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シナリオ詳細

Rowlet Special Summer

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ああ、麗しきシレンツィオ!
 燦々と降り注ぐ太陽、肌を撫でる心地良い潮風――
 ピカピカの建物達に、観光客を相手に景気良い声を上げる活気溢れる大通り。
 異国情緒溢れながら、人工の機能美も有する真新しい街はまるで何百年と若返ったリッツパークのようだった。
「……いやあ、壮観だねえ」
 強い日差しに目を細め、しみじみ呟いたのはレオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)だった。
「……」
「そう思わない? たった数年前までアルバニアの拠点でリヴァイアサンの庭だぜ、ここ」
「いや、思うけど」
「思うけど?」
「……それより珍しいものを見て驚いてる所」
 イレギュラーズの言葉に首を傾げたレオンの筋肉質でたくましい体には見て分かる幾つもの刀傷が残っている。見るからに色々な冒険に場慣れしている彼ではあるが――筋金入りの怠け者(?)でインドア派を気取る彼が遥か東の果てのリゾートに現れるのは予想外の出来事だった。
 誰が何かと誘っても夏場は「パス」の一言で逃げがちな彼が、全力の行楽気分で遠出して来るとは思わなかったのである。
「まぁ、普通ならこんなトコまで来ねぇけど」
 肩を竦めたレオンは己のものぐさを全く否定せずにニヤリと笑った。
「ほら、ここってローレットの支部あるからさ。
 ここんとこ、オマエ達こそ結構一帯の仕事請けてるだろ?
 お蔭様をもちまして商売の方も上々らしくてね――ローレットの株は高く、大手を振って遊べるし関係者の俺も何ならモテる。
『それに特異運命座標じゃなくてもバグってる俺にはここって超手っ取り早い訳ですよ』」
 そういえば、とイレギュラーズは得心した。レオンは世界で恐らく唯一空中神殿を『悪用』出来る一般人だ。
 そして、この男は凡そ公私混同を全く厭わないタイプであろう。
「後はそうだな。『この間のご褒美』とかちょっと考えたりね」
「……?」
「こっちの話。いい所だね、ここ」
「ああ」
「気温が高い割に湿度は低い。風も程よく吹いてるから暑い割に過ごしやすいんだよな。
 一年を通じて暖かいんでしょ。雨期なんかは大変かも知れないけどさ」
「ああ……」
 日差しを手で遮る格好をしたレオンは汗をかいたドリンクのグラスを傾けて美味そうに極彩色を飲み込んだ。
 カップル用らしきストローをさしたそれをゆらゆら揺らして「飲む?」等と宣う彼を無視してイレギュラーズは無数の光を跳ね返す青い海を見つめていた。
「……」
 この場所は色々な意味で思い出が深すぎる。
 二度と会えなくなった友人の事、見果てぬ海を目指した海賊の事。
 敵ながら天晴だった好敵手の事、今は一眠りしてくれた竜神の事――
 かつて『絶望の青』と呼ばれた事がまるで幻であったかのようだ。列強の資本と野望を吸い上げてリゾートとして再開発されたフェデリア島――シレンツィオ・リゾートは今まさに現在進行形で恐ろしく快適に、驚く程に素敵に。見事なまでの発展を遂げていた。
「で、オマエ達これからどうすんの?」
「どうするって――」
「――今年のシレンツィオは海洋王国だけじゃない列強各国の『肝煎り』だ。
 サマーフェスティバルはさぞかし盛り上がる事だろうさ。俺も全力でご相伴に預かる予定なんだけど」
「……だけど?」
「一人で遊び回るのも何だしなあ。何ならオマエ達も付き合わねぇ?
 健康なコースから不健康なコースまでお兄さんに任せておきなよ。ちゃあんと引率してやるからさ!」
 相変わらず冗句めいたレオンにイレギュラーズは苦笑した。
 成る程、レオンがローレットでも屈指の遊び人である事に疑いはない。
 出来ればこんな時ではなく、もう少し別の機会に『本気』を出して貰いたいものなのだけれども――

GMコメント

 YAMIDEITEIです。
 このシナリオは特殊なシナリオです。
 必ず下記のGMコメント等を確認するようにして下さい!

●このシナリオは何?
 このシナリオは『ピンナップシナリオ』です。
 リプレイと挿絵の合体した商品で、正規参加した場合、その両方の参加権利を得ます。
 今回はシナリオ執筆をYAMIDEITEIが担当し、リプレイ作成後、運営よりその内容を踏まえpokiraIL様(https://rev1.reversion.jp/illust/profile/1097)にシナリオの挿絵となる格好の『七人(人数分)ピンナップ』作成を依頼します。人数内訳はNPCのレオンとシナリオに当選、ないしは参加したPCが六人の構成となり、イラストサイズは1920*1080となります。縦形になるか横形になるかはIL様との相談の上、発注時決定されます。
 その内容柄、基本画像(全身図)が最低一枚以上ない場合、参加はご遠慮くださいませ。(除外の可能性があります)

●サポート参加について
 新機能のサポート参加に対応しています。
 イベントシナリオに参加する気分でローレットの特別な日に参加出来ます。
 友人や恋人が片方だけ正規当選した場合等はリプレイ面での描写では重点的にフォロー可能です。
 その他でもプレイングは正規参加と同様にかけてOKです。
 描写は確約ではありませんがサポート参加は高めのリソースを獲得出来ます。

 ここまでが思い切り新要素です。
 ここからは従来通りです!

●依頼達成条件
・シレンツィオ・リゾートを満喫する!

