シナリオ詳細
<Stahl Gebrull>侵攻の守護者は勝ち誇る笑みを浮かべ
オープニング
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鉄帝国南部の街ノイスハウゼン上空に現れた、伝説の浮遊島アーカーシュ。
この地へと百年前に至った第一次探索隊の子孫が鉄帝へと降りてきたことでその存在が明らかになった。
鉄帝国はイレギュラーズと協力することで、子孫の住むレリッカを拠点としてアーカーシュの探索を進めていた。
この浮遊島には、超古代には高度な精霊都市が存在したことが判明し、順調に調査は進む。
しかし、その最中、鉄帝の調査団に不和が生じる。
特務大佐パトリック・アネルは特務派という派閥をつくり、軍務派とは異なる行動をとり始めたのだ。
「鋼の進撃作戦……鉄帝国が発したアーカーシュ最終制圧の為の作戦でした」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は淡々とした口調で状況を振り返る。
その作戦によって、『ショコラ・ドングリス遺跡』と、魔王城『エピトゥシ城』の制圧を行うことになったのだが、魔種となったパトリックは部隊を率いてイレギュラーズに攻撃を仕掛けていた。
これを撃退したかに見えたが、パトリックは遺跡の奥でアーカーシュにおける最高権限(システム・メタトロン)を掌握してしまった。
アーカーシュから放たれる超高温のエネルギー砲。それはラトラナジュの火と称されるもの。
その砲撃は巨大なクレーターを作り出す。これが街に放たれればひとたまりもないだろう。
『私はパトリック・アネル、鉄帝国の次期皇帝となる男だ!』
彼は無数の古代決戦兵器を展開しつつ、帝都スチールグラードへの進撃を宣言。
これを止めるべく、『鋼の咆哮(Stahl gebrull)』作戦が開始されたのだ。
パトリックはアーカーシュにあるほとんどの権能を手中にしたのは先に説明したとおりだが、その一つに探索が叶わなかった複数の湖の底に跨ると思われる遺跡があった。
「ここは半魚人型の守護者が守りについていたのですが……どうやらその量産型と思われる個体が眠っていたようです」
マーマディアンと称される半魚人。
それらはエピトゥシ城でも研究施設らしきものが存在しており、この場の防衛にも参加していた。
ただ、研究施設としては、湖底の遺跡がメインだったようだ。
「パトリックはここに眠っていたマーマディアンの量産型の優れた個体と、それらを統率できるボスタイプを従えてしまったようです」
マーマディアンボスは数体の量産型と天空騎兵とも称されるセレストアームズ、それに無数のゲコガーと呼ばれる蛙を思わせる小型の魔物達を連れ、イレギュラーズらが拠点とするエピトゥシ城へと攻め込んでくる。
これを撃退せねば、他作戦にも影響が出てしまうと思われる。
「見た目以上に俊敏で手強い相手です。皆様、くれぐれもお気をつけて」
敵データを配りつつ、アクアベルは参加を決めたメンバー達の身を案じるのだった。
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エピトゥシ城正面。
程なく、イレギュラーズのチームが対するのは、半魚の一隊だった。
シャアアアアァァァァ……。
メンバー達の倍以上の体躯を持つマーマディアン達は鼻息荒くこちらを威嚇してくる。
興奮状態にある敵はこちらを倒すことしか考えていないらしい。
その手前にはセレストアームズの姿もある。
なぜ、マーマディアンがそれらを従えているのかが気になるところだが、その理由を考える暇はなさそうだ。
シャオオオオオオオォォォ!!
その時、一番大きなマーマディアンのボスが呼び声を上げると、周囲から小型の蛙を思わせる魔物ゲコガーが無数現れる。
それらは攻撃態勢をとるイレギュラーズを中心に飛び跳ね、蹴りつけ、体当たりを食らわせてくる。
やりたい放題やったゲコガー達はすぐさまその場から消え去っていく。嵐の如く過ぎ去ったそれらの後、マーマディアンボスがにやりと笑う。
まるで、我の力を見たかと言わんばかり。
だが、イレギュラーズも舐められてばかりではない。
さらなるゲコガーの群れが襲い来る前に、イレギュラーズはマーマディアンボスとその従者達の迎撃へと当たり始めるのだった。
- <Stahl Gebrull>侵攻の守護者は勝ち誇る笑みを浮かべ完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月01日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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アーカーシュは今、とある人物にほぼ掌握されている状況にある。
「パトリック大佐が反転……必ず止めないとね」
『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)が口にした決意。それは皆の意志でもある。
「あの浮遊島を占領、制御した挙句反逆なんてね……」
魔種、反転とは恐ろしい。
旅人ではあるが、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)はそう本音を漏らす。
「鉄帝とは縁の薄かった俺ではあるが……ああ。それでもわかるぞ。このアーカーシュは誰かの玩具ではない。ましてや大量殺戮兵器などではない」
誤った使い方をする奴は誰であろうと止めねばならない。それが魔種であるならなおさらだと、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)が語気を強める。
「このまま放っておくと、鉄帝の上にドーンって落ちるんでしょ?
