シナリオ詳細
<深海メーディウム>エントマChannel/美食編。或いは、今日のゲストはエリカ・フェレライ...。
オープニング
●エントマChannel
画面一杯に映っているのは、眼鏡をかけた少女の顔だ。
燦々とした太陽を背に、にこやかにポーズを決めてみせた。
『 Opa! エントマ・ヴィーヴィーの~! エントマ! チャンネル~!!』
顔の横でピースサイン。
明るく、大きく、はきはきと。
エントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)が撮影中の動画のタイトルを告げる。
自分の姿を見せつけるように、カメラの前でくるりと一回転。
そんなエントマの隣では、エリカ・フェレライ(p3p010645)がどこか呆っとした顔で、イカ焼きを頬張っていた。
『ご新規さんも、常連さんもOpa! 元気してた? 早速だけど、なんと今日は特別ゲストが来てくれてまっす!』
いえい、といつもの大音声。
大きな身振りでエリカをカメラの前へ押し出す。
『こちら、エリカ・フェレライちゃんだよ!』
「どーも、なのです」
イカ焼きをもぐもぐ咀嚼しながら、エリカはペコリと頭を下げた。
『はい、見ての通り、エリカちゃんはとっても食いしん坊なんだよね! 今日は、そんなエリカちゃんに持ってこいの企画をご用意しております!』
じゃじゃん! と口でSEを鳴らして、2人の頭上を指し示す。
その部分に、後程編集で企画タイトルを表示するのだろう。
『題して! チキチキ! 海の幸満喫コースを堪能せよ!』
エントマがすいっと腕を振れば、カメラがスーっと後ろへ下がる。
そうして画面一杯に映し出されたのは、白い砂浜に途切れることのない高波、それから海面から顔を覗かせる、奇妙に巨大なイカやタコ、ウニにエビ、牡蠣、鮫といった海の生き物。
遠巻きにエントマとエリカを観察し、逃げるべきか、餌にするべきか、それとも無視しておくべきかを思案している風である。
「エントマお姉ちゃん、あれって全部、食べていいのです?」
『うぉっとぉ! 生でいっちゃう? お腹壊さない?』
「生まれてこの方、お腹を壊したことはないです」
『そりゃすっげぇや。鋼の胃袋……っていうか、既にイカ食べちゃってるしね? でも、今回の企画はそういうんじゃないんだよねぇ。踊り食いじゃなくって、食レポなわけです』
つまり、獲物を捕らえて調理したうえで食事にしようと言うわけだ。
暑い季節ということで、常夏の島に現在2人は訪れている。年中を通して常夏の島と言えば、バカンスには持ってこいだろう。しかし、砂浜にはエントマとエリカ以外に人の姿は見えない。
それどころか、砂浜には真っ二つにへし折れた帆船が転がっている。
「…………」
「……ちょっと、エリカちゃん。台本台本!」
背後を見やって腹を押さえたエリカの脇を、エントマはこっそり肘で小突いた。元々の声が大きいため、マイクを通さずとも声は動画に乗っている。
「そうだった。えぇっと……エリカお姉ちゃん、どうしてこの島には人がいないの?」
『いいところに気付いたね! その理由は、この島の生態系と周囲の海流にあるんだ! 見ての通り、シレンツィオ周辺にあるこの島には常に高波が押し寄せてるわけだね! そして、この島の生物は過酷な環境に対応してか、どれも巨大で強力なのさ!』
つまり、常人では半日と持たずに海鮮たちの餌となるのがオチなのだ。
そのような環境で食レポとは、エントマも体を張っている。
本当のところ、内心はビビリ散らかしているのだが、それを表に出さない辺りがプロである。気合が入っていると言えば聞こえはいいが、体当たり感は拭えない。
とはいえ、こうした体当たり的な配信スタイルが人気を博しているわけだが……。
『と言っても私じゃアレらを調理できないんだよね! そもそも倒せないし! というわけで、調理はエリカちゃんのお仲間にお任せしたいと思うんで、どうぞ“美味しい”料理を用意して頂戴ね!』
