PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ひよことシレンツィオの夏

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夏だ! 海だ! みずゆかだ!
「皆さん皆さんっ海がすごく綺麗ですよ!」
 そんなみずゆかビックウェーブに乗り損ねつつも、シレンツィオリゾートを楽しんでいる少年がいた。つぶらな黒の瞳をキラキラさせて、同じように遊びへやってきたイレギュラーズたちにすごいすごいと声を上げている。
「プルーさんなら、こういう色の名前も知っているのかなあ」
「そうねぇ。お土産屋さんに絵葉書なんかがあったら、帰った時に聞きやすいんじゃないかしら?」
 先輩情報屋の事を思い出す少年――ブラウ(p3n000090)にアーリア・スピリッツ(p3p004400)がそう提案すれば、まだ彼女より背の低い彼はぱっと見上げてなるほど! と頷いて見せる。もう成長期が来ても遅くない年頃だが、まだそれは先のようだ。
「ねえ、ところでブラウくん……折角シレンツィオに来たんだもの、何か服でも買ってきたらどう? おねーさんも一緒に見てあげるわよぉ?」
「えっ? いえいえ、大丈夫ですよ! 今持っているもので事足りてますし」
 そうではない。そうではないのだとアーリアは口を尖らせる。
 観光地に来ているのだ。なんかいい感じの服があったら買ってみたり、美味しそうなものがあったら食べてみたり。そういう計画外散財を楽しむ場所でもある。なによりシレンツィオの装いのブラウが見たいという方が本音。
 しかし彼はと言えば、そういうものなんです? となんとも言えぬ顔である。性別の違いか。それとも人生を越えてきた年数の違いか。
(無理強いはしたくないけどぉ……でもやっぱりブラウ君のお洋服見たいし……)
 どうしたものかと考えるアーリアの傍ら、既にブラウは興味を海へ。足を浸すくらいならとぽいぽい靴を脱ぐ。既に他のイレギュラーズだって同じように足を浸したり、濡れても問題ない服装であれば水の掛け合いっ子だってしているのだ。ブラウだって足を浸すくらい。
 ――その浸す"くらい"にハプニングを起こすのがブラウである。
「うわっなに――わぷっ!?」
 どこからか飛んでくる水鉄砲の水。押しては引く波を見ていたブラウの頭頂部に見事的中し、驚いて顔を上げたブラウへこれまたどこからか飛んできたビーチボールが顔面被弾する。きゅう、と目を回したブラウが尻餅をつくと波が笑いながら彼の服を濡らしていった。
「ブ、ブラウくん……大丈夫……??」
「僕は、まあ……服はこの通りですが」
 はは、と苦笑いを浮かべるブラウの尻をまたしてもやって来た波が新たに濡らしていく。アーリアが手を差し出すと、彼は礼を言いながら手を重ねた。
 謝りながらビーチボールを拾いに来る者、水鉄砲を手に頭を下げる者様々であるが、ブラウが怒っている様子はない。しかし、困っている様子ではあった。服買わないと、とぼやいた彼にアーリアはぱちりと目を瞬かせる。
「代わりの服は持ってきてないの?」
「いえ、あるにはあるんですが……取りに戻るにはちょっと距離があるなあと」
 彼はイレギュラーズでないので、空中庭園のワープ機能は使えない。よってこのリゾートまで至るにも他の一般人同様、船で訪れる必要がある。必然的に宿泊必須にもなるのだが、その宿泊先がこのビーチからでは多少歩くらしい。それまでずっと服を濡らしている訳にもいかないだろう。
「ブラウくん」
「はい?」
 売店ならシャツなりズボンなり売っているだろうと視線を向けたブラウ。その両手をがっしと掴んだアーリアに彼がきょとんと視線を向けた。
「やっぱり一緒に行きましょう。おねーさんたちが服を選んであげる!」
「え? おねーさん"たち"?」
 しきりに目を瞬かせるブラウを余所に、アーリアはイレギュラーズたちを招集する。折角だ、アドバイスのひとつやふたつ、何だったらコーディネート一式一緒に考えて貰ったっていい。
 この夏、ブラウには素敵なお洋服をたんと着てもらおうではないか!