そんなの承知する訳にはいかないよね!」
『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が言うようにこのままでは大惨事になりかねない。
事態を解決する為にも、鉄帝、ローレット側の拠点であるエピトゥシ城を護る必要がある。
だが、パトリックもアーカーシュ全てを掌握すべく、この城へと戦力を差し向ける。
「そして、こいつらはその先兵と言う訳ね」
城へと攻め入ってきた小隊を、セレナが見回す。
まず、粘液で覆われた半魚人、マーマディアン。量産型の中に一際大きなボスが存在する。
「どうにも、半魚に縁があるな」
「半魚人のような魔物……こいつらも造られた存在なのかしら」
珍妙な縁を感じる『優しい絵画』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)にセレナが問うと、彼はおそらくと返した。
エピトゥシ城にはこれらを培養していた研究室があった。
さらに、レリッカ近辺にある複数の湖に跨った遺跡(未確認)に施設が存在するとみられている。
「……私はアーカーシュの探索に関わらなかったが……もしかして変なのばっかりいるな?」
『戦支柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は、ボスの近くに集まる小さなカエルの魔物ゲコガーの群れを目にして。
「小さいのを操るぐらいなもっと大きいのを操れば戦力になるだろうに……」
「まーたうっとおしい魔物を飛ばしてきまスねー……。カエル型じゃなくて幼女型じゃ駄目だったんスか?」
マニエラとは違った主観で、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は呆れて疑問を口に出す。パトリックの返答を聞いてみたいところだ。
加えて、そのボスは同様に従えていたセレストアームズ……天空騎兵と同様に浮き上がり、攻撃態勢を整え始める。
「マーマディアン、素直に地底湖に籠っていればいいものを陸に上がるどころか天空機兵同様空も飛ぶとはな」
「半魚人ってこう、親近感がわくかなと思っていた時期もあったんっスけど、そんなこと無いっスね」
その態度に辟易とする『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は以前出会った個体と合わせ、あのぬるぬるした体躯は気持ち悪いと大きく首を振る。
「とにかく、こんな所で邪魔される訳にはいかないわ。蹴散らしましょ!」
「ああ、仕事と行こう」
いざというときの為、高空飛行もできるようにと箒に跨って少しだけ浮かび上がるセレナ。応じた『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)も武器を抜く。
「邪魔をするのであれば排除させてもらうっス! 飛ぶのはそっちだけの専売特許じゃないッスよ!」
亜竜種のライオットも翼で飛行可能だが、錬は飛べる敵をイカロスの如く落としてやろうと術符を取り出す。
「イレギュラーズが守る城を容易く落とせるとは思わないことだ!」
「乗りかかった船だ、最後まで相手してやるよ」
こうなればと、ベルナルドもまた目の前の魔物達を倒すべく魔力を高める。
「戦いは数といったものだが、付け入る隙はありそうだ」
好戦的な指揮官。制御して切れていない兵隊。
厄介な状況でも突破口がありそうだと愛無が示すと、予め関連依頼の映像を視聴して敵の動き、癖を学んでいたベルナルドが仲間達へと確認する。
「抑え役が動きを止めてる間に、さっさとボスを倒しちまおうってのが今回の作戦だったな」
仲間達の了承を得ながら、ベルナルドは城方面へと保護結界も展開する。攻め手は最強の守りになりえるとはいえ、転ばぬ先の杖は必要だと彼は考えていたのだ。
「頭を叩いてバラけた下をまとめて倒す、だね。ならば早々にボスを落としに行こう」
マニエラは半魚人の顔に苛立ちを感じていたらしく、早めに処理しようと皆に促す。尤も、彼女には最初から手加減などする気もないようだったが。
「ここでの戦いも鉄帝の被害に影響するだろうし。何より、パトリック大佐のためにも全て止めるわ!」
「ということで、まずはここから解決していかないとね! いよーし! かかってこい!」
レイリーが意気込むと、アリアが相手を煽る。
シャアアアアアアアアッ!!