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 決戦の経緯や、フェデリアの詳しい説明については、お客様向けページをご確認ください。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。

 ※ポイント
 フェデリアをイメージするのであれば、バリ島やモルディブなどの、高級南国リゾートを思い浮かべれば正解です。もしくはラスベガスやマカオのように、少しギラっとしたリゾート地でもよいでしょう。ドバイのような、屋上に船の形をした高層ビル……なんてのものあるかもしれません。
 現在世界で最も金が動いている場所、とも称されるフェデリアは、特に富裕層向けのラグジュアリーな街並みと設備を備えています。高級? いいえ、超高級、なのです。
 鉄帝はもちろん、一部練達から流出した技術を惜しげもなく投入したフェデリアは、ある意味でこの世界の最先端を進んでいるといっても過言ではありません。ある意味で幻想貴族すら、羨みの目でみるでしょう。
 街の中央にある【総督府】は、街のシンボルとして行政の中心兼観光地になっていますし、【白い砂浜のビーチ】はもちろん、様々な土産物や食べ物が楽しめる【観光地街】も存在します。
 海はもちろん、森林自然も多く残されており、【フェデリア自然記念公園】は、多くの緑と入植した動物たちによって、さわやかな憩いの場となっています。
 【教会風の結婚式場】などもあり、ここでは毎月多くの人々が、ささやかなぜいたくと思い出の結婚式を挙げているようす。
 鉄帝からの影響も強いこの島には、【VDMランド・フェデリア】という遊園地も存在し、鉄帝人たちが独自の文化を形成した【リトル・ゼシュテル】という小さな蒸気街が存在します。

●プレイングのかけ方
・正規参加の場合
 昼間の時間でレオンを含む仲間達とビーチで遊びます。
 実際にどう遊ぶかは参加者次第ですが、ビーチバレーをしてもいいし、砂遊びをしてもいいし、BBQとかしてもいいです。
 大人の権力を駆使したレオンが一帯を借り上げているのでイレギュラーズ以外が近隣に顔を出す事はありません!
 このターンは『共通フェイズ』でピンナップ描写の対象となります。

 それ以外は自由で良いですが、以下の情報も参考にして何をしたいかが分かるプレイングが望ましいです。

・サポート参加の場合
 必ず以下の書式を守って下さい。
 一行目に下記のタグから選び【】まで含めてそれだけを記載して下さい。
 同行したい人が居る場合、二行目にお名前(ID)か【】でくくったグループ名等を記載して下さい。
 三行目以降は自由記載です。

【総督府】:観光に行きます。
【ビーチ】:砂浜で遊びます。(正規参加者とも遊べます)
【フェデリア自然記念公園】:名所です。
【教会風の結婚式場】:恋人と下見に行くのもいいかも?
【VDMランド・フェデリア】:?????
【リトル・ゼシュテル】:ゼシュテルは今回かなりの権益を得ています。
【シレンツィオ散策】:南国の風情をたっぷり楽しめるでしょう。
【ホテルステイ】:だって超高級リゾートですよ???

 コメントは例ですが、近しいものを選んで行動してみて下さい。
 重要なのは『サポートは描写確約ではない事』です。
 いい感じのプレイングを掛ければ切り取り次第のシステムなので何か工夫してみましょう!

※NPCを呼びたい場合はYAMIDEITEI担当っぽいか運営担当っぽい奴ならダメ元でどうぞ!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 五周年の前祝い、サマーフェスティバルを記念したスペシャルシナリオです。
 宜しければ是非ご参加下さいませ!

  • Rowlet Special SummerLv:45以上完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月06日 22時13分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費2000RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポート31人)参加者一覧(6人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
すずな(p3p005307)
忠犬
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
後光の乙女

