PandoraPartyProject

シナリオ詳細

石の好物は石

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●重なる戦闘の末
 疲れていた。
 彼らは非常に疲れていた。
 けれども、立ち退くわけにはいかなかった。

「行ったか……?」
「よし、無事なやつは怪我人を運べ!」
 敵の撤収と共に騒がしくなる。
 簡易担架で運ばれていくのは鉄騎種(オールドワン)だ。
 ゼシュテル鉄帝国グイア鉱山。ここは現在、度重なる来訪者によって怪我人が続出していた。
「なあ、これ以上無理だって」
「鉄帝人らしくないぞ! まだまだいけるだろ!」
「……でも、まだいけるったってキリがないのは事実なんだよな」
 シン、とその言葉に場は静まり返る。
 いつからだっただろうか。石を喰らう巨人が現れたのは。
 いいや、人ではない。あれは魔法的生物──モンスターの一種である。
「次に来るのはいつだ?」
「ええと、前に来たのはこの日だろ? なら……5日後だ」
 その答えに1人の男が周りを見渡した。
 他の者の視線を浴びる男は動じることなく、1人1人の視線を受け止めていく。
 彼らの瞳に浮かぶのは敵と相対する闘争心と、仲間がやられたことによる怒りと、……隠せないほどとなった疲れ。
 当然だろう。常に緊張の糸を張ったような状態は、鉄帝人といえど疲れないわけがない。次の襲撃日を予測できたとしても、その通りになるとは限らないのだから。
 男は全員と視線を交わすと、その口をゆっくり開いた。
「……イレギュラーズだ。ローレットへ依頼しよう」

●石を追い返せ
「至急なのです! 鉱山に行ってくれる方募集なのですよ!」
 バサバサと依頼内容の書かれた羊皮紙を頭の上で振る『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 彼女の姿にイレギュラーズがなんだなんだと集まってくる。
「鉱山で手伝いかなんか?」
「違うのです、鉱山にやってくるゴーレム退治なのです! 早くしないと! 鉱石を守る方達がやられちゃうのですよ!!」
 思わず鼻息荒くなったユリーカ、コップに注がれていた飲み物を飲んで小さく息をつく。飲む前より多少落ち着いたようだ。
「ごめんなさい、説明がないとわかりませんよね。
 場所はゼシュテル鉄帝国にあるグイア鉱山なのです。そこではちょっと良い鉱石が取れるのですが……そこに現れたのが、石を食べるゴーレムなのです」
 少し話が読めてきた。
 鉱石を掘り、集め、外へ運ぶ作業。その最中にゴーレムが現れて何をするかといえば、勿論掘られた鉱石を食べることであろう。
「ゴーレムが食事をするって不思議ですよね。でも、どんな石でも食べるわけじゃないみたいで、今回は発掘された鉱石ばかりを狙ってくるのです」
 坑道がどのような状態なのかを問うと、ユリーカは1枚の地図を広げた。
 坑道内の地図だ。
「掘った鉱石を溜めておく場所がここ。ある程度溜まったら1度に外へ運んでしまうらしいのです。ゴーレムと鉱山の人が戦ったのはその手前にある広場。とても広いので、これまでの戦闘でも坑道に対した影響は出ていないのです」
 その説明を聞いていたイレギュラーズ達はあれ、と首を傾げた。
 鉱山に勤める者は一般人──イレギュラーズではないはずだ。まともにやりあったというのだろうか。
 そこについてもユリーカに問うイレギュラーズ。
「鉄帝といえば武力、みたいな国ですから。大闘技場『ラド・バウ』もありますし、一般の方でもそこそこ強いのです。
 けれど、そんな彼らでもゴーレムを倒しきるには至りませんでした。この依頼はこれ以上長引かせられないと判断されて出されたのです。勿論その場で完全撃破できれば良いですが……大きな傷を負わせて撃退しても、そう長くない間にゴーレムは止まると思います。皆さん、どうか頑張ってくださいね」

GMコメント

●成功条件
 ゴーレムの撃退(今後のことを考えれば撃破が望ましい)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●周辺環境
 鉱山の中、大きめの広場のようになっています。元々は広い空洞だったようです。
 ゴーレムも広がれる程度の広さと考えてください。
 壁に明かりが設置されているため、何もなくても視界に支障はありません。
 外より比較的涼しいです。