すると、マーマディアンボスが奇怪な声を上げ、取り巻きをこちらへとけしかけてくるのだった。
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向かい来る半魚、機兵の群れに先んじて、素早い美咲が行動を開始する。
彼女に合わせ、他メンバーもまた動き出す。例えば、ベルナルドは魔神黙示録を淡々と詠み、戦場にその一句一句を響かせる。
アリアはというと、戦いが始まった直後の混乱状況を逆手にとって精度の高いドリームシアターを展開して敵を攪乱し、牽制していた。
「私は鉄帝の騎士、レイリー=シュタイン! さぁ、私を倒せる強い者はいるかしら?」
とりわけ、盾役となるレイリーが名乗りを上げると、飛行可能なボス、機兵らが彼女の方へと向かう。
「毒を喰らわば皿まで。使える物は使っていかねばな」
加え、愛無も地上の半魚に名乗りを上げてその侵攻を食い止める。
愛無が言っているのは、ボスの周囲にちらほらと見えるゲコガーのこと。あれらが戦場を荒らせば、自分達も傷つくが、敵とて少なからず被害を被るはずだ。
いずれも城へと攻め入れられぬよう配慮した作戦。早期に戦線を築けたことで、美咲もそのフォローと合わせて攻撃に動けそうだ。
「レイリー殿、踏ん張ってくれよ! なるべく早く片付けるからな!」
明らかに負担の大きなレイリーを気遣うエーレンは、半魚ボスを全力で撃破すべくアタッカーとして他メンバーと共に前に出る。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。お前らも命じられてるだけなんだろうが、ここは通さん。覚悟してもらおう」
現状はホバリングする程度に浮き上がっていたボスの周囲へ、錬は素早く仲間と協力して取り囲むよう位置取って。
「"呼び声"で戦うなんてイレギュラーズ相手じゃ縁起が悪いからな、さっさと倒すぞ!」
囲んで棒でたたくのは正義だと主張する錬は、敵の背後から式符より鍛造した五行相克の循環を象る斧を零距離でボスへと叩き込む。
マーマディアンボスも鋭利な爪を薙ぎ払い、こちらを纏めて始末する考えのようだが、それだけではない。
プシャアアアアアアオオオオオ!!
ゲコゲコゲコゲコオオオ!!!
その時、ボスが激しく嘶くと、何処からともなく大量のゲコガーが姿を現す。
「来るぞ。攻撃に備えろ」
広域俯瞰でそれらを確認した錬が呼びかけた直後、ゲコガー達がこの場をかき乱すように飛び跳ね、暴れる。
さすがに戦いが始まったばかりの状況では、敵の数も多く、下手に動けば相手の思うつぼ。
ベルナルド、美咲、錬もまた防御態勢をとってそれを凌ぐ。ゲコガーは自衛の為か、すぐさまこの場から去っていく。
「魔種の呼び声は頭が痛くなるが……単純にうるさい呼び声も面倒だな?」
うんざりとした表情で呟いたマニエラは、展開する闘気の棘でボスの体を射抜き、ぬめる粘液に包まれた皮膚を裂いていく。
「小ガエル達を何度も暴れさせられたら堪らないものね」
幸い、仲間達がある程度敵を固めて牽制してくれている。
セレナは横一線に氷槍を生み出し、さながら槍兵の如くボスを中心とした敵陣を攻め立てる。近距離のみだが、効果は十分。
加えて、アリアがこの世界の根源的な力を泥として敵陣へと浴びせかける。
取り巻きがボスを護る様な動きを見せたことで、ベルナルドが熱砂の精を使役した。
それは立ち上る砂嵐を巻き起こす。一度浴びれば重圧を感じる風に身体を引き裂かれそうな痛みを感じていたはずだ。
苦しむボスが動きを止めた隙を突き、美咲がボスへと飛び込んで格闘戦を仕掛ける。
仲間も敵もかき分け、美咲は激しく拳を打ち込んでいく。現状、仲間達がうまく敵を抑えている事もあり、彼女はそのまま進撃の構えをとっていた。
自由にさせれば、それだけこちらが不利になる。
「ドラゴニアらしく、ブレスを吐くっスよ!」
嵐止まぬ突撃戦術の態勢をとるライオリットも仲間に続き、竜の頭から炎と氷の息吹を放ち、急激な温度差で相手を一気に弱らせる。
シャアアァァ……!