GMコメント

●できること
 ブラウのお洋服選び
 遊ぶこと!

●フィールド
 主な場所はシレンツィオリゾート二番街。一般労働者が暮らす地域で、安くて美味しいグルメやインディズアートなど、異国情緒に溢れています。
 労働者は様々な国籍を持っていることから、彼らの使用する店舗もまた様々なジャンルを取り扱っています。雑多で活気ある町の中には練達で見られるような服もあれば、豊穣で良く着られている和服、海洋の風通しが良い布地を使ったシャツなど。
 皆様がプレイングでこんな服が似合いそうだなあと書いてもらえれば、大抵のものは見つかると思って良いでしょう。

 また、三番街まで足を伸ばすことも可能です。
 カジノや映画館、プライベートビーチなどへ遊びに行きたい方はこちらへどうぞ。
 ブラウもブティックを回り終わった後は一緒に遊ぶことが出来ます。
 詳しくは以下のページよりご確認ください。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●NPC
・ブラウ
 ひよこの獣種の少年です。ショタです。もう少ししたら成長期が来るかもしれません。
 不幸体質で転んだり落とし物をするのは日常茶飯事。OPのような事態はまあありがちです。
 なのでまた濡れることも二度三度あっておかしくないですね! 着替えはいくらあっても良いでしょう! ね、アーリアさん!
 なお、本人のセンスは至って普通ですが、勝手に選ばせると無難で地味なシャツとかズボンで済ませようとします。

●ご挨拶
 愁と申します。
 仲の良い方と遊んでも良し、ブラウへここぞとばかりに色々服を勧めても良しです。どうぞお気軽に遊びに来て下さい。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • ひよことシレンツィオの夏完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2022年08月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
四(p3p010736)
特異運命座標

リプレイ


「みんな、集まってー!」
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の招集に数人のイレギュラーズが寄ってくる。ブラウ(p3n000090)のずぶ濡れっぷりに『なめらかなふともも』ニル(p3p009185)ははわわ、と狼狽えた。
「ブラウ様、びしょぬれ大変なのです」
「まあ、命に関わることは早々ないので多少諦めてもいますけれどね……」
 たはは、と力なく笑みを浮かべるブラウ。すっかりずぶ濡れの姿は気持ち悪そうだ。
「ふふふ」
 そんな中、唐突に笑い声が。
「ふふふふふ」
 ちょっと不気味にさえ感じられる笑い声が。
「アーリアさん?」
「飛んで火にいる夏の虫、もとい飛んでないし水にいる夏のひよこ! 今日は思いっきり羽を伸ばして――うふふふ、ばんざぁーい!!」
「うえぇ!?」
 物凄く、ものすっっごく楽しそうなアーリアが唐突に掴んでいたブラウの両手を持ち上げる。目を丸くするブラウは、しかしされるがままだ。
「酔ってます!? この真昼間から!?」
「あらやだ、酔ってはないわよぉ」
「酔ってないならなんなんです!?!?」
「そりゃあ――だって、こんなの楽しいじゃない!」
 にこにこしながら手持ちのタオルで拭える水分を拭ってあげたなら、いざ買い物だ!
「今日の私はひよこ鑑定士のプロデューサーよぉ!」
「今の僕はひよこじゃないんですけどー!?」
 れっつごー! と拳を突き上げるアーリアに他の面々もつられておー、と拳を天へ。 その人数を見て『猛獣』ソア(p3p007025)と『賦活』エストレーリャ=セルバ(p3p007114)は顔を見合わせた。
「これだけいるなら、ボクたちは別行動でも大丈夫そうかな?」
「あら! いいじゃない、折角のシレンツィオリゾートだものね!」
 是非いってらっしゃいなと頷くアーリアたちに、2人は手を振ってビーチから内陸へ続く階段を上がっていく。馬に蹴られたくはないのであちらはあちらで存分に楽しんでもらうとして。
「ブティックならこっちね!」
「センスに自信はないけど、僕も手伝えると嬉しいな」
 頑張る、と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)が心の中で気合を入れながらアーリアについて行く。こういう時は良い店を知っている人に従うのが一番だ。
「ほ、本当に皆さんが選んで下さるんですか? いえいえでも僕も17歳ですし! 自分で服くらいは選べますよ!」
「ふーーん。ブラウくん、17歳なんだ?」
 『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)が知らなかった、と呟く。あまり年上な感じがしないのは、この残念なほどに降りかかる不幸とそれから逃げるひよこの姿を知っているからだろうか。ローレットでも日々小さな不幸に見舞われる姿はある意味名物と言っていい。
「まーせっかくだからイイ感じにしてあげるよ」
「私も人に似合う服を選ぶのは得意な方だ。これだけ人数がいれば全てハズレということもあるまい」
 力強く『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)も頷く。そんな彼女らとブラウを見比べながら、『特異運命座標』四(p3p010736)は久しく男性の服を着ていないなと思い出すのだった。


