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シナリオ詳細

<潮騒のヴェンタータ>一角獣の鎧の少女

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生きるため、やむを得ず
「うわぁ、海乱鬼(かいらぎ)衆だ!」
「ちくしょう、何でここまで近付かれるまで気付かなかった!」
 フェデリア島近海。シレンツィオリゾートに向かう輸送船が、数隻の小舟に分乗した海賊に襲撃されている。
 海乱鬼衆とは、豊穣から発した海賊達のことだ。海乱鬼衆は一つの集団というわけではなく、様々な背景から個々に海賊となった、幾つもの集団であるため、一回叩けばそれで終わりとはいかないのが厄介なところであった。
 輸送船は小舟に接舷され、次々と海乱鬼衆に乗り移られている。その中で、他の者とは明らかに風体の違う少女がいた。白いプレートアーマーを身に纏い、そのヘルムには一角獣のような角が生えている。さらに、各所には様々な武装がこれでもかとばかりに備え付けられていた。
「アタシ達は、荷物だけ頂戴できればいいんだ! だから、無駄な抵抗はしないで!」
 少女はそう呼びかけるが、輸送船の船員達としてもはいそうですか、と言うわけにはいかない。輸送船の甲板は、たちまち船員と海乱鬼衆との乱戦の場となった。
 その中で、老いた海乱鬼衆が船員に押され、尻餅をついた。船員は好機とばかりに、サーベルを老海乱鬼衆に突き立てようとする。
「ゲン爺! ――お願い、一角獣の鎧! アタシに力を貸して!」
 その窮地を見た少女は、自らの鎧に助力を懇願した。すると、懇願に応えるかのようにヘルムの角が左右に分かれ、V字型の金色の前立てのように変形する。さらに、プレートアーマーは少女の身体能力を大幅に強化した。しかしそれは少女の身体には負荷が大きすぎるもので、鎧の隙間から覗く白い肌は毛細血管の断裂による内出血で、内側から紅く染まっていった。
 あわや老海乱鬼衆がサーベルに貫かれるかと思われた瞬間、少女は船員の鳩尾に拳を叩き付け、昏倒させる。
「すまんのう、結丹(ゆに)……儂が不甲斐ないばかりに」
「それは言いっこなしだよ、ゲン爺」
 申し訳なさそうにする老海乱鬼衆に、結丹と呼ばれた少女は快活な笑顔を向けて応えた。

 その後は、負荷と引き換えに大幅な強化を受けた結丹の無双と言うべき活躍によって、瞬く間に輸送船は制圧された。その際、見るべき者が見れば、結丹が武装を一切使わず拳や足による格闘ばかりを用いていたことに、奇異な印象を受けたかも知れない。
「何とか……間に合った、みたいね……」
 制圧完了の直後、結丹はグラリとふらつき、周囲にいる海乱鬼衆達に支えられる。左右に分かれていた前立ては元の一本の角に戻り、内出血で紅く染まっていた肌も白に戻っていった。
「まったく、いつも無茶をしおって……」
 海乱鬼衆の一人が叱責するように言うが、その言葉には力がない。それも無理はないことで、結丹の無茶がなければ、彼らが生き延びるのは困難だったのだ。故に、力がないどころか申し訳なささえ滲んでいる。
「アタシは大丈夫だよ。それより、早く荷物を積み込んで帰ろう?」
 身体を支えられながらも結丹は気丈に笑い、海乱鬼衆達に積荷の略奪を促した。

 やがて、輸送船の荷物を移し終えた海乱鬼衆達は、目的を達したとばかりに帰途に着く。彼らの口からは、これでまたしばらくは生き延びられると喜び合う声が漏れていた。
 ただ一人、結丹だけは申し訳なさそうな表情をしながら、輸送船の方を振り返る。
(――ごめんね。でも、アタシ達も島の皆を生き延びさせなきゃいけないんだ)
 内心で詫びる結丹の視線は輸送船から外れることはなかったが、ついには輸送船は結丹から見えなくなった。