ライオリットの一撃が思った以上のダメージだったらしく、マーマディアンボスは忌々しげに鳴き声を上げるのだった。
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エピトゥシ城へと侵攻せんとするパトリックの手勢。
アーカーシュで生み出されたと思われる生物、機兵が得意とする武器、技でイレギュラーズを突破しようと攻撃を仕掛けてくるのだが、その多くを愛無、レイリーが食い止める。
(相手がこちらを舐めている間が勝負だ)
城へと意識を向ければそれだけで面倒なことになると考える愛無は、量産半魚を抑えつけ、強くプレッシャーを与えることでボスや機兵との連携を断つ。
「あなたの玩具じゃ、私に傷一つつかないわよ!」
相手を煽るレイリーは機兵の刃を盾で受け止め、弾いてみせる。彼女はボスと機兵が高く飛び上がらぬよう地上付近へと抑えつける。
「厄介な半魚ボスを全力で撃破するぞ」
気合いを入れるエーレンは自由なる攻勢によって自らの火力を強化し、腰を落として強く踏み込んで抜刀し、刃を刻み込む。
青い血が飛び散らせたボスは空中へと逃れようとしたが、やはりレイリーが自由にはさせぬよう立ち回っていた。
さらに飛んでくる機銃は装甲部で急所を庇い、放たれる水ブレスは直撃を受けぬよう槍で受け流してできる限り長くこの場を持たせる。
回復支援を続けていた美咲は順調に交戦していると感じていたが、二十二式自動偵察機をとおして戦場の変化を察して。
「ゲコガーが来まス」
接近の予兆を感じた美咲が仲間達へと呼び掛けてすぐ、簡単には突破できぬと考えたマーマディアンボスが再び嘶いて。
プシャオオオオオオオオ!!
ゲコゲコゲコゲコオオオ!!
ピー、ガガガガ……!
小隊へと指示を出したらしく、敵は強引にこの場を突破して城を目指そうとする。
特に、無数現れるゲコガーの存在はイレギュラーズにとっても脅威だ。
「確かあっちには非戦闘員もいたはずでスからね」
城に敵が入り込めば、それだけで戦況の悪化することが懸念される。足止めは最優先だと美咲は立ち回り、ゲコガーの阻止に向かう。
「このお城を壊させるわけにもいかないからね!」
アリアは魔眼を使い、さらに広域へと漆黒の泥を浴びせかけてゲコガー達の動きを止める。
ただ、ゲコガーはすぐに去っていく為、倒しづらいが、逆に言えば攻め込み続けることができない。
プシャアアアオオオオオ!!
なれば、ボスは周囲の手勢を使って更なる攻めに転じようとする。
キシャアアアア!!
ピー、ガガガガ。
量産半魚、槍機兵がこちらの抑えを交わして飛び出していく状況の中、箒で敵の正面へと出たセレナは虹色の軌跡を残す小さなリリカルスターを飛ばして直接抑える。
相手は槍を振りかざし、鋭い突きを繰り出すが、セレナも多少の攻撃では怯まない。
「これでも結界魔法には自信があるのよ」
槍の直撃を受ければパンドラを奪われかねない。セレナはしっかりと相手の攻撃を捌き、へっちゃらとすました顔をしてみせる。
「城を守らないと本末転倒っスからね」
ライオリットも好き勝手に動き回る敵の駆除をと、城側の守りについて量産半魚の侵攻を食い止める。
もちろん、抑え役となる愛無やレイリーも黙ってはいない。
戦況を広域俯瞰で把握していた愛無は敵の動きに反応し、咆哮を上げて敵を意識を自分へと強く向ける。
機兵もまたレイリーが身体を張って食い止める。
その鉄壁の構えは見るもの全ての注意を惹きつける。それは機兵ですらも例外ではなく、突破すべき壁と認識されていた。
ピー、ガガガガガ!!
再び機兵の攻撃が集まったことで、レイリーは防御に専念してしばらく時間稼ぎに注力していた。
この間に、メンバー達はボス討伐の手を強める。
ベルナルドは敵の死を想い、死を誘う舞踏で戦場を立ち回り、ボスの思考力を奪い、残る体力を削ぐ。
「もう一息だ。一気に行くよ」
エーレンは仲間達へと声をかけ、先程と同様に接敵してから居合斬りを見舞う。
プ、シャオオオオォォォ……!