「ブラウくんこれとこれ。こっちは前開けて羽織ってね」
 はい行ってらっしゃい、とアンジュに試着室へ押し込まれるブラウ。暫しして出てきたブラウに皆はおお、と歓声を上げた。
「だいぶ雰囲気が、違いますね」
「あとこれ着けて」
「伊達眼鏡ですか?」
 黒ぶちメガネを渡され、つければ――また一味変わる。プレッピーな優等生風で、けれど爽やかなマリンボーダーが夏らしさを感じさせた。
「良かったら、甚平や浴衣を、一緒に着てみませんか?」
 国によってはこれらも夏の普段着になるのだとニルは何着か柄違いで持ってくる。それらをブラウがうんうん悩んでいる間に、祝音は靴探しだ。
「みゃー。サンダル、こういうのどうかな……?」
「あらお洒落。こういう服と合わせるのも良さそうねぇ」
 濡れたなら靴やサンダルなども買った方が良いだろうと選択肢をいくつか用意した祝音に、アーリアが合いそうな服のコーデを考える。
(やっぱり、こういう靴には海洋らしい水兵さんスタイルかしら!)
 真白な帽子に白地で紺のラインが入ったセーラースタイルのトップス。ちょっと風で煽られて可愛いおへそが見えたら大変によろしい。ボトムは勿論トップスのラインと同色の半ズボン。少年の膝小僧は正義である!
「スカーフも沢山あるのねぇ」
 何色も似合いそう。なんて悩んだ末にアンジュとニルを呼び寄せ、スカーフ色違いのお揃いコーデにしてみたり。うん、皆可愛いし良く似合う。
「やはりアーリアは流石だな。だが、こういうのも良くはないか?」
 ブレンダも同じものを考えていたので、こういう子には合うのだなと頷く。そして色違いデザイン違いのセーラー服をどん!
「こ、これは……!」
「サスペンダーもお洒落だし、パンツを敢えてグリーンにするのも良いだろう? キャスケットと蝶ネクタイも合わせたらどうだ」
「ブレンダちゃん最高! ブラウくん着てみて!!」
 勢いのままに試着室へ押し込まれるブラウ。これはもしかしたら店中の服を試着して、1日ここで終わりそうだなあ、なんてブラウは思ったのだった。
「どれ、蝶ネクタイは私が締めてやろう」
 曲がっている事に気付いてブレンダが屈む。いつも遠い顔が近づいてきて、ブラウはドギマギしながら視線を逸らした。
 ――逸らした先にいた四が服を突き出していた。
「えっと……これは女物では?」
「そうだな、それが?」
 沈黙が降りる。四は心底不思議な様子だが、ブラウはれっきとした男である。
「似合うのなら何を着ても許されるのだそうだ。性別も関係なく」
「性別も関係なく!?」
「ちなみに私は男だ」
「「男ぉ!?」」
 ブラウ以外も異口同音に四へ驚くが、本人は何か? とでも言いたげである。
「ああ、私はれっきとしたビジネスで"これ"を着ているに過ぎない」
 好きでもなく、さりとて嫌なわけでもないらしい。しかしブラウがあまり気乗りしないと気づいたのだろう、仕方ないと別の服を選ぶ。
「これはどうだ」
「これも女物ですが!?」
「全く、文句が多い奴だな。私の知り合いは――」
 以下エンドレス。しかし彼のやり取りのおかげで他のイレギュラーズたちは存分に服を選ぶ時間が出来た。ちなみにふりふりのワンピースは着せられた。
「うっうっ……ズボンのありがたみを感じています……」
「ふーん」
 そこに関してはさしたる興味もないと言いたげなアンジュによって、今度はやんちゃ風にコーディネートされる。ボウリングシャツの背中には大きなひよこの刺繍。何故いわしはないのか可愛いだろうとアンジュは拗ねた表情になった。
「ひよこ柄……なら、こういうのも、いいかもしれないね。みゃー」
 祝音がひょいと顔を覗かせ、手に持っていたものを見せた。ひよこ柄の浴衣。かわいい。ひよこまみれである。
 そんなこんなでブラウが着せ替え人形になる一方、イレギュラーズたちもまた自分の服を探す。多くても困ることはない。
「ふむ、このバッグいいな。お、こっちも捨てがたい」
 全身のコーディネートを終え、ヒールも新調したブレンダは小物コーナーで唸っている。アーリアはひよこ姿のブラウのようなビタミンイエローのワンピースだ。
「アーリア、綺麗だ」
「ふふ、ブレンダちゃんも格好いいわ!」
 なんてお互いにくすくすと笑って。アーリアは余った時間で選んでおいたリボンやらシュシュを皆へプレゼントする。
「アンジュちゃんのエルキュールちゃんにもお揃いよ!」
「やったね! エル、結んであげる」
 エンジェルいわしに可愛らしく結ばれるリボン。元から可愛いけど100倍くらい可愛くなってしまったので、誘拐されないか心配である。
「アーリアおねーさん、大人なワンピース似合うね~。あと髪の色変えられるのも、めっちゃいいじゃあん」
「うふふ、そうでしょ! この後は飲み歩き……」
「アーリアさん、まだ昼ですよ」
「……じゃなくて食べ歩きもしましょ! やあねぇブラウくん、おねーさんだって分別は弁えてるわぁ!」
 飲めそうなときは飲んじゃうけれど、なんて言葉は心の中にしまっておこう。
「あ、ブラウくん。最後にこれ」
 ちょいちょいと手招きするアンジュによりさらに着せ替えられるブラウ。白のバンドカラーシャツに黒のスキニーを合わせたシンプルスタイルは、アンジュのイチオシである。
「うーん……ヘアアレンジもしてみたら? ワックスとか」
 しかし。このぴんぴん跳ねた可愛らしい髪の毛はどうしたものかとアンジュは黄色い髪をむむむと唸りながら凝視した。
「かわいいのでも、かっこいいのでも、似合うのですね! こうなったらいっぱいいっぱい、素敵なお洋服を選びましょう」
 おっとまだまだ服選びが続きそうだ。ニルの様子を見てブラウはそう思いながら、一旦元の服へ戻る為に試着室へ篭る。そして服を脱ごうとして――髪が何かに引っかかったぞ!
「た、たすけてくださぁい……」
「え、これあけていいやつ?」
 流石に着替え中は困るぞと確認し、ぴょいっと顔だけ覗かせる数人。元の服を着たブラウが何故か――試着室のハンガーラックに髪をひっかけ、どうにもできないでいた。
「じっとしていろ」
 ブレンダがひょいと髪を外してやり、ブラウが息をつく。困ったわねぇとアーリアは頬へ手を当てた。
「服は選んだけれど、やっぱりひよこ姿で抱っこしたほうが……」
 いや。あのもふもふをここで抱きかかえたが最後、汗だくになる未来が見える。何でもないわとアーリアは笑った。
「僕も猫さんモチーフのシャツを選んだよ……みゃー」
 祝音がどう? と猫のワンポイントがあるシャツを見せる。これが可愛くない訳もない。いいなと頷いたブレンダが、流石に我慢も限界でそれに合うボトムは、などと探し出して。これはまだまだ滞在することになりそうだと、一同はくすっと笑った。



