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シナリオ詳細

<深海メーディウム>ささやかなる願い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネギール・トロスキーと言えば、知る人ぞ知る海の男である。
 絶望の青が踏破される以前から、海洋の危険海域で漁を行い……しかしその荒波を乗り越える卓越した腕によって荒稼ぎを可能にしていた漁師。彼は今『絶望の青』が『静寂の青』となった事で、漁に出る領域を更に拡大させていた――
 詰まる所、最近シレンツィオ付近にも足を延ばしているのである。
 あそこは最近活発的であり、観光客達相手に旨い魚などは常に求められている。
 より荒稼ぎのし甲斐があるのだと――しかし。

「…………ぉい。テメェ、いつの間に入り込みやがった?」
「もぐもぐ……んぐ? ごっくん」

 さてそろそろ十分に漁も出来たかと、成果を確かめるべく貯蔵庫を見据えれ――ば。
 ……そこには『何か』がいた。
 虹色に煌めく体を宿す存在だ。ソレが――折角獲った魚を食べている。
 おま、お前……それ、ここ数時間の成果……お前、マジホント……
「おぉいシラスゥ! コイツなんとかしろ!」
「なんとかって一体何のこと――ぉお? なんだソイツ?
 また何か釣り上げたなら自分で責任もって何とかしろよ!」
「俺が知るか。こういう時の為のお前だろうがぁ!」
「それこそ俺が知るかよ、俺を勝手に船に叩き込みやがってオラァ!!」
 さすればネギールは半ばキレ気味にシラス(p3p004421)へと声を張り上げるものだ。
 シラスはネギールと……まぁ一応知りあいである。そう。昔博打で大負けして、ネギールの船で強制的に働かされた事がある過去があって……まぁその折の話はいいとしよう。え、いくら負けたのかって? だから聞くな!!
 ――とにかく。シラスが何故この船にいるのかと思えば、シレンツィオでゆっくりしようと思っていたのに、何故か出会ったネギールに再び船に強制連行されたからだ。
 『暇だろ? 後で金はやるからちっと手伝えよ――な?』
 そんな感じに有無を言わさず。シレンツィオの荒波にえんやこらと……
「うっわ、魚が結構やられてんじゃん……お前なんだ?
 もしかして最近噂のフリーパレットとかいう奴か?」
「うぅ? あのね、あのね、ぼくたち、コングルロラクトショクションたべたいの」
「なんて?」
「コングルロラクトショクション~!」
 そうしたら折角獲った魚がほとんど喰われてた――
 その正体は、噂に聞く『フリーパレット』である。フリーパレットとは……近頃、付近の海域に現れる様になった存在で、一言でいうなら幽霊だ。思念の集合体であり、死んだ個人あるいは複数人の想いや未練が集まって形成されている存在。
 ――そして話を聞いてみれば、どうにも何か特定の魚を食べたいらしい。
 でもなんて? コングルロラク……えぇい噛みそうな名前だ!
「オイ待て。なんか聞いた事はあるぞ……たしか魚っつーか魔物の類じゃなかったか? 話に聞く深怪魔(ディープ・テラーズ)の一種類かもしれねぇけどよ……なんでんなモンに執着してやがんだよ」
「さてな――とにかく、多分こいつら満足するまで片っ端から魚食おうとするぞ。
 追い出せるかコイツ……? いやなんかどこまでも付いてきそうな感じがするな」
「何とかしろ」
「さっきからソレばっかだな! くそ、そう簡単に目当ての奴が近くに現れる訳もねぇし……」
「せ、船長――!! 北の方から何か近付いてきやす――!! 多分魔物ですぜ――!」
 とにかくこのままフリーパレットに魚を喰われる訳にもいかない。どうしたものかと頭を悩ませていれ……ば。ネギールの船員が何かを叫ぶ――この船に接近する魔物の影があるのだと。まさか……
「!! コングルロラクトショクション! コングルロラクトショクション!!」
「……丁度良く獲物が来たみたいだな。シラス、ぶん殴って刺身にしてやれ」
「お、お前ホントにこき使いやがるな……!」
「まぁまぁ。とにかく漁が上手く行ったらちったぁ奢ってやるからよ。
 軍資金やるからシレンツィオのカジノにでも行ってこいよ――
 バニーの姉ちゃんたちが出迎えてくれるかもしれねぇぞ? 好きだろ、そう言うの?」
「何言ってんだお前!!」
 知ってんだぞ――という風なネギール。お前には、名刺交換も済ませたバニーの知りあいがいると……
 何はともあれ魔物も接近しているのでは放っておけない。ただでさえ荒波で無茶をしているネギールの船が魔物に襲われればどうなる事やら。海の方を見据えれば確かにこちらに急速に接近している妖しい姿も見え……なんだアレは。巨大なフグか何かか?
 いや刺々しい身を見ればハリゼンボンに近い個体だろうか――
「くそ、やりゃあいいんだろやりゃあ……!!」
「おう。その意気だ――任せたぜ」
「コングルロラクトショクション! 美味しい! コングルロラクトショクション!」
「うるせー! 取って来てやるから、魚これ以上喰うんじゃねぇぞ!!」
 陽気な声ではしゃぐフリーパレットに、腕組しながらシラスを見守るネギール……えぇい手伝う気は無しか! 後でたんまり依頼金は貰うからなと――思考を巡らせるものであった。