リプレイ

●Rowlet Special Summer I
 青い空、白い入道雲。
 足元に感じる砂の感触は熱く。
 頭上から照り付ける日差しの熱はもっと強い――
「わーい! みんなと来たバカンスですからね! 楽しみですよ!」
 ――『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)の雰囲気は実に、実に華やいでいる。
「わ、わ……! こ、これが噂のリゾート!
 めちゃくちゃ素敵じゃないですか、ここが絶望の海だったなんて信じられないですよ、ほんと!」
 珍しく眉根を寄せる事無く生来の可愛らしさを前面に出して『憤怒』すずな(p3p005307)が表情を輝かせていた。
 シレンツィオ・リゾートは海洋王国大号令の成功を受けて列強各国が出資を果たしたフェデリア島――元・絶望の青の再開発計画である。
 廃滅病なる脅威と七罪アルバニア、更には水底に眠る滅海竜の暴威を完全に忘れ去ったかのように穏やかな海は格好の観光地へ姿を変えていた。
 これも元はと言えばイレギュラーズの活躍あっての事なのだから、リゾート地の『産みの親』はローレットであると言えるのかも知れない。
 何れにせよ、商売上手の海洋王国はシレンツィオの『筆頭株主』として国家の一大イベントであるサマーフェスティバル開催地の白羽の矢を立てたという訳だ。
(……でも少し残念なのは、小夜さんとフィーネさんも連れて来たかったなぁ)
 すずなの脳裏にぱたぱたと手を振って見送る小夜とフィーネの姿が浮かんだ。
 割と付き合いの良い二人ではあるのだが、今回は多分狩猟か何かに忙しかった――のはさて置いて。
「折角のいい機会。精々ビーチとリゾートを満喫させてもらおうじゃないか」
 そんなすずなを見てか小さく笑った『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が彼女の肩を軽く叩いた。
「はい!」
 元気の良い返事をしたすずなもブレンダも、
「んー、最高にいい天気ですよ! こうしてみんなと一緒に遊べるのが一番嬉しいですよ!」
 喜色満面、旅行とちょっとした非日常の昂ぶりに弾ける笑顔のブランシュもこの素晴らしいビーチにあっては水着を纏わずにはいられまい。
 開放的な夏を表現するかのようなこの楽しい時間に細かい理由は必要無いのだ。
「凄い綺麗なビーチ!
 何てったってこんな凄い所を貸し切りだよ!?
 これはもう――今日は思いっきり遊ぶしかない!」
 そしてそれは三人に比べれば派手に――いや、『幾分か』大人しいスタイルをした『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)も同じである。
「……あ゛?」
 勢いよく突き上げた拳が途端に別の意味合いを帯びたのはさて置いて。
「これが、御主の言う『引率』か?」
「ドラーーオマエ達へのご褒美ね」
 和装と白い水着を組み合わせたかのようなデザイナブルな水着に身を包んだ『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が「絶景だなあ」と嬉しそうな顔をするレオンに含んだ顔を見せていた。
「ま、御主の動機はさて置いて。馬鹿正直にこの一帯を借り受けたら、一体幾らになるのだろうな?」
「俺にとっちゃ簡単な話だよ」
 何処まで本気か『食えない』レオンの表情は余裕めいている。
「――いや、そんな野暮な話は止めておこうか。
 またと無い機会、存分に堪能させて貰うぞ。遠慮なくな!」
「ヒュー! 流石レオン! レオン最高!
 それがオトナの力ってヤツで、文句なし! さあ、シレンツィオを堪能しようぜ!!!」
 汰磨羈の言葉が終わるか終わらないかの内に、赤いバミューダを履いた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が砂浜を駆け出して、一番乗りとばかりに派手に海へと飛び込んだ。鉄帝人らしい実に単純明快で竹を割ったかのような『晴れやかさ』。
 引率を除けば今回の黒一点のイケメンは夏に煌めく少年のような快活さで休日の時間に向き合っている。
「……と、いう訳だ。何をするにせよ、取り敢えずは海でも楽しめ」
「そういうレオン殿は命の洗濯――目の保養でも?」
「お陰様で、大変助かってる」
 ブレンダのスタイルは言うまでも無く超! 抜群である!
「では、このリゾートの時間の返礼という事で」
 一方で澄ました顔で冗句めいたすずなにレオンは軽く笑う。
 名うての遊び人を前に一歩も引いていない――
 瀟洒な大人のやり取りを見せるブレンダの恋愛偏差値が35であり、sznが何時も大抵びちょぬれで手遅れである事は誰も想像し得まい。
 閑話休題。
「焔もそこの話題からは置いといて」
「あ゛?」
「冗談だよ。水着可愛いじゃん」
「あ、えっと、これはね――」
 焔は答えかけてその先をやはり言わない事にした。
 今年の白いフリルのビキニは彼女が大好きな『パルスちゃん』こと鉄帝のスーパーアイドル、パルス・パッションとのお揃いである。
 彼女とも遊べたら良いとは思ったのだが、やはり夏は一期一会。今日という日を愉しむにこのメンバーは十分過ぎたから。
「ふぅん」
 レオンは何を思ったのか思わないのか焔の頭にポン、と手を置いた。
「御主なぁ、年頃の娘の頭に無意味に手を置くでないぞ」
「ふえ?」と首を傾げた焔の一方で汰磨羈が呆れたような、意地悪をするような顔をした。
 このギルドマスターの『不品行』はそういう意味で実に、実に知れている――今のは全くそんな意図はないのだろうけど。
「みんな! まだ来ないの!? すっげー気持ちいいぜ!!!」
 胸から下を水につけたイグナートがぶんぶんと手を振って『遅い』仲間達を呼んでいる。
「今行くですよッ!」
 これに力一杯答えたのはやはり元気の良いブランシュである。
「ほら、行ってきな――」
 レオンが行け行け、と手でやって――それでもう前置きは十分だった。
 水面に幾つも飛沫が立ち、真夏のリゾートには楽し気な声が幾つも響き始めていた。

●Rowlet Special Summer II
「ホテルすごいにゃ、豪華にゃ……!
 お外も楽しそうだけど、ホテルの中にもすごいショッピングエリアがあったにゃ!
 超高級というか、一級品!みたいな品揃えだったのにゃ……
 こんなすごいところ滅多に来れないし、ショウへのお土産探すのにゃ!」
 瞳をキラキラさせたちぐさは都会的でありながら特級のリゾートたる高級ホテルの佇まいに目を輝かせていた。
 面々がビーチで『はしゃいでいる』頃、同様に他のイレギュラーズもシレンツィオ・リゾートを堪能していた。
「まぁ、島来たら海行けってのも道理ではあるが――海好きじゃないし。磯臭いし
 それにレオンがいるなら存分にツケ払いで色々できるだろう?
 確かバーと……サウナもあるかな? マッサージもあるだろう?
 超一流のホテルを愉しむのはまさに『労働者』の特権だろ?」
 悪びれもしないでホテルステイを決め込むのはマニエラである。
(……歳のせいにしたくないが、こう言うマッサージとか、ととのい?ってやつ?
 そういうのがこう、意外と……)
 常夏のリゾートの楽しみ方は色々で、少なくとも彼女はホテルでも『風情』を感じられるものと思っている。
 ホテルで愉しむ人間も居れば、アクティブさを発揮する人々も居る。
「お気に入りの水着でお出かけ出来るって――何だか新鮮で楽しいな!」
 シレンツィオは水着姿であちこち出歩くのが珍しくはない。
 そんなちょっとした非日常を愉しむのはかき氷やジュースを片手に島内を散策するヨゾラであり、
(目的等なくとも――ふらりと出歩くのも楽しいものだ。
 何せここは初めて訪れる街。新しい発見はいろんな所にあるだろうからな――)
 愛らしい『にゃんたま』達とあちこちを眺めて回るゲオルグである。
「自然豊かってやつ――実はこういうの好きなんだよな」
「フム……見事な場所じゃ。深緑とはまた違う自然環境と言った所じゃな……」
 見事に整備されたフェデリア自然記念公園ではしみじみと言ったミヅハやオウェードが深緑には見られない植生の説明を受け、感心した声を上げていた。
「ほらやっぱ水竜さまはレディだからさ、キレイにしておくべきじゃん? それにキレイならみんな信仰してくれるかもしれないしな!」
 一方でカイトはと言えば、今は滅海竜と共に穏やかな海の底で眠る『水竜様』を思ってか、彼女を祀る様々に対しての手入れを申し出ていた。
 ミヅハ達に公園の説明をしていた係員はカイトやローレットと『彼女』の関わりを知っているからか「内緒ですよ」とそれを承諾してくれる。
 ローレットの特別な休日はまだ始まったばかりで、この先もこの上ない楽しみに満ちているだろう!