 イレギュラーズが立ちはだかる後ろには、鉱石を守るオールドワン達がいます。
 敵による襲撃で消耗しており、流れ弾的な攻撃を防ぐ程度しかできません。
 彼らと敵がまともに相対すれば負けてしまい、鉱石を奪われて失敗となってしまうでしょう。

●敵
『ストーンゴーレム』×3体
 大石が動いたかのようなゴーレムです。人間種の2倍程度の体長です。
 攻撃・防御に優れ、反応はそこまで高くないようです。
 魔力のような物を原動力とし、鉱石を食べることで摂取しているようです。枯渇すれば動かなくなり、完全停止すれば人のような形の石となり果てます。
 戦闘方法の詳細は以下のようになっています。

・格闘:近接距離の単体攻撃。パンチとかキックとか。
・薙ぎ払う:近接距離の範囲攻撃。腕をぶん回したりします。
・投げつける:遠距離の単体攻撃。自分の体の一部を投げつけます。この攻撃で失った部位はすぐ再生します。
・プチ生成:ゴーレム1対につき2体までの生成が限度のようです。敵を認識した時点で生成します。

『プチゴーレム』
 ゴーレムより少し小さめなゴーレムです。
 非常に防御に優れていますが、攻撃を一切してきません。反応はそこそこ良いようです。
 自らを生成したゴーレムを守るように動くようです。
 戦闘方法の詳細は以下のようになっています。

・マーク:イレギュラーズと同じくマークをしてきます。マークされている間、プチゴーレムを突破することはできません。
・かばう:イレギュラーズと同じくかばう事ができます。対象は生成元のゴーレムとなり、次にプチゴーレムの手番となるまで攻撃の一切をプチゴーレムが引き受けます。
・仲間の攻撃:パッシブ。ゴーレムの攻撃を阻害しません。

●ご挨拶
 愁と申します。
 私の運営するシナリオで鉄帝は初めてですね。他の国より人もモンスターも強いので頑張ってください。
 鉱石は怪我人続出により、鉱山警護に精一杯で搬出できていないようです。人手不足って大変ですね。
 至急の案件なので相談期間がやや短めです。ご注意ください。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 石の好物は石完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月07日 23時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ピット(p3p006439)
砂塵の中の狙撃手

リプレイ

●準備
 鉱山内、広場。
 いつもは多くの機材が置かれているようなその場所に、イレギュラーズはバリケードを作っていた。
 『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)が指示を出し、『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)やジョゼのダチコー、他のイレギュラーズもせっせと金網を立てる。
(金儲けの匂いがする……の♪ 後で商談してみたい…の)
 なんて思っているミアだが、勿論依頼のことは忘れていない。そう、商談は後である。
 バリケード作りを手伝いながら『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)はちらりと鉱員達、そしてその奥にあるであろう鉱石の方を見た。
(鉄帝だし、精製して良い武具の原料になったりするのかね)
 魔術の媒介にできる鉱石もあるが、そういったものではなさそうだろうか。
 ゴーレムも引き寄せる鉱石。もしかしたら性能の良い武器になるのかもしれない。
 ウィリアムの思考は鉱石からゴーレムへと移っていく。いや、ゴーレムを魔法や魔術でできた生物と考えれば、興味は後者のほうが明らかに大きいものであった。
(自然発生したものなのか、誰かが創ったものが暴走したのか……)
 悪意を持って作られたという可能性もあるだろう。
 発生原因は不明だが、それはさておき。
「鉱物資源が減るのは色々マズイだろうし、なんとかしてやらないとな」
「うむ。あまり無様な姿も見せられんな」
 ウィリアムに頷く『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)。
 ゴーレムの撃退はローレットへ依頼することとなったが、それまでも──そして今も。体を張って自らの持ち場を守ろうとする鉱員達の姿勢は天晴と言うにふさわしいものだ。
(その心意気には何とか応えてやりたいところでござる)
 イレギュラーズが不利と悟れば、鉱員達はまた自分達で戦おうとしてしまうだろう。そうならないよう、余裕を持った戦いを見せなければならない。
「こんなもんか」
 『ボクサー崩れ』郷田 貴道(p3p000401)はできあがったバリケードを見渡した。
 近距離で攻撃する仲間達が通れるよう、しかしゴーレムは足止めできるような幅を開けながら立てられた金網。強度はそこまで強くないが、多少の足止めはできるはずだ。
 準備ができたことで、貴道はそう遠くないうちに訪れる戦いに笑みを浮かべる。
「今回はシンプルな依頼でいいな、流石は鉄帝」
 守って倒す。難しく考える必要もなく、ただ拳を振るうだけでいい。単純明快だ。
 『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)もまたウィリアム同様に、しかし彼よりもしっかりと鉱員達の方を見ていた。
(小さめでいい、鉱石を譲ってもらえないだろうか……)
 サイズは今こそ人の形を模しているが、本体はその武器である鎌だ。鉱石を好物とするサイズにとってご馳走ともいうべきものかもしれない。
 ストーンゴーレムの破片も持ち帰れたら食べ比べ、なんていいかもしれない。