GMコメント

 お待たせしました、リクエスト有難う御座います!!
 ネギール船長と共にシレンツィオに。シラスさんは強制連行されました。もしかしたら他の方もそうかもしれませんし、或いはネギール船長から漁を手伝う依頼が出されてのことかもしれませんね。ともあれ以下詳細です!

●依頼達成条件
 コングルロラクトショクションを撃破して、フリーパレットに食べさせてあげて満足させて、ネギールの船の平穏(?)を護りましょう!

●フィールド
 シレンツィオ付近の海域です。時刻は昼で、今の所気候は穏やかです。
 現在北の方から急速に接近している敵影が確認されています。ネギールの船は戦闘向きではない為、攻撃を幾つも受けたらその内沈没するかもしれません……なんとか護衛してください!

●コングルロラクトショクション(深怪魔)×6
 なんだか噛みそうな名前を持つ深怪魔(ディープ・テラーズ)の一種です。
 その姿はハリセンボンの様な刺々しい姿を持ち、かなり大型の個体達です。
 全体的にはHP・反応・防技・EXFに優れている様です。

 自らに【棘】を付与する技能を持ちます。また、その付与状態で敵に突進すると一定の固定ダメージを追加で与える特殊能力も持っています。
 更に別の攻撃手段として【水砲】なる口から高速の水流を発射する能力もあります。
 これは【飛】【乱れ系列】【呪い】のBS効果を齎します。
 ただし。実は喉の奥が弱点らしく、この時口を開いたタイミングで上手い事攻撃を叩き込めると、甚大な被害を連中に与える事が出来るかもしれません……

 なお。食べる事も可能だそうです。弾力のある食感と、あっさりとした味わいがあるそうで鍋料理などにすると美味しく、好きな人には高値でも売れるとか。フリーパレットに関しては刺身でも良いから味わいたいようです。

●ネギール・トロスキー
 危険海域で漁を行う事で名が知れている漁船の船長です。
 今はシレンツィオの方にも出張する事があるのだとか。そして今回、シレンツィオで見かけたシラスさんを(ほぼ強制的に)漁船に連行して漁を手伝わせていました。戦闘には参加する様子はなく、船を巧みに操舵し攻撃の回避に専念するようです。
 ちなみに他にも幾人か船員がいるのですが、妙に数が少ないです。
 ……シレンツィオで遊んでるのかもしれません。だから人手が足りずに強制連行されたか……

●フリーパレット
 シレンツィオ周辺で出現する不思議な幽霊の事です。
 彼らは思念の集合体であり、死んだ個人あるいは団体の想いや未練が集まって海に漂っています――どうやら竜宮幣に砂鉄のように結びつくことで実体化したらしく、彼らの未練を満たしてあげることで成仏し竜宮幣をドロップします。
 理由は不明ですがコングルロラクトショクションを食べたくてネギールの船に潜入した様です。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

  • <深海メーディウム>ささやかなる願い完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年08月31日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
寒櫻院・史之(p3p002233)
若木
シラス(p3p004421)
竜剣
※参加確定済み※
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
キイチ(p3p010710)
歩み続ける