●Rowlet Special Summer III
「グリーンスキンが日焼けすると何色になるか知ってる?」
 カメラ目線のキドーが問いかける。
「正解は――俺も知らない!」
 灰色に曇った故郷の事を苦笑いで思い出し、彼は折角だから試してみる事にした。
 ビーチチェアに寝そべった彼はカクテルを片手に日光浴を洒落込んでいる。
「ふわあ、凄い……こんなすごい場所に、私なんかが来ちゃって良かったのかな……?」
「いいに決まってる! 今年も一緒に遊べて嬉しいね!」
 何時に無く殊勝な事を言ったパーシャにアンジュが小さな胸を張った。
「シレンツィオねえ、噂には聞いていたけど、本当にこんなリゾート地作っちゃうなんて凄いわね。
 それにしても、さっきのナンパがしつこいのなんのって!」
『貸し切り』に逃れて来るまでには色々あったのだろう、何とも微妙な顔したみるくだったが、本気で怒っている訳ではないようだ。
(まぁ、遊ぶのは遊ぶとして……
 いわしを食べたり捕まえたりするやつが居ないか、監視はしておかないといけないよね。
 たいてい出てくるんだよね、経験則でわかる。アンジュの目が黒い内は、そういうの絶対許さないからね)
(平民の私にはふさわしくないというか……うう、落ち着かないよ。
 でもアンジュちゃんもみるくちゃんも、そういうふうに見えないし……私だけ?)
「???」
 同道する二人の友人の内心は良く分からずみるくは小首を傾げている――
 ビーチを愉しむのは先の六人だけでは無かった。
 やはり常夏の島で一番の目玉になるのは海辺である。
「やはり、観光地と言うだけあって綺麗な海ですねぇ……!
 砂浜の白と、海の青。煌めく太陽、真っ青な空――流石のボクもちょっとわくわくしてしまいます!」
 チェレンチィの言葉はかなり多くの人間の代弁になっただろう。
 レオンが貸し切りをした事を聞き付けてか――大勢のイレギュラーズがめいめいにビーチでの時間を過ごし始めていた。
(私も海で遊びたかった――確かにそんな風に思っていたけれど……)
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。大きな太陽でのぼせたかい」
(思っていたけれど、普通……)
「ははあ。コイツは重傷だ。俺の声も聞こえないと見える」
(普通、こうなるとは思わないでしょう!?)