●ユメーミルの共感
「いつも、ここまでご足労下さりありがとうございます」
「何、これも仕事のうちだからね。それで、今回は如何したんだい?
 またぞろ、沙武(しゃぶ)とやらが動き出したのかい?」
 豊穣は水都(みなと)領、領都朝豊(あざぶ)。水都領主である朝豊 翠(p3n000207)がローレットの情報屋である『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)に頭を下げつつ、来訪の礼を述べる。
 ユメーミルは大したことはないと言わんばかりに快活な笑顔で応じ、自身の推測を交えながら翠からの用件、すなわちローレットへの依頼について尋ねた。
「いえ、そうではないんです。ですが、それとは別に神使の皆様の力をお借りしたい件がありまして……」
「ああ、何でも言っておくれよ!」
 ユメーミルの推測を否定しながらも、翠は今回の依頼について話し始める。ユメーミルは任せろとばかりに胸を拳でドンと叩くと、翠の話を聞き始めた。

 翠の依頼は、水都領である醍葉(だいば)島を拠点とする海乱鬼衆の捕縛だった。醍葉島の島民達は元々は漁を営んでいたが、深怪魔の出現によって漁がままならなくなったため生活に行き詰まり、やむなく海賊に身をやつしたという。
(……ああ。アタシ達と、同じなんだねぇ)
 かつて貧困から盗賊に身をやつしたユメーミルにとって、醍葉島の島民達が困窮から海乱鬼衆となったのは他人事とは言えなかった。領主として何とかしてやれと翠に言ってやりたいところではあるが、言うほど簡単にいかない事情を翠が抱えているのも、ユメーミルは知っている。
 水都は隣領沙武からの侵略を受けており、イレギュラーズ達の活躍によってその魔の手は返り討ちにし続けているものの、軍事的緊張は未だ続いており、兵力も財政も圧迫されているのだ。
「醍葉島の人達が海乱鬼衆になってしまったのを知らなかったのは、私の不徳です。
 今からでも醍葉島の人達の生活は何とかしたいと思いますが、その前に海賊を止めさせて形だけでも然るべき裁きをせねばなりません。
 醍葉島の人達も、水都の大事な民です。ですから、誰一人死なせることなく捕えて頂けますか?」
 翠の話を、ユメーミルは腕組みをして難しい顔をしながら聞いている。そもそも、自身も死刑になってもおかしくない状況でありながら、部下達共々奉仕活動を課されることで赦された身である。ならばやはり、醍葉島の島民が同じ道を歩めるのならそうあって欲しかった。
「……ローレットに、イレギュラーズに、任せておきな!」
 しばしの沈黙を経た後、ユメーミルは自信満々と言った笑みを浮かべながら翠に応える。そこには、イレギュラーズ達への確かな信頼があった。

GMコメント

 大変お久しぶりです。緑城雄山です。
 今回は海賊に身をやつした醍葉島の島民達を、一人として死なせることなく捕縛して下さい。

●成功条件
 結丹を含む海乱鬼衆(醍葉島民)全員の戦闘不能・捕縛。

●失敗条件
 海乱鬼衆(醍葉島民)が一人でも死亡する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 フェデリア島近海。時間は夜間。天候は晴天。
 イレギュラーズ達は、特にプレイングに指定がなければ、翠が用意した囮の輸送船に乗っているものとします。
 時間は夜間ですが、イレギュラーズ側には暗視用の装備が貸し出されており、海乱鬼衆も夜目が利くため、視覚に関するペナルティーはありません。
 また、水中で活動するための装備が貸し出されるため、水中での行動も問題なく可能です。
 自前でこれらに関する能力・装備を用意している場合、有利に判定されます。
 また、後述する特殊ルールにより、水着姿のPCは戦闘力が向上します。

●初期配置
 海乱鬼衆は奇襲を得意としているため、イレギュラーズ達の索敵能力によって変動します。上手く察知できれば遠方からでも察知でき先手を打てますが、そうでなければ至近まで接近された状態で奇襲を受けることになるでしょう。