「エスト! こっちこっち!!」
 手を引くソアはとても楽しげで。エストレーリャはそんな彼女の姿を見るだけでも幸せいっぱいだ。
(この夏も、いっぱいの思い出を作りたいな)
 季節はあっという間に過ぎてしまうもの。だから、うかうかしていたら時間も過ぎ去ってしまう。
「ね、ここでお買い物しよ!」
 ソアがエストレーリャを連れてやってきたのは海沿いに開く露店だ。ビーチを訪れる客をターゲットに、お土産やアクセサリーなどを販売しているらしい。
「色々と売ってるんだね。Tシャツとかもあるんだ」
 ソルベやカヌレの顔がプリントされたTシャツ――きっと練達製に違いない――をエストレーリャはまじまじ見てから、アクセサリーなどの方へ視線を向ける。これはこれできっとお土産にはありなのだろうが、ソアにバッチリ似合うものを見つけたい。
「ねね、ミサンガはどう? 水遊びしていても身につけられるみたい!」
 ソアが手招きするのを見てそちらへ寄れば、そこにはカラフルな紐状のアクセが並んでいた。これを手首や足首に結び、切れたなら込めた願いが叶うのだとか。
(カラフルなの、可愛いなあ)
 エストレーリャに絶対似合うとソアは思う。いいや、どんな色だって似合わないわけがない。その中からソアはこれぞという柄を選ぶ。
「ふふー、情熱の赤だよ」
 購入して手ずから結んであげる。エストレーリャは嬉しそうに笑って、お返しといつの間にか買っていたミサンガを結んであげた。
 魔除けの黒。
 ソアを思わせる橙。
 それらの絡み合ったミサンガを、愛情の意味を込めて利き手へと結んであげる。
(どうか、大好きな君の笑顔が、ずっと見られますように)
 心の中で願掛けしたエストレーリャは、こっちにきてとソアを促した。訪れたのは耳飾りやネックレスなど、顔まわりを飾るアクセのコーナーだ。
「ソア、こういうのはどう? 水着にも合いそうだったから」
 手に取ればシャラ、と涼やかな音を鳴らす。これなら水遊びをしても問題ないだろう。
 買ってもらった耳飾りを早速つけて、ぴこぴことソアが耳を動かすたびにシャラシャラと耳飾りが揺れる。それが楽しくて、ふふ、と笑い声が思わず漏れた。
「ありがと、エスト。シレンツィオの思い出にするね」
 選んでくれたお礼にぎゅうっと抱きしめて――まだデータは終わらない。次はあそこへ行こう!