「聞こえてますとも!」と真っ赤になったエルスは頤を持ち上げた水着姿のディルクに思わず大声を上げていた。
 泳げない吸血鬼は水に沈むものなのだが、それを聞き付けたらしいディルクは足の立たない場所でしがみつくエルスを玩具に遊んでいる。
「折角来てやったのに不満かよ」
「全く不満ではありませんけど!!!」
 JC百面相はさて置いて。
「レオンさんが一帯を借りてイレギュラーズ以外が顔を出すことをないと言うことは……! 商売! チャンス!
 ワタシの『商業知識』がささやいてるよ。お肉を提供したり接客サービスを尽くしちゃうよ!
 つまり、これは肉屋のゴラ……ちがう。今日は特別に『海の家 ゴラ』だよお……!」
「夏だ! 浜辺だ! BBQだ!
 肉よし、肉よし、ビールよし! オールオーケー、さあ焼くぞ!」
「ぶははははは! いい意気だ! これは俺の――いや、『俺達』の出番だな!」
 無闇な気合いを入れたフラーゴラ、鉄板を用意したバグルドやこれが最得手のゴリョウ等はすっかり出張海の家よろしく昼食の支度を始めているし、
「ピーカンの空、暑いのにご苦労なことである!
 今日の遊びは任務にて! しっかりやってくれニンニン♪」
 鼻歌交じりの鈴音はビーチの保険医といった所だ。
「お金持ちや偉いヒトを食べちゃったら問題になるからねー。
 ライフセーバーだったかな?  ビーチの監視員のお仕事をしようかなって」
 この世で一番不安なライフセーバーことロロンも腕をぶしている。
「……お前達さあ」
「はい?」
「何時もこんな感じなの?」
「何時もこんな感じでありますね」
 似合わない水着(エッダが押し付けたものである!)に身を包んだヴェルスが肩を竦めた。
 小さな体躯に大きなボールを抱えたエッダは何処と無く嬉しそうにそんな彼と並んで歩いている。
「折角だからボールで遊ぶでありますか?」
「遊びたいんだろ?」
「興味が無いと言えば嘘になります。陛下、めっちゃ速く動きそうですし」
 エッダの『可愛くない物言い』の真意の方は語らぬが花として。
 何とも平和で何とも言えず奇妙であり、実にローレットそのものな時間はリゾートであっても変わらないらしい。
「何か賑やかになってきたし――盛り上がってるじゃん?」
 目を細めたレオンはそれ自体が眩しそうである。
 ならばと。『メインパーティ一行』も負けじとそろそろ本気で遊び出す。
「そういう訳で!」
 元気の有り余るイグナートが快活に宣言した。
「ビーチバレーで遊ぶよ!」
 一頻り水辺で騒いで、しかしそれはまだ前菜のようなもので、六人はチームを二つに分けてビーチバレーをする事にした。
 腰痛の酷いレオンには審判辺りをして貰うとして、チーム分けはそれぞれイグナート、ブレンダ、焔でAチーム。
「参加する中で唯一の男の子なんだし、頼りにしてるよイグナートくん!」
「責任重大だな」
「任せておいて!」
 冗句めいた焔、ブレンダが言うとイグナートはチャーミングにウィンクをして、胸を叩く仕草をした。
「おうおう、中々の難敵だ!」
「勝負であるからには、ですね」
「はい! 負けないように頑張るですよ!」
 目を細めた汰磨羈、言わずもがなのすずな、力を込めたブランシュでBチーム。
 勝敗はそこまで深刻なものではないのだが、
「負けた方はやっぱり罰ゲームとかつけとく?」
 審判の立場で無責任な男は面白がっていた。
「一応言っておくが――」
「――うん?」
「もちろん混ざってもOKなんだぞ?」
 ブレンダがそんなレオンに釘を刺し、対決は華々しく始まった!
「ふっふっふ、身体を動かすのは大得意だ。
『アクロバット』の『エキスパート』であり『二時間泥棒』でさらに強化されているからな……
 不足も不覚も存在しない! ならば、私の全力を見せてやろう!」
 やるからには『ガチ』なのか、ブレンダの雰囲気も何時もより愉快気である。
 こんな愉快なブレンダさんはシルト君の前でしかお目にかかれない。
「そのナレーション要る!?」
 思わずツッコミを入れたブレンダの一撃が唸りを上げた。
「言うならば我々はT値的にテクニカルアタッカーチーム。腕が鳴るぞ!」
 水着の袖を外した汰磨羈が躍動し、ブレンダの高打点スパイクを回転レシーブで上に上げる。
「誰が守っても鉄壁、誰が打っても強烈になる三段式だ。フェイントも交えて翻弄する――
 すずな、ブランシュ! 水の構えで行くぞ!」
「水の構えって何ですか!!!」
 苦労性のすずなと悪戯好きの汰磨羈の組み合わせは中々愉快である。
 案の定、ツッコミに忙しいすずなだったが、生真面目な彼女の事。
 レクリエーションであったとしても『勝負』であるならば最適手を求むる事に異存など無い。
(ですが……って何ですかこの身長差!
 え、もしかして私が一番高いの……? 嘘でしょ……)
 何せ相手には鉄壁の城塞の如きブレンダ、そしてイグナートの長身コンビが居る。
 誰だこの恐ろしくバランスの悪いチームを考えたのは! そう思いながらもすずなは丁寧なトスを上げる。
「どうした、すずな。そんなに身長差が気になるか」
「いやいやいや! その分高く跳べばいいだけです!
 たまちゃん、ブランシュさん! 狙うは焔さんですよ!
 ほっとくと絶対ろくでもない事やってきますよあの人!
 トコトン狙って今の内にヘトヘトにしてやりましょう!!!」
「うむ。ブランシュ。背の高いすずなに隠れてフェイントだ!」
「はい! 相手は歴戦のイレギュラーズ、相手にとって不足はなし! ですよ!」
「ビーチバレーでの戦略や動きはすでにインプット済み」。そう豪語するブランシュが華麗な動きでフェイントを交えたアタックを仕掛ける。
「させるかッ!」
 当然ながら長身が光るAチームはイグナートのブロックで対応しようとするが、
(――くッ! フェイントの分タイミングが外された――!?)
 テクニック自慢と言うだけあってブランシュの動きに振られた分、その指先がボールを掠めて届かない。
 打点こそそこまでではないが、見事一撃は砂浜を叩くに思われたが――
「――誰を狙う、だって?」
 ゆらりと動くのは小柄な焔であった。
 小柄である事はむしろ防御の意味では優れる意味もあるのだ。
 俊敏性の塊であり、バイタリティの塊である焔は簡単な失点を許しはしない。
「揺れる胸とか、そういうのはいいんだよ」
 見事にボールを上に上げ、不敵な笑みですずなを捉えた。
「……さっきのは『宣戦布告』でいいんだよね、すずなちゃん!」
「怖すぎるんですけど!!!」
 そんなやり取りに審判のレオンがゲラゲラと笑い声を上げている。
「やっぱ負けたら罰ゲームだな。その方が絶対盛り上がる」
「……ムセキニンだなあ!」
 イグナートが声を上げるが、即座にそれも面白いかと思い直す。
「負けなきゃモンダイないもんね」
「そうそう。ボールを上げてさえくれれば相手のコートに叩き込んでみせるよ。任せてくれ」
 ブレンダもこれには同意なようだ。
「……聞き捨てなりませんね、その言葉」
「うむ。高さが強さではないと思い知らせてやらねばな」
「ガチらない、ガチらない……ってガチった方がいいですか!?」
 すずな、汰磨羈、ブランシュも望む所だと受けて立ち――
「じゃあ、そういう感じで盛り上がって。俺は沢山笑ってるから」
「レオンさん! ちゃんと審判してくださいね!
 水着に夢中で見逃した、とか無しですよ!?」
 すずなに釘を刺された『審判』が「はいはい」と頷けば、この戦いはより白熱を増すばかり!
「狙われててなかなかアタックは出来ないけどサーブでなら!
 必殺の火の玉サーブ、すずなちゃんやたまきちちゃんのお胸を狙って撃ち込むよ!
 ブランシュちゃんは……こっち側みたいだから特別に許す!」
 焔ちゃん、良く見て!

