シナリオ詳細
<総軍鏖殺>ヴェンデッタと釘打ち機<革命流血>
オープニング
●警告
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)はマッチを一本すると、それをくわえた煙草の先端にそっと近づけた。
燃えるリンの香りにのせて、わずかに煙草のけむるにおいがする。
冷たい10月末。それも北部にふく風はこんな小さな火ですら温かく感じさせてくれるものだ。
一連の作業をルーティーンのように終えると、コルネリアはマッチを地面に放り落とした。
うすく雪溶けた土は一瞬で炎を消し、ブーツでふみにじったそれは土と混ざる。
『こんな場所』で煙草を吸い始めることにも、マッチに火を付けたまま放り捨てたことにも、リア・クォーツ(p3p004937)は何も言わなかった。言うだけの状況では、とうになかったのだ。
あらためて眼前を見つめるがいい。
人間が逆さに飾られているのが分かるだろう。
山羊を寒気から守るために建てられるという、この辺りでは一般的な山羊舎の壁。
そこには、ここいらの山羊を育てていたであろう『人々』が丁寧に壁に打ち付けられ、逆さに吊られているのだ。
ご丁寧に、『これは革命の糧である』という意味のゼシュテル文字が刻まれ、クラースナヤ・ズヴェズダーの紋章が血で大きく描かれていた。
「わかる? 工夫がされてるね」
「工夫って――」
ここまでくれば流石に険がさすもの。リアがコルネリアをキッとにらみ付けると、煙草をつかんだ手で吊られた人々の足元を指さした。
「骨の関節部手前。あそこに釘を打つと人間を吊れるのよぉ。チキューのイエスなんとかって人? あの通りに打って吊ると、すぐに肉が避けて落ちるんだ」
それがなんだというのか。リアは怒りを露わにしようとして……そして、沸点に達する寸前であることに気付いた。
「……プロの犯行?」
「そゆこと」
クラースナヤ・ズヴェズダーは確かに過激な思想をもった集団だ。炊き出しと聖歌の合唱しかしていなさそうな集団が突然ちょっとした軍隊なみの武力を持ったことで、主要派閥の一つに数えられるほど影響力を拡大したという経緯をもつ。
しかしそうなったのは最近のことで、いくら過激だといっても、人を逆さに吊り慣れている連中など聞いたことがない。
「聞いたことある? 鉄帝軍部に、『報復の専門部隊』がいるってハナシ」
「なくは、ないけど……」
噂によれば、首都の軍に『ヴェンデッタ』という特殊工作部隊が存在するらしい。彼らは『出来るだけ残忍に』『できるだけ目立つように』『それらを速やかに確実に』行う部隊であるという。都合のわるい人間を黙らせたり、怒らせたり、場合によっては自死に追い込むために彼らは投入されたとも。
「奴らの仕業だっていうの?」
「さあぁねぇ……とっつかまえてみればわかるんじゃないかしら?」
「皆さん!」
慌てた様子で駆けてくる足音がする。
振り返ると、司祭アミナが荒く息を乱しながら山羊舎の戸口に立っていた。
そして中の様子を見て、口を押さえる。
走ったために疲労したためなのか。それとも目の前の光景にあてられたか。はたまた血と臓腑のにおいに寄せられたか。
急いで外に出ていく彼女を追って、リアとコルネリアは舎の外へと出た。
外気が、やはり冷たい。
背景を語ろう。
クラースナヤ・ズヴェズダー革命派は冬越えの物資支援を受けるため、鉄帝北東部のオースヴィーヴル領を訪ねた。しかしそこで見たものは領民の虐殺であり、あろうことか虐殺の首謀者は司祭アミナとその革命軍であるというのだ。
そんなことがあるはずはない。疑いを晴らすため、あるいはこれ以上の虐殺を止めるため。アミナから依頼されたコルネリアたちはオースヴィーヴル領へと入ったのだった。
口元を拭い、『すみません』とか細く呟くアミナ。リアはそっと背中をさすってやる。
なにを言ってやるべきか考え、そしてあえて実務的なことを選択した。
「連中の居場所は見つけた?」
「はい……ここから西。ケセスタットの小村跡地です」
革命派の偵察隊がとってきた情報によれば、ケセスタットはオースヴィーヴル領西部にある小村で、古くは鉄帝軍侵略に降伏した際住民すべてが避難したことで廃村化し、色々とあって人口が減ったことから住民も戻らずそのまま自然に還りかけているという。
そうはいっても建物はあるので、一時的にキャンプ地とするにはまあまあ都合がよいのだろう。
リアはアミナが無言で手渡してきた書面を開き、中身に目を通す。
「武装した、革命派の僧服を纏った集団。両腕を釘打ち機のように改造されたオラウータン状の天衝種(アンチ・ヘイヴン)を複数体確認……か」