食材の確保から調理風景までを動画に納めたうえで、完成品を美味しくいただこうというわけだ。なお、エリカには食レポの補助が任されている。調理に関しては本人の自由意思ではあるが、エントマ1人を砂浜に放置してしまえば、あっという間に海鮮の餌となるだろう。
『というわけで! 動画は順次、配信していくからね! 皆、チャンネル登録&高評価よろしくね☆』
●配信準備中
「はい、というわけで皆さん。動画の概要は先に述べた通りです。つーわけで、皆さんには食材の確保と調理、ついでに私の護衛をお願いするからね」
そう言ってエントマは、紙の束を取り出した。
島に生息している生物の記録である。
「島に生息している生物は、主にイカやタコ、ウニにエビ、牡蠣、鮫の6種類。どれも体長3メートルから8メートルはある巨大生物だね」
イカやタコは、無数の触腕を駆使した連続攻撃や【停滞】【無常】の付いた攻撃。
ウニは動きが鈍い代わりに【棘】や【致死毒】を備えている。
エビは動きが素早く【ブレイク】や【飛】【必殺】といった追加効果持ちだ。何でもシャコの遺伝子が混じっているらしい。
そして鮫には【滂沱】【致命】。海上にまで上がって来ないのが唯一の救いだろうか。
「後は牡蠣だけど……こいつ、飛ぶんだよね」
「……飛ぶの? 牡蠣が?」
思わず、と言った様子でエリカは問うた。
神妙な顔でエントマは深く頷いて見せる。
「1匹しか確認できなかったけど、海底から空中までが行動範囲みたい。光線を撃って来るし……もしかしたら、牡蠣じゃないかも。でも、形は牡蠣だったね。つまりUFO(unidentified flying oyster)ってわけ」
なお、光線が当たると【石化】し、牡蠣に吸い寄せられていくという。
アブダクションというやつだ。
「まぁ、というわけで捕獲と調理の方はお願いね。単独行動でもいいし、数人でグループを作ってくれても構わないから」
「……1品だけじゃ足りないかも」
腹を押さえてエリカは言った。
赤い舌で唇を舐め、にぃとした笑みをエントマへ向ける。
「……だそうなので、最低でも2~3品は欲しいかなっ!」
顔色を青ざめさせながら、エントマは数歩、エリカから距離を取るのであった。
- <深海メーディウム>エントマChannel/美食編。或いは、今日のゲストはエリカ・フェレライ...。完了
- GM名病み月
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年08月21日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●エントマChannel
ざばり、と海から顔を覗かす巨大なタコが、触腕を空へ向かって伸ばした。
ザクン、と。
疾風の刃、数本の触腕を切断する。
突然の出来事に身動きを止めたタコの頭上へ、黒い影が跳びかかる。
一閃。
振り抜かれた大鎌が、タコの眉間に深い裂傷を刻み込む。
「わぁお! すっごいね! 今日のメニューは何にする?」
白い砂浜を女が走る。
エントマ・ヴィーヴィーはタコを引き摺る『燼灰の墓守』フォルエスク・グレイブツリー(p3p010721)へ、手にしたマイクを突き付けた。
「そうだな、ここまで食材があるとなんでも作れそうだ。海鮮焼きそばやたこ焼き、イカリングに刺し身、フカヒレスープもよさそうだ」
フェルエスクは狩ったタコを捌きながら、ふむ、と僅かに思案した。満足そうにエントマは数度頷いて、にぃと口角を吊り上げ笑う。
「空飛ぶ牡蠣……UFOはどうしようっか? やっぱり焼きそば?」
「それは、何かに怒られそうだ。炭焼きにでもしてみるか。ポン酢は用意しておく」
「ぶはははッ、調理なら任せてくんな! 『映える』料理を仕上げてやるぜぇ!」
エントマの頭上に影が差した。
すぃ、っとカメラが移動して影の主を画面に映す。
そこにいたのは、褐色をした巨体のオークだ。名を『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。エントマの呼びかけに応じ、無人島まで馳せ参じたイレギュラーズ随一の料理人である。