 つ「体型 豊満」

「――こんなの絶対おかしいよ!!!」

●Rowlet Special Summer IV
「いやぁね……正直自分でも好奇心に殺される猫を思い出すんですけれど。
 ……でも各国の肝いりなんて言われてる場所で一つだけ詳細不明とか気になるじゃないですか」
 好奇心は猫(マリア)を殺すが、イレギュラーズも同様だったらしい。
 しみじみと呟いたキイチの前には謎の遊園地がその大口を開けていた。
 VDMランドシー……もとい、フェデリア。
 鉄帝において理不尽と意味不明の象徴とも呼ばれる魔園の南国支部である。
「ふふ! 完成していたようだね! VDMランド・フェデリア!
 虹色の噴水を上空に吹き上げるとらぁ君像も絶好調だ! 施工責任者には表彰状(まりやねんかんぱすぽーと)を贈らなければ!」
 新橋のサラリーマンのように蒼褪めるキイチの一方で、余程出来栄えに満足だったのかマリアはご満悦である。
 今度のサマーフェスティバルは彼女の理想郷の実質のこけら落としのようなものだ。
「ヴァリューシャ! どうだい! 素敵だと思わないかい?
 VDMランドとは違ったちょっとセレブな大人向けリゾートテーマパークに仕上げてみたよ!」
「ええ、ええ! マリィ! ついに完成しましたのね!
 ありがとうマリィ、とっても素敵な『オトナの遊園地』でございますわー!」
 多くを語らずともヴァレーリヤは分かっているのだ。
 この何とも無軌道で何とも凄まじい恋人が自分の為にこんなものを用意してくれた事は。
「ねえねえマリィ、後であのアトラクションに乗ってもよろしくて?
 あんなお酒からこんなお酒まで、私限定の特別価格で! 嗚呼、ここが天国でしたのね……!」
 小さな体でぴょんぴょんと飛び跳ね、あちこちを指さしご機嫌なヴァレーリヤにマリアは何とも幸せでにっこりと笑う。
 カップルが幸せそうな一方、
「VDMランド……とらぁさんにも会えるかな?
 フェデリアのVDMランド……特別そうだし楽しめたらいいな、みゃー」
 そしてマイペースな祝音がパンフレットをめくりながらキャストとの出会いを期待する一方で、園内のあちこちからは既に数多の異変が蠢いていた。
 剣呑な破砕音と破滅的な悲鳴の数々……
 ああ、そんなもの。きこえない、きこえない。
「とらぁくんがいたりかわいいマスコットがいるVDMランド…
 ぼくはフェデリアのVDMランドのなぞを探るためせんにゅうすることにした……
 ……なんて! まえおきはたてまえみたいな! とにかくたくさん遊ぶぞー!」
 リュコスは実に前向きに『挑戦』を考えているようだ。
 はてさて、行く手に待つものは。虎が出るか綺麗な虹が掛かるのか――
「――とらぁくんに連れてこられた秋奈を待っていたのは、またとらぁくんだった。
 巨大なアトラクションが魅せる一幕は、夢か、地獄か。
 虎を名乗る勢力が生み出したVDMランドシー。
 それは悪徳と悪酔い、アルコールと混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた虹色のジュース。
 ここはVDMランド・フェデリア。運命に出会う場所――
 次回『普通のバイトって聞いてたんだけど』。来週もVの饗宴に付き合ってもらう」
 秋奈ちゃん、宣伝お疲れ様です!

●Rowlet Special Summer V
 バレーでの対決は有耶無耶のまま終わっていた。
 肝心要の審判が綺麗所の水着をガン見していたから、というのが真相で。
 奇しくも白いビキニのすずなchangの懸念は当たってしまった事になる。
「……あてにならない審判はクビです。今度は個人戦なので参加して貰いますからね!」
 かくてすずなの一言で今度はレオンも引っ張り出される事と相成った。
 第二種目(?)はビーチのサバイバルゲームである。今年流行に流行った水鉄砲という武装を持った対決だ。
「そして私は通りすがりの採点役です。
 本体のバイクは隠せよ! 絶対pokiraさんにご迷惑かけるなよ!
 ……って言われたからこうして投影体の水着だけで来たのに……抽選に落ちてるじゃないですか!!!
 この期に及べばつまみ出せと言われても帰りませんからね!!!」
「オマエさあ」
 第四の壁を越えるアルプスは兎も角、ここからは泣いても笑っても個人戦の始まりだ。
「来ましたね、私の独壇場が……!
 非常に、ひっじょーに不本意ですが水と言えば私!
 全員覚悟するのですね!」
 伝説のびしょ濡らーsznはこれには自信があるようで、やたら胸を張っている。
「いやあ、いい運動だったが――第二ラウンドという事なら是非も無い。これも実にやり甲斐がある!」
 ブレンダは相変わらず意気軒高なようで、取り分けこの休日を全身全霊で愉しんでいるように見えた。
 日頃はどちらかと言えば(約一名以外の前では)大人びた彼女だが、童心にかえるとはこの事なのかも知れない。
「……さっきからこう、所々に書き手の嗜虐性を感じるような気がするのだが!!!」
 気のせいですよ。
「『航空猟兵』としてはサバゲーは見せ所ですよ! これは腕がなるですよ!」
 ブランシュは思わぬ『専門分野』の出現にいよいよやる気になっているようだった。
 撃たれても濡れるだけ。元々皆泳いでいた位だ。だからこれはただの遊びに過ぎないが――
「ふふふ、この時を待っていたぞ!
 覚悟しろよ、すずな。今年こそは、御主をびちょぬれわんこにしてくれる!」
 ――バズーカ(?)を構える汰磨羈は伝説の傭兵を前にどうもやる気たっぷりな様子である。
「今回はレオンも気合十分デショ? ムリをしない程度に頑張って女性陣を水浸しにしないとね!」
「分かってるじゃん、オマエ」
「アリガト! セクハラは良くないと思うけど……
 今回はちゃんと全員濡らすのが男の子としてのギム――いや、カミの望むシナリオの趣旨だと思うんだ!」
「大丈夫、ハラじゃなければ大体セーフ」
「そうだね!!!」
「レオンさん……は平常運転として……イグナート君???」
 真夏の太陽にやられてか大分胡乱な事を言い出したイグナートに焔ちゃんが?マークを浮かべている。
 ともあれ始まったこっちの第二ラウンドは中々激しい展開になっていた。
 さもありなん。先程はチーム対抗戦。向かい合う勢力は二つだったが、今度は七人入り混じっての大乱戦である。

