーをたなびかせる姿はアサシンと呼ぶにふさわしい。大きな和風の房飾りがマフラーの頂点で踊っている。それはひとときだけ同じ時間を過ごした大事な長男、梨尾のものだ。
 長男の姿に変じた『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は村人たちへ呼びかける。
「怪我して自力で動けない方、疲れて動けない方はこちらの馬車で避難を手伝いますのでご遠慮せずに言ってくださいねー!」
 背後を指差すと、十人は軽く乗れそうな馬車が用意されている。
「おお、助かるべさ!」
「恩に着るよ!」
 村人たちはけが人をかつぎこんでいく。
 それを見ていた『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が、うむ、とひとつうなずく。いつもの格好だ。全身を鎧に覆われた。だがしかしそれだけだろうか。
「ヒーホー!」
 ジャックが衝撃波を放つ。顔面にそれをくらったオリーブの兜が飛んだ。
 ない。あるべきはずの顔がない。
 オリーブはゆっくりと兜を拾うと頭部へ装着する。
「依頼の合間の休憩と思ったのですけれど、どうやら休みはなさそうです」
 こんな状況の鉄帝で、イレギュラーズがゆっくり休めると思うのが甘かったかもしれませんが、そう続ける声は静かな自信に満ちている。
「ともかくなんとかしてみましょう。そうすれば、少しは休めます」
 オリーブがロングソードをかまえる。
 宣戦布告の合図だった。

「ヒーホー!」
 これしか言わないのは楽でいいなあ。と誰かは思った。
 オリーブはそんなの無視してジャミル・タクティールを撃ち続ける。
「村人の皆さんは広場の方へ逃げてください。自分たちが囮になります」
 強烈な剣戟による衝撃波がジャックをズタボロにしていく。その中心でジャックたちの引きつけを担うのはゴリョウ(小)。
「おいでおいでー。ちっちゃいけどうそみたいに強いよー。じょうだんだと思うならおそってきなよー」
 激しい攻防戦の裏では息子の姿のウェールと、麗華が手分けして村人を逃していく。
「魔なる者よ! この一閃で滅せよ!」
 炎から村人をかばった麗華がきっとジャックを睨みつけ、元のかぼちゃへ戻す。
 ウェールはというと、かたっぱしから攻撃してはジャックをひるませ、食材適性を付加していく。
「食える所がすくなさそうだが、もったいないおばけとかでそうだしな……」
 そこへ飛び出したのはリコリスだ。
「生きの良いかぼちゃがたくさんいるね! いいよいいよぉ、ボクがきっちり刈り取ってあげるよぉ!」
 リコリスはジャックをひとくちかみちぎろうと思いっきりかぶりついた。
「あぐ……がうがうがうがう!!! これかたいよ! 歯が折れるー!」
 ともかく不調を植え付けて、次のターゲットへ。
 ウェールの馬車の前に現れたジャックが、魔糸で切り刻まれていく。ぶしゃっと音が立った。
「かぼちゃさんからおいしそうな果汁が出てるのだわ」
「野菜ジュース的ななにかか。いやまさか出血するとは思わなかったぞ」
 B級ホラーみたいな絵面だなと鬼灯は思った。
「野菜ジュース?」
 単語に反応したアーマデルがさらに輝く。同時にくりだされる重厚な一撃。かぼちゃが粉々になった。
「反応高めで防御が紙……なんかちょっと親近感があるな。だが容赦はしない。まとめてスライスしてやろう」
「♪~シャイネンナハト、ホーリーナハト、もみの木を飾ろう! 輝かんばかりのこの夜に!」
 弾正の歌唱が圧となってゴリョウの持ち場までジャックたちを吹き飛ばす。
「Trick or シャイネンナハト! 菓子をよこせ、さもなくば死のプレゼントをくれてやる! 行こう、アーマデル、ハロウィンのそのさきへ!」
「ああ、全力でいくぞ」
 かくしてとんでもない数のいたずら好きは、あっというまに食材へ変えられていったのだった。


「えーっ!? かぼちゃって煮込んだら甘くなるの!?」
「そーですよー。デザートだってつくれちゃうんですよー。リコリスさん、てつだってくださーい」
 ゴリョウがそうお願いすると、リコリスは満面の笑みで……。
「むんっ!」
 かぼちゃを握りつぶした。章姫と鬼灯がぱちぱち拍手をしている。
「リコリスさんのこれはポタージュにしましょうかねー。ほかにはシチューにコロッケ、グラタン。パウンドケーキにプリン、米粉をくわえて鬼まんじゅう、まだまだいくよー」
「すごいねゴリョウさん! 次々レシピができていくよ!」
 たのしみだね! と、大喜びするリコリスの代わりに麗華がレシピを受け取った。
「えっと、まずはいちばんかんたんなかぼちゃスープを作りましょうか。料理は私も得意なほうです。ゴリョウさんのレシピもありますし、ばんばん作りますよ!」
「では私は村人たちも楽しめるよう、受け取り列を作りますね」
 オリーブが広場に溜まった人の波をさくさく整理していく。統治系に精通しているだけあって、村人はみなすなおにオリーブの言う事へ従った。
 アーマデルとゴリョウを助手にした麗華が、魔女の大釜みたいな鍋でつくったほっくりかぼちゃシチュー。食材適性のおかげもあってほっぺたが落ちそうな味だ。村人たちも喜んで酒蔵から次々とワインを持ち出してくる。酒蔵の聖女は大喜び、宙で一回転した。
「ふふ、まるで宴会ですね」
 オリーブはひとり微笑んだ。