「ひゃっは! 頼りになる! じゃー、そっちはどうかな?」
カメラがするりと高度を上げた。
エントマの愛用するカメラは、ある程度の浮遊能力を持った自立式の高級品だ。エントマの操作に従って、彼女の望む角度や位置から被写体を画面に納めるのである。
「ウニやエビが押し寄せているな。暫くは地味な画になるだろうから、別のところを取った方がいい」
俯瞰視点から撮影するのは、海へ向かって刀を振り抜く『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)の姿である。
シューヴェルトの言うように、遥か彼方の海面には巨大海産物の姿が見える。
波と一緒にウニの棘を切り裂いたのは、シューヴェルトの斬撃か。
「あー、たしかに波が高くて獲物の姿も良く見えないね? っと、エリカちゃんもいるじゃない! はい、意気込みをどうぞ!」
「例えどんなモノでも美味しく頂いてみせるのです!」
フンス、と鼻息を荒くして『名無しの暴食』エリカ・フェレライ(p3p010645)が胸の前で拳を握る。
「という訳で、皆さん。美味しい海の幸を楽しみにしているのです!」
「おぉ、任せとけ!」
シューヴェルトを援護するべく、波打ち際にゴリョウが立った。その背へトンと手を押し当てて、エリカは彼へ光の鎧を纏わせる。
「はい! これは期待できそうだね! 以上、チーム“右列”でした! ……右列って何だろ?」
カメラがパンして、エントマの顔をアップで映す。
かくして『エントマChannel/美食編』の撮影が開始されたのである。
拳が音を置き去りにした。
『外柔内剛』キイチ(p3p010710)は斜めに構えた木刀で、エビの放ったパンチを脇へと受け流す。
「おや? キイチのお兄さんは苦戦中かな?」
「まさか。これが僕の役割ですよ……あの、危ないんでもう少し離れてくださいね」
エビの攻撃を捌きながら、キイチは数歩後ろへ下がる。
頬を流れる汗が飛んで、画面端にきらきらとした光を散らした。
後退するキイチを追って、エビが砂浜へ乗り上げた。
それはつまり、海から離れたということで……。
「かかった。逃がさないよ」
ゆらり。
画面を“銀色”が染めた。
虚空を流れる銀の髪……『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)がカメラの前に駆け出したのだ。
オニキスの腰から伸びた機械のアームが砂浜を叩く。
直後、地面より突き出した土壁がエビを四方から囲む。
「ふぅ……なかなか速かったですね」
「でも、移動は阻害できた。後は倒すだけ」
キイチは額の汗を拭って、オニキスはカメラへ向けてピースサイン。オニキスの表情はピクリとも動かないが、どうやら機嫌はいいらしい。
「よし。下拵えは任せてもらおう」
「頼んだよっ。速攻で終わらせられれば新鮮さも良い感じな気がする、からねっ」
太刀を構えて『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が駆け出した。
遠ざかる汰磨羈の背へと『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)が声援を送る。エントマのカメラは30センチの小さな体にピントを合わせ、端正な横顔をアップで映した。
「あれ? リリーちゃんは行かないの?」
「リリー、銃と本だから切れないし」
カメラの向こうの視聴者たちへ手を振って、リリーは困ったように笑った。
そうしている間にも、汰磨羈は土壁を跳び越えてエビの頭上に辿り着く。
一閃。
身体を縦に回転させるように刀を振り抜くと、エビの背中を切り開く。
●REC
無数の針を蠢かせ、ウニは浜へ乗り上げた。
鋭い棘をゴリョウの巨体が受け止める。腕に、腹に、ウニの棘が突き刺さるがゴリョウはどっしりと腰を落として、1歩たりとも下がらない。