「ふぇ!?」
 まず最初にやたらめったら集中攻撃を受けたのは、
「ふぁ!?」
 面白い声を上げまくる、
「ひゃああああ!?」
 焔であった。
「まずは焔さんです!!!!!! こっちでも最優先!!!!!!
 貴方を放置するとか絶対ないですからね、最初に沈んでもらいますよ!!!!!!」
 何時にも増してやたらエクスクラメーションマークの多いsznが縦横無尽に襲い掛かっているのである。
 両手に二丁水鉄砲と洒落込んだ彼女は水を得た魚、水を得たsznとばかりに焔を集中攻撃していた!
「隙あ――」
「――あ、たまちゃんはこの後ですから。濡れたぬきにしてあげますから静かに座って待ってなさいね」
「なにこの強キャラ設定!?」
 sznを狙いかけた汰磨羈の頬と足元を二条の水が掠め、その動きは否が応無く凍り付いていた。
「よし、これも日頃の報復ということで焔殿めがけて……えい」
 暴れるすずなの影から少しだけ申し訳なさそうにブレンダが水を発射した。
 やはりこれも面白い位に焔の顔面を捉え、びしょびしょになった彼女は思わず抗議めいていた。
「……って、なんでボクこんなに狙われてるの!? これこういう遊びじゃないはずだよね!
 今日はまだ何もしてな……じゃなくて、いつも何もしてないよ! 毎度毎回あれは不幸な事故なんだよ!」
「ち、違うんだこれは!少し魔が刺したというか、その、なんだ」
 思わず弁解しかかった生真面目なブレンダだったが――
「――ええい、ままよ。
 こうなったら乱戦にして誤魔化してやる!全員敵だ!
 すずな殿、たまき殿は尻尾もびちょびちょにしてやる!
 イグナート殿もこういう時ノリがいいのも知ってるからな! 敵だ!
 ブランシュ殿は初めましてな気がするが敵だ! ついでにレオン殿も敵だ!!!
 かかってこい! 私が怖いか!!!」
 ――彼女は実際問題割とゴリラな気質であった。
「ブレンダがバーサーカー化しているだと!?
 ええい、水着のゴリラは化け物か!? 皆、まずはあのウォーターゴリラを倒すぞ!」
 ええい、尻尾をやらせはせんぞ! 地味に手入れが大変なんだからな!」
「ひゃあああああああああ!?」
 汰磨羈が号令し、かくて一斉に注目を浴び誤魔化す所か集中攻撃を浴びたブレンダがほうほうの体でびしょびしょになり、レオンがニッコリする。
「勿論ブレンダさんもイグナートさんもブランシュさんも皆等しくびちょびちょのぐちゃぐちゃです――逃げられるとお思いですか?」
 相変わらずはしゃぐsznは暴れに暴れ、
「――次のターゲットはレオンだがな?」
 生意気な汰磨羈は理不尽なレベル差に秒で分からされ、
「どうして……」
 一方でレオンは、
「くらえー水鉄砲式ラフィングピリオド! 水鉄砲式ジャミル・タクティール!」
 実に楽しそうに水鉄砲を振り回すブランシュには大いに甘い。その一撃を彼は(多分)『貰ってくれた』。
「蒼剣討ち取ったりー! ですよ!」
 また先程(ブレンダ)とは違った意味で彼は少し嬉しそうにそんな彼女を眺めているのだ。
「じゃあ次はそのバケツでsznを」
「アイスバケツチャレンジ的な!」
 勿論、ブランシュに余計な事を吹き込む事にも余念は無いけど。
「レオンさんは腰の事を考えて加減してあげましょう……そう思いましたが」
 目を見開いたすずなが吠えた。
「最早、是非も無し。全員まとめてやっつけてやりますよ!!!」
 勿論、sznはびちょびちょになったけど。

●Rowlet Special Summer VI
 ビーチでの楽しい時間の後はそれぞれの時間である。
「さて、浜辺では存分に遊んだ事だし。次はどこへ行く?
 流石の高級リゾートだ! 色々と良さそうな所があるぞ!」
 パンフレットを『一枚だけ隠し』次の予定を考える汰磨羈の腕を『びしょ濡れ』の焔がしっかりとホールドした。
「あれ? 今たまきちちゃんが隠したのって……これかな?」
 先の二種目で散々にやられたからか焔の笑顔は何時に無く屈託ない。
「VDMランド・フェデリアかあ! 何だか嫌な予感がする名前の場所だけどきっと気の所為に決まってるよね!
 たまきちちゃんは後でこっそり一人で行くつもりでパンフレットを隠したんだよね???
 もう、水臭いんだから! それなら皆で行った方がきっと楽しいよ! 一緒に行こう!」
「……こそこそ」
「何sznちゃん逃げようとしてるのかな? ボクには全然わからないよ!」
「えええい離せ! 離してください!
 とらぁくんやだ! とらぁくんやだあああああああ!!!!!!」
(あ、駄目だ。このフィールドじゃ焔に『勝てない』)
 先程までの強キャラ振りは宇宙の彼方に消え去って泣きわめくszn、そして汰磨羈は理解が早すぎた。
「という訳で、興味がある人達でVDMランド・フェデリアに行ってみようと思うよ!
 イッタイどんな魔境なんだろう?本国のアレと同じようなテーマパークなんでしょ?
 ブレンダも行くらしいからイッショに行こうと思うよ!」
「もう名前からして嫌な予感しかしないんだが……
 確かに肝試しは夏の風物詩だがわざわざこんなところでやらなくてもいいとは思うのだが……
 ……とはいえ逃げるのも女が廃るからな。一応は遊園地らしいしどんなアトラクションがあるのか楽しみだ」
 女子らしく「あ、でも先頭はイグナート殿に頼もう。こちとらレディだからな」としたブレンダに、イグナートは男らしく「先頭は行くからケイカイはさせて! ゆっくりね! どうせあそこにも酒臭いマスコットや投げ技使ってくる怪生物が居るんだから!」と確信めいた顔で応じていた。
「え? VDMランド? あそこはちょっと……近寄りがたいような。
 危険だとセンサーが感知してるですよ。という訳でいけにえ……もといいってらっしゃい!」
 ブランシュが笑顔で見送った面々がどうなったかを語るのは別の場所に話を譲るとして。
「レオンさんは?」
「俺はまぁ、ちょっと野暮用――」
 久々の運動に少し疲れたのか彼は大きく伸びをした。