 鉱員達は作業をするイレギュラーズを見ながら、不安な表情を隠せずにいた。
 依頼を受けて来たのは8人。その中には屈強そうな男だけではない。か弱そうな少女までいるのである。
 あんな可愛い子が自分達以上に戦えるのか?
 自分達が弱くないと認識しているから故の不安だろう。
 そんな鉱員達を見渡しながら、ジョゼは安堵の息を漏らした。
 大きな負傷をした者がいれば回復を……と考えていたがその必要はなさそうだ。
 聞けば、ここに残るのは戦う意思があり軽傷程度の者のみ。その他は避難させたのだと言う。
「ゴーレムを相手取るのは初めてだ。けど、ここはオイラ達に任せとけってな!」
「ああ、ガンジョウであればあるほど殴りがいがあるってもんさ」
「そうそう。きっちり決めてやるから、見といてくれよー!」
 ニカッと笑うジョゼと『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)、『小さな雷光』ピット(p3p006439)の姿に、鉱員達の表情が徐々に変わる。
 ここまでイレギュラーズが余裕の表情を見せるのだ。外見で判断してしまうのは良くないだろう。
 猫耳の可愛いあの子だって、きっと自分達の倒せなかったゴーレムも返り討ちにしてくれるに違いない。
 イレギュラーズは、魔種を倒したほどの者達なのだから。


●ゴーレム来たり
 最初に飛び出したのはジョゼだ。ゴーレム達は石でできた存在、ならば無機物として多少の意思疎通はできるはず。
 しかし。
「んー、わからないな……」
「石ではあるが、ゴーレムとして在る今は無機物ではないということでござろうか」
 首を捻るジョゼに下呂左衛門はそう告げ、敵の眼前へ足を踏み出した。