●昆 結丹(こん ゆに) ✕1
 海乱鬼衆に身をやつした醍葉島民達を率いる少女です。
 元々の結丹は武芸に心得のある少女と言う程度の実力でしたが、以前の略奪の戦利品『一角獣の鎧』を身に纏うことで、その能力全体が大幅に強化されています。さらに、島に残る者達を生き延びさせねばならない、共に戦う島民達を守らねばならないと言う執念から来る極めて高いEXFがあるため、なかなか倒れることはないでしょう。
 他、特筆すべきはEXAの高さで、装備している武装を1ターンの間にこれでもかと撃ち込んできます。なお、1ターンの間に同じ武装は一度しか使えないものとします。
 さらに『一角獣の鎧』にはOP中で描写したように、通常のモードの他に、多大な負荷と引き換えにより大幅に装着者を強化するモードがあります。モードの変換は行動を消費することなく行われ、後者のモードになった場合、3分(18ターン)経過後に自動的に通常のモードに戻ります。再度後者のモードになることは、それから戦闘に60ターン以上かかったりしない限りはないでしょう。
 一角獣の鎧に守られているため他の醍葉島民より肉体的な耐久力はありますが、それでも元が元ですので、【不殺】の無い攻撃で戦闘不能にした場合は中確率で死亡します。

・攻撃手段など
 ビームサーベル 神至単 【弱点】【邪道】
 ビームマグナム 神遠単 【弱点】【邪道】
  「威力が大きすぎる」としてこれまで結丹は使用を控えていましたが、イレギュラーズ相手にはさすがにそうも言ってられず使ってくることになるでしょう。
 ビームハルバード 神近範 【弱点】【邪道】
 盾裏装着ビームガトリングガン 神遠範 【弱点】【多重影】【変幻】
  両腕と背面の3つあります。自律して飛び回り、敵を攻撃したりする他に、3枚の盾が集まることで後述する対神秘攻撃力場を展開したりします。
  盾としての使用、対神秘攻撃力場の展開については、1ターンの間に何度でも制限なく行うことが出来ます。
 肩部ミサイルポッド 物遠範 【火炎】【業炎】【炎獄】
 脚部ミサイルポッド  物遠範 【火炎】【業炎】【炎獄】
 背部バズーカ 物遠単 【邪道】
 対神秘攻撃力場
  防御判定に成功した場合、自分への神秘攻撃を無効化します。
 連鎖行動(醍葉島民達)
 飛行
  常時飛行できるわけではなく、飛行した次のターンには着地する必要があります。いわば、飛行と言うよりはジャンプ移動に近いです。

●海乱鬼衆(醍葉島民)✕30
 深怪魔の出現により不漁続きとなり、生きる糧を得るために海賊とならざるを得なかった醍葉島の島民達です。数名乗りの小舟数隻に分乗しています。
 純粋な実力だけであればイレギュラーズ達の相手とはならないのですが、厄介なのは島に残る者達を生き延びさせねばならない、自分達を活かすために立ってくれた結丹を守らねばならないと言う執念から来る、極めて高いEXFです。
 イレギュラーズとの実力差がさすがに大きすぎるため、【不殺】の無い攻撃で戦闘不能にした場合、高い確率で死亡するものとします。

・攻撃手段など
 銛 物至単
 矢 物遠単
 連鎖行動(結丹、他の醍葉島民達)

●特殊ルール『竜宮の波紋』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―による竜宮の加護をうけ、水着姿のPCは戦闘力を向上させることができます。
 また防具に何をつけていても、イラストかプレイングで指定されていれば水着姿であると判定するものとします。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <潮騒のヴェンタータ>一角獣の鎧の少女完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月04日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
ラド・バウA級闘士
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
松元 聖霊(p3p008208)
医神の傲慢
三國・誠司(p3p008563)
一般人
幻夢桜・獅門(p3p009000)
竜驤劍鬼
リュリュー(p3p009320)
美しい脚
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
ガイアドニス(p3p010327)
超合金おねーさん