攻撃集中したエーレンの一太刀によって傷は深まっており、そこへマニエラが近づき展開する闘気の棘でその傷をより深く抉っていく。
それで終わらず、残像を生じさせて多方向から魔力を撃ち込むマニエラ。
その時、口から水大砲を放ってきたボスだったが、明後日の方向へと飛んで行ったそれが最後の一撃となって。
再び、背面から仕掛ける錬の鍛造した斧が敵の頭を勝ち割る。
プアァァ、オオオォォォ……。
完全に白目を向き、マーマディアンボスは真っ先に地面の上に伸びてしまったのだった。
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シャアアァ、アアアァァ……?
ピー、ガ、ガガ……?
マーマディアンボスを倒したことで、指揮系統が失われた敵小隊。
ゲコガーが現れなくなったことは大きく、メンバー達は目の前の敵の対処に専念する。
「とはいえ、指揮から外れた機兵が何を優先するかは不明瞭だしな」
地上の量産半魚を抑え続ける愛無は、浮遊する敵を見上げて様子を窺う。
「こんな面白い役割やれるんだもの、最後まで楽しむわ」
絶対に倒れてなるものかと、自らの傷を修復するレイリーは倒れなければみんな護れると豪語する。
ただ、いくら彼女が無事で当ても、機兵の思考回路が正常になれば、城攻略を優先する可能性は否めない。
もう一方、量産半魚も過去の依頼情報からなかなかにタフな相手だ愛無は認識している。
ここは防御して敵の爪、水攻撃を丁寧に対処し、最後まで気を抜かずに手堅く対処を続ける愛無だ。
ただ、量産半魚はゲコガーの群れが暴れるのに巻き込まれ、少なからず疲弊している。
そこをメンバー達が攻撃を集中させることでその討伐は加速する。
錬はボスを倒してすぐ、相手の動きを止めようと式符より太陽を写す魔鏡を鍛造して量産型複数を映し出し、その運命を黒く閉ざす。「
それらを1体ずつ叩いていき、弱った1体を美咲が激しい乱舞を見舞う。
終わることのない激しい乱撃に耐えられず、そいつは泡を吹いて崩れ去る。
現状、天空騎兵の抑えは問題ないと判断したエーレンが2体目を追い込む。
僅かに浮遊する敵を叩くため、エーレンは跳躍してから確実な一閃を繰り出す。
彼のサザンクロスはまさに水底の亡者を切り伏せる剣。
湖底で生まれた可能性の高い敵はその剣によって、文字通り切り伏せられた。
「量産半魚はあと2体……今なら」
範囲攻撃を主体としていたベルナルドは2体を纏めて相手取る。
先程同様熱砂の精を使役しての砂嵐を巻き起こしてもいたベルナルドだが、敵が少なくなってきたことで仲間が直接攻撃し始めたこともあり、神気閃光に切り替えて歪な生を受けた量産型の体を灼く。
1体は完全に身体を焼かれて卒倒してしまったのに対し、もう1体は血を流しながらも激しく食らいついてくる。
「もう長くはないっスね」
明らかに弱った量産半魚に、ライオリットは速力をもって軍刀で斬りかかる。
しぶとく暴れ狂う相手を確実に仕留めるべく、ライオリットは敵の存在する一定空間ごと刃で両断する。
攻撃集中したライオリットが繰り出した渾身の一撃。
これにはさすがの量産半魚も舌を垂らして完全に伸びてしまった。
交戦の間、ゲコガーはほとんどその姿を現さない。やはり、マーマディアンボスが倒されたことで何もできずにいたのだろう。
そして、機兵もまた強引な突破を試みる素振りを見せなくなっている。
「使役された機兵って、魔物の命令にも従っていたわね。……機械ってそういうものだけど!」
セレナはそんな天空騎兵を止める為、まずは遠距離から機関銃を撃ってくる敵へと近づき、至近距離から格闘魔術を浴びせかけて敵を虚脱させる。
機兵にとっての虚脱とは、エネルギーの巡りが悪くなるといったところか。ついには完全に巡らなくなったらしく、完全に動きを止めた機兵は地面へと墜ち、いくつかの破片に砕けてしまった。
長引く戦いに疲弊するメンバー達だが、体力気力を振り絞って残る機兵の撃破を目指す。
美咲はこの状況であれば、機兵に戦線を突破される心配は軽微と判断し、回復優先で立ち回る。
「すまん。手数をかけるが……」
そこで、美咲へとエーレンが近づいて気力の回復を頼むと、彼女はすぐさま神意の祝福をもたらす。
「この恩は戦働きで返すぞ!」
エーレンは礼を告げ、再び前線へと戻っていく。
さて、前線は変わらずレイリーが抑え続けている。
長引く戦いで終始ボスと機兵を抑え続けた彼女は流石というべきだろう。