リプレイ


 あら――今日は同行者が居ますのね。
 ふふ。珍しい事で……貴方達は一体何をしでかして、こんな所へ来ましたの?
 ……大丈夫。無理に言う必要はございませんわ。
 語りたくない暗い過去の一つや二つ、誰にだってあるもの。むしろ女であるならばそう言ったモノは幾らか持っていた方が魅力的にいったぁ――!!?
「なんて事しますの、この魚頭!!
 せっかく私がミステリアスな大人の女を演じていましたのに台無しですわ!!」
「うるせぇ財布無しで酒場に入った挙句知り合いにも連絡取れなかった女の何処がミステリアスだ。お前の存在はミステリアスじゃなくてミステイクだろ」
「なんて事言うんですの!!? ほら、誰か早く反論してください!! ――なぜ皆黙っているんですの!!?」
 マグロ漁船の常連『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は魚頭たるネギールにキレていた。彼女が此処にいる理由は――今ネギールが語った通りである。いつも通りですね!
 まぁそんなヴァレーリヤはともかく、件の魔物が急速に近づいてきている……!
 急いで反撃の態勢を整えねば――と動いたのは『竜剣』シラス(p3p004421)であり。
「ネギール、てめぇこの働きは別腹だからな、絶対に奢れよ。
 ていうかなんなんだよ魔物を食いたいってどんな未練だよ、畜生が!」
「おぉよ。無事に帰りつけたならな――ほら早く行ってこい」
 軽く。船長たるネギールに一声投げてから、彼は一手投じるものだ。
 敵が群れている間に纏めて薙ぎ払う。それは幾つかの呪術にも似た魔力の結晶。
 ――穢れた泥である。魔を宿したその泥はしかし、愚かにも接近しうる敵を丸ごと呑み込まん。
「船はまかせた、トロスキー船長! 海の男の舵さばきを見せてくれ!
 フリーパレット……さん、でいいのかな? これからあのハリセンボンの鍋を食べさせてあげるから、ちょーっとだけ我慢しようね。できる? だいじょうぶ? いいね? そっちの船底に行っちゃだめだよ? OK?」
「ぉーけぇー!」
「わーもう! 確か美味しいお魚がいっぱいの依頼があるって聞いてきたはずなんだけど、どうしてこんな事にー! いや、うん、まあ……確かにボク達が食べられるわけじゃないけど、美味しいお魚がいっぱい……だったね、さっきまで」
 続いて『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)に『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)も動き出す。船の後方側では陽気に応援しているフリーパレットの姿が見えるものだが――この子のどこにあんなに入ったんだろうか?
 全く持って不思議だが、これ以上更に美味しい魚を食べられる訳にはいかない。
 史之は自らに戦いの加護を纏いながら、海の中へと。
 飛び込みてコングルロ(略)と船を挟む様に位置し――撃を加えていくのだ。
 此方に注意が向くように。同時に焔はまだ距離がある内に、シラスと同様に遠方より一撃。
 炎の槍を顕現せしめ――投じれば瞬くように軌跡を残し、敵の中枢を穿つもの。
「ははは。漁業と言えば僕の出身世界でも後々に流行りそうな臭いがする職種です……いやあ憧れてたんすよ海の男ってやつに! 流石は海の荒波を日々乗り越えてらっしゃるお方! なんとお目が高い!」
「よせよ。ゴマを擦ってもなにもでねぇぞ」
 続いて。『まぁまぁそう言わずに!』と『外柔内剛』キイチ(p3p010710)が完全に船長へとゴマすりしている……! だってここでの収入を経て賭場で賽子勝負に勤しめば左団扇の生活も夢じゃないですからね! へへ、ゴマは幾ら擦ってもタダですし!
「ってーコトで……オラぁああああ!! 船を沈めようなんて狼藉は、神様が許しても僕の財布が許しませんよ!! 死ねっ! 痛みを感じる暇もなく三枚におろされて美味しく頂かれろっ! 醤油がいいか塩レモンがいいかぐらいは選ばせてやるうううう!!」
 そのためにもまずは邪魔な輩の排除だ! マーブル色の未知の生命体へと彼は果敢に往く! くっくっくっ、こうして騒ぎ立てれば攻撃は此方に向き、船の安全を確保しつつ連中に攻撃もしやすくなるもの……策士と呼んで頂いて構いませんよ? んっ?
「やれやれ! 少し手伝うだけでカジノの種金稼げる……なんてホイホイ釣られたがよ。
 ちょっっっとこれは重労働すぎやしねぇかね!? ボーナスほんとに出るんだろうな!」
「ヤダー!! お嬢ちゃん稼げる仕事あるぜぇって誘われたらなんですかコレ!!
 バッリバリの肉体労働じゃないですか!! しにゃを何だと思ってるんですか!!
 世界のアイドル、誰もが振り向く至高のしにゃですよ!!?」
「うるせぇ。アイドルだろうがなんだろうが働く分は働いてもらうぜ――ほら行きな」
 更に『ぎゃー!』とネギールに船から突き落とされそうになるのは『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)だ。その近くには『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)もいて――かれはうさみみと命綱を付けて海へと往くもの……綱切ろうとするんじゃねぇよ? 絶対に切るなよ! いいか、フリじゃねぇからな!!
 まぁともかくコングラ……いやコングル……ああもう何でもいいが魔物退治だ!
 近付いてくる個体へと一撃ぶち込む。棘? しゃらくせぇとばかりに全て折る一閃を此処に。さすれば。
「こんぐらっちゅれーしょんとかいう魚がターゲットなんですね! 希少な珍味の投稿とか結構バズりますからね! いえーい! ホラ! 自撮りに協力してくださいよ――大人しく珍味になってからあああ!」
 しにゃこも空を飛翔しつつ連中を討ち貫いていくものである。
 船が落ちれば帰る足もなくなるのだ。故に全力全霊で。
「……しかし 深海うまれで 棘をはやす事ができて そのうえ おいしいだなんて…… まるで…… 自分を 見ているようですの……! なんとも 他人とは 思えませんですの……!」
 直後には『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)も往く――心のどこかに共感を覚えながら、だ。今は水鉄砲を使わないし、あんなに禍々しい外見をしていない自信もあるが……しかし。もしも召喚されていなければ、同じ目に合っていた可能性もあるのでは……?
 だからだろうか。なんとなし、ちょっとぐらい優しくしてあげたくもなるもので。
「さあ、ここに、おいしいのれそれが ありますの。
 ですから……どうぞ、口を、おあけになって、くださいですの」
 故に彼女は差し出した――己が尻尾を。
 それは彼らにとって、最後の晩餐とも言える――代物だったのだが。