「間違いなさそうね」
コルネリアは拳銃を取り出し、弾を確認すると歩き出した。
「行くわよ。少なくとも奴らには、『思い知らせて』やらないとね」
- <総軍鏖殺>ヴェンデッタと釘打ち機<革命流血>完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月07日 23時00分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
小高い岩場に身を伏せ、様子をうかがう『竜剣』シラス(p3p004421)。
「呑気に温まってやがるぜ」
ケセスタット村跡に点在する建物中で、まだ壊れていない僅かな数件の建物に目星をつけ、シラスは『ヴェンデッタ』の工作員たちが休憩をとっている様子を観察していた。
アンチ・ヘイヴンのクルゥエズは野外で待機状態に入っており、見つからない位置から迂回して建物内を奇襲することはそう難しくなさそうだ。
馬鹿な奴らだ。こいつは楽な仕事だな。
などと思った次の瞬間、シラスのもつ歴戦の勘が警報を鳴らした。
『いくらなんでも愚かすぎる』、と。
「何か気になったことでもあったか?」
シラスの様子を察した『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が横から問いかけてくる。同じく村に忍び寄ることができる彼を同行させ、ていたのだが、同行の目的はなにも安全のためばかりではない。彼の知識を借りておくに越したことはないだろう。
「連中、村でやけにリラックスしてるんだが……普通、あんだけ挑発的なことをしたら『レス』を気にするんじゃないのか?
うまいたとえが思いつかないんだが、万引きしたあとしばらくは店主が追っかけてこないか警戒するみたいな」
「確かにピンとこない例えだが……確かに不自然だな。連中がマジの革命派で、良いことしたくらいの気持ちでいるんならともかく」
マカライトは当初彼らを『頭空っぽなお人形さん達』と表現していた。というのも、報復専門の部隊をこのケースに投入する意味が全くわからないからだ。
嫌がらせにしても酷すぎるし、やっていることが滅茶苦茶だ。頭のおかしい異常者だからという理由であってくれたほうがむしろ楽なくらいである。
奴らはろくな死に方をさせねえと一通り悪態をついたあとで、マカライトは一度冷静になった。
「もしかして連中、本当に知らないんじゃないのか? あの村に『報復』のタスクを果たすのは当然だって理由を吹き込まれてるとか」
「……そんなことってあるか?」
「いずれにせよ逃がしやしない。捕まえて吐かせればハッキリするだろう」
村に接近していた仲間たちの報告を待ちつつ、『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)たちはいつでも戦いに入れるよう準備をしていた。
「わざわざ革命派を装い虐殺を行う報復部隊。
革命派の内部事情までは把握していませんが、少なくとも私たちローレットが関わっていて、虐殺を推奨などするわけがありません。となると、ふむ」
「革命派をかたる『偽物』って線は濃厚よね。
第一。罪無き人々の命を、アミナの理想を弄ぶ連中は許してはおけないわ。
本当の革命派を見せてあげなきゃね」
『玲瓏の旋律』リア・クォーツ(p3p004937)は細剣をゆっくりと抜き、刀身に淡い微光を宿らせる。
彼女が抜刀と共に星のきらめきを、流星の如き突きと繰り出すさまを正純は見たことがある。
きっと今、ヴェンデッタたちを斬り捨てる想像でもしているのだろう。
「熊、狼、食べ残し、意味ある。これも、意味、ある。脅し、騙り、効果的。
でも、人のやること、違う。死んだ後、辱める、最低、最悪。
だから、因果、応報。報復、やり返される、覚悟、あるよね?」
一方で『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)は弓の手入れを終え、独特の口調で目をギラリと光らせている。
口では『報復』と述べているが、シャノの弓の触り方からはあまり凶悪そうな様子は見えない。『できるだけ苦しめて殺してやる』とまでは思っていないようだ。彼自身の善良さや、素朴さ、そして汚れのなさゆえなのだろうか。
リアと正純はつい顔をみあわせてしまう。リアに至っては結構ドロドロとしたことを考えていただけに。
「手が血で汚れきった連中に変な思想持たせるってのは怖いわねぇ。ま、仕事で汚しているアタシとてなんも変わらないけど……」