●Rowlet Special Summer VII
 シレンツィオ・リゾートは『絶望の青』の中核拠点、つまりフェデリア島である。
 つい数年前まで魔種の拠点であったこの島は人類の勢力圏ではない、文字通り未踏の地だった。
 即ち、潮風が香る風情のあるチャペルもムードを重視して『そのように造られた』新しい場所だった。
(結婚どころか付き合うつもりもないしせめてもの思い出に来てみた――のじゃが)
 余りにも色々な事が起き過ぎたこの土地で、他ならぬクレマァダが引き寄せられるようにこの場所を訪れたのは或る意味で運命的なのかも知れなかった。
『結婚』だの『付き合う』だのから連想する誰かの顔は一つばかり存在する。
 だが、それはあくまで彼女にとって淡いものであり――淡いものだったから。
「ふんふん、なるほどなるほど……クレマァダさんは、こういうのがお好みですか……!」
「あの。何でおるのじゃお主?」
「たまには私もご一緒させて頂きたく思ったまでです!
 別に、ビーチに行ったら既にブレンダ師匠がレオンさん達と陽キャかましてたので、泣きながら帰ってきたついで――なんて事はございませんとも!」
 勿論、語るに落ちている。
「いや、ここは我は……あの、えーと……その、フェルディンは……我はフェルディンの自由を尊重しておる!!!」
「はい、大丈夫ですよクレマァダさん! 私も恋愛は個人の自由が尊重されると思っていますから!」
 噛み合っているようないないようなトークに妹に引っ張られてきたもう一人、即ち渦中のフェルディンは所在なさそうに空を見上げ頬を掻いている。
 何ともむず痒いラブコメ野郎共はサメの餌にでもしておく事にして。
『教会風』を訪れたのはもう一人。
「――――」
 石造りの教会に入り、周囲を眺めている。
(石造りの聖堂。暑い外界とは隔絶されているかのよう。
 自然にひんやりと感じる静謐な空間が不思議と落ち着くのはこの街に不似合いな程の……
 或る種の古めかしさを感じるからでしょうか)
 全てが新しいシレンツィオに昔ながらのものなんて無いのだろうけど。
「――ここではきっと。これから、沢山の幸せな光景が生まれるのでしょうね」
 イレギュラーズが、自身がその一助になれた事をドラマは少なからず嬉しく思った。
「……たしも、いつか――」
 思わず口を突いた言葉にドラマは小さく頭を振った。
 王子様(もんだいじ)は珍しく砂に塗れて遊んでいた。
 真っ赤な夕日が燃えている。


(レオン君達もそろそろ遊び疲れた頃でしょう。暇になっているかも知れな――)
「――何、オマエ。こういうのが好きなの?」
「!? !? !?」
 不意のバリトンは耳元で響いた。
「れ、れお、れおん君……!」
「考慮しとくよ。つーかオマエいないし。『ご褒美』なのに」
 慌てて振り向いたドラマの顔を見てとびきり意地悪に言った彼に彼女は声を絞り出す。
「ほんきで けはい けすの やめてください!!!」
 ――伝説の冒険者のスキルを何と無駄で悪趣味に使っているのだ!? この師匠は!?

●Rowlet Special Summer VIII
「昼の海も良いが、窓から見える家々の夜景もまた美しい。
 ベランダに出るだけで寄せては帰す波の音すら聞こえてきそうだ」
 リースヒースはベランダに出て、眼窩のビーチを眺めていた。
 夜の海に、瞬く星。そんな姿も昼間とはまた違って格別なものだ。
「暑さは完全には去らぬが、案外と過ごしやすいものなのだな」
 リースヒースは考えた。
(この地で起こった様々な過去を弔うには、新たな形で一歩足を進めることが必要だったのだろう。
 霊達が悲しい顔を見続けぬことは、それはそれでよいことだ。
 この地には死が多すぎたが、今は生も多い。まさに幸あれかし、だ)
 リースヒースの視線の先には二つの人影があった。
 片方は燃えるような赤毛の少女。もう一人は桃色の髪をした可愛らしい少女だ。
 どちらも小柄で、二人はとても仲が良いように見えた。
「……ふむ」
 声が聞こえる距離ではない。
 だからこれはあくまで想像なのだが、やり取りは例えばこんな風だろうか。

 ――え? え? ええ!? ど、どどどどどうしてパルスちゃん!?

 ――焔ちゃん達がサマフェスに参加するって聞いて

 ――た、確か忙しいって……

 ――うん。だからマネに無理言って、来ちゃった!

 ――えええええええええ!?

 ――焔ちゃん、明日ボクと遊んでくれる?

 多分、まぁこんな風だろう。
「……さて」
 何時までも眺めているのも悪趣味だ。
 リースヒースは思考を『別』に切り替えた。
「ルームサービスを取るか。このリブロースステーキサンドイッチというのは、何とも生命力にあふれた食べ物ではないか……」
 シレンツィオ・リゾートの夜は最高だ。
 誰にも優しく、波の音よりも静かに穏やかに過ぎ去っていく――

成否

成功

MVP

すずな(p3p005307)
忠犬

状態異常

なし

あとがき

 初めての形式、EX+サポートというシナリオでした。
 戦闘タイプだと話は別でしょうが、行楽タイプのシナリオだと幕間を挟む格好になるので案外書きやすかったです。
 サポートが居るので字数は14000程度、六人EXなのでかなり豪華版になっております。
 是非お楽しみいただければ幸いです。

 尚、ピンナップ作成については二、三か月程度のお時間を頂戴する見込みです。
 具体的な納品予定につきましてはpokiraIL様と打ち合わせの上、追ってお知らせいたします。
 描画シーン、発注文章につきましてはどんなのが来るのかドキドキしてお待ち下さい。

 シナリオ、お疲れ様でした!

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