「大きい!!」
「船の上、本当にプールなんだね……ソア、何して遊ぶ?」
 エストレーリャとソアはカヌレ・ベイ・サンズの頂上にある船のプールへ訪れていた。船のプールから景色を一望するだけでなく、流れるプールやスライダーなど色々なアトラクションもあるようだ。
 大きなプールへ初めて来たソアは尻尾をふりふり。ご機嫌である。
「エスト、あれ! ボクね、プールの滑り台やってみたかったの!」
 目をキラキラさせて示したのはウォータースライダー。いいね、とエストレーリャは微笑んで。
「一緒に滑ってみる?」
「うん!」
 満面のソアと共にスライダーの入り口へ。こうしてみると流れが速そうだ。離れないようにエストレーリャは後ろからソアをぎゅっと抱きしめる。
「準備いーい? いくよ!」
 声かけと共にスライダーを2人の体が滑り落ちていく。水は冷たいけれど、お互いの肌が触れている部分は暖かい。
「きゃー! すごいすごい!!」
 前からソアの歓声が上がる。それを聞いてエストはくすりと笑って――ゴール地点のプールに落ちた。
「ぷは、」
 水面から顔を出したエストレーリャを、ソアが楽しかった! と笑顔で抱きしめる。素肌が柔らかくて、ドキドキせずにはいられない。
 スライダーに乗るとき、エストレーリャは真っ先に後ろがいいと言った。だって――何がとは言わないけど――意識せざるを得ない。エストレーリャだって男なのだ。
 意識してしまうことで、嫌悪感を持たれたくない。自分だけじゃない、誰からだって傷ついてほしくない。大切にしたいのだと強く思う。
(でも、ソアの全部が好きなのも、本当)
 彼女に、気兼ねなく今日を楽しんでほしいのも、本当。
 嗚呼、ままならない。苦笑いを浮かべたエストレーリャにソアは首を傾げるけれど、なんでもないよとはぐらかされてしまう。
「それじゃあ、今のもう1回やりたい! ダメ?」
「もちろん、いいよ。……今度は、ソアが後ろに回ってみる?」
「うんっ!」
 エストレーリャの問いかけに逡巡なく頷いたソア。ぎゅっと肌をくっつけることにも嫌がる素振りはないので、あとはエストレーリャが極力そういう意識をしないように心がけて。
「ソア。これの後、目一杯遊び倒して、全部回ってみよう!」
「全部! いいね、どんどん行こ!」
 沢山回って、遊び疲れてしまうまで。そうなったらそうなったで、プールサイドにあるベンチで休めば良いのだから。
「ここも景色いいね」
「あー……えへへ。最っ高!」
 くたんとベンチに身を預けたソアがへにゃりと笑う。パラソルの日陰にいるから、そこまで暑くもない。プールが近いから風もどことなく心地よい。
「はい、ソア」
「あーん……」
 エストレーリャのアイスをぱくりと食べさせてもらって、幸せそうにソアが笑う。それからお返しにと、今度はソアがアイスのスプーンを差し出すのだ。
 それも食べ終わってまったりしていると、エストレーリャが自分の膝をぽんぽんと叩く。引き寄せられるようにそっちへ身を倒し、まるんと身を縮めたソアはふふふと笑った。
「少し、こうしてていいかしら」
「うん。いくらでも、どうぞ」
 そっと頭を撫でられる感触。幸せな気持ちになりながら、ソアは微睡み始める。
 そんなソアを、エストレーリャは優しい瞳で見下ろしていた。