リボルバー式の拳銃に弾をこめ、ガチンと弾倉を収める『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)。
『弾を込める』とはいったが、弾は彼女の生命力を変換することで生成したものである。実質的に球数は無限にあるし、極論弾込めを行う必要すらないのかもしれない。ここまでの動作は、言ってみれば彼女なりのルーティーンだ。
「依頼されたからにゃ、今日もお掃除頑張りましょ。それだけでしょ?」
サバサバとした言い方に、仲間たちの緊張がほぐれる。
『どうしてこの不義理に報いようか』などと考えていれば、心も黒く染まるというものである。それならいっそ、クレバーな考え方にシフトしたほうが健康的だ。
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がホッと息をつき、仲間たちの顔ぶれを見る。
「せめて、同じことが二度と起こらないようにしないと。
ヤツェク、皆さん。苦労を掛けてしまうけれど、お願いしますわね?」
「はは、なあに」
軽い調子で肩をすくめてみせる『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)。
「おれは理想家に賭けたがるヘキがあるからな。真面目に世界を変えようとしている奴らの名を騙って殺戮を行うなら。やるこたひとつ、突撃だ。
なぁに、こちとらタイプの違う修道女サマがた――勝利の女神が三人もいるからな。負ける気はしないさ」
リアに、ヴァレーリヤに、コルネリア。三人をそれぞれ見てからヤツェクはウィンクをする。
「おいおいヤツェク、まともなシスターが一人もいねえじゃねえか」
両手をポケットに入れたシラスが笑いながら声をかける。
「なんですって?」
「メイド服着せるわよ」
「よ、戻ったぜ。連中の配置だが――」
あえて聞かなかったことにして、シラスは手書きのマップを取り出した。
●
建物の裏側。岩場に面した細いエリアを進み、シラス、マカライト、正純の三人は建物の裏口に手をかける。
何とはなしに忍び足が使える三人を集めただけだが、対応レンジや攻撃のシナジーを考えてもなかなかよい編成になったようだ。
シラスがハンドサインで『三秒後に』と示した後、タイミングをはかって扉を大きく蹴り開けた。
驚いたのは中で酒瓶をあけていたヴェンデッタたちである。
「なっ――!」
「個人的恨みで悪いが、その名称を敵が名乗ってたら途轍もなく不愉快でな……山羊頭がチラつくんだよ!!」
マカライトは即座にタルタロス・フィストを発動。鎖で形成した門から巨人の腕を召喚すると、ヴェンデッタの一人を殴りつけながら建物の壁をもろとも破壊した。
相手の対応は、どちらかといえば早かった。
酒を飲んでいたヴェンデッタの一人が拳銃をとり、マカライト、シラス、正純と三人のうちから一瞬の判断でシラスに照準。素早く三発のバースト射撃を行った。
対するシラスは銃弾をくらいつつも一気に距離を詰め、相手の伸ばした腕ごと蹴り上げた。
流れるような動きで掌底を入れ、零距離で魔術を発動。バチッと電撃のように走ったエネルギーによってヴェンデッタの姿勢が大きく崩れた。
当然その隙を逃す正純ではない。屋内に大きく転がりこみながら矢筒から矢をとり、起き上がった時には既に弓の発射態勢を終えていた。
「彼らの信仰を、祈りを悪用し事態を混沌とさせる、決して許されることではありません。こう見えて私、割と怒ってますから」
星の輝きを乗せた矢がヴェンデッタの腕を貫き、そのまま屋内の壁に突き立つ。ピン留めされたことを察したヴェンデッタは矢から逃れることをあえてあきらめ、手をかざして電撃の魔術を発動。屋内に激しいスパークがおこる。
一方で壁事屋外に放り出されたヴェンデッタはそのまま転がり、待機していたクルゥエズに戦闘命令を発した。
地面に座り込む姿勢でいたクルゥエズたちは即座にたちあがり、壊れた建物の方へと意識を向ける。
両腕の釘打ち機を翳し一斉発射。
踏み込んだマカライトが鎖を縦横無尽に張り巡らせることで防御するが、その間に側面からの支援射撃が始まった。
支援射撃と表現こそしたが、やっていることはコルネリアが建物の屋根に立って『happy Halloween』といいながら機関銃をぶっ放すことである。支援もなにもだ。
二重の意味で不意を打たれたクルゥエズたちが射撃に晒され、これ以上は困るとばかりに散り散りに飛ぶその一方、それぞれ別の建物から戦闘の音を聞きつけたヴェンデッタたちが窓や開いた扉の隙間から射撃を仕掛けてきた。