(斧タイプに槍タイプ……)
マニエラはレイリーの装甲の厚さと敵の機動力を合わせて考慮して。
「どちらにせよ、レイリーが抑えている間に全てを倒すんだがな」
槍タイプに攻め入る事にしたマニエラは一点集中させた火力をもってして残像を伴う連撃を浴びせかけていくが、仲間の攻撃は斧タイプへと集まっていて。
「痛いと思うけど、我慢してね!」
アリアの一点集約させた神秘の力。
それを直接撃ち込まれた斧機兵は瞬時に回路を焼き切られ、地面に向かって落下していく。
その間、持ち直したエーレンが槍機兵へと一閃を見舞い、続けてライオリットが青き彗星の如く飛び回り、敵の体を切り伏せる。
「もう敵は棒立ちっスよ!」
「ありがとう。……これで」
ライオリットの呼びかけに、エーレンが機兵の胴体を見事に切り裂く。
最後の機兵が墜ちたのを認め、ここまで耐えきったレイリーは満足げに微笑んでみせたのだった。
●
目に見える敵の殲滅を確認し、アリアは一息ついて。
「お疲れ様だよみんな! そう簡単にこの城を盗られるわけにはいかないんだよね!」
皆を労うアリアは、パトリックは反転したとはいえ、イレギュラーズの歴史を知らぬ立場ではないだろうにと呟く。
「……甘く見られちゃ困るんだよね!」
ふんすと鼻をならすアリアは大きく胸を張る。
「さて、仲間達が本丸に行ってるはずだし、私ももう一踏んばりだね!」
「その前に……」
他のチームへの合流をはかりたいアリアへ、錬は広域俯瞰しつつこの近くに残る残党のゲコガー達を殲滅しようと促す。
メンバー達は手分けをしつつ、それぞれの戦いへと向かっていくのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ公開です。
MVPは終始壁となって敵を抑えつけていた貴女へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
浮遊島『アーカーシュ』の機能を掌握し、鉄帝へと宣戦布告するパトリック大佐。
憤怒の魔種となった彼は遺跡にある古代の兵器を多数機動させていますが、それだけではなかったようです。
地上へと降りた半魚人型の守護者達はパトリックの命によって攻勢へと出ております。
皆様の手でこれらの掃討を願います。
●状況
場所はエピトゥシ城近辺。
城を奪取しようと攻めてくるのは、人魚の姿をした湖地下にあると思われる遺跡の守護者です。
これらが数で攻めてくる為、拠点となるエピトゥシ城を護らねばなりません。
城前方は比較的広くスペースをとることができる為得意な間合いで攻められる一方、城を防衛することも合わせて立ち回る必要があります。
●敵×8体+α
〇古代獣:マーマディアンボス(略称;半魚ボス)×1体
全量5m強。全身がゲルの膜で覆われ、さらに銀色の鱗で煌めく古代獣です。
強烈な水ブレスや水大砲を飛ばす他、鋭利な爪での薙ぎ払いや強固な顎での食らいつきは恐るべき破壊力を持ちます。
さらに、進化したヒレで飛行もでき、上空からの強襲も可能。また、戦闘では常に後述のゲコガーの群れを戦場で暴れさせる呼び声を発します。
○量産マーマディアン(略称:量産半魚)×4体
上記の量産型。「<Stahl Eroberung>湖の守護者再び」等で登場した敵と同程度の強さです。
全長4m。こちらも全身がゲルの膜、灰色の鱗を纏う半魚人。
飛行こそできませんが、水ブレスや水大砲、鋭い爪や食らいつきとボスの劣化版とはいえ、かなりの力で襲い掛かってきます。
○セレストアームズ(天空機兵)×3体
以下が各1体ずつ登場。飛行も可能です。
基本的な性能は「<Stahl Eroberung>立体は巡り合う」で登場する個体とほとんど差がありません。
・斧タイプ
力強い近接攻撃を得意としています。
・槍タイプ
素早い突撃と得意としています。
・機関銃タイプ
遠距離攻撃を得意としています。
○ゲコガー×無数
数ターン置きに戦場を駆け巡る小型の魔物達です。
マーマディアンボスの呼び声によってターン最初に暴れ回り、戦場にいる者全てにダメージを与えてから去っていきます。
短時間だけ姿を現すこれらを掃討するのは非常に難しく、マーマディアンボスの討伐が最も効果的です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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