『――――!』
 ノリアを噛んだコングル(略)は思わぬ反撃に痛みを感じていた。
 ソレは彼女が、大いなる海の力を纏っているが故――
 自らが纏う棘の威と同じだけの力が彼女にも備わっているのである。
「もっとも この程度では あごが痛くなるくらいでしょう ……
 とっておきは これから というものですの!」
「あぁ――狙うはそのデケェ口の中ってなぁ!!」
 しかしそれだけでは終わらぬ。既にコングル(略)の弱点は聞いているのだ。
 喉奥にある、と。ノリアを喰らわんとして逆に痛みが激しいと知れば手法を変えて水鉄砲を放たんとするものである――しかしそれこそがニコラスらの待ち望んでいた展開。口を開けたその時にこそ……撃を叩き込む!
 狙いすました一撃は見事口を開けたコング(略)へと吸い込まれていく様に。
 内部から破壊せしめんとする勢いは強力だ――特にノリアなんて熱水を噴射し、口の奥へと到達させる。冷たき水の中で生きている者の喉奥にそんなモノを放つなんて……!! 体が焼かれる辛さを知るが故の一撃か! 更に続けてキイチや焔も同様に――!
「観念するんですね! そこいら辺を適当に泳ぎ回ってるだけなら無害でしたが、こっちに向かって来た以上はもう逃せません――さぁこっちの胃袋に入るんだよオラアアア!!」
「お刺身がいいかなぁ。酢飯を用意してお寿司にする手もあるね!
 色んなお料理にして食べてもらおうよ! その方がきっと美味しいよ! じゅるり」
 もはや完全に魔物と言うよりも食物として見ている。特に焔の一撃は連中の棘を叩き折る勢いであり……厄介な状態を強制的に解除していくものだ。
「あ、船長さん、この針千本どもの美味しい食べ方とかご存知ありません? なぁにここまで来たらもう勝ったみたいなモノですし、楽勝楽勝……あれ? ちょっと想定より僕の周りに敵が多いような――ぐああああ!」
「……策士策に溺れる、ってヤツでいいのか今のは?」
 とは言え。流石に只の海洋生物ではなく魔物であれば強烈な攻撃がある。今しがた尊い犠牲になったキイチに激しく突っ込んだ個体がいる様に、まだ油断は出来ないものだ。
「とはいえ先手を取れた事もあってか、勢いはこちらにありますわよ――!!」
「そうですよ! 連中を見てください! 馬鹿みたいに口を開けてしにゃに水を掛けようとしてるから弱点が丸わかり――ぎゃあああ!! 水が! 凄い水圧がしにゃの前髪を押し上げて――!!」
 が。ヴァレーリヤが近くの個体をメイスで吹き飛ばしつつ、しにゃこも顔面水鉄砲にさらされながらも反撃の一手を紡げば、勢いはイレギュラーズにあるものだ。距離がある内に全霊の攻撃をもってして先手を取ったのが効いてきているのかもしれない。
 故にこのまま押し切らんとする。
 被害が全くない訳ではないが、敵の体力は着実に削り取れている。
 水中を自在に往く史之は、先の焔と同様に棘を叩き割ってやりて――
「くたばれよ、このハリセンボン野郎! 俺たちの報酬のために!
 あと胃袋の為に! ほらほらさっさと口を開けなよ――狙ってやるから!!」
「後々の事も考えれば、綺麗に捌いてやるとするかね――とッ!」
 そして間髪入れずにシラスが超速へと至りつつコン(略)へと撃紡ぐ。
 たった一瞬の事ではあるがしかし、その刹那のシラスの動きは群を抜いていた――(ネギールの船にあった包丁による)数多の斬撃はコン(略)自身に、捌かれている事を気付かせもしない。手数による攻勢の果てに、コ(略)を船へと向けて蹴り上げれば。
「よぉっし! 一丁上がり! えっへん、見ろよこれ! まだ生きてるみたいだろ?」
「わー! わーすごーい!!」
 フリーパレットに見せてやるものだ――どうだ、凄いだろう? と。
 さすれば大はしゃぎのフリーパレット……あ、こら待て待て! まだ食べるな! まだ戦いは続いてるし、獲物ももう少しいるんだから後でな後で!!
「めっ、まだお預けだ! もうちょっとだけ辛抱しな!」
「うぉぉしにゃの前髪がグチャグチャに――! おのれ! さぁ早く誰か連中に噛まれに行ってくださいよ! え? しにゃは嫌ですよ囮になって口を開かせるのは! こないだなんかピンクを執拗に狙う魚に群がられたばかりなんですから――さぁどうぞどうぞ!!」
「いやいや此処はやはり目立つしにゃこさんどうぞどうぞ!! って、アッー! また来た――!」
 故にシラスは再び戦場に赴きて――さすればしにゃことキイチが囮の押し付け合いをしていれば、コ(略)共の突進が至るものだ。悲鳴轟く最中、しかし果敢に食べられにいくのはノリアであり。
「さぁ! みなさま、今が、チャンスですの!」
「でかしましたわノリア! さぁ今こそ最後の一撃を叩き込むのです――!! でやああああ――!! あ、あ! あらあら、ええと、お魚と見間違えて船長さんにメイスを、あは、あはははは――ぎゃあああ突き落とすのは無しですのよ――!!」
「やれやれ。あっちもこっちも騒がしいものだよね……」
 ノリアの献身的な活動。乗じて先程失礼な真実を言ったネギールを海に叩き落さんとヴァレーリヤは画策し……失敗して頭から突き落とされてた。泳げないので浮き輪はだけは何卒ゴボボボボボ!
 ともあれ。ネギールが躱した一撃は魔物へと到達し、ダメージは届きて。
 仕舞には史之が――最後の抵抗にと口を開いた所へと、次元すら両断する撃を放つものだ。
「ま。大事に食べてやるからさ――多分」
 然らば。ハリセンボンの内部で激しい威力が炸裂。
 全ての抵抗を奪う一撃が、最後の個体を――肉だけ残して粉砕していた。