彼らも馬鹿ではないというべきか、互いにフォローが可能な建物を休憩ポイントにしていたようだ。
コルネリアはチッと舌打ちをして福音砲機を形態変化。建物の後ろに飛ぶようにして銃撃をしのぐと、黒いストックのアサルトライフルを建物の影から撃ちまくった。
建物の壁が徐々に削れていく中、コルネリアは『Abracadabra』と囁くと福音砲機をリボルバー拳銃へと形態変化。あえて建物の影から飛び出し走り出す――その瞬間、別の場所に身を隠していたリアが一気に距離を詰めヴェンデッタたちが盾にしていた建物内へと押し入った。
具体的に言うと、半開きになった扉を強烈な前蹴りで押し開き、ひっこんだヴェンデッタを冷たく見下ろした。相手の銃口が自らの脇腹を狙ったその瞬間に星の軌跡を描きながら高速の円運動を行い相手の背後へと回り込む。
「御機嫌よう。あたしは『革命派』のリア・クォーツよ。貴方達には聞きたい事があるの」
「リア? あのリアか!?」
気付けば後方から細剣で刺し貫かれていたヴェンデッタ。それを援護すべく、窓の外から意識をはずして魔導ショットガンにてをかけたヴェンデッタ――の腕を、シタシディ族特有の羽根がついた矢が貫いた。
「っ――!」
意識がそれる瞬間を狙っていたのだと察したときには続けて三本の矢がシャノから放たれる。
シャノは建物の上から射撃を行うと、翼を広げた滑空によって素早くポイントを移動。
コルネリアがはじめ隠れていた建物へと身を隠すと、再び射撃を行うべく矢をつがえる。
瞬間、クルゥエズが頭上をとった。俊敏に建物をよじ登ってこちら側へと来たのだろう。が……。
「空で、鳥と戦う。無謀。翼、用意して、出直して」
その時には既にシャノは真上に弓の狙いをつけていた。
クルゥエズが『ギャッ』と声を発し、肩を貫いた矢の矢尻に血が塗れる。
回転し墜落した形になったクルゥエズは釘打ち機をシャノに向けるが、どうやらその動きも狙ったものであるようだ。
クルゥエズの背後にはメイスを思い切り振りかざしたヴァレーリヤの姿があった。
大きく見開いた目は炎のように赤く光り、咄嗟に振り返り腕を翳すも、その腕事ヴァレーリヤは粉砕してしまった。
「体勢を立て直す隙は与えませんわ。コルネリア、リア! ヤツェク!」
「名を騙り殺戮を行う悪党よ、『本物の』報復の天使のお出ましだ!」
ヤツェクはツインネックギターを奏で魔術を発動させた。
光の粒が湧き上がり、指定した効果範囲にあったクルゥエズたちが発狂したように腕を振り回す。最後には自分の頭に腕を突きつけ、釘打ち機を乱射しはじめた。
なかにはヤツェクの歌の効果を逃れたクルゥエズもいたが、彼の放つ釘を腕で防御した。何本もの釘が腕に突き刺さり服の袖に血が滲むが、ヤツェクは表情を変えない。
相手を挑発するように逆方向に走り、追いかけてきたクルゥエズを振り返る。
「ポイントβに入った。任せる!」
ヤツェクが一見何もない場所でスライディングをかける。
クルゥエズが距離を詰めようと跳躍し――た瞬間、半透明なワイヤーに足をとられかくんと体勢が崩れた。
そのまま他のワイヤー数本にひっかかる形で転落。
立ち上がろうとするより早く、二本の矢と一発の銃弾が立て続けに撃ち込まれ、発動した魔術によってクルゥエズの腕と足が吹き飛んだ。
●
大半のヴェンデッタ、そして動いていたクルゥエズたちの全ては殺してしまった。
残ったのはリアが剣で突くことで『とりおさえた』一人だけだ。
「なんであんたらが攻撃してくる! 俺たちは仕事をしただけだろうが!」
「あら、喋っていいって言ったかしら」
リアは両腕を縛ったヴェンデッタの側頭部を蹴りつけて転倒させると、顔面をヒールで踏みつけた。
「あら失礼。歯がちょっと折れちゃったかしら? でも安心して。あたしは癒し手として一流だから、後でちゃんと治してあげる」
ヒールを口に突っ込むことで自害を防ぐと、ゆっくりと剣を相手の脇腹に押し当てる。
正純はヴェンデッタの前にかがみ込むと、目だけでこちらを見る彼の顔を覗き込む。
「本当に『何故襲われたのか』わからないんですか?」
「ぐ、が……!」
正純がちらりと視線を送ると、コルネリアが『どうしろと?』という顔で肩をすくめる。
それでもじっと見つめていると……。
「わぁったわよ。しかたないわねぇ」
コルネリアは銃をホルスターにしまってからヴェンデッタへと近づいた。
「死、というものは実に効果的なのだろう。
生きたいが故に外敵から身を寄せ合い暮らしていた訳で。
だからこそ、奪われた光景というものは残忍性が増すごとに恐怖を引き立てることだろう。