リプレイ

●囮の輸送船にて
「ま、この辺の事情? ってヤツ? 地形とか気候がちょーっと違う程度じゃ、そーそーかわんねーよな」
 シレンツィオリゾートに向かう、一隻の輸送船。その船室の中で、『ゴミ山の英雄』サンディ・カルタ(p3p000438)はよくある話だと言わんばかりに、独り言ちた。
 サンディ達が乗るこの輸送船は、海賊「海乱鬼衆」を捕縛するために、豊穣は水都の領主が用意したものだ。海乱鬼衆の出自は様々だが、今回捕縛する海乱鬼衆は水都領醍葉島の島民達が、深怪魔の出現によって漁が成り立たなくなって困窮したことで賊となったものである。
 ギャング同様の自警団を組むことでスラム暮らしを生き抜いた経験があるだけに、サンディには珍しい話ではなかった。
「――奪ってでも生き延びねばならぬ、死にたくはない。追い詰められれば、誰であれそうなるのでしょう」
「でも、だからって海賊なんて続けてたら、奪われた人からの恨みだけが深まって、結局誰もが不幸にしかなれない。
 だから――醍葉島の人達が真っ当な道に戻る未来を守るためにも、ボク達で止めよう!」
「ええ。道を踏み外しかけの現状を引き戻すのは、そうでない者の務めです」
 醍葉島民が海乱鬼衆となったのは無理からぬことだったと、『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)が断じる。珠緒の装いが白と赤を基調とした、ドレスを思わせる水着姿であるのは、この海域にもたらされた竜宮の加護を得るためだ。水着、と言うにはやや布地が多い気もするが、それが珠緒を愛らしく装っている。
 その先の未来に言及したのは、珠緒とペアルックの『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)だ。当然、そんな未来を蛍は認められない。故に醍葉島民を止めるとの意志を示せば、珠緒は蛍に微笑みながらコクリと深く頷いた。
(海賊に身を落とすしかなかった……責めることはできねぇ。生きる為には、そうするしか無かったんだろう)
 「生きる為に」海乱鬼衆とならざるを得なかった醍葉島民の境遇は、青いロングトランクス型の水着に白衣を羽織った『医神の傲慢』松元 聖霊(p3p008208)も察するところだ。ならば――。
「『生きたい』と願う全てを救うのは医神の仕事だ。やってやろうじゃねぇか!」
 聖霊はやる気満々な様子で、パン! と掌に拳を打ち付けた。
(――敵も味方も、双方甘い)
 腕組みをして船室の壁に背中を預けながら、内心でそう独語するのは、白いスクール水着姿の美少女『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)だ。白いスクール水着はシンプルであるが、それ故に百合子のスレンダーな肢体を引き立てている。
 積荷は奪えども船員は殺めまいとする醍葉島民達も、そんな彼らを事実上お咎めなしで保護しようとする水都の領主も、百合子からすれば甘すぎると思えるほどに甘い。だが。
(……甘いからこそ、殺さずに手打ちにしろと依頼が来たのは、塞翁が馬という所か)
 ほんの少し、他人から見てもわかるかどうかと言うほど微かに、百合子は笑みを浮かべた。

「海乱鬼衆って悪い人たちばかりだと思ってたけど……今回の人達は悪いことはしてるけど、悪い人じゃないのね?」
「そうね。食べるに困ってやむなくと言うことだし、何とかしてあげたいところだわ」
 輸送船の甲板では、やはり水着姿の『ぬくぬくしてたい』リュリュー(p3p009320)と『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)が、そんな会話を交わしている。リュリューの水着は白をベースに青をあしらったワンピース風のものであり、リュリュー自身の白い肌とも相まって水着の青がよく映えている。ガイアドニスの水着は黒のビキニをベースとして胸周りを赤の、腰回りを青の布で覆ったもので、元より大柄でスラっとしたボディと長い脚が露出している様は、健康的な色気を感じさせた。
「うん、分かった! そういうことなら頑張るよ!」
 ガイアドニスの返事に、リュリューは元気いっぱいに頷いた。悪人でなければ、きっとやり直せるはず。だからそうなるように尽力したいと、リュリューもガイアドニスも思う。
 しかし、醍葉島民達にやり直してもらうにしても、まずは彼らと遭遇して捕縛しなければ話にならない。そのために、リュリューは温度による視覚で、ガイアドニスは尋常ならざる視覚・聴覚・嗅覚を総動員して、索敵を行っている。
「……あれ? あそこ、何かおかしくない?」
 海面に違和感を受けたリュリューが、ガイアドニスに耳打ちする。他よりも、温度が高い部分がちらほらと見られたのだ。
「どれどれ……?」
 ガイアドニスが、リュリューの示した位置に向けてじっと目を凝らす。すると、海面の一部が他とやや違っており、輸送船に向けてゆっくりと動いているのが見える。海面に偽装した布を被せた、海乱鬼衆の小舟だ。布の中に籠もりその隙間から漏れ出た熱が、リュリューに発見されたのだった。