「やあやあ我こそは『井之中流』河津 下呂左衛門! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!!」

 下呂左衛門の声が響く。
 坑道へ入ってきた3体へ名乗り上げると、ゴーレムが下呂左衛門を見た……気がした。
 いいや、気のせいではなかった。
 3体のうち2体が、下呂左衛門へと一直線に向かってきたのだ。
 下呂左衛門にしか注意の行かないゴーレム達。しかしその足元では勝手にゴボゴボと膨れ上がり、分裂して小さめなゴーレムが形成される。
「む……封じる事はできぬか」
 東洋の鎧を模った闘志に包まれ、下呂左衛門は身構えた。
 名乗り上げの挑発から逃れた1体もまたプチゴーレムを生成し、鉱員達が守る場所を目指して突き進んでいく。
 その前に立ちはだかったのは貴道だ。
「HAHAHA、通さねえぞデカブツ?」
 貴道は力強く跳躍し、宙を蹴って右ストレートを叩きこんだ。重い一撃を庇ったプチゴーレムがよろける。
 素手? いいや、その拳こそが貴道の武器なのだ!
 貴道の後ろでは巨大なレーザーガンが口をゴーレム達へ向けていた。
「いっちょ俺の本気ってヤツ、見せてやるぜ!」
 にやり、とピットの口端が持ち上がる。
 放たれた攻撃は金網と金網の間を素早くすり抜け、ガードするように突き出されていたプチゴーレムの両手をボロボロと崩していった。
 下呂左衛門へ向かおうとしていた1体の前へイグナートが立ちふさがる。ゴーレムが右へ避ければ右へ、左へ避ければ左へ。
 ストーンゴーレムが両拳を握って上から勢いよく振り下ろす。半身捻って回避したイグナートは機械の右手を握り締めた。
「カタいものを砕くにはどうすればいいか教えてあげるよ」
 ぶん、と風を切る鈍い音と共に。
「よりカタいものを、ぶつければいいんだ!」
 庇ったプチゴーレムの顔面へ、右腕が叩きつけられた。
 そこへ追撃するように炎が放たれる。
「火炎は流石に通らないかな」
 放った本人──サイズが淡々と呟いて観察する。
 メラメラと揺れる炎は思った程ダメージを与えていないわけではなさそうだ。しかし炎はすぐに消え、間髪入れないストーンゴーレムの薙ぎ払いにサイズは顔を顰めた。
 近くにいたイグナートは腕を交差させて急所を守る。
 2人の前へ立ちふさがったプチゴーレムはストーンゴーレムの攻撃に影響を受けた様子はない。だが、不意に空中から大剣が降り、プチゴーレムの1体を貫いた。
 流星の如く飛来したそれは、後方にいるウィリアムのものだ。
 ジョゼのマークしていたストーンゴーレムは徐に肩へ手を当てた。
 バキ、と割れる音と共に掴んだ場所をちぎり取り──
「わああっ!?」
 思い切りぶん投げた。それはバリケードも越え、後衛にいたピットへ降ってくる。
 ピットは咄嗟にレーザーガンで頭を守った。がつん、と固くて重いものがぶつかった衝撃が伝わり、砕けた破片がピットの腕を浅く切り裂く。
 同時にもう1体が腕をちぎって放り投げ、ウィリアムへと飛来した。
 ぐ、と呻いたウィリアムは神秘の力を操る本能を覚醒させ、即座に自身へ治癒魔術をかける。
「今度はこっちの番……なの♪」
 ミアが超大型火器を向け、照準を合わせる。
 複数体巻き込めることを確認し、味方を巻き込まないことも確認する。
「返品は受け付けません……なの!」
 大威力を誇る火器から放たれた攻撃。それはバリケードを抜け、ストーンゴーレムを庇うプチゴーレムの大半を巻き込む。
「君が死ぬ……まで……銃弾配送、止めない……の♪」
 続いてもう一発弾幕を送り込み、ミアは可愛らしく微笑んだ。

「あっ!」
 それは誰の声であっただろう。
 坑道の壁にジョゼが叩きつけられ、同時にガシャンと耳障りな音を立てて金網が倒れた。
 よろけながらも立ち上がったジョゼに、すかさずウィリアムが治療魔術をかける。
 その間にバリケードを乗り越えたゴーレム。
 鉱員達の前へ陣取っていたミアが眦を吊り上げ、バッグから何かを取り出し振りかぶった。
「えーい……なの!」
 投げられた爆弾は1体残っていたプチゴーレムを爆炎に包み込み、石の体をボロボロに崩す。
 しかし、遥かに大きな影が差してミアははっと上を見た。
 坑道を照らす光をストーンゴーレムが遮る。ミアの前へ壁のように立ちはだかったゴーレムは、徐に腕を振り上げた。
(でも……ミアより、ちょっとずれてる……ような……)
「……!」
 ミアが後ろを振り返るのと、ゴーレムの腕が振り下ろされるのと、雷光のような軌跡が見えたのはほぼ同時。
 間一髪、ピットが鉱員達を守ったのだ。
 膝をついたピットの前へ咄嗟にウィリアムが滑り込み、杖を構える。
 何としてもここを通す訳にはいかない。少なくとも、前の方で戦っている仲間達のカバーが来るまでは。
「おいあんた、大丈夫か!?」
「ああ……言ったろ、きっちり決めてやるって!」
 ウィリアムの背後でピットは立ち上がり、闘志の衰えぬ瞳でゴーレムを見据えた。
 射程に入るよう移動し、レーザーガンで狙うピット。
 近距離に迫ってきたことでミアは再びバッグから爆弾を取り出して投げつける。
「えーい……にゃ!」
 白猫型をした可愛らしい爆弾。しかし外見とは正反対にゴーレムはえげつない爆炎に包まれた。
 それでも前へ進もうとするゴーレムは、しかしウィリアムが決死の覚悟で立ちふさがることによって先に進むことができない。
「砕いて建物にサイリヨウしてやろう」
 イグナートは機械の腕をフルスイングしてストーンゴーレムへ叩きつける。追ってサイズの大鎌が振り上げられ、石の体に傷をつけた。
「……ぐっ!」
 ストーンゴーレムの振り払うような動きを大鎌で受け止めようとしたサイズ。しかし重い一撃に耐え切れず、足が宙へ浮いて壁へ叩きつけられる。
 イグナート達の攻撃にゴーレムが気を取られている隙に背後へ回り込み、下呂左衛門は大太刀を振るった。
 振り向きざまの薙ぎ払いを身を低くすることで回避した下呂左衛門。彼はかく乱するようにストーンゴーレムの脇をすり抜けた。
 ジョゼはウィリアムと足止めの役割を交代し、魔力を纏わせた剣を薙ぐ。
 幻影の花弁も刃となりストーンゴーレムを傷つける中、ウィリアムは前衛がまだ足止めしているストーンゴーレムへ向けて杖を掲げた。
 神秘の力。精神力の塊。その力を弾丸として凝縮し、ゴーレムへ向けて放つ。
「HAHAHA、鍛えた拳と鉱物。どっちが強いかなんて聞くまでもないよなぁ!」
 体勢を崩していたゴーレムへ飛来したウィリアムの攻撃。そこへ間髪入れず貴道がレフトフックで仕掛ける。
 孤を描くような左拳がゴーレムへ当たるとともに、ビシリと大きなヒビが入った。
 ほぼ同時にジョゼがアタックオーダーでゴーレムを撃破し、イグナート達の相対していたゴーレムも動きを止める。