アタシも奪ってきた側。是非は言わねぇよ。
だから、ただ覚悟しな。
テメェらがやってきた事が、跳ね返ってきたって事を」
リアに解放するようにジェスチャーしてから、ヴェンデッタの頭を抑える。
上から覆い被さるようにすると、コルネリアは大きな釘を一本、相手の前に翳す。それをゆっくりと相手の眼球に近づけた。眼球から数センチのところでピタリととめる。
「言い訳をしたら1センチ近づける。嘘をついたら、アタシらが嘘だと思うことを言ったら。あと、アタシらを不快にさせたら同じだけ近づける――で、『誰の命令?』」
「どうか彼らの魂が、主の御許で安息を得られますように」
ヴァレーリヤは祈りを捧げていた。
後から追いついてきたアミナが心配そうに覗き込むが、ヴァレーリヤは『大丈夫ですわ』と優しく微笑み振り返る。
クラースナヤ・ズヴェズダーで、祈りの際に一般的に使われる香炉の香りがした。
心を落ち着ける、それでいてどこかふわふわとした気持ちになれる。
マカライトはその香りにどこか懐かしさを感じていた。
だがその正体が言葉にならないまま、彼は黙って立っている。ポケットに手を入れ、11月の外気のつめたさを頬でうけて。
シラスも同じような具合だったが、後ろから歩いてきたヤツェクへと二人で振り返る目つきは別の鋭さがあった。
「なにか分かったか?」
「ああ、命令書だ。まさかまんま残ってるとはな」
ヤツェクが翳したのは封筒。中には一枚の紙が入っており、グロース・フォン・マントイフェル将軍のサインが成された命令書であるのがわかる。
「クラースナヤ・ズヴェズダー革命派を代行して見せしめを行うようにと書いてある」
「グロース将軍って……『アレ』か」
シラスは鉄帝参謀本部の悪魔の姿を思い浮かべた。『幼女の皮を被った悪魔』と呼ばれる存在だ。
「ヴェンデッタの連中は命令通りに仕事をしただけだって?」
「そうでもないわ」
煙草に火を付けながらコルネリアが歩いてくる。
そこに正純やリア、見張り役のシャノもいることから、あのヴェンデッタは『始末』したのだろう。
「目的が革命派とオースヴィーヴル領の協力関係を破断させることだってのは理解してたみたい。『表向きは革命派の依頼を受けて軍が動いた』ことにしたみたいね」
「俺が言うのもナンだけど、屑みたいな仕事するな」
シラスが空をあおぐ。
皆の視線はアミナに移り、アミナはそれを受けたうえで……ヴァレーリヤの横に立って祈りを捧げた。
「確かに、悲しいことだと思います。この話を聞いた同領内の人々は、革命派に対して強い反感をもつでしょう。その波を完全に止めることは出来ないはずです。ですが、それでも……」
アミナのいわんとすることを察し、リアも祈りの姿勢をとる。
宗派は違えど、死者の冥福を祈る気持ちは同じだ。
香炉からあがる煙が、空に薄く細く、消えていく。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
革命派を名乗る部隊がオースヴィーヴル領にて虐殺を行っています。
彼らのキャンプ地へ乗り込み、強襲をしかけましょう。
●フィールド
ケセスタット村跡
廃村となった村で、建物はみな草木に半分ほど覆われています。
複数の民家がやや近い位置に集まっており、壁や屋根を利用して立体的に戦う作戦がとりやすいでしょう。
敵は建物内にて休憩をとっているはずですが、警戒がゼロというわけではないはずなので奇襲作戦を選択するなら相応のスキルや準備を行いましょう。
●エネミー
・ヴェンデッタ(仮)×複数人
革命派を装った部隊です。ヴェンデッタというのは鉄帝首都を拠点とする報復専門部隊で、その所属は隠されています。
魔法と銃器を主な武器として扱い、『速やかに無力化すること』を得意としています。
よって、BSには注意してください。
・クルゥエズ×複数体
オラウータンをベースに両腕をネイルガン(釘打ち機)のように改造された天衝種(アンチ・ヘイヴン)です。
腕からは大きな釘を打ち出す能力があります。
俊敏に飛び回り、腕の武装から釘を打ちこちらの動きを制限しようとしてくるでしょう
うまくよけるか防御しなければたちまちどこかにピン留めされてしまいかねません。
相手も相手で俊敏て抵抗力も高いので、動きをとめたりヘイトコントロールをかけたりといったことが難しい、ちょっと厄介な相手です。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
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