●奇襲!
 海乱鬼衆の小舟を発見したイレギュラーズ達は、海乱鬼衆達に奇襲を仕掛けるべく動き出した。海乱鬼衆の小舟の方へと進む囮の輸送船の舳先には、ガイアドニスが「おねーさんを見て!」と言わんばかりに、これでもかと存在感を示しながら立っている。
 そこに引き寄せられるように海乱鬼衆は小舟を進め、囮の輸送船を半包囲。一気に距離を詰めて接舷せんと狙う。だが。
「海賊にならざるを得ない境遇に同情はすれど……認めるわけにはいかない!」
 その機先を制して、蛍が真ん中の小舟へと翔んだ。
 人の心は弱い。生き延びるためとは言え、略奪の成果を喜びあっていては、いつか心根までも海賊に堕してしまう。だから―—。
「今ここで、貴方達を止めるわ!」
 固い意志を込めて叫ぶと同時に、蛍は自身の周囲に桜吹雪を舞わせた。突然のありえざる光景に、小舟に乗っている海乱鬼衆は心を奪われ、隙だらけとなる。
 蛍が作った隙を衝いて、珠緒が邪悪を灼く聖なる光を放つ。周囲に、予め集めておいた醍葉島民達の被害者の姿を、次々と映し出しながら。
「この方が営む商会は、荷物を奪われたことで経営が成り立たなくなり、従業員を全員解雇することになりました。
 この病床の女性は、貴方達が奪った薬が届いていれば、助かっていた人です。一緒に写っている子供は、薬を奪われたことを悲しみ、貴方達を恨んでいました。
 ―—奪う覚悟はあっても、その結果を見続ける覚悟はありますか?」
「……くっ!」
 小舟の中心にいる、白い鎧の少女——醍葉島民達のリーダーである昆 結丹が、苦しげに呻いた。それは、破邪の聖光によるダメージによるものではなく、抑え込んだ良心の呵責故。
 さらに、結丹の周囲にいる四人の海乱鬼衆がよろよろとよろけながら執念で立ち上がろうとするが、そのうち一人が力尽きてその場に崩れ落ちた。周囲の映像と珠緒の問いによって精神的に楔を打たれ、執念を発揮できなかったのだ。
「おいおいおいおい、何だこれ。どえらい武装してるじゃねえか、舶来品か???」
「さぁて、秘宝の力と吾の力! どちらが動けるか勝負と行こうか!」
 結丹が状況に対応しようとするよりも早く、ザバァ! と小舟の両側の海面から、二つの影が飛び出した。海中に潜んで機をうかがっていた、『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)と百合子だ。
 獅門が大上段に振りかぶった破竜刀を全力で振り下ろそうとすれば、結丹は両腕と背面の盾を飛ばして空中で組み合わせ、受け止めようとする。だが、竜の力を思わせる一撃は盾では止めきれず、避け切れなかった結丹に傷を負わせた。
 そこに畳みかけるように、百合子が結丹の頭、喉、鳩尾の三か所を突きにかかる。
「うぐっ!」
 盾は獅門の一撃を受け止めるのに使っており、百合子の攻撃を受け止めるには間に合わない。結丹はほぼ無防備の状態で、三か所の急所を突かれ、呻き声を漏らす。
 百合子の攻勢は、まだ終わらない。一瞬、夜空を見上げるような動きをすると、並行世界上の可能性を束ねた強烈な一撃を結丹の鳩尾に叩きつけた。
「かはっ! な、何で―—?」
「襲った者達をそのまま逃がしておったであろう。手口が割れておるのだ」
 奇襲されたのが信じられない様子の結丹の問いに、百合子は当然と言わんばかりに答える。
「――お願い、一角獣の鎧! アタシに力を貸して!」
 奇襲するつもりが奇襲され、強烈な攻撃を立て続けに叩き込まれた結丹は、イレギュラーズを油断ならない相手と判断。早々に、鎧に助力を乞う。それに応じるように、一角獣を思わせるヘルムの角が左右に分かれ、金色の前立てに変形。さらに、鎧は結丹の身体能力を大幅に強化。
 だが、鎧の隙間から見える結丹の素肌は内側から内出血で紅く染まっており、明らかに尋常ではない負担を鎧が結丹に与えているのが見て取れた。
 結丹は蛍、百合子、獅門をビームハルバードで薙ぎ払い、珠緒に向けてビームマグナムと肩と脚からのミサイルを放つ。蛍はビームハルバードを回避したが、百合子と獅門はビームの刃で斬られて負傷する。珠緒に放たれた射撃は、すんでのところでガイアドニスが盾となって全て受け止めた。