 ひび割れ、動きもぎこちなくなり始めたストーンゴーレム。顔と思しき場所にある1対の光──おそらく目と同じもの──がゆっくりと点滅する。
 自らを守るゴーレムはなく、気づけば他のストーンゴーレムはただの石と化していた。
 目の前の敵性生物達を押しのけ、生命力の源を手にするか。背を向け、力尽きるまで別のどこかにある同じような鉱石を探しに彷徨うか。
 そんな選択肢がストーンゴーレムの中で巡ったかどうかはわからないが──ゴーレムは、後者を選んだようだった。


●去った後に
「1体……逃げられちゃった……の」
「なぁに言ってんだ嬢ちゃん! 鉱石1個も盗られなかったんだぜ!」
 しょんぼりとするミアを元気づけるように鉱員達が明るい声で告げる。
 逃げたゴーレムも無傷とはいかず、あのままなら戻ってくる前に力尽きるだろう。
「それなら……よかった……の♪ あと、あのね……商談……が、したい……の」
 笑顔になったミアを見て笑みを浮かべていた鉱員達。後に続いた言葉に驚愕の表情を浮かべた。
 こんなに可愛いのに自分達より強くて商談もできる。
((これがイレギュラーズか……))
 今後鉄帝民の一部からイレギュラーズの評価がさらに上がったとか何とか、という話が聞こえてきそうである。
 ジョゼはそこらに転がった石ころに意思疎通を試していた。
 何せ異界接続者となってから初めての依頼だったのだ。こういう場で試して次に繋げていきたい。
 とは言ってもどの石からもこんな感じ、という曖昧な単語のみが伝わってくる状態だ。
 片っ端から無機疎通を試すジョゼの傍ら、ウィリアムはゴーレムだったモノを見上げた。
 人の形を保ったまま動かなくなったゴーレム。その姿は不気味にも見えるが、本当に『ただの石』である。
 鉱員から道具を借りて石の一部を割ってみるが、道端に転がる石を割った時と変わりない。
(十中八九、普通の石だろうが……持って帰ったら何かわかるか?)
 ウィリアムは割った石の中から手で握りこめる程度の破片を拾い上げた。
「ミアのバッグ……は、不思議なバッグ……なの。いくらでも、物が入る……にゃ♪」
 召喚された魔法のバッグを鉱員達は感心したように眺めた。
「これは他の奴に使えないのか?」
「このバッグ……は、ミアだけ……なの」
 頷くミアに、鉱員達はリーダーの男を見る。
 彼にそれだけの権限があると言う事だろう。
 男はミアのバッグを暫し見つめた後、ミアへ視線を向けて「すまねぇな」と告げた。
「今より大量に運べるのは魅力的だ。けど、今受けてもらってるところには恩義があってな」
 真っすぐ告げる男にミアは緩く頭を振った。
「いい……の。ミアの運送会社……白猫ミアの宅急便、もし、この先……仕事ぶりが気に入ったら……御贔屓に……なの♪」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ツリー・ロド(p3p000319)[重傷]
ロストプライド

あとがき

 お疲れさまでした。
 範囲攻撃を上手く使えていたと思います。また、鉱員達へのカバーも良いものでした。

 それではまたご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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