 にぎやかな広場の片隅で、ウェールはひとり、大切な長男のことを思い出していた。
(梨尾、二人暮らしなのに俺が仕事にかまけてばかりでかまってやれなかった……すまない、すまない、なのに、掃除や洗濯を頑張ってくれていたな。血も繋がってない親子だったのに)
 ウェールの帰りを待って、待ちわびて、寝落ちした息子のそばにはお世辞にもきれいとは言えない手作り感あふれる和梨のタルト。だけど、とてもおいしかった。あの味を思い出しながらパンプキンタルトをつくっていると、ウェールはしぜんと涙が出てきた。
(今度は俺がタルトを作る側になるんだ。元の世界に戻ったら、息子たちとハロウィンを満喫するんだ……)
 などと思い出にひたっていたら。
「ウェールさん、それもらっていい?」
 横からリコリスにとられた。
「ま、まあいい。タルトはいくらでも作れる。それよりも」
 ウェールはマフラーへ鼻先を埋めた。スンスン、クンカクンカ。匂いをかぐも自分のぬくもりしか伝わってこない。
(くっ……枯渇気味な息子ニウムを補充するチャンスだというのに。息子の匂いが思い出せない……いい匂い、安心する匂いだった覚えがあるんだがもう四捨五入したら10年も会ってないんだもんな……)
 一方、広場のまんなかでは弾正によるリサイタルが開かれていた。ハウリングの混じった熱い歌声にモッシュができている。
 そのうち、人混みの向こうからうろうろと様子をうかがっているアーマデルに気づいた弾正は、スースラに平蜘蛛の演奏をまかせて歌をやめた。
「どうした、アーマデル」
「……その、南京団子を作ってみたんだ。いやその、俺は丸めて汁粉にぶちこんだだけだが、よかったら」
「アーマデルが料理なんて珍しい! 隠し味に愛情は入っているか? いや、入っているに違いない!」
「あ、あんまり大声で言うな、なんというか、なにかが減る」
「減るものか、むしろ増えるんだ。こういうことはな。それでは冷めないうちにいただこう」
「いいから口を開けろ、『あーん』だ」
「……うん、うまい!」
 弾正の満面の笑みにつられて、ほんのりと口の端をもちあげたアーマデルだった。


 広場いっぱいにかぼちゃの香りが漂い、活気で満ちる頃、月は中天。星々のきらめきを従えて我こそは夜の女王と輝いている。ハロウィンにふさわしい夜だった。
 そんな広場からこっそりと出ていこうとする人影。
 弾正はその肩へがっしりと手を置いた。
「元気にしているかベネラー少年! 今年はどんなプレゼントを所望か、今のうちに聞いておこうか」
「あ、弾正さん、いえ、僕は……」
「弾正ではない、ブラックサンタだ! それはともかく希望を聞こうか」
 黙り込んでしまったベネラーへ睦月が視線をやる。
「ベネラー君、正直に言ったほうがいいよ。頭領も来たし」
「そうだよォ。ほらほら、ほっかほかの南京団子の汁粉だよォ。一口食べて落ち着きなよォ」
 足音もなく気配が近づいてきた。その気になれば気配も殺せるのだろう。片腕にいとしの妻を抱いた鬼灯は、やれやれと頭を振った。
「ベネラー殿、欲しい物があるなら言ってくれれば良いものを。まあ、らしいといえばらしいが。財布代わりに睦月を連れて行くのは正直頂けないな。会計係がいないのは困るからな」
「それよりなにより心配なのだわ。ベネラーさん、鉄帝までなにをしにきたの?」
 章姫が鈴を鳴らしたような声でいざない、少年へ手を差し伸べる。
 少年はしばらく悩んでいたがやがて諦めたように顔を上げた。
「……銃を、買いに」
「銃ゥ?」
 霜月がぱちくりと目をまたたかせた。
「そんなの言ってくれればすぐ用意するよォ。なんでまた」
「銃は比較的調練が簡単だと聞きました。……準備をしておきたいんです。調べないといけないこともありますし」
 なんの準備かまでは鬼灯は聞かなかった。
「勝手に出かけたのはよくないが、今回はきちんと護衛をつけたな。その点はえらい」
 そう言って鬼灯はベネラーの頭を撫でた。少年がふたたびうつむいたから。

成否

成功

MVP

冬越 弾正(p3p007105)
終音

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!

ハロウィンナイト、いかがでしたか。すでにシャイネンナハトの気配が忍び寄ってますね。
MVPはそんな時期をしっかり楽しんでるあなたへ。

またのご利用をお待ちしております。

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