「おねーさん、間に合ってよかったわ。珠緒ちゃん、大丈夫?」
「ええ。ありがとうございます、ガイアドニスさん」
 尋常でない量の射撃を受けながら、大したことはなさそうに気遣ってくるガイアドニスの姿に、珠緒は頼もしさを覚えた。
「……えぇ、何あれぇ。まさか形態変化しないだろうなと思っていたら……!」
 トランクス型のアロハ風の水着にパーカーを羽織った『一般人』三國・誠司(p3p008563)は、一角獣の鎧のヘルムが変形し、結丹の素肌を紅く染めたのを目の当たりにして、呆れたような声を思わず漏らした。嫌な予感が当たったというところだ。
「生きる為……じゃあ、奪われた奴はどうなる! そうやって弱いやつらだけが奪われ続けるのか、違うだろう!」
 だが、ずっと呆然としているわけにもいかない。誠司は珠緒の揺さぶりにさらに乗じるべく問いかけつつ、特殊弾頭「シャゲ弾」を結丹に向けて撃った。
「……何なの!? この、不快な音は! ……ぐっ!」
 左右にぶれながらシャカシャカと精神を煽るような音を立てる弾丸は、誠司の問いと共に結丹の精神を揺さぶっていく。
 そんな状態では盾で防御することも、避けることもままならず、結丹はシャゲ弾をまともに受けてしまった。シャゲ弾は、一角獣の鎧が存在しないかのように、結丹の体内へと食い込んだ。
「光槍に光線銃にミサイル……!? もしかして宇宙保安官でありますか……?」
 水中から戦況を覗き、混沌よりは自身の元の世界に近い結丹の武装に驚きの声を上げたのは、赤いロングトランクスに黄色いパーカー姿の『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。腰の銃と手首のブレスレットを除けば、普通に海に遊びに来た青年にしか見えない。
「——じゃない! 海賊は勿論悪いことでありますけど……それよりも!
 命を削ってまでこんな無茶なこと、長続きなんかしないでありますよ……! 必ず止めねば!」
 海賊はもちろん捨て置くわけにはいかない。だがそれ以上に、一角獣の鎧で命を削るような結丹の戦い方こそが、ムサシにとっては見ていられないものであった。
 水中から飛び出したムサシは、結丹に飛び掛かりつつ叫ぶ。
「止めろっ! こんな命を削るような無茶な戦い方じゃ、いつか限界が来るでありますよ……!
 そうなったら終わりというのを、分かってるんでありますか!?」
「アタシ達は、その限界とやらが来る前の『今』を、生き延びなきゃいけないのよ!」
「……そうするしかなくなった、その境遇には同情するであります。
 それでも……いや! だからこそ! 手遅れになる前に、貴女達を止めてみせる!」
「ううっ!」
 固い意思を以て、ムサシは必殺剣を放つ。V字に傷を刻まれた一角獣の鎧の表面で、流し込まれたエネルギーが爆発する。その衝撃は、結丹は思わず仰け反らせた。
(事情を聞いちゃったからあんまり乱暴したくないんだけどっ……。
 でも、これ以上悪い事し続けたら、本当に戻れなくなるかもしれないから、そうなる前に今止めないと!)
 葛藤を胸に抱きつつも、リュリューは結丹が乗っているものとは違う小舟を狙い、邪悪を灼く聖なる光を放つ。破邪の聖光を浴びた船上の海乱鬼衆五人のうち、四人ばかりは倒れてもかろうじて立ち上がってきたが、一人は執念が及ばず立ち上がることはできなかった。
「大丈夫か? 今、治療するからよ」
 聖霊は百合子と獅門のやや後方へと泳いでいき、聖なるものを讃える癒しの歌を歌う。その音色は、ビームハルバードによって受けた百合子と獅門の傷を、完全にとまではいかないが癒していった。
「すまぬ。ありがたい」
「助かるぜ!」
 聖霊の癒しに、百合子と獅門はそれぞれ感謝の言葉を返した。
 サンディは聖霊を追うように海に入り、盾となるように聖霊のやや前に出る。
 聖霊を護るのが、仲間達の戦術におけるサンディの役割である故だが、そうすることで己の思うところを海乱鬼衆に示せると、サンディは確信していた。
「なあに、故郷の奴等と何ら変わらねぇ。てめえらの刃が折れるまで付き合ってやんぜ!」
 いくらでも来い、と言わんばかりに、サンディは吼えた。