「おぉぉっ! やっぱ頑丈だね? そのウニはどうすんの?」
前線へ駆けあがりながら、エントマが声を張り上げた。
口元に寄せたハンドスピーカーを通した大音声が、ゴリョウの鼓膜を震わせる。
「そうだなぁ! 特製の酢飯の上に大葉を敷き、大量のウニを敷き詰めた特製濃厚ウニ丼ってのはどうだ?」
「おぉ! 皆で食べるの? お米足りるかな?」
「抜かりはねぇぜ」
どっせい、と一声。
腰を捻って、ゴリョウはウニを砂浜へ投げた。
直後、ざばんと高波が浜へ押し寄せる。波の中には黒い背びれ……鮫が潜んでいるようだ。
鋭い牙がゴリョウを襲う。
「うぉっとぉ!?」
「波に飲まれる。下がってくれ」
悲鳴をあげるエントマを、フォルエクスが砂浜へと引き倒す。
水飛沫を浴びながら、エントマは目を丸くしていた。そんな彼女をその場に残し、フォルエクスは鎌を担いで、疾走を開始。
「ゴリョウ! 無事か!?」
「問題ねぇぜ!」
波の中からゴリョウの巨体が現れた。肩に喰らい付いた鮫を、太い両腕で締め上げるように捕えている。
流れた血がゴリョウの半身を朱に濡らす。
「あぁ、フカヒレスープもよさそうだ」
踏み込みと同時に、下から上へと鎌を振り抜くフォルエクス。
空に黒い軌跡を描き、鎌の刃が鮫の口からヒレにかけてを斬り裂いた。飛び散る鮮血。思わず口を開いた鮫を、鎌の先端にひっかけてフォルエクスは体をくるりと反転させる。
担ぎ投げるような要領で、鮫の巨体を砂浜へと転がしたのだ。いかに巨大な鮫であろうと、陸に上げられてしまえば無力だ。
カメラが舐めるように低い位置を飛ぶ。
レンズに移る白い影は巨大なイカに違いない。
「でかくて美味しそうで……食いがいがありそうでたまらないです!大人しく料理の食材になるのです!」
ゆらり、と揺らぐ影を操るエリカが叫んだ。
無数の触腕による殴打を、彼女は次々と影でいなした。
しかし、手数の差は歴然だ。
「あ、ちょっと」
「エリカちゃーん!」
触腕に巻かれたエリカの体が持ち上げられた。エリカの窮地に、エントマは思わず悲鳴を零した。しかし、しっかりとスピーカーを通して叫んでいる辺り、まだまだ余裕が窺える。
それもそのはず、イカの頭上にはワイバーンが飛んでいる。
その背から飛び降りたのはシューヴェルトだ。
「やはり、これだけでかいと、食材調達がかなり大変だな」
灰色の髪をなびかせて、シューヴェルトは刀を縦にひと振り。
否……カメラでは捉えきれないだけで、おそらく彼は数度、刀を振ったのだろう。
「食べやすいよう細かく切っておかねばな」
細かく斬られたイカの脚が、ばらりと浜に散らばった。
「さあ、今宵は海鮮バーベキューだ!」
着地と同時に、シューヴェルトは背後へ刀を一閃させる。
一瞬……イカの動きが止まった。
ずるり、と。
切断されたイカの頭が、波打ち際に転がり落ちた。
海が大きく盛り上がる。
滝のように膨大な量の海水を撒き散らしながら、それは海面に現れた。
ウグイスガイ目イタボガキ科。
2枚貝。
牡蠣。
海のミルクとも称される牡蠣だが、あろうことか飛んでいる。体長はおよそ8メートル。基本的には片手で持てるサイズのものが多い牡蠣の中にあって、あり得ないほどに異質な存在。
「unidentified flying oyster……!」
通称“UFO”。
「……そもそもこいつ本当に牡蠣なのか? どうみても自分のことを牡蠣だと思い込んでる未確認飛行物体だろう」
フォルエクスの零した疑問も当然だ。お前のような牡蠣がどこにいるものか。
わずかに開いた殻の隙間から、眩いばかりの光線を放つ。
「うわっ! わぁー! エマージェンシー!」
咄嗟に光線を回避したリリーとは異なり、エントマはそれの直撃を浴びた。ピシ、と脚の先から石化が始まるエントマの体が、ふわりと宙に浮いたではないか。
「エントマさんがアブダクションされちゃうっ!」
リリーは体の前に両手を突き出した。
形成された小さな魔弾を牡蠣へ向かって撃ち込みながら、宙に浮かんだエントマを追った。