 戦いは終わった。であれば次に始まるのは……宴だ!
「よぉネギール、味見するか? 案外イけるぜ、これ」
「ほぉ。捌き方が中々のもんじゃねぇか――ちなみにホントに味見したかお前?」
 なんだ、疑うのかよ――? と、互いに軽口を交わしているのはシラスとネギール。
 コングルロラクトショクション(正式名称)の身をまずはカルパッチョに。造りはナイフの入れ方で味が変わるが故に……丁寧に往こうか。肝はソテーにでもすれば美味だと思う――毒、は、うん。ないと思う。のでネギールにこっそり味見を押し付けた。クソ、勘の鋭い奴だ……!
 ともあれ例の魚の準備が整えば、フリーパレットにも分け与えよう。
「よぉ、食うなら一緒に食おうぜ。一人で食うよりみんなで食う方が飯は美味いからよ」
「うん! たべる、たべる!!」
「いえ~い! 一仕事終えた後のご飯は最高ですね! まずは自撮りしてからがマナーですよ! はぁ、それにしても随分な重労働でしたが……いたいけなJKの体をこき使ったんですから、ボーナスは弾んでくださいよ!」
「まぁ考えといてやるよ」
 ニコラスがフリーパレットを誘いて、しにゃこの食事前の自撮りも終われば――口にしてみるものだ。未成年たるしにゃはお酒は飲めないが、しかし味と雰囲気は十分に楽しめるものであり……
「う・ま~~!!」
「本当に美味しいねこのコング……ええと……うん! とにかく美味しいとついつい食べちゃうよね! ほら、このフリーパレットくんもこんなにいっぱい……本当に良く食べるね、全部なくなっちゃうんじゃ? 大丈夫? 喉に詰まらせたりしない?」
「ははは。落ち着いて食べなよ――ほら。折角だし味噌鍋にしてみたよ。
 旨いダシも取れてるし、きっと絶品だ。召し上がれ」
 当のフリーパレットも旨さに感激しているようであった――次々と魚を食していく様を焔や史之も食べながら見据えるもの。物凄い勢いで食べていれば全部なくなりそうな勢いだと、ふと焔は思いつくものだが……
「まぁいっか幸せそうだし! これが未練になる程だったんだよね……満足するまで食べて!」
「そうですの! ささ、こちらもどうぞ なるべく 身を傷つけない様にして ねらった
 特級天然海塩で もんだ うみずくしの 贅沢品ですの!
 フリーパレットさんの 未練であれば ぜひ めしあがっ……あっ! ちがいますの!
 そっちは わたしのしっぽですの! だめですのー! 食べないでくださいですの!」
 満足気な顔のフリーパレットに――まぁいいかと焔は思考を巡らせていた。
 さすればノリアが海の素材と海の味付けによる、特級足り得る海の幸を用意……したのだが、勢い余ってノリアも食べられようとしている! うわあああ! それはダメだっての! めっ!