 皆たんまりとペーパーバッグを持って。繁華街までの道のりを歩いていく。アンジュが海に手を振ると、いわしの群れが海面で返事をするように跳ねた。
「あれ? パパの群れだ。心配性だなあ!」
 口調の割りに嬉しそうなアンジュ。しかし繁華街に入ってしまえばあちらこちらにある屋台へ目移りしてしまう。
「ドリンクでも買ってやろう。この暑さだからな」
 目を輝かせるニルとアンジュ。祝音もあれはどう? なんてブラウへ揚げ串を示して見せる。
「じゃあおねーさんは皆にアイスを奢ってあげましょ! ダブルでもトリプルでも好きにして頂戴!」
 アーリアの太っ腹な発言にわーい! と声が上がる。ダブルのアイスを頼んだブラウにアーリアは気をつけてね、と声をかけた。
「すぐ溶けるから落ちる――」
「あっ」
「え、」
「わあ」
 ブラウが声を上げ、四が振り返り、アンジュが知ってたって感じの声を出した。それからべちゃ、と悲しい音が響く。
「「……」」
「ブ、ブラウ様。腕にもついてますよ」
 服は幸い無事なようだ、とニルは衛生スプレーも使って綺麗にしてやる。しかしブラウは服より何より、心のダメージが大きい。だってまだ一口も食べてなかったのに!
「ア、アーリアさんすみません!」
「いいのよぉ。ダブルで落ちちゃうなら、シングルでカップにして貰ったらどうかしら? 二つ目の味はおねーさんが分けてあげる!」
 ――そんなハプニングも少し、いやこの後も続いたのだけれど。それでも楽しい1日になった事に、間違いはないのだった。

成否

成功

MVP

アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 OP出す時からジスーの壁と戦うんだって知ってました。着せ替えって楽しいから仕方ないよね!

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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