跳躍。
エントマの脚にしがみつくが、謎の光はエントマと一緒にリリーまでもを吸い上げていく。
石化したエントマの体に、淡い燐光が降り注ぐ。
「はっ!? 私は何を!」
「いいから泳いでっ! ここから逃げるんだよっ!」
オニキスにより石化から救われたエントマを、小さな体でリリーが引き摺って行く。光の中を泳ぐという器用な真似をする2人は、必死に光の中から脱出。
空中高くから、砂浜の上へ縺れるように落下する。
「ここがねらい目だな。殻をこじ開ける手間が省けた」
2人の頭上を汰磨羈が跳び越えていく。
「防御が高そう。一気に叩く」
オニキスがマシンアームを地面に刺した。
前方へ突き出したオニキスの両手に、ガシャガシャと機械仕掛けの装甲が展開されていく。拠点殲滅用拡張武装“マジカルゲレーテ・アハト”である。
収束された膨大な魔力が、銃身を赤く染め上げた。
発射まで後数秒ほどの時間はかかるか。ターゲットを牡蠣に定めたオニキスの横から、砂浜を跳ねるようにエビが急接近。
音速の拳をオニキスへ叩き込むつもりだろうか。
けれど、しかし……。
「っと……横槍は感心しませんね」
地面を薙ぐように木刀を一閃。
キイチの斬撃が、エビの脚を数本纏めてへし折った。姿勢を崩し、エビは砂浜へと転倒。中途半端に放たれた拳が、キイチの右わき腹を撃った。
「っぐ!?」
骨が軋み、内臓に激痛が走る。口の端から血を零しながら、キイチはエビの頭部に木刀を叩き込む。
「チャージ3……2……1。発射」
魔力の砲が放たれる。
牡蠣は光線の射出を止めて、2枚の殻を硬く閉ざした。
直撃。
魔力砲が、殻に大きな罅を走らせる。
膠着は数秒。
殻の一部が砕けて零れた。
「チェスト―!」
砕けた殻の隙間へと汰磨羈が刀を突き刺した。
跳躍の勢いを乗せた渾身の一撃が、深く深く、殻の内部の牡蠣を抉った。
飛行能力を持つとはいえ、8メートルを超える巨体では俊敏な動作は期待できない。光線を撃つために殻を開いては、汰磨羈の思うつぼだろう。
「おぉぉおおおおおお!」
汰磨羈が吠える。
かくして牡蠣は、その生涯を終えたのだった。
「はは……すっげい。こりゃ、視聴回数がエグいことになりそーだわ」
なんて。
砂浜に落ちた巨大牡蠣の横に並んで、エントマはニマリと笑うのだった。
●食レポ
「では……待ちに待った実食タイムなのです!」
「ん、おいしい」
運ばれてくる料理の皿に手を伸ばし、オニキスとエリカは早速とばかりに食事を開始。
この島の生物はどれも巨大だ。
当然、出来上がった料理の量も膨大であるが、しかし2人は気にせずもぐもぐと皿を空にしていった。
「うわぁ、フードファイターでもそんなに食べなくね? 胃袋のキャパどーなってんの?」
引き攣った声でエントマがコメントを入れるが、2人は「?」と首を傾げた。
マジか……零した声を、マイクは容赦なく拾う。
「素晴らしい。これは鮮度が良いからこその食感だな。とくに海鮮焼きぞははシーフードの旨味がしっかりと詰まっている」
フェルエスクの食事ペースは平凡なものだ。
合間合間にしっかりと食事の感想を挟むが、悲しいかな表情の変化に乏しかった。
「きゅうりとワカメがいいアクセントになっていますね。甘酢はゴリョウさんのオリジナルでしょうか? こちらはガーリックシュリンプ? 外はサクサク、中はふんわりで、いい揚げ加減なのです」
大きな口で料理をパクリとひと飲みにして、エリカはにぃと口角をあげた。どこか不吉な笑みである。以前、敵対したこともあってエントマは若干引いていた。
「あー……調理風景も撮っておきましょうか。キイチのお兄さん」
「はいはい。撮影補助は任せてください」
キイチは白いパネルを掲げ、エントマの後を追いかける。
「おぉ、来たか。ちょうど巨大鮫の丸揚げ餡かけと特製濃厚ウニ丼が仕上がったところだ。運んでくれや!」
「イカ焼きとタコ焼き、寿司の追加もだ……ふふ、涎が出るな」
砂浜に用意された特設テーブルには、所せましと無数の料理が並んでいる。