「ふっふっふ。さぁ皆さんまだまだ料理はありますのよ!
 そら! 唐揚げにお鍋に……それから、こ・れ♪
 やっぱり必要ですわよね――お酒は!! 乾杯乾杯でございますわー!」
「ふふ! そうですね! やはりこれが無いと宴ではないですよ――
 さぁさぁ皆さんどうぞグイッと一杯! え、私ですか? いやいや私はいいんですよ!」

 と、その時。
 なーんか妖しい笑みと共に(未成年を除いて)皆に酒をふるまうヴァレーリヤとキイチの姿があった。おかしい。何か様子がおかしいぞ……? 笑みの下に何かの思惑が見えるぞ……!?
(はい、勝ちました。やはり持つべきものは頼れる仲間……しかし、真の戦いは此処から……! そう! 報酬の取り分を増やす為に――今の味方の皆様には、不幸な事故に遭って頂かねばなりませんからね!)
(ふふふほら飲みなさい、さあ飲みなさい! 私のお酒でしてよ! ――尤も。貴方達が酔い潰れた後に、皆様の懐の財布から全て返してもらいますけれどもね! ええ!!)
 と言う訳で案の定の二人であったッ!
 くっ! なんて二人だ! 酒を勧めて、隙を見つけて、仲間を海に捨てんとしている……!
 が。
「よし、隙見つけたり……! 今だ――んっ!?」
 キイチが遂に実行に移そうとした――刹那。
 なんか間違えてベチャベチャな感触を押してしまった。あ、満足して成仏寸前のフリーパレットさん!!? ちょ、最後の最後に何故そんな所に――!
「みんな ありがと―― ありがと――」
「あっ! ちょ、フッって消えるの待っ……うわー!」
「――何してんだお前ら。いや狙いは分かったもういいぞ」
「くっ! ちょっと私の取り分を上乗せで拝借しようとしただけでこの扱い……! 覚えてなさい! 次に会った時は一片の慈悲も無く身ぐるみを根こそぎ……ごぼごぼ……」
「よーし、なんか結局喰われまくった気もするが……ま、もういいとして帰るか」
 海に落ちるキイチ。突き落とそうとした所を目撃され逆に投棄されたヴァレーリヤ。
 魚の慈悲で浮き輪だけは貰えたが――
 両名がシレンツィオに帰りついたのは、もうずっと先の事になってしまったとか。

成否

成功

MVP

寒櫻院・史之(p3p002233)
若木

状態異常

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
祈りの先
キイチ(p3p010710)[重傷]
歩み続ける

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 無事、フリーパレットの未練は成仏しました――なんか結局物凄く魚を食べられた気がするのですが、まぁもういいかとネギール船長も諦めたみたいです。其れはそれとして皆さんにはキッチリ報酬が払われた事でしょう――最後の二人は分かんないけど!
 ともあれありがとうございました!

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