●説得、その先に
 海乱鬼衆は、元が元であるだけにイレギュラーズ達の敵ではなかった。結丹を援護すべく聖霊に向けて射かけられた矢は、全てサンディによって止められてしまう。その間に、蛍が八艘飛びで次々と別の小舟に乗り移って海乱鬼衆達の隙を作り、珠緒が一人一人確実に昏倒させていく。さらにはリュリューも分散して海乱鬼衆達に破邪の聖光を浴びせかけていくと、海乱鬼衆達は一人、また一人と力尽き、ついには結丹を除いて全て倒れた。
 結丹は接近戦を挑んでくる百合子と獅門、ムサシをビームハルバードで薙ぎ払い、誠司に集中砲火を浴びせかける。だが、百合子と獅門、ムサシに与えた傷は聖霊によって完全ではないとは言えど癒され、誠司への射撃はことごとくガイアドニスによって阻まれた。一方、結丹は自身に向けられた攻撃を捌ききれずに傷を負っていき、気力と執念だけで立っているのがやっととなる。

「……アンタ、いったい何を……!」
 射撃戦から一転、突如急接近し、ビームマグナムの銃身を掴んで銃口を己の心臓に向けさせた誠司の行動に、結丹が驚愕するのは無理からぬことであった。もしこのまま撃たれれば、誠司は可能性の力を用いずに死ぬ覚悟だと、この場にいる全員に伝わる。
「アンタも、仲間も助かる方法はある! 水都の領主は、今からでも何とかすると言っている。
 それが信じられないなら、うちの領地で引き受けてやる!
 だからもう奪わなくていい、傷つけなくて──傷つかなくていいんだ、結丹!」
「————!」
 誠司の呼びかけに、結丹は困惑し、沈黙するしかできないでいる。
「それでも略奪を続けるって言うなら、ここで僕を殺してから行きなよ。できるはずだ、今のその力なら」
「うっ……く、うあああああっ!」
 結丹はビームマグナムの引金に指をかけたが、引けずにビームマグナムを手放した。そして空中へと飛翔し、あらん限りの武器を乱射する。
「生きるのが目的だったんでしょう? 海賊が手段に過ぎないのを忘れないで!
 一度罪を犯したなら海賊として生き続けるしかないなんてことは、ないんだから!」
「そうだ! 『どちらかかが倒れねば生きられない』わけじゃねえし、『力で全て片付けるべき』じゃねえ。
 ここで終わりにしても、いいんじゃないか?」
「激しい動きが体をボロボロにするように、心無い行為は優しい心すら蝕むものよ。
 もう、無理するのは止めましょう?」
「そんな体に悪いもん、これ以上使ってたら駄目だぜ。
 皆で生き残る為に、こうしてるんだろ? 結丹嬢も『皆』の中に入ってるんだからな。
 あと、困ったことがあるなら領主に相談しろ。翠姫はそんなに薄情じゃねえぞ」
「お前ら、人を殺す気は無いんだろ? 当たり前だよな、生きたいだけなんだからよ。
 その引金を引けなかったのが、何よりもの証拠じゃねぇか。今なら、まだ戻れる。
 でもこんなこと繰り返してたら、いつか誰かの生命を奪う羽目になるぞ」
 ガイアドニスが、サンディが、蛍が、獅門が、自らの身を盾として近くの味方を護りつつ、口々に訴えかける。さらに、聖霊が今の攻撃で負傷した仲間達を癒やしながら、説得に加わった。結丹とて、誠司に始まるイレギュラーズ達の説得を理解できないではない。だが。
「もう止めよ! 周りを見るがいい! 貴様の仲間はもはや戦える状態ではないぞ!」
 百合子の告げたとおりであるからこそ、結丹は自分だけ戦わずして降ることはできなかった。
「我らが受けた依頼は貴殿等を保護せよだ。形ばかりの裁きは受けるであろうがな」
「そう……よかった……」
 飛翔して組み付いてきた百合子の言葉に、結丹はぼそりとつぶやいた。百合子にしか聞こえなかったその声には、心からの安堵が混じっていた。
 だが、結丹は戦う姿勢を崩さない。百合子の拘束を振りほどきながら着地すると、武装の砲口をイレギュラーズ達に向け、さらなる砲撃を仕掛ける構えを見せた。ただ先程までと違っているのは、穏やかな笑みを浮かべていることだ。
「投降なさいませ……と言っても、聞き入れて頂けないのでしょうね」
「もう、本当に意地っ張りなんだから!」
 戦う必要は無いと理解しながらも、倒されるまで戦闘を止める気はない。結丹の行動と笑みからそれを察した珠緒とリュリューは、もう休めと言わんばかりに破邪の聖光を結丹に放つ。
「……ま、だよ……」
 だが、二人からの聖光を浴びてなお、結丹は立ち続けた。ビームハルバードの柄を杖代わりにして身体を支えつつ、ビームサーベルを抜く。
「こんっっの分からず屋ッ!!! いい加減に……止まれぇぇぇぇっ!!!」
 これ以上結丹を戦わせたくないムサシは、叫びつつ渾身の右ストレートを結丹の左肩に叩き付ける。ぐらりと大きく後ろに仰け反った結丹に、ムサシはさらに左右の拳によるラッシュを浴びせた。最初のストレートで大きくバランスを崩していた結丹は、数発のパンチをその身に受けると、後ろにドサリと倒れた。
「……あり、がとう……」
 それだけぼそりと呟くと、結丹は意識を失い、もう起き上がってくることはなかった。