調理担当のゴリョウと汰磨羈、フル稼働である。
撮影することを意識した、見栄えにも気を使った盛り付けだ。
エントマの脳裏には、猛スピードで増える視聴回数が見えていた。
「……それはそうとどんな味するんだろ、この牡蠣」
巨大な牡蠣を見上げるリリーがそう言った。
「UFOは焼き牡蠣にしてみないか? デカくてぷりっぷりな牡蠣が美味そうに焼けていく様は、実に見応えがありそうだ」
「ならちょうどいいな。火を起こしたんで、UFOを運んでくれ」
汰磨羈は牡蠣に手を伸ばす。
どう調理しようかと思案している一行に、シューヴェルトが声をかけるのだった。
料理が山と積みあがる。
黙々と食事を続けるオニキスに、流麗な賛辞を贈るエリカ。ぎこちない風ながら、撮影に前向きなフォルエクス。
ゴリョウと汰磨羈、リリー、シューヴェルトは調理に勤しみ、エントマとキイチは右へ左へ、そんな様子をカメラに収める。
エントマChannel/美食編の視聴回数はゲストも多く、食材はレアもの揃いとあって、過去の配信の中でも、かなりの上位数値を記録した。
ついでに“シレンツィオリゾート”への来場者数も増えたらしいが、これはまた別の話である。
「あー、こりゃやめらんないね。いや、持つべきものはいい“お友達”だよ」
なんて。
上機嫌に報酬を支払うエントマは、そんなことを言ったという。
余談ではあるが、後日余ったunidentified flying oyster……通称“UFO”を鑑定したところ、その成分は牡蠣のそれではなかったらしい。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様です。
エントマChannel/美食編の撮影はつつがなく完了いたしました。
依頼は成功となります。
この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。
GMコメント
こちらのシナリオは『エントマChannel/無人島編。或いは、チャンネル登録お願いします...。』のアフターアクションシナリオです。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7899
●ミッション
食レポ動画の撮影完了
※撮影内容は食材調達、調理、実食である。
●ターゲット
・島に生息する海鮮
イカ、タコ、ウニ、エビ、鮫、牡蠣の6種。牡蠣以外の生物は複数匹確認されている。
イカやタコは、無数の触腕を駆使した連続攻撃や【停滞】【無常】の付与された中距離攻撃を行う。
ウニは【棘】や【致死毒】を備えている。なお動きは鈍いようだ。
エビは動きが素早く【ブレイク】や【飛】【必殺】の付与された攻撃を行う。
鮫は【滂沱】【致命】の付与された攻撃を行う。なお、海上にまでは上がって来ない。
・UFO(unidentified flying oyster)×1
島に生息する奇妙な牡蠣。
ウグイスガイ目イタボガキ科。
体長は8メートルほど。
【石化】の効果を備えた光線を広範囲にばら撒く能力と、飛行能力を備えている。
※【石化】状態にある対象を、牡蠣本体へ引き寄せる性質を持つ。
もしかしたら牡蠣じゃないのかもしれない。
●フィールド
シレンツィオ周辺
常夏の無人島。
島の周囲には、常に高い波が押し寄せている。
巨大海鮮が巣食う島。
砂浜の他は、岩場や小規模な泉、ヤシの木の群生地帯などがある。
身を隠す場所は少ないが、岩場や木の影であれば潜伏も可能だろう。
潮の流れが速いため、備えも無しに遊泳することは不可能。
※調理器具や調味料、その他の食材は持ち込み可能であるが、あくまで海鮮を主とした料理である必要がある。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります
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