 戦闘が終わると、イレギュラーズ達は結丹と醍葉島民達を囮の輸送船に収容した。医者たる聖霊を中心に、サンディ、珠緒、リュリューが癒やしを施していき、他のメンバーはそのアシストを行っていく。
「……あんな負荷のでかいモン当たり前に使ってたら、相当きてるよな」
 結丹を診た聖霊は、思わずそう漏らした。内出血によって紅く染まっていた肌は元の白い肌に戻っていたが、その内部ではダメージが少しずつ蓄積されていることを、聖霊は見抜いていた。確かに、このままずっと一角獣の鎧を使い続けていたら、結丹はいつしか命を失ったことだろう。
 聖霊らの治療を受けて意識を回復した醍葉島民達は、イレギュラーズ達の説得を受けた結丹の言もあり、大人しく捕縛されたまま水都領主の元へと引き渡されていった。引き渡しの際、結丹をはじめとする醍葉島民達は、最後にイレギュラーズ達に深く頭を下げ、礼を述べた。
 結丹や醍葉島民達と別れたイレギュラーズ達は、彼らに待つ未来が良いものであるようにとの願いを、胸中に抱かずにはいられなかった。

成否

成功

MVP

桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。
 皆さんのおかげで、海乱鬼衆となった醍葉島民達は誰一人欠けることなく、水都領主である翠の元へと引き渡されていきました。
 MVPは圧倒的な反応で味方を牽引して先手を確保し、かつ海乱鬼衆の動揺を誘ってその執念に楔を打った珠緒さんにお送りします。

 それでは、お疲